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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025176749
(43)【公開日】2025-12-05
(54)【発明の名称】車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20251128BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20251128BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083020
(22)【出願日】2024-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀本 英司
(72)【発明者】
【氏名】棗 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】塚本 英行
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB12
3D203CA25
3D203CA53
3D203CA66
3D203CB09
3D203DB05
3D235AA01
3D235BB05
3D235BB06
3D235BB25
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235EE64
3D235FF07
3D235FF09
3D235FF12
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】サイドシルに対して車幅方向の外側から側突荷重が入力された場合にも、サイドシルとバッテリとの固定が外れるのを抑制することができる車両の下部構造を提供する。
【解決手段】車両は、一対のサイドシル10、クロスメンバ11、バッテリ12、および補強部材13を備える。バッテリ12は、クロスメンバ11の下方に配され、バッテリフレーム120を有する。補強部材13は、サイドシル10の中空部10aに収容されるとともに、閉断面構造で構成された本体部130を有し、車幅方向の一方側からの側面視において本体部130がクロスメンバ11と重複する領域に配されている。サイドシル10とバッテリフレーム120および補強部材13ととは、ボルトBLT1とナットNT1との螺合により固定されている。ボルトBLT1は、ブラケット131を挿通して、補強部材13の本体部130側に向けて先端側部分が貫入している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアにおける車幅方向両外側に配設されるとともに、それぞれが前記車両の前後方向に延び、且つ、内部に中空部を有する閉断面構造で構成された一対のサイドシルと、
車幅方向に延びるとともに、前記一対のサイドシルに両端が固定されたクロスメンバと、
前記車両のフロア下における前記クロスメンバの下方に配置されるとともに、前記一対のサイドシルの車幅方向内側で前記車両の前後方向に延びるバッテリフレームを有するバッテリと、
前記一対のサイドシルのそれぞれにおける前記中空部に収容されるとともに、閉断面構造で構成された部分を少なくとも一部に有し、且つ、車幅方向の一方側からの側面視において前記閉断面構造で構成された部分が前記クロスメンバと重複する領域に配された補強部材と、
前記バッテリフレームを前記一対のサイドシルに固定する固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記補強部材に対して一部が貫入し、前記補強部材とともに前記バッテリフレームを前記サイドシルに固定するように配設されている、
車両の下部構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記閉断面構造で構成された部分を有する本体部と、前記本体部の下方に配置されたブラケットと、を備え、
前記固定部材は、前記ブラケットに対して一部が貫入するとともに、当該ブラケットを前記バッテリフレームに固定するように配設されている、
請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記本体部に対しても一部が貫入するように配設されている、
請求項2に記載の車両の下部構造。
【請求項4】
前記固定部材は、前記本体部に対して貫入する部分が棒形状を有し、
前記本体部は、前記固定部材の前記一部が貫入する部分に、前記棒形状の断面サイズよりも大きなサイズを有する開口を有する、
請求項3に記載の車両の下部構造。
【請求項5】
前記サイドシルは、当該サイドシルの外壁の一部が前記ブラケットと前記バッテリフレームとの間に挟持された状態で前記バッテリフレームに固定されている、
請求項2に記載の車両の下部構造。
【請求項6】
前記本体部は、車幅方向の内側および外側の少なくとも一方において、前記サイドシルに固定されている、
請求項2に記載の車両の下部構造。
【請求項7】
前記ブラケットは、前記本体部に固定されている、
請求項2に記載の車両の下部構造。
【請求項8】
前記バッテリフレームは、少なくとも一部に閉断面構造を有する部分を備え、
前記固定部材は、前記バッテリフレームにおける前記閉断面構造を有する部分を前記サイドシルおよび前記補強部材に固定する、
請求項1から請求項7の何れかに記載の車両の下部構造。
【請求項9】
前記固定部材は、前記バッテリフレームにおける前記閉断面構造を有する部分から前記補強部材に向けて前記車両の上下方向における上方に向けて延びるように配設されている、
請求項8に記載の車両の下部構造。
【請求項10】
