(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025176750
(43)【公開日】2025-12-05
(54)【発明の名称】車両の車体骨格構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20251128BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20251128BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20251128BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D21/15 B
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083021
(22)【出願日】2024-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀本 英司
(72)【発明者】
【氏名】棗 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】塚本 英行
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳和
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203AA31
3D203BB12
3D203BB22
3D203CA25
3D203CA37
3D203CA40
3D203CA63
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB07
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235EE64
3D235FF07
3D235FF09
3D235FF12
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】重量および製造コストの上昇を抑えながら、高い衝突エネルギの吸収特性を実現できる車両の車体骨格構造を提供する。
【解決手段】車両の車体骨格構造は、車両前後方向に延びるサイドシル10と、サイドシル10の中空部10aに収容された補強部材103とを備える。補強部材103は、それぞれが車幅方向に軸線を有する複数の閉断面セル103a,103bが、車両前後方向に連続するように形成されている。複数の閉断面セル103a,103bのそれぞれは、六角形の閉断面を有するとともに、車両前後方向に隣り合う閉断面セル103a,103bと第1セル壁を共有するように形成されている。複数の閉断面セル103a,103bのそれぞれは、第1セル壁の各辺長さが、当該セルにおける第1セル壁を除くセル壁の内の少なくとも1つのセル壁の辺長さよりも長くなるように形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の骨格をなす骨格部材であって、且つ、内方に中空部を有するとともに、第1方向に延びる骨格部材と、
前記骨格部材の前記中空部に収容される補強部材であるとともに、それぞれが複数のセル壁によって前記第1方向に交差する第2方向に軸線を有する中空柱状に形成された複数のセルを有し、且つ、当該複数のセルが前記第1方向に連続的に並ぶように形成された補強部材と、
を備え、
前記補強部材における前記複数のセルは、前記第2方向に対して直交する断面において、それぞれがn角形(n:4以上の偶数)を有するとともに、前記第1方向に隣り合う前記セル同士が前記セル壁を共有するように形成されており、
前記隣り合うセル同士が共有する前記セル壁を第1セル壁とする場合に、前記複数のセルのそれぞれは、前記直交する断面での前記第1セル壁の辺長さが、当該セルを形成する他のセル壁の内の少なくとも1つのセル壁の辺長さよりも長くなるように形成されている、
車両の車体骨格構造。
【請求項2】
前記直交する断面において、前記第1方向に対して直交する方向を第3方向とする場合に、
前記複数のセルのそれぞれは、前記直交する断面において、六角形状を有するとともに、前記第1方向に延び、前記第3方向に対向する一対の第2セル壁と、前記一対の第2セル壁の内の一方のセル壁の前記第1方向の端辺と一対の前記第1セル壁の前記第3方向の端辺のそれぞれとを接続する一対の第3セル壁と、を有し、
前記複数のセルのそれぞれは、前記第1セル壁の辺長さが、前記第3セル壁の辺長さよりも長くなるように形成されている、
請求項1に記載の車両の車体骨格構造。
【請求項3】
前記骨格部材は、車両のフロア部の車幅方向外側に配設されるとともに、前記車両の前後方向に延びるように形成されたサイドシルであり、
前記車両のフロア部には、前記サイドシルに一端が接続され、車幅方向に延びるクロスメンバが配設されており、
前記車両の側方からの側面視で、前記補強部材は、前記クロスメンバと重複する領域に配されている、
請求項2に記載の車両の車体骨格構造。
【請求項4】
前記フロア部には、バッテリが配されており、
前記バッテリは、前記サイドシルに固定されている、
請求項3に記載の車両の車体骨格構造。
【請求項5】
前記補強部材は、それぞれが前記第1方向に延びるとともに曲折加工されてなる3枚の板部材が互いに固定されることで構成されている、
請求項2から請求項4の何れかに記載の車両の車体骨格構造。
