(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019385
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】高圧配管用自在継手
(51)【国際特許分類】
F16L 21/06 20060101AFI20250131BHJP
F16L 23/04 20060101ALI20250131BHJP
F16L 43/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
F16L21/06
F16L23/04
F16L43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122975
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】323008017
【氏名又は名称】吉田 邦亜
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 邦秀
【テーマコード(参考)】
3H015
3H016
3H019
【Fターム(参考)】
3H015DA04
3H016CA04
3H019EA09
3H019EA11
3H019EA18
(57)【要約】
【課題】コンパクトな使用が可能で、高圧エアーの圧力損失が少なく、一つで多様な用途に対応することができる高圧配管用自在継手を提供する。
【解決手段】高圧配管の端部にねじ止めする配管継手10を構成する。該配管継手10の他端側に挿入する自在継手20を構成する。配管継手10と自在継手20とを連結する固定クランプ30を構成する。流路23の端部に直角に連続する流入口24を形成する。流入口24の軸心部を流路23の軸心部と一致するように流入口24を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器側の高圧配管にネジ止めして高圧エアーを送る配管継手と、
配管継手の端部にOリングを介して回動自在に挿入し内部に直線状の流路を有すると共に該流路の端部に直角に連続する流入口を有する自在継手と、
配管継手と自在継手との連結端部相互に装着して自在継手を回動自在に固定する固定クランプとを備え、自在継手の流入口に高圧エアーを供給する連結管体をネジ止めする高圧配管用自在継手において、
前記自在継手内の前記流入口の軸心部が、前記流路の軸心部と一致するように連続形成されたことを特徴とする高圧配管用自在継手。
【請求項2】
前記自在継手において、前記流路から前記流入口に向けて傾斜するテーパー面が延長形成され、前記流路の径より大径の前記流入口からテーパー面に高圧エアーが直接供給される請求項1記載の高圧配管用自在継手。
【請求項3】
前記固定クランプは、前記配管継手と前記自在継手との連結端部に形成された各フランジ相互の外周に嵌合する分割自在なクランプ体と、嵌合時のクランプ体の外周を緊締する緊締具とを備えた請求項1記載の高圧配管用自在継手。
【請求項4】
請求項1に記載の自在継手を形成する製造方法において、
前記流路を前記自在継手に切削ドリルで開穿する第一工程と、
前記流入口の位置に前記流路と同径の切削ドリルで予備穴を開穿する第二工程と、
予備穴に沿って前記流入口を切削ドリルで開穿する第三工程と、を有し、
前記自在継手内の前記流入口の軸心部が、前記流路の軸心部と一致するように連続形成することを特徴とする高圧配管用自在継手の製造方法。
【請求項5】
前記第一工程と前記第二工程との前記切削ドリルの先端部で、前記流路から前記流入口に向けて傾斜するテーパー面を延長形成する請求項4記載の高圧配管用自在継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に車両の制動システム等に使用する高圧配管用自在継手に係り、特に継手内部の圧力損失を低減することができる高圧配管用自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
配管用自在継手として、例えば特許文献1に記載の旋回エルボが提案されている。この旋回エルボは、エルボを介して接続する接続配管を所望の方向に設定できるように構成したもので、ニップル11の端部に直交する旋回エルボ10を旋回自在に装着し、この旋回エルボ10の端部に配管接続体13を連結する構造である。
【0003】
また、高圧配管用自在継手として特許文献2に記載の自在継手が提案されている。この自在継手は、特に制動システム等に使用する高圧配管に使用可能な自在継手である。すなわち、直線状の配管継手10の端部に直線状の自在継手20を固定クランプ30で回転自在に連結し、この自在継手20の側面側に連結口24を形成し、この連結口24に連結管体40を連結する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-51089号公報