前記一対のサイドシルのそれぞれは、車幅方向外側に配されるサイドシルアウタと、車幅方向内側に配されるとともに前記サイドシルアウタに固定されるサイドシルインナとを備え、
前記バッテリフレームおよび前記補強部材は、前記固定部材により前記サイドシルインナに固定されている、
請求項1から請求項7の何れかに記載の車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部構造に関し、特にフロア下にバッテリが配設されてなる車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、バッテリ式電気自動車(BEV)やハイブリッド式電気自動車(HEV)などが急速に普及してきている。このような車両では、フロア下に大型で大容量なバッテリが搭載される。特許文献1に開示の車両でのバッテリの搭載形態について、図8を用いて説明する。
【0003】
図8に示すように、特許文献1の車両では、サイドシル90の下部にバッテリ92のバッテリフレーム920が固定されている。具体的に、サイドシル90は、車幅方向外側のサイドシルアウタ900と、車幅方向内側のサイドシルインナ901との組み合わせで構成されており、バッテリフレーム920は、サイドシルインナ901の下壁部901cにボルトBLT9とナットNT9との螺合により固定されている。
【0004】
サイドシル90のサイドシルインナ901には、車幅方向の反対側のサイドシル90との間を繋ぐように設けられるクロスメンバ91も固定される。クロスメンバ91は、バッテリ92の上方に配置される。
【0005】
また、特許文献1の車両において、サイドシル90の内方に形成された中空部90aには、スティフナ(補強部材)93が収容されている。スティフナ93は、平板状の中壁部材930と、ともに断面形状がハット形状をした外側部材931および内側部材932とで構成されている。スティフナ93は、中壁部材930の上縁部がサイドシルアウタ900の上フランジ部900aとサイドシルインナ901の上フランジ部901aとの間に挟持され、下縁部がサイドシルアウタ900の下フランジ部900bとサイドシルインナ901の下フランジ部901bとの間に挟持されることにより、サイドシル90に固定されている。
【0006】
特許文献1の車両では、中空部90a内において、スティフナ93における内側部材932が、車幅方向外側から内側へと行くのに従って上方へとシフトするように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-131133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示の構造では、車幅方向の一方側のサイドシル90に対して側突荷重が入力された場合に、車幅方向の他方側のサイドシル90とバッテリ92との固定が外れてしまうことが懸念される。これについて、図9を用いて説明する。図9には、車両の右方から右側のサイドシル90Rに側突荷重Fが入力された場合のサイドシル90L,90R、クロスメンバ91、およびバッテリ92の挙動を示す。
【0009】
図9に示すように、車両の右方から右側のサイドシル90Rに側突荷重Fが入力された場合には、矢印B1で示すように右側のサイドシル90Rによりクロスメンバ91が左方に向けて押圧される。押圧されたクロスメンバ91は、右側のサイドシル90Rの変形量に応じて左方に向けて変位する(矢印B2)。これにより、側突荷重Fは、クロスメンバ91を介して左方のサイドシル90Lに伝達される。
【0010】
ここで、フロア下に搭載されるバッテリ92は、大型で重量が重いため、慣性によりその場に留まろうとする。これより、バッテリ92には、クロスメンバ91や左側のサイドシル90Lに対して相対的に逆向きの変位(右向きの変位)が生じることになる。よって、矢印B3で示すように、側突荷重Fが入力された側とは反対側において(左側において)、左側のサイドシル90Lとバッテリ92との固定が破断などにより外れてしまうことが懸念される。
【0011】
なお、上記では、車幅方向の右側から側突荷重Fが入力された場合について説明したが、車幅方向の左側から側突荷重が入力された場合には、右側のサイドシル90Rとバッテリ92との固定が外れてしまうことが懸念される。
【0012】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、サイドシルに対して車幅方向の外側から側突荷重が入力された場合にも、サイドシルとバッテリとの固定が外れるのを抑制することができる車両の下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る車両の下部構造は、一対のサイドシルと、クロスメンバと、バッテリと、補強部材と、固定部材と、を備える。前記一対のサイドシルは、車両のフロアにおける車幅方向両外側に配設されるとともに、それぞれが前記車両の前後方向に延び、且つ、内部に中空部を有する閉断面構造で構成されている。前記クロスメンバは、車幅方向に延びるとともに、前記一対のサイドシルに両端が固定されている。前記バッテリは、前記車両のフロア下における前記クロスメンバの下方に配置されるとともに、前記一対のサイドシルの車幅方向内側で前記車両の前後方向に延びるバッテリフレームを有する。前記補強部材は、前記一対のサイドシルのそれぞれにおける前記中空部に収容されるとともに、閉断面構造で構成された部分を少なくとも一部に有し、且つ、車幅方向の一方側からの側面視において前記閉断面構造で構成された部分が前記クロスメンバと重複する領域に配されている。前記固定部材は、前記バッテリフレームを前記一対のサイドシルに固定する。
【0014】
本態様に係る車両の下部構造において、前記固定部材は、前記補強部材に対して一部が貫入し、前記補強部材とともに前記バッテリフレームを前記サイドシルに固定するように配設されている。
