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特開2025-20738光電変換素子、光電変換素子の製造方法、光電変換層の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020738
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】光電変換素子、光電変換素子の製造方法、光電変換層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20250205BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20250205BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20250205BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20250205BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20250205BHJP
   H10K 30/30 20230101ALN20250205BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K85/60
H10K85/10
H10K71/12
H10K71/40
H10K30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124299
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】523290355
【氏名又は名称】株式会社SOLAR POWER PAINTERS
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128141
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 岳仁
(72)【発明者】
【氏名】下山田 力
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竣介
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107EE68
3K107FF14
5F251AA11
5F251CB13
5F251DA03
5F251DA07
5F251FA04
5F251FA07
5F251GA03
5F251XA01
5F251XA33
(57)【要約】
【課題】発電特性を向上させる光電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の光電変換素子の製造方法は、2つの電極と、2つの前記電極の間に形成され、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層と、を有する光電変換素子の製造方法であって、チタンアルコキシドモノマーとチタンアルコキシドポリマーと前記p型半導体材料を含む混合溶液の被膜を形成する成膜工程と、前記成膜工程で成膜された前記混合溶液の前記被膜を所定時間加熱して、前記チタンアルコキシドモノマーと前記チタンアルコキシドポリマーを前記n型半導体材料に含む前記光電変換層を生成する加熱工程と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極と、2つの前記電極の間に形成され、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層と、を有する光電変換素子の製造方法であって、
チタンアルコキシドモノマーとチタンアルコキシドポリマーと前記p型半導体材料を含む混合溶液の被膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程で成膜された前記混合溶液の前記被膜を所定時間加熱して、前記チタンアルコキシドモノマーと前記チタンアルコキシドポリマーを前記n型半導体材料に含む前記光電変換層を生成する加熱工程と、
を備えることを特徴とする、
光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、前記チタンアルコキシドモノマーと前記チタンアルコキシドポリマーの一部を酸化チタン(TiO)に変化させ、
前記光電変換層の前記n型半導体材料で構成されるn型半導体領域には、前記チタンアルコキシドモノマー、前記チタンアルコキシドポリマー、及び酸化チタン(TiO)が含まれることを特徴とする、
請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記混合溶液における前記チタンアルコキシドモノマー及び前記チタンアルコキシドポリマーの総重量を基準とした前記チタンアルコキシドポリマーの重量比は、10%以上20%以下であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層の製造方法であって、
チタンアルコキシドモノマーとチタンアルコキシドポリマーと前記p型半導体材料を含む混合溶液の被膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程で成膜された前記混合溶液の前記被膜を所定時間加熱して、前記チタンアルコキシドモノマーと前記チタンアルコキシドポリマーを前記n型半導体材料に含む前記光電変換層を生成する加熱工程と、
