(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020076
(43)【公開日】2025-02-12
(54)【発明の名称】ソーラーパネル装置の冷却用の塗料及びその製造方法、冷却用の塗料を塗布したソーラーパネル装置
(51)【国際特許分類】
H02S 40/42 20140101AFI20250204BHJP
【FI】
H02S40/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123917
(22)【出願日】2023-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】523289784
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・アジアエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】伊波 利菜
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251BA11
5F251JA02
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で電力を使用せずにソーラーパネルの効率的な冷却が可能となるソーラーパネル装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】太陽光を表面で受光して発電を行うソーラーパネル装置の裏面に塗布して前記ソーラーパネル装置を冷却するための冷却用の塗料であって、前記冷却用の塗料は、構成比として、黒鉛30%、プライマー60%、メタノール6%、分散剤2%、塩素酸ナトリウム2%、を含むものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を表面で受光して発電を行うソーラーパネル装置の裏面に塗布して前記ソーラーパネル装置を冷却するための冷却用の塗料であって、
前記冷却用の塗料は、構成比として、
黒鉛30%、プライマー60%、メタノール6%、分散剤2%、塩素酸ナトリウム2%、を含むものである
ことを特徴とするソーラーパネル装置の冷却用の塗料。
【請求項2】
前記冷却用の塗料に含まれる前記黒鉛は、
30μm以下の粒子径である微粒子と、100~500μmの範囲の粒子径である粗粒子とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネル装置の冷却用の塗料。
【請求項3】
太陽光を表面で受光して発電を行うソーラーパネルと、
前記ソーラーパネルの裏面の少なくとも一部に塗布した冷却用の塗料と、を備えるソーラーパネル装置であって、
前記冷却用の塗料は、請求項1又は2に記載の塗料である
ことを特徴とするソーラーパネル装置。
【請求項4】
請求項1又2に記載のソーラーパネル装置の冷却用の塗料の製造方法であって、下記のステップ1~4をこの順番に行うことを特徴とする製造方法。
ステップ1:メタノールに塩化ナトリウムを加えて溶解させ、メタノール混合物を作製する。
ステップ2:ステップ1で作製したメタノール混合物を攪拌しながらプライマーに加えてプライマー混合物を作製する。
ステップ3:ステップ2で作製したプライマー混合物に黒鉛を添加する。
ステップ4:ステップ3で作製した作成物に分散剤(RH40)を加えて混合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電に用いる太陽光電池(セル)を複数配列したパネル(以下、「ソーラーパネル」という。)の冷却技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラーパネルの発電効率はパネル温度が25℃以上になると急速に低下することが知られている。特に日照量が多くなる夏場ではパネル表面温度が日中60~80℃以上に達することもあり、これにより発電量が30%近く低下することが確認されている。逆に言えば、パネルを冷却することで発電量を向上させることが可能となる。そこで、発電ロスを抑制する種々のパネル冷却技術が提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1に開示された冷却システムは、パネル上部に流体噴霧器を設け、流体噴霧器からパネル外面にシート状の流体を流して冷却する構成が採用されている。また、特許文献2に開示された冷却装置は、パネル背面にパネル冷却管を設け、パネル冷却管内の冷却用の熱媒体が熱を吸収することで自然対流を発生させ、それにより熱媒体が循環する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016-503284
【特許文献2】特開2015-213395
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パネル外面に流体を流す冷却システムでは流体を収集して循環させる必要があるために、冷却用の流体を循環させる設備を必要とし、さらにパネル冷却のために電力を消費するという問題がある。
【0006】
また、熱媒体の自然対流を利用する冷却装置は、自然対流を利用することで冷却に要する電力消費を低減できるものの、温度センサや排出弁の稼働に電力を必要とし、また熱媒体を循環させる設備は必要となり装置構成の複雑化、大型化を避けることが困難である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡易な構成で電力を使用せずにソーラーパネルの効率的な冷却が可能となるソーラーパネル装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、太陽光を表面で受光して発電を行うソーラーパネル装置の裏面に塗布して前記ソーラーパネル装置を冷却するための冷却用の塗料であって、前記冷却用の塗料は、構成比として、黒鉛30%、プライマー60%、メタノール6%、分散剤(RH40)2%、塩素酸ナトリウム2%、を含むものであることを特徴とする。
【0009】
また、前記冷却用の塗料に含まれる前記黒鉛は、30μm以下の粒子径である微粒子と、100~500μmの範囲の粒子径である粗粒子とを含むものであってよい。
