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特開2025-18310吸水パッドおよびこれを備えた吸水パンツ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018310
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】吸水パッドおよびこれを備えた吸水パンツ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20250130BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61F13/475
A61F13/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121902
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】523284572
【氏名又は名称】辻井 勇人
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(74)【代理人】
【識別番号】100181412
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】辻井 勇人
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA01
3B200BA02
3B200BA03
3B200BB03
3B200BB04
3B200BB05
3B200BB08
3B200CA03
3B200CA08
3B200CA11
3B200CA15
3B200DA02
3B200DA03
3B200DB02
3B200DB12
3B200DE01
(57)【要約】
【課題】縁部からの漏れを抑制し得た吸水パッドを提供する。
【解決手段】防水布と、前記防水布上に配された吸水材と、前記吸水材上に配された肌側布と、を備える吸水パッド本体と、前記防水布の外縁と前記肌側布の外縁とをパイピングテープを用いてパイピング処理してなるパイピングと、を備え、前記肌側布は、前記パイピングテープよりも吸水力が高く、且つ前記吸水材よりも吸水力が低く、前記吸水材は、前記パイピングテープと縫い付けられても溶着されてもおらず、且つ前記パイピングよりも内側領域で前記肌側布とのみ縫い付けられ、又は溶着されており、前記吸水パッドを平面透視した場合に、前記吸水材の外縁は、前記パイピングの内縁よりも内側に位置する吸水パッド。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水布と、前記防水布上に配された吸水材と、前記吸水材上に配された肌側布と、を備える吸水パッド本体と、
前記防水布の外縁と前記肌側布の外縁とをパイピングテープを用いてパイピング処理してなるパイピングと、を備え、
前記肌側布は、前記パイピングテープよりも吸水力が高く、且つ前記吸水材よりも吸水力が低く、
前記吸水材は、前記パイピングテープと縫い付けられても溶着されてもおらず、且つ前記パイピングよりも内側領域で前記肌側布とのみ縫い付けられ、又は溶着されており、
前記吸水パッドを平面透視した場合に、前記吸水材の外縁は、前記パイピングの内縁よりも内側に位置する吸水パッド。
【請求項2】
前記肌側布は、JIS L 1907の滴下法での吸水時間が12秒以下であり、ISO 17617のA1法での乾燥時間(100%)が70分以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸水パッド。
【請求項3】
前記吸水パッドを平面透視した場合に、前記吸水材の外縁は、前記パイピングの内縁よりも0.5~40mm内側に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸水パッド。
【請求項4】
前記吸水材は、前記肌側布側に接して配されたマイクロクロスと、
前記マイクロクロスよりも前記防水布側に配された吸水わたと、を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸水パッド。
【請求項5】
前記吸水材は、前記吸水材側から叩きつけて縫い付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸水パッド。
【請求項6】
前記肌側布は、メッシュ布である、
ことを特徴とする請求項1ないし5に記載の吸水パッド。