【請求項6】
前記3枚の板部材は、前記第3方向の一方側から他方側に向けて配される、第1板部材、第2板部材、および第3板部材により構成され、
前記第1板部材および前記第3板部材は、前記複数のセルのそれぞれにおいて、前記一対の第2セル壁および前記一対の第3セル壁を構成し、
前記第2板部材は、前記複数のセルのそれぞれにおいて、前記一対の第1セル壁を構成する、
請求項5に記載の車両の車体骨格構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、複数の骨格部材が接合されてなる車体を備える。車体の骨格をなす骨格部材には、高い剛性を確保しながら、重量の上昇を抑えることが求められる。
【0003】
特許文献1には、中空状のサイドシルと、サイドシルの内部に配設された補強部材と、を備える車体構造が開示されている。特許文献1の車体構造で採用されている補強部材について、
図8(a)を用いて説明する。
【0004】
図8(a)に示すように、特許文献1における補強部材903は、それぞれが曲折加工された2枚の板材(上板部材904、下板部材905)を用いて形成されている。補強部材903は、サイドシルの長手方向(車両の前後方向)に沿って配列された複数の閉断面セル903aを有する。複数の閉断面セル903aのそれぞれは、
図8(a)の紙面に直交する方向に延びる中空柱状の形状を有し、側面視で六角形状(ハニカム形状)を有する。補強部材903において、隣り合う閉断面セル903a同士の間には、上板部材904と下板部材905とを接合する接合部903bが設けられている。接合部903bにおいては、上板部材904と下板部材905とが重ね合わされて溶接などにより互いが接合されている。
【0005】
ここで、特許文献1におけるサイドシルに対して車幅方向外側から衝突荷重が入力された場合のエネルギ吸収性能の向上を図る方策として、隣り合う閉断面セル903a同士を連続的に配設するとともに、高さ方向での配設領域を大きくすることが考えられる。具体的には、
図8(b)に示すように、考えられる補強部材953は、それぞれがサイドシルの長手方向に延びるとともに、曲折加工された3枚の板材(上板部材954、中板部材955、下板部材956)を用いて形成できる。これにより、中板部材955の斜壁部955a~955dを挟んで車両の前後方向に連続的に配設される複数の閉断面セル953a,953bを有し、高さL95が
図8(a)に示す補強部材903よりも高い補強部材953を構成することができる。このような構造の補強部材953では、ハニカム形状の閉断面セル953a,953bが連続し、高さ方向の領域も上記特許文献1の補強部材903よりも広くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図8(b)に示す補強部材953では、骨格部材であるサイドシルに車幅方向外側から衝突荷重が入力された場合のエネルギ吸収量(EA量)を大きくすることが難しいと考えられる。即ち、複数の閉断面セル953a,953bがジグザグ形状に連続する補強部材953では、各閉断面セル953a,953bのサイズが小さくなってしまい軸圧縮が不安定となる。このため、補強部材953では、車幅方向外側から衝突荷重が入力された場合のエネルギ吸収量を大きくすることが難しいと考えられる。
【0008】
また、
図8(b)に示す補強部材953では、軽量化と製造コストの低減とを図ることが難しいと考えられる。即ち、補強部材953では、複数の閉断面セル953a,953bがジグザグ形状に連続するように各板部材954~956が曲折加工されているので、各板部材954~956の実長長さが長くなってしまう。このため、補強部材953の重量は重くならざるを得ず、軽量化が難しい。また、補強部材953では、数多くの板部材954~956同士が重なる部分(壁部954a,955e~955g,956a,956b)で接合する必要があり、製造時における煩雑な作業が必要となる。このため、補強部材953の製造コストを低減することは難しい。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとなされたものであって、重量および製造コストの上昇を抑えながら、高い衝突エネルギの吸収特性を実現できる車両の車体骨格構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る車両の車体骨格構造は、骨格部材と補強部材とを備える。前記骨格部材は、車体の骨格をなす部材であって、且つ、内方に中空部を有するとともに、第1方向に延びる。前記補強部材は、前記骨格部材の前記中空部に収容される補強部材であるとともに、それぞれが複数のセル壁によって前記第1方向に交差する第2方向に軸線を有する中空柱状に形成された複数のセルを有し、且つ、当該複数のセルが前記第1方向に連続的に並ぶように形成されている。
【0011】
本態様に係る車両の車体骨格構造において、前記補強部材における前記複数のセルは、前記第2方向に対して直交する断面で、それぞれがn角形(n:4以上の偶数)を有するとともに、前記第1方向に隣り合う前記セル同士が前記セル壁を共有するように形成されている。前記隣り合うセル同士が共有する前記セル壁を第1セル壁とする場合に、前記複数のセルのそれぞれは、前記直交する断面での前記第1セル壁の辺長さが、当該セルを形成する他のセル壁の内の少なくとも1つのセル壁の辺長さよりも長くなるように形成されている。
【0012】
