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  • 特開-ヒューズ用ヒューズ本体及びヒューズ 図1
  • 特開-ヒューズ用ヒューズ本体及びヒューズ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019029
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ヒューズ用ヒューズ本体及びヒューズ
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/08 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
H01H85/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024120368
(22)【出願日】2024-07-25
(31)【優先権主張番号】2023109244585
(32)【優先日】2023-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202321985743X
(32)【優先日】2023-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524282238
【氏名又は名称】クーパー シーアン ヒューズギア カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】COOPER XI’AN FUSEGEAR CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ホアシェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ガンペン
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502BA01
5G502BB05
5G502BB07
5G502BB15
5G502BC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】過負荷及び短絡保護能力を同時に備えたヒューズを提供する。
【解決手段】ヒューズ本体は、長さ方向に沿う長手方向と幅方向に沿う横方向とを有し、ヒューズ本体は、本体と横方向に沿って本体に配置された第1の貫通孔群と、第1の貫通孔群の向きに沿って本体に形成された第1の狭路群とを含み、長手方向に沿って第1の狭路群の各狭路の断面の面積が一定である第1定着部と、長手方向に沿って第1定着部から間隔を空けて配置された第2定着部であって、横方向に沿って本体に配置された第2の貫通孔群と、第2の貫通孔群の向きに沿って本体に形成された第2の狭路群とを含み、長手方向に沿って、第2の狭路群の各狭路の断面の面積が、この狭路の中心に向かう方向に先細りになっている第2の定着部と、を含み、第1の狭路群の2つの隣接する狭路間の横方向の間隔は、第2の狭路群の2つの隣接する狭路間の横方向の間隔よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に沿う長手方向(L)と幅方向に沿う横方向(W)とを有するヒューズ用ヒューズ本体であって、前記ヒューズ本体は、
本体(6)と、
前記横方向(W)に沿って前記本体(6)に配置された第1の貫通孔群と、該第1の貫通孔群の向きに沿って前記本体(6)に形成された第1の狭路群とを含み、前記長手方向(L)において、前記第1の狭路群の各狭路の断面の面積が一定である第1定着部(7)と、
前記長手方向(L)において、前記第1定着部(7)から間隔を隔てて配置された第2定着部(8)であって、該第2定着部(8)が、前記横方向(W)に沿って前記本体(6)に配置された第2の貫通孔群と、該第2の貫通孔群の向きに沿って前記本体(6)に形成された第2の狭路群とを含み、前記長手方向(L)において、前記第2の狭路群の各狭路の断面の面積が、該狭路の中心に向かう方向に先細りになっている前記第2定着部(8)と、を含み、
前記第1の狭路群の2つの隣接する狭路間の横方向の間隔は、前記第2の狭路群の2つの隣接する狭路間の横方向の間隔よりも小さいことを特徴とするヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項2】
