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特開2025-17663磁気記録媒体、磁気記録媒体の製造方法、磁気記憶装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017663
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】磁気記録媒体、磁気記録媒体の製造方法、磁気記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/66 20060101AFI20250130BHJP
   G11B 5/851 20060101ALI20250130BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
G11B5/66
G11B5/851
G11B5/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120812
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】524259126
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・ハードディスク
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】福島 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山口 健洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優樹
【テーマコード(参考)】
5D112
【Fターム(参考)】
5D112AA05
5D112BB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グラニュラー磁性層が内部にグラニュラー構造を形成した状態を安定的に維持し、面記録密度をさらに向上させた磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体1は、基板10と、下地層20と、第1の磁性層30と、第2の磁性層40を、この順で有し、第1の磁性層は、L1構造を有する磁性粒子を含み、第2の磁性層は、L1構造を有する磁性粒子と、六方晶窒化ホウ素を含む粒界部を有するグラニュラー構造を備え、第1の磁性層に含まれる磁性粒子の(111)面は、第2の磁性層との界面において、窒化ホウ素で覆われ、第2の磁性層に含まれる磁性粒子は、第1の磁性層に含まれる磁性粒子の(001)面よりエピタキシャル成長しており、第1の磁性層に含まれる磁性粒子と第2の磁性層含まれる磁性粒子は、それぞれ第1の磁性層と前記第2の磁性層を貫く柱状晶である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、下地層と、第1の磁性層と、第2の磁性層を、この順で有し、
前記第1の磁性層は、L1構造を有する磁性粒子を含み、
前記第2の磁性層は、L1構造を有する磁性粒子と、六方晶窒化ホウ素を含む粒界部を有するグラニュラー構造を備え、
前記第1の磁性層に含まれる磁性粒子の(111)面は、前記第2の磁性層との界面において、窒化ホウ素で覆われ、
前記第2の磁性層に含まれる磁性粒子は、前記第1の磁性層に含まれる磁性粒子の(001)面よりエピタキシャル成長しており、
前記第1の磁性層に含まれる磁性粒子と前記第2の磁性層に含まれる磁性粒子は、それぞれ、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層を貫く柱状晶である磁気記録媒体。
【請求項2】
前記第1の磁性層に含まれる磁性粒子の(111)面を覆う窒化ホウ素が、六方晶窒化ホウ素であり、
前記六方晶窒化ホウ素の(001)面が、前記(111)面と平行である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記粒界部の前記六方晶窒化ホウ素は、前記六方晶窒化ホウ素の前記(001)面が前記第2の磁性層に含まれる磁性粒子の側面を取り囲むように形成される請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層に含まれる、L1構造を有する磁性粒子が、FePt合金粒子である請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
