(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018436
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】立体空中結像技術を用いた空中結像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20250130BHJP
【FI】
G02B30/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122133
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】523285373
【氏名又は名称】奥 秀太郎
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】弁理士法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥 秀太郎
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BA68
2H199BB12
2H199BB20
2H199BB65
(57)【要約】 (修正有)
【課題】観客が立体物の空中結像の凹凸反転を感じないで鑑賞することができる空中結像を可能とする空中結像装置を提供すること。
【解決手段】再帰反射シートを用いて空中に立体像を結像させるための空中結像装置であって、空中で結像させたい被写体と、前記被写体に光を照射するための光源と、前記光源から前記被写体に照射され前記被写体から反射した光を前記再帰反射シートに向けて反射するとともに、前記再帰反射シートで反射された光を透過するビームスプリッターとを備え、空中で結像させたい前記被写体の表面は実質的に連続した曲面で構成され、前記被写体の周囲には光を吸収する黒幕が配置され、前記ビームスプリッターは、表面に吸収型の直線偏光板を、裏面に反射型の直線偏光板を備えるビームスプリッターであることを特徴とする空中結像装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射シートを用いて空中に立体像を結像させるための空中結像装置であって、
空中で結像させたい被写体と、
前記被写体に光を照射するための光源と、
前記光源から前記被写体に照射され前記被写体から反射した光を前記再帰反射シートに向けて反射するとともに、前記再帰反射シートで反射された光を透過するビームスプリッターとを備え、
空中で結像させたい前記被写体の表面は実質的に連続した曲面で構成され、
前記被写体の周囲には光を吸収する黒幕が配置され、
前記ビームスプリッターは、表面に吸収型の直線偏光板を、裏面に反射型の直線偏光板を備えるビームスプリッターであることを特徴とする空中結像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の前記空中結像装置を舞台上に設置し、これを用いて結像される立体像を観客に提供することを特徴とする、空間演出方法。
【請求項3】
請求項1記載の前記空間結像装置を用いて結像される立体像を展示物として提供することを特徴とする、空間演出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体空中結像技術を用いた空中結像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
立体物を空中で結像させようとすると、その原理上、凹凸が反転した空中像が得られてしまう。したがって、空中に映像コンテンツを表示する従来の空中映像表示装置は、この凹凸の反転を回避するため、例えば、特許文献1(特開2023-001957)に見られるように、平面的な映像を空中に表示するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来技術の課題に鑑みて為されたものであり、空中に立体物を結像させた場合であっても、観客が立体物の空中結像の凹凸反転を感じないで鑑賞することができる空中結像装置を提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決しようと鋭意研究努力を重ねる過程において、好ましくは、以下の(1)~(5)を満たす条件で立体物を空中結像させた場合には、観客が凹凸反転を感じないで鑑賞することができる空中結像を提供し得ることを見出した:
(1)空中に結像させたい立体物(被写体)が連続した曲面を中心に構成されていること;
(2)空中に結像させたい立体物(被写体)に光源から光を照射した際に、物理的な障害物などによって立体物(被写体)に暗部が生じるなどして、当該立体物(被写体)の曲面の連続性が途切れないこと;
(3)空中に結像させたい立体物(被写体)のみに光を照射し、立体物(被写体)以外の部分には光を吸収するベルベットなどの黒幕を配置すること;
(4)空中結像装置が備えるビームスプリッターとしては、表面に吸収型の直線偏光板、裏面に反射型の直線偏光板を貼り付けたガラス板を使用すること;
(5)光源には被写体のみを照射することができるように、ハレーションの少ない灯体を使用すること;ハレーションの少ない灯体としては、例えば、LED光源のソースフォーなどを用いることができる。
【発明の効果】
【0006】
顔などの面(おもて)や人形、人物など立体物の被写体を、観客が凹凸反転を感じない空中結像として結像させることが可能になり、より臨場感のある空間演出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施態様に係る空中結像装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施態様に係る空中結像装置の構成を示す図である。
【0009】
本発明者らが見出した知見によれば、
図1に示される本実施態様に係る空中結像装置によれば、すなわち、連続した曲線で構成された立体物を被写体として用い、光の明暗などや物理的な障害物などによって被写体の曲線及び被写体の物体としての連続性が途切れないように、結像させたい被写体のみに光を照射し、結像させたい被写体以外の部分に光を吸収するベルベットなどの素材で構成された黒幕を配置し、ビームスプリッターには表面に吸収型の直線偏光板、裏面に反射型の直線偏光板をガラス板に張り付けて使用することにより、観客が空中結像の凹凸反転を感じないで鑑賞することのできる空中結像を提供することができる。
【0010】
以下、本発明の一実施態様に係る空中映像表示装置の動作について簡単に説明する。
【0011】
図1に示されるように、本実施態様に係る空中映像表示装置は、その内部に、空中で結像させたい立体物(被写体)8を備えている。本例において、被写体である立体物8は、能面であり、連続した曲面で構成されている。本発明に係る空中映像表示装置に用いられる立体物としては、本例のように連続した曲面で構成、又は、実質的に連続した曲面で構成され、全体としてなだらかな曲面を有する立体物が好ましい。
【0012】
また、本実施態様に係る空中映像表示装置は、被写体である立体物8を照射するための光源7を備えている。光源7は実質的に被写体である立体物8のみを照射するように構成されている。また、本例において、被写体である立体物8は、光源7から照射される光により、その曲面の連続性及び/又はその立体物としての連続性が途切れないように照射される。換言すれば、本例において、光源7と被写体である立体物8の間には物理的な障害物はなく、また、立体物8の形状も全体としてなだらかな曲面であるので、光源7から照射される光により照らされた立体物8には、部分的な明暗や照射の途切れなどが実質的に生じない。
【0013】
一方、被写体である立体物8の背後及び周囲には、光を吸収する黒幕10が配置されている。光源7は実質的に被写体である立体物8のみを照射するように構成されているものの、立体物8の周囲にも僅からながら光が照射される。立体物8の周囲に照射された光、換言すれば、立体物8以外の部分に照射された光は、この黒幕に吸収される。黒幕の素材に特段の制限はないが、例えば、ベルベットなどの素材であることが好ましい。
【0014】
光源7から照射され、立体物8に入射した光は、立体物8で反射する。立体物8で反射した光はビームスプリッター5に入射する。本例において、ビームスプリッター5は、表面に吸収型の直線偏光板4、裏面に反射型の直線偏光板6を張り付けたガラス板である。
【0015】
立体物8で反射し、ビームスプリッター5に入射した光の一部は、ビームスプリッター5で反射し、再帰反射シート9へ入射する。再帰反射シート9へ入射した光は、ビームスプリッター5へ再帰反射される。再帰反射シート9で再帰反射された光がビームスプリッター5を透過して、空中で結像し空中像3が形成される。
【0016】
本発明者らが見出した知見によれば、このようにして空中に結像した空中像3を観客の視点1から観察すると、驚くべきことに凹凸が反転しない像(虚像)として観察される。
【符号の説明】
【0017】
1 観客の視点
2 凹凸が反転しない(実際に見える)虚像
3 実際の空中像
4 偏光板(吸収型)
5 ビームスプリッター
6 偏光板(反射型)
7 光源
8 空中結像させたい、なだらかな曲面で構成された立体物(例:能面)
9 再帰反射シート
10 光を吸収するベルベットなどの黒布