(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018854
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20250130BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250130BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/02 M
F28D15/02 E
H05K7/20 Q
G06F1/20 A
G06F1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023132170
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】523307239
【氏名又は名称】JSCテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 郁
(72)【発明者】
【氏名】小糸 康志
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA07
5E322AA10
5E322BB03
5E322DA01
5E322DA02
5E322DA04
5E322DB06
5E322DB12
5E322FA01
(57)【要約】
【課題】 貯溜部に十分な量の熱媒体を貯留し、逆止弁に熱媒体から適切な圧力が加わるようにして、熱媒体が逆止弁を開いて受熱部に流入でき、熱媒体の循環に基づく冷却状態を維持可能な、冷却装置を提供する。
【解決手段】 受熱部11に熱媒体80を向かわせる帰還流路14に貯溜部17を設け、帰還流路14のみの場合より多い液相熱媒体を貯溜部17に一時的に貯溜可能とし、貯溜部17に溜まった液相熱媒体の重量に基づく圧力を逆止弁16に加えられることから、受熱部11への入熱量増大に伴う受熱部内部圧力の上昇に対しても、熱媒体80からの圧力で逆止弁16を開いて熱媒体80を受熱部11に流入させられ、熱媒体80の循環を確保して、発熱体に対する冷却を維持できる。また、装置全体を上下に大きくして帰還流路14の液相熱媒体から逆止弁16に加わる圧力を確保する必要はなく、装置全体をコンパクト化できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化を伴って循環する熱媒体により高温熱源から低温熱源への熱移動を継続的に生じさせる、ループ型サーモサイフォン方式の冷却装置において、
前記高温熱源としての所定の発熱体からの熱を内部の熱媒体に伝える中空の受熱部と、
当該受熱部より上に位置して内部の熱媒体の熱を前記低温熱源としての所定の外部流体に放出する中空の放熱部と、
前記受熱部の熱媒体出口を前記放熱部の熱媒体入口に連通させる管状の放熱流路と、
前記放熱部の熱媒体出口を前記受熱部の熱媒体入口に連通させる管状の帰還流路と、
当該帰還流路における前記受熱部の熱媒体入口側に設けられ、熱媒体の受熱部から帰還流路側への移動を制限する逆止弁とを備え、
前記帰還流路における所定箇所で帰還流路と連通して、又は帰還流路の一部をなして、所定量の熱媒体を貯溜可能とされる貯溜部が設けられ、
当該貯溜部が、前記逆止弁を開放する圧力を逆止弁に付加可能となる重量の熱媒体を少なくとも貯溜することを
特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の冷却装置において、
前記貯溜部が、前記発熱体で発生する単位時間あたりの熱量の値と前記貯溜部に貯留される熱媒体の重量下限値との相互の関係性に基づいて、前記熱量の値から導かれる熱媒体の重量下限値以上となる、所定重量の熱媒体を貯留することを
特徴とする冷却装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の冷却装置において、
前記熱量の値と熱媒体の重量下限値との関係性として、熱媒体の重量下限値が前記熱量の値を変数とする自然指数関数で示され、
前記貯溜部が、前記熱量の値を変数とする自然指数関数から導き出される熱媒体の重量下限値以上となる、所定重量の熱媒体を貯溜することを
特徴とする冷却装置。
【請求項4】
前記請求項1に記載の冷却装置において、
前記貯溜部が、前記帰還流路における前記放熱部の熱媒体出口との連通部分をなし、且つ、放熱部の下側に重なるようにして設けられることを