前記製造方法は、スパッタリングにより前記第1の磁性層を形成する工程と、スパッタリングにより前記第2の磁性層を形成する工程との間に、スパッタリングにより窒化ホウ素層を形成する工程を含む磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気記録媒体を有する磁気記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体、磁気記録媒体の製造方法、磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録媒体に、近接場光又はマイクロ波を照射して局所的に加熱することで、保磁力を低下させて記録する熱アシスト記録方式又はマイクロ波アシスト記録方式が、2Tbit/inch程度の高い面記録密度を実現することができる次世代記録方式として注目されている。
【0003】
このようなアシスト記録方式の磁気ヘッドを用いると、室温における保磁力が数十kOeである磁気記録媒体に容易に記録できる。そして、磁気記録媒体の磁性層に含まれる磁性粒子として、例えば、結晶磁気異方性定数(Ku)が高い磁性粒子が用いられる。結晶磁気異方性定数(Ku)が高い磁性粒子は、熱安定性を維持したまま微細化することができ、室温における保磁力を高める。
【0004】
結晶磁気異方性定数(Ku)が高い磁性粒子としては、例えば、Fe-Pt合金粒子(Ku:最大で7×10J/m)、Co-Pt合金粒子(Ku:最大で5×10J/m)等のL1構造を有する磁性粒子が知られている。
【0005】
L1構造を有する磁性粒子を用いた磁性層としては、例えば、非特許文献1に、L1構造を有するFePt磁性粒子の周囲を六方晶窒化ホウ素の層状物で覆ったグラニュラー構造の磁性層が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】B. S. D. Ch. S. Varaprasad et al., AIP Advances, 13, 035002(2023)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、磁気記録媒体の面記録密度をさらに向上させることが望まれている。磁気記録媒体の面記録密度をさらに向上させるためには、磁性層に含まれる磁性粒子の粒径をさらに小さくすると共に、磁性粒子の異方性をさらに高めることが重要である。
【0008】
このような磁性層として、L1構造で(001)方向に配向したFePt磁性粒子と、その粒界部に六方晶窒化ホウ素を含むグラニュラー構造の磁性層(以下、単に、「FePt-hBNグラニュラー磁性層」とする。)が提案されている。
【0009】
六方晶窒化ホウ素は、(001)面が平行に積み重なった層状構造であるが、FePt磁性粒子の間に粒界部を形成易いので、FePt磁性粒子の粒径を小さくすることができる。また、六方晶窒化ホウ素は、FePt磁性粒子との反応性が低いので、磁性粒子の規則化を阻害しない。そして、このような六方晶窒化ホウ素は、その(001)面がFePt磁性粒子の側面を取り囲むように形成するのが好ましい。
【0010】
しかしながら、従来のFePt-hBNグラニュラー磁性層のように、グラニュラー構造を有する磁性層では、磁性粒子と粒界部とが相互に分離した層状物となり易く、グラニュラー構造とならない場合が多かった。また、BNのような粒界部の成分が十分結晶化せずアモルファスの状態である場合も多かった。そのため、グラニュラー構造を有する磁性層(グラニュラー磁性層)を用いても、磁気記録媒体の面記録密度の向上が図れない場合がある、という問題があった。
【0011】
本発明の一態様は、グラニュラー磁性層が内部にグラニュラー構造を形成した状態を安定的に維持し、面記録密度をさらに向上させた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の目的は次により実現できる。
【0013】
(1) 基板と、下地層と、第1の磁性層と、第2の磁性層を、この順で有し、
前記第1の磁性層は、L1構造を有する磁性粒子を含み、
前記第2の磁性層は、L1構造を有する磁性粒子と、六方晶窒化ホウ素を含む粒界部を有するグラニュラー構造を備え、
前記第1の磁性層に含まれる磁性粒子の(111)面は、前記第2の磁性層との界面において、窒化ホウ素で覆われ、
前記第2の磁性層に含まれる磁性粒子は、前記第1の磁性層に含まれる磁性粒子の(001)面よりエピタキシャル成長しており、
前記第1の磁性層に含まれる磁性粒子と前記第2の磁性層に含まれる磁性粒子は、それぞれ、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層を貫く柱状晶である磁気記録媒体。
(2) 前記第1の磁性層に含まれる磁性粒子の(111)面を覆う窒化ホウ素が、六方晶窒化ホウ素であり、
前記六方晶窒化ホウ素の(001)面が、前記(111)面と平行である(1)に記載の磁気記録媒体。
(3) 前記粒界部の前記六方晶窒化ホウ素は、前記六方晶窒化ホウ素の前記(001)面が前記第2の磁性層に含まれる磁性粒子の側面を取り囲むように形成される(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体。