【請求項7】
前記肌側布は、不織布である、
ことを特徴とする請求項1ないし5に記載の吸水パッド。
【請求項8】
請求項1ないし5に記載の吸水パッドと、
前記吸水パッドが股下部に取り付けられた吸水パンツ本体と、を備え、
前記吸水パッドの前記防水布側が吸水パンツ本体側となるように取り付けられており、
前記吸水パッドの前記パイピングのみが吸水パンツ本体に縫い付けられ、又は溶着され、前記吸水材は吸水パンツ本体と縫い付けられても溶着されてもいない、吸水パンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水パッドおよびこれを備えた吸水パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
生理時の経血や尿等を吸収させることを目的として、吸水パッドが取り付けられたショーツやパンツが使用されている。このような吸水パッドでは、一旦吸収した水分が漏れ出すことの無い、高い液保持力が求められる。
【0003】
従来の吸水パッドの平面図を図5に、模式的な断面図を図6に示す。図5、6に示すように、吸水パッド50は、肌に接する側の表面であるメッシュ布52と、吸水材53と、ショーツと接する側の防水布54と、を備える吸水パッド本体51と、吸水パッド本体51の外縁をパイピングテープ57で挟んで縫い合わせてなるパイピング56と、を備えている。メッシュ布52、吸水材53、防水布54それぞれの外縁と、パイピングテープ57とは、縫い付けられて固定されてパイピング56が形成されており、パイピング56上には縫い目58が存在する。
【0004】
この構造の吸水パッドでは、防水布54が吸水材53から外部への水分の漏れ出しを防止し、吸水力の高いメッシュ布52とパイピングテープ57とが、吸水材53から肌側への水分の逆流を防止できる。
【0005】
近年、吸水パッドには快適使用への要望がさらに高まっており、水分の漏れ出しをさらに抑制する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3170247号
【0007】
特許文献1では、パイピングとパッド本体を弾性糸で縫着した縫着部から、水分が滲出することを規制する技術を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者が吸水パッドについて鋭意研究した結果、座るなどによって吸水パッドに圧力が加わる場合には、吸水した液が外部に漏れ出しやすいという問題があることを知った。
【0009】
本発明は、以上の問題を解決するためになされたものであり、圧力が加わった場合においても液漏れが起こりにくい吸水パッド、及びこれを用いた吸水パンツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明にかかる吸水パッドは、防水布と、前記防水布上に配された吸水材と、前記吸水材上に配された肌側布と、を備える吸水パッド本体と、前記防水布の外縁と前記肌側布の外縁とをパイピングテープを用いてパイピング処理してなるパイピングと、を備え、前記肌側布は、前記パイピングテープよりも吸水力が高く、且つ前記吸水材よりも吸水力が低く、前記吸水材は、前記パイピングテープと縫い付けられても溶着されてもおらず、且つ前記パイピングよりも内側領域で前記肌側布とのみ縫い付けられ、又は溶着されており、前記吸水パッドを平面透視した場合に、前記吸水材の外縁は、前記パイピングの内縁よりも内側に位置する吸水パッドである。
【0011】
ここで、パイピング部分は布の積層数が最も多く厚くなっており、圧力が集中しやすい場所であるため、液漏れが起こりやすい。しかしながら、上記構成の吸水パッドは、防水布、吸水材、肌側布の順で積層された吸水パッド本体とパイピングとを備えているが、パイピングテープとの縫い合わせ又は溶着は、吸水パッド本体全体に対してではなく、防水布と肌側布とのみに対して行われており、吸水材はパイピングテープと縫い付けられても溶着されてもいない。また、吸水材の外縁はパイピングの内縁よりも内側に位置している。
【0012】
このため、パイピング部分では吸水材が存在しない分厚みが薄くなって圧力が集中し難くなっているとともに、吸水材からパイピングに至る間に、水分の移動がしやすい縫い糸や縫い穴が存在しない。これらによって、圧力が加わった場合におけるパイピング部分からの液漏れを防止できる。さらに、パイピング部分の厚みが薄くなった結果、ごわつきや違和感が低減して履き心地が良くなるという効果も得られる。
【0013】