特徴とする冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の発熱体を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体やマイクロプロセッサ等の半導体部品は、作動するとそれに伴って熱が発生し、温度を上昇させる。大きな発熱を伴う半導体部品の場合、温度が上昇しすぎると、熱保護機能による処理能力低下に留まらず、作動不具合や破壊に繋がるおそれがある。このため、半導体部品が過度に温度上昇しないように、冷却することが以前から行われていた。
【0003】
半導体部品の冷却には、主に空冷式や水冷式の冷却装置が使用される。ただし、こうした従来の冷却装置は、半導体部品の発熱量が大きくなると、十分に冷却できないおそれがあり、冷却能力のより高い冷却装置が求められていた。
【0004】
冷却能力の高い冷却装置として、近年、作動流体を循環させてその液相と気相の相変化によって冷却するループ型の冷却装置が提案されている。
この冷却装置は、発熱体が配置された外壁から内壁に熱を伝えて、作動流体の蒸気を得る箱型の受熱部(受熱ユニット)と、受熱部に作動流体を注入する導入管と、受熱部の作動流体の蒸気を排出する導出管と、導出管を経由した作動流体の蒸気の熱を放出する放熱器と、導入管の開口部側に設けた逆止弁とを備える構成である。
【0005】
この冷却装置では、作動流体の循環方向は逆止弁以降の出口側圧力上昇によって決定される。そして、放熱器で液化した作動流体を逆止弁を介して受熱部に帰すこととなる。受熱部の内壁においては、導入管の開口部の外周で囲まれる面の内側から外側へスリットが設けられ、外壁側の発熱体の熱で、導入管内部の圧力が上昇することで、気泡と未蒸発の作動流体が混相流となって導出管側へ排出される。これにより、ポンプを必要とせず、吸熱性能に優れた冷却装置となっている。
このような従来の冷却装置の一例として、特許第4978401号公報に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献に記載の従来の冷却装置では、放熱部を出た作動流体を導入管や受熱部に到達させ、作動流体の循環を継続させることが欠かせない。そのためには、逆止弁における、逆流防止状態の維持のために弁を閉じようとする付勢力に抗って、作動流体が逆止弁を押し開く力が必要である。通常、この逆止弁を開ける力は、逆止弁の上流側に存在する液相の作動流体の重量に基づく圧力となっている。
【0008】
こうした従来の冷却装置では、発熱体における発熱量が増加すると、受熱部への入熱量が多くなるため、作動流体の単位時間あたり蒸発量も増加し、その分、受熱部の内圧が高くなる傾向にある。こうして受熱部の内圧が高くなると、受熱部に作動流体が逆止弁を経て導入管に達する逆流防止状態の維持のために、弁を閉じようとする力に抗って上から逆止弁を押し開く力が余計に必要となる。このため、逆止弁の上流側管路で逆止弁の上側に存在する液相の作動流体の量を増やし、その重量に基づく圧力を大きくしなければならない。
【0009】
逆止弁の上流側管路における液相の作動流体の量を増やすためには、例えば冷却装置全体をより高くして、管路を上下に大きくし、この管路に存在可能な液相の作動流体の量を増やすようにすることが考えられる。しかしながら、冷却装置全体の高さを大きくすることは、設置スペースの増大を招くことから、設置できる対象が限定されてしまう。すなわち、従来の冷却装置では、小型化と大発熱量処理の両方に対応することは難しかった。
【0010】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、貯溜部に十分な量の熱媒体を貯留し、逆止弁に熱媒体から適切な圧力が加わるようにして、熱媒体が逆止弁を開いて受熱部に流入でき、熱媒体の循環に基づく冷却状態を維持可能な、冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の開示に係る冷却装置は、相変化を伴って循環する熱媒体により高温熱源から低温熱源への熱移動を継続的に生じさせる、ループ型サーモサイフォン方式の冷却装置において、前記高温熱源としての所定の発熱体からの熱を内部の熱媒体に伝える中空の受熱部と、当該受熱部より上に位置して内部の熱媒体の熱を前記低温熱源としての所定の外部流体に放出する中空の放熱部と、前記受熱部の熱媒体出口を前記放熱部の熱媒体入口に連通させる管状の放熱流路と、前記放熱部の熱媒体出口を前記受熱部の熱媒体入口に連通させる管状の帰還流路と、当該帰還流路における前記受熱部の熱媒体入口側に設けられ、熱媒体の受熱部から帰還流路側への移動を制限する逆止弁とを備え、前記帰還流路における所定箇所で帰還流路と連通して、又は帰還流路の一部をなして、所定量の熱媒体を貯溜可能とされる貯溜部が設けられ、当該貯溜部が、前記逆止弁を開放する圧力を逆止弁に付加可能となる重量の熱媒体を少なくとも貯溜するものである。
【0012】
