(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018858
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】副甲状腺機能低下症の治療における副甲状腺ホルモン化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/29 20060101AFI20250130BHJP
A61P 5/18 20060101ALI20250130BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20250130BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20250130BHJP
A61P 3/14 20060101ALI20250130BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20250130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250130BHJP
A61K 31/59 20060101ALI20250130BHJP
C07K 14/635 20060101ALI20250130BHJP
C12N 15/16 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K38/29 ZNA
A61P5/18
A61P19/08
A61P19/10
A61P3/14
A61K33/06
A61P43/00 121
A61K31/59
C07K14/635
C12N15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】55
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023141880
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】63/515,944
(32)【優先日】2023-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年9月9日に米国骨代謝学会(ASBMR)2022年 年次総会(the American Society for Bone and Mineral Research 2022 Annual Meeting(ASBMR)) 要旨集サイト(https://www.asbmr.org/meetings/2022-abstracts)において、プレゼンテーション番号:1111「副甲状腺機能低下症治療のための新規治験中の長時間作用型PTHアナログであるAZP-3601の有効性及と安全性 3か月の多施設非盲検第2a相試験の最初のコホートの結果」として公開
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】523333319
【氏名又は名称】アモリット ファルマ
【氏名又は名称原語表記】AMOLYT PHARMA
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】カラー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アラス、ソラヤ
(72)【発明者】
【氏名】スムレイ、マルク
(72)【発明者】
【氏名】アブリバ、ティエリ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA19
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4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
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4C086HA04
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4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZC06
4C086ZC21
4C086ZC51
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA19
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象における副甲状腺機能低下症(HP)の管理および/または治療のための方法を提供する。
【解決手段】本方法は、ある用量の特定のアミノ酸配列を有する循環副甲状腺ホルモン(PTH)化合物を対象に投与する工程を含み、かつPTH化合物の投与が骨の完全性を維持または改善する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における副甲状腺機能低下症(HP)の管理および/または治療のための方法であって、当該方法が、ある用量のPTH化合物を前記対象に投与する工程を含んでなり、ここで前記PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するものであり、かつ前記PTH化合物の投与が骨の完全性を維持または改善するものである、方法。
【請求項2】
前記PTH化合物の前記用量が、1日用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PTH化合物の前記用量が、10μg/日~120μg/日である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記PTH化合物の前記用量が、10μg/日~100μg/日である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記PTH化合物の前記用量が、10μg/日~80μg/日である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記PTH化合物の前記用量が、10μg/日~40μg/日である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記PTH化合物の初回用量が投与されたときから、前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の前記初回用量が投与されたときから12週間以内に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の前記初回用量が投与されたときから10週間以内に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の前記初回用量が投与されたときから6週間以内に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の前記初回用量が投与されたときから4週間以内に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の前記初回用量が投与されたときから2週間以内に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、高カルシウム尿症対象である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、高カルシウム尿症対象における尿中カルシウムレベルをさらに正常化する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、周閉経期または閉経後の女性である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、骨減少症または骨粗鬆症を患っている、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が、皮下注射による、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記皮下投与が、ペン型注射器による、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の前記用量の前記投与が前記対象における安定なアルブミン補正血清カルシウムレベルをもたらすまで、前記標準治療の投与を減少させる工程を含む、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記安定なアルブミン補正血清カルシウムレベルが、8.3mg/dL~10.6mg/dLである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記安定なアルブミン補正血清カルシウムレベルが、7.8~9.0mg/dLである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
HPの前記標準治療の前記投与が、経口カルシウムおよび活性ビタミンDの前記対象への投与を減少させる工程を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
HPの前記標準治療の前記投与を減少させる工程が、活性ビタミンDの投与が除かれ、前記カルシウムの前記投与が500mg/kg以下に低減されるまで、段階的な手法で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
副甲状腺機能低下症を患う高カルシウム尿症対象における尿カルシウムレベルを正常化するための方法であって、前記方法が、ある用量のPTH化合物を前記対象に投与する工程を含んでなり、ここで前記PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するものである、方法。
【請求項24】
前記PTH化合物の前記投与が、骨の完全性を維持または改善する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記PTH化合物の前記用量が、1日用量である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記PTH化合物の前記1日用量が、10μg/日~100μg/日である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記PTH化合物の前記1日用量が、10μg/日~80μg/日である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記PTH化合物の前記1日用量が、10μg/日~40μg/日である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程をさらに含む、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の初回用量が投与されたときから12週間以内に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の初回用量が投与されたときから10週間以内に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の初回用量が投与されたときから6週間以内に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の初回用量が投与されたときから4週間以内に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の初回用量が投与されたときから2週間以内に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、周閉経期または閉経後の女性である、請求項23~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、骨減少症または骨粗鬆症をさらに患っている、請求項23~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記投与が、皮下注射による、請求項23~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記皮下投与が、ペン型注射器による、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象においてHPの標準治療を漸減する工程が、前記PTH化合物の前記用量の前記投与が前記対象における安定なアルブミン補正血清カルシウムレベルをもたらすまで、前記標準治療の投与を減少させる工程を含む、請求項23~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記安定なアルブミン補正血清カルシウムレベルが、8.3mg/dL~10.6mg/dLである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記安定なアルブミン補正血清カルシウムレベルが、7.8~9.0mg/dLである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
HPの前記標準治療の前記投与を減少させる工程が、経口カルシウムおよび活性ビタミンDの前記対象への投与を減少させる工程を含む、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
HPの前記標準治療の前記投与を減少させる工程が、活性ビタミンDの投与が除かれ、前記カルシウムの前記投与が500mg/kg以下に低減されるまで、段階的な手法で行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
副甲状腺機能低下症を患う対象における定常状態血液カルシウムレベルを維持するための方法であって、当該方法が、ある用量のPTH化合物を前記対象に投与する工程を含んでなり、ここで前記PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するものである、方法。