また、吸水材は肌側布と縫い付けられ、又は溶着されており、吸水材が所望の場所以外に移動することが防止されるため、所望の吸水力を持続的に発揮することができる。また、縫い合わせる場合には吸水材から肌側布への水のルートができることになるが、この部分はパイピング部分よりも積層枚数が少なく圧力が集中しにくいとともに、表面に位置する肌側布の吸水力が高いために、液漏れは防止される。なお、溶着の場合にはこのような水のルートがないためにこの問題自体が発生しない。また、表面に位置する肌側布が吸収した水分は、速やかに吸水材に移動するので、常にさらっとした肌触りが得られる。
【0014】
肌側布の吸水力は、パイピングテープの吸水力よりも高く吸水材の吸水力よりも低い。この吸水力の指標としては、JISL1907の滴下法での吸水時間を用いるものとする。この吸水時間は、パイピングテープ>肌側布>吸水材であり、肌側布の吸水時間はパイピングテープの1/2以下、吸水材の吸水時間は肌側布の1/2以下であることがより好ましい。また、吸水材の吸水量は、肌側布の吸水量よりも大きいことが好ましい。
【0015】
また、パイピングテープを用いることなく、防水布を肌側布にかぶせるように折り返して、防水布と肌側布とを縫い留めたり溶着したりする(防水布をパイピングに兼用する)方法もあるが、本発明のようにパイピングテープを別個儲ける構成では、耐久性に優れるなどの効果が得られる。
【0016】
このような吸水パッドを、肌側布を肌側、防水布を肌と反対側となるようにして使用することで、肌触りがよく、ショーツなどに水分が染み出すことが防止される。
【0017】
この肌側布の材料は特に限定されることはないが、たとえば素材がナイロン(ポリアミド)、ポリエステル、木綿、麻、シルク、ウール、テンセル、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、プロミックス、アクリル、ポリウレタンなどで作製されたものを利用できる。
【0018】
ここで、肌側布としては、JIS L 1907に準拠した滴下法での吸水時間が12秒以下であり、且つ、ISO 17617のA1法での乾燥時間(100%)が70分以下である布(以下、吸水速乾布と称する)を用いることが好ましい。また、吸水速乾布の上記吸水時間は、10秒以下がより好ましく、5秒以下がさらに好ましい。また、吸水速乾布の上記乾燥時間は、60分以下がより好ましく、45分以下がさらに好ましい。
【0019】
また、肌側布のISO 17617のA1法での乾燥時間(100%)は、吸水材の乾燥時間よりも短いことが好ましい。
【0020】
この吸水速乾布としては、(1)吸水速乾性を有する繊維を用いた織布、不織布、編布、(2)繊維の織り方や編み方によって吸水速乾性を実現したもの、(3)疎水性材料と親水性材料の組み合わせによって吸水速乾性を実現したもの、などとすることができる。
【0021】
ここで、上記(1)の吸水速乾性を有する繊維としては、高い吸水速乾性を有するものとして開発された機能性繊維を用いることが好ましい。
【0022】
上記(2)の繊維の織り方や編み方によって吸水速乾性を実現したものとして、たとえばメッシュ布は、その編み方によって高い速乾性を実現できるので、吸水速乾布として好適に利用することができる。
【0023】
この吸水速乾布としてのメッシュ布の材料は特に限定されることはないが、たとえば素材がナイロン、ポリエステル、木綿、麻、シルク、ウール、テンセル、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、プロミックス、アクリル、ポリウレタンなどで作製されたものを利用できる。
【0024】
また、吸水速乾布としてのメッシュ布の編み方も特に限定されず、メリヤス、ラッセル、トリコットなどが利用でき、メッシュ布は、メッシュ構造が複数積層された構成であってもよく、この場合空隙率が全て同じであっても異なっていてもよい。例えば、内部側から表面側に向かって空隙率が大きくなっている構成とすることができる。
【0025】
上記(3)の疎水性材料と親水性材料の組み合わせによって吸水速乾性を実現したものとして、たとえば人が触れる側に疎水性材料を用い、その内側に親水性材料を配置して、疎水性材料に触れた水分を親水性材料に速やかに吸収させることで、表面の疎水性材料による速乾性と親水性材料による吸水性とを兼ね備えたものとすることができる。疎水性材料と親水性材料とは、ともに公知の材料を用いることができ、たとえば疎水性材料には親水性のOH基を有さない繊維、親水性材料には親水性のOH基を多く有する繊維を用いることができる。
【0026】