このように本発明の開示によれば、受熱部に熱媒体を向かわせる帰還流路に貯溜部を設け、帰還流路のみの場合より多い液相熱媒体を貯溜部に一時的に貯溜可能とし、貯溜部に溜まった液相熱媒体の重量に基づく圧力を逆止弁に加えられることにより、受熱部への入熱量増大に伴う受熱部内部圧力の上昇に対しても、熱媒体からの圧力で逆止弁を開いて熱媒体を受熱部に流入させられ、熱媒体の循環を確保して、発熱体に対する冷却を維持できる。また、貯溜部に液相熱媒体を溜めるようにすることで、装置全体を上下に大きくして帰還流路の液相熱媒体から逆止弁に加わる圧力を確保する必要はなく、十分な冷却性能を得つつ、装置全体をコンパクトにして設置に係る制約を小さくすることができる。
【0013】
また、本発明の開示に係る冷却装置は必要に応じて、前記貯溜部が、前記発熱体で発生する単位時間あたりの熱量の値と前記貯溜部に貯留される熱媒体の重量下限値との相互の関係性に基づいて、前記熱量の値から導かれる熱媒体の重量下限値以上となる、所定重量の熱媒体を貯留するものである。
【0014】
このように本発明の開示によれば、貯溜部の大きさを、これに貯留される熱媒体が、発熱体で発生する熱量から導かれる重量か、それ以上の重量まで貯溜可能となるように設定し、仮に発生する熱量が多くなっても、熱量に対応した重量以上の熱媒体から逆止弁に圧力を加えられるようにすることにより、逆止弁を断続的に開いて熱媒体を受熱部に流入させることができ、熱媒体を無理なく循環させて発熱体の冷却を継続させられる。
【0015】
また、本発明の開示に係る冷却装置は必要に応じて、前記熱量の値と熱媒体の重量下限値との関係性として、熱媒体の重量下限値が前記熱量の値を変数とする自然指数関数で示され、前記貯溜部が、前記熱量の値を変数とする自然指数関数から導き出される熱媒体の重量下限値以上となる、所定重量の熱媒体を貯溜するものである。
【0016】
このように本発明の開示によれば、貯溜部の大きさを、これに貯留される熱媒体が、発熱体で生じる熱量を変数とする関数式で求められた値以上の重量まで貯溜可能となるように設定し、仮に熱量が多くなっても、熱量に対応して逆止弁を開放する圧力を適切に付与可能と見積もられた重量以上の熱媒体から逆止弁に圧力が加わるようにすることにより、逆止弁を断続的に開いて熱媒体を受熱部に流入させることができ、熱媒体を確実に循環させて発熱体に対する冷却状態を継続できる。
【0017】
また、本発明の開示に係る冷却装置は必要に応じて、前記貯溜部が、前記帰還流路における前記放熱部の熱媒体出口との連通部分をなし、且つ、放熱部の下側に重なるようにして設けられるものである。
【0018】
このように本発明の開示によれば、貯溜部を放熱部の下に重ねるようにして帰還流路の端部に配設し、液相の熱媒体が貯溜部に貯留されると共に帰還流路内のほぼ全てを満たして逆止弁に圧力を加えることにより、帰還流路内に存在する液相の熱媒体の重量を逆止弁への圧力付与に有効利用でき、その分、装置全体の高さを抑えることができる。加えて、貯溜部を放熱部とまとめて一体に配置することで装置のコンパクト化が図りやすく、設置も容易に行える上、部品点数を削減して低コスト化も図れることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る冷却装置の概略構成説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る他の冷却装置における受熱部配置状態説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る冷却装置の概略構成説明図である。
【
図4】本発明の実施例における熱量と熱媒体重量との関係を示す第一のグラフである。
【
図5】本発明の実施例における熱量と熱媒体重量との関係を示す第二のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る冷却装置を前記
図1に基づいて説明する。
前記
図1において本実施形態に係る冷却装置1は、所定の発熱体からの熱を熱媒体80に伝える受熱部11と、熱媒体80の熱を所定の外部流体に放出する放熱部12と、受熱部11の熱媒体出口を放熱部12の熱媒体入口に連通させる放熱流路13と、放熱部12の熱媒体出口を受熱部11の熱媒体入口に連通させる帰還流路14と、この帰還流路における受熱部11の熱媒体入口側に設けられる逆止弁16と、所定量の熱媒体80を貯溜可能とされる貯溜部17とを備える構成である。
【0021】
本実施形態に係る冷却装置で用いられる熱媒体80は、半導体素子から発生する熱で液相から気相に相変化(蒸発)する温度特性を有する一方、化学的安定性に優れ、高い流動性を有する化合物、例えば、ハイドロフルオロエーテル等とされる。
【0022】