【請求項45】
対象における副甲状腺機能低下症を管理または治療するための方法であって、
i)ある用量のPTH化合物を前記対象に投与する工程であって、前記PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するものである工程と、
ii)前記対象を副甲状腺機能低下症のための標準治療の治療から漸減する工程と
を含んでなる、方法。
【請求項46】
前記方法が、前記対象における骨の完全性を維持する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
副甲状腺機能低下症の対象における骨代謝回転を回復させるための方法であって、前記方法が、ある用量のPTH化合物を前記対象に投与する工程を含んでなり、ここで前記PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するものである、方法。
【請求項48】
配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するPTH化合物を、ある用量で含む医薬組成物であって、投薬量が10μg/日~120μg/日である、医薬組成物。
【請求項49】
配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するPTH化合物を、ある用量で含む医薬組成物であって、投薬量が10μg/日~100μg/日である、医薬組成物。
【請求項50】
配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するPTH化合物を、ある用量で含む医薬組成物であって、投薬量が20μg/日~100μg/日である、医薬組成物。
【請求項51】
請求項48または49に記載の医薬組成物を含む、注射用ペン。
【請求項52】
対象における副甲状腺機能低下症を管理または治療するための方法であって、前記方法が、i)経口カルシウムおよび活性型ビタミンDサプリメントを必須とせずに血清カルシウムレベルを正常範囲内で維持し、ii)24時間尿中カルシウムを正常化し、iii)骨の完全性を維持し、当該方法が、ある用量のPTH化合物を前記対象に投与する工程を含んでなり、ここで前記PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するものである、方法。
【請求項53】
前記対象において副甲状腺機能低下症の標準治療を漸減する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
対象の集団における副甲状腺機能低下症を管理または治療するための方法であって、前記方法が、i)経口カルシウムおよび活性型ビタミンDサプリメントを必須とせずに血清カルシウムレベルを正常範囲内で維持し、ii)24時間尿中カルシウムを正常化し、iii)骨の完全性を維持し、当該方法が、ある用量のPTH化合物を前記対象集団中の対象に投与する工程を含んでなり、ここで前記PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副甲状腺機能低下症の治療における副甲状腺ホルモン化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
副甲状腺機能低下症(HP)は、循環副甲状腺ホルモン(PTH)の不存在または不適切に低い濃度によって特徴付けられる希少疾患であり、低カルシウム血症、高リン血症、および尿におけるカルシウムの分画排泄率(FECa)の上昇、または高カルシウム尿症をもたらす。
【0003】
PTHの生理学的役割は、いくつかの生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たす血清カルシウムの恒常性バランスを維持することにある。厳密に調節されるこのプロセスにおいて、低血清カルシウムは副甲状腺細胞におけるカルシウム感知受容体によって感知され、これは次に副甲状腺を刺激して、PTHを血液循環に放出する。シグナル伝達は、複数の別個の部位でPTH受容体によってモジュレートされ、腸における食事カルシウムの吸収の増加(すなわち、25-ヒドロキシビタミンDを1,25-ジヒドロキシビタミンDに変換することによって)、腎臓による排泄前の血液へのカルシウムの再吸収の増加、および骨基質のミネラルリッチ沈着物からのカルシウムの放出をもたらす(参考文献1)。
【0004】
HPの臨床症状は、筋肉、脳、心臓、および腎臓を含む多数の組織および臓器系に対する影響を反映しており、感覚異常(灼熱感またはチクチク感)および筋痙攣を伴う軽度の疾患から、喉頭痙攣および発作などの重度の症状までさまざまである(参考文献2)。HPにおいて、骨の再吸収および形成の生物学的マーカーの低減を伴って、骨代謝回転は低下する。HPでは骨代謝回転が低下するため、年齢・性別が一致した対照と比較して平均骨塩量の増加をもたらすが、損傷を受けた骨または過度に成熟した骨の蓄積に起因して、広範囲の異常な骨構造をもたらす(参考文献3)。骨密度の増加と骨質の低下はバランスを作り出すように見え、その結果、HP患者における骨折のリスクは、集団研究における正常対象のリスクと類似するように見える(参考文献13、14)が、HP患者の骨密度を減少させる治療は、質の悪い骨構造による骨折のリスクを増加させる可能性があると考えるのが論理的である。最近の研究では、実際、対応する健常者と比較して、副甲状腺機能低下症患者では、形態学的に椎体骨折が増加していることが証明されている(参考文献15、16)。
【0005】
米国におけるおよそ80,000人および欧州連合におけるおよそ110,000人のHP患者のうち約80%が女性である。利用可能な治療にもかかわらず、患者は、持続的な生活を変えるような症状を経験し、しばしば合併症および併存疾患を発生して生活の質(QoL)を低下させ、特定の臨床的ニーズを有する患者集団を生み出す。副甲状腺機能低下症を有する患者のおよそ17%は、骨減少症または骨粗鬆症を有し、53%は、骨粗鬆症を発生するリスクが増加する周閉経期または閉経後の女性である。これらの患者について、いかなる骨量減少も有害である。加えて、これらの患者のおよそ半分は、腎石灰化症、腎臓結石、および進行性腎疾患の発生の原因となる高カルシウム尿症を有する。結果として、副甲状腺機能低下症を有する患者のおよそ26%は、慢性腎疾患または慢性腎不全を有し、重要な治療の目標として、尿中カルシウム排泄料を減らすことの重要が強調されている。
【0006】
HP患者の治療および管理における主要な目標は、次のとおりである:i)安定な血清カルシウム濃度を24時間正常レベルで維持し、それによって、HPの兆候および症状を24時間改善または予防すること、ii)高カルシウム尿症を有する患者における尿中カルシウム排泄、または尿におけるカルシウムのレベルの上昇を正常化して、腎機能、腎石灰化症、および慢性腎疾患の関連する機能障害を回避すること、そして、iii)患者の骨折のリスクの増加を予防するために、骨の完全性および骨量を保存することである。
【0007】
HP患者の従来の療法には、カルシウムサプリメントおよび活性化ビタミンDがある。これらのサプリメントは、血清カルシウムを短期的に制御するだけで、症状を適切に制御するものではない。その結果、HP患者は、多くの場合、血清カルシウムレベルを適切に制御するために、かなりの量のサプリメントを1日中取る必要がある(1日に10~15錠以上)。加えて、カルシウム/ビタミンDの補給は、HP患者において不十分なカルシウムの腎再吸収を改善せず、慢性的に使用すると、腎臓に対する潜在的な有害な効果を悪化させる。カルシウム補給によって腎臓からカルシウムが継続的に排出されると、組織に有毒であり、慢性腎疾患、腎臓結石、および腎機能障害の機会を大きく増加させる。これは、感染および尿流出の閉塞に起因して腎傷害をもたらす腎臓結石のリスクが増加し、状況は悪化する。
【0008】
Natpara(商標)は、HP患者における低カルシウム血症を制御するためのカルシウムおよびビタミンDサプリメントの補助的治療として、FDAおよびEMAによって承認されている、組換え天然ヒトPTH((rh)PTH(1-84))である。しかし、この薬物は、半減期が短く、1日中カルシウムレベルを制御することはできない。臨床試験では、尿中カルシウム排泄の低減またはQOLの改善は実証されていない(参考文献5、6)。PTHの間欠投与による短時間曝露は、骨量を増加させることが示されたが、(rh)PTH(1-84)による臨床試験では、血清カルシウムを24時間制御できず、多くの被験者において尿中カルシウム排泄の上昇、ならびに高/低カルシウム血症および血管作動事象などの有害作用が存在することが示された(参考文献5)。
【0009】
Natpara(商標)の限界を克服するために、持続性長期曝露PTH製剤が開発されている。そのうちの1つであるTransCon(商標)PTHは、天然PTH(1-34)の持続放出型注射用プロドラッグ製剤であり、安定した血清カルシウムレベルを提供し、一部の疾患の症状のコントロールを改善する可能性があり、さらに、患者におけるカルシウムの腎再吸収を促進し、それによって、腎疾患のリスクを低減する可能性がある。TransCon(商標)PTHは、現在、Ascendis Pharma A/Sによって後期臨床開発中である。
【0010】
しかしながら、PTHの継続的非パルス投与は、動物モデルおよび臨床試験において、安全性の問題、中でも注目すべきは骨再吸収を誘発することが観察されており、これは、ほとんどが既に骨粗鬆症の高まったリスクを有する周閉経期または閉経後の女性であるHP患者に対する懸念を上昇させる(参考文献17、18、19)。
【0011】
TransCon(商標)PTHによるTPTXラットの処置は、継続的非パルス注入様の薬物動態プロファイルを生じることを示し、ビヒクル単独で治療された偽手術ラットおよびTPTXラットの両方と比較して、骨塩量(BMD)の著しい減少が観察された(参考文献10)。骨塩量を評価する場合、TransCon(商標)PTHによるヒトHP患者における52週間治療での平均Tスコアの減少が観察された(参照により本明細書に組み込まれる、参考文献12およびAscendisのウェブページhttps://ascendispharma.gcs-web.com/、2023年7月)。
【0012】
TransCon(商標)PTHは、HP患者において平均24時間尿カルシウムレベルを減少させることを示した。しかしながら、第3相試験からのデータは、多くの患者が、治療の6か月後に依然として高カルシウム尿症であることを示している(参考文献11、
図7)。
【0013】
以上のことから、一定の正常な血液カルシウムレベルを維持し、高カルシウム尿症患者における腎臓によるカルシウムの正常な再吸収を回復させ、骨の完全性および骨量を保存することができる副甲状腺機能低下症の治療に対する未だ満たされていないニーズが依然として存在している。現在利用可能なまたは臨床開発中のHPの治療法は、これらすべての治療の目標にわたる総合的な治療効果を示すものではない。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、先行技術に存在する課題の少なくとも一部を改善することである。
【0015】
一つの態様によれば、本発明は、対象における副甲状腺機能低下症(HP)の管理および/または治療のための方法に関する。本方法は、ある用量のPTH化合物を対象に投与する工程を含み、ここで、PTH化合物は配列番号10に示されるアミノ酸配列を有し、PTH化合物の投与は骨の完全性を維持または改善する。
【0016】
一つの態様によれば、本発明は、副甲状腺機能低下症を患う高カルシウム尿症対象において尿カルシウムレベルを正常化するための方法に関する。本方法は、ある用量のPTH化合物を対象に投与する工程を含み、ここで、PTH化合物は配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する。
【0017】
一つの態様によれば、本発明は、副甲状腺機能低下症を患う対象における定常状態血液カルシウムレベルを維持するための方法に関する。本方法は、ある用量のPTH化合物を対象に投与する工程を含み、ここで、PTH化合物は配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する。
【0018】
一つの態様によれば、本発明は、対象における副甲状腺機能低下症を管理または維持するための方法に関する。本方法は、i)ある用量のPTH化合物を対象に投与する工程であって、PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する、工程と、ii)対象において副甲状腺機能低下症のための標準治療を漸減する工程とを含む。
【0019】
一つの態様によれば、本発明は、副甲状腺機能低下症を有する対象における骨代謝回転を回復させるための方法に関する。本方法は、ある用量のPTH化合物を対象に投与する工程を含み、ここで、PTH化合物は配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する。
【0020】
一つの態様によれば、本発明は、対象における副甲状腺機能低下症を管理または治療するための方法に関し、この方法は、i)経口カルシウムおよび活性型ビタミンDサプリメントを必須とせずに血清カルシウムレベルを正常範囲内で維持し、ii)24時間尿中カルシウムを正常化し、iii)骨の完全性を維持し、本方法は、ある用量のPTH化合物を対象に投与する工程を含み、ここで、PTH化合物は配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する。
【0021】
一つの態様によれば、本発明は、対象の集団における副甲状腺機能低下症を管理または治療するための方法に関し、この方法は、i)経口カルシウムおよび活性型ビタミンD補充の必要なく、血清カルシウムレベルを正常範囲内で維持し、ii)24時間尿中カルシウムを正常化し、iii)骨の完全性を維持し、本方法は、ある用量のPTH化合物を対象の集団中の対象に投与する工程を含み、ここで、PTH化合物は配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する。