前記第1の狭路群の各狭路の断面の面積が、互いに同一であることを特徴とする請求項1に記載のヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項3】
前記第2の狭路群の各狭路の最小断面の面積が、互いに同一であることを特徴とする請求項1に記載のヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項4】
前記第1の狭路群のいずれかの狭路の断面の面積が、前記第2の狭路群のいずれかの狭路の最小断面の面積に等しいことを特徴とする請求項1に記載のヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項5】
前記第1の貫通孔群は、前記横方向(W)に沿って前記本体(6)に配置された複数の第1貫通孔(71)を含み、前記第1の狭路群は、隣接する2つの第1貫通孔(71)の間に形成された狭路を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項6】
前記第1の貫通孔群は、前記横方向(W)に沿って前記複数の第1貫通孔(71)の反対側に配置された複数の第2貫通孔(72)を更に含み、該複数の第2貫通孔(72)は、前記複数の第1貫通孔(71)の横方向の寸法よりも大きい横方向の寸法を有し、前記第1の狭路群は、隣接する第1貫通孔(71)と第2貫通孔(72)との間に形成された狭路を更に含むことを特徴とする請求項5に記載のヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項7】
別の第1貫通孔(71)に隣接する又は第2貫通孔(72)に隣接する前記第1貫通孔(71)の側縁の少なくとも一部が、直線状の縁として構成され、前記第1貫通孔(71)に隣接する前記第2貫通孔(72)の側縁の少なくとも一部が、直線状の縁として構成されていることを特徴とする請求項6に記載のヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項8】
前記第2の貫通孔群は、前記横方向(W)に沿って前記本体(6)に配置された複数の第3貫通孔(81)を含み、該第3貫通孔(81)は、前記第1貫通孔(71)の横方向の寸法よりも大きい横方向の寸法を有し、前記第2の狭路群は、隣接する2つの第3貫通孔(81)の間に形成された狭路を含むことを特徴とする請求項5に記載のヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項9】
別の第3貫通孔(81)に隣接する前記第3貫通孔(81)の側縁は、前記別の第3貫通孔(81)に向かって突出する湾曲した縁として構成されていることを特徴とする請求項8に記載のヒューズ用ヒューズ本体。
【請求項10】
ハウジング(2)と、
該ハウジング(2)の両端部に配置された2つの端子(4)と、
前記ハウジング(2)内の前記2つの端子(4)の間に接続されたヒューズ本体(5)であって、該ヒューズ本体(5)が請求項1~9のいずれか1項に記載されたヒューズ本体である前記ヒューズ本体(5)と、
前記ハウジング(2)内に充填された消弧媒体と、を含むことを特徴とするヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気回路の短絡及び過負荷保護の技術分野に関し、特にヒューズ用ヒューズ本体及びヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒューズは、電流が規定値を超えると、一定時間内にヒューズ本体が自らの熱で溶断し、回路を遮断する回路保護装置である。現在、ヒューズは電気自動車の分野で広く使用されている。電気自動車の開発初期段階において、配電システムに求められる要件は、大開口容量、小型化、高速溶断である。このため、配電システムの保護には、一般的にAR高速ヒューズが選択される。電気自動車産業が徐々に標準化されるにつれ、配電系統の保護に使用されるヒューズには、様々な動作条件下での様々な負荷の保護ニーズを満たすため、より高い要件が提示されるようになってきた。例えば、オリジナルのAR型ヒューズの特性に加えて、1.1In(定格電流の1.1倍)の過負荷耐量、2In、3In、5Inの過負荷及び短絡保護能力を同時に備えたヒューズが要求されるようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、上記の技術的課題の少なくとも一部を解決するヒューズ用ヒューズ本体を提供することを目的とする。