前記受熱部11は、発熱体としての半導体素子90に接して熱を受け取る受熱板11aと、この受熱板11aにおける半導体素子90との接触面とは反対側の面を覆うように設けられる筐体部11bとを備える構成である。受熱部11は、受熱板11aと筐体部11bとにより中空容器状とされ、受熱板11aと筐体部11bとの間の中空部分を、熱媒体80が流入出する受熱空間70としている。
【0023】
受熱部11は、この他、逆止弁16を通過した熱媒体80を受熱板11a近傍に導く導入管部11cを備える構成である。この導入管部11cは、受熱部11の熱媒体入口をなす筐体部11bの一部から受熱空間70に突出し、その先端を受熱板11aと接触させるか、受熱板11aとの間にわずかな隙間を介在させる状態として設けられる構成である。
【0024】
前記受熱板11aは、例えば、銅、アルミニウム等の、熱抵抗の少ない材質製の板状体である。この受熱板11aにおける半導体素子90との接触面とは反対側の面、すなわち、受熱空間70側の面には、導入管部11cの内側に面する箇所から導入管部11cの外側の受熱空間70に面する箇所にかけて複数の細い溝(図示を省略)が穿設される。
なお、受熱板11aにおける導入管部11cの内側に面する箇所は、受熱板11aの中央に位置し、半導体素子90との接触部位に対しちょうど反対側となる仕組みである。
【0025】
前記筐体部11bは、受熱部11の熱媒体出口として放熱流路13と連通する排出口11dを設けられる。受熱部11は、この排出口11dを経て受熱空間70から熱媒体80を放熱流路13へ送り出すこととなる。一方、筐体部11bは、受熱部11の熱媒体入口をなす開口部分に導入管部11cを一体に取り付けられ、帰還流路14から逆止弁16を経て受熱部11の受熱空間70に流入しようとする熱媒体80は、導入管部11c内にまず導入される仕組みである。
【0026】
受熱部11では、この受熱部11に達した熱媒体80がまず導入管部11cに流入し、この導入管部11c内側に面する受熱板11a表面の半導体素子90に最も近い箇所と接触する。ここで、熱媒体80は半導体素子90から受熱板11aに伝わった熱でその一部を相変化(蒸発)させる。この相変化に伴う体積膨張によって、導入管部11c内側部分の圧力が上昇する。そして、成長した気泡と未蒸発の熱媒体80が混相流となって、受熱板11a表面で導出管部11c内側から外側に通じた溝(図示を省略)、又は導入管部11c先端と受熱板11a間のわずかな隙間を経て、受熱空間70に達する。混相流となっている熱媒体80は、受熱空間70からさらに排出口11dを通じて放熱流路13に流出することとなる。
【0027】
こうした受熱部11における熱媒体80の相変化とそれに伴い半導体素子90を冷却する仕組みは、公知のこの種の冷却装置、例えば、前記特許文献1に示されるもの、と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0028】
前記放熱部12は、受熱部11より上に位置して熱媒体80の熱を低温熱源としての所定の外部流体に放出するものである。
放熱部12は、伝熱部となる隔壁で外部から隔離された中空部分に放熱流路13から熱媒体80を導入し、外部流体としての空気と熱媒体とを隔壁を介して熱交換させる熱交換器である。放熱部12の外部にはファン12aが設けられ、ファン12aにより強制的に発生させた空気流を隔壁に当てることで、空気と熱媒体との熱交換を促せる仕組みである。こうした放熱部12の構成は、内部を流れる冷却対象の流体から、周囲の空気に熱を放出する、ラジエータ等の公知の熱交換器と同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0029】
放熱部12に導入された気相の熱媒体は、外部の空気との熱交換で冷却され、凝縮して液相の熱媒体となる。放熱部12内の熱媒体は最終的に放熱部12を出て帰還流路14に進むこととなる。
【0030】
前記放熱流路13は、管状体として形成され、受熱部11における熱媒体出口を放熱部12における熱媒体入口に連通させるものである。
前記帰還流路14は、管状体として形成され、放熱部12における熱媒体出口を受熱部11における熱媒体入口に連通させるものである。この帰還流路14の所定箇所に貯溜部17が設けられる。
【0031】
前記逆止弁16は、帰還流路14における受熱部11の熱媒体入口側に設けられ、熱媒体80の受熱部11から帰還流路14側への移動を制限するものである。この逆止弁16で熱媒体80の逆流を抑制することで、装置における熱媒体80の循環方向が決定される。
【0032】
前記貯溜部17は、中空容器状とされ、帰還流路14における中間の所定箇所で帰還流路14の一部をなすように設けられて、内部に所定量の熱媒体80を貯溜可能とされるものである。