【0022】
一つの態様によれば、本発明は、ある用量の配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するPTH化合物を含む医薬組成物であって、用量が、10μg/日~120μg/日である、医薬組成物に関する。一部の例において、医薬組成物は、20μg/日~120μg/日のPTH化合物の用量を含む。
【0023】
本発明の実施の追加のおよび/または代替的な特色、態様および利点は、以下の説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0024】
本発明、ならびにそれらの他の態様およびさらなる特色をより良く理解するために、添付の図面と併せて使用されるべきである以下の記載を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】示された用量のAZP-3601およびPTH(1-34)の投与後の副甲状腺摘出(PTX)マウスモデルにおける経時的な血清カルシウムレベルを示すグラフである。
【
図2】示された用量のAZP-3601を28日の期間にわたって投与された甲状腺-副甲状腺摘出(TPTX)ラットモデルにおける血清カルシウムレベルを示すグラフである。
【
図3】示された用量のAZP-3601の投与後のPTXマウスモデルにおける尿中カルシウムレベルを示すグラフである。
【
図4】反復用量のAZP-3601で治療されたTPTXラットモデルにおける尿中カルシウムレベルを示すグラフである。
【
図5】示された用量のAZP-3601、PTH(1-84)およびPTH(1-34)の投与後最大で96時間までの非ヒト霊長類における血清カルシウムレベルを示すグラフである。
【
図6】
図6A、6Bおよび6Cは、血清カルシウムを正常化する用量での連日のPTH(1-34)注射(
図6A)、継続的PTH(1-34)注入(
図6B)、または連日のAZP-3601注射(
図6C)のいずれかによる治療14日後のTPTXラットにおける大腿遠位の直接比較を示すグラフである。
【
図7】AZP-3601の連日投与のTPTXラットにおける骨塩量に対する効果を示すグラフである。
【
図8】
図8A、8B、8Cおよび8Dは、AZP-3601による健康な非ヒト霊長類の連日治療が、同化または異化骨バイオマーカーのいずれかに対する有意な効果を有さないことを示すグラフである。
図8A(雄)および8B(雌)は、連日のAZP-3601投与の39週間にわたる異化骨バイオマーカーCTXの発展を示す。
図8C(雄)および8D(雌)は、連日のAZP-3601投与の39週間にわたる同化骨バイオマーカーP1NPの発展を示す。
【
図9】
図9A、9B、9C、9D、9E、9Fは、非ヒト霊長類における示された用量のAZP-360による治療39週間後の定量的コンピュータ断層撮影(qCT)による骨塩量(BMD)を示すグラフである。
図9Aは、雄における大腿骨BMDを示し、
図9Bは、雌における大腿骨BMDを示し、
図9Cは、雄における脛骨BMDを示し、
図9Dは、雌における脛骨BMDを示し、
図9Eは、雄におけるL4 BMDを示し、
図9Fは、雌におけるL4 BMDを示す。
【
図10】14日にわたる正常な健康な対象へのAZP-3601の投与が、血清カルシウムレベルにおける用量依存性および持続的な定常状態の増加を引き起こすことを示すグラフである(複数の上昇用量コホート:5コホート/コホートあたりn=8~10)。
【
図11】
図11Aおよび11Bは、カルシトリオール補充の必要性を排除することが可能なAZP-3601の投与の効果を示すグラフである。
図11Aは、拡張期間が終了したC1副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601の投与(20μg/日の開始用量を用いる)の84日にわたるカルシトリオールの低減を示す、N=10。
図11Bは、拡張期間が終了したC2副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601の投与(10μg/日の開始用量を用いる)の84日にわたるカルシトリオールの低減を示す、N=14。
【
図12】
図12Aおよび12Bは、標準治療の治療の一部としての経口カルシウム摂取の排除に対するAZP-3601の投与の可能性を示すグラフである。
図12Aは、拡張期間が終了したC1副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601の投与(20μg/日の開始用量を用いる)の84日にわたる経口カルシウム摂取(mg/日)の低減を示す、N=10。
図12Bは、拡張期間が終了したC2副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601の投与(10μg/日の開始用量を用いる)の84日にわたる経口カルシウム摂取(mg/日)の低減を示す、N=14。
【
図13】
図13Aおよび13Bは、AZP-3601の投与が平均血清カルシウムを標的範囲内に維持することを示すグラフである。
図13Aは、拡張期間が終了したC1副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601の投与(20μg/日の開始用量を用いる)の84日にわたる維持された平均血清カルシウムレベルを示す、N=10。
図13Bは、拡張期間が終了したC2副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601の投与(10μg/日の開始用量を用いる)の84日にわたる維持された平均血清カルシウムレベルを示す、N=10。
【
図14】
図14Aおよび14Bは、AZP-3601の投与が、平均24時間尿カルシウムの迅速で広範囲の持続的な低減および正常化を誘導することを示すグラフである。
図14Aは、拡張期間が終了したC1副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601投与の84日にわたる24時間μCa(mg/24時間)の発展を示す、N=10。
図14Bは、拡張期間が終了したC2副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601投与の84日にわたる24時間μCa(mg/24時間)の発展を示す、N=14。
【
図15】
図15Aおよび15Bは、ベースラインで高カルシウム尿症を有する副甲状腺機能低下症対象において、AZP-3601の投与が、平均24時間尿カルシウムの迅速で広範囲の低減および持続的な正常化を誘導することを示すグラフである。
図15Aは、拡張期間が終了したC1副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601投与の84日にわたる24時間μCa(mg/24時間)の発展を示す、N=7。
図15Bは、拡張期間が終了したC2副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601投与の84日にわたる24時間μCa(mg/24時間)の発展を示す、N=7。
【
図16】
図16A~16Dは、AZP-3601による治療が、4~8週間の中央正常レベルへの同化および異化骨バイオマーカーの両方に対する漸進的な増加を誘導することを示すグラフである。
図16Aは、拡張期間が終了したC1副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601投与の84日にわたる異化骨バイオマーカーCTxの発展を示す、N=10。
図16Bは、拡張期間が終了したC1副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601投与の84日にわたる同化骨バイオマーカーP1NPの発展を示す、N=10。
図16Cは、拡張期間が終了したC2副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601投与の84日にわたる異化骨バイオマーカーCTxの発展を示す、N=14。
図16Dは、拡張期間が終了したC2副甲状腺機能低下症患者におけるAZP-3601投与の84日にわたる同化骨バイオマーカーP1NPの発展を示す、N=14。
【
図17】
図17Aおよび17Bは、骨塩量および骨梁スコアが、AZP-3601投与の際に安定なままであることを示すグラフである。
図17Aは、骨塩量(BMD)が、84日の治療にわたってAZP-3601を投与された副甲状腺機能低下症対象において安定なままであることを示す。
図17Bは、骨梁スコア(TBS)が、84日の治療にわたってAZP-3601を投与された副甲状腺機能低下症対象において安定なままであることを示す。
【
図18】
図18Aおよび18Bは、Zスコアa、d、およびTスコア骨に対するAZP-3601投与の効果を示すグラフである。
図18Aは、患者において測定されたBMDを、年齢および性別が一致した健康な対象と比較するZスコアを示す。
図18Bは、患者におけるBMDを、若年の健康な対象からのBMDと比較するTスコアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、その適用において、以下の説明に示されるか、または図面に図示される構成要素の構成および配置の詳細に限定されない。本開示は、他の実施態様が可能であり、さまざまな方法でそれを実践または実施することができる。また、本明細書において使用される表現および専門用語は、説明の目的のためのものであって、限定的なものとして見なされるべきではない。
【0027】
本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、およびそれらの変形形態の使用は、本明細書の以下に列挙される事項だけでなく、場合により、追加の事項を包含することを意味する。以下の説明において、同じ参照番号は、同じ要素を指す。
【0028】
本明細書において使用される場合、「標準治療」または「SOC」という表現は、カルシウムおよび活性ビタミンDの経口投与を指す。
【0029】
本明細書において使用される場合、「標準治療を漸減する」という表現は、経口カルシウムおよび活性ビタミンDの投与を減少させることおよび/または除去することを指す。
【0030】
本明細書において使用される場合、「正常カルシウムレベル」という表現は、8.3mg/dL~10.6mg/dLまたは2.075mmol/L~2.65mmol/Lの血清カルシウムレベルを指す。ヒトにおいて、ある特定の例における正常レベルは、8.5mg/dLを上回る血清カルシウムレベル(アルブミン調整)に対応する。
【0031】
「アルブミン調整カルシウムレベル」という表現は、測定された血清カルシウムレベルが、アルブミンに結合したカルシウムについて、以下の式:アルブミン調整血清カルシウム(mg/dL)=測定された総Ca(mg/dL)+0.8×(4.0-血清アルブミン[g/dL])に従って補正されることを意味する。
【0032】
本明細書において使用される場合、「正常尿カルシウムレベル」という表現は、1日あたり100~300ミリグラム(mg/日)または24時間あたり2.50~7.50ミリモル(mmol/24時間)の尿カルシウムレベルを指す。カルシウムが少ない食事について、尿中のカルシウムの量は、50~150mg/日または1.25~3.75mmol/24時間であろう。
【0033】
本明細書において使用される場合、「高カルシウム尿症」という用語は、尿中の過剰のカルシウムを指す。これは、二次的、すなわち、血流におけるカルシウムの高いレベルを引き起こす一部の他の状態(例えば、HP)の副作用である場合もあれば、または、正常な血液カルシウムレベルで、それ自身において起こる「特発性」である場合もある。典型的には、高カルシウム尿症は、女性において250mg/24時間超、男性において300mg/24時間を上回る尿カルシウムレベルを指す。
【0034】
本明細書において使用される場合、「骨塩量(BMD」)という表現は、骨組織における骨塩の量を指す。この概念は、骨の体積あたりのミネラルの質量(物理的意味での密度に関連する)である。骨密度の測定は、骨粗鬆症および骨折のリスクの間接的な指標として、臨床状況において使用される。これは、デンシトメトリーと呼ばれる手順によって測定される。Tスコアは、骨粗鬆症についてスクリーニングする場合の関連測定値である。これは、「若年正常参照平均」と比較した場合のその部位における骨塩量である。これは、対象の骨塩量と健康な30歳の骨塩量との比較である。正常は、-1.0以上のTスコアである。骨減少症は、-1.0~-2.5と定義される。骨粗鬆症は、-2.5以下と定義され、30歳男性/女性の平均を下回る2および標準偏差の半分である骨密度を意味する。骨密度についてのZスコアは、「年齢に応じた正常値」との比較であり、通常、重度の骨粗鬆症の症例において使用される。劣った骨密度と骨折のより高い確率との間の統計学的関連が存在する。転倒に起因する足および骨盤の骨折は、特に高齢女性において、重要な公衆衛生上の問題であり、多額の医療コスト、独立して生活することができなくなること、および死亡のリスクさえもたらす。骨密度測定は、骨粗鬆症のリスクについて人々をスクリーニングし、骨の強度を改善するための措置が有効な人々を特定するために用いられる。
【0035】
「副甲状腺ホルモン化合物」または「PTH化合物」という表現は、本明細書において使用される場合、PTHポリペプチド、ならびにそのバリアント、アナログ、オルソログ、ホモログ、誘導体および断片を指す。「PTH化合物」という表現はまた、一般的なPTH/PTHrPl受容体に結合し、活性化する、PTH関連ポリペプチド(PTHrP)、例えば、下記の表1において特定されるポリペプチドを指す。他のPTH化合物は、米国特許第9,492,508号において議論されており、その内容は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0036】