【0004】
本開示はまた、上述の改良型ヒューズ本体を適用したヒューズを提供することも意図している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様によれば、長さ方向に沿う長手方向及び幅方向に沿う横方向を有するヒューズ用ヒューズ本体が提供され、ヒューズ本体は、
本体と、
横方向に沿って本体に配置された第1の貫通孔群と、第1の貫通孔群の向きに沿って本体に形成された第1の狭路群とを含み、長手方向において、第1の狭路群の各狭路の断面の面積が一定である第1定着部と、
長手方向において、第1定着部から間隔を隔てて配置された第2定着部であって、第2定着部が、横方向に沿って本体に配置された第2の貫通孔群と、第2の貫通孔群の向きに沿って本体に形成された第2の狭路群とを含み、長手方向において、第2の狭路群の各狭路の断面の面積が、該狭路の中心に向かう方向に先細りになっている第2定着部と、を含み、
第1の狭路群の2つの隣接する狭路間の横方向の間隔は、第2の狭路群の2つの隣接する狭路間の横方向の間隔よりも小さい。
【0006】
本明細書で提供されるヒューズ本体によれば、第1定着部の第1の狭路群及び第2定着部の第2の狭路群は、個々の狭路の形状及び狭路間の横方向の間隔において差別化されたデザインを形成し、第1の狭路群において各狭路は、隣接する狭路間の横方向の間隔が小さい実質的に一定の断面の矩形として構成され、第2の狭路群において各狭路は、中心に近付くにつれて断面が小さくなるウェスト形状として構成され、隣接する狭路間の横方向の間隔は大きくなる。この差別化された設計により、第1の狭路群は第2の狭路群に比べて熱を集めやすくなり、その結果、2つの狭路群間で熱伝導率及び放熱係数に差が生じ、1.1Inの過負荷耐性、2In、3In、5Inの過負荷及び短絡保護の要件を満たすことができる。狭路の差別化設計により、ヒューズ本体は、銅などの低コストの導体材料で製造することができる。この場合にも、製品は高い遮断能力と幅広い過電流保護能力を発揮するだけでなく、過酷な環境負荷や電流突入の応用条件にも対応する。
【0007】
いくかの実施形態では、第1の狭路群の各狭路の断面の面積が互いに同一である。
【0008】
いくつかの実施形態では、第2の狭路群の各狭路の最小断面の面積が互いに同一である。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の狭路群の任意の狭路の断面の面積が、第2の狭路群の任意の狭路の最小断面の面積に等しい。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1の貫通孔群は、横方向に沿って本体に配置された複数の第1貫通孔を含み、第1の狭路群は、2つの隣接する第1貫通孔の間に形成された狭路を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、第1の貫通孔群は、横方向に沿って複数の第1貫通孔の反対側に配置された複数の第2貫通孔を更に含み、複数の第2貫通孔は、複数の第1貫通孔の横方向の寸法よりも大きい横方向の寸法を有し、第1の狭路群は、隣接する第1貫通孔と第2貫通孔との間に形成された狭路を更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、別の第1貫通孔に隣接する又は第2貫通孔に隣接する、第1貫通孔の側縁の少なくとも一部は、直線状の縁として構成され、第1貫通孔に隣接する第2貫通孔の側縁の少なくとも一部は、直線状の縁として構成される。
【0013】
いくつかの実施形態において、第2の貫通孔群は、横方向に沿って本体内に配置された複数の第3貫通孔を含み、第3貫通孔は、第1貫通孔の横方向の寸法よりも大きい横方向の寸法を有し、第2の狭路群は、2つの隣接する第3貫通孔の間に形成された狭路を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、別の第3貫通孔に隣接する第3貫通孔の側縁は、別の第3貫通孔に向かって突出する湾曲した(rounded)縁として構成される。
【0015】
本開示の別の側面によれば、ヒューズが提供され、このヒューズは、