この貯溜部17は、逆止弁16を断続的に開放する圧力を逆止弁16に付加可能となる重量の熱媒体80を少なくとも貯溜するものである。
【0033】
より詳細には、貯溜部17は、発熱体としての半導体素子90で発生する単位時間あたりの熱量の値とこの貯溜部17に貯留される熱媒体80の重量下限値との相互の関係性に基づいて、熱量の値から導かれる熱媒体80の重量下限値以上となる、所定重量の熱媒体を貯留する。
【0034】
半導体素子90で発生する単位時間あたりの熱量の値と、貯留される熱媒体80の重量下限値との関係性とは、具体的には、熱媒体80の重量下限値が熱量の値を変数とする自然指数関数で示されることを指す。この関係性は、半導体素子で発生する熱量を変えた複数の条件を設定し、各条件ごとに熱媒体の循環が成立する熱媒体重量を取得する試験(後述の実施例参照)から導かれたものである。
【0035】
貯溜部17は、実際には、あらかじめ測定された半導体素子90で発生する単位時間あたりの熱量の値から、上記の自然指数関数を用いて導き出された熱媒体の重量下限値を基準として十分な貯溜量に設定される。そして、貯溜部17には、熱媒体の重量下限値以上となる重量分の熱媒体80が貯溜され、装置を循環することとなる。
【0036】
半導体素子90において発生が見込まれる最大熱量に基づいて取得した熱媒体の重量下限値に対し、コストや設置条件から許容される範囲でこの重量下限値以上となるように、貯溜部における熱媒体の貯溜量を設定するようにすれば、熱媒体の安定した循環を維持できる。
【0037】
すなわち、貯溜部17に貯溜される熱媒体80が、適切な貯溜量とされることで、貯溜部17より下側の帰還流路14に存在する熱媒体80と合わせて、受熱部11の内部圧力(特に、導入管部11c内側部分の圧力)に関わりなく、逆止弁16を断続的に開放可能とする圧力を逆止弁16に付加可能となる。
【0038】
次に、前記構成に基づく冷却装置における熱移動状態について説明する。前提として、半導体素子90では大電流が流れるなどして、熱が継続的に発生し、この半導体素子90で発生した熱の全てが、半導体素子90と接する受熱部11の受熱板11aへ伝わっている状況にあるものとする。
【0039】
半導体素子90で発生し、半導体素子90から受熱板11aへ伝わった熱は、受熱板11aの温度を上昇させる。
受熱部11では、帰還流路14から導入管部11cに流入した液相の熱媒体80が、受熱板11a表面に達し、受熱板11aから熱を受け取る。これに伴い、液相の熱媒体80の少なくとも一部が蒸発し、気相へと変化する。一方、受熱板11aの熱が熱媒体80に移動することで、受熱板11a及びこれと一体の半導体素子90のさらなる温度上昇を抑えられることとなる。
【0040】
熱媒体80の蒸発に伴って、導入管部11c内側部分の圧力が上昇し、気相と液相の混相流となった熱媒体80が導入管部11c内側から外側の受熱空間70に流出する。
導入管部11c外側の受熱空間70においても熱媒体80の圧力は高く、熱媒体80は排出口11dを通じて受熱部11から流出し、放熱流路13へ進行する。
【0041】
受熱部11では、熱媒体80の蒸発により、導入管部11c内側を含む受熱空間70の圧力が増加するものの、逆止弁16により熱媒体80が帰還流路14側へ向かうことはなく、熱媒体80を受熱部11から放熱流路13へ確実に進行させることができる。
【0042】
なお、熱媒体80が循環する、受熱部11、放熱流路13、放熱部12、及び帰還流路14の内部の圧力を、大気圧より低い圧力(例えば、真空)まで減圧し、熱媒体80の本来の沸点より低い温度で、熱媒体80を蒸発させるようにしてもよい。その場合、半導体素子90の熱で温度上昇した受熱板11aと接した熱媒体80を効率よく蒸発させて、半導体素子90に対する冷却能力を向上させることができる。また、大気圧では温度上昇した受熱板と接しても蒸発しない熱媒体を、減圧状況下では蒸発可能として問題なく用いることができるなど、熱媒体の選択の幅を広げられる。
【0043】
熱媒体80は、放熱流路13を経て放熱部12にさらに進行し、放熱部12でファン12aにより連続する気流とされた空気との熱交換が行われる。放熱部12では、気相の熱媒体80が凝縮し、液相になるなど、熱交換により熱媒体80の熱が空気に放出される。熱を放出した熱媒体80は、液相の状態で放熱部12から流出して帰還流路14へ進行する。
【0044】
帰還流路14へと進行した熱媒体80は貯溜部17に流入し、この貯溜部17からその下側の帰還流路14までの領域に溜まった状態となる。溜まった熱媒体80の一部は帰還流路14を通じて逆止弁16の上側に達しており、溜まった熱媒体80からの圧力が逆止弁16に加わることとなる。
【0045】
逆止弁16が閉状態にある間、貯溜部17及び帰還流路14に溜まった液相の熱媒体80の重量に基づく圧力が、逆止弁16の上側に加わる。この圧力は、逆止弁16を開放させようとする力である。