【0037】
本明細書において使用される「PTH化合物」という表現はまた、上記に記載される配列を有するが、アミド連結およびエステル連結などの非アミド連結の両方を含む、例えば、デプシペプチドのような骨格を有する、ポリ(アミノ酸)コンジュゲートを含む。デプシペプチドは、骨格がアミド(ペプチド)結合およびエステル結合の両方を含む、アミノ酸残基の鎖である。したがって、本明細書において使用される「側鎖」という用語は、アミノ酸部分が、タンパク質およびペプチドにおけるなどのアミン結合を通して接続されている場合に、アミノ酸部分のアルファ-炭素に結合した部分、または例えば、デプシペプチドの場合におけるなどのポリ(アミノ酸)コンジュゲートの骨格に結合した任意の炭素原子を含む部分のいずれかを指す。
【0038】
本明細書において使用される「ペプチド」という用語は、少なくとも2および最大で50を含むアミノ酸モノマー部分の鎖を指し、これは、ペプチド(アミド)連結によって連結された「アミノ酸残基」と称されることもある。アミノ酸モノマーは、タンパク質原性アミノ酸および非タンパク質原性アミノ酸からなる群から選択され得、D-またはL-アミノ酸であり得る。「ペプチド」という用語はまた、ペプチド模倣体、例えば、ペプトイド、ベータ-ペプチド、環状ペプチドおよびデプシペプチドを含み、最大で50を含むモノマー部分を有するそのようなペプチド模倣体鎖を包含する。
【0039】
一つの実施態様において、本発明のPTH化合物は、短い循環半減期を有するが、PTH1受容体のR0コンフォメーションに強力に結合するように設計された、ヒトPTHおよびPTHrPの合成36アミノ酸ハイブリッドペプチドアナログである(参考文献5)。別個のPTH1受容体のコンフォメーションR0に対する本発明のPTH化合物の高親和性は、複数ラウンドのGタンパク質共役、ならびに大きく延長されたシグナル伝達および細胞応答(すなわち、カルシウム代謝における作用の延長された期間)をもたらす活性化を通して、リガンドの結合を維持する。簡易な循環半減期は、骨に対する有害効果(すなわち、骨再吸収)を促進し、起立性低血圧などの心臓血管の安全性事象に寄与するであろう延長されたPTH受容体曝露の可能性を減少させることが意図される。
【0040】
ある特定の実施態様において、本発明のPTH化合物は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に示されるアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0041】
ある特定の実施態様において、本発明のPTH化合物は、本明細書において「AZP-3601」とも称される、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0042】
AZP-3601の薬理学的効果は、HPのげっ歯類モデルおよび正常なサルにおいて観察されている。副甲状腺機能低下症マウスにおいて、10nmol/kg~20nmol/kgの範囲の用量のAZP-3601の単回皮下(sc)注射は、最大で72時間、血清カルシウムを正常レベルに増加させ、8時間を超えて、血清無機リンを正常レベルに減少させたが、より高い用量で注射されたPTH(1-34)は、さらにより一時的に、血清カルシウムを増加させ、血清無機リンを減少させた(血清カルシウムについて<8時間、および血清無機リンについて<4時間)(参考文献7)。類似の結果は、副甲状腺機能低下症/甲状腺機能低下症ラットにおいても観察され、ここで、AZP-3601による28時間の長期間治療が、尿中カルシウム排泄を増加させることなく、血清カルシウムおよび血清無機リンを回復させたことを実証した(参考文献8)。
【0043】
非ヒト霊長類におけるAZP-3601投与は、有意な最大の効果が、2.1μg/kg~4.3μg/kgのAZP-3601注射24時間後に測定されたことを示す。10.7μg/kgまたは42.7μg/kgの最高用量レベルは、高カルシウム血症を有意に誘導し、血清カルシウムは、注射後少なくとも4日間、上昇したままであった(参考文献8)。
【0044】
本発明は、PTH化合物、特にAZP-3601などの長時間作用型PTH化合物の連日投与が、PTH療法の開始からちょうど28日以内に、血清カルシウムレベルを正常レベル(8.3~10.6mg/dLまたは2.075~2.62mmol/L)に回復させ、SOCの離脱を可能にするという本研究者らの意外な知見に起因する。意外なことには、本研究者らは、これらの結果が、骨の完全性を損なうことなく、すなわち、骨量の低減なく、達成されたことを見出した。本研究者らはまた、意外なことに、AZP-3601の連日投与が、高カルシウム尿症対象における尿中カルシウムを正常化することを見出した。本知見の別の意外な態様は、持続的な効果が、AZP-3601の短い循環半減期にもかかわらず達成されたという本研究者らの観察に起因する。
【0045】
したがって、本研究者らは、AZP-3601の連日投与が、急性的に副甲状腺が摘出されたHPの前臨床げっ歯類モデルとして、既にバランスが保たれた骨代謝回転を有する対象における骨に対する中立的効果を生じることを見出した。加えて、連日のAZP-3601のバランスが保たれた同化/異化効果は、確立されたHPおよび減速/停止した骨代謝回転を有するヒト対象の骨に対するバランスが保たれた生理学的な同化/異化効果を生じることを実証した。
【0046】
一つの実施態様において、本発明は、したがって、対象における副甲状腺機能低下症(HP)の管理および/または治療のための方法に関する。本方法は、ある用量の本明細書において定義されたPTH化合物を対象に投与する工程を含む。
【0047】
一部の例において、本発明の方法を必要とする対象は、副甲状腺機能低下症患者(HP患者)である。副甲状腺機能低下症は、低カルシウム血症および高リン血症をもたらし得る。結果として、副甲状腺機能低下症患者は、神経筋の易刺激性、腎臓合併症、および血管石灰化を含む、ある範囲の重度で潜在的な生命を脅かす短期および長期合併症を経験し得る。認知機能障害も一般的である。HP患者におけるPTHの調節なしでは、低い骨代謝回転状態が存在し、骨代謝回転マーカーは、正常範囲の半分より低い。その結果として、HP患者は、健康な個体と比較して、わずかに高い骨塩量を有する。HP患者は、健康な個体と比較して、わずかに高い平均BMDを有する。しかしながら、BMDについての平均値は、HPなしの対象よりも高いが、HP集団においてかなりの多様性が存在し、多くの患者は、平均BMDよりも低い。これらの患者の多くは、閉経後の女性であり、HPの開始の数年前に骨減少症または骨粗鬆症を発生していることがある。さらにまた、一部の患者において観察された骨密度の増加にもかかわらず、HP患者における異常な骨微細構造が、レジリエンスの減少をもたらし得る。HP患者において観察された骨密度の増加は、集団研究において実証されたように、骨折のリスクに対する予防効果を増加させるものではなく、この疾患に関連する骨質の低下による相殺効果による可能性がある。特に高カルシウム尿症の傾向があるHP患者の1つのサブセット:常染色体優性副甲状腺機能低下症を有するサブセットが存在する(5、6、8、9)。これは、治療前のベースラインで、腎臓における構成的活性カルシウム受容体が、腎臓カルシウム排泄を活性化するためである。
【0048】
一部の例において、PTH化合物は、対象に連日投与される。一部の例において、PTH化合物は、対象に1日1回投与される。
【0049】
一部の実施態様において、本発明の方法に従ってPTH化合物の投与を必要とする対象には、骨量減少の増加のリスクがあるか、またはそれを経験している対象が含まれる。一部の実施態様において、本発明の方法に従ってPTH化合物の投与を必要とする対象には、骨の完全性の減少のリスクがあるか、またはそれを経験している対象が含まれる。一部の例において、本発明に従ってPTH化合物の投与を必要とする対象は、高カルシウム尿症対象(すなわち、尿中の過剰のカルシウムを実証する)である。一部の実施態様において、本発明の方法に従ってPTH化合物の投与を必要とする対象は、骨量減少の増加のリスクがあるか、またはそれを経験しており、高カルシウム尿症である対象を含む。一部の例において、本発明の方法に従ってPTH化合物の投与を必要とする対象は、周閉経期の女性または閉経後の女性である。一部の他の例において、対象は、骨減少症および骨粗鬆症などの骨量減少関連状態を患っている。
【0050】
一つの実施態様において、本発明の方法は、PTH化合物を対象に投与しながら、対象においてHPの標準治療を漸減する工程をさらに含む。
【0051】
一部の実施態様において、対象において標準治療を漸減する工程は、経口カルシウムの連日摂取を減少させること、および活性ビタミンDの連日摂取を減少させることによって行われる。一部の他の実施において、対象を標準治療から漸減する工程は、1日用量のPTH化合物の投与が、対象において安定なアルブミン補正血清カルシウムレベルをもたらすまで行われる。
【0052】
一部の実施態様において、対象において標準治療を漸減する工程は、ビタミンDの投与が排除されるまで、およびカルシウムの投与が低減されるまたは600mg/日を下回って低減されるまで、段階的な手法で行われる。
【0053】
一部の実施態様において、本発明の方法は、PTH化合物の初回用量が投与されたときから12週間以内に、対象において標準治療を漸減する工程を含む。一部の実施態様において、本発明の方法は、PTH化合物の初回用量が投与されたときから10週間以内に、対象において標準治療を漸減する工程を含む。本発明の方法は、PTH化合物の初回用量が投与されたときから8週間以内に、対象において標準治療を漸減する工程を含む。本発明の方法は、PTH化合物の初回用量が投与されたときから6週間以内に、対象において標準治療を漸減する工程を含む。本発明の方法は、PTH化合物の初回用量が投与されたときから4週間以内に、対象において標準治療を漸減する工程を含む。本発明の方法は、PTH化合物の初回用量が投与されたときから2週間以内に、対象において標準治療を漸減する工程を含む。さまざまな用量設定スキームが好適である。ある特定の実施態様において、患者において標準治療を漸減する工程は、段階的な低減、それに続く経口投与される活性ビタミンDの完全な省略、それに続く段階的な低減、それに続く経口投与されるカルシウムの完全な省略を含む。例えば、ラクトース耐性対象の場合であり得るように、一部の対象の食事が、十分なカルシウムの栄養摂取(通常、1日あたり<750mgのカルシウムであると考えられる)を可能にしないことが理解される。これらの対象は、例えば、カルシウム錠剤の形態などの1日1回のカルシウムの経口投与の形態で、経口カルシウム補充を取り続ける。しかしながら、このカルシウム補充は、副甲状腺機能低下症の治療に関連せず、健康な対象における一般的な行為でもある。
【0054】
一部の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、10μg/日~120μg/日、または10μg/日~100μg/日、または10μg/日~90μg/日、または毎日10μg/日~80μg/日、または10μg/日~70μg/日、または10μg/日~60μg/日または10μg/日~50μg/日、または20μg/日~120μg/日、または20μg/日~100μg/日、または20μg/日~90μg/日、または毎日20μg/日~80μg/日、または20μg/日~70μg/日、または20μg/日~60μg/日または20μg/日~50μg/日の範囲である。
【0055】
一部の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、120μg/日である。一部の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、100μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、90μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、80μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、70μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、60μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、50μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、40μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、30μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、20μg/日である。一部の他の実施態様において、対象に投与されるPTH化合物の1日用量は、10μg/日である。
【0056】
一部の実施態様において、本発明の方法は、PTHの初回1日用量が、治療の1日目に対象に投与される、段階的な方法である。その後の治療の日において、対象は、活性ビタミンDの摂取がもはや必要なく、カルシウムの摂取が500mg/日以下に低減されるまで、活性ビタミンDおよびカルシウムの摂取を減少させることによって、標準治療は漸減される。
【0057】
一部の例において、活性ビタミンDの経口摂取の減少は、以下の通りである:最初に、経口活性ビタミンDのベースライン用量からの50%の低減;二番目に、経口ビタミンDのベースライン用量からの75%の低減;および経口活性ビタミンDのベースライン用量からの100%の低減。
【0058】
一部の例において、カルシウムの経口摂取の減少は、以下の通りである:最初に、カルシウムのベースライン用量からの50%の低減;二番目に、カルシウムのベースライン用量からの75%の低減;およびカルシウム摂取の600mg/日以下のみでそのまま。
【0059】