上記態様に係る車体骨格構造が適用される車両では、第1セル壁の辺長さが上記少なくとも1つのセル壁の辺長さよりも長くなるように各セルが形成されているので、正n角形のセルが複数形成された場合に比べて、n角形断面のセルを第1方向に連続的に配列しながら、各セルにおける閉断面の断面積を大きく確保することができる。よって、上記態様に係る車両では、
図8(b)に示すような構成を採用する場合に比べて、重量および製造コストの上昇を抑えながら、高い衝突エネルギの吸収特性を実現できる。
【0013】
なお、上記態様に係る車体骨格構造において、各セルの閉断面に対しては円が内接するのではなく、楕円または長円が内接する。ただし、セルを形成する全てのセル壁に長円等が内接するのではなく、一部のセル壁には長円等が接しない形態でセルの形状が規定される場合もある。上記態様に係る車体骨格構造では、このようなセル形状を採用することにより、上記のような作用・効果を奏することが可能である。
【0014】
上記態様に係る車両の車体骨格構造において、前記直交する断面で、前記第1方向に対して直交する方向を第3方向とする場合に、前記複数のセルのそれぞれは、前記直交する断面において、六角形状を有するとともに、前記第1方向に延び、前記第3方向に対向する一対の第2セル壁と、前記一対の第2セル壁の内の一方のセル壁の前記第1方向の端辺と一対の前記第1セル壁の前記第3方向の端辺のそれぞれとを接続する一対の第3セル壁と、を有し、前記複数のセルのそれぞれは、前記第1セル壁の辺長さが、前記第3セル壁の辺長さよりも長くなるように形成されている、との構成を採用してもよい。即ち、本態様に係る車体骨格構造では、セルが上記断面で六角形状を有し、上記少なくとも1つのセル壁が第3セル壁である。
【0015】
上記態様に係る車体骨格構造が適用される車両では、各セルにおける閉断面の形状が六角形状であって、一対の第1セル壁の各辺長さが第3セル壁の辺長さよりも長くなるように各セルが構成されているので、正六角形状のセル構造を
図8(b)に示すように連続させる場合に比べて、六角形状のセルの断面積を大きく確保しつつ第1方向に複数のセルを連続させることができる。
【0016】
上記態様に係る車両の車体骨格構造において、前記骨格部材は、車両のフロア部の車幅方向外側に配設されるとともに、前記車両の前後方向に延びるように形成されたサイドシルであり、前記車両のフロア部には、前記サイドシルに一端が接続され、車幅方向に延びるクロスメンバが配設されており、前記車両の側方からの側面視で、前記補強部材は、前記クロスメンバと重複する領域に配されている、との構成を採用してもよい。
【0017】
上記態様に係る車体骨格構造が適用される車両では、側方からの側面視で補強部材がクロスメンバと重複する領域に配されているので、骨格部材であるサイドシルに対して車両の側方から衝突荷重が入力された場合に、補強部材を介してクロスメンバに高効率に荷重伝達がなされる。よって、上記態様に係る車体骨格構造が適用される車両では、車幅方向の一方のサイドシルに車幅方向外側から側突荷重が入力された場合にも、クロスメンバを介して反対側のサイドシルへと荷重が伝達され、高効率にエネルギ吸収できる。
【0018】
上記態様に係る車両の車体骨格構造において、前記フロア部には、バッテリが配されており、前記バッテリは、前記サイドシルに固定されている、との構成を採用してもよい。
【0019】
上記態様に係る車体骨格構造が適用される車両では、バッテリが高い剛性を有するサイドシルに固定されているので、車両走行中などに振動が付加されてもバッテリが確実に保持される。また、上記の車両では、上述のようにサイドシルに側突荷重が入力されても、補強部材でエネルギ吸収が高効率に行われるとともに、クロスメンバへと荷重伝達されるので、側突時においてバッテリが損傷するのを抑制することができる。
【0020】
上記態様に係る車両の車体骨格構造において、前記補強部材は、それぞれが前記第1方向に延びるとともに曲折加工されてなる3枚の板部材が互いに固定されることで構成されている、との構成を採用してもよい。
【0021】
上記態様に係る車体骨格構造が適用される車両では、補強部材が3枚の板部材を用いて構成されているので、鋳造などで補強部材を一体的に形成する場合に比べて簡易な製造過程で補強部材を形成することが可能である。また、車種の違いや設計変更などに際しても、鋳造などで補強部材を形成する場合に比べて柔軟に形状を変化させつつ補強部材を形成することができる。
【0022】
上記態様に係る車両の車体骨格構造において、前記3枚の板部材は、前記第3方向の一方側から他方側に向けて配される、第1板部材、第2板部材、および第3板部材により構成され、前記第1板部材および前記第3板部材は、前記複数のセルのそれぞれにおいて、前記一対の第2セル壁および前記一対の第3セル壁を構成し、前記第2板部材は、前記複数のセルのそれぞれにおいて、前記一対の第1セル壁を構成する、との構成を採用してもよい。
【0023】
上記態様に係る車体骨格構造が適用される車両では、複数のセルにおける各第1セル壁が第2板部材により構成されることとしているので、第2板部材の曲折形状によって、衝突エネルギの吸収特性を考慮しながら最適な形状の補強部材の構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