【0015】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、補強部材における閉断面構造で構成された部分が上記側面視でクロスメンバと重複する領域に配されているので、サイドシルに対して車幅方向外側から入力された側突荷重がクロスメンバに高効率に伝達される。また、荷重が入力された側とは車幅方向の反対側においても、クロスメンバに対して上記側面視で重複する領域に補強部材が配されているので、クロスメンバを介して伝達されてきた荷重が補強部材を介して効率的にサイドシルへと伝達される。
【0016】
また、上記態様に係る下部構造が適用される車両では、固定部材により補強部材とバッテリフレームとがサイドシルに固定されている。このため、上記のようにサイドシルに対して車幅方向外側から側突荷重が入力された場合においても、バッテリフレームもクロスメンバとともに荷重が入力されたのとは反対側に向けて変位する。よって、上記態様の車両では、一方のサイドシルに側突荷重が入力された場合においても、荷重が入力されたのとは反対側のサイドシルとバッテリとの固定が外れるのを抑制することができる。
【0017】
なお、電気自動車等でフロア下に搭載されるバッテリは大容量で大型で、重量も重いため、バッテリフレームは高い剛性をもって形成されている。このため、固定部材を介して荷重伝達されたバッテリフレームがクロスメンバよりも大きく変形・破損することは生じ難く、側突荷重が入力された場合にクロスメンバとバッテリフレームとの間で相対的な変位の差異は生じ難い。
【0018】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記補強部材は、前記閉断面構造で構成された部分を有する本体部と、前記本体部の下方に配置されたブラケットと、を備え、前記固定部材は、前記ブラケットに対して一部が貫入するとともに、当該ブラケットを前記バッテリフレームに固定するように配設されている、との構成を採用してもよい。
【0019】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、補強部材において、本体部が閉断面構造で構成された部分を有し、ブラケットで固定部材により固定がなされる構成としているので、側突荷重が入力された場合における補強部材の高い剛性を確保しつつ、バッテリフレームと補強部材との固定が確実になされる。
【0020】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記固定部材は、前記本体部に対しても一部が貫入するように配設されている、との構成を採用してもよい。
【0021】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、固定部材の一部が補強部材の本体部に対しても貫入するように配設されているので、サイドシルに対して側突荷重が入力された場合に、荷重が入力された側とは反対側に向けてクロスメンバとともにバッテリフレームをより確実に変位させることができる。
【0022】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記固定部材は、前記本体部に対して貫入する部分が棒形状を有し、前記本体部は、前記固定部材の前記一部が貫入する部分に、前記棒形状の断面サイズよりも大きなサイズを有する開口を有する、との構成を採用してもよい。
【0023】
上記態様に係る下部構造が適用押される車両では、補強部材における本体部に上記のようなサイズの開口が設けられており、固定部材の棒形状を有する部分が該開口を通り貫入している。即ち、上記態様では、サイドシルに対して側突荷重が入力されない状態では、固定部材と本体部の開口の内周面とは接触していない状態であり、車両の走行時の振動などで固定部材と開口の内周面との衝突による騒音の発生を抑制することができる。一方、サイドシルに側突荷重が入力され、補強部材がサイドシルの変形や変位に伴って変位した場合には、固定部材の棒形状を有する部分の外面と開口の内周面とが当接する。これより、サイドシルに入力された側突荷重の一部は固定部材を介してバッテリフレームにも伝達され、側突時にバッテリフレームをクロスメンバとともに変位させることができる。
【0024】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記サイドシルは、当該サイドシルの外壁の一部が前記ブラケットと前記バッテリフレームとの間に挟持された状態で前記バッテリフレームに固定されている、との構成を採用してもよい。
【0025】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、サイドシルの外壁の一部が補強部材のブラケットとバッテリフレームとの間に挟持され、当該状態で固定部材によりサイドシルと補強部材とバッテリフレームとが固定されている。このため、バッテリフレームをサイドシルおよび補強部材に対して強固に固定することができる。即ち、サイドシルの外壁が補強部材のブラケットあるいはバッテリフレームとの間に隙間が空いた状態で固定されている場合に比べて、車幅方向外側から側突荷重が入力された場合に互いの間の面接触による抵抗によりクロスメンバとバッテリフレームとの間で変位の差異が生じ難い。よって、一方のサイドシルに側突荷重が入力された場合においても、荷重が入力されたのとは反対側のサイドシルとバッテリとの固定が外れるのを抑制するのにさらに有効である。
【0026】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記本体部は、車幅方向の内側および外側の少なくとも一方で、前記サイドシルに固定されている、との構成を採用してもよい。
