(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021246
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】コネクタ、接続構造、接続方法および流体システム
(51)【国際特許分類】
F16L 19/00 20060101AFI20250205BHJP
F16L 17/067 20060101ALI20250205BHJP
B01J 19/00 20060101ALN20250205BHJP
【FI】
F16L19/00
F16L17/067
B01J19/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125048
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】523090537
【氏名又は名称】北森微流體研發股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】佐野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】北森 武彦
(72)【発明者】
【氏名】小西 賢則
(72)【発明者】
【氏名】太田 諒一
(72)【発明者】
【氏名】林 衍辰
(72)【発明者】
【氏名】陳 致真
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 喜重
【テーマコード(参考)】
3H014
4G075
【Fターム(参考)】
3H014AA08
3H014AA11
3H014BA01
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA39
4G075AA56
4G075BA10
4G075BB02
4G075BB03
4G075BB05
4G075BB07
4G075DA02
4G075EB50
4G075EC26
4G075FA01
4G075FA12
4G075FB01
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】流体デバイスと送液用のチューブとを流体デバイスの側面で接続し、かつ、液体の漏れを防止する。
【解決手段】本開示のコネクタは、内部に流路が形成された流体デバイスの側面に設けられた流路の開口部に、チューブの先端部を接続する。コネクタは、フェラルと、押付部材と、シール部材とを含む。フェラルは、チューブが挿通される貫通孔に沿う第1の端部に流体デバイスの側面と対向する第1面を有し、第2の端部にテーパー状の第2面を有する。押付部材は、チューブが挿通される貫通孔が形成される筒状の部材であって、フェラルの第2面に当接可能な凹部を有する。シール部材は、フェラルの第1面と流体デバイスの側面との間に配置され、チューブが挿通される。押付部材がフェラルを流体デバイスに向けて押し付けることにより流路の開口部とチューブの先端部とが接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成された板状の流体デバイスの側面に設けられた前記流路の開口部に、流路接続用のチューブの先端部を接続するコネクタであって、
前記チューブが挿通される貫通孔が形成されるとともに、前記貫通孔に沿う第1の端部に前記流体デバイスの前記側面と対向する第1面を有し、前記貫通孔に沿う前記第1の端部の反対側の第2の端部に向かって外径が小さくなるテーパー状の第2面を有するフェラルと、
前記チューブが挿通される貫通孔が形成される筒状の押付部材であって、前記フェラルの前記第2面に当接可能な凹部を有する押付部材と、
前記フェラルの前記第1面と前記流体デバイスの前記側面との間に配置され、前記チューブが挿通されるシール部材とを備え、
前記押付部材が前記フェラルを前記流体デバイスに向けて押し付けることにより前記開口部と前記先端部とが接続されるように構成されるコネクタ。
【請求項2】
前記押付部材は、前記流体デバイスを固定するホルダの前記開口部に対応する位置に配置されたネジ孔に螺合するように構成されたネジ部を有し、前記押付部材は、前記ネジ部が前記ネジ孔に螺合する方向に回転することにより前記流体デバイスの方向に前進し、前記フェラルを前記流体デバイスに向けて押し付けるように構成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記フェラルは、前記押付部材により前記流体デバイスに向って押し付けられることにより、前記シール部材を前記第1面と前記流体デバイスの前記側面との間で押圧した状態で、前記第2面に加えられる押圧力により変形して前記チューブを締め付けて固定するように構成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記フェラルは、前記チューブを固定したとき前記フェラルと前記チューブとの間で流体を封止するように構成される、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記シール部材はOリングである、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
内部に流路が形成され側面に前記流路の開口部を有する板状の流体デバイスに対して、流路接続用のチューブの先端部を接続する接続構造であって、
前記流体デバイスを固定するとともに、前記開口部に対応する位置にネジ孔が配置されたホルダと、
前記チューブが挿通される貫通孔が形成されるとともに、前記貫通孔に沿う第1の端部に前記流体デバイスの前記側面と対向する第1面を有し、前記貫通孔に沿う前記第1の端部の反対側の第2の端部に向かって外径が小さくなるテーパー状の第2面を有するフェラルと、