上記の各態様に係る車体骨格構造を有する車両では、重量および製造コストの上昇を抑えながら、高い衝突エネルギの吸収特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る車体骨格構造が適用された車両の一部構成を示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線断面を示す断面図である。
【
図3】
図2のIII-III断面を示す断面図である。
【
図6】補強部材とクロスメンバとの位置関係を示す断面図である。
【
図7】(a)は変形例1に係る車体骨格構造における補強部材の一部構成を示す断面図であり、(b)は変形例2に係る車体骨格構造における補強部材の一部構成を示す断面図である。
【
図8】(a)は従来技術に係る車体骨格構造で採用される補強部材の一部構成を示す断面図であり、(b)は従来技術から想定される別の補強部材の一部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0027】
また、以下の説明で用いる図において、「FR」は車両前方、「RR」は車両後方、「LH」は車両左方、「RH」は車両右方、「UP」は車両上方、「LO」は車両下方を示す。さらに、以下の説明においては、車両の前後方向を単に「前後方向」と記載し、車両の上下方向を単に「上下方向」と記載する場合がある。
【0028】
[実施形態]
1.車両1の構成
本実施形態に係る車体骨格構造が適用されてなる車両1の構成について、
図1を用いて説明する。なお、
図1では、車両1の構成の一部だけを図示しており、パワートレインなどについては図示を省略している。
【0029】
図1に示すように、車両1は、前部にパワートレインが搭載されるパワートレイン搭載部1aを備え、パワートレイン搭載部1aよりも後方に乗員が乗車する領域であるフロア部1bを備える。フロア部11bには、一対のサイドシル(骨格部材)10と、複数のクロスメンバ11と、バッテリ12と、が配設されている。
【0030】
一対のサイドシル10は、フロア部1bの車幅方向両側に配設されるとともに、それぞれが前後方向に延びるように形成されている。複数のクロスメンバ11は、それぞれが車幅方向に延び、サイドシル10に固定されている。バッテリ12は、図示を省略するパワートレインとの間で電力を送受する。
【0031】
なお、バッテリ12は、リチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリなどで構成されたバッテリセルと、当該バッテリセルを収容するバッテリ筐体とを有する。
【0032】
2.サイドシル10の内部構造
サイドシル10の内部構造について、
図2および
図3を用いて説明する。なお、
図2および
図3では、一対のサイドシル10の内の右側のサイドシル10だけを図示しているが、左側のサイドシル10についても左右が反転することを除いて右側のサイドシル10と同じ内部構造を有する。
【0033】
図2に示すように、サイドシル10は、ともにハット断面形状を有するサイドシルアウタ101とサイドシルインナ102とが、互いに固定されることで構成されている。サイドシル10は、サイドシルアウタ101とサイドシルインナ102との固定により、内方に中空部10aを有する閉断面構造を有する。
【0034】
サイドシルアウタ101およびサイドシルインナ102のそれぞれは、上下方向のそれぞれにフランジ部101a,101b,102a,102bを有する。サイドシルアウタ101とサイドシルインナ102との固定は、上フランジ部101a,102a同士、および下フランジ部101b,102b同士を固定することによりなされる。
【0035】
サイドシル10の中空部10aには、補強部材103が収容されている。
図3に示すように、補強部材103は、複数の閉断面セル103a,103bが前後方向に連続するように構成されている。
図3に示すように、複数の閉断面セル103a,103bは、車幅方向(
図3の紙面に直交する方向)に軸線を有する。即ち、複数の閉断面セル103a,103bは、それぞれが車幅方向(第2方向)に軸線を有する中空柱状であって、前後方向(第1方向)に連続するように形成されている。
【0036】
複数の閉断面セル103a,103bは、それぞれが六角形状を有する。そして、前後方向に隣り合う閉断面セル103aと閉断面セル103bとは、上下方向および前後方向に対して斜め方向に延びるセル壁(第1セル壁)を共有するように形成されている。
【0037】
なお、本実施形態において、各閉断面セル103a,103bは、正六角形状ではなく、歪な六角形状を有する。即ち、各閉断面セル103a,103bは、内方に円が内接する正六角形状ではなく、楕円または長円が少なくとも一部のセル壁に内接する六角形状(正六角形状ではない六角形状)を有する。
【0038】
3.補強部材103の詳細構成
補強部材103の詳細構成について、
図2から
図4を用いて説明する。
図4は、補強部材103の詳細構成を示す展開斜視図である。
【0039】
図3および
図4に示すように、補強部材103は、上板部材104、中板部材105、および下板部材106を含む4枚の板部材104~107が互いに固定されることにより構成されている。
図4に示すように、上板部材104は、複数の上壁部104aと、複数の下壁部104bと、複数の斜壁部104cと、で波型形状を有するように一体形成されている。複数の上壁部104aのそれぞれは、前後方向および上下方向に直交する平面を有するように配設されている。複数の下壁部104bのそれぞれは、上壁部104aよりも下方の高さ位置において、上壁部104aと平行な平面を有するように配設されている。複数の斜壁部104cのそれぞれは、上壁部104aの前後方向縁と下壁部104bの前後方向縁とを接続するように配設されている。