(4) 前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層に含まれる、L1構造を有する磁性粒子が、FePt合金粒子である(1)~(3)の何れか一つに記載の磁気記録媒体。
(5) (1)~(4)の何れか一つに記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
前記製造方法は、スパッタリングにより前記第1の磁性層を形成する工程と、スパッタリングにより前記第2の磁性層を形成する工程との間に、スパッタリングにより窒化ホウ素層を形成する工程を含む磁気記録媒体の製造方法。
(6) (1)~(4)の何れか一つに記載の磁気記録媒体を有する磁気記憶装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、グラニュラー磁性層が内部にグラニュラー構造を形成した状態を安定的に維持し、面記録密度をさらに向上させた磁気記録媒体を提供することができる。
【0015】
本発明の他の態様によれば、グラニュラー磁性層が内部にグラニュラー構造を形成した状態を安定的に維持し、面記録密度をさらに向上させた磁気記録媒体の製造方法を提供することができる。
【0016】
また、本発明の他の態様によれば、高記録容量の磁気記憶装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る磁気記録媒体の層構成の一例を示す断面図である。
図2】第1の磁性層及び第2の磁性層の形成時の結晶成長を説明する断面模式図であり、(a)は従来の結晶成長を示す断面模式図、(b)は本発明の実施形態の結晶成長を示す断面模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る磁気記憶装置の一例を示す傾視図である。
図4図3の磁気ヘッドを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が同一であるとは限らない。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0019】
[磁気記録媒体]
図1に、本実施形態に係る磁気記録媒体の層構成の一例を示す。図1に示すように、磁気記録媒体1は、基板10と、下地層20と、第1の磁性層30と、第2の磁性層40を、この順に積層して備える。
【0020】
基板10は、磁気記録媒体1に一般的に用いられる基板を用いてよい。基板10としては、例えば、軟化温度が500℃以上、好ましくは600℃以上である耐熱ガラス基板を用いることが好ましい。磁気記録媒体1を製造する際に、基板10を500℃以上の温度に加熱する場合でも用いることができる。
【0021】
下地層20を構成する材料としては、第1の磁性層30、第2の磁性層40に含まれるL1構造を有する磁性粒子を(001)面配向させることが可能であれば、特に限定されない。
【0022】
下地層20は、多層構造を有していてもよい。
【0023】
下地層20は、NaCl型化合物を含むことが好ましい。
【0024】
NaCl型化合物しては、例えば、MgO、TiO、NiO、TiN、TaN、HfN、NbN、ZrC、HfC、TaC、NbC、TiC等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0025】
第1の磁性層30は、L1構造を有する磁性粒子を含む。
【0026】
第1の磁性層30を構成する、L1構造を有する磁性粒子としては、例えば、FePt合金粒子、CoPt合金粒子等が挙げられる。FePt合金粒子、CoPt合金粒子は、L1構造で(001)方向に配向した磁性粒子である。
【0027】
第1の磁性層30に含まれる磁性粒子は、第1の磁性層30を貫く形状を有する柱状晶である。
【0028】
第1の磁性層30に含まれる磁性粒子の粒径は、柱状であれば特に限定されず、例えば、円相当径で、3nm~7nmであればよい。なお、第1の磁性層30に含まれる磁性粒子の平均粒径は、平面透過型電子顕微鏡で観察することにより測定できる。
【0029】
第1の磁性層30に含まれる磁性粒子のアスペクト比は、第1の磁性層30の厚さによるが、例えば、柱状粒子の高さ(t)、円相当径(D)とした時、t/D=0.1~1.5であればよい。なお、アスペクト比とは、磁性粒子において、最も長い軸を最も短い軸で除した値である。磁性粒子のアスペクト比は、断面透過型電子顕微鏡で観察して測定した磁性粒子の粒子高さを、平面透過型電子顕微鏡で観察して測定した磁性粒子の平均粒径で除することにより求められる。
【0030】
第1の磁性層30に含まれる磁性粒子間の中心距離は、4.0nm~8.0nmであることが好ましい。第1の磁性層30に含まれる磁性粒子間の中心距離は、7.8nm以下であることがより好ましく、7.6nm以下であることがさらに好ましい。第1の磁性層30に含まれる磁性粒子間の中心距離が上記の好ましい範囲内であれば、第1の磁性層30に粒径が小さい磁性粒子を含めることができる。