また、吸水材としては公知のものを広く利用でき、たとえば吸水性及び保水性、洗濯耐性に優れた繊維を用いた織布、編布や不織布を用いることができる。吸水材の素材は特に限定されず、天然繊維や合成繊維を使用でき、中でも高吸水、高保水性を有するものとして開発された機能性繊維を用いることが好ましい。
【0027】
また、消臭・吸水速乾・抗菌防臭・防カビなどの機能を持たせた機能性繊維を、吸水材に含ませてもよい。また、吸水材は、一層構造でも複数層積層された構造であってもよく、たとえば吸水性に優れたマイクロ繊維を用いたクロスなどを含んだ構成としてもよい。
【0028】
また、防水布としては、防水加工がなされた布地を広く利用できる。その材料は特に限定されることはないが、たとえば素材がナイロン、ポリエステル、木綿、麻、シルク、ウール、テンセル、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、プロミックス、アクリル、ポリウレタンなどからなり、ポリウレタン樹脂コーティング、ビニールフィルムボンディングなどによって防水性が付与された布を利用することができる。
【0029】
また、パイピングテープとしては、適度な吸水性、防水性、撥水性、強度を備えた布地を広く使用できる。その材料は特に限定されることはないが、たとえば素材がナイロン、ポリエステル、木綿、麻、シルク、ウール、テンセル、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、プロミックス、アクリル、ポリウレタンなどからなるものを利用することができる。
【0030】
また、吸水材と肌側布とを縫い付ける場合に使用する糸や針としては公知のものを広く利用できる。その材料は特に限定されることはないが、糸はたとえば素材がナイロン、ポリエステル、木綿、麻、シルク、ウール、テンセル、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、プロミックス、アクリル、ポリウレタンなどのものを利用できる。針は例えば生地の糸を傷つけにくいボールポイント針を用いることが好ましい。また、これらの糸や針は、パイピング部分の縫い付けや、後述する吸水パッドと吸水パンツ本体との縫い付けに使用することができる。
【0031】
また、吸水材と肌側布とを溶着する方法は、超音波ミシン、高周波ウェルダー加工、ピンソニック加工などの、公知の熱可塑性繊維製の布同士を溶着する方法を採用できる。この場合、吸水材と肌側布の材料は、ナイロン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、プロミックス、アクリル、ポリウレタンなどの熱可塑性を有する合成繊維や半合成繊維を用いる。また、この溶着方法を、パイピング部分の溶着や、後述する吸水パッドと吸水パンツ本体との溶着に用いてもよい。
【0032】
これらの布や糸は、布自体、糸自体・又は布を構成する繊維の空隙率や断面形状などを適宜調整することにより、吸水力、速乾性を制御できる。例えば、繊維(糸)や布の空隙率を高めたり、表面積が大きくなる断面形状を採用したりすることで、毛細管現象による吸水力を得ることができるのと同時に、水分の移動性を高めて速乾性を高めることもできる。また、肌との接触面積を減らすような表面形状の布とすることで、さらっとした触感と高い速乾性を得ることができる。
【0033】
また、各布の厚みは、所望とする吸水量やサイズによって適宜設定すればよい。
【0034】
また、吸水材からパイピング外部への水分の移動ルート形成を確実に阻止し、且つ吸水力を十分に確保する観点から、吸水パッドを平面透視した場合に、吸水材の外縁は、パイピングの内縁よりも0.5~40mm内側に位置することがより好ましく、0.8~15mm内側に位置することがより好ましく、1.0~10mm内側に位置することがさらに好ましい。
【0035】
吸水材は、肌側布側に接して配されたマイクロクロスと、マイクロクロスよりも防水布側に配された吸水わたと、を備える構成とすると、吸水力と漏れ防止とのバランスをより高めることができるため好ましい。
【0036】
また吸水材は、肌側布に叩きつけるように縫い付けられている構成とすると、縫い代によって厚みが増えることがなく、また肌触りに悪影響も出ないため好ましい。
【0037】
上記課題を解決するための本発明にかかる吸水パンツは、上記の吸水パッドと、吸水パッドが股下部に取り付けられた吸水パンツ本体と、を備え、吸水パッドの防水布側が吸水パンツ本体側となるように取り付けられており、吸水パッドのパイピング部分のみが吸水パンツ本体に縫い付けられ、又は溶着されており、吸水材は吸水パンツ本体と縫い付けられても溶着されてもいない、吸水パンツである。