閉状態の逆止弁16に対し、液相の熱媒体80は、貯溜部17に溜まる量を徐々に増やしていき、熱媒体80から逆止弁16上側に加わる圧力も増大していく。
【0046】
一方、受熱部11では、逆止弁16が閉状態にある間、新たな熱媒体80の流入は起こらない。このため、受熱部11では、熱媒体80が流出し続けることに伴い、受熱空間70に存在する熱媒体80が減少し、導入管部11c内側を含む受熱空間70の圧力が次第に低下する。
【0047】
逆止弁16の閉状態継続に伴って、受熱空間70側から逆止弁16を押し上げる圧力(内圧)を含む、逆止弁16の閉状態を維持しようとする力に対し、熱媒体80から逆止弁16の上側に加わる圧力(逆止弁16を開放しようとする力)がより大きくなると、逆止弁16は一時的に開状態となる。逆止弁16が開放すると、帰還流路14の熱媒体80が逆止弁16を通って受熱部11に流入し、受熱空間70における導入管部11c内側部分に達する。
【0048】
受熱部11への新たな熱媒体80の流入により、受熱空間70の圧力が回復すると共に、貯溜部17及び帰還流路14に溜まっていた液相の熱媒体80が減少し、帰還流路14で熱媒体80から逆止弁16上側に加わる圧力が低下する。これにより、熱媒体80から逆止弁16の上側に加わる圧力が、逆止弁16の閉状態を維持しようとする力より小さくなると、逆止弁16は閉状態に戻る。
受熱部11では、液相の熱媒体80が導入管部11cに流入することで、液相の熱媒体80の蒸発が生じ、これ以降、上記同様の過程が繰り返される。
【0049】
以上のような熱媒体80の受熱部11、放熱流路13、放熱部12、及び帰還流路14における循環で、半導体素子90から熱媒体80への熱移動(受熱)と、熱媒体80から外部の空気への熱移動(放熱)とが継続して進行し、結果として半導体素子90の冷却を連続的に実行できることとなる。
【0050】
発熱体である半導体素子90における発熱量が増加すると、受熱部11の受熱板11aへの入熱量が多くなり、受熱板11aから受熱部11内の熱媒体80への伝熱も増大する。このため、熱媒体80の単位時間あたり蒸発量も増加し、その分、受熱部11の内圧も高くなる。
【0051】
こうして受熱部11の内圧が高くなることは、逆止弁16を閉状態に維持しようとする力が強まることを意味する。よって、逆止弁16を開放して熱媒体80を受熱部11に流入させるためには、逆止弁16に上から加わる圧力が、受熱部11の内圧が高まった場合に対応可能に増強された状況を、必要に応じて得られることが不可欠である。
【0052】
本実施形態では、帰還流路14に貯溜部17を設け、適切な重量の熱媒体80を貯溜できるようにしていることで、循環する熱媒体80が貯溜部17に達して溜まると、帰還流路14を通じて逆止弁16の上側に加わる圧力を十分大きくすることができる。すなわち、十分な重量の熱媒体80が貯溜部17に溜まり、これらの熱媒体80に基づいて逆止弁16に加わる圧力が逆止弁16を開放可能な大きさに達すると、逆止弁16が開放して液相の熱媒体80を受熱部11に流入させることができる。
【0053】
帰還流路14における液相の熱媒体80の重量を増やし、逆止弁16の上側に加わる圧力を大きくするためには、上記の他に、冷却装置全体をより高くして、帰還流路を上下に大きくし、この帰還流路により多くの液相の熱媒体を溜められるようにすることが考えられる。しかしながら、冷却装置全体の高さを大きくすることは、装置設置スペースの増大を招き、容易に設置できないという問題が生じる。
これに対し、本実施形態に係る冷却装置では、装置全体の高さを抑えることができ、小型化と大発熱量への対応の両立が図れ、極めて有用である。
【0054】
このように、本実施形態に係る冷却装置においては、受熱部11に熱媒体80を向かわせる帰還流路14に貯溜部17を設け、帰還流路14のみの場合より多い液相熱媒体80を貯溜部17に一時的に貯溜可能とし、貯溜部17に溜まった液相熱媒体80の重量に基づく圧力を逆止弁16に加えられることから、受熱部11への入熱量増大に伴う受熱部内部圧力の上昇に対しても、熱媒体80からの圧力で逆止弁16を開いて熱媒体80を受熱部11に流入させられ、熱媒体80の循環を確保して、発熱体である半導体素子90に対する冷却を維持できる。
【0055】
また、貯溜部17に液相熱媒体80を溜めるようにすることで、装置全体を上下に大きくして帰還流路14の液相熱媒体80から逆止弁16に加わる圧力を確保する必要はなく、十分な冷却性能を得つつ、装置全体をコンパクトにして設置に係る制約を小さくすることができる。
【0056】
なお、前記実施形態に係る冷却装置において、受熱部を一つ設けて熱媒体を循環させ、発熱体からの熱を熱媒体に放出させる構成としているが、これに限られるものではなく、
