(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002093
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】交通映像処理装置及び交通映像処理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G08G1/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102019
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野里 和樹
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB05
5H181BB13
5H181CC04
5H181DD07
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF33
5H181MA48
(57)【要約】
【課題】膨大な録画映像から交通事象に関する映像を効率的に抽出する。
【解決手段】第1時刻特定部は基準録画映像に対して交通事象を検出可能な第1画像解析処理を実行することにより交通事象が発生した交通事象発生時刻を特定する。第1抽出部は基準録画映像から交通事象発生時刻を含む所定期間に撮影された交通事象映像を抽出する。第2時刻特定部は上流側録画映像又は下流側録画映像の少なくとも一方に対して交通事象に関連する関連事象を検出可能な第2画像解析処理を実行することにより関連事象が発生した関連事象発生時刻を特定する。第2抽出部は上流側録画映像又は下流側録画映像から関連事象発生時刻を含む所定期間に撮影された関連事象映像を抽出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路で発生した交通事象の種類と、前記道路に設置された複数のカメラうち前記交通事象を撮影した基準カメラを特定可能な情報と、を含むイベント情報を取得する取得部と、
前記基準カメラにより撮影され録画された基準録画映像に対して前記交通事象を検出可能な第1画像解析処理を実行することにより、前記交通事象が発生した交通事象発生時刻を特定する第1時刻特定部と、
前記基準録画映像から前記交通事象発生時刻を含む所定期間に撮影された交通事象映像を抽出する第1抽出部と、
前記基準カメラより前記道路の上流側に設置された上流側カメラにより撮影され録画された上流側録画映像、又は前記基準カメラより前記道路の下流側に設置された下流側カメラにより撮影され録画された下流側録画映像の少なくとも一方に対して、前記交通事象に関連する関連事象を検出可能な第2画像解析処理を実行することにより、前記関連事象が発生した関連事象発生時刻を特定する第2時刻特定部と、
前記上流側録画映像又は前記下流側録画映像から前記関連事象発生時刻を含む所定期間に撮影された関連事象映像を抽出する第2抽出部と、
前記交通事象映像と前記関連事象映像とを関連付けて記憶する抽出情報記憶部と、
を備える交通映像処理装置。
【請求項2】
前記基準録画映像に基づいて前記道路を走行する車両の車速を算出する車速演算部と、
前記車速に基づいて前記第2画像解析処理の対象となる前記上流側録画映像又は前記下流側録画映像の範囲である捜査範囲を設定する捜査範囲設定部と、
を更に備える請求項1に記載の交通映像処理装置。
【請求項3】
前記交通事象の種類が事故ある場合、
前記第2画像解析処理は、前記関連事象として、前記上流側録画映像から事故の発生の原因となった原因事象を検出し、
前記第2時刻特定部は、前記原因事象が発生した時刻を前記関連事象発生時刻とする、
請求項1に記載の交通映像処理装置。
【請求項4】
前記原因事象は、速度超過、あおり運転又は路上落下物のうちの少なくとも1つを含む、
請求項3に記載の交通映像処理装置。
【請求項5】
前記交通事象の種類が逆走である場合、
前記第2画像解析処理は、前記関連事象として、前記下流側録画映像から逆走の開始を示す開始事象を検出し、前記上流側録画映像から逆走の終了を示す終了事象を検出し、
前記第2時刻特定部は、前記開始事象が発生した時刻又は前記終了事象が発生した時刻の少なくとも一方を前記関連事象発生時刻とする、
請求項1に記載の交通映像処理装置。
【請求項6】
前記開始事象は、逆走車の前記道路への進入、又は正常な方向に走行している車両の進行方向の逆転の少なくとも一方を含む、
請求項5に記載の交通映像処理装置。
【請求項7】
前記終了事象は、逆走車の前記道路からの退場、又は逆走車の進行方向の逆転の少なくとも一方を含む、
請求項5に記載の交通映像処理装置。
【請求項8】
情報処理装置が、道路で発生した交通事象の種類と、前記道路に設置された複数のカメラうち前記交通事象を撮影した基準カメラを特定可能な情報と、を含むイベント情報を取得する工程と、
情報処理装置が、前記基準カメラにより撮影され録画された基準録画映像に対して前記交通事象を検出可能な第1画像解析処理を実行することにより、前記交通事象が発生した交通事象発生時刻を特定する工程と、
情報処理装置が、前記基準録画映像から前記交通事象発生時刻を含む所定期間に撮影された交通事象映像を抽出する工程と、
情報処理装置が、前記基準カメラより前記道路の上流側に設置された上流側カメラにより撮影され録画された上流側録画映像、又は前記基準カメラより前記道路の下流側に設置された下流側カメラにより撮影され録画された下流側録画映像の少なくとも一方に対して、前記交通事象に関連する関連事象を検出可能な第2画像解析処理を実行することにより、前記関連事象が発生した関連事象発生時刻を特定する工程と、
情報処理装置が、前記上流側録画映像又は前記下流側録画映像から前記関連事象発生時刻を含む所定期間に撮影された関連事象映像を抽出する工程と、
情報処理装置が、前記交通事象映像と前記関連事象映像とを関連付けて記憶装置に記憶させる工程と、