【特許文献2】実用新案登録第3225845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す旋回エルボ10は、配管接続体13に接続配管17を接続し、ニップル11に対して配管接続体13を旋回方向に位置決めする構成である。ところが、ニップル11と配管接続体13との流路の交差部分をパッキン15で密封しているので、配管接続体13の旋回によりパッキン15が劣化するおそれがあり、流路の密封性能が低下する課題があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載の自在継手によると、直線状の配管継手10の端部に直線状の自在継手20を固定クランプ30で回転自在に連結したコンパクトな構造である。そのため、高圧エアーを使用する制動システム等のように、限られたスペースに配されることが多い高圧配管等に使用することが可能になった。
【0007】
ところが、この自在継手は、直線状の自在継手20の内部に成形した流路23に直角に連続する連結口24の連続部分に大きな圧力損失が発生していた。すなわち自在継手をコンパクトにするには、直線状の自在継手20内に流路23と連結口24とを切削形成する必要がある。この際、流路23に対して入側口24を直角に形成する場合、成形工程で連続部分に余分な空間が生じてしまうことが原因である。
【0008】
すなわち、従来の切削工程では、自在継手20の長手方向に沿った直線状の流路23を切削加工し、この流路23に直角に連続する連結口24を自在継手20の側面に切削加工して形成する。このとき、流路23の開口端部が全開するように連結口24を形成していた。ところが、この連結口24を切削加工する際に余分な空間が生じており、この余分な空間など、高圧エアーが乱れて通過する際に多くの渦が生じ、これらの渦によって大きな圧力損失が発生することが判った。
【0009】
この圧力損失は、高圧エアーの低速化を招くことになるので、とりわけ、車両の制動システム等において大きな課題になっている。すなわち、高圧エアーを使用する制動システム等では、圧力損失によってシステムに支障が生じるおそれがある。そのため、圧力損失があまりにも大きくなるような自在継手は使用することができない。
【0010】
また、特許文献2の自在継手では、直線状の自在継手20に、予め直角に屈曲されたL型の連結管体50、60を連結する場合もある。ところが、流路23に連結口24が直角に連続する自在継手20では、直角な連続部分に圧力損失が発生するので、そこにL型の連結管体50、60自体が有する圧力損失が加わると全体の圧力損失が増大することになる。
【0011】
そのため、L型の連結管体50、60を連結する場合は、全体の圧力損失を少なくするために、流路23に対して直線状に形成した入側口24を使用する必要があった。この結果、屈曲状の連結口24を有する自在継手20と、直線状の連結口26,28を有する自在継手20との複数種類の自在継手20を準備する必要があった。
【0012】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、コンパクトな使用が可能で、高圧エアーの圧力損失が少なく、一つで多様な用途に対応することができる高圧配管用自在継手の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明の第1の手段は、機器側の高圧配管にネジ止めして高圧エアーを送る配管継手10と、配管継手10の端部にOリング22を介して回動自在に挿入し内部に直線状の流路23を有すると共に該流路23の端部に直角に連続する流入口24を有する自在継手20と、配管継手10と自在継手20との連結端部相互に装着して自在継手20を回動自在に固定する固定クランプ30とを備え、自在継手20の流入口24に高圧エアーを供給する連結管体40をネジ止めする高圧配管用自在継手において、前記自在継手20内の前記流入口24の軸心部が、前記流路23の軸心部と一致するように連続形成された自在継手である。
【0014】
第2の手段は、前記自在継手20において、前記流路23から前記流入口24に向けて傾斜するテーパー面23Aが延長形成され、前記流路23の径より大径の前記流入口24からテーパー面23Aに高圧エアーが直接供給されるものである。
【0015】
第3の手段の前記固定クランプ30は、前記配管継手10と前記自在継手20との連結端部に形成された各フランジ11、26相互の外周に嵌合する分割自在なクランプ体31と、嵌合時のクランプ体31の外周を緊締する緊締具32とを備えた。
【0016】
第4の手段は、請求項1に記載の自在継手20を形成する製造方法において、
前記流路23を前記自在継手20に切削ドリルで開穿する第一工程と、
前記流入口24の位置に前記流路23と同径の切削ドリルで予備穴23Bを開穿する第二工程と、
予備穴23Bに沿って前記流入口24を切削ドリルで開穿する第三工程と、を有し、