【0027】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、補強部材における閉断面構造を有する部分を含む本体部がサイドシルに固定されているので、サイドシルに対して側突荷重が入力された場合に補強部材の本体部がサイドシルとともに車幅方向内側に向けて変位する。よって、サイドシルとともに変位した補強部材の本体部によってクロスメンバに荷重伝達がなされるとともに、固定部材を介してバッテリフレームにも確実に荷重伝達がなされる。
【0028】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記ブラケットは、前記本体部に固定されている、との構成を採用してもよい。
【0029】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、ブラケットが本体部に固定されているので、サイドシルに対して側突荷重が入力された場合に、本体部とブラケットとの間での車幅方向における変位の相対的な差異が生じ難い。よって、一方のサイドシルに側突荷重が入力された場合においても、荷重が入力されたのとは反対側のサイドシルとバッテリとの固定が外れるのを抑制するのにさらに有効である。
【0030】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記バッテリフレームは、少なくとも一部に閉断面構造を有する部分を備え、前記固定部材は、前記バッテリフレームにおける前記閉断面構造を有する部分を前記サイドシルおよび前記補強部材に固定する、との構成を採用してもよい。
【0031】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、バッテリフレームにおける閉断面構造を有する部分でサイドシルおよび補強部材に固定がなされているので、サイドシルに側突荷重が入力された場合にバッテリフレームが大きく変形するのが抑制される。よって、一方のサイドシルに側突荷重が入力された場合においても、荷重が入力されたのとは反対側のサイドシルとバッテリとの固定が外れるのを抑制するのにさらに有効である。
【0032】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記固定部材は、前記バッテリフレームにおける前記閉断面構造を有する部分から前記補強部材に向けて前記車両の上下方向における上方に向けて延びるように配設されている、との構成を採用してもよい。
【0033】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、固定部材が上下方向に延びるように配設されているので、バッテリを車両の下方から上方に上昇させてバッテリフレームをサイドシルおよび補強部材に固定することができる。即ち、バッテリの搭載に際して煩雑な作業が必要ない。
【0034】
また、サイドシルに側突荷重が入力された場合には、上下方向に延びる固定部材を介してバッテリフレームに対して荷重伝達が可能となる。
【0035】
上記態様に係る車両の下部構造において、前記一対のサイドシルのそれぞれは、車幅方向外側に配されるサイドシルアウタと、車幅方向内側に配されるとともに前記サイドシルアウタに固定されるサイドシルインナとを備え、前記バッテリフレームおよび前記補強部材は、前記固定部材により前記サイドシルインナに固定されている、との構成を採用してもよい。
【0036】
上記態様に係る下部構造が適用される車両では、バッテリフレームおよび補強部材がサイドシルインナに対して固定されているので、サイドシルの一部に側突荷重が入力された場合にもサイドシルインナとフロアパネルなどの車体との接合箇所(溶接による接合箇所など)が外れてしまうのを抑制することができる。即ち、サイドシルに側突荷重が入力された場合には、上下方向からの平面視でサイドシルがくの字に変形しようとするが、サイドシルおよび補強部材が高い剛性を有するバッテリフレームに固定されているので、バッテリフレームからの反力によりサイドシルがくの字に変形するのが抑制される。よって、サイドシルの一部に側突荷重が入力されてサイドシルと車体との接合箇所が外れてしまうのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0037】
上記の各態様に係る下部構造が適用される車両では、サイドシルに対して車幅方向の外側から側突荷重が入力された場合にも、サイドシルとバッテリとの固定が外れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る下部構造が適用された車両の一部構成を示す平面図である。
図2図1のII-II線断面を示す断面図である。
図3】補強部材の一部構成を示す斜視図である。
図4】ブラケットの構成を示す斜視図である。
図5】側突荷重が一方のサイドシルに入力された場合のクロスメンバおよびバッテリの動きを説明するための模式図である。
図6】変形例1に係る下部構造を示す断面図である。
図7】変形例2に係る下部構造を示す断面図である。
図8】従来技術に係る下部構造を示す断面図である。
図9】従来技術に係る下部構造において、側突荷重がサイドシルに入力された場合のクロスメンバおよびバッテリの動きを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0040】
また、以下の説明で用いる図においいて、「FR」は車両前方、「RR」は車両後方、「LH」は車両左方、「RH」は車両右方、「UP」は車両上方、「LO」は車両下方を示す。
【0041】
[実施形態]
1.車両1の構成
本実施形態に係る下部構造が適用される車両1の構成について、図1を用いて説明する。なお、図1では、車両1の構成の一部だけを図示しており、パワートレインなどについては図示を省略している。
【0042】