を含む交通映像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交通映像処理装置及び交通映像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路等の道路上には多くのCCTV(Closed Circuit Television)カメラが設置されている。これらのカメラにより撮影され録画された録画映像は、所定期間保存され、道路上で発生する事故や故障等の交通事象の検出や調査等に利用されている。また、このような録画映像に対して画像解析を行い、録画映像から交通事象に関連する映像を抽出する技術の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、高速道路等は、事故や故障等の交通事象の検出の精度を高めるため、高速道路上の全てを監視する全線監視を行うことが検討されている。全線監視を行うためには、道路上に設置されるCCTVカメラの台数は、膨大な数になると予測される。このような状況下において、従来と同様の手法で膨大な録画映像から交通事象に関する映像を抽出しようとすると、人的作業の増大化や、高度な計算資源の必要性に伴うコストの増大化等が深刻化すると予測される。このような問題に対処するため、録画映像から必要な映像を抽出する処理の更なる効率化が求められている。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、膨大な録画映像から交通事象に関する映像を効率的に抽出可能な交通映像処理装置及び交通映像処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の交通映像処理装置は、取得部と、第1時刻特定部と、第1抽出部と、第2時刻特定部と、第2抽出部と、抽出情報記憶部と、を備える。取得部は、道路で発生した交通事象の種類と、道路に設置された複数のカメラうち交通事象を撮影した基準カメラを特定可能な情報と、を含むイベント情報を取得する。第1時刻特定部は、基準カメラにより撮影され録画された基準録画映像に対して交通事象を検出可能な第1画像解析処理を実行することにより、交通事象が発生した交通事象発生時刻を特定する。第1抽出部は、基準録画映像から交通事象発生時刻を含む所定期間に撮影された交通事象映像を抽出する。第2時刻特定部は、基準カメラより道路の上流側に設置された上流側カメラにより撮影され録画された上流側録画映像、又は基準カメラより道路の下流側に設置された下流側カメラにより撮影され録画された下流側録画映像の少なくとも一方に対して、交通事象に関連する関連事象を検出可能な第2画像解析処理を実行することにより、関連事象が発生した関連事象発生時刻を特定する。第2抽出部は、上流側録画映像又は下流側録画映像から関連事象発生時刻を含む所定期間に撮影された関連事象映像を抽出する。抽出情報記憶部は、交通事象映像と関連事象映像とを関連付けて記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の交通監視システムの全体的構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の交通映像処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の交通事象の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の交通事象発生時刻の特定方法及び交通事象映像の抽出方法の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の関連事象発生時刻の特定方法及び関連事象映像の抽出方法の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の交通映像処理装置による処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態の交通映像処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の交通事象の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の交通事象発生時刻の特定方法及び交通事象映像の抽出方法の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の関連事象発生時刻の特定方法及び関連事象映像の抽出方法の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の交通映像処理装置による処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の交通映像処理装置及び交通映像処理方法の実施形態について説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の交通管制システム1の全体的構成の一例を示す図である。交通管制システム1は、道路Rの状況を監視するためのシステムである。道路Rは、例えば、高速道路、有料道路等でも、国道等の一般道でもよい。
【0010】
交通管制システム1は、交通管制センタ10を含む。
交通管制センタ10は、道路Rに設置されたトラフィックカウンタから取得される交通量/速度/占有率等の交通情報や、カメラから取得される画像情報、道路Rの路側に設置された非常電話や一般利用者が使用するスマートフォン等の携帯情報端末20による通報等に基づいて、道路R上で発生する交通量の把握や、交通事象を検知する。そして、一般利用者に道路Rの状況を通知するための道路情報の生成や、交通規制等の交通管制を実施するための施設である。ここでいう交通事象(イベント)とは、道路R上で発生する事象であって、例えば、事故、車両故障、危険運転(例えば逆走、速度超過、あおり運転等)、渋滞、路上落下物、路面や路上附属物の破損等であり得る。
【0011】