前記自在継手20内の前記流入口24の軸心部が、前記流路23の軸心部と一致するように連続形成する自在継手の製造方法である。
【0017】
第5の手段は、前記第一工程と前記第二工程との前記切削ドリルの先端部で、前記流路23から前記流入口24に向けて傾斜するテーパー面23Aを延長形成する製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、流入口24の連続側端部の軸心部が、前記流路23の連続側端部の軸心部と一致するように形成されたことから、連結管体40からの高圧エアーが流路23の側面側に直接供給される。したがって、自在継手20内の流路の距離が極めて短くなるので、圧力を損失する圧力エアーの接触距離も極めて短くなる。
【0019】
しかも、流入口24の連続側端部の軸心部の位置と流路23の連続側端部の軸心部とが一致することで、従来のように圧力損失の原因となる渦が発生する余分な空間が無くなった。また、流路23に形成したテーパー面23Aにより、連結管体40から直接供給される高圧エアーを効率良く流路23に送ることができる。これらのことから、連結管体40から自在継手20に高圧エアーを供給する際の圧力損失を極めて少なくすることが可能になった。この結果、車両の制動システムなど高圧エアーを使用する制動システム等に最適である。
【0020】
また、自在継手20の圧力損失が少ないことから、自在継手20に直線状の連結管体は勿論、屈曲状の連結管体50などを選択して連結することができる。この結果、高圧配管を使用する多様な状況や用途に対応することが可能になった。
【0021】
しかも、本発明の工程一及び工程三を有する製造方法により、圧力損失を抑える自在継手を正確、且つ容易に製造することができる。
【0022】
このように本発明によると、車両の制動システムなどに対して高圧エアーの圧力損失が少なく、多様な状況や用途に対応することができるといった有益な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図4】(イ)~(ハ)は、自在継手の流路に流入口を連続形成する工程図である。
【
図6】流路と流入口との連続部分を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、高圧配管に連結する自在継手である。本発明の主要構成は、配管継手10、自在継手20、固定クランプ30にて構成されている(
図1参照)。
【0025】
配管継手10は、高圧配管の端部にねじ止めする継手部材である(
図2参照)。図示の配管継手10は、六角棒素材にて形成されたものである。すなわち、六角棒素材の軸芯部に流路12が形成されている。また、高圧配管にねじ止めする側に、雄ネジ部13が形成されており、この雄ネジ部13を高圧配管の管端部にネジ止めして配管継手10を連結する。更に、六角棒素材の六角頭部側には、フランジ11を形成している(
図3参照)。
【0026】
自在継手20は、配管継手10に回動自在に連結する部材で、配管継手10の長手方向に沿った流路23の向きを直角に変更する流入口24が形成されている(
図1参照)。この流入口24は、自在継手20内の軸心部が、流路23の軸心部と一致するように連続形成されている(
図6参照)。流入口24の直径は、流路23の径より大径を成し、流路23の端部側の側面に向けて高圧エアーを直接供給する(
図5参照)。
【0027】
また、流路23の端部には、流入口24に向けて傾斜するテーパー面23Aが延長形成されている(
図1参照)。図示例では、流路23に近いテーパー面23Aと流入口24に近いテーパー面23Aとが角度を変えて形成されている。すなわち、流路23に近いテーパー面23Aは流路23を切削するドリルの先端部で形成され、流路23に直角に切削する予備穴23B用のドリルの先端部で形成することによる(
図1、
図5参照)。
【0028】
しかも、流路23の軸心部は流入口24の軸心部と一致しているので、大径の流入口24から高圧エアーを供給すると、流路23のテーパー面23Aに沿って流速が速くなり、テーパー面23Aで高圧エアーが集束されて流路23の長手方向に流れる。このとき、高圧エアーの渦や接触部分に生じる圧力損失は、従来の自在継手に比べておよそ1/2になることが分かった。この結果、流入口24に連結する連結管体40は、予め屈曲した形状の連結管体40を連結することが可能である(
図1参照)。
【0029】
図示の自在継手20は、配管継手10の端部に挿入する筒状の挿入管26と、流入口24を形成するブロック状の連結体27とが一体に形成されたものである(
図3参照)。そして、挿入管26にフランジ21を突設している。
【0030】
この挿入管26には、Oリング22が設けられている(