図1に示すように、車両1は、前部にパワートレインが搭載されるパワートレイン搭載部1aを備え、パワートレイン搭載部1aよりも後方に乗員が乗車するフロア部1bを備える。フロア部1bには、一対のサイドシル10と、複数のクロスメンバ11と、バッテリ12と、が配設されている。
【0043】
一対のサイドシル10は、フロア部1bの車幅方向両側に配設されるとともに、それぞれが前後方向に延びるように形成されている。複数のクロスメンバ11は、それぞれが車幅方向に延び、一対のサイドシル10に両端が固定されている。バッテリ12は、図示を省略するパワートレインとの間で電力を送受する。
【0044】
なお、バッテリ12は、リチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリなどで構成されたバッテリセルを備える。
【0045】
2.サイドシル10とクロスメンバ11およびバッテリ12との固定構造
サイドシル10とクロスメンバ11およびバッテリ12との固定構造について、図2から図4を用いて説明する。なお、図2では、車幅方向右側のサイドシル10およびその周辺構造だけを図示しているが、左側のサイドシル10およびその周辺構造についての左右が反転することを除いて右側と同じ構造を有する。
【0046】
図2に示すように、サイドシル10は、内部に中空部10aを有する閉断面構造で構成されている。具体的に、サイドシル10は、ともにハット断面形状を有するサイドシルアウタ100とサイドシルインナ101とが、互いの上フランジ部100a,101a同士および下フランジ部100b,101b同士が固定されることで構成されている。
【0047】
サイドシル10の中空部10aには、補強部材13が収容されている。補強部材13は、閉断面構造を有する本体部130と、本体部130の下方に配置されたブラケット131と、を備える。図2および図3に示すように、補強部材13の本体部130は、サイドシル10に沿って前後方向に延びるように形成されている。これに対して、ブラケット131は、前後方向において互いに間隔を空けて、複数設けられている。また、ブラケット131は、本体部130の下方における車幅方向内側に寄った箇所に固定されている。
【0048】
本体部130とブラケット131とは、本体部130に開けられた貫通孔にナット(ブラインドナット)NT3が挿通され、当該ナットNT3に対してブラケット131側から挿入されたボルトBLT2が螺合することにより互いが固定されている。図2では、詳細な図示を省略しているが、ナットNT3は、雌ねじへのボルトBLT2の螺合により、本体部130の内方で外径が拡径して、ボルトBLT2とともに抜けなくなる。
【0049】
なお、本体部130とブラケット131との固定は、本体部130に雌ねじが形成されたボスを設けておき、当該ボスの雌ねじに対してボルトBLT2を螺合させることで行ってもよい。
【0050】
図4に示すように、複数のブラケット131のそれぞれは、車幅方向の一方(本実施形態では、車幅方向外側)に開口131jを有し、その他の部分に壁131e~131iが形成されている。ブラケット131は、底壁131eと天井壁131fとは上下方向に対向し、側壁131g,131h同士が前後方向に対向するように形成されている。底壁131eには、貫通孔131aが形成され、天井壁131fには、貫通孔131b~131dが形成されている。貫通孔131b,131cのそれぞれは、ナットNT3およびボルトBLT2が挿通する孔である。貫通孔131aは、バッテリ12の固定に用いられるボルトBLT1が挿通する孔であり、貫通孔131dは、ボルトBLT1にナットNT1を螺合させる際の作業時に用いられる孔(サービスホール)である。
【0051】
本実施形態において、補強部材13の本体部130は、サイドシルインナ101に固定されている。本体部130とサイドシルインナ101との固定は、本体部130およびサイドシルインナ101に開けられた貫通孔にナット(ブラインドナット)NT4が挿通され、当該ナットNT4に対してサイドシルインナ101の車幅方向内側から挿入されたボルトBLT3が螺合することによりなされている。ナットNT4についても、図2での詳細な図示を省略しているが、雌ねじへのボルトBLT3の螺合により、本体部130の内方で外径が拡径して、ボルトBLT3とともに抜けなくなる。
【0052】
なお、本体部130とサイドシルインナ101との固定は、本体部130に雌ねじが形成されたボスを設けておき、当該ボスの雌ねじに対してボルトBLT3を螺合させることで行ってもよい。
【0053】
クロスメンバ11のそれぞれは、車幅方向に延び、両端がサイドシル10に固定されている。なお、サイドシル10とクロスメンバ11との固定方法は、ボルト締結や溶接など種々の方法が採用可能である。
【0054】
ここで、補強部材13とクロスメンバ11とを車幅方向の一方から側面視する場合に、補強部材13とクロスメンバ11とは、互いに重複する位置関係をもって配置されている。具体的に、補強部材13の本体部130は、クロスメンバ11に対して側面視で重複する位置関係をもって配置されている。
【0055】
バッテリ12は、上下方向に交差する方向の周囲を囲むように形成されたバッテリフレーム120と、バッテリフレーム120の下部に固定される底壁121と、バッテリフレーム120の上部に固定される蓋122とで形成される筐体を備える。バッテリ12のバッテリセル(図示を省略。)は、バッテリフレーム120と底壁121と蓋122とで囲まれたセル収容部12aに収容されている。
【0056】
図2に示すように、バッテリフレーム120は、閉断面構造を有して構成されており、車幅方向外側に延出された延出部120aを有する。延出部120aには、ボルトBLT1が挿通する貫通孔を有し、サイドシルインナ101の下壁部101cに形成された貫通孔(図示を省略。)およびブラケット131の貫通孔131a(図3,4を参照。)を挿通して補強部材13のブラケット131内に貫入している。ボルトBLT1には、ブラケット131内に貫入した箇所でナットNT1が螺合している。