を備えることを特徴とする、
光電変換層の製造方法。
【請求項5】
p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層の製造方法であって、
金属アルコキシドモノマーと金属アルコキシドポリマーと前記p型半導体材料を含む混合溶液の被膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程で成膜された前記混合溶液の前記被膜を所定時間加熱して、前記金属アルコキシドモノマーと前記金属アルコキシドポリマーを前記n型半導体材料に含む前記光電変換層を生成する加熱工程と、
を備えることを特徴とする、
光電変換層の製造方法。
【請求項6】
2つの電極と、
2つの前記電極の間に形成され、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層と、
を備え、
前記n型半導体材は、チタンアルコキシドモノマーとチタンアルコキシドポリマーを含むことを特徴とする、
光電変換素子。
【請求項7】
前記n型半導体材は、酸化チタン(TiO)、及び、酸化チタン(TiO)の前駆体を含むことを特徴とする、
請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記p型半導体材料は、ポリチオフェン誘導体を含むことを特徴とする、
請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項9】
2つの電極と、
2つの前記電極の間に形成され、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層と、
を備え、
前記n型半導体材は、金属アルコキシドモノマーと金属アルコキシドポリマーを含むことを特徴とする、
光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び光電変換層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、有機溶剤に有機半導体材料を溶解又は分散させた塗布液を基板に塗布することにより形成可能である。このため、有機薄膜太陽電池は、軽量で柔軟であり、様々な場所に容易に設置することができる。
【0003】
このような有機薄膜太陽電池は、n型半導体とp型半導体とを含む光電変換層を有している。このうちn型半導体を構成する材料として、フラーレン誘導体が用いられることが一般的である。しかしながら、フラーレン誘導体は酸化による耐久性が低い。また、フラーレン誘導体は高価である。結果、フラーレン誘導体による有機薄膜太陽電池は、耐久性が低いにも拘わらず、高価になる。
【0004】
以上の問題点を解決するものとして、チタンアルコキシドの一種であるチタン(IV)イソプロポキシドを含めた光電変換素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-209840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光電変換層にチタンアルコキシドを含めた特許文献1に記載の光電変換素子の発電特性はまだ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、発電特性を向上させた光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び、光電変換層の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換素子の製造方法は、2つの電極と、2つの前記電極の間に形成され、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層と、を有する光電変換素子の製造方法であって、チタンアルコキシドモノマーとチタンアルコキシドポリマーと前記p型半導体材料を含む混合溶液の被膜を形成する成膜工程と、前記成膜工程で成膜された前記混合溶液の前記被膜を所定時間加熱して、前記チタンアルコキシドモノマーと前記チタンアルコキシドポリマーを前記n型半導体材料に含む前記光電変換層を生成する加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の光電変換素子の製造方法において、前記加熱工程では、前記チタンアルコキシドモノマーと前記チタンアルコキシドポリマーの一部を酸化チタン(TiO)に変化させ、前記光電変換層の前記n型半導体材料で構成されるn型半導体領域には、前記チタンアルコキシドモノマー、前記チタンアルコキシドポリマー、及び酸化チタン(TiO)が含まれることを特徴とする。
【0010】