前記ホルダの前記ネジ孔と螺合するネジ部を有し、前記チューブが挿通される貫通孔が形成される筒状の押付部材であって、前記フェラルの前記第2面に当接する凹部を有する押付部材と、
前記チューブに挿通され、前記フェラルの前記第1面と前記流体デバイスの前記側面との間に配置されるシール部材と
を備える、接続構造。
【請求項7】
内部に流路が形成され、側面に前記流路の開口部を有する板状の流体デバイスに対して、流路接続用のチューブの先端部を接続する接続方法であって、
前記開口部に対応する位置にネジ孔が配置されたホルダにより前記流体デバイスを固定し、
前記チューブを、押付部材、フェラル、および、シール部材に挿通させ、
前記押付部材は、前記ホルダの前記ネジ孔と螺合するネジ部を有し、前記チューブが挿通される貫通孔が形成される筒状の押付部材であって、前記フェラルの側に凹部を有し、
前記フェラルは、前記チューブが挿通される貫通孔が形成されるとともに、前記シール部材の側に前記流体デバイスの前記側面と対向する第1面を有し、前記押付部材の側の端部に向かって外径が小さくなるテーパー状の第2面を有し、
前記シール部材は、前記フェラルの前記第1面と前記流体デバイスの前記側面との間に配置され、
前記押付部材を前記ネジ部が前記ネジ孔に螺合する方向に回転させ、それにより、
前記押付部材が前記流体デバイスの方向に前進して、前記凹部が前記フェラルの前記第2面を前記流体デバイスに向けて押し付け、
前記フェラルの前記第1面が前記シール部材を前記流体デバイスの前記側面に向けて押圧した状態で、前記第2面に加えられる押圧力により前記フェラルが変形し、前記チューブを締め付けて固定する、接続方法。
【請求項8】
請求項1に記載のコネクタ及び前記チューブを用いて互いの側面に位置する前記開口部が接続される2つ以上の前記流体デバイスであって、前記流体デバイスの延在する面に垂直な方向の異なる位置に配置される流体デバイスを含む、流体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体デバイスと送液用のチューブとを接続するコネクタ、接続構造、および、接続方法、ならびに、上記コネクタおよび接続構造を用いて複数の流体デバイスを接続する流体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のマイクロ流体デバイスを、流路が設けられた基板の側面に設けられた流路の開口部どうしを、送液用のチューブを介して接続することにより、相互に流体接続する方法が提案されている。チューブは、マイクロ流体デバイスの開口部にコネクタを用いて接続される。例えば、非特許文献1では、複数のチューブが挿通されたコネクタであって、チューブの先端部がゴム等のシール材を貫通するように配置されたコネクタが開示されている。このコネクタは、マイクロ流体デバイスに対して接続される際、マイクロ流体デバイスの側面の導入口または吐出口に対して流路が接続されるようにチューブの先端を突き当てた状態で、マイクロ流体デバイスに対してネジ締めされる。このとき、シール材がコネクタから加えられる押圧力により変形および膨張し、マイクロ流体デバイスの流路とチューブの流路との接続部分に漏れがないように封止する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】The Dolomite Centre Ltd.(英)/Dolomite Microfluidics(米), “Linear Connectors”, [online], MAR-000026 Revision 1.5, [令和5年7月10日検索]、インターネット<URL:https://go.blacktrace.com/l/659183/2019-01-08/l2s/659183/3287/Dolomite___LinearConnectorsDatasheet___pdf.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の方法では、流路内の液体の圧力が高い場合、液漏れが発生する虞がある。例えば、非特許文献1の方法では、シール材と基板の側面との間、および、シール材とチューブの外周面との間の液体の封止が不十分となる場合がある。また、非特許文献1の方法では、複数のチューブを纏めて一つのコネクタでマイクロ流体デバイスに接続しているため、チューブとマイクロ流体デバイスとの接続部分の押圧力を個々に調整することができない。
【0005】
したがって、これらの点に着目してなされた本開示の目的は、流体デバイスと送液用のチューブとを流体デバイスの側面で接続し、かつ、液体の漏れを防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一態様であるコネクタは、内部に流路が形成された板状の流体デバイスの側面に設けられた前記流路の開口部に、流路接続用のチューブの先端部を接続するコネクタであって、前記チューブが挿通される貫通孔が形成されるとともに、前記貫通孔に沿う第1の端部に前記流体デバイスの前記側面と対向する第1面を有し、前記貫通孔に沿う前記第1の端部の反対側の第2の端部に向かって外径が小さくなるテーパー状の第2面を有するフェラルと、前記チューブが挿通される貫通孔が形成される筒状の押付部材であって、前記フェラルの前記第2面に当接可能な凹部を有する押付部材と、前記フェラルの前記第1面と前記流体デバイスの前記側面との間に配置され、前記チューブが挿通されるシール部材とを備え、前記押付部材が前記フェラルを前記流体デバイスに向けて押し付けるこ
とにより前記開口部と前記先端部とが接続されるように構成される。
【0007】