【0031】
なお、磁性粒子間の中心距離とは、隣接する磁性粒子の重心同士の間の距離をいう。磁性粒子間の中心距離は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた表面観察像より、隣接する磁性粒子の重心同士の間の中心距離を算出することで測定できる。
【0032】
第2の磁性層40は、L1構造を有する磁性粒子と、粒界部を含むグラニュラー構造を有する磁性層(グラニュラー磁性層)であり、粒界部は、六方晶窒化ホウ素を含む。
【0033】
第2の磁性層40を構成する、L1構造を有する磁性粒子としては、例えば、FePt合金粒子、CoPt合金粒子等が挙げられる。
【0034】
第2の磁性層40に含まれる磁性粒子は、第1の磁性層30に含まれる磁性粒子と同様、第2の磁性層40を貫く形状を有する柱状晶である。
【0035】
第2の磁性層40に含まれる磁性粒子の粒径は、第1の磁性層30に含まれる磁性粒子と同様、柱状であれば特に限定されず、例えば、円相当径で、3nm~7nmであればよい。なお、第2の磁性層40に含まれる磁性粒子の平均粒径は、第1の磁性層30に含まれる磁性粒子と同様の方法で測定できる。
【0036】
第2の磁性層40に含まれる磁性粒子のアスペクト比は、第1の磁性層30に含まれる磁性粒子のアスペクト比と同様、第2の磁性層40の厚さによるが、例えば、t/D=1.2~2.5であればよい。なお、アスペクト比とは、柱状粒子の高さ(t)、円相当径(D)としてt/Dで求められる。第2の磁性層40に含まれる磁性粒子のアスペクト比は、第1の磁性層30に含まれる磁性粒子のアスペクト比の測定方法と同様の方法で測定できる。
【0037】
粒界部に含まれる六方晶窒化ホウ素は、(001)面が略平行に積み重なった層状構造であり、第2の磁性層40に含まれる磁性粒子との間に粒界部を形成し易いので、第2の磁性層40に含まれる磁性粒子の粒径を小さくすることができる。また、六方晶窒化ホウ素は、L1構造を有する磁性粒子との反応性が低いので、第2の磁性層40に含まれる磁性粒子の規則化を阻害しない。そのため、六方晶窒化ホウ素は、その(001)面が第2の磁性層40に含まれる磁性粒子の側面を取り囲むように形成するのが好ましい。
【0038】
従来の方法では、このようなグラニュラー磁性層を安定的に成膜するのは難しかった。即ち、磁性合金と窒化ホウ素との反応性は低いので、成膜中に両者が相互に分離した層状物となり、グラニュラー構造とならない場合が多かった。また、窒化ホウ素が結晶化せずにアモルファス化する場合も多かった。
【0039】
本願発明者らは、磁性層を基板10側から第1の磁性層30、第2の磁性層40の2層構造とし、第2の磁性層40の磁性粒子を第1の磁性層30の磁性粒子からエピタキシャル成長させることで、第2の磁性層40のグラニュラー構造を安定的に形成できることを見出した。
【0040】
この場合、第1の磁性層30の成長面における磁性粒子では、(001)面に加え、(111)面も形成しているため、第2の磁性層40の成膜時に、この(111)面に対して垂直方向への結晶成長が進行し、第2の磁性層40の磁性粒子が粗大化する。第2の磁性層40の磁性粒子の粗大化を防ぐため、本実施形態では、第1の磁性層30の(111)面を窒化ホウ素で覆うことで、第2の磁性層40の磁性粒子が粗大化を抑えることができる。この点について、図2を用いて詳細に説明する。
【0041】
図2は、第1の磁性層30及び第2の磁性層40の形成時の結晶成長を説明する断面模式図であり、(a)は、従来の第1の磁性層30及び第2の磁性層40の形成時の結晶成長を示す断面模式図であり、図2(b)は、本実施形態の第1の磁性層30及び第2の磁性層40の形成時の結晶成長を示す断面模式図である。図2(a)に示すように、基板10上に形成されるL1構造を有する第1の磁性層30を構成する磁性粒子31の成長面311Aには、基板10と平行の(001)面311Bと、(001)面311Bに対して成長面311A側(図2中、下側)に約35°傾いた(111)面311Cが形成される。(111)面311Cに第2の磁性層40(破線部)を成膜すると、第2の磁性層40の磁性粒子41は、磁性粒子31の(111)面311Cの垂直方向へも成長するため、磁性粒子41の粒径は粗大化する。
【0042】
一方、本実施形態では、図2(b)に示すように、第1の磁性層30の磁性粒子31の(111)面311Cを窒化ホウ素層50で覆う。これにより、第2の磁性層40(破線部)の磁性粒子41が粗大化することを抑制し、第1の磁性層30の磁性粒子31の(001)面311Bに、第2の磁性層40の磁性粒子41をエピタキシャル成長させて、磁性粒子31、41を第1の磁性層30と第2の磁性層40とを貫くような柱状晶とすることで、磁性粒子31、41は微細な粒径を維持できる。