ハウジングと、
ハウジングの両端部に配置された2つの端子と、
ハウジング内の2つの端子の間に接続されたヒューズ本体であって、該ヒューズ本体が前述のヒューズ本体であるヒューズ本体と、
ハウジング内に充填された消弧媒体と、を含む。
【0016】
本開示の他の特徴及び利点の一部は、本出願を読めば当業者には明らかであり、他の一部は、添付図面と併せて以下の具体的な実施形態で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、本開示の実施形態を添付図面に関連して詳細に説明する:
図1図1は、本開示の一実施形態によるヒューズの断面図である。
図2図2は、本開示の一実施形態によるヒューズの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本開示に開示されるヒューズ及びヒューズ用ヒューズ本体の概略的な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。添付図面は、本開示のいくつかの実施形態を提示するために提供されるが、添付図面は、特定の実施形態の寸法(dimensions)に描かれる必要はなく、特定の特徴は、本開示をより良く図示し説明するために、拡大され、除去され、又は局所的に分割されてもよい。また、添付図面の構成要素の一部は、技術的効果に影響を与えることなく、実際の必要に応じて位置を調整することができる。本明細書に現れる「添付図面において」又は同様の語句は、全ての添付図面又は実施例を指す必要はない。
【0019】
以下、添付図面を説明するために使用される、「内側」、「外側」、「上方」、「下方」などの特定の方向用語は、通常の意味を有し、添付図面の通常の表示に関与する方向を指すものと理解される。別段の指示がない限り、本明細書に記載される方向用語は、当業者によって理解される従来の方向に実質的に従う。
【0020】
本開示で使用される「第1」、「第1の」、「第2」、「第2の」などの用語は、順序、数、重要性を示すものではなく、1つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用される。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態によるヒューズを示している。図示のように、ヒューズ1は、ハウジング2、端子4、及びヒューズ本体5を含んでいる。ハウジング2は、円筒形又は他の任意の適切な形状であってよく、内部に長手方向Lに沿って延びる収容キャビティを画定する。一実施形態において、ハウジング2は、一体成型プロセスで作られた一体部材である。別の実施形態では、ハウジング2は、一緒に組み立てられた2つのハーフシェルからなり、2つのハーフシェルは、溶接によって一緒に組み合わせることができる。収容キャビティの対向する2つの端部には、2つの端子4が配置されている。端子4の外周面とハウジング2の内周面との間には、例えばシール用のライナー3が挟まれていてもよい。ライナー3は、ハウジング2の長手方向の全長に沿って延びていてもよい。ヒューズ本体5は、ハウジング2の収容キャビティ内で2つの端子4の間に接続され、ハウジング2の収容キャビティは、ヒューズ本体5を封入する消弧媒体、例えば石英砂で充填される。ヒューズ本体5と2つの端子4はそれぞれ一体成形プロセスで製造され、溶接又はその他の適切な電気接続によって接続される。或いは、ヒューズ本体5と2つの端子は、一体成形されたモノリシックピースの一部であってもよい。ヒューズ本体5は、銅、亜鉛、銀などの適切な導体材料で作ることができ、銅が好ましい。ヒューズ本体5が銅材料で作られている例として、ヒューズ本体5を以下に詳細に説明する。
【0022】
図2は、本開示の一実施形態によるヒューズ本体の平面図を示す。図示のように、ヒューズ本体5は、長さ方向に沿う長手方向Lと幅方向に沿う横方向Wとを有し、長さ方向及び幅方向に直交する厚さ方向(図示せず)を有するシート状である。ヒューズ本体5の本体6は銅材料からなり、その上に異なる設計の第1定着部7及び第2定着部8が形成されている。
【0023】