【0038】
このように、吸水材部分に縫い目や溶着跡が生じないように吸水パッドを吸水パンツに縫い付け、又は溶着することで、ショーツへの液の漏れ出しを防止し得た吸水パンツが得られる。なお、パイピング部分の全体が吸水パンツ本体と縫い付けられ、又は溶着されている必要はなく、パイピング部分の一部分だけ(例えば左右端部のみや上下端部のみなど)が吸水パンツ本体と縫い付けられ、又は溶着されている構成であってもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によると、多量の液を吸収した場合でも液の漏れ出しを防止し得た、使い心地の良い吸水パッド及び吸水パンツを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明にかかる吸水パッドを示す平面図である。
図2】本発明にかかる吸水パッドの模式的な断面図である。
図3】吸水パッドのパイピングと吸水材との重なりを示す平面透視図である。
図4】吸水パッドが取り付けられた吸水パンツを示す斜視図である。
図5】従来の吸水パッドを示す平面図である。
図6】従来の吸水パッドの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下本発明を、図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる吸水パッドを示す平面図であり、図2は本発明にかかる吸水パッドの模式的な断面図であり、図3は吸水パッドのパイピングと吸水材との重なりを示す平面透視図である。
【0042】
図1,2に示すように、本発明にかかる吸水パッド100は、肌に接する側の表面である肌側布11と、マイクロクロス13と吸水わた14の2層構造の吸水材12と、肌着側の防水布15と、を備える吸水パッド本体10と、防水布15の外縁と肌側布11の外縁とは、パイピングテープ21で挟んで縫い合わせてなるパイピング20と、を備えている。図2に示すように、パイピングテープ21は、肌側布11及び防水布15と縫い付けられて、縫い目32が形成されたパイピング20となっている。吸水材12はパイピング20と縫い付けられておらず(縫い目32と吸水材12とは重なっておらず)、パイピング20よりも内側領域で肌側布11とのみ縫い付けられていて縫い目31が形成されている。
【0043】
ここで、パイピング部分は布の積層数が最も多く厚くなっており、圧力が集中しやすい場所であるため、液漏れが起こりやすい。上記のような構成であると、吸水材12はパイピングテープ21と縫い付けられていないため、吸水材12からパイピング20の外部へ至る間に、水分の移動がし易い縫い糸や縫い穴が存在しない。また、パイピング20の部分には吸水材が介在していないため、布の積層数が少なくなっており、パイピング20部分にかかる圧力も小さくなっている。これらによって、パイピング部分からの液漏れが防止できる。
【0044】
また、吸水材12は肌側布11に叩きつけるように縫い付けられているため、吸水材12が所望の場所以外に移動することが防止され、所望の吸水力を持続的に発揮することができる。また、この縫い合わせにより吸水材12から肌側布11への水のルートができることになるが、肌側布11は吸水力が高く、且つこの部分に圧力が集中し難いことから、早期の液漏れは防止される。また、吸水材12と防水布15とが縫い付けられていないので、吸水材12から防水布15側に液漏れすることもない。
【0045】
また、肌側布11としては、被服用に広く使用される繊維を用いたメッシュ布とすることができる。また、吸水速乾性を有する繊維を用いた織布などを用いたり、肌側に疎水性材料、内部側に親水性材料が用いられた吸水速乾布などを用いたりしてもよい。
【0046】
また、肌側布11と吸水材12とは、その材料として合成繊維または半合成繊維を用い、叩きつけるように縫い付けるのに代えて、公知の熱可塑性繊維製の布の溶着方法(たとえば、超音波ミシン、高周波ウェルダー加工、ピンソニック加工など)によりこれらを溶着する方法を採用してもよい。
【0047】
ここで、図3に示すパイピング20の幅L1は、1~20mmであることが好ましく、3~10mmであることがより好ましく、4~6mmであることがさらに好ましい。
【0048】
パイピング20の内縁と吸水材12の外縁との距離L2は、0.5~40mmであることが好ましく、0.8~15mmであることがより好ましく、1.0~10mmであることがさらに好ましい。