【0057】
なお、本実施形態におけるボルトBLT1は、軸部分が棒形状を有し、固定部材に相当する。
【0058】
本実施形態において、ボルトBLT1とナットNT1との螺合により、サイドシルインナ101の下壁部101cは、補強部材13のブラケット131とバッテリフレーム120との間に挟持された状態でバッテリフレーム120に固定されている。換言すると、バッテリフレーム120は、サイドシル10と補強部材13との両方に固定されている。
【0059】
3.サイドシル10に側突荷重が入力された場合のバッテリ12の挙動
サイドシル10に側突荷重が入力された場合のバッテリ12の挙動について、図5を用いて説明する。なお、以下の説明では、右側のサイドシル10Rに対して車幅方向外側から側突荷重Fが入力された場合を説明する。左側のサイドシル10Lに車幅方向外側から側突荷重Fが入力された場合についても、左右が反転するだけでバッテリ12は同じ挙動を示す。
【0060】
図5に示すように、右側のサイドシル10Rに側突荷重Fが入力されると、荷重Fの入力箇所が変形しながら左側へと変位する(矢印D10R)。サイドシル10Rが左側へと変位すると、内部に収容された補強部材13Rも左側へと変位する。これにより、側面視で重複する領域に配設されたクロスメンバ11が左側へと変位する(矢印A1)。
【0061】
上記のように、サイドシル10Rおよび補強部材13Rには、ボルトBLT1Rによりバッテリ12が固定されているので、サイドシル10Rおよび補強部材13Rの変位に伴いバッテリ12も左側へと変位する(矢印A3)。このように、本実施形態の車両1では、サイドシル10Rに側突荷重Fが入力された場合に、クロスメンバ11とともにバッテリ12も左側に相対的な差異が小さい状態で変位する。よって、クロスメンバ11に押圧されて左側のサイドシル10Lおよび補強部材13Lが矢印A2に示すように変位・変形しても、サイドシル10Lおよび補強部材13Lとバッテリ12とを固定するボルトBLT1Lが破断(矢印A4で示す箇所での破断)してバッテリ12がサイドシル10Lから外れてしまうのが抑制される。
【0062】
4.効果
本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、補強部材13における閉断面構造で構成された本体部130が側面視でクロスメンバ11と重複する領域に配されているので、サイドシル10に対して車幅方向外側から入力された側突荷重Fがクロスメンバ11に高効率に伝達される。また、側突荷重Fが入力された側とは車幅方向の反対側においても、クロスメンバ11に対して側面視で重複する領域に補強部材13が配されているので、クロスメンバ11を介して伝達されてきた荷重が補強部材13を介して効率的にサイドシル10(側突荷重Fが入力されたのとは反対側のサイドシル10)へと伝達される。
【0063】
また、車両1では、ボルトBLT1によりバッテリフレーム120がサイドシル10だけでなく補強部材13に対しても固定されている。このため、サイドシル10に対して車幅方向外側から側突荷重Fが入力された場合においても、バッテリフレーム120もクロスメンバ11とともに荷重が入力されたのとは反対側に向けて変位する。よって、車両1では、一方のサイドシル10(図5に示す例では、右側のサイドシル10R)に側突荷重Fが入力された場合においても、側突荷重Fが入力されたのとは反対側のサイドシル10(図5に示す例では、左側のサイドシル10L)とバッテリ12との固定が外れるのを抑制することができる。
【0064】
なお、電気自動車等でフロア下に搭載されるバッテリ12は大容量で大型であるため、重量も重い。このため、バッテリフレーム120は高い剛性をもって形成されている。よって、ボルトBLT1を介して荷重伝達されたバッテリフレーム120がクロスメンバ11よりも大きく変形・破損することは生じ難く、サイドシル10に側突荷重Fが入力された場合にクロスメンバ11とバッテリフレーム120との間で相対的な変位の差異は生じ難い。
【0065】
また、本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、補強部材13において、本体部130が閉断面構造で構成されており、ブラケット131でボルトBLT1によりバッテリフレーム120に固定がなされる構成としているので、サイドシル10に側突荷重Fが入力された場合における補強部材13の高い剛性を確保しつつ、バッテリフレーム120と補強部材13との固定が確実になされる。
【0066】
また、本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、サイドシル10の下壁部101cが補強部材13のブラケット131とバッテリフレーム120との間に挟持され、当該状態でボルトBLT1によりサイドシル10と補強部材13とバッテリフレーム120とが固定されている。このため、バッテリフレーム120をサイドシル10および補強部材13に対して強固に固定することができる。即ち、サイドシル10の下壁部101cが補強部材13のブラケット131あるいはバッテリフレーム120との間に隙間が空いた状態で固定されている場合に比べて、車幅方向外側からサイドシル10に側突荷重Fが入力された場合に互いの間の面接触による抵抗によりクロスメンバ11とバッテリフレーム120との間で変位の差異が生じ難い。よって、一方のサイドシル10(図5に示す例では、右側のサイドシル10R)に側突荷重Fが入力された場合においても、側突荷重Fが入力されたのとは反対側のサイドシル10(図5に示す例では、左側のサイドシル10L)とバッテリ12との固定が外れるのを抑制するのにさらに有効である。