一部の実施態様において、本方法はまた、PTHの初回1日用量を増加させて、カルシウムおよび活性ビタミンD摂取の所望の低減を達成する工程を含む。一部の例において、PTH化合物の初回1日用量は、5μg/日、10μg/日、15μg/日、20μg/日、25μg/日、30μg/日、35μg/日、40μg/日、45μg/日、50μg/日、55μg/日、60μg/日、65μg/日、70μg/日、75μg/日、80μg/日、85μg/日、90μg/日、95μg/日、100μg/日、110μg/日、または120μg/日である。一部の例において、投与されるPTH化合物の1日用量は、2μg/日、5μg/日、10μg/日、15μg/日、20μg/日、25μg/日、30μg/日、またはそれ以上に増加される。PTH化合物の増加は、PTH化合物の初回用量の投与の数日後または数週間後に必要となり得る。
【0060】
一部の実施態様において、本発明の方法は、皮下(sc)注射として、対象への10μg/日の濃度の本明細書に定義されるPTH化合物の初回1日用量の投与による治療を開始し、同時に、活性ビタミンDの投与を少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%減少させることを含む。本方法はまた、治療の開始後(例えば、PTH化合物の初回用量の投与後)3~7日ごとに、およびそれぞれの用量の変更後に、血清カルシウム(およびアルブミン)濃度をモニターする工程を含む。PTH化合物の用量は、例えば、活性ビタミンDを中止し、血清カルシウムを低正常範囲内に保ちながら、経口カルシウム補充を500mg/日程度の量に低減するという目標で、毎日、数日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごとに用量設定され得る。安定なレジメンが達成された場合の初期の用量設定段階後、血清カルシウムおよびホスフェートは、3~6か月ごとにモニターすることができ、尿中カルシウム排泄は、毎年モニターされてもよい。
【0061】
他の実施態様において、本発明は、対象における副甲状腺機能低下症を管理または治療するための方法であって、PTH化合物の初回用量が、投薬レジメンで対象に投与され、ここで、PTH化合物の初回用量が、治療の過程において増加され、そのような投薬レジメンが、i)対象に投与されるPTH化合物の初回用量を用量設定して、対象における正常な血清カルシウムレベルをもたらし、第1の期間の間、そのような初回用量において対象を維持する工程、ii)対象に投与されるPTH化合物の初回用量を、第1の期間の直後の第2の期間の間、増加させて、第2の用量を達成する工程、およびiii)場合により、PTH化合物の第2の用量を、第3またはさらにその後の期間の間、増加させて、第3の用量を達成する工程を含む、方法に関する。一部の例において、第3またはその後の用量は、第2の用量または初回用量と、2μg/日、5μg/日、10μg/日、15μg/日、20μg/日、25μg/日、30μg/日、またはそれよりも多く異なる。一部の例において、第2の用量は、初回用量と、2μg/日、5μg/日、10μg/日、15μg/日、20μg/日、25μg/日、30μg/日、またはそれよりも多く異なる。ある特定の実施態様において、第1の期間は、少なくとも2週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、または少なくとも6か月である。ある特定の実施態様において、第2の期間は、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、または少なくとも4か月である。
【0062】
他の実施態様において、本発明は、対象における副甲状腺機能低下症を管理または治療するための方法であって、対象において、i)血清カルシウムレベルを、経口カルシウムおよび活性型ビタミンD補充の必要なく、正常範囲内で維持する、ii)24時間尿中カルシウムを正常化する、ならびにiii)骨の完全性を維持することを可能にする、方法に関する。本方法は、ある用量のPTH化合物を対象に投与する工程であって、PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する、工程を含む。一部の例において、本方法は、血清カルシウムレベルを、8.3mg/dL~10.6mg/dLまたは2.075mmol/L~2.65mmol/L.に維持することを可能にする。一部の例において、本方法は、24時間尿中カルシウムを、約100mg/日~約300mg/日、または約100mg/日~約250mg/日、または約100mg/日~約200mg/日、または約100mg/日~約150mg/日、または約100mg/日~約125mg/日に正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、PTH化合物の投与の12週間以内に対象における24時間尿中カルシウムを正常化する。一部の例において、本方法は、24時間尿中カルシウムを、PTH化合物の投与の12週間以内に約100mg/日~約300mg/日、またはPTH化合物の投与の12週間以内に約100mg/日~約250mg/日、またはPTH化合物の投与の12週間以内に約100mg/日~約200mg/日、またはPTH化合物の投与の12週間以内に約100mg/日~約150mg/日、またはPTH化合物の投与の12週間以内に約100mg/日~約125mg/日に正常化することを可能にする。一部の例において、対象は、高カルシウム尿症患者である。
【0063】
一部の例において、本方法は、骨バイオマーカーおよび骨の完全性を正常範囲内で維持し、それによって、HP患者における骨代謝回転を回復することを可能にする。本明細書において使用される場合、「骨代謝回転」という表現は、成熟骨組織を骨格から除去し、新しい骨組織を形成することによる、生涯にわたるプロセスを指す。これらのプロセスはまた、骨折のような傷害後だけでなく、微小損傷後の骨の再形成および置き換えを制御する。
【0064】
一部の実施態様において、本発明は、対象の集団における副甲状腺機能低下症を管理または治療するための方法であって、集団の対象において、i)血清カルシウムレベルを、経口カルシウムおよび活性型ビタミンD補充の必要なく、正常範囲内で維持する、ii)24時間尿中カルシウムを正常化する、ならびにiii)骨の完全性を維持することを可能にする、方法に関する。本方法は、ある用量のPTH化合物を対象に投与する工程であって、PTH化合物が配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する、工程を含む。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約90%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約85%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約80%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約75%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約70%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約65%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約60%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約55%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。一部の例において、本方法は、集団の高カルシウム尿症対象の少なくとも約50%において、24時間尿中カルシウムを正常化することを可能にする。
【0065】
ある特定の実施態様において、PTH化合物の投与は、経口、静脈内、筋肉内、眼、局所、皮膚、皮下、または直腸である。
【0066】
ある特定の実施態様において、本発明の方法は、PTH化合物を注射によって投与する工程を含む。ある特定の例において、PTH化合物は、皮下注射によって投与される。ある特定の例において、PTH化合物は、皮下注射によって1日1回投与される。
【0067】
一部の実施態様において、本発明は、対象における副甲状腺機能低下症の管理または治療のための医薬組成物であって、医薬組成物が、1日用量のPTH化合物を含む、医薬組成物に関する。一部の実施において、PTH化合物は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するペプチド(AZP-3601)である。
【0068】
本明細書において使用される場合、「医薬組成物」という用語は、1つ以上の活性成分、例えば、少なくとも1つのPTH化合物(例えば、AZP-3601)など、および1つ以上の賦形剤を含有する組成物、ならびに組成物の任意の2つ以上の成分の組み合わせ、複合体形成もしくは凝集から、または1つ以上の成分の解離から、または1つ以上の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から、直接的にまたは間接的に生じる任意の生成物を指す。したがって、本発明の使用のための医薬組成物は、1つ以上のPTH化合物および薬学的に許容される賦形剤を混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0069】
本明細書において使用される場合、「賦形剤」という用語は、薬物またはプロドラッグなどの治療薬とともに投与される、希釈剤、アジュバント、またはビヒクルを指す。そのような薬学的賦形剤は、無菌液体、例えば、水、および石油、動物、植物または合成起源のものを含む油であり得、限定されるものではないが、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む。水は、医薬組成物が経口投与される場合の賦形剤についての例である。生理食塩水および水性デキストロースは、医薬組成物が静脈内投与される場合の賦形剤の例である。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、ある特定の実施態様において、注射用溶液のための液体賦形剤として用いられる。好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、トレハロース、フェノール、メチオニンおよびヒスチジンなどのアミノ酸(例えば、L-メチオニンおよびL-ヒスチジン)、マンニトール、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。所望により、医薬組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、例えば、酢酸塩、コハク酸塩、トリス、炭酸塩、リン酸塩、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-l-ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸のようなpH緩衝剤を含有することもでき、または、Tween、ポロキサマー、ポロキサミン、CHAPS、Igepalのような界面活性剤、または例えば、グリシン、リジンもしくはヒスチジンのようなアミノ酸を含有することができる。これらの医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの形態を取ることができる。医薬組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドなどの賦形剤を用いて、坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、標準的な賦形剤、例えば、医薬グレードのマンニトール、クエン酸塩、LLC、SNAC、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。そのような組成物は、患者への適正な投与のための形態を提供するように、好適な量の賦形剤と一緒に、治療有効量の薬物または生物学的に活性な部分を含有する。製剤は、投与の様式に適していなければならない。本明細書において使用される場合、「液体組成物」という用語は、水溶性PTH化合物、および水などの1つ以上の溶媒を含む混合物を指す。
【0070】
本明細書において使用される「薬物」という用語は、副甲状腺機能亢進症の治療において使用される物質、例えば、PTH化合物を指す。薬物が別の部分にコンジュゲートされる場合、薬物が起源である得られる生成物の部分は、「薬物部分」と称される。
【0071】
本明細書において使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、「可逆的プロドラッグリンカー部分」または「可逆的リンカー部分」とも称される可逆的リンカー部分を通して、薬物部分が、可逆的および共有結合的に特定の保護基に接続されている共有結合コンジュゲートを指し、これは、生物学的に活性な部分との可逆的な連結を含み、特定の保護基は、親化合物の望ましくない特性を変更または排除する。これはまた、薬物における望ましい特性の増強、および望ましくない特性の抑制を含む。特定の非毒性保護基は、「キャリア」と称される。プロドラッグは、その対応する薬物の形態中の可逆的および共有結合的に結合した薬物部分を放出する。言い換えれば、プロドラッグは、可逆的リンカー部分を介してキャリア部分に共有結合的および可逆的にコンジュゲートされた薬物部分を含むコンジュゲートであり、キャリアの可逆的リンカー部分への共有結合的および可逆的コンジュゲーションは、直接またはスペーサーを通してのいずれかである。そのようなコンジュゲートは、遊離未修飾薬物の形態で、以前にコンジュゲートされた薬物部分を放出する。
【0072】
本明細書において使用される場合、「試薬」という用語は、別の化合物または薬物の官能基との反応のための少なくとも1つの官能基を含む化合物を意味する。官能基(第1級もしくは第2級アミン、またはヒドロキシル官能基など)を含む薬物も試薬であることが理解される。