【0043】
本実施形態では、窒化ホウ素層50は、窒化ホウ素を含む層であり、好ましくは、窒化ホウ素を50原子%以上含み、最も好ましくは窒化ホウ素のみから構成される。また、窒化ホウ素層50は、連続した膜ではなく、部分的に磁性粒子31及び磁性粒子41の間を貫かれた膜である。
【0044】
本実施形態では、第1の磁性層30に含まれる磁性粒子31の(111)面311Cを覆う窒化ホウ素層50を、六方晶窒化ホウ素とし、この六方晶窒化ホウ素の(001)面50Aを(111)面311Cと略平行とするのが好ましい。これにより、第1の磁性層30の磁性粒子31の(111)面311Cから第2の磁性層40の磁性粒子41が成長することを確実に抑制できる。
【0045】
本実施形態では、第2の磁性層40の粒界部である六方晶窒化ホウ素粒界部42を、その(001)面42Aが第2の磁性層40に含まれる磁性粒子41の側面411を取り囲むように形成するのが好ましい。これにより、第2の磁性層40の磁性粒子41が横に成長し、粗大化することが抑えられるので、磁性粒子41の粒径を小さくすることができる。
【0046】
六方晶窒化ホウ素粒界部42は、六方晶窒化ホウ素を含み、好ましくは、六方晶窒化ホウ素を50原子%以上含み、最も好ましくは六方晶窒化ホウ素のみから構成される。
【0047】
本実施形態では、第1の磁性層30に含まれる磁性粒子31の(111)面311Cを覆う窒化ホウ素層50は、その(001)面50Aが、磁性粒子31の(111)面311Cと略平行に形成され、第2の磁性層40の粒界部である六方晶窒化ホウ素粒界部42は、その(001)面42Aが第2の磁性層40に含まれる磁性粒子41の側面を取り囲むように形成されることが好ましい。そのため、六方晶窒化ホウ素粒界部42は、窒化ホウ素層50との界面42Bにおいて結晶方位を徐々に変えるように形成することが好ましい。
【0048】
第2の磁性層40中の六方晶窒化ホウ素粒界部42の含有量は、25体積%~50体積%の範囲内であるのが好ましく、35体積%~45体積%の範囲内であることがより好ましい。第2の磁性層40中の六方晶窒化ホウ素粒界部42の含有量が25体積%~50体積%の範囲内である場合は、磁気記録媒体1の保磁力HcJと、第1の磁性層30及び第2の磁性層40に含まれる磁性粒子31、41の異方性を高めることができる。
【0049】
第2の磁性層40中の六方晶窒化ホウ素粒界部42の含有量の測定方法は、特に限定されず、一般的な粒子中の体積の測定方法を用いることができるが、例えば、TEM―EELSにより粒界部の元素分析することにより求めることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、第1の磁性層30も、第2の磁性層40と同様に、グラニュラー構造としてよい。その場合の第1の磁性層30内の粒界部の含有量は、第2の磁性層40と同様としてよい。
【0051】
[磁気記録媒体の製造方法]
磁気記録媒体1の製造方法の一例を説明する。磁気記録媒体1の製造方法は、スパッタリングにより第1の磁性層30を形成する工程と、第1の磁性層30の主表面の上に、窒化ホウ素をスパッタリングにより窒化ホウ素層を形成する工程と、窒化ホウ素層の主表面の上に、スパッタリングにより第2の磁性層40を形成する工程とを含む。即ち、磁気記録媒体1は、スパッタリングにより第1の磁性層30を形成する工程と、スパッタリングにより第2の磁性層40を形成する工程との間に、スパッタリングにより窒化ホウ素層を形成する工程を含み、第1の磁性層30と第2の磁性層40との間に窒化ホウ素層を設けることで、製造される。このような製造方法を用いることで、第1の磁性層30の成長面における磁性粒子31の(111)面311Cを窒化ホウ素層50で覆うことができるので、第2の磁性層40の磁性粒子41が粗大化することを抑制できる。
【0052】
磁気記録媒体1の製造方法は、窒化ホウ素のスパッタリング条件を適宜選択することで、窒化ホウ素を磁性粒子31の(111)面311Cのみに選択的に成膜することができる。また、磁気記録媒体1の製造方法は、窒化ホウ素層50の(001)面50Aが磁性粒子31の(111)面311Cと略平行となるように成膜できる。
【0053】
このような成膜法としては、例えば、2Pa以下の放電ガス圧を使用し、RF放電を用い、ターゲット表面電位を50V~200Vとし、成膜後加熱(ポストアニール)を行い、その温度を成膜時温度に対して100℃ほど高くなるようにする方法等がある。
【0054】
また、磁性粒子31の全面を覆うように窒化ホウ素層50を成膜した後、その表面をエッチングして、磁性粒子31の(001)面311Bに析出した六方晶窒化ホウ素だけを取り除き、六方晶窒化ホウ素が(111)面311Cのみを覆うようにしてもよい。
【0055】