【0040】
なお、上板部材104において、上壁部104aには、貫通孔104dが開けられている。該貫通孔104dは、中板部材105と下板部材106とを溶接固定する際に溶接棒を挿通させるための孔である。
【0041】
中板部材105は、複数の上壁部105aと、複数の下壁部105bと、複数の斜壁部105cと、で波型形状を有するように一体形成されている。中板部材105は、上下方向の高さが上板部材104よりも大きくなるように形成されている。
【0042】
複数の上壁部105aのそれぞれは、上板部材104の上壁部104aおよび下壁部104bと平行な平面を有するように配設されている。複数の下壁部105bのそれぞれは、上壁部105aよりも下方の高さ位置において、上壁部105aと平行な平面を有するように配設されている。複数の斜壁部105cのそれぞれは、上壁部105aの前後方向縁と下壁部105bの前後方向縁とを接続するように配設されている。
【0043】
なお、中板部材105は、上壁部105aと下壁部105bとの上下方向での高さ位置の差異が上板部材104よりも大きくなるように形成されている。このため、中板部材105の斜壁部105cの高さ寸法は、上板部材104の斜壁部104cの高さ寸法よりも大きい。
【0044】
下板部材106は、複数の上壁部106aと、複数の下壁部106bと、複数の斜壁部106cと、フランジ部106dと、を有するように一体形成されている。下板部材106も、複数の上壁部106aと、複数の下壁部106bと、複数の斜壁部106cとで波型形状となるように形成されている。下板部材106は、上下方向の高さが上板部材104と略同じとなるように形成されている。
【0045】
複数の上壁部106aのそれぞれは、中板部材105の上壁部105aおよび下壁部105bと平行な平面を有するように配設されている。複数の下壁部106bのそれぞれは、上壁部106aよりも下方の高さ位置において、上壁部106aと平行な平面を有するように配設されている。複数の斜壁部106cのそれぞれは、上壁部106aの前後方向縁と下壁部106bの前後方向縁とを接続するように配設されている。フランジ部106dは、下壁部106bが設けられた高さ位置から下方に垂下するように形成されており、右方側を向く主面を有する。下板部材106のフランジ部106dは、
図2に示すサイドシルアウタ101の内壁面101cと面接触するように形成されており、当該内壁面101cに溶接固定される。
【0046】
ブラケット107は、横壁部107aと縦壁部107bとが一体形成されてなる板部材であって、全体としてアングル形状を有する。横壁部107aは、上板部材104の上壁部104aに溶接固定される。縦壁部107bは、横壁部107aから上方に向けて起立するように設けられており、
図2に示すサイドシルアウタ101の上フランジ部101aとサイドシルインナ102の上フランジ部102aとの間に挟まれ、当該状態で上フランジ部101a,102aに溶接固定される。
【0047】
4.閉断面セル103a,103bの形状
補強部材103における閉断面セル103a,103bの形状について、
図5を用いて説明する。なお、以下では、閉断面セル103aの形状について説明し、閉断面セル103bの形状についての説明を省略するが、閉断面セル103bは閉断面セル103aに対して上下反転した関係を有する点を除き閉断面セル103aと同じ構成を有する。
【0048】
上述のように、補強部材103は、それぞれ車両前後方向に延びるとともに、曲折加工された3枚の板部材104~106の組み合わせで構成されている。
図5に示すように、上板部材104の下壁部104bと中板部材105の上壁部105aとは、溶接固定されている。また、中板部材105の下壁部105bと下板部材106の上壁部106aとは、溶接固定されている。このように3枚の板部材104~106を固定することにより、補強部材103の閉断面セル103a,103bが構成されている。
【0049】
閉断面セル103aでは、六角形状の断面を有する内部空間が、6つのセル壁103c~103hにより囲繞されている。上セル壁103cは、上板部材104の下壁部104bと中板部材105の上壁部105aとが重ね合わされて構成されている。上斜セル壁103d,103hは、中板部材105の斜壁部105cにより構成され、上セル壁103cの前後方向それぞれの縁から斜め下方に垂下するように構成されている。上斜セル壁103d,103hは、前後方向に隣り合う閉断面セル103a,103bで共有されるセル壁であって、一対の第1セル壁である。即ち、補強部材103では、上斜セル壁103d,103hを共有しつつ、複数の閉断面セル103a,103bが連続するように構成されている。
【0050】
下斜セル壁103e,103gは、下板部材106の斜壁部106cにより構成され、上斜セル壁103d,103hの下縁から斜め下方に垂下するように構成されている。下セル壁103fは、下板部材106の下壁部106bにより構成されている。下セル壁103fは、上セル壁103cと平行な状態で対向し、下斜セル壁103e,103gの下縁同士を接続するように構成されている。本実施形態において、下斜セル壁103e,103gは、第3セル壁である。
【0051】
上斜セル壁103d,103hの辺長さ(