【0067】
また、本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、補強部材13における閉断面構造を有する本体部130がボルトBLT3によりサイドシル10に固定されているので、サイドシル10に対して側突荷重Fが入力された場合に補強部材13の本体部130がサイドシル10とともに車幅方向内側に向けて変位する。よって、サイドシル10とともに変位した補強部材13の本体部130によってクロスメンバ11に荷重伝達がなされるとともに、ボルトBLT1を介してバッテリフレーム120にも確実に荷重伝達がなされる。
【0068】
また、本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、ブラケット131がボルトBLT2により本体部130に固定されているので、サイドシル10に対して側突荷重Fが入力された場合に、本体部130とブラケット131との間での車幅方向における変位の相対的な差異が生じ難い。よって、一方のサイドシル10(図5に示す例では、右側のサイドシル10R)に側突荷重Fが入力された場合においても、側突荷重Fが入力されたのとは反対側のサイドシル10(図5に示す例では、左側のサイドシル10L)とバッテリ12との固定が外れるのを抑制するのにさらに有効である。
【0069】
また、本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、バッテリフレーム120も閉断面構造を有するので、サイドシル10に側突荷重Fが入力された場合にバッテリフレーム120が大きく変形するのが抑制される。よって、一方のサイドシル10(図5に示す例では、右側のサイドシル10R)に側突荷重Fが入力された場合においても、側突荷重Fが入力されたのとは反対側のサイドシル10(図5に示す例では、左側のサイドシル10L)とバッテリ12との固定が外れるのを抑制するのにさらに有効である。
【0070】
また、本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、ボルトBLT1が上下方向に延びるように配設されているので、バッテリ12を車両の下方から上方に上昇させてバッテリフレーム120をサイドシル10および補強部材13に固定することができる。即ち、バッテリ12の搭載に際して煩雑な作業が必要ない。
【0071】
また、サイドシル10に側突荷重Fが入力された場合には、上下方向に延びるボルトBLT1を介してバッテリフレーム120に対して荷重伝達が可能となる。
【0072】
また、本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、バッテリフレーム120および補強部材13がサイドシルインナ101に対して固定されているので、サイドシル10における長手方向の一部に側突荷重Fが入力された場合にもサイドシルインナ101とフロアパネルなどの車体との接合箇所(溶接による接合箇所など)が外れてしまうのを抑制することができる。即ち、サイドシル10に側突荷重Fが入力された場合には、上下方向からの平面視でサイドシル10がくの字に変形しようとするが、サイドシル10および補強部材13が高い剛性を有するバッテリフレーム120に固定されているので、バッテリフレーム120からの反力によりサイドシル10がくの字に変形するのが抑制される。よって、サイドシル10の一部に側突荷重Fが入力されてサイドシル10と車体との接合箇所が外れてしまうのを抑制することができる。
【0073】
以上説明のように、本実施形態に係る下部構造が適用される車両1では、サイドシルに対して車幅方向の外側から側突荷重が入力された場合にも、サイドシルとバッテリとの固定が外れるのを抑制することができる。
【0074】
[変形例1]
変形例1に係る下部構造について、図6を用いて説明する。なお、本変形例に係る下部構造は、補強部材23の構成が上記実施形態と異なり、その他の構成は上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態との差異点である補強部材23の構成を説明する。
【0075】
図6に示すように、補強部材23は、閉断面構造を有する部分を一部に含む本体部230と、バッテリフレーム120と固定されるブラケット231とを備える。本変形例の補強部材23において、本体部230とブラケット231とは互いに離間しており、固定されていない。
【0076】
補強部材23の本体部230は、上記実施形態と同様に、サイドシル10の中空部10a内において、車幅方向からの側面視で、クロスメンバ11と重複する領域に配設されている。本変形例では、本体部230は、サイドシルアウタ100に固定されている。本体部230とサイドシルアウタ100との固定は、本体部230およびサイドシルアウタ100に開けられた貫通孔にナット(ブラインドナット)NT5が挿通され、当該ナットNT5に対してサイドシルアウタ100の車幅方向外側から挿入されたボルトBLT5が螺合することによりなされている。ナットNT5についても、図6での詳細な図示を省略しているが、雌ねじへのボルトBLT5の螺合により、本体部130の内方で外径が拡径して、ボルトBLT5とともに抜けなくなる。
【0077】
なお、本体部130とサイドシルアウタ100との固定は、本体部130に雌ねじが形成されたボスを設けておき、当該ボスの雌ねじに対してボルトBLT5を螺合させることで行ってもよい。
【0078】
本変形例においても、バッテリフレーム120は、閉断面構造を有して構成されており、車幅方向外側に延出された延出部120aを有する。延出部120aには、ボルトBLT4が挿通する貫通孔を有し、サイドシルインナ101の下壁部に形成された貫通孔およびブラケット231の貫通孔を挿通して補強部材23における本体部230内の中空部230bに一部が貫入している。ボルトBLT4には、ブラケット231上でナットNT1が螺合し、これによりバッテリフレーム120とサイドシル10およびブラケット231とが固定されている。