本発明の光電変換素子の製造方法において、前記混合溶液における前記チタンアルコキシドモノマー及び前記チタンアルコキシドポリマーの総重量を基準とした前記チタンアルコキシドポリマーの重量比は、10%以上20%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の光電変換層の製造方法において、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層の製造方法であって、チタンアルコキシドモノマーとチタンアルコキシドポリマーと前記p型半導体材料を含む混合溶液の被膜を形成する成膜工程と、前記成膜工程で成膜された前記混合溶液の前記被膜を所定時間加熱して、前記チタンアルコキシドモノマーと前記チタンアルコキシドポリマーを前記n型半導体材料に含む前記光電変換層を生成する加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の光電変換層の製造方法において、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層の製造方法であって、金属アルコキシドモノマーと金属アルコキシドポリマーと前記p型半導体材料を含む混合溶液の被膜を形成する成膜工程と、前記成膜工程で成膜された前記混合溶液の前記被膜を所定時間加熱して、前記金属アルコキシドモノマーと前記金属アルコキシドポリマーを前記n型半導体材料に含む前記光電変換層を生成する加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の光電変換素子は、2つの電極と、2つの前記電極の間に形成され、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層と、を備え、前記n型半導体材は、チタンアルコキシドモノマーとチタンアルコキシドポリマーを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の光電変換素子において、前記n型半導体材は、酸化チタン(TiO)、及び、酸化チタン(TiO)の前駆体を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の光電変換素子において、前記p型半導体材料は、ポリチオフェン誘導体を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の光電変換素子は、2つの電極と、2つの前記電極の間に形成され、p型半導体材料とn型半導体材料を含むバルクヘテロ接合構造の光電変換層と、を備え、前記n型半導体材は、金属アルコキシドモノマーと金属アルコキシドポリマーを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光電変換素子によれば、発電特性が向上するという優れた効果を奏し得る。また、本発明の光電変換素子の製造方法で製造した光電変換素子、及び、光電変換層の製造方法で製造された光電変換層を含む光電変換素子によれば、発電特性が向上するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態における光電変換素子の断面図である。
図2】本発明の実施形態における光電変換素子の製造の流れを示すフローチャートである。
図3】(A)は、チタンアルコキシドモノマー及びp型半導体材料を主成分とする混合溶液で形成された第一光電変換層の模式図である。(B)は、チタンアルコキシドモノマー、チタンアルコキシドポリマー及びp型半導体材料を主成分とする混合溶液で形成された第二光電変換層の模式図である。(C)は、チタンアルコキシドポリマー及びp型半導体材料を主成分とする混合溶液で形成された第三光電変換層の模式図である。
図4】(A)は、チタン(IV)ブトキシドモノマー(チタンアルコキシドモノマー)とP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))(p型半導体材料)が含まれた混合溶液を用いて作成された第一光電変換層の一部領域を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率100,000倍で観察した際のSEM像写真である。(B)は、チタン(IV)イソプロポキシド(チタンアルコキシドモノマー)とチタン(IV)ブトキシドポリマー(チタンアルコキシドポリマー)の総重量を基準とした重量比が80%のチタン(IV)イソプロポキシドと、重量比が20%のチタン(IV)ブトキシドポリマーと、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))が含まれた混合溶液を用いて作成された第二光電変換層の一部領域を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率100,000倍で観察した際のSEM像写真である。(C)は、チタン(IV)ブトキシドポリマー及びP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))を含む混合溶液を用いて作成された第三光電変換層の一部領域を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率100,000倍で観察した際のSEM像写真である。
図5】本発明の実施形態における光電変換素子の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1図5は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0020】
<光電変換素子の全体構成>
図1を参照して、本発明の実施形態における光電変換素子1を説明する。本発明の実施形態における光電変換素子1は、図1(A)に示すように、陽極(第一電極)2と、陰極(第二電極)3と、光電変換層4と、を備える。光電変換素子1は、基板5の一方側の面上に、陰極(第二電極)3、光電変換層4、陽極(第一電極)2の順に積層される。
【0021】
<基板>