図5に示す断面での辺長さ)をLd,Lhとする。また、下斜セル壁103e,103gの辺長さ(
図5に示す断面での辺長さ)をLe,Lgとする。この場合に、閉断面セル103a,103bは、辺長さLd,Lhのそれぞれが、辺長さLe,Lgのそれぞれよりも長くなるように構成されている。これにより、閉断面セル103a,103bは、正六角形状ではなく、歪な六角形状を有する。
【0052】
5.補強部材103とクロスメンバ11との上下方向での位置関係
補強部材103とクロスメンバ11との上下方向での位置関係について、
図6を用いて説明する。なお、
図6では、車幅方向右方のサイドシル10に収容された補強部材103を一例として示しているが、車幅方向左方のサイドシル10に収容された補強部材103についても、
図6に示すのと上下方向において同じ位置関係を満たすように配設されている。
【0053】
図6に示すように、サイドシル10のサイドシルインナ102の外壁面には、クロスメンバ11およびバッテリ12が固定されている。また、サイドシルインナ102の外壁面には、フロアパネル13も固定されている。
【0054】
クロスメンバ11は、フロアパネル13の下方であって、バッテリ12の上方に配設されている。上下方向でのクロスメンバ11が配設された領域をA11とし、上下方向での補強部材103が配設された領域をA103とする。この場合に、クロスメンバ11と補強部材103とを車幅方向の一方から側面視する場合に、領域A103は領域A11と重複する。即ち、本実施形態において、車幅方向に一方からの側面視で、補強部材103は、クロスメンバ11と重複する領域に配されている。
【0055】
6.効果
本実施形態に係る車体骨格構造が適用される車両1では、一対の上斜セル壁(第1セル壁)103d,103hの各辺長さLd,Lhが下斜セル壁103e,103gの辺長さLe,Lgよりも長くなるように各閉断面セル103a,103bが形成されているので、正六角形の閉断面セルが複数形成された場合に比べて、閉断面セル103a,103bを前後方向(第1方向)に連続させながら、各閉断面セル103a,103bにおける閉断面の断面積を大きく確保することができる。よって、車両1では、
図8(b)に示すような構成を採用する場合に比べて、重量および製造コストの上昇を抑えながら、サイドシル10に車幅方向外側から衝突荷重(側突荷重)が入力された場合の高い衝突エネルギの吸収特性を実現できる。
【0056】
また、本実施形態に係る車体骨格構造が適用される車両1では、各閉断面セル103a,103bにおける閉断面の形状が六角形状であるが、上斜セル壁103dと下斜セル壁103gとが平行でなく、上斜セル壁103hと下斜セル壁103eとが平行でない。換言すると、閉断面セル103a,103bは、
図5などで示す断面において、円形の内接円を有さず、長円が内接する形状で構成されている。このため、本実施形態では、正六角形のセル構造を
図8(b)に示すように連続させる場合に比べて、六角形状の閉断面セル103a,103bの断面積を大きく確保しつつ前後方向に複数の閉断面セル103a,103bを連続させることが可能である。
【0057】
また、本実施形態に係る車体骨格構造が適用される車両1では、側方からの側面視で補強部材103がクロスメンバ11と重複する領域に配されているので、骨格部材であるサイドシル10に対して車両1の側方から衝突荷重が入力された場合に、補強部材103を介してクロスメンバ11に高効率に荷重伝達がなされる。よって、車両1では、車幅方向の一方のサイドシル10に側突荷重が入力された場合にも、クロスメンバ11を介して反対側のサイドシル10へと荷重が伝達され、高効率にエネルギ吸収できる。
【0058】
また、本実施形態に係る車体骨格構造が適用される車両1では、バッテリ12が高い剛性を有するサイドシル10に固定されているので、車両1の走行中などに振動が付加されてもバッテリ12が確実に保持される。また、車両1では、上述のようにサイドシル10に側突荷重が入力されても、補強部材103でエネルギ吸収が高効率に行われるとともに、クロスメンバ11へと荷重伝達されるので、側突時においてバッテリ12が損傷するのを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る車体骨格構造が適用される車両1では、補強部材103が3枚の板部材104~106を含み構成されているので、鋳造などで補強部材103を一体的に形成する場合に比べて簡易な製造過程で補強部材103を形成することが可能である。また、車種の違いや設計変更などに際しても、鋳造などで補強部材103を形成する場合に比べて柔軟に形状を変化させつつ補強部材103を形成することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る車体骨格構造が適用される車両1では、複数の閉断面セル103a,103bにおける各上斜セル壁103d,103hが中板部材(第2板部材)105により構成されることとしているので、中板部材105の曲折形状によって、衝突エネルギの吸収特性を考慮しながら最適な形状の補強部材103の構成を実現することができる。
【0061】
以上説明のように、本実施形態に係る車体骨格構造を有する車両1では、重量および製造コストの上昇を抑えながら、高い衝突エネルギの吸収特性を実現できる。
【0062】
[変形例1]
変形例1に係る車体骨格構造について、