監視対象となる道路Rには、複数のCCTVカメラ21-1~21-n(カメラの一例)、複数の非常電話22-1~22-p、複数のTC(トラフィックカウンタ:Traffic Counter)23-1~23-q等が設置されている。
図1に例示する構成におけるn,p,qは、それぞれ4以上の自然数である。
【0012】
CCTVカメラ21-1~21-nは、道路R(トンネルを含む)上に所定の間隔で設置された撮像装置である。各CCTVカメラ21-1~21-nは、道路R上で発生する交通事象の映像をそれぞれの撮影範囲内で静止画又は動画データして取得する。CCTVカメラ21-1~21-nは、交通管制センタ10の映像DB(Data Base)11と所定の回線網を介して接続しており、CCTVカメラ21-1~21-nにより撮影された映像は、映像DB11に保存される。以下、複数のCCTVカメラ21-1~21-nを区別する必要がない場合には、CCTVカメラ21と記載する場合がある。
【0013】
TC23-1~23-qは、道路R上に所定の間隔で設置されたトラフィックカウンタであり、車両の通過数、車速、交通密度等を計測する装置である。TC23-1~23-qは、交通管制センタ10の交通中央制御装置13等と所定の通信網を介して接続している。交通管制センタ10は、TC23-1~23-qから取得される情報に基づいて、例えば交通渋滞の発生等を検知できる。以下、複数のTC23-1~23-qを区別する必要がない場合には、TC23と記載する場合がある。
【0014】
非常電話22-1~22-pは、道路R上に所定の間隔で設置された専用の電話機であり、高速道路を一般的に利用しているユーザの車両の乗員や、路上パトロール隊員等が使用可能なものである。非常電話22-1~22-pは、交通管制センタ10の交通中央制御装置12等と専用回線等を介して接続している。
路上パトロール隊員や、高速道路を一般的に利用しているユーザの車両の乗員等は、非常電話22-1~22-pを使用することにより、道路R上で発生した事故や故障等の交通事象を交通管制センタ10等に通報できる。以下、複数の非常電話22-1~22-pを区別する必要がない場合には、非常電話22と記載する場合がある。
【0015】
高速道路を一般的に利用しているユーザの車両の乗員等は、携帯情報端末20を使用して道路R上で発生した事故や故障等の交通事象を交通管制センタ10に通報できるようになっている。
携帯情報端末20は、道路Rを走行しているユーザの車両の乗員等が使用するスマートフォン、タブレット端末等の装置である。携帯情報端末20は、例えば、ユーザが事故や落下物等を見つけた場合に使用される。携帯情報端末20から公衆網やインターネット等のネットワークNを介して交通管制センタ10に対して通報があった場合、交通管制センタ10内に設置された固定電話等の通信装置16が当該通報を受信し、通報内容に応じて管制員が後述する交通中央制御装置に対して入力を行うことで、交通事象に関する情報を取得できる。
【0016】
本実施形態の交通管制センタ10は、交通中央制御装置13、交通中央サーバ14、大型ディスプレイ15、通信装置16、交通映像処理装置12及び映像DB11を備える。
【0017】
交通中央制御装置13は、道路Rの状況に関する交通情報を生成するための処理を実行する情報処理装置である。交通中央制御装置13は、道路R上の設備(非常電話22やTC23等)から取得される情報、通信装置16を介して携帯情報端末20から通報された情報等に基づいて交通事象に関する交通情報を生成する。
このとき、交通中央制御装置13は、非常電話22や携帯情報端末20(通信装置16)を介して取得されるユーザや路上パトロール隊員等からの情報に基づいて管制員が手動で入力した情報等を利用して交通情報を生成してもよい。
交通中央制御装置13は、適宜なハードウェア及びソフトウェアを利用して構成されればよいが、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ストレージ、通信I/F(Interface)、ユーザI/F等を利用して構成される汎用コンピュータ、サーバコンピュータ、通信システム等を利用して構成され得る。
【0018】
交通中央サーバ14は、映像DB11に保存された録画映像や、交通映像処理装置12から取得される情報、交通中央制御装置13から取得される情報等を大型ディスプレイ15に表示させる処理等を実行する情報処理装置である。交通中央サーバ14は、適宜なハードウェア及びソフトウェアを利用して構成されればよいが、例えば画像処理に特化した機能を有するサーバコンピュータ等を利用して構成され得る。
【0019】
交通映像処理装置12は、映像DB11に保存された録画映像から交通事象に関連する映像を抽出し、交通事象の検証等に有用な情報を生成するための処理を行う情報処理装置である。本実施形態の交通映像処理装置12は、映像DB11に保存された録画映像から、交通事象が発生した場面を撮影した交通事象映像と、当該交通事象に関連する関連事象が発生した場面を撮影した関連事象映像と、を抽出し、これらの交通事象映像と関連事象映像とを関連付けたカプセル情報を生成する。交通映像処理装置12の具体的な機能については後述する。交通映像処理装置12は、適宜なハードウェア及びソフトウェアを利用して構成されればよいが、例えば汎用コンピュータ等を利用して構成され得る。
【0020】
映像DB11は、CCTVカメラ21により撮影された映像を保存及び管理するためのコンピュータシステムである。映像DB11は、複数のCCTVカメラ21-1~21-nのそれぞれにより撮影された複数の映像を録画映像として所定期間個別に保存する。映像DB11に保存された録画映像は、交通管制センタ10においてオフラインで利用可能となる。映像DB11は、適宜なハードウェア及びソフトウェアを利用して構成されればよいが、例えばデータベースサーバ、大容量ストレージ、バックアップシステム、冗長化システム等を利用して構成され得る。