図2に示すように、受熱部11を複数並列に設けてそれぞれで熱媒体に熱移動させて発熱体(半導体素子90)を冷却する構成とすることもできる。
【0057】
各受熱部11に接する発熱体の発熱量に対応した熱媒体重量以上の熱媒体80が貯溜部17に貯留されているのであれば、複数の受熱部11が並列に接続された場合でも、各受熱部11に熱媒体80を流入させて、各受熱部11で発熱体から熱媒体80に熱移動させ、発熱体の冷却を実行できる。冷却装置において、貯溜部17での熱媒体80の貯溜が十分なものとなっていれば、熱媒体80の受熱部11への循環は、受熱部及び熱媒体流路の設置数の変動に対しロバスト性を有するといえ、熱媒体の安定した循環が可能である。
【0058】
また、前記実施形態に係る冷却装置において、放熱部12では熱媒体80と熱交換させる空気を、ファン12aで強制的に放熱部12へ通風することで、熱媒体80と熱交換する空気を絶えず入れ替え、熱交換における温度条件がなるべく変化しないようにする構成としているが、これに限られるものではない。例えば、自然風が放熱部に導入されるように放熱部を配置したり、冷却装置自体が移動する物体(例えば、電気自動車など)に設けられる場合に、その移動に伴って生じる空気流が流入するように放熱部を配置したり、熱交換後の温まった空気の自然対流で新たな空気が放熱部に順次導入されるような放熱部配置状態であれば、ファン等を用いない自然通風で熱交換を行う放熱部構成とすることもできる。
【0059】
また、前記実施形態に係る冷却装置において、放熱部12で熱媒体80と熱交換させる外部流体として、空気を用いる構成としているが、これに限らず、水等の液体を外部流体として用いる構成とすることもできる。その場合、前記実施形態同様に、ポンプ等で強制的に液体を放熱部に送り込んで、熱媒体と熱交換させるようにしてもよく、また、大量の液体が存在して、熱媒体との熱交換を経た液体が適宜入れ替わることで、液体側の温度変化をほとんど無視できる箇所(例えば、川や湖、海など)に、放熱部を液中への浸漬状態で設けて、液体と熱媒体との熱交換を行わせるようにしてもかまわない。
【0060】
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係る冷却装置においては、貯溜部17を帰還流路14の中間に設ける構成としているが、これに限らず、第2の実施形態として、
図3に示すように、貯溜部27を放熱部22の近傍となる帰還流路24の端部に設けて、放熱部22と一体化させる構成とすることもできる。
【0061】
この場合、放熱部22と貯溜部27は上下に繋がった構造となり、放熱部22に入った熱媒体80が熱交換後、液相の熱媒体はそのまま、気相の熱媒体は凝縮して液相の熱媒体となった状態で、貯溜部27に流下することとなる。
【0062】
一体となった放熱部22と貯溜部27、及び貯溜部27に接続する帰還流路24以外の、冷却装置2を構成する受熱部21、放熱流路23、及び逆止弁26については、前記第1の実施形態と同様のものであり、説明を省略する。
【0063】
なお、貯溜部27は、放熱部22の上側のファン22aで強制的に放熱部22に通風された空気を通過させる通路を複数設けられており、放熱部22で熱媒体80と熱交換した後の空気を滞りなく流出させて、放熱部22で熱交換を継続的に行える仕組みを有していることはいうまでもない。
【0064】
このように、貯溜部27を放熱部22の下に重ねるようにして帰還流路24の端部に配設し、液相の熱媒体80が貯溜部27に貯留されると共に帰還流路内のほぼ全てを満たして逆止弁26に圧力を加えることから、帰還流路24内に存在する液相の熱媒体80の重量を逆止弁26への圧力付与に有効利用でき、その分、装置全体の高さを抑えることができる。
加えて、貯溜部27を放熱部22とまとめて一体に配置することで装置のコンパクト化が図りやすく、設置も容易に行える上、部品点数を削減して低コスト化も図れることとなる。
【実施例0065】
本発明の開示に係る冷却装置により、貯溜部に溜まった状態の液相熱媒体が受熱部に流入して、熱媒体の装置内循環を実現し、発熱体の冷却を継続実行可能であるか否かを評価した。具体的には、発熱体から発する熱量の大きさを変えつつ、冷却装置で熱媒体の循環が成立した状態での貯溜部における熱媒体の重量を取得して、所定の熱量に対応して冷却装置を安定的に作動させるために必要な熱媒体重量の下限値の条件について評価検証した。
【0066】
本発明の開示に係る冷却装置の実施例1として、前記実施形態で示した、熱媒体を循環させて発熱体に対する冷却を行う冷却装置の例について、発熱体で生じる熱量と、循環させる熱媒体の貯溜部に貯溜される重量の条件とをそれぞれ変えて、発熱体の冷却を実行する試験を行い、熱量と熱媒体重量の関係を調べた。