図7(a)を用いて説明する。なお、本変形例に係る車体骨格構造は、サイドシル10における内方の中空部10aに収容されている補強部材203の構成が上記実施形態と異なり、その他の構成は上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態との差異点である補強部材203の構成を説明する。
【0063】
図7(a)に示すように、補強部材203では、四角形状の閉断面セル203a,203bが、前後方向に隣り合う閉断面セル203a,203bでセル壁を共有した状態で前後方向に連続的に並ぶように構成されている。具体的に、補強部材203は、3枚の板部材204~205を含み構成されている。この内、上板部材204および下板部材206は、互いに対向するように配され、ともに平板形状を有する。
【0064】
一方、中板部材205は、上記実施形態における中板部材105と同様に、波型形状に曲折されている。
【0065】
閉断面セル203a,203bにおいて、四角形状(台形状)の断面を有する内部空間は、4つのセル壁203c~203fにより囲繞されている。
【0066】
閉断面セル203aにおいて、上セル壁203cは、上板部材204の一部と中板部材205における曲折の上壁部とが重ね合わされて構成されている。一方、閉断面セル203bにおいて、上セル壁203cは、上板部材204の一部により構成されている。
【0067】
斜セル壁203d,203fは、中板部材205の一部により構成され、上セル壁203cの前後方向それぞれの縁から斜め下方に垂下するように構成されている。斜セル壁203d,203fは、前後方向に隣り合う閉断面セル203a,203bで共有されるセル壁であって、一対の第1セル壁である。
【0068】
閉断面セル203aにおいて、下セル壁203eは、下板部材206の一部により構成され、上セル壁203cに対して平行となるように構成されている。一方、閉断面セル203bにおいて、下セル壁203eは、下板部材206の一部と中板部材205における曲折の下壁部とが重ね合わされて構成されている。
【0069】
閉断面セル203a,203bにおいて、斜セル壁203dと斜セル壁203fとは平行ではない状態で配設されている。即ち、閉断面セル203a,203bのそれぞれは、正方形状ではなく、台形状の断面形状を有する。
【0070】
斜セル壁203dの辺長さ(
図7(a)に示す断面での辺長さ)をL2dとする。また、上セル壁203cの辺長さ(
図7(a)に示す断面での辺長さ)をL2cとする。この場合に、閉断面セル203a,203bは、辺長さL2dが、辺長さL2cよりも長くなるように構成されている。
【0071】
本変形例に係る車体骨格構造が適用される車両においても、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。即ち、本変形例では、閉断面セル203a,203bが四角形(n=4)を有する点で上記実施形態と相違するが、その他の点は上記実施形態と同じである。そして、車両の前後方向において隣り合う閉断面セル203a,203b同士が共有するセル壁(斜セル壁)203d,203fの長さL2dが、当該閉断面セル203a,203bにおける斜セル壁203d,203fを除く1つのセル壁(上セル壁)203cの長さL2cよりも長くなるように閉断面セル203a,203bが構成されている。このため、本変形例に係る車体骨格構造が適用される車両においても、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0072】
[変形例2]
変形例2に係る車体骨格構造について、
図7(b)を用いて説明する。なお、本変形例に係る車体骨格構造は、サイドシル10における内方の中空部10aに収容されている補強部材303の構成が上記実施形態および上記変形例1と異なり、その他の構成は上記実施形態および上記変形例1と同じである。以下では、上記実施形態および上記変形例1との差異点である補強部材303の構成を説明する。
【0073】
図7(b)に示すように、補強部材303では、八角形状の閉断面セル303a,303bが、前後方向に隣り合う閉断面セル303a,303bでセル壁を共有した状態で前後方向に連続するように構成されている。具体的に、補強部材303は、3枚の板部材304~305を含み構成されている。この内、各板部材304~306は、上記実施形態における各板部材104~106と同様に、上下方向に波型形状となるように曲折されている。
【0074】
閉断面セル303a,303bにおいて、八角形状の断面を有する内部空間は、8つのセル壁303c~303jにより囲繞されている。
【0075】
閉断面セル303aにおいて、上セル壁303cおよび上斜セル壁303d,303jは、上板部材304の一部により構成されている。一方、閉断面セル303bにおいて、上セル壁303cおよび上斜セル壁303d,303jは、上板部材304の一部と中板部材305の一部とが重ね合わされて構成されている。
【0076】
閉断面セル303a,303bにおいて、縦セル壁303e,303iは、中板部材305の一部により構成され、上斜セル壁303d,303jの下縁から下方に垂下するように構成されている。縦セル壁303e,303iは、前後方向に隣り合う閉断面セル303a,303bで共有されるセル壁であって、一対の第1セル壁である。
【0077】
閉断面セル303aにおいて、下セル壁303gおよび下斜セル壁303f,303hは、下板部材306の一部と中板部材305の一部とが重ね合わせれて構成されている。一方、閉断面セル303bにおいて、下セル壁303gおよび下斜セル壁303f,303hは、下板部材306の一部により構成されている。