第1定着部7は、例えば、長手方向Lに沿った本体6の実質的に中間位置に配置されており、本体6には、横方向Wに沿って配置された第1の貫通孔群が形成されている。図2に示すように、第1の貫通孔群は、横方向Wに沿って本体6に配置された2つの第1貫通孔71と、横方向Wに沿って2つの第1貫通孔71の反対側に配置された2つの第2貫通孔72とを含んでいる。第1貫通孔71及び第2貫通孔72は、いずれも本体6の厚み方向の全体を貫通している。第1貫通孔71の横方向Wに沿った寸法は、第2貫通孔72の横方向Wに沿った寸法よりも小さい。図示の実施形態では、2つの第2貫通孔72の各々が、本体6の対応する側縁まで延びている。隣接する2つの第1貫通孔71の間、及び隣接する第1貫通孔71と第2貫通孔72との間には、狭路73が形成され、これらの狭路73は、第1の貫通孔群の向きに沿って配置され、第1の狭路群を形成する。区別のため、本明細書では、第1の狭路群を形成するこれらの狭路73を第1狭路73とも呼ぶ。
【0024】
第1狭路73は実質的に矩形であり、その断面の面積S1は長手方向Lにおいて実質的に一定である。図示された実施形態において、第1貫通孔71及び第2貫通孔72は、それぞれ面取りされた矩形であるが、面取り部分が第1狭路73の断面積に及ぼす影響は、本開示の意図する目的にとって無視できるものであることが理解されよう。図示しない実施形態では、第1貫通孔及び第2貫通孔が、直線状の辺を有する矩形であり得る。図示しない別の実施形態では、別の第1貫通孔に隣接する第1貫通孔の側縁及び第2貫通孔に隣接する側縁が直線状の縁であり、第1貫通孔に隣接する第2貫通孔の側縁が直線状の縁であり、それによって、隣接する2つの第1貫通孔の間及び隣接する第1貫通孔と第2貫通孔との間に、実質的に一定の断面を有する矩形の第1狭路を形成することも可能である。この場合、第1貫通孔の他の2つの側縁及び第2貫通孔の他の2つの側縁は、直線状の縁に限定されず、湾曲した縁など他の形状であってもよい。
【0025】
第1の狭路群において、全ての第1狭路73の断面の面積S1は互いに同一である。このようにして、第1の狭路群に含まれる第1狭路73は、大電流(例えば、5In~20KAの遮断電流)条件下において、一貫したアーク開始時間(arc initiation time)及びアーク発火時間(arc ignition time)を確保する。本明細書で使用される「アーク開始時間」とは、電流がヒューズの定格値を超えてから、回路に過負荷又は短絡が発生した場合にヒューズ内部でアークが発生するまでの時間期間である。この時間が短ければ短いほど、ヒューズは速やかに電力供給を遮断することができ、電気機器と人体の安全を守ることができる。「アーク発火時間」とは、アークが発生してから消滅するまでの時間を指す。
【0026】
第2定着部8は、長手方向Lに沿って第1定着部7から離間して本体6上に配置され、横方向Wに沿って配置された第2の貫通孔群が本体6に形成される。図示のように、第2の貫通孔群は、横方向Wに沿って本体6上に配置された4つの第3貫通孔81を含んでいる。第3貫通孔81の各々は、本体6全体を厚さ方向に貫通している。第3貫通孔81は、横方向Wに沿った寸法が、横方向Wに沿った第1貫通孔71の寸法よりも大きい。図示の実施形態では、横方向最外側に位置する2つの第3貫通孔81の各々が、それぞれ本体6の対応する側縁まで延びている。隣接する2つの第3貫通開口81の間には、狭路83が形成され、これらの狭路83は、第2の貫通孔群の向きに沿って配置され、第2の狭路群を形成する。区別のために、第2の狭路群83を形成するこれらの狭路83を、本明細書では第2狭路83とも呼ぶ。
【0027】
また、第2狭路83は、途中から幅が狭くなるウェスト形状となっており、長手方向Lにおいて、第2狭路83の断面の面積は、両端部から中央部に向かう方向に沿って先細りとなっており、第2狭路83の長手方向中央部における面積S2の最小断面が形成されている。図示された実施形態では、別の第3貫通孔81に隣接する第3貫通孔81の側縁が、別の第3貫通孔81に向かって突出する湾曲縁であり、それによって、隣接する2つの第3貫通孔81の間にウェスト形状の第2狭路83が形成され、第3貫通孔81の残りの2つの縁は直線状の縁である。図示しない実施形態では、別の第3貫通孔に隣接する第3貫通孔の側縁が、別の第3貫通孔に向かって突出する湾曲縁であることに加えて、第3貫通孔の残りの2つの縁も湾曲縁とすることができ、それによって、例えば、第3貫通孔は、円形、楕円形などの形状に構成することができる。
【0028】