【0073】
ある特定の実施態様において、本発明の医薬組成物は、pH3~pH8(pH3とpH8を含む)のpHを有する。ある特定の実施態様において、医薬組成物は、pH4~pH6(pH4とpH6を含む)のpHを有する。ある特定の実施態様において、医薬組成物は、pH4~pH5(pH4とpH5を含む)のpHを有する。一部の実施態様において、医薬組成物は5.6+/-0.3のpHを有する。
【0074】
ある特定の実施態様において、医薬組成物は、液体または懸濁液組成物である。医薬組成物は、PTH化合物が水溶性である場合に、液体組成物であり、PTH化合物が水不溶性である場合に、懸濁液製剤であることが理解される。ある特定の実施態様において、医薬組成物は、患者への投与前に再構成される乾燥製剤である。
【0075】
そのような液体、懸濁液、乾燥または再構成医薬組成物は、少なくとも1つの賦形剤を含む。非経口的製剤において使用される賦形剤は、例えば、緩衝剤、浸透圧調節剤、保存剤、安定剤、抗吸収剤、酸化保護剤、増粘剤/粘度(活性物の両濃度(250および500μg/mL)について1.09mPa*sで測定される)増強剤、または他の補助剤として分類され得る。しかしながら、一部の場合において、1つの賦形剤が、2つまたは3つの機能を有することがある。ある特定の実施態様において、少なくとも1つの賦形剤は、(i)緩衝剤:pHを所望の範囲に維持する生理学的に許容される緩衝剤、例えば、リン酸ナトリウム、重炭酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、ピルビン酸塩;Mg(OH)2またはZnCCfiなどの制酸剤も使用され得る;(ii)浸透圧調節剤:注射部位で浸透圧の相違に起因する細胞の損傷から生じ得る痛みを最小化する;グリセリンおよび塩化ナトリウムがその例である;有効濃度は、血清について想定される浸透圧282~330mOsmol/kgを使用する浸透圧測定によって決定することができる(一部の例において、浸透圧はその間であってもよい);(iii)保存剤および/または抗菌剤:複数回用量非経口製剤は、注射の際に感染する患者のリスクを最小化するために十分な濃度で保存剤の添加を必要とし、対応する規制要件が確立されている;典型的な保存剤としては、m-クレゾール、フェノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、クロロクレゾール、および塩化ベンザルコニウムが挙げられる;(iv)安定剤:安定化は、タンパク質を安定化する力の強化によって、変性状態の不安定化によって、または賦形剤のタンパク質への直接結合によって達成される;安定剤は、アミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、プロリン、糖、例えば、グルコース、スクロース、トレハロース、ポリオール、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、塩、例えば、リン酸カリウム、硫酸ナトリウム、キレート化剤、例えば、EDTA、六リン酸塩、リガンド、例えば、二価金属イオン(亜鉛、カルシウムなど)、他の塩、または有機分子、例えば、フェノール誘導体であってもよい;加えて、オリゴマーまたはポリマー、例えば、シクロデキストリン、デキストラン、デンドリマー、PEG、またはPVP、またはプロタミン、またはHSAが使用されてもよい;(v)抗吸収剤:主にイオン性もしくは非イオン性界面活性剤、または他のタンパク質、または可溶性ポリマーを使用して、製剤の容器の内部表面を競合的にコーティングまたはそれに吸収される;例えば、ポロキサマー(Pluronic F-68)、PEGドデシルエーテル(Brij 35)、ポリソルベート20および80、デキストラン、ポリエチレングリコール、PEGポリヒスチジン、BSAおよびHSA、ならびにゼラチン;賦形剤の選択した濃度および種類は、回避される効果に依存するが、典型的には、界面活性剤の単分子層は、CMC値のすぐ上で界面に形成される;(vi)酸化保護剤:抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、エクトイン、メチオニン、グルタチオン、モノチオグリセロール、モリン、ポリエチレンイミン(PEI)、没食子酸プロピル、およびビタミンE;キレート化剤、例えば、クエン酸、EDTA、六リン酸塩、およびチオグリコール酸も使用されてもよい;(vii)増粘剤または粘度増強剤:懸濁液の場合において、バイアルおよび注射器における粒子の沈降を遅らせ、粒子の混合および再懸濁を容易にし、懸濁液を容易に注射させる(すなわち、注射器のプランジャーにおける低い力)ために使用される;好適な増粘剤または粘度増強剤は、例えば、Carbopol 940、Carbopol Ultrez 10のようなカルボマー増粘剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース、HPMC)またはジエチルアミノエチルセルロース(DEAEまたはDEAE-C)のようなセルロース誘導体、コロイド状ケイ酸マグネシウム(Veegum)またはケイ酸ナトリウム、ヒドロキシアパタイトゲル、リン酸三カルシウムゲル、キサンタン、Satia gum UTC 30のようなカラギーナン、脂肪族ポリ(ヒドロキシ酸)、例えば、ポリ(D,L-またはL-乳酸)(PLA)およびポリ(グリコール酸)(PGA)ならびにそれらのコポリマー(PLGA)、D,L-ラクチド、グリコリドおよびカプロラクトンのターポリマー、ポロキサマー、ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシエチレン)のトリブロックを構成する親水性ポリ(オキシエチレン)ブロックおよび疎水性ポリ(オキシプロピレンブロック)(例えば、Pluronic(登録商標))、ポリエーテルエステルコポリマー、例えば、ポリエチレングリコールテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートコポリマー、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、デキストランまたはその誘導体、デキストランおよびPEGの組み合わせ、ポリジメチルシロキサン、コラーゲン、キトサン、ポリビニルアルコール(PVA)および誘導体、ポリアルキルイミド、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウム(DADMA))、ポリビニルピロリドン(PVP)、グリコサミノグリカン(GAG)、例えば、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン、ポリラクチド(PLA)もしくはポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)などの疎水性Aブロックおよびポリエチレングリコール(PEG)もしくはポリビニルピロリドンなどの親水性Bブロックから構成されるABAトリブロックまたはABブロックコポリマーである;そのようなブロックコポリマーおよび上述のポロキサマーは、逆熱ゲル化挙動(投与を容易にするために室温では流体状態、および注射後の体温でゾル-ゲル転移温度を上回ってゲル状態)を示してもよい;(vii)拡散剤:限定されるものではないが、ヒアルロン酸などの間質空間における細胞外マトリックスの構成要素、結合組織の細胞内空間において見出される多糖の加水分解により結合組織の透過性を調節する;限定されるものではないが、ヒアルロニダーゼなどの拡散剤は、細胞外マトリックスの粘度を一時的に減少させ、注射された薬物の拡散を促進する;ならびに (ix)他の補助剤:例えば、湿潤剤、粘度調節剤、抗生物質、ヒアルロニダーゼ;酸および塩基、例えば、塩酸および水酸化ナトリウムは、製造の間のpH調整のために必要な補助剤である;からなる群から選択される。
【0076】
本明細書に定義されるPTH化合物の投与は、対象および疾患状態を治療する化合物の濃度をもたらす、任意の好適な手段によってであってもよい。一部の例において、PTH化合物は、任意の適切な量で、任意の好適な担体物質を含有していてもよく、一般に、組成物/用量の総重量の0.025重量%~1重量%の量で存在する。組成物は、例えば、錠剤、アンプル、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、乳濁剤、液剤、ヒドロゲルを含むゲル剤、ペースト、軟膏、クリーム、プラスター、水薬、浸透圧送達デバイス、坐剤、注腸剤、注射剤、インプラント、スプレー剤、またはエアロゾル剤の形態であってもよい。医薬組成物は、従来の医薬品プラクティス(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年、A.R.Gennaro編、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、ならびにEncyclopedia of Pharmaceutical Technology、J.SwarbrickおよびJ.C.Boylan編、1988-1999年、Marcel Dekker、New Yorkを参照されたい)に従って製剤化され得る。
【0077】
医薬組成物は、投与の際にすぐ、または投与後の任意の所定の時間もしくは期間で活性化合物を放出するように製剤化されてもよい。後者の種類の組成物は、一般に、制御放出製剤として公知であり、これは、(i)延長された期間にわたって、身体内で、実質的に一定濃度の本発明の薬剤を作出する製剤;(ii)所定のラグタイム後に、延長された期間にわたって、身体内で、実質的に一定濃度の本発明の薬剤を作出する製剤;(iii)身体内の薬剤の有効レベルを比較的一定に維持し、同時に、薬剤の血漿レベルの変動に関連する望ましくない副作用を最小化することによって、所定の期間の間、薬剤の作用を持続する製剤(鋸歯状動態パターン);(iv)所望の組織もしくは臓器に隣接してまたはその中における、例えば、制御放出組成物の空間的な配置で、薬剤の作用を局在化する製剤;(v)投薬する、例えば、1週間に1回または2週間ごとに1回組成物を投与する利便性を達成する製剤;ならびに(vi)化合物を特定の標的細胞型に送達する担体または化学物質誘導体を使用することによって、薬剤の作用を標的にする製剤を含む。放出制御製剤の形態の化合物の投与は、胃腸管における狭い吸収ウィンドウまたは比較的短い生物学的半減期を有する化合物に対して、特に好ましい。
【0078】
放出の速度が問題の化合物の代謝の速度を上回る放出制御を得るために、多くの戦略のいずれかを追及することができる。一例において、放出制御は、さまざまな製剤パラメーター、ならびに例えば、さまざまな種類の放出制御組成物およびコーティングを含む成分の適切な選択によって得られる。したがって、化合物は、投与の際に化合物が制御された様式で放出される医薬組成物に、適切な賦形剤を用いて製剤化される。例としては、単一または複数単位の錠剤またはカプセル剤組成物、油性液剤、懸濁剤、乳濁剤、マイクロカプセル、分子複合体、ミクロスフェア、ナノ粒子、パッチ、およびリポソームが挙げられる。
【0079】
本明細書に記載されるPTH化合物を含む組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体およびアジュバントを含有する、剤形、製剤での注射、注入もしくは埋め込み(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内など)によって、または好適な送達デバイスもしくはインプラントを介して、非経口投与されてもよい。
【0080】
一部の実施態様において、本発明の医薬組成物は、プレフィルドペンで提供される。
【0081】
一部の実施態様において、プレフィルドペンは、約20μg~約750μg、約20μg~約500μg、約20μg~約250μg、または約320μg~約100μgのPTH化合物を含む。
【0082】
非経口的使用のための組成物は、単位剤形(例えば、単回用量アンプル中)、またはいくつかの用量を含有し、好適な保存剤が添加されていてもよいバイアルで提供されてもよい(下記を参照されたい)。組成物は、液剤、懸濁剤、乳濁剤、注入デバイス、もしくはインプラント用送達デバイスの形態であってもよく、または使用前に、水もしくは別の好適なビヒクルで再構成される乾燥粉末として提示されてもよい。活性薬剤は別として、組成物は、好適な非経口的に許容される担体および/または賦形剤を含んでいてもよい。活性薬剤は、放出制御のために、ミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに組み込まれていてもよい。さらにまた、組成物は、懸濁化剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、浸透圧調整剤、および/または分散剤を含んでいてもよい。
【0083】
上記に示されたように、本発明による医薬組成物は、無菌注射に好適な形態であってもよい。そのような組成物を調製するために、好適な活性薬剤は、非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解または懸濁される。中でも、用いられ得る許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウムもしくは好適な緩衝液の添加によって好適なpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、デキストロース溶液、および等張塩化ナトリウム溶液である。水性製剤はまた、1つ以上の保存剤(例えば、メチル、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸)を含有していてもよい。化合物の1つが水にほとんど溶解しないか、わずかしか溶解しない場合において、溶解増強剤または可溶化剤を添加することができ、または溶媒は、10~60%w/wのプロピレングリコールなどを含んでいてもよい。
【実施例0084】
実施例1:HP PTXマウスモデルにおける血清カルシウムレベルに対するAZP-3601の効果