【0021】
大型ディスプレイ15は、道路Rに関する各種情報を示す画像(動画を含む)を表示可能な装置である。大型ディスプレイ15には、例えば、映像DB11に保存されている録画映像や、交通映像処理装置12により生成されたカプセル情報、交通中央制御装置13により生成された交通情報等が表示され得る。
【0022】
図2は、第1実施形態の交通映像処理装置12の機能構成の一例を示す図である。
本実施形態の交通映像処理装置12は、取得部101、第1時刻特定部102、第1抽出部103、第2時刻特定部104、第2抽出部105、車速演算部106、捜査範囲設定部107、抽出映像記憶部108及び出力部109を備える。これらの機能部は、交通映像処理装置12を構成するハードウェア及びソフトウェアの協働により構成される。なお、これらの機能部のうちの少なくとも1つが専用のハードウェア(回路等)により構成されてもよい。
【0023】
取得部101は、道路Rで発生する交通事象に関するイベント情報を取得する。イベント情報は、道路Rで発生した交通事象の種類と、道路Rに設置された複数のCCTVカメラ21うち交通事象を撮影した基準カメラを特定可能な情報と、を含む。本実施形態の取得部101は、交通中央制御装置13からイベント情報を取得する。
【0024】
交通事象の種類とは、例えば、事故、車両故障、逆走、速度超過、あおり運転、渋滞、路上落下物、路面や路上附属物の破損等であり得る。基準カメラを特定可能な情報とは、例えば、交通事象が発生した位置や、当該位置を撮影範囲とするCCTVカメラ21を特定する識別情報等を含む情報であり得る。このようなイベント情報は、様々な手法により生成可能なものであるが、例えば、交通中央制御装置13を操作する管制員等が非常電話22や携帯情報端末20等から取得した交通事象の目撃情報等に基づいてイベント情報を生成してもよい。また、イベント情報は、コンピュータにより実行される所定のアルゴリズムにより目撃情報等に基づいて自動生成されてもよい。
【0025】
第1時刻特定部102は、イベント情報に基づいて特定された基準カメラにより撮影され録画された基準録画映像に対して、交通事象を検出可能な第1画像解析処理を実行することにより、交通事象が発生した交通事象発生時刻を特定する。
【0026】
本実施形態においては、基準録画映像は、映像DB11に保存された複数の録画映像51-1~51-nから選択される。複数の録画映像51-1~51-nのそれぞれは、複数のCCTVカメラ21-1~21-nのそれぞれに対応している。すなわち、録画映像51-1は、CCTVカメラ21-1により撮影された映像であり、録画映像51-2は、CCTVカメラ21-2により撮影された映像であり、他の録画映像51-3~51-nについても同様である。
例えば、基準カメラがCCTVカメラ21-3である場合、録画映像51-3が基準録画映像となる。そして、基準録画映像としての録画映像51-3に対して第1画像解析処理を実行することにより、交通事象発生時刻が特定される。第1画像解析処理は、公知又は新規な技術を適宜利用して実現されればよいが、例えば、基準録画映像を構成する複数のフレーム(静止画像)からある交通事象(例えば事故等)に特有の画像的特徴を有するフレームを抽出するアルゴリズム等が利用され得る。
【0027】
第1抽出部103は、基準録画映像から交通事象発生時刻を含む所定期間に撮影された交通事象映像を抽出する。交通事象映像には、第1画像解析処理により検出された交通事象の映像が含まれる。
【0028】
第2時刻特定部104は、基準カメラより道路Rの上流側に設置された上流側カメラにより撮影され録画された上流側録画映像に対して、第1画像解析処理により検出された交通事象に関連する関連事象を検出可能な第2画像解析処理を実行することにより、当該関連事象が発生した関連事象発生時刻を特定する。
【0029】
例えば、CCTVカメラ21-1が道路Rの最上流位置に設置され、CCTVカメラ21-nが道路Rの最下流位置に設置され、CCTVカメラ21-3が基準カメラである場合、CCTVカメラ21-1,21-2が上流側カメラとなり、録画映像51-1,51-2が上流側録画映像となる。この場合、上流側録画映像としての録画映像51-1,51-2に対して第2画像解析処理を実行することにより、関連事象発生時刻が特定される。
第2画像解析処理は、公知又は新規な技術を適宜利用して実現されればよいが、例えば、上流側録画映像を構成する複数のフレームからある交通事象(例えば事故の要因となった危険運転等)に画像的特有の特徴を有するフレームを抽出するアルゴリズム等が利用され得る。
【0030】
第2抽出部105は、上流側録画映像から関連事象発生時刻を含む所定期間に撮影された関連事象映像を抽出する。関連事象映像には、第2画像解析処理により検出された関連事象の映像が含まれる。
【0031】
車速演算部106は、基準録画映像に基づいて道路Rを走行する車両の車速を算出する。当該車速の算出は、公知又は新規な技術を適宜利用して実現されればよいが、例えば、基準録画映像を構成する複数のフレーム間における車両の位置変化等に基づいて車速を算出するアルゴリズム等が利用され得る。
【0032】
捜査範囲設定部107は、車速演算部106により算出された車速に基づいて、第2時刻特定部104における第2画像解析処理の対象となる上流側記録映像の範囲である捜査範囲を設定する。すなわち、第1画像解析処理により検出された交通事象(例えば事故等)に関連する関連事象(例えば危険運転等)を検出するための捜査範囲が、基準録画映像に含まれる車両の車速に基づいて設定される。これにより、関連事象を検出するための第2画像解析処理の対象となる上流側録画映像の範囲を絞ることができ、第2画像解析処理にかかる演算負荷を低減できる。
【0033】
抽出映像記憶部108は、第1抽出部103により抽出された交通事象映像と、第2抽出部105により抽出された関連事象映像と、を関連付けたカプセル情報を記憶する。
【0034】