窒化ホウ素のスパッタリング成膜にRF放電を用いた場合は、DC放電を用いる場合に比べ、プラズマが基板10に与える影響が大きく、スパッタリング時に窒化ホウ素から分離して発生した窒素が基板に取り込まれ易くなる。窒素は成膜温度である400℃以上では気体であるため、成膜後のポストアニール温度を高めると、窒素は磁性粒子31の表面から脱気しようとする。この際、窒化ホウ素のスパッタリング時に窒化ホウ素から窒素が分離することで発生した金属ホウ素は、第1の磁性層30の磁性粒子31のスパッタ時に粒子内部にマイグレーションするが、同じくポストアニールによって表面に析出する。磁性粒子31の表面から脱気しようとする窒素が、磁性粒子31の表面に析出したホウ素と再結合することで、六方晶窒化ホウ素を形成し易くなる。
【0056】
第1の磁性層30及び第2の磁性層40に含まれる磁性粒子31、41は、柱状晶を形成するため、基板10に対して、c軸配向、即ち、(001)面配向性を高めることが好ましい。
【0057】
第1の磁性層30及び第2の磁性層40に含まれる磁性粒子31、41を、基板10に対して、c軸配向させる方法としては、例えば、下地層20を用いて、第1の磁性層30及び第2の磁性層40をc軸方向にエピタキシャル成長させる方法等が挙げられる。
【0058】
第1の磁性層30の下、又は第2の磁性層40の上に、さらに別の磁性層を設けてもよい。新たに設ける別の磁性層は、第1の磁性層30と同様に、L1構造を有する磁性粒子を含むことが好ましい。また、その磁性粒子は、磁性粒子31、41と柱状晶を形成することが好ましい。
【0059】
よって、磁気記録媒体1の製造方法を用いることで、図1に示す磁気記録媒体1が得られる。
【0060】
磁気記録媒体1は、第1の磁性層30、第2の磁性層40の上に、保護層をさらに有することが好ましい。
【0061】
保護層としては、例えば、硬質炭素膜等が挙げられる。
【0062】
保護層の形成方法としては、例えば、炭化水素ガス(原料ガス)を高周波プラズマで分解して成膜するRF-CVD(Radio Frequency-Chemical Vapor Deposition)法、フィラメントから放出された電子で原料ガスをイオン化して成膜するIBD(Ion Beam Deposition)法、原料ガスを用いずに、固体炭素ターゲットを用いて成膜するFCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)法等が挙げられる。
【0063】
保護層の厚さは、1nm~6nmであることが好ましい。保護層の厚さが1nm以上であると、磁気ヘッドの浮上特性が良好となり、6nm以下であると、磁気スペーシングが小さくなり、磁気記録媒体1のSNR(信号/ノイズ比(S/N比))が向上する。
【0064】
なお、本明細書において、保護層の厚さとは、保護層の主面に垂直な方向の長さをいう。保護層の厚さは、例えば、保護層の断面において、任意の場所を測定した時の厚さである。保護層の断面において、任意の場所で数カ所測定した場合は、これらの測定箇所の厚さの平均値としてもよい。他の層も保護層の厚さと同様の測定方法を用いることができる。
【0065】
磁気記録媒体1は、保護層上に、潤滑剤層をさらに有していてもよい。
【0066】
潤滑剤層は、液体潤滑剤層を用いて形成できる。液体潤滑剤には、化学的に安定で、低摩擦で、低吸着性を有するものが好適に用いられる。液体潤滑剤としては、例えば、パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含むパーフルオロポリエーテル系潤滑剤等のフッ素樹脂系潤滑剤が挙げられる。
【0067】
潤滑剤層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1nm~3nmとしてよい。
【0068】
なお、磁気記録媒体1は、保護層及び潤滑剤層の他に、適宜任意の層を含んでもよい。例えば、磁気記録媒体1は、基板10、下地層20及び第1の磁性層30の何れかの層同士の間に、密着層、軟磁性下地層、配向制御層等を必要に応じて適宜備えてよい。軟磁性下地層は、例えば、第1軟磁性層、中間層及び第2軟磁性層を含んで構成されてもよい。配向制御層は、1層でもよいし、2層(例えば、第1の配向制御層、第2の配向制御層等)以上でもよい。密着層、軟磁性下地層、配向制御層等を形成する材料は、磁気記録媒体に使用される一般的な材料を用いることができる。
【0069】
このように、磁気記録媒体1は、基板10、下地層20、第1の磁性層30及び第2の磁性層40をこの順で有し、第1の磁性層30は、L1構造を有する磁性粒子31を含み、第2の磁性層40は、L1構造を有する磁性粒子41と六方晶窒化ホウ素粒界部42を含むグラニュラー磁性層とし、六方晶窒化ホウ素粒界部42に六方晶窒化ホウ素を含んでいる。そして、磁性粒子31の(111)面311Cは、第2の磁性層40との界面が窒化ホウ素で覆われ、磁性粒子41は磁性粒子31の(001)面311Bよりエピタキシャル成長している。さらに、磁性粒子31及び41は、第1の磁性層30及び第2の磁性層40を貫く柱状晶となるように形成されている。このため、磁性粒子31及び41の粒径は小さく微少であり、磁性粒子31及び41は、柱状に一方向に向かって連続して形成されている。