血清カルシウムに対する効果の増強が、HPが副甲状腺摘出またはPTXによって誘導された前臨床マウスモデルにおいて観察され、ここで、AZP-3601が、血液カルシウムおよびホスフェートレベルの回復および維持において、天然PTH(1-34)よりも強力で有効であったことが観察された。
図1において、黒線は、マウスにおけるPTXの影響を示し、正常レベルを十分に下回る血清カルシウムレベルをもたらす。200μg/kgのPHT(1-34)(青線)によるPTXマウスの単回投薬は、その短い半減期およびPTH1受容体のR
0コンフォメーションとのそのより弱い相互作用と一致して、血清カルシウムの一過性の上昇を引き起こした。対照的に、20、40または80μg/kg(それぞれ、黄線、オレンジ線、茶線)のAZP-3601によるPTXマウスの単回投薬は、PTH1受容体のR
0コンフォメーションとのその強力な相互作用と一致して、PTH(1-34)と同等の短い半減期を有するAZP-3601にもかかわらず、最大で72時間持続した血清カルシウムの用量関連正常化を誘導した。
【0085】
実施例2:HP TPTXラットモデルにおける血清カルシウムレベルに対するAZP-3601の効果
甲状腺-副甲状腺摘出またはTPTXラットを、3.8μg/kg/日~30.7μg/kg/日の範囲の用量のAZP-3601の連日皮下注射により治療した。治療は28日間継続した。AZP-3601による長期間治療により、TPTXラットにおいて血清カルシウムレベルの用量依存性の漸進的正常化が生じ、血液ホスフェートレベルを低減した。カルシウムの増加は経時的に(最初の15~21日にわたって)蓄積されたが、その後より一定になった。これは、定常状態の効果の発生を示す(
図2)。累積的効果に起因して、単回注射で必要な用量と比較して、より低い用量のAZP-3601が、血液カルシウムレベルを最終的に正常範囲へ増加させるのに必要だった。反復投与により、7.7μg/kg(1.8nmol/kg)/日の用量が、最適であることが見出された。この用量は、尿中カルシウム排泄を増加させることなく、および骨におけるいかなる有意な変化も生じることなく、血液カルシウムを正常化した。天然PTH(1-84)を1日1回注射されたTPTXラットにおいて、ビヒクル治療TPTXラットにおけるレベルと比較して、血液カルシウムレベルの持続性の増加はなく、血液ホスフェートレベルのわずかな低減のみがあった(
図2)。
【0086】
実施例3:HP PTXマウスモデルにおける尿中カルシウムレベルに対するAZP-3601の評価
PTXマウスの前臨床研究において、AZP-360による単回投薬は、血清カルシウムレベルの著しい上昇にもかかわらず、尿中カルシウム排泄の正常レベルの維持をもたらした(
図3)。このデータは、血清カルシウムレベルを増加させる他の手法、例えば、無機カルシウムおよびビタミンDによる食事補充または天然PTHの継続的注入による治療から予測される高くなった尿中カルシウムのレベルとは対照的である。
【0087】
実施例4:HP TPTXラットモデルにおける尿中カルシウムに対する反復用量のAZP-3601の評価
尿中カルシウムレベルに対するAZP-3601による反復投薬の効果を調べるために、TPTXラットを、3.8~30.7μg/kg/日の範囲の用量でのAZP-3601の連日皮下投与により治療した。追加対照として、天然PTH(1-84)またはビヒクルのいずれかの連日注射を受けたTPTXラットの別々の群、および正常(無傷の甲状腺および副甲状腺を有する、または偽)ラットの群に、ビヒクルを注射した。AZP-3601によって誘導された血清カルシウムの増加にもかかわらず、顕性高カルシウム血症を誘導した30.7mg/kg/日の最高用量を除いて、尿中カルシウムの有意な増加はなかった。高用量による尿中カルシウム排泄の観察された増加は、過剰の血液カルシウムを排出する正常な腎臓応答であった(
図4)。
【0088】
実施例5:非ヒト霊長類におけるAZP-3601の生物学的活性の評価
AZP-3601によって誘導された強力で持続的な生物学的活性がどのようにして甲状腺機能低下症患者に対する潜在的な臨床的有益性に変換されるかをさらに調べるために、その活性を、ヒトに非常に近い種であり、最初のヒトの用量選択に最も関連する、正常なカニクイザルにおいて調べた。AZP-3601の単回注射を、正常なカニクイザルに投与した。AZP-3601は、投薬後最大で1時間のみ血漿中で検出可能であったが、血清カルシウムに対する効果は、数日にわたって持続した。薬物動態プロファイルと薬力学的効果との間の解離は、PTHI受容体のR
0コンフォメーションとのAZP-3601の強力な相互作用によって引き起こされる延長されたシグナル伝達とは逆に、AZP-3601の短い循環半減期に起因する。AZP-3601はまた、血液カルシウムレベルを用量依存的に増加させた。
図5のパネルAにおいて見ることができるように、血液カルシウムの有意な増加が、1.1μg AZP-3601/kg(0.25nmol/kg)の注射24時間後に観察され、最大効果は、2.1μg/kg(0.5nmol/kg)で観察された。2.1および4.2μg AZP-3601/kg(0.5および1nmol/kg)のより高い用量により、血液カルシウムレベルの有意な上昇が、注射後12時間程度で観察され、単回注射後最大で72時間まで有意に上昇したままであった。
【0089】
図5のパネルBに図示される第2の研究において、サルに、95μg/kgの天然PTH(1-84)、42μg/kgの天然PTH(1-34)、または42.7μg/kgのAZP-3601のいずれかの単回用量を注射し、これらは、個々の化合物の分子量に対して調整された10nmole/kgの用量と同等であった。加えて、10.7μg AZP-3601/kg(2.5nmole/kg)のより低い用量も試験した。2つの用量のAZP-3601は、顕性高カルシウム血症を表す、正常範囲を十分に上回る血液カルシウムレベルの増加を同様に誘導し、これは、注射後少なくとも4日間上昇したままであった。対照的に、等用量の天然PTH化合物PTH(1-84)およびPTH(1-34)は、血液カルシウムを中程度にのみ増加させ、カルシウムレベルは24時間以内にベースラインに戻った。これらの研究において、正常なカニクイザルで、AZP-3601は、血清カルシウムの上昇において、天然PTH(1-84)およびPTH(1-34)のいずれかよりもおよそ40倍強力であり、より長い持続的効果を生じた(AZP-3601についての数日、対、天然PTHについての数時間)。
【0090】
実施例6:血清カルシウムを正常化する用量での連日のPTH(1-34)注射、継続的PTH(1-34)注入、または連日のAZP-3601注射のいずれかによる治療14日後のTPTXラットにおける大腿遠位の直接比較
AZP-3601の連日皮下注射とPTH(1-34)の連日皮下注射および継続的注入の効果を直接比較するために、TPTXラットにおいて血清カルシウムレベルを正常化したそれぞれのレジメンについての用量レベルを利用した。これらの用量は、連日注射されるPTH(1-34)に対する50nmole/kg/日(205μg/kg/日)、継続的に注入されるPTH(1-34)に対する3nmole/kg/日(12.3μg/kg/日)、および連日注射されるAZP-3601に対する1nmole/kg/日(4.2μg/kg/日)に対応した。治療14日後、大腿骨を収集し、定量的コンピュータ断層撮影によって骨塩量(BMD)について調べた。BMDの有意な増加が、PTH(1-34)の連日注射により観察され、BMDの有意な減少が、継続的に注入されたPTH(1-34)により観察され、BMDに対する有意な効果は、AZP-3601の連日注射により観察されなかった。PTH(1-34)によるこれらの結果は、PTHI受容体のR
0コンフォメーションとの強力な相互作用に起因するその増強されたシグナル伝達およびその短い循環半減期の組み合わせ効果の結果と思われ、天然PTHの間欠および継続的投与を含む以前の研究と非常に一致しており、固有のAZP-3601の中立的効果の証拠を提供する(
図6A~6C)。
【0091】
実施例7:HP TPTXラットモデルにおける骨塩量に対するAZP-3601の評価
AZP-3601による反復投薬の効果を調べるために、TPTXラットを、ビヒクルまたは3.8~30.7μg/kg/日(0.9~7.2nmole/kg/日)の範囲の用量でのAZP-3601のいずれかの連日皮下注射により治療した。追加対照として、天然PTH(1-84)の連日注射を受けたTPTXラットの別々の群、および正常(無傷の甲状腺および副甲状腺を有する、または偽)ラットの群に、ビヒクルを注射した。この研究の結果を
図7に提示する。AZP-3601による長期間治療は、骨に対する影響がないことを示した。全大腿骨および腰椎の両方を、BMDを測定する二重エネルギーX線吸収測定法またはDXAと呼ばれる技法を使用して分析した。この分析は、ビヒクル単独で治療された動物からの骨と比較して、AZP-3601治療の有意な効果がなかったことを明らかにした。対照的に、天然PTH(1-84)を1日1回注射されたTPTXラットは、腰椎および全大腿骨の両方においてBMDの統計学的に有意な増加を示した(p<0.05)。AZP-3601治療群は、マイクロコンピュータ断層撮影法の技法を使用して、骨構造における有意な相違がなかったことを示した。
【0092】
対照的に、天然PTH(1-34)のTransCon(登録商標)製剤により同様の長さの時間治療されたTPTXラットも使用する報告された研究(Holten-Andersenら JBMR 34:2075、2019、参考文献20)において、これは、継続的な非パルス注入様薬物動態プロファイルを生じ、偽手術TPTXラットおよびビヒクル単独で治療されたTPTXラットの両方と比較して、BMDの著しい減少が観察された。以前の第3者の研究は、同様に、天然PTHの間欠投与が、BMDを増加させたが、継続的な非パルス注入が、BMDの減少をもたらしたことを実証している。骨に対する天然PTH化合物への継続的非パルス曝露の影響も、悪性腫瘍の高カルシウム血症などのある特定の病状で明確に観察することができ、ここで、PTH1受容体に対しても作用するPTH関連ペプチドまたはPTHrPの継続的な非パルス産生は、わずか数か月だけ、BMDの非常に有意な減少を誘導する。
【0093】
実施例8:AZP-3601は、非ヒト霊長類の長期的治療後に骨パラメーターに対する影響を有さない
骨に対する長期間のAZP-3601治療の効果をさらに調べるために、13週間および36週間の研究の両方を、血清カルシウムに対するAZP-3601の効果に関して関連する種と考えられる非ヒト霊長類(NHP)において実施した。それぞれの性別の3または4頭のカニクイザルの群に、表1において概説するように、ビヒクル、または1、2.5もしくは10μg/kgの用量のAZP-3601のいずれかの連日皮下注射を、13週間または39週間のいずれかにわたって、与えた。選択された用量は、cHP患者に対する予期される治療用量範囲内であるか、またはそれを大幅に超えるかのいずれかである。
【0094】
【0095】
・13週間試験
o13週目の二重エネルギーX線吸収測定(DXA)によるエクスビボ骨塩量(BMD);
o13週目の骨の組織病理学検査。
・39週間試験
oベースラインならびに4、8、13、26および39週目での血清骨バイオマーカー;
oベースラインならびに26および39週目での定量的コンピュータ断層撮影(qCT)による生存中BMD;
o39週目の骨の組織病理学検査。
【0096】
13週間試験の最後に、右大腿骨、右脛骨およびL4腰椎を、3動物/群/性別から収集し、骨塩量(BMD)を、二重エネルギーX線吸収測定によって測定した。左大腿骨を組織病理学検査に提出した。BMDまたは組織病理学のいずれかに対する任意の治療関連効果の証拠はなかった。39週間試験において、血液試料を、骨バイオマーカーの測定のために、治療前ならびに治療の4、8、13、26および39週目の間に、4動物/群/性別から収集した。左大腿骨、左脛骨およびL4腰椎の生存BMDを、治療前ならびに治療の36および39週目の間に定量的コンピュータ断層撮影(qCT)によって測定した(
図9A、9B、9C、9D、9Eおよび9F)。治療期間の最後に、大腿骨を、組織病理学検査のために処理した。
【0097】
同化骨バイオマーカーである1型コラーゲンのN-末端プロペプチド(P1NP)、および異化骨バイオマーカーであるC末端テロペプチド(CTx)についての血液試料の分析は、いずれかの性別において、任意の時に治療関連変化がないことを明らかにした(
図8A、8B、8Cおよび8D)。治療前に、BMDは、調べられた3つの骨の部位すべてについて、すべての群の間で均一であった。研究の過程にわたって、性別またはAZP-3601治療にかかわらず、治療前の値と比較して、BMDの統計学的に有意な変化はなかった。その後の大腿骨の組織学的検査は、注目に値する知見を明らかにしなかった。
【0098】
骨に対するAZP-3601のこの明らかな中立的効果は、固有であり、PTHI受容体のR0コンフォメーションへのその強力な結合、その短い循環半減期、およびその大いに増強され、実質的により低い用量の使用を可能にする延長された生物学的効果に起因する可能性があると考えられる。
【0099】
HP患者において、集団研究において観察されたように、患者の広範囲に異常な骨微細構造に対するBMDの増加の潜在的な保護効果間に不安定なバランスがあり、これは、骨折の中立的なリスクに変換される。しかしながら、BMDを減少させる任意の治療または状態は、異常な微細構造に有利なバランスをシフトする可能性を有し、骨折のリスクを増加させ得る。その結果として、骨に対する中立的効果による治療は、この患者集団において実質的な利点として見ることができる。
【0100】
実施例6、7および8に提示された結果は、骨に対する長期間のAZP-3601治療の有害な効果が存在しないことを実証し、さらに、骨の完全性を損なわないHPのための治療としてAZP-3601の可能性を具体化する。
【0101】
実施例9:健康な対象における皮下(sc)注射によって投与された単回用量および2週間複数回上昇用量後のPTH化合物の安全性および耐容性の評価