出力部109は、抽出映像記憶部108に記憶されたカプセル情報を所定の形式で出力する。
【0035】
図3は、第1実施形態の交通事象の一例を示す図である。ここで例示する交通事象は、事故である。
図3において、片側二車線の道路Rの追い越し車線で事故を起こした事故車C1の状況が例示されている。ここで例示する事故車C1は、CCTVカメラ21-kの撮影範囲で事故を起こし、CCTVカメラ21-kより上流側のCCTVカメラ21-lの撮影範囲で速度超過を起こしている。なお、k,lは自然数であり、l<kの関係が成り立つ。本例では、CCTVカメラ21-kが交通事象(事故)を撮影した基準カメラであり、CCTVカメラ21-lが関連事象(速度超過)を撮影した上流側カメラであるものとする。なお、交通事象の種類はこれに限定されるものではなく、例えば車両故障等であり得る。また、関連事象の種類はこれに限定されるものではなく、例えばあおり運転、路上落下物等であり得る。
【0036】
図4は、第1実施形態の交通事象発生時刻t1の特定方法及び交通事象映像V1の抽出方法の一例を示す図である。
図4において、基準録画映像Vsと交通事象発生時刻t1と交通事象映像V1との関係が例示されている。当該基準録画映像Vsは、
図3に例示される状況においては、事故現場を撮影した基準カメラとしてのCCTVカメラ21-kにより撮影された映像である。
【0037】
図4の上部に示されるように、交通事象発生時刻t1は、基準録画映像Vsに対して第1画像解析処理を実行することにより特定される。このとき、第1画像解析処理は、所定の基準時刻t0から時間を遡るように実行され、事故(事故の現場が映っているフレーム)が検出されるまで継続され、事故が検出された時刻が交通事象発生時刻t1となる。基準時刻t0は、例えば、携帯情報端末20や非常電話22等から通報があった時刻等であり得るが、これに限定されるものではない。
そして、
図4の下部に示されるように、基準録画映像Vsから交通事象発生時刻t1を含む所定期間Δt1分を抽出した映像が交通事象映像V1となる。
【0038】
図5は、第1実施形態の関連事象発生時刻t2の特定方法及び関連事象映像V2の抽出方法の一例を示す図である。
図5において、上流側録画映像Vuと関連事象発生時刻t2と関連事象映像V2との関係が例示されている。当該上流側録画映像Vuは、
図3に例示される状況においては、事故車C1が速度超過の状態で走行している場面を撮影した上流側カメラとしてのCCTVカメラ21-lにより撮影された映像である。
【0039】
図5の上部に示されるように、関連事象発生時刻t2は、上流側録画映像Vuに対して第2画像解析処理を実行することにより特定される。このとき、第2画像解析処理は、捜査開始時刻tsから捜査終了時刻teまでの捜査範囲内で時間を遡るように実行され、関連事象(関連事象が映っているフレーム)が検出されるまで継続される。ここで例示する関連事象は、事故の原因となった原因事象であり、
図3に例示される状況においては、事故車C1の速度超過である。そして、関連事象が検出された時刻が関連事象発生時刻t2となる。
また、第2画像解析処理は、捜査開始時刻tsから捜査終了時刻teまでの間に関連事象が検出されなかった場合には、関連事象発生時刻t2を特定せずに終了する。
図5の下部に示されるように、上流側録画映像Vuから関連事象発生時刻t2を含む所定期間Δt2分を抽出した映像が関連事象映像V2となる。
【0040】
捜査範囲の一例としての捜査開始時刻ts及び捜査終了時刻teは、車速演算部106により算出された車速(例えば事故車C1の車速や、道路Rを走行している複数の車両の平均速度等)に基づいて設定される。また、捜査範囲は、上流側カメラが複数存在する場合、それらのうちのどれを第2画像解析処理の対象とするかを示す情報を含んでもよい。
例えば、基準カメラより上流側に10台の上流側カメラが存在する場合、基準カメラに近いものから順に5台目までの上流側カメラにより撮影された5つの上流側録画映像Vuのみを第2画像解析処理の対象としてもよい。この場合、6台目以降の上流側カメラに撮影された上流側録画映像は、第2画像解析処理の対象とならない。
このような捜査範囲の設定は、例えば、車速演算部106により算出された車速とCCTVカメラ21間の間隔とに基づいて行うことができる。このような捜査範囲を設定することにより、交通事象の発生時刻より過度に古いタイミングで発生した事象や、当該交通事象の発生場所から過度に遠い場所で発生した事象等を排除でき、当該交通事象に関連しない事象が関連事象として扱われることを抑制できる。
【0041】
図6は、第1実施形態の交通映像処理装置12による処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS101において、第1時刻特定部102は交通中央制御装置13等から取得したイベント情報に基づいて基準カメラ(例えば
図3におけるCCTVカメラ21-k)を特定する。ステップS102において、第1時刻特定部102は基準カメラにより撮影された基準録画映像Vsに対して第1画像解析処理を実行する。
【0042】
ステップS103において、第1画像解析処理により基準録画映像Vsから交通事象の一例としての事故が検出されたか否かが判定され、事故が検出されなかった場合(S103:No)、本ルーチンは終了する。
【0043】
ステップS103において、基準録画映像Vsから事故が検出された場合(S103:Yes)、ステップS104において、第1時刻特定部102は第1画像解析処理により検出された事故の発生時刻(事故現場が映っているフレーム)に対応する交通事象発生時刻t1を特定する。ステップS105において、第1抽出部103は交通事象発生時刻t1に基づいて基準録画映像Vsから交通事象映像V1を抽出する。
【0044】
ステップS106において、車速演算部106は基準録画映像Vsに基づいて当該基準録画映像Vsに含まれる車両(例えば