基板5は、板状の部材である。基板5は、例えば、光を透過させ(光透過性)、且つ絶縁性を有する材料により構成され、透明な絶縁材料により構成されることが好ましい。また、基板5は、変形可能な材料(例えば、可撓性を有する材料)により構成されてもよいし、そうでない材料により構成されてもよい。具体的に基板5の材料としては、例えば、ホウケイ酸ガラス、白板ガラス、石英ガラス等のガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、及び、ポリエーテルスルフォン(PES)などの絶縁性材料が一例として挙げられる。基板5の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、100μm~100mmの範囲が好ましい。
【0022】
<陽極(第一電極)>
陽極2は、光電変換素子1の一方側の電極(第一電極)に相当する。陽極2は、少なくとも導電性を有する材料により構成されていればよい。陽極2を構成する材質として、例えば、導電性高分子化合物、白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素系化合物、及び、以上の混合体のいずれかが一例として挙げられる。導電性高分子化合物として、例えば、PEDOT-PSSが一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびそれらの誘導体等であってもよい。なお、PEDOT-PSSとは、ポリアニオンを添加したイオンを含む置換ポリチオフェンでポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)から成る複合物の略称である。
【0023】
また、陽極2は、層状に設けられ、単層、または、複数の材料が積層された態様であってもよい。また、陽極2は、導電性および光透過性を有する材料により構成されてもよい。その場合、陽極2は、可能な範囲で以下で説明する陰極3の材料のいずれかで構成されてもよい。
【0024】
<陰極(第二電極)>
陰極3は、光電変換素子1の他方側の電極(第二電極)に相当する。陰極3は、導電性および光透過性を有する材料により構成されることが好ましい。光透過性を有する材料は、例えば、透明な材質が挙げられる。具体的に陰極3を構成する材質としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO:酸化インジウムスズ)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の導電性金属酸化物が一例として挙げられる。
【0025】
また、陰極3は、層状に設けられ、単層、または、複数の材料が積層された態様であってもよい。また、陰極3は、可能な範囲で上記説明した陽極2の材料で構成されてもよい。
【0026】
<光電変換層>
光電変換層4は、外部から入射する光に起因して電子と正孔とを発生させるものである。そして、光電変換層4は、陽極2および陰極3の間に形成される。光電変換層4に光が入射すると、光電変換層4において励起子が生成され、電子と正孔とが発生する。そして、電子は陰極3側へ、正孔は陽極2側へ移動する。その結果、陽極2および陰極3に接続された(図示しない)外部回路に、電流(光励起電流)が流れる。
【0027】
光電変換層4は、n型半導体材料およびp型半導体材料を含有している。本実施形態における光電変換層4におけるn型半導体材料とp型半導体材料との接合構造は、図1(B)に示すように、三次元的に混合させたバルクヘテロ接合構造(バルクヘテロジャンクション構造)である。より具体的にバルクヘテロ接合構造(バルクヘテロジャンクション構造)とは、p型半導体材料とn型半導体材料との混合物により形成され、単一の層で形成される接合構造である。
【0028】
本実施形態における光電変換層4には、n型半導体材料で構成される複数のn型半導体領域41と、p型半導体材料で構成される複数のp型半導体領域42が含まれる。図1(B)に示すように、隣接するn型半導体領域41とp型半導体領域42が相互に接触しつつ、複数のn型半導体領域41と複数のp型半導体領域42は交互に配置される。n型半導体領域41とp型半導体領域42が接触する面がpn界面(pn接合面)となる。そして、n型半導体領域41は、電子の移動先である陰極3に連続することが好ましい。また、p型半導体領域42は、正孔の移動先である陽極2に連続することが好ましい。
【0029】
<n型半導体材料>
本実施形態における光電変換層4のn型半導体材料には、金属アルコキシドモノマー及び金属アルコキシドポリマーが含まれる。なお、金属アルコキシドとは、アルコールのヒドロキシ基の水素を金属で置換した化合物を指す。また、金属アルコキシドポリマーには、比較的低い重合度を有する金属アルコキシドオリゴマーが含まれてもよい。金属アルコキシドモノマー及び金属アルコキシドポリマーとして、例えば、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーが挙げられる。以下において、金属アルコキシドモノマー及び金属アルコキシドポリマーがチタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーである場合について説明するが、これに限定されるものではなく、その他の金属アルコキシドモノマー及び金属アルコキシドポリマーであっても同様に説明することができる。なお、チタンアルコキシドは、Ti(OR)で表されるものである。Rは、アルキル基を表す。
【0030】
チタンアルコキシドモノマーとしては、例えば、下記式(1)で表されるチタン(IV)ブトキシドや、下記式(2)で表されるチタン(IV)イソプロポキシドが挙げられる。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