【0049】
吸水材12の外縁と縫い目31(溶着の場合は溶着線)との距離L3は、0.6~20mmであることが好ましく、0.8~5mmであることがより好ましく、1~3mmであることがさらに好ましい。
【0050】
図4は、吸水パッドが取り付けられた吸水パンツを示す斜視図である。図4に示すように、上記の吸水パッド100を吸水パンツ本体200の股下部に取り付けることで、吸水パンツ300が得られる。この時、吸水パッド100の防水布15側が吸水パンツ本体200側となるようにし、吸水パッド100のパイピング20の部分のみが吸水パンツ本体200に縫い付けられ、吸水材12は吸水パンツ本体200と縫い付けられていないものとすることで、吸水パンツ本体200側への液漏れもまた防止できる。また、吸水パッド100と吸水パンツ本体200とは、縫い付けではなく溶着されていてもよい。
【0051】
(実施例1)
ポリエステル製のメッシュ布からなる肌側布11と、ポリエステルとナイロンとを用いたマイクロクロス13と、東洋紡製のランシールを用いた吸水わた14と、ポリウレタンコーティングがなされたポリエステルからなる防水布15と、ナイロンとポリウレタンとを用いたパイピングテープ21と、ポリエステル製の糸とを用い、ボールポイント針を用いて、最大長さ235mm、最大幅200mmの本実施例にかかる吸水パッドを作製した。
【0052】
この時、まず肌側布11とマイクロクロス13と吸水わた14とを重ね、吸水わた14側から叩きつけて縫い合わせ、こののち防水布15を重ねて吸水パッド本体10となした。こののち、パイピングテープ21を用いて、肌側布11の外縁と防水布15の外縁とをパイピング処理して、吸水材12(マイクロクロス13及び吸水わた14)はパイピングテープ21と縫い付けられていない吸水パッド100を完成させた。
【0053】
なお、パイピング20の幅L1は6mm、パイピング20の内縁と吸水材12の外縁との距離L2は1mm、吸水材12の外縁と縫い目31との距離L3は2mmとした(図3参照)。
【0054】
(比較例1)
吸水わた及びマイクロクロスのサイズを肌側布のサイズと同じとした(図6に示すように、吸水わたとマイクロクロスとからなる吸水材53が、パイピングテープ57と縫い付けられている構成とした)こと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1にかかる吸水パッドを作製した。
【0055】
(吸水性試験)
以下の条件で、吸水パッドの吸水性を試験した。
(1)吸水パッドの中央に人工尿(0.9%食塩水1Lに、尿素21gが溶解しているもの)を5mL滴下し、1分間放置する。
(2)滴下部にアクリル板と重りとを乗せ、50g/cmの荷重をかけて1分間放置する。
(3)目視で漏水の有無を確認する。
(4)漏水がない場合には、この状態の吸水パッドに対して再度(1)に戻って操作を繰り返す。漏水があった場合にはその時点での液量を試験結果とする。
【0056】
この結果、実施例1では滴下液量が40mL、比較例1では30mLの時点で漏水が確認された。この結果から、本発明によると、吸水材の使用量が少なくても、液漏れが生じてしまう時点の吸水量を多くでき、高い耐液漏れ性能が得られることが分かった。
【0057】
この理由は、次のように考えられる。パイピング部分の積層枚数が、比較例1のほうが吸水材12が存在している分多く、パイピング部分の厚みが厚くなっているために、圧力がより集中しやすい。また、比較例1では、吸水材からパイピング外部に繋がる、縫い糸や縫い穴という水分が移動可能な経路があるが、実施例1ではこのような水分の移動経路がない。これらにより、実施例のほうが吸水材の使用量が少なくても、加圧時の液漏れが生じにくくなったと考えられる。
【0058】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によると、圧力が加わった際の液漏れを効果的に抑制し得た吸水パッド及び吸水パンツを提供でき、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0060】
100 吸水パッド
10 吸水パッド本体
11 肌側布
12 吸水材
13 マイクロクロス
14 吸水わた
15 防水布
20 パイピング
21 パイピングテープ
31 縫い目
32 縫い目
50 吸水パッド
51 吸水パッド本体
52 メッシュ布
53 吸水材
54 防水布
56 パイピング
57 パイピングテープ
58 縫い目
200 吸水パンツ本体
300 吸水パンツ
図1
図2
図3
図4
図5
図6