図1参照)。このOリング22は、配管継手10と挿入管26との連結時の気密性を確保する部材である。ちなみに、Oリング22に接触する配管継手10の内側面と、Oリング22を収納する収納溝22Aの内側面との表面あらさを(Ra=1.6程度)に設定することで1.35Mpa程度の高圧エアーでも、Oリング22からの漏れを確実に防止する(
図3参照)。
【0031】
連結体27の側面に形成する流入口24は、内側面に雌ネジ部25を形成している(
図3参照)。この雌ネジ部25に、任意の連結管体40をネジ止めする。この連結管体40は、直線状屈曲状を問わず、ホース状の連結管体40をネジ止めすることも可能である(
図7参照)。
【0032】
固定クランプ30は、配管継手10と自在継手20とを連結し、自在継手20の流入口24の向きを回動自在に調整した後で、強固に固定する固定部材である(
図2参照)。この固定クランプ30は、クランプ体31と緊締具32とで構成されている(
図3参照)。
【0033】
クランプ体31は、各フランジ11、21を囲む連結部材である(
図3参照)。各フランジ11、21の全周を囲むために、半円状を成した一対のクランプ体31を組み合わせて使用する。更に、各クランプ体31の内側には、各フランジ11、21の外側に沿って嵌合する一対の嵌合凸部31Aが設けられている。
【0034】
一方、緊締具32は、各クランプ体31の外周に装着する緊締部材である(
図2参照)。すなわち、フランジ11、21の全周に沿って配設した各クランプ体31の更に外周に、この緊締具32を装着する。そして、この緊締具32で各クランプ体31を緊締すると、連結状態の配管継手10と自在継手20とが固定されるものである(
図1参照)。
【0035】
この緊締具32は、クランプ体31の重合面31Bに重合する緊締バンド32Aと該緊締バンド32Aを緊締する調整ネジ32Bとを備えている(
図3参照)。この調整ネジ32Bは、緊締バンド32Aの解放端部に設けられ緊締バンド32Aを緊締する構成を成している。
【0036】
したがって、配管継手10と自在継手20とのフランジ11、21にクランプ体31を装着し、緊締具32の締め付けを緩くすると、自在継手20の流路の向きを回動自在に調整することができる。そして、自在継手20の流路の向きが決定した後は、調整ネジ32Bを固く締め付けることで配管継手10と自在継手20が固定されるものである。
【0037】
次に、本発明自在継手の製造方法を説明する。この製造工程は、特に自在継手20に流入口24を成形する工程であり、第一工程から第三工程を有する(
図4参照)。
【0038】
第一工程は、まず、自在継手20の長手方向に沿った流路23を切削ドリルで切削する工程である(
図4(イ)参照)。第二工程は、流入口24の位置に流路23と同径の切削ドリルで予備穴を切削する工程である(
図4(ロ)参照)。第三工程は、流入口24を切削ドリルで切削する工程である(
図4(ハ)参照)。このとき、自在継手20内の流入口24の連結端部の軸心部を、自在継手20の流路23の連結端部の軸心部と一致するように形成する(
図6参照)。そして、流入口24の内周囲に雌ネジ部25を形成する。
【0039】
また、第一工程と第二工程で使用する切削ドリルの先端部を利用してテーパー面23Aを形成する。すなわち、第一工程の切削ドリルの先端部で最初のテーパー面23Aを形成する(
図4(イ)参照)。次に、第二工程の切削ドリルの先端部で、このテーパー面23Aに連続する新たなテーパー面23Aを形成するものである(
図4(ロ)参照)。したがって、テーパー面23Aは角度の異なったテーパー面23Aが形成される(
図1、
図5参照)。
【0040】
そして、流路23より大径の流入口24から高圧エアーが供給されると、テーパー面23Aが位置する流入口24中央の流速が速くなり、周囲の高圧エアーを集束して流路23の長手方向に流れる(
図5参照)。この際、高圧エアーが流路23に至るまでの接触抵抗や高圧エアーにより生じる渦は極めて少なくなる。これらの作用が総合して流路23内の高圧エアーの圧力損失が少なくなる。
【0041】
自在継手20内の圧力損失が少ないと、自在継手20を組み合わせて使用することが可能になる(
図8参照)。図示例では、本発明自在接手を2個連結してブロック・マニホールドPに接続する状態を示している。
【0042】
尚、本発明の前記構成は、実施例に限定されるものではなく、例えば、本発明継手を高圧な空圧供給機器のみならず、一般産業用の工場内の設備機器等の配管継手として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
P ブロック・マニホールド
10 配管継手
11 フランジ
12 流路
13 雄ネジ部
20 自在継手
21 フランジ
22 Oリング
22A 収納溝
23 流路
23A テーパー面
23B 予備穴
24 流入口
25 雌ネジ部25
26 挿入管
27 連結体
30 固定クランプ
31 クランプ体
31A 嵌合凸部
31B 重合面
32 緊締具
32A 緊締バンド
32B 調整ネジ
40 連結管体