図3における事故車C1等)の車速を算出する。ステップS107において、捜査範囲設定部107は上記のように算出された車速に基づいて第2画像解析処理の対象となる捜査範囲を設定する。
【0045】
ステップS108において、第2時刻特定部104は上流側カメラ(例えば
図3におけるCCTVカメラ21-l)により撮影された上流側録画映像Vuに対して第2画像解析処理を実行する。ステップS109において、第2画像解析処理により上流側録画映像Vuから関連事象(例えば事故の原因となった事故車C1の速度超過等の原因事象)が検出されたか否かが判定される。
【0046】
ステップS109において、関連事象が検出された場合(S109:Yes)、ステップS110において、第2時刻特定部104は第2画像解析処理により検出された関連事象(原因事象)の発生時刻(原因事象が映っているフレーム)に対応する関連事象発生時刻t2を特定する。ステップS111において、第2抽出部105は関連事象発生時刻t2に基づいて上流側録画映像Vuから関連事象映像V2を抽出する。
そして、ステップ112において、抽出映像記憶部108は交通事象映像V1と関連事象映像V2とを関連付けたカプセル情報を記憶する。
【0047】
ステップS109において、関連事象が検出されなかった場合(S109:No)、ステップS114において、第2時刻特定部104は第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了したか否かを判定する。
ステップS114において、第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了していない場合(S114:No)、ステップS108において、上流側録画映像Vuのうち未実行の範囲に対して第2画像解析処理を実行する。ステップS114において、第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了した場合(S114:Yes)、抽出映像記憶部108は関連事象映像V2を含まない(交通事象映像V1のみを含む)情報をカプセル情報として記憶する。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、基準録画映像Vsに対する画像解析処理(第1画像解析処理)により交通事象が発生した交通事象発生時刻t1が特定され、交通事象発生時刻t1に基づいて基準録画映像Vsから交通事象の映像を含む交通事象映像V1が抽出される。また、上流側録画映像Vuに対する画像解析処理(第2画像解析処理)により交通事象に関連する関連事象が発生した関連事象発生時刻t2が特定され、関連事象発生時刻t2に基づいて上流側録画映像Vuから関連事象の映像を含む関連事象映像V2が抽出される。そして、交通事象映像V1と関連事象映像V2とが関連付けられたカプセル情報が記憶される。
これにより、膨大な録画映像から交通事象に関する映像を効率的且つ簡便に抽出することが可能となり、人的作業やコストの増大化等を抑制しつつ、高速道路等の全線監視等を実現することが可能となる。
【0049】
以下に、他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1実施形態の同一又は同様の箇所については適宜その説明を省略する。
【0050】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、上流側録画映像に対して第2画像解析処理が実行され、その結果に基づいて上流側録画映像から関連事象映像が抽出される。これに対し、第2実施形態は、逆走車の画像解析も可能とするため、上流側録画映像だけでなく、基準カメラより下流側に設置された下流側カメラにより撮影された下流側録画映像に対しても第2画像解析処理を実行し、その結果に基づいて、上流側録画映像及び下流側録画映像からそれぞれ関連事象映像を抽出する点で、第1実施形態と相違する。
【0051】
図7は、第2実施形態の交通映像処理装置12の機能構成の一例を示す図である。
本実施形態の第2時刻特定部104は、第1実施形態と同様に、上流側録画映像に対して関連事象を検出可能な第2画像解析処理を実行し、その結果に基づいて上流側の関連事象発生時刻を特定する。また、本実施形態の第2時刻特定部104は、基準カメラより下流側に設置された下流側カメラにより撮影された下流側録画映像に対して第2画像解析処理を実行し、その結果に基づいて下流側の関連事象発生時刻を特定する。
【0052】
本実施形態の第2抽出部105は、第1実施形態と同様に、上流側の関連事象発生時刻に基づいて上流側録画映像から上流側の関連事象映像を抽出すると共に、下流側の関連事象発生時刻に基づいて下流側録画映像から下流側の関連事象映像を抽出する。
【0053】
本実施形態の捜査範囲設定部107は、第1実施形態と同様に、上流側録画映像に対する捜査範囲(第2画像解析処理の実行範囲)を設定すると共に、車速演算部106により算出された車速に基づいて下流側録画映像に対する捜査範囲を設定する。
【0054】
図8は、第2実施形態の交通事象の一例を示す図である。ここで例示する交通事象は、車両の逆走である。
図8において、片側二車線の道路Rの追い越し車線を逆走する逆走車C2の状況が例示されている。ここで例示する逆走車C2は、CCTVカメラ21-mの撮影範囲に存在する退場用側道Roから進入し、CCTVカメラ21-kの撮影範囲を正規の進行方向に対して逆走し、CCTVカメラ21-jの撮影範囲に存在する合流用側道Riから退場している。なお、j,k,mは自然数であり、j<k<mの関係が成り立つ。
本例では、CCTVカメラ21-kが交通事象(逆走)を撮影した基準カメラであり、CCTV21-mが関連事象(道路Rへの進入)を撮影した下流側カメラであり、CCTVカメラ21-jが関連事象(道路Rからの退場)を撮影した上流側カメラであるものとする。なお、関連事象の種類は進入及び退場に限定されるものではなく、例えば、逆走車C2の停止、方向転換、事故等であってもよい。