チタンアルコキシドポリマーとしては、例えば、下記式(3)で表されるチタン(IV)ブトキシドポリマーが挙げられる。
【0034】
【化3】
【0035】
なお、光電変換層4のn型半導体材料には、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーの他に、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーが含まれる溶液を所定の温度で所定時間加熱した際に生成される生成物が含まれてもよい。その生成物には、例えば、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーが加水分解した際に生成される酸化チタン(TiO)が含まれてもよい。ちなみに、酸化チタン(TiO)は、二酸化チタンと称してもよい。また、その生成物には、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーが加水分解した際に生成される酸化チタン(TiO)の前駆体が含まれてもよい。
【0036】
また、光電変換層4におけるn型半導体材料には、上記に挙げた材料の他に、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体、酸化物半導体(例えば、酸化亜鉛)、及び、その他の電子受容性化合物のうち少なくとも1つが含有されていてもよい。すなわち、光電変換層4におけるn型半導体材料は、上記に挙げた材料のみで構成されてもよいし、上記に挙げた材料および上記上げた電子受容性化合物の混合体により構成されてもよい。この場合であっても、上記に挙げた材料、又は、上記混合体が設けられる過程で意図せずに含まれてしまう不可避成分が含有される場合、その材料もn型半導体材料に含まれる。
【0037】
<p型半導体材料>
光電変換層4におけるp型半導体材料は、ポリマーであることが好ましい。そして、p型半導体材料として、ポリチオフェン及びその誘導体(例えば、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン)))、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が一例として挙げられる。
【0038】
光電変換素子1の出力電圧は、n型半導体材料のLUMOとp型半導体材料のHOMOの値の差で決定される。上記LUMOと上記HOMOの値でバンドギャップエネルギーが決まるため、n型半導体材料を基準として、p型半導体材料はこの観点から選択される。この意味で、n型半導体材料としてチタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーを採用した場合、本実施形態においてp型半導体材料は、ポリチオフェン誘導体(例えば、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PFO-DBT)が好ましい。
【0039】
<光電変換素子の製造方法>
次に、図2を参照して、本実施形態における光電変換素子1の製造方法について説明する。まず、基板5に陰極3を形成する(陰極形成工程:ステップS100)。具体的には、例えば、上記<陰極(第二電極)>で説明した材料の被膜を設ける(陰極側成膜工程)。より具体的には、例えば、上記<陰極(第二電極)>で説明した材料をペースト状にして、印刷装置で基板5上に印刷することにより被膜を設ける。なお、上記<陰極(第二電極)>で説明した材料をスパッタ法や蒸着法やその他の成膜方法により基板5上に被膜を設けてもよい。
【0040】
そして、上記被膜が形成された基板5に対して所定温度(例えば、130℃)で所定時間(例えば、10分)加熱する加熱処理(例えば、アニール処理)を行う(陰極側加熱工程)。これにより、基板5上に陰極3が出来上がる。
【0041】
続いて、陰極3上に、バルクヘテロ接合構造(バルクヘテロジャンクション構造)の光電変換層4を形成する(光電変換層形成工程)。具体的には、まず、チタンアルコキシドモノマー、チタンアルコキシドポリマー及びp型半導体材料を含む混合溶液を作成し、その混合溶液を用いて陰極3上に混合溶液の被膜を形成する(n型半導体層側成膜工程:ステップS101)。
【0042】
p型半導体材料は、特に限定されるものではないが、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーのLUMOとp型半導体材料のHOMOの値が考慮されて、例えば、上記<p型半導体材料>で説明した材料の少なくとも1つ(例えば、ポリチオフェン誘導体)が選択される。
【0043】
具体的な混合溶液の被膜の形成では、混合溶液に少なくとも基板5の陰極3側を所定時間浸漬する。これにより、基板5の陰極3側に、混合溶液の被膜が形成される。なお、混合溶液の被膜は、スピンコート法により基板5に設けられてもよいし、印刷又はその他の成膜方法により設けられてもよい。
【0044】
次に、混合溶液の被膜が形成された基板5を、所定温度の雰囲気中で所定時間加熱する(加熱工程:ステップS102)。これにより、混合溶液の被膜が加熱されて、混合溶液の被膜から水分が蒸発する。
【0045】
ちなみに、加熱工程において所定温度は、少なくとも混合溶液の被膜から水分を含む溶媒を蒸発させることができる温度であればよく、例えば、70℃~100℃の範囲内のものが好ましく、より好ましくは、80℃~90℃の範囲内のものが好ましい。また、加熱工程において所定温度は、所定時間において一定であってもよいし、時間の経過に従って変化させてもよい。また、加熱工程において所定時間は、混合溶液の被膜から水分を蒸発させることができる時間であればよく、例えば、所定温度が80℃の場合、10分程度が想定される。