【0010】
また、本発明は、太陽光を表面で受光して発電を行うソーラーパネルと、前記ソーラーパネルの裏面の少なくとも一部に塗布した冷却用の塗料と、を備えるソーラーパネル装置であって、前記冷却用の塗料は、上記本発明の冷却用の塗料であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の冷却用の塗料の製造方法であって、下記のステップ1~4をこの順番に行うことを特徴とする。
ステップ1:メタノールに塩化ナトリウムを加えて溶解させ、メタノール混合物を作製する。
ステップ2:ステップ1で作製したメタノール混合物を攪拌しながらプライマーに加えてプライマー混合物を作製する。
ステップ3:ステップ2で作製したプライマー混合物に黒鉛を添加する。
ステップ4:ステップ3で作製した作成物に分散剤(RH40)を加えて混合する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で電力を使用せずにソーラーパネルの効率的な冷却が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるソーラーパネル装置を示す図で、(A)は、表側(受光面)を示す平面図、(B)は、裏側を示す底面図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるソーラーパネル装置の裏面に塗布する冷却用の塗料の組成を示す表である。
【
図3】本発明の一実施形態による塗料を塗布したソーラーパネル装置の裏面を示す図である。
【
図4】試験用にセットアップしたソーラーパネル装置を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるソーラーパネル装置の試験結果を示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態によるソーラーパネル装置の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態の説明は本発明の技術範囲を限定する趣旨ではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態によるソーラーパネル装置を示す図で、(A)は、表側(受光面)を示す平面図、(B)は、裏側を示す底面図である。同図に例示するように、本発明の一実施形態によるソーラーパネル装置は、ソーラーパネル100がフレーム102に固定され、ソーラーパネル100のバックシート101側(裏面側)に冷却用の塗料103が塗布されている。ソーラーパネル100の熱は冷却用の塗料103の内部接触面から吸収され、塗料103の表面から空中へ放散する。
【0016】
ソーラーパネル100自体は一般的に入手できるものでよく、通常、複数のセルが配列されて封止され、その受光面とは反対側の裏面にバックシート101が設けられている。さらに裏面には複数のセルによる起電力を出力するためのケーブルを束ねたケーブルボックス104が設けられている。
【0017】
<冷却用の塗料>
図2は、本発明の一実施形態によるソーラーパネル装置の裏面に塗布する冷却用の塗料の構成(組成)を示す表である。同図の表に示すように、冷却用の塗料は、黒鉛(Graphite)30%、プライマー(Primer)60%、メタノール(Methanol)6%、分散剤(Dispersion)(RH40)2%、塩素酸ナトリウム(Sodium Chlorate)2%、を含むものである。
【0018】
ここで、冷却用の塗料に含まれる黒鉛(Graphite)は、30μm以下の粒子径である微粒子と、100~500μmの範囲の粒子径である粗粒子とを含むものであってよい。また、プライマー(Primer)は、水系又は溶剤系のものであってよい。
【0019】
次に、上記構成の冷却用の塗料の製造方法を説明する。冷却用の塗料103を製造するには、下記ステップ1~ステップ4の各ステップをこの順番に行う。
【0020】
ステップ1:メタノールに塩化ナトリウムを加えて溶解させ、メタノール混合物を作製する。
ステップ2:ステップ1で作製したメタノール混合物を攪拌しながらプライマーに加えてプライマー混合物を作製する。
ステップ3:ステップ2で作製したプライマー混合物に黒鉛を添加する。
ステップ4:ステップ3で作製した作成物に分散剤(RH40)を加えて混合する。
【0021】
次に、冷却用の塗料をソーラーパネル装置に塗布する手順を説明する。冷却用の塗料は、ソーラーパネル装置の背面(背面パネル)にローラー又は刷毛を使用して塗布する。
図3は、本発明の一実施形態による塗料を塗布したソーラーパネル装置の裏面を示す図で、冷却用の塗料を塗布した状態を示す図である。なお、ソーラーパネル装置に塗布する冷却用の塗料は、一例として、500μm程度の厚さの塗料層として塗布することが望ましい。
【0022】
次に、本実施形態の冷却用の塗料を塗布したソーラーパネル装置における冷却効果について説明する。
図4は、試験用にセットアップしたソーラーパネル装置を示す図である。また、
図5及び
図6は、ソーラーパネル装置の試験結果を示すグラフである。いずれのグラフも横軸に経過時間を取り、縦軸に温度を取り、本実施形態の冷却用の塗料を塗布しない場合(Cont_Top)と、本実施形態の冷却用の塗料を塗布した場合(Paint_Top)それぞれの温度変化を示している。また、
図5のグラフは、粗粒子の黒鉛塗料を塗布した場合であり、
図6のグラフは、微粒子の黒鉛塗料を塗布した場合である。これらのグラフに示すように、本実施形態の冷却用の塗料を塗布した場合は塗布しない場合と比較して、ソーラーパネル装置の温度上昇を抑制できる効果を奏することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態の冷却用の塗料及びそれを塗布したソーラーパネル装置によれば、簡易な構成で電力を使用せずにソーラーパネルの効率的な冷却が可能となる。
【符号の説明】
【0024】
100 ソーラーパネル
101 バックシート
102 フレーム
103 冷却用の塗料
104 ケーブルボックス
C セル(太陽光電池)