第2の狭路群において、全ての第2狭路83の最小断面の面積S2は同じである。このようにすることで、第2の狭路群に含まれる第2狭路83は、大電流条件下(例えば、5In~20KAの遮断電流)におけるアーク開始時間とアーク発火時間との整合性を確保することができる。
【0029】
横方向Wに沿った第1貫通孔71の寸法は、横方向Wに沿った第3貫通孔81の寸法よりも小さいので、第1の狭路群における隣接する2つの第1狭路73間の横方向の間隔は、第2の狭路群における隣接する2つの第2狭路83間の横方向の間隔よりも小さい。これによって、第1の狭路群は、個々の狭路の形状及び2つの狭路間の横方向の間隔の点で、第2の狭路群と差別化されるように設計される。この差別化された設計により、第1の狭路群は第2の狭路群に比べて熱を集めやすくなり、その結果、第1の狭路群と第2の狭路群との間で熱伝導率及び放熱係数に差が生じる。この差別化された設計により、2Inまでの定着特性を満たすことも容易になる。同じ過電流条件下では、第1の狭路群は第2の狭路群よりも早く破壊される。異なる過電流に基づいて、第1と第2との狭路群の破断時間の差は異なり、例えば20KAでは100msより小さくなる。
【0030】
S1とS2との間の大きさの関係は、第1の狭路群に含まれる全ての第1狭路73が断面において同じ面積S1を有し、第2の狭路群に含まれる全ての第2狭路83が最小断面において同じ面積S2を有することを保証しながら、所望の製品特性に応じて設計することができる。一実施形態では、S1=S2である。
【0031】
図1及び図2に示すように、2つの第2定着部8は、長手方向Lに沿って第1定着部7の反対側に配置されている。しかし、第1定着部7及び第2定着部8の数は、所望の製品の特徴に応じて設計することができ、例えば、1つの第1定着部7だけでなく、1つの第2定着部8を本体6に配置することもできることが理解されよう。
【0032】
更に、第1定着部7が2つの第1貫通孔71及び2つの第2貫通孔72を含み、第2定着部8が4つの第3貫通孔81を含むように示されているが、第1の狭路群の第1狭路の断面を実質的にバランスよく構成し、第2の狭路群の第2狭路の断面を中心に向かう方向に先細りに構成し、第1の狭路群と第2の狭路群との差別化設計の要件を満たすために、2つの隣接する第1狭路の間の横方向の間隔を、2つの隣接する第2狭路の間の横方向の間隔よりも小さくしさえすれば、第1貫通孔71、第2貫通孔72、及び第3貫通孔81の数及び大きさは、調整され得ることが理解される。
【0033】
例えば、図示しない実施形態において、第1定着部の第1の貫通孔群は、横方向の寸法が同じ(すなわち、第2貫通孔を省略した)複数の第1貫通孔から構成され、隣接する2つの第1貫通孔の間には、断面が実質的に一定の矩形状の第1狭路が形成され、第2定着部は、横方向の寸法が同じ複数の第3貫通孔から構成され、隣接する2つの第3貫通孔の間には、断面が中心に向かう方向に先細りするウェスト形状の第2狭路が形成される。第3貫通孔の横方向の寸法は第1貫通孔の横方向の寸法よりも大きく、それにより、第1の狭路群における隣接する2つの第1狭路間の横方向の間隔は、第2の狭路群における隣接する2つの第2狭路間の横方向の間隔よりも小さい。このようにして、本願発明の意味において、第1の狭路群は、個々の狭路の形状及び狭路間の横方向の間隔の点で、第2の狭路群と差別化される。
【0034】
本明細書は、様々な実施形態に基づいて記載されているが、各実施形態が1つの独立した技術的解決策のみを含むわけではなく、本明細書のこの記載は、明瞭化のためのものに過ぎず、当業者は、本明細書を全体として捉えるべきであり、様々な実施形態における技術的解決策を適切に組み合わせて、当業者が理解できる他の実施形態を形成することができることを理解すべきである。
【0035】
上記は、本開示の概略的かつ具体的な実施態様に過ぎず、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示の思想及び原理から逸脱することなく、当業者によってなされる同等の変更、修正及び組み合わせは、本開示の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0036】
1:ヒューズ、2:ハウジング、3:ライナー、4:端子、5:ヒューズ本体、6:本体、7:第1定着部、71:第1貫通孔、72:第2貫通孔、73:第1狭路、8:第2定着部、81:第3貫通孔、83:第2狭路、L:長手方向、W:横方向
図1
図2
【外国語明細書】