【0070】
磁気記録媒体1は、第1の磁性層30及び第2の磁性層40に含まれるそれぞれの磁性粒子31及び41の粒径を小さくすると共に、磁性粒子31及び41を同一方向に連続してつながった状態で含むことで異方性を高めることができる。よって、磁気記録媒体1は、第2の磁性層40の内部にグラニュラー構造を形成した状態を安定的に維持し、第2の磁性層40をグラニュラー磁性層として安定的に含むことができるので、面記録密度をさらに向上させることができる。
【0071】
磁気記録媒体1は、上記のような特性を有することにより、記録方式として熱アシスト記録方式又はマイクロ波アシスト記録方式を用いても、第1の磁性層30及び第2の磁性層40は、高い記録密度を有するため、第1の磁性層30及び第2の磁性層40に、磁気ヘッドの記録磁界によって、磁気情報を十分に記録することができる。よって、磁気記録媒体1は、更に高い記録密度を有する磁気記録再生装置に好適に用いることができる。
【0072】
[磁気記憶装置]
本実施形態に係る磁気記録媒体を備える磁気記憶装置について説明する。本実施形態に係る磁気記憶装置は、本実施形態に係る磁気記録媒体を有していれば、形態は特に限定されない。なお、ここでは、磁気記憶装置が熱アシスト記録方式を用いて磁気情報を磁気記録媒体に記録する場合について説明する。
【0073】
本実施形態に係る磁気記憶装置は、例えば、本実施形態に係る磁気記録媒体を駆動して、回転させる磁気記録媒体駆動部と、先端部に近接場光発生素子が設けられている磁気ヘッドと、磁気ヘッドを駆動して、移動させる磁気ヘッド駆動部と、記録再生信号処理系を有してよい。
【0074】
磁気ヘッドは、熱アシスト記録方式の磁気ヘッドであり、例えば、レーザー光を発生させて、磁気記録媒体を加熱するレーザー光発生部と、レーザー光発生部から発生したレーザー光を近接場光発生素子まで導く導波路を有する。
【0075】
図3に、本実施形態に係る磁気記録媒体を用いた磁気記憶装置の一例の斜視図を示す。図3に示すように、磁気記憶装置100は、磁気記録媒体101と、磁気記録媒体101を回転させるための磁気記録媒体駆動部102と、先端部に近接場光発生素子を備えた磁気ヘッド103と、磁気ヘッド103を移動させるための磁気ヘッド駆動部104と、記録再生信号処理部105を有することができる。磁気記録媒体101は、上述の磁気記録媒体1が用いられる。
【0076】
図4に、磁気ヘッド103の一例を模式的に示す。図4に示すように、磁気ヘッド103は、記録ヘッド110と、再生ヘッド120を有する。
【0077】
記録ヘッド110は、主磁極111と、補助磁極112と、磁界を発生させるコイル113と、レーザー光を発生させるレーザーダイオード(LD)114と、LD114から発生したレーザー光Lを近接場光発生素子115まで導く導波路116を有する。
【0078】
再生ヘッド120は、シールド121と、シールド121で挟まれている再生素子122を有する。
【0079】
図3に示すように、磁気記憶装置100は、磁気記録媒体101の中心部をスピンドルモータの回転軸に取り付けて、スピンドルモータにより回転駆動される磁気記録媒体101の面上を磁気ヘッド103が浮上走行しながら、磁気記録媒体101に対して情報の書き込み又は読み出しを行う。
【0080】
本実施形態に係る磁気記憶装置100は、磁気記録媒体101に磁気記録媒体1を用いることで、磁気記録媒体101の面記録密度を高めることができるため、磁気記録媒体101の記録容量を高めることができる。
【0081】
なお、磁気記憶装置は、磁気ヘッド103に、熱アシスト記録方式の磁気ヘッドに代えて、マイクロ波アシスト記録方式の磁気ヘッドを用いてもよい。
【0082】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例0083】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0084】
<磁気記録媒体の製造>
(実施例1)
ガラス基板上に、下地層として、スパッタリング法で、厚さ100nmのCr-50at%Ti合金層と、厚さ30nmのCo-27at%Fe-5at%Zr-5at%B合金層とを順次形成した。次に、ガラス基板を250℃まで加熱した後、スパッタリング法で、厚さ10nmのCr層と、厚さ5nmのMgO層とを順次形成した。次に、ガラス基板を450℃まで加熱した後、スパッタリング法で、厚さ0.5nmの(Fe-48at%Pt-5at%B)合金層(第1の磁性層)を形成した。
【0085】