【0067】
冷却装置の逆止弁には、帰還流路及び貯溜部における、逆止弁から気液界面までの液相熱媒体の液面高さに相当する圧力水頭、すなわち、液相熱媒体の重量に基づく圧力が作用する。液相熱媒体が逆止弁を開いて受熱部に流入し、冷却装置を循環できれば、その際の液相熱媒体の液面高さから求められる液相熱媒体の重量が、受熱部が受け取る熱量に対し有効な貯溜部の熱媒体重量であるといえる。
試験では、所定の熱量に対し、冷却装置を安定して作動させられる貯溜部での熱媒体重量の下限値の条件を見出すことを目的としている。
【0068】
冷却装置は、前記実施形態同様の構成であり、装置全体の高さ、すなわち受熱部下部から放熱部上部までの高さは1200mmである。熱媒体には、ハイドロフルオロエーテル(ノベック(登録商標)7000)を用いた。この熱媒体は、試験開始前に、冷却装置内の空気を真空ポンプで排気した後、冷却装置内に充填される。
【0069】
受熱部は、銅製の受熱板を除いて透明なポリカーボネート製とし、内部を可視化されている。受熱板の熱を受け取る表面の面積は、400mm2(20mm×20mm)である。この受熱部に接する発熱体として、三つのカートリッジヒータを底部に設けた黄銅製ヒーティングブロックが用いられる。受熱部はヒーティングブロック上に配置され、ヒータで加熱されたヒーティングブロックから熱を受け取る。ヒーティングブロックでは、発生熱量を求めるために、ヒーティングブロック内の三箇所に熱電対を設けて、それら三箇所の温度を測定している。発生熱量は、三箇所の測定温度から、フーリエの法則を用いて算出される。
【0070】
一方、放熱部は、熱媒体流路と冷却水流路が伝熱プレートを隔てて配置されるプレート式熱交換器とされ、熱媒体を冷却水と熱交換させる。放熱部の冷却水流路は、冷却水を供給する恒温槽と管で接続されており、恒温槽から25℃の冷却水を1.5L/分で供給される。
【0071】
放熱流路と帰還流路は、半透明樹脂製で内径5.5mmのパイプとされ、内部の熱媒体を観察可能とされている。帰還流路の一部をなすように設けられる貯溜部は、内径56.0mmの円筒形とされる。
【0072】
試験は、ヒーティングブロックを加熱し、受熱部に熱が伝わるようにして行われる。
ヒーティングブロックのカートリッジヒータに供給する電力を段階的に増加させ、発熱体としてのヒーティングブロックでの発生熱量を五通り設定した。ヒーティングブロックで生じさせた五通りの熱量Pは、それぞれ、100、200、310、380、420(単位:W)となった。
【0073】
試験では、各熱量ごとに、貯溜部における、逆止弁から気液界面までの液相熱媒体の液面高さとして現れる熱媒体の貯溜量を複数通り変えて、液相熱媒体が受熱部に流入して装置を循環し、冷却装置の安定的な作動を維持可能となる、液相熱媒体の最低液面高さを測定した。そして、最低液面高さから貯溜部での熱媒体重量を求めて、所定の熱量に対し冷却装置の安定的な作動を維持するために必要な熱媒体重量の下限値の条件を見出した。
【0074】
五通りの各熱量Pでの熱媒体の循環が成立する最低限の液面高さh(単位:mm)と、この値から求めた熱媒体の重量下限値G(単位:g)を、それぞれ表1に示す。
【0075】
【0076】
また、五通りの各熱量Pに対し、対応する熱媒体の重量(下限値)Gをプロットしたグラフを
図4、
図5に示す。
図5に示されるように、熱量Pに対応する熱媒体重量Gの分布は、縦軸(重量)を対数標記としたグラフにおいてほぼ直線状となっており、熱量Pと重量(下限値)Gの関係が自然対数関数として示されると推定できる。すなわち、発熱体での発生熱量が増大するほど、それに対応する熱媒体の重量下限値が著しく増加していく関係にあると推定される。
【0077】
熱量と重量の各値から近似曲線を求めると、重量Gは熱量Pの自然対数関数、
G=86.779e0.0066P
としてあらわせる。
【0078】
図4及び
図5のグラフ上で、上記自然対数関数を示す曲線又は直線が、各熱量に対応する熱媒体の重量下限値とみなすことができる。これらのグラフ上で、熱媒体の重量が自然対数関数を示す曲線又は直線より上側の値となる、すなわち、貯溜部における熱媒体重量が下限値以上となるように貯溜部で熱媒体を貯溜するようにしていれば、発生熱量に対し無理なく熱媒体を受熱部に流入させて装置内循環を継続でき、冷却装置の安定的な作動を維持できるといえる。
【0079】
以上の結果から、本発明の開示に係る冷却装置が、発熱体で発生する熱に対し、この発熱体で発生する単位時間あたりの熱量の値から導かれる熱媒体の重量下限値以上となる、所定重量の熱媒体を貯留部により貯留することで、逆止弁を開放する圧力を逆止弁に付加可能であり、熱媒体を循環させて発熱体の冷却を実現できることは明らかであるといえる。