【0046】
また、加熱工程において、被膜に含まれるチタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーが加水分解等の化学反応を起こして、被膜に含まれるチタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーの少なくとも一部は、別の化合物に変化する。別の化合物には、酸化チタン(TiO)が含まれるが、更に、酸化チタン(TiO)の前駆体や、変化の過程で生じた不可避不純物が含まれてもよい。その結果、n型半導体材料は、チタンアルコキシドモノマー、チタンアルコキシドポリマー及び酸化チタン(TiO)等が含まれることになる。
【0047】
また、加熱工程において生成される酸化チタン(TiO)及び酸化チタン(TiO)の前駆体は、結晶構造を有することが好ましい。結晶構造を有する酸化チタン(TiO)及び酸化チタン(TiO)の前駆体は、電子輸送性が高いからである。
【0048】
最後に、光電変換層4上に陽極2を形成する(陽極形成工程:ステップS103)。具体的には、まず、光電変換層4上に上記<陽極(第一電極)>で説明した材料の被膜を設ける(陽極側成膜工程)。より具体的には、例えば、上記<陽極(第一電極)>で説明した材料をペースト状にして、印刷装置で基板5上に印刷することにより被膜を設ける。なお、上記<陽極(第一電極)>で説明した材料をスパッタ法や蒸着法やその他の成膜方法により光電変換層4上に被膜を設けてもよい。
【0049】
そして、上記被膜が形成された基板5に対して所定温度(例えば、130℃)で所定時間(例えば、10分)加熱する加熱処理(例えば、アニール処理)を行う(陽極側加熱工程)。これにより、光電変換層4上に陽極2が出来上がる。以上により、光電変換素子1が完成する。
【0050】
<光電変換層の態様>
以上のようにして形成された光電変換層4では、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーの総重量を基準としたチタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーの重量比を調整することで光電変換層4における複数のn型半導体領域41と複数のp型半導体領域42の態様が変わってくる。
【0051】
例えば、チタンアルコキシドポリマーを含まないチタンアルコキシドモノマー及びp型半導体材料を主成分とする混合溶液で光電変換層4(以下、第一光電変換層4Aと呼ぶ。)を形成した場合、n型半導体領域41は、陰極3と陽極2の配列方向(以下、単に、配列方向と呼ぶ。本実施形態では、n型半導体領域41は、光電変換素子1の各層の積層方向)Aにおける長さが短いモノマーの集合体で構成される。このため、図3(A)に示すように、第一光電変換層4Aでは、配列方向Aにおける長さが短く、第一光電変換層4A中において海島構造を成す独立したn型半導体領域41が多く形成されやすい。結果、第一光電変換層4Aでは、全n型半導体領域41の数を基準とした陰極に連続するn型半導体領域41の割合は小さくなる。このような第一光電変換層4Aでは、外部から入射する光に起因して電子が発生しても、陰極3に辿り着く電子の数が少ないので短絡電流密度が低くなる。
【0052】
一方、チタンアルコキシドポリマー、チタンアルコキシドモノマー及びp型半導体材料を主成分とする混合溶液で光電変換層4(以下、第二光電変換層4Bと呼ぶ。)を形成した場合、チタンアルコキシドモノマーよりも長さが長いチタンアルコキシドポリマーが含まれるn型半導体領域41が形成される。図3(B)に示すように、第二光電変換層4Bのn型半導体領域41と、第一光電変換層4Aのn型半導体領域41を比較すると、チタンアルコキシドポリマーの影響で、前者の方が後者よりも配列方向Aにおける長さが長くなるものが多く形成される。また、前者の方が後者よりも光電変換層4における占有体積が大きくなるものが多く形成される。第二光電変換層4Bでは、全n型半導体領域41の数を基準とした陰極に連続するn型半導体領域41の割合は大きくなる。このような第二光電変換層4Bでは、陰極3に辿り着く電子の数が多くなるので、短絡電流密度を高くすることができる。
【0053】
ただし、チタンアルコキシドモノマーを含まないチタンアルコキシドポリマー及びp型半導体材料を主成分とする混合溶液で光電変換層4(以下、第三光電変換層4Cと呼ぶ。)を形成すると、n型半導体領域41は、チタンアルコキシドモノマーの集合体で構成されるので、図3(C)に示すように、第二光電変換層4Bのn型半導体領域41と比較して占有体積が大きく、且つ、第一光電変換層4Aのn型半導体領域41と比較して配列方向Aにおける長さが長いn型半導体領域41が多数形成される。このため、第三光電変換層4Cでは、第二光電変換層4Bのn型半導体領域41と同様に陰極3に辿り着く電子の数が多くなるが、n型半導体領域41とp型半導体領域42が接触するpn界面(pn接合面)の面積が減少するので、第二光電変換層4Bの場合に比べて短絡電流密度が低くなる。
【0054】