その後、(111)面被覆層として厚さ0.5nmの窒化ホウ素膜を、RFスパッタリング法で成膜した。成膜条件は、ターゲット表面電位を100V、成膜レートを0.08nm/秒とし、成膜時温度に対してポストアニール温度が100℃ほど高くなるように成膜した。
【0086】
その後、0.5Paのアルゴン雰囲気、7Wでエッチング処理を行った。
【0087】
これにより、磁性層の磁性粒子の(111)面を六方晶窒化ホウ素で覆い、またこの六方晶窒化ホウ素の(001)面が磁性粒子の(111)面と略平行となる構造とした。
【0088】
その後、スパッタリング法で、厚さ13nmの(Fe-49at%Pt)-40体積%六方晶窒化ホウ素層(第2の磁性層)を順次形成した。次に、保護層として、厚さ3nmのカーボン膜を形成し、磁気記録媒体を作製した。
【0089】
第1の磁性層の組成及び被覆条件と、第2の磁性層の組成を表1に示す。
【0090】
(実施例2~7、比較例1~8)
第1の磁性層の被覆条件を表1に示す被覆条件に変更した以外は、実施例1と同様に磁気記録媒体を作製した。
【0091】
<磁気記録媒体の評価>
各実施例及び各比較例で製造した磁気記録媒体の評価を行った。評価は、第1磁性層の磁性粒子の(111)面の被覆状態及び六方晶窒化ホウ素hBNの結晶性の確認と、磁気記録媒体の保磁力Hcと第1磁性層の磁性粒子間の中心距離との測定とを行った。
【0092】
(第1磁性層の磁性粒子の(111)面の被覆状態)
第1磁性層の磁性粒子の(111)面の被覆状態は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテク製)を用いて磁気記録媒体の断面を観察して評価した。
【0093】
(六方晶窒化ホウ素hBNの結晶性)
第1磁性層の六方晶窒化ホウ素hBNの結晶性は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテク製)を用いて磁気記録媒体の断面を観察して、格子縞の観察により評価した。結晶性の物質を電子顕微鏡で観察すると格子間隔で格子縞が観察できるため、透過型電子顕微鏡で磁気記録媒体の断面を観察し、格子縞を観察することにより、第1磁性層の六方晶窒化ホウ素hBNの結晶性を確認できる。六方晶窒化ホウ素hBNの結晶性が良好であれば、第2磁性層の内部にグラニュラー構造を形成した状態を安定的に維持し、第2磁性層はグラニュラー磁性層として機能していると評価できる。
【0094】
(磁気記録媒体の保磁力Hc)
磁気記録媒体の保磁力Hcは、超伝導Kerr測定装置(ネオアーク製)を用い、レーザー光(波長408nm)を磁気記録媒体の主表面に照射した際のKerr回転角を測定することにより評価した。保磁力Hcは、第1磁性層及び第2磁性層の磁性粒子の結晶性を反映し、第1磁性層及び第2磁性層の結晶構造が乱れると、保磁力Hcが低下すると考えられる。そのため、保磁力Hcが高いほど、第1磁性層及び第2磁性層の結晶性は高く、面記録密度を向上させることができると評価できる。
【0095】
(第1磁性層の磁性粒子間の中心距離)
第1磁性層の磁性粒子間の中心距離は、SEMで得られた表面観察像より、第1磁性層の隣接する磁性粒子の重心同士の間の中心距離を算出することで得た。磁性粒子間の中心距離が小さいほど、磁性粒子の粒径も小さいと評価できる。そのため、第1磁性層の磁性粒子間の中心距離が小さいほど、第1磁性層の磁性粒子の粒径は小さく、面記録密度を向上させることができると評価できる。なお、磁性粒子の粒径の評価に際しては、磁気記録媒体表面のカーボン保護膜を除去するため、1分間のアルゴンエッチング処理を行った。
【0096】
第1磁性層の磁性粒子の(111)面の被覆状態と六方晶窒化ホウ素hBNの結晶性との評価結果と、磁気記録媒体の保磁力Hcと第1磁性層の磁性粒子間の中心距離との測定結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1より、各実施例の磁気記録媒体は、高い保磁力Hcを有することが確認された。よって、第1磁性層の磁性粒子の(111)面を六方晶窒化ホウ素hBNで被覆し、六方晶窒化ホウ素hBNの結晶性を良好とすれば、第1の磁性層及び第2の磁性層に含まれる磁性粒子の粒径を小さくすることができ、第2の磁性層は、その内部にグラニュラー構造を形成した状態を維持し、グラニュラー磁性層として機能できることが確認された。したがって、各実施例の磁気記録媒体は、高い面記録密度を有するため、磁気記憶装置に用いることで、高い記録容量を有することができるといえる。
【符号の説明】
【0099】
1、101 磁気記録媒体
10 基板
20 下地層
30 第1の磁性層
31、41 磁性粒子
40 第2の磁性層
42 六方晶窒化ホウ素粒界部(粒界部)
50 窒化ホウ素層
100 磁気記憶装置
311A 成長面
42A、50A、311B (001)面
311C (111)面
図1
図2
図3
図4