【0078】
閉断面セル303a,303bにおいて、縦セル壁303eと縦セル壁303iとは互いに平行に対向する状態で配設されている。ただし、閉断面セル303a,303bのそれぞれは、正八角形状ではなく、縦セル壁303e,303iの長さL3eがその他のセル壁303c,303d,303f~303h,303jの少なくとも一部の長さよりも長くなるように形成されている。具体的に、縦セル壁303e,303iの辺長さ(
図7(b)に示す断面での辺長さ)をL3eとする。また、下斜セル壁303fの辺長さ(
図7(b)に示す断面での辺長さ)をL3fとする。この場合に、閉断面セル303a,303bは、辺長さL3eが、辺長さL3fよりも長くなるように構成されている。
【0079】
本変形例に係る車体骨格構造が適用される車両においても、上記実施形態および上記変形例1と同じ効果を得ることができる。即ち、本変形例では、閉断面セル303a,303bが八角形(n=8)を有する点で上記実施形態および上記変形例1と相違するが、その他の点は上記実施形態および上記変形例1と同じである。そして、車両の前後方向において隣り合う閉断面セル303a,303b同士が共有するセル壁(縦セル壁)303e,303iの長さL3eが、当該閉断面セル303a,303bにおける縦セル壁303e,303iを除く少なくとも1つのセル壁(下斜セル壁)303fの長さL3fよりも長くなるように閉断面セル303a,303bが構成されている。このため、本変形例に係る車体骨格構造が適用される車両においても、上記実施形態および上記変形例1と同じ効果を得ることができる。
【0080】
[その他の変形例]
上記実施形態では、それぞれが六角形の断面形状を有する複数の閉断面セル103a,103bを備える補強部材103を採用し、上記変形例1では、それぞれが四角形の断面形状を有する複数の閉断面セル203a,203bを備える補強部材203を採用し、上記変形例2では、それぞれが八角形の断面形状を有する複数の閉断面セル303a,303bを備える補強部材303を採用することとしたが、本発明は、これに限定されない。閉断面セルの断面形状は、n角形(n:4以上の偶数)であれば、10角形や12角形、あるいはそれ以上であってもよい。
【0081】
また、上記実施形態および上記変形例1,2では、補強部材103,203,303がサイドシル10の中空部10aに収容されてなることとしたが、本発明は、これに限定されない。例えば、ピラー(フロントピラー、センターピラー、リヤピラー)の中空部に収容される補強部材として本発明の構成を採用することとしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態および上記変形例2では、曲折加工された3枚の板部材104~106,304~306を互いに固定して補強部材103,303を構成することとし、各板部材104~106,304~306の曲折の角部同士が合致するように板部材104~106,304~306同士を重ね合わせることとしたが、本発明は、これに限定されない。板部材の曲折に係る角部同士の間に、製造誤差の範囲内で車両の前後方向や上下方向にズレが生じてもよい。
【0083】
また、上記実施形態および上記変形例1,2では、3枚の板部材104~106,204~206,304~306を含む複数の板部材を互いに固定して補強部材103,203,303を構成することとしたが、本発明では、鋳造により少なくとも一部が一体形成されてなる補強部材を採用することも可能である。
【0084】
また、上記実施形態および上記変形例1,2では、車両1の側方(車幅方向の一方)からの側面視で、補強部材103,203,303がクロスメンバ11と重複する領域に配されていることとしたが、本発明では、必ずしも補強部材がクロスメンバと重複する領域に配されている必要はない。車幅方向に一方からの側面視で、補強部材がクロスメンバと重複せず、上下方向にズレを有する位置に配設されていてもよい。
【0085】
また、上記実施形態および上記変形例1,2では、サイドシル10に対してバッテリ12の筐体が直に固定されてなる構成を採用したが、本発明では、バッテリがサイドシルに固定されていなくてもよい。例えば、バッテリがクロスメンバに固定されてなる構成や、フロアパネルに固定されてなる構成としてもよい。
【0086】
また、上記変形例1では、補強部材203を構成する3枚の板部材204~206の内の板部材204,206が曲折加工されておらず、平板形状を有することとしたが、本発明では、上板部材204および下板部材206についても上下方向に波型形状となるように曲折加工されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 車両
1b フロア部
10 サイドシル(骨格部材)
11 クロスメンバ
101 サイドシルアウタ
102 サイドシルインナ
103,203,303 補強部材
103a,103b,203a,203b,303a,303b 閉断面セル(セル)
103d,103h 上斜セル壁(第1セル壁)
103e,103g,303d,303f,303h,303j 下斜セル壁
104,204,304 上板部材
105,205,305 中板部材
106,206,306 下板部材
203c 上セル壁
203d,203f 斜セル壁(第1セル壁)
303e,303i 縦セル壁(第1セル壁)