【0055】
図9は、第2実施形態の交通事象発生時刻t1の特定方法及び交通事象映像V1の抽出方法の一例を示す図である。
図9において、基準録画映像Vsと交通事象発生時刻t1と交通事象映像V1との関係が例示されている。当該基準録画映像Vsは、
図8に例示される状況においては、逆走車C2が道路Rを逆走する現場を撮影した基準カメラとしてのCCTVカメラ21-kにより撮影された映像である。
【0056】
図9の上部に示されるように、交通事象発生時刻t1は、基準録画映像Vsに対して第1画像解析処理を実行することにより特定される。このとき、第1画像解析処理は、第1実施形態と同様に、所定の基準時刻t0から時間を遡るように実行され、逆走が検出されるまで継続され、逆走が検出された時刻が交通事象発生時刻t1となる。そして、
図9の下部に示されるように、基準録画映像Vsから交通事象発生時刻t1を含む所定期間Δt1分を抽出した映像が交通事象映像V1となる。
【0057】
図10は、第2実施形態の関連事象発生時刻t2,t3の特定方法及び関連事象映像V2,V3の抽出方法の一例を示す図である。
図10において、下流側録画映像Vdと関連事象発生時刻t2と関連事象映像V2との関係、及び上流側録画映像Vuと関連事象発生時刻t3と関連事象映像V3との関係が例示されている。下流側録画映像Vdは、
図8に例示される状況においては、逆走車C2が退場用側道Roから道路Rに進入してきた場面を撮影した下流側カメラとしてのCCTVカメラ21-mにより撮影された映像である。上流側録画映像Vuは、
図8に例示される状況においては、逆走車C2が合流用側道Riから退場した場面を撮影した下流側カメラとしてのCCTVカメラ21-mにより撮影された映像である。
【0058】
図10の上部に示されるように、下流側の関連事象発生時刻t2は、下流側録画映像Vdに対して第2画像解析処理を実行することにより特定される。このとき、第2画像解析処理は、捜査開始時刻ts1から捜査終了時刻te1までの捜査範囲内で時間を遡るように実行され、関連事象が検出されるまで継続される。当該関連事象は、例えば、逆走の開始を示す開始事象であり、
図8に例示される状況においては、逆走車C2が退場用側道Roから道路Rへ進入する事象である。当該関連事象(開始事象)が検出された時刻が関連(開始)事象発生時刻t2となる。捜査開始時刻ts1から捜査終了時刻te1までの間に関連事象が検出されなかった場合には、第2画像解析処理は関連事象発生時刻t2を特定せずに終了する。
【0059】
また、上流側の関連事象発生時刻t3は、上流側録画映像Vuに対して第2画像解析処理を実行することにより特定される。このとき、第2画像解析処理は、捜査開始時刻ts2から捜査終了時刻te2までの捜査範囲内で時間を進めるように実行され、関連事象が検出されるまで継続される。当該関連事象は、例えば、逆走の終了を示す終了事象であり、
図8に例示される状況においては、逆走車C2が合流用側道Riから退場する事象である。当該関連事象(終了事象)が検出された時刻が関連(終了)事象発生時刻t3となる。
捜査開始時刻ts2から捜査終了時刻te2までの間に関連事象が検出されなかった場合には、第2画像解析処理は関連事象発生時刻t3を特定せずに終了する。なお、ここでは、下流側録画映像Vdに対して実行される画像解析処理と上流側録画映像Vuに対して実行される画像解析処理とを共に「第2画像解析処理」と称しているが、両者は互いに異なるアルゴリズムを用いて構成されるものであってもよい。
【0060】
そして、
図10の下部に示されるように、下流側録画映像Vdから関連事象発生時刻t2を含む所定期間Δt2分を抽出した映像が、開始事象の映像を含む関連事象映像V2となる。また、上流側録画映像Vuから関連事象発生時刻t3を含む所定期間Δt3分を抽出した映像が、終了事象の映像を含む関連事象映像V3となる。
【0061】
図11は、第2実施形態の交通映像処理装置12による処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS201において、第1時刻特定部102は交通中央制御装置13等から取得したイベント情報に基づいて基準カメラ(例えば
図8におけるCCTVカメラ21-k)を特定する。ステップS202において、第1時刻特定部102は基準カメラにより撮影された基準録画映像Vsに対して第1画像解析処理を実行する。
【0062】
ステップS203において、第1画像解析処理により基準録画映像Vsから交通事象としての逆走が検出されたか否かが判定され、逆走が検出されなかった場合(S203:No)、本ルーチンは終了する。
【0063】
ステップS203において、基準録画映像Vsから逆走が検出された場合(S203:Yes)、ステップS204において、第1時刻特定部102は第1画像解析処理により検出された逆走の発生時刻に対応する交通事象発生時刻t1を特定する。ステップS205において、第1抽出部103は交通事象発生時刻t1に基づいて基準録画映像Vsから交通事象映像V1を抽出する。
【0064】
ステップS206において、車速演算部106は基準録画映像Vsに基づいて当該基準録画映像Vsに含まれる車両(例えば
図8における逆走車C2等)の車速を算出する。ステップS207において、捜査範囲設定部107は上記のように算出された車速に基づいて第2画像解析処理の対象となる捜査範囲を設定する。
【0065】
ステップS208において、第2時刻特定部104は下流側カメラ(例えば
図8におけるCCTVカメラ21-m)により撮影された下流側録画映像Vdに対して第2画像解析処理を実行する。ステップS209において、第2画像解析処理により下流側録画映像Vdから関連事象(例えば逆走の開始を示す開始事象)が検出されたか否かが判定される。
【0066】