【0079】
ここで、補強部材23の本体部230には、ボルトBLT4の先端部分が貫入する開口230cが設けられている。開口230cの開口径(開口サイズ)D1は、ボルトBLT4の軸部(貫入する部分)の外径(断面サイズ)D2よりも大きく形成されている。サイドシル10に対して側突荷重が入力されない状態では、ボルトBLT4における軸部の外周面と開口230cの内周面とは隙間が空いた状態となっている。
【0080】
また、本変形例では、補強部材23の本体部230は、バッテリフレーム120に固定されていない。
【0081】
なお、補強部材23において、ブラケット231を備えることは必須ではない。即ち、ナットNT2との螺合によりサイドシルインナ101に固定されたボルトBLT4の一部が開口230cを挿通して本体部230の内方に貫入していればよい。
【0082】
本変形例に係る下部構造が適用される車両においても、上記実施形態と同じ効果を奏することができる。また、本変形例では、補強部材23における本体部230に開口径がD1の開口230cが設けられており、ボルトBLT4の軸部が該開口230cを通り内方に貫入している。即ち、本変形例では、サイドシル10に対して側突荷重が入力されない状態では、ボルトBLT4の軸部と本体部230の開口230cの内周面とは接触していない状態であり、車両の走行時の振動などでボルトBLT4の軸部と開口230cの内周面との衝突による騒音の発生を抑制することができる。一方、サイドシル10に側突荷重が入力され、補強部材23がサイドシル10の変形や変位に伴って車幅方向内側に変位した場合には、ボルトBLT4の軸部の外周面と開口230cの内周面とが当接する。これより、サイドシル10に入力された側突荷重の一部はボルトBLT4を介してバッテリフレーム120にも伝達され、側突時にバッテリフレーム120をクロスメンバ11とともに変位させることができる。
【0083】
[変形例2]
変形例2に係る下部構造について、図7を用いて説明する。なお、本変形例に係る下部構造は、補強部材33の構成が上記実施形態と異なり、その他の構成は上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態との差異点である補強部材33の構成を説明する。
【0084】
図7に示すように、補強部材33は、閉断面構造を有する部分を含む本体部330によって構成されている。即ち、本変形例の補強部材33は、上記実施形態や上記変形例1のようなブラケット131,231を備えておらず、バッテリフレーム120が直接本体部330に固定されている。
【0085】
バッテリフレーム120の延出部120aを挿通するボルトBLT6は、軸部が補強部材33の本体部330内に貫入している。本体部330におけるボルトBLT6の貫入部分には、雌ねじを有するボス330aが形成されている。ボルトBLT6は、ボス330aに形成された雌ねじに螺合し、これによりバッテリフレーム120はサイドシル10および補強部材33と固定されている。
【0086】
なお、バッテリフレーム120と補強部材33における本体部330との固定については、ボス330aに形成された雌ねじに対してボルトBLT6を螺合させることは必須ではない。例えば、本体部330の内側にナットを配しておき、当該ナットにボルトBLT6を螺合させることでバッテリフレーム120と補強部材33とを固定することとしてもよい。
【0087】
本変形例において、補強部材33は、サイドシルインナ101に固定されている。補強部材33とサイドシルインナ101との固定は、本体部330およびサイドシルインナ101に開けられた貫通孔にナット(ブラインドナット)NT6が挿通され、当該ナットNT6に対してサイドシルインナ101の車幅方向内側から挿入されたボルトBLT7が螺合することによりなされている。図7での詳細な図示を省略しているが、雌ねじへのボルトBLT6の螺合により、本体部130の内方で外径が拡径して、ボルトBLT7とともに抜けなくなる。
【0088】
なお、本体部130とサイドシルインナ101との固定は、本体部130に雌ねじが形成されたボスを設けておき、当該ボスの雌ねじに対してボルトBLT7を螺合させることで行ってもよい。
【0089】
本変形例に係る下部構造は、補強部材33がブラケットを備えない点で上記実施形態と相違するが、他の構成は同じであるので上記実施形態と同じ効果を奏する。
【0090】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1,2では、固定部材としてボルトBLT1,BLT4,BLT6を採用することとしたが、本発明では、リベットなどを固定部材として採用することも可能である。
【0091】
また、上記実施形態および上記変形例2では、補強部材13,33の本体部130,330をサイドシルインナ101に固定し、上記変形例1では、補強部材23の本体部230をサイドシルアウタ100に固定することとしたが、本発明では、補強部材の本体部をサイドシルアウタおよびサイドシルインナの少なくとも一方に固定することができれば、何れに固定するかについては限定されない。
【符号の説明】
【0092】
1 車両
10 サイドシル
11 クロスメンバ
12 バッテリ
13,23,33 補強部材
100 サイドシルアウタ
101 サイドシルインナ
120 バッテリフレーム
130,230,330 本体部
131,231 ブラケット
330a ボス
BLT1,BLT4,BLT6 ボルト(固定部材)
NT1,NT2 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9