パートA:評価のこのパートは、配列番号10を有するPTH化合物(AZP-3601)の安全性および耐容性、PKならびにPDを評価するための、健康な男性対象における無作為化、二重盲検、プラセボ対照単回上昇用量(SAD)研究であった。対象は、研究の薬物投与の28日~3日前にスクリーニングされた。最大で7つの逐次コホートを、この研究のパートのために計画した。第1のコホートは、AZP-3601を受けるために無作為化された3人の対象およびプラセボを受けるために無作為化された1人の対象の4人の対象を含んでいた。逐次コホートは、それぞれ8人の対象(無作為化された二重盲検様式で、AZP-3601を受ける6人およびプラセボを受ける2人)を含んでいた。パートAにおける対象は、朝、単回sc腹部注射として、臨床部位に研究薬物を受けた。健康なボランティアにおけるSADパートにおいて投与された実際の用量を下記に示す。
・コホートA1:1日目に、5μgのAZP-3601(n=3)または一致するプラセボ(n=1)の単回sc用量
・コホートA2:1日目に、10μgのAZP-3601(n=6)または一致するプラセボ(n=2)の単回sc用量
・コホートA3:1日目に、20μgのAZP-3601(n=6)または一致するプラセボ(n=2)の単回sc用量
・コホートA4:1日目に、40μgのAZP-3601(n=6)または一致するプラセボ(n=2)の単回sc用量
・コホートA5:1日目に、60μgのAZP-3601(n=6)または一致するプラセボ(n=2)の単回sc用量
・コホートA6:1日目に、120μgのAZP-3601(n=6)または一致するプラセボ(n=2)の単回sc用量
・コホートA7:1日目に、90μgのAZP-3601(n=6)または一致するプラセボ(n=2)の単回sc用量
【0102】
盲検データ(AZP-3601治療対象のみ)に基づく≧10.5mg/dL(2.6mmol/L)のアルブミン補正ピーク血清カルシウムレベルの中央値、または少なくとも1人の対象の≧12mg/dL(3.0mmol/L)のアルブミン補正ピーク血清カルシウムレベルを、より小さい用量漸増を行うための一般的なガイドラインとして使用した。それぞれのコホート内で、対象は、実質的に、以下の通り投薬された。2人のセンチネル対象に、最初の投薬日に投薬した(AZP-3601を受ける1人の対象およびプラセボを受ける1人の対象)。血清カルシウムを、レベルがベースライン値と同等までおよび/または正常範囲内まで、モニターした。1つのコホートにおける最後の用量と次のコホートにおける最初の用量との間に少なくとも7日の間隔が存在した。それぞれの対象は、研究の間に、1つのコホートのみに参加した。
【0103】
パートB:評価のこのパートは、AZP-3601の安全性および耐容性、PKならびにPDを評価するための、健康な男性または出産可能性がない女性対象における無作為化、二重盲検、プラセボ対照複数回上昇用量(MAD)研究であった。対象は、(最初の)研究の薬物投与(最初)の28日~3日前にスクリーニングされた。4つの逐次コホートを、この研究のパートのために計画した。それぞれのコホートは、10人の対象(無作為化様式で、AZP-3601を受ける8人およびプラセボを受ける2人)を含んでいた。パートBにおける対象は、朝、連日sc腹部注射として、14日間、臨床部位に研究薬物を受けた(すべての投薬日で注射部位のローテーションを伴う)。健康なボランティアにおけるMADパートにおいて投与された実際の用量を下記に示す。
・コホートB1:1日目から14日目まで、1日1回(qd)の10μgのAZP-3601(n=8)または一致するプラセボ(n=2)の複数回sc用量
・コホートB2:1日目から14日目まで、qdの20μgのAZP-3601(n=8)または一致するプラセボ(n=2)の複数回sc用量
・コホートB3:1日目から14日目まで、qdの40μgのAZP-3601(n=8)または一致するプラセボ(n=2)の複数回sc用量
・コホートB4:1日目から14日目まで、qdの60μgのAZP-3601(n=8)または一致するプラセボ(n=2)の複数回sc用量
・コホートB5:1日目から14日目まで、qdの80μgのAZP-3601(n=8)または一致するプラセボ(n=2)の複数回sc用量
【0104】
対象は、血清および尿中カルシウムを含むPDパラメーターの定常状態を得るために、14日の全期間にわたって、qdで研究薬物を受けた。血清カルシウムを、レベルがベースライン値と同等および/または正常範囲内まで、モニターした。パートBは、パートAの最初の3つのコホートを終了した後に開始した。盲検データ(AZP-3601治療対象のみ)に基づく≧10.5mg/dL(2.6mmol/L)のアルブミン補正ピーク血清カルシウムレベルの中央値、または少なくとも1人の対象の≧12mg/dL(3.0mmol/L)のアルブミン補正ピーク血清カルシウムレベルを使用した。
【0105】
図10は、プラセボ対照と比較して、AZP-3601治療が、ベースラインからの平均アルブミン調整血清カルシウム値の明確な用量依存性の増加を生じたことを示す。アルブミン調整血清カルシウムの正常な生理学的な日内変動は、5μgおよび10μgのAZP-3601により徐々に減弱され、20μgで完全に排除された。40μgのAZP-3601の用量で、平均アルブミン調整血清カルシウム値は、有意に増加したが、正常な実験範囲内にあり、投与後少なくとも24時間の間、上昇したままであった。平均内因性血清PTHの用量依存性の減少が観察され、これは、平均血清カルシウムの同時増加と有意に相関した。これらのデータは、単回投与後少なくとも24時間にわたる持続的なカルシウム血症応答によって特徴付けられる健康なヒトにおけるAZP-3601の薬力学的効果の証拠を提供する。
【0106】
実施例10:HPを有する対象におけるsc注射によって投与された単回用量および4週間複数回上昇用量後のPTH化合物の安全性および耐容性の評価
パートC:評価のパートCは、AZP-3601の安全性および耐容性、PKならびにPDを評価するための、標準治療の治療(経口カルシウムおよび活性ビタミンDによる治療)中の副甲状腺機能低下症(HP)を有する男性または女性対象における非盲検複数回上昇用量(MAD)研究であった。それぞれ、およそ12人の患者の最大で2つのコホートを、この研究のパートのために計画した。治療期間の前に、経口カルシウムおよび活性ビタミンDの用量を調整して、アルブミン補正血清カルシウムのベースライン標的範囲(7.8~9.0mg/dL、すなわち、1.95~2.25mmol/L)を達成し、したがって、すべての患者について近いベースラインを確実にする、最大で8週間の最適化期間が存在した。この最適化期間の間、任意の血清25-ヒドロキシビタミンD(ネイティブビタミンD)および/またはマグネシウム欠乏症が補正された。治療期間の間、パートCにおける患者は、連日sc腹部注射として、28日間、AZP-3601を受けた(すべての投薬日で注射部位のローテーションを伴う)。経口カルシウムおよび活性ビタミンD補充の用量を、アルブミン補正血清カルシウムを標的範囲(7.8~9.0mg/dL、すなわち、1.95~2.25mmol/L)に維持しながら、治療の最初の14日間の間低減した。経口カルシウムおよび活性ビタミンD両方の補充の低減を、活性ビタミンD用量が排除され、経口カルシウム用量が500mg/日以下に低減されるまで、段階的な手法を使用して行った。動物データに基づいて、血清カルシウムは、AZP-3601の反復投与後に漸進的に増加すると予想され、PD定常状態は、投薬の最初の5日以内に観察されると予想された。経口カルシウムおよび活性ビタミンD補充の用量の交互の低減は、したがって、投薬前のアルブミン補正血清カルシウム値に基づいて、定常状態近くで行った。以下の治療を、非盲検形式で、パートCにおいて投与した。
・コホートC1:1日目から28日目まで、qdの20μgのAZP-3601の複数回sc用量(n=12)(40μgまでのAZP-3601の用量増加は、14日目以降から可能であった)
・コホートC2:1日目から28日目まで、qdの10μgのAZP-3601の固定用量の複数回sc用量(n=12)(AZP-3601の用量は、20μgの固定用量で、14日目以降から増加され得る)
【0107】
拡張段階の間、患者は、10μgの増分で、60μg(コホート1)および80μg(コホート2)の最大用量まで増加するそれらのAZP-3601用量を有していた。
【0108】
実施例11:HPを有する対象における2か月の治療拡張期間の間のPTH化合物の安全性および耐容性の評価
拡張段階は、主治療期間の28日目の来診後直ぐに開始した。患者は、連日sc注射として、29日目以降から、56日間(2か月)、AZP-3601を受けた(投与のそれぞれの日で注射部位のローテーションを伴う)。目標は、経口カルシウムおよび活性ビタミンDの用量を可能な限り安全に低くし、アルブミン補正血清カルシウムを、7.8~9.0mg/dL(1.95~2.25mmol/L)の標的範囲内で維持しながら、用量範囲にわたってAZP-3601の投薬を最適化することであった。28日目における補充カルシウム(≦500mg/日)を最小限取っているか、またはなし、およびビタミンDなしの患者について、以前の14日の治療(パートC、主治療期間)からのAZP-3601用量を、維持し、拡張段階の間に必要な場合は調整した。28日目に活性ビタミンDおよび/または500mg/日超の経口カルシウムを依然として取っている患者について、補充の漸進的低減を、AZP-3601の用量を増加させながら、行った。29日目以降、患者は、28日目と同じAZP-3601の用量において継続し、次いで、AZP-3601の個々の用量設定を、30日目ごろに開始し、患者は、拡張段階の間の任意の時に調整されたそれらのAZP-3601の用量を有していた。患者は、7.8~9.0mg/dL(1.95~2.25mmol/L)の標的範囲内でアルブミン補正血清カルシウムを達成または維持する目標で、以前に定義されたようにして増加されたAZP-3601用量を有することができる。AZP-3601用量を、標的範囲内にアルブミン補正血清カルシウムを維持するか、または任意の安全性の懸念のために必要な場合、任意の時に下方調整した。患者が、補充の最小用量で安定なアルブミン補正血清カルシウムを達成したら、そのAZP-3601の用量で維持した。
【0109】
図11Aおよび11Bは、拡張期間が終了した対象における20μg/日の開始用量(
図11A)および10μg/日の開始用量(
図11B)のAZP-3601の投与が、治療の開始の2週間以内に活性ビタミンD/カルシトリオールの投与の中止を可能にしたことを示す。
【0110】
図12Aおよび12Bは、拡張期間が終了した対象における20μg/日の開始用量(
図12A)および10μg/日の開始用量(
図12B)のAZP-3601の投与が、500mg/日(点線)を下回る経口カルシウム補充の持続的な低減を可能にしたことを示す。コホート2において、経口カルシウム補充の中止は、遅延し、より低い開始用量に起因して漸増を必要とし、用量に関係する効果を裏付けた。
【0111】
図13Aおよび13Bは、拡張期間が終了した対象における20μg/日の開始用量(
図13A)および10μg/日の開始用量(
図13B)のAZP-3601の投与が、84日間の研究を通して、平均血清カルシウムを標的範囲内に維持したことを示す。これらの結果は、AZP-3601の投与が、HPのための標準治療の迅速な中止を可能にすることを実証する。
【0112】
図14Aおよび14Bは、AZP-3601の投与が、両方のコホートにおいて、研究の治療期間全体を通して、平均24時間尿中カルシウムの迅速で延長された持続的な低減および正常化を誘導したことを示す。
図15Aおよび15Bに提示される結果は、ベースラインで尿中カルシウムの上昇を有する13人のうち12人の対象において、AZP-3601の投与が、両方のコホートにおいて、24時間尿カルシウムの迅速で広範囲の持続的な正常化を誘導したことを示す
【0113】
図16A~16Dは、AZP-3601による治療が、4~8週間の中央正常レベルへの同化および異化骨バイオマーカーの両方の漸進的な増加を誘導したことを示す。ここに提示されるデータは、AZP-3601が、いずれの平均骨マーカーも正常上限を上回って増加させなかったことも実証し、それによって、AZP-3601の作用機構が、骨再吸収ではなく尿中カルシウム再吸収を標的にするという作業仮説を裏付ける。HP患者の最大で17%が骨減少症または骨粗鬆症を有し、53%が閉経前後の女性であるので、これは差別化要因である。骨塩量(BMD)および骨梁スコア(TBS)は、両方のコホートの対象において、安定なままであった(
図17Aおよび17B)。これらの結果は、AZP-3601の投与が、骨の完全性を損なわないことを実証する。
図18Aおよび18Bは、さまざまな骨の部位でのZスコアおよびTスコアに対するAZP-3601投与の効果を示す。骨バイオマーカーのバランスが保たれた増加と一致して、データは、骨減少症を有する患者も含んで、ZスコアおよびTスコアが安定なままであることを実証する。Tスコアデータは、患者の43%(14人の患者のうち6人の患者)が、少なくとも1つの解剖学的部位で、ベースラインで骨減少性であったことをさらに示す。
【0114】
本明細書において引用されたすべての参考文献およびそれらの参考文献は、追加または代替的な詳細、特色、および/または技術的背景の教示に適切な場合、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
本開示は、特定の実施態様を参照して、特に示し、記載したが、上記で開示されたならびに他の特色および機能の変形形態、またはそれらの代替物は、望ましくは、多くの他の異なるシステムまたは適用に組み合わされてもよいことが理解されるであろう。また、それらにおけるさまざまな現在不測のまたは予想外の代替物、改変、変形形態または改善が、その後に当業者によって行われてもよく、また、以下の特許請求の範囲に包含されることも意図される。
【0116】
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