ステップS209において、関連事象が検出された場合(S209:Yes)、ステップS210において、第2時刻特定部104は第2画像解析処理により検出された関連事象の発生時刻に対応する関連事象発生時刻t2を特定する。ステップS211において、第2抽出部105は関連事象発生時刻t2に基づいて下流側録画映像Vdから関連事象映像V2を抽出する。その後、後述するステップS218が実行される。
【0067】
ステップ209において、関連事象が検出されなかった場合(S209:No)、ステップS212において、第2時刻特定部104は第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了したか否かを判定する。
ステップS212において、第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了していない場合(S212:No)、ステップS208において、下流側録画映像Vdのうち未実行の範囲に対して第2画像解析処理を実行する。ステップS212において、第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了した場合(S212:Yes)、後述するステップS218が実行される。
【0068】
ステップS207の実行後、ステップS213において、第2時刻特定部104は上流側カメラ(例えば
図8におけるCCTVカメラ21-j)により撮影された上流側録画映像Vuに対して第2画像解析処理を実行する。ステップS214において、第2画像解析処理により上流側録画映像Vuから関連事象(例えば逆走の終了を示す終了事象)が検出されたか否かが判定される。
【0069】
ステップS214において、関連事象が検出された場合(S214:Yes)、ステップS215において、第2時刻特定部104は第2画像解析処理により検出された関連事象の発生時刻に対応する関連事象発生時刻t3を特定する。ステップS216において、第2抽出部105は関連事象発生時刻t3に基づいて上流側録画映像Vuから関連事象映像V3を抽出する。その後、後述するステップS218が実行される。
【0070】
ステップ214において、関連事象が検出されなかった場合(S214:No)、ステップS217において、第2時刻特定部104は第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了したか否かを判定する。
ステップS217において、第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了していない場合(S217:No)、ステップS217において、第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了した場合(S217:Yes)、後述するステップS218が実行される。
【0071】
ステップS218において、抽出映像記憶部108は上記処理の結果に基づいてカプセル情報を記憶する。すなわち、ステップS211において下流側の関連事象映像(例えば開始事象映像)V2が抽出され、且つステップS216において上流側の関連事象映像(例えば終了事象映像)V3が抽出された場合には、交通事象映像V1と上流側の関連事象映像V2と下流側の関連事象映像V3とを関連付けたカプセル情報が記憶される。
また、ステップS211において下流側の関連事象映像V2が抽出され、且つステップS217において第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了した場合(S217:Yes)には、交通事象映像V1と下流側の関連事象映像V2とを関連付けたカプセル情報が記憶される。
また、ステップS216において上流側の関連事象映像V3が抽出され、且つステップS212において第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了した場合(S212:Yes)には、交通事象映像V1と上流側の関連事象映像V3とを関連付けたカプセル情報が記憶される。
また、ステップS212及びステップS217において第2画像解析処理が全捜査範囲に対して終了した場合(S212:Yes且つS217:Yes)には、関連事象映像V2,V3を含まない(交通事象映像V1のみを含む)情報がカプセル情報として記憶される。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、上流側録画映像及び下流側録画映像の両方に対して画像解析処理(第2画像解析処理)が実行され、交通事象に関連する関連事象を撮影した関連事象映像が上流側録画映像及び下流側録画映像からそれぞれ抽出される。これにより、逆走等の、上流側及び下流側の両方に関連事象が発生し得る交通事象に関する有用なカプセル情報を効率的且つ簡便に生成することが可能となる。
【0073】
上述したような機能を交通映像処理装置12に実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0074】
さらに、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態で実行される当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…交通管制システム、10…交通管制センタ、11…映像DB、12…交通映像処理装置、13…交通中央制御装置、20…携帯情報端末、21-1~21-n…CCTVカメラ、21-j…上流側カメラ、21-k…基準カメラ、21-l,21-m…下流側カメラ、51-1~51-n…録画映像、101…取得部、102…第1時刻特定部、103…第1抽出部、104…第2時刻特定部、105…第2抽出部、106…車速演算部、107…捜査範囲設定部、108…抽出映像記憶部、109…出力部、C1…事故車、C2…逆走車、R…道路、Ri…合流用側道、Ro…退場用側道、t1…交通事象発生時刻、t2,t3…関連事象発生時刻、V1…交通事象映像、V2,V3…関連事象映像、Vd…下流側録画映像、Vs…基準録画映像、Vu…上流側録画映像