第一光電変換層4A~第三光電変換層4Cを比較すると明らかなように、チタンアルコキシドモノマーに適度なチタンアルコキシドポリマーを加えることにより、好ましい配列方向Aにおける長さ及び占有面積を有するチタンアルコキシドモノマーとチタンアルコキシドポリマーの集合体を形成することができる。結果、チタンアルコキシドモノマーのみで形成された単一のn型半導体領域41(モノマーn型半導体領域41と呼ぶ。図3(A)参照。)よりも配列方向Aにおける長さを長くさせつつ、光電変換層4中における占有面積を増大させた単一のn型半導体領域41を構成させることができる。その単一のn型半導体領域41は、相互に隣接する複数のモノマーn型半導体領域41のそれぞれを連続させたような態様となる。
【0055】
そのようなn型半導体領域41は、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーの総重量を基準としたチタンアルコキシドモノマーの重量比及びチタンアルコキシドポリマーの重量比を調整することにより態様を調整することができる。チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーの総重量を基準としたチタンアルコキシドポリマーの重量比を大きくしつつ、チタンアルコキシドモノマーの重量比を小さくすれば、n型半導体領域41の数が減少し、且つ単位n型半導体領域41当たりの光電変換層4中における占有面積が大きくなるので、pn界面(pn接合面)の面積が減少する。逆の場合、n型半導体領域41の数が増大し、且つ単位n型半導体領域41当たりの光電変換層4中における占有面積が小さくなるので、pn界面(pn接合面)の面積が増大する。このため、チタンアルコキシドモノマーの上記重量比、及びチタンアルコキシドポリマーの上記重量比は、所定の範囲に制限される方が好ましい。チタンアルコキシドポリマーの上記重量比の所定の範囲として、5%以上40%以下が好ましく、5%以上30%以下でも好ましく、10%以上20%以下でも好ましい。チタンアルコキシドモノマーの上記重量比は、チタンアルコキシドポリマーの上記重量比に連動して、60%以上95%以下が好ましく、70%以上95%以下でも好ましく、80%以上90%以下でも好ましい。
【0056】
次に、第一光電変換層4A、第二光電変換層4B、第三光電変換層4Cの一例の写真を図4(A)~(C)に示す。なお、図4(A)は第一光電変換層4Aの一部領域の写真であり、図4(B)は第二光電変換層4Bの一部領域の写真であり、図4(C)は第三光電変換層4Cの一部領域の写真である。図4(A)の写真に示す第一光電変換層4Aは、チタン(IV)ブトキシドモノマー(チタンアルコキシドモノマー)とP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))(p型半導体材料)が含まれた混合溶液を用いて作成されたものである。図4(B)の写真に示す第二光電変換層4Bは、チタン(IV)イソプロポキシド(チタンアルコキシドモノマー)とチタン(IV)ブトキシドポリマー(チタンアルコキシドポリマー)の総重量を基準とした重量比が80%のチタン(IV)イソプロポキシドと、重量比が20%のチタン(IV)ブトキシドポリマーと、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))が含まれた混合溶液を用いて作成されたものである。また、図4(C)の写真に示す第三光電変換層4Cは、チタン(IV)ブトキシドポリマー及びP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))を含む混合溶液を用いて作成されたものである。そして、各写真の白い領域がn型半導体領域41に相当し、黒い領域がp型半導体領域42に相当する。
【0057】
図4(A)の第一光電変換層4Aと図4(B)の第二光電変換層4Bを比較すると、前者の方が後者に比べて白い領域が黒い領域に対して海島構造を成すように形成される度合いが大きい。そして、後者は前者に比べて白い領域の配列方向Aにおける長さ及び占有面積が増大するように形成されている。図4(C)の第三光電変換層4Cのn型半導体材料の主成分は、チタンアルコキシドモノマーよりも長さが長いチタンアルコキシドポリマーなので、図4(A)の第一光電変換層4Aと比べて明らかに白い領域の配列方向Aにおける長さが増大し、且つ、図4(A)及び図4(B)に比べて明らかに白い領域の光電変換層4における占有面積が増大している。図4(A)~(C)から、チタンアルコキシドモノマーにチタンアルコキシドポリマーを加えると、n型半導体領域41の配列方向Aの長さ及び占有面積(占有体積)が増大することが実際に確認できたと言える。図4(A)~(C)からもチタンアルコキシドモノマーの上記重量比、及びチタンアルコキシドポリマーの上記重量比は、所定の範囲に制限される方が好ましいことがわかる。
【0058】
なお、本実施形態における光電変換素子1に、図5に示すように、電子輸送層6、及び/又は、正孔輸送層7を設けたものもの本発明の範囲に含まれる。なお、電子輸送層6とは、光電変換層4で発生する電子を効率良く陰極3へと輸送する機能を担うものである。また、電子輸送層6は、陰極3と光電変換層4の間に設けられる。なお、電子輸送層6を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、チタン(IV)イソプロポキシド、フラーレンやその誘導体等の高い電子輸送性を有するn型半導体材料が挙げられる。
【0059】
正孔輸送層7は、光電変換層4で発生する正孔を効率良く陽極2へと輸送する機能を担う。正孔輸送層7は、正孔の移動度が高い材料で形成されることが好ましい。また、正孔輸送層7は、陽極2と光電変換層4の間に設けられる。なお、正孔輸送層を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、低分子化合物であればNTCDAに代表される芳香族環状酸無水物等が一例として挙げられ、高分子化合物であれば、PEDOT-PSS、ポリ(3,4-エチレンジオキシ)チオフェン等に代表される公知の導電性高分子等が一例として挙げられる。
【0060】
光電変換素子1に、電子輸送層6、及び/又は、正孔輸送層7が設けられる場合、スパッタ法、蒸着法、スピンコート法、印刷等を含む成膜方法により対応する材料を対応する位置に積層させた後に加熱処理を行って、電子輸送層6、及び/又は、正孔輸送層7を設ければよい。
【実施例0061】
次に、本願発明者は、本発明の実施例としての2種類の光電変換素子(第一光電変換素子、第二光電変換素子)と、比較例としての比較例光電変換素子を作成し、電流-電圧特性を評価する実験を行った。本実施例としての光電変換素子1は、ITO膜(酸化インジウムスズ透明導電膜)付ガラス基板(旭硝子製)の上に、光電変換層4、陽極2を順に成膜したものである。なお、ITO膜付ガラス基板におけるITO膜部分が陰極3を構成し、ガラス基板部分が基板5を構成する。
【0062】
まず、第一光電変換素子における光電変換層の作成のための第一混合溶液、及び第二光電変換素子における光電変換層の作成のための第二混合溶液を作成した。第一混合溶液には、チタンアルコキシドポリマーの総重量を基準とした重量比が90%のチタン(IV)イソプロポキシド(チタンアルコキシドモノマー)と重量比が10%のチタン(IV)ブトキシドポリマー(チタンアルコキシドポリマー)が含まれる。第二光電変換素子の混合溶液には、チタンアルコキシドポリマーの総重量を基準とした重量比が80%のチタン(IV)イソプロポキシド(チタンアルコキシドモノマー)と重量比が20%のチタン(IV)ブトキシドポリマー(チタンアルコキシドポリマー)が含まれる。具体的に第一混合溶液は、溶媒に対して、5(mg/ml)のP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))(ardrich社製)、9(mg/ml)のチタン(IV)イソプロポキシド(ardrich社製)、及び1(mg/ml)のチタン(IV)ブトキシドポリマー(ardrich社製)を入れて作成した。また、第二混合溶液は、溶媒に対して、5(mg/ml)のP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、8(mg/ml)のチタン(IV)イソプロポキシド、及び1(mg/ml)のチタン(IV)ブトキシドポリマーを入れて作成した。
【0063】
また、比較例としての比較例光電変換素子における光電変換層の作成のための比較例混合溶液を、溶媒に対して、5(mg/ml)のP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、10(mg/ml)のチタン(IV)イソプロポキシド(チタンアルコキシドモノマー)を入れて作成した。
【0064】
次に、上記第一混合容液、第二混合溶液、及び比較例混合溶液のそれぞれにITO膜付ガラス基板を10分浸漬した。その後、ITO膜付ガラス基板を80℃の雰囲気中で10分置いて第一混合容液、第二混合溶液、及び比較例混合溶液の溶媒を蒸発させた。これにより、第一光電変換素子の光電変換層、及び第二光電変換素子の光電変換層、比較例光電変換素子の光電変換層が完成した。
【0065】
次に、導電性ペースト(PEDOT-PSS)を用いて、第一光電変換素子の光電変換層、第二光電変換素子の光電変換層、及び比較例光電変換素子の光電変換層上に、陽極2を成膜した後、130℃10分間加熱する加熱処理を行った。これにより、本実施例としての第一光電変換素子及び第二光電変換素子、比較例光電変換素子が完成した。
【0066】
以上のようにして作製された本実施例としての第一光電変換素子及び第二光電変換素子、比較例光電変換素子の電流-電圧特性を測定するのに、ソーラーシミュレーター(株式会社三永電機製作所製XES-4051)を用いた。その結果、第一光電変換素子の短絡電流密度Jsc(mA/cm)は、比較例光電変換素子の短絡電流密度Jsc(mA/cm)の約1.45倍であった。また、第二光電変換素子の短絡電流密度Jsc(mA/cm)は、比較例光電変換素子の短絡電流密度Jsc(mA/cm)の約1.38倍であった。以上から、チタンアルコキシドモノマーにチタンアルコキシドポリマーを追加すると、短絡電流密度Jsc(mA/cm)が向上することが確認できた。
【0067】
また、第一光電変換素子の曲線因子FFは、比較例光電変換素子の曲線因子FFの約1.2倍であった。また、第二光電変換素子の曲線因子FFは、比較例光電変換素子の曲線因子FFの約1.34倍であった。以上から、チタンアルコキシドモノマーにチタンアルコキシドポリマーを追加すると、曲線因子FFが向上することが確認できた。
【0068】
以上から、チタンアルコキシドモノマー及びチタンアルコキシドポリマーの総重量を基準としたチタンアルコキシドポリマーの重量比が10%以上20%以下で、チタンアルコキシドモノマーの重量比が80%以上90%以下であれば、確実に光電変換素子の発電特性が向上することが確認できたと言える。
【0069】
尚、本発明の光電変換素子、及びその光電変換素子を製造する方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
1 光電変換素子
2 陽極(第一電極)
3 陰極(第二電極)
4 光電変換層
5 基板
6 電子輸送層
7 正孔輸送層
41 n型半導体領域
42 p型半導体領域
図1
図2
図3
図4
図5