(2)上記(1)のコネクタにおいて、前記押付部材は、前記流体デバイスを固定するホルダの前記開口部に対応する位置に配置されたネジ孔に螺合するように構成されたネジ部を有し、前記押付部材は、前記ネジ部が前記ネジ孔に螺合する方向に回転することにより前記流体デバイスの方向に前進し、前記フェラルを前記流体デバイスに向けて押し付けるように構成されてよい。
【0008】
(3)上記(1)または(2)のコネクタにおいて、前記フェラルは、前記押付部材により前記流体デバイスに向って押し付けられることにより、前記シール部材を前記第1面と前記流体デバイスの前記側面との間で押圧した状態で、前記第2面に加えられる押圧力により変形して前記チューブを締め付けて固定するように構成されてよい。
【0009】
(4)上記(3)のコネクタにおいて、前記フェラルは、前記チューブを固定したとき前記フェラルと前記チューブとの間で流体を封止するように構成されてよい。
【0010】
(5)上記(1)から(4)のコネクタにおいて、前記シール部材はOリングであってよい。
【0011】
(6)本開示の一態様である接続構造は、内部に流路が形成され側面に前記流路の開口部を有する板状の流体デバイスに対して、流路接続用のチューブの先端部を接続する接続構造であって、前記流体デバイスを固定するとともに、前記開口部に対応する位置にネジ孔が配置されたホルダと、前記チューブが挿通される貫通孔が形成されるとともに、前記貫通孔に沿う第1の端部に前記流体デバイスの前記側面と対向する第1面を有し、前記貫通孔に沿う前記第1の端部の反対側の第2の端部に向かって外径が小さくなるテーパー状の第2面を有するフェラルと、前記ホルダの前記ネジ孔と螺合するネジ部を有し、前記チューブが挿通される貫通孔が形成される筒状の押付部材であって、前記フェラルの前記第2面に当接する凹部を有する押付部材と、前記チューブに挿通され、前記フェラルの前記第1面と前記流体デバイスの前記側面との間に配置されるシール部材とを備える。
【0012】
(7)本開示の一態様である接続方法は、内部に流路が形成され、側面に前記流路の開口部を有する板状の流体デバイスに対して、流路接続用のチューブの先端部を接続する接続方法であって、前記開口部に対応する位置にネジ孔が配置されたホルダにより前記流体デバイスを固定し、前記チューブを、押付部材、フェラル、および、シール部材に挿通させ、前記押付部材は、前記ホルダの前記ネジ孔と螺合するネジ部を有し、前記チューブが挿通される貫通孔が形成される筒状の押付部材であって、前記フェラルの側に凹部を有し、前記フェラルは、前記チューブが挿通される貫通孔が形成されるとともに、前記シール部材の側に前記流体デバイスの前記側面と対向する第1面を有し、前記押付部材の側の端部に向かって外径が小さくなるテーパー状の第2面を有し、前記シール部材は、前記フェラルの前記第1面と前記流体デバイスの前記側面との間に配置され、前記押付部材を前記ネジ部が前記ネジ孔に螺合する方向に回転させ、それにより、前記押付部材が前記流体デバイスの方向に前進して、前記凹部が前記フェラルの前記第2面を前記流体デバイスに向けて押し付け、前記フェラルの前記第1面が前記シール部材を前記流体デバイスの前記側面に向けて押圧した状態で、前記第2面に加えられる押圧力により前記フェラルが変形し、前記チューブを締め付けて固定する。
【0013】
(8)本開示の一多様である流体システムは、(1)に記載のコネクタ及び前記チューブを用いて互いの側面に位置する前記開口部が接続される2つ以上の前記流体デバイスであって、前記流体デバイスの延在する面に垂直な方向の異なる位置に配置される流体デバイスを含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、流体デバイスと送液用のチューブとを流体デバイスの側面で接続し、かつ、液体の漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る流体デバイスの流路とチューブとを接続する接続構造の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図1のコネクタ部分をより詳細に示す断面図である。
【
図3】流体デバイスに接続される前のコネクタの構成図である。
【
図4】流体デバイスとチューブとの接続方法を示すフローチャートである。
【
図5】流体デバイスを平面的に直列に接続した流体システムの構成図である。
【
図6】流体デバイスを立体的に直列に接続した流体システムの構成図である。
【
図7】従来技術による流体デバイスの接続形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
流路幅が500μm程度までの微小な流路を有する流体デバイスを用いて、液体どうしの混合、および/または反応等の操作を行う技術には、流路幅が数mm以上の従来技術による流体デバイスでは得られなかった種々の利点がある。例えば、混合操作においては、流路幅を従来技術の1/10にすると、その混合時間は、約1/100になることが知られている。従って従来技術では1時間を要していた操作を1分以内で完了することが可能になる。また、反応操作においては、瞬時に反応が完了するため副生成物の生成が抑制され、反応収率が格段に向上する。
【0017】
流体に対して複数段階の操作を行うため、流体デバイスを相互に接続する場合、上流側の流体デバイスの液体の吐出口を、下流側の流体デバイス導入口に順次接続する。吐出口と導入口との接続には、耐薬品性、耐熱性等、および耐圧性の観点からPEEK(Poly Ether Ether Ketone(ポリエーテルエーテルケトン))樹脂からなるチューブが比較的よく使用される。しかしながら、一般的な流体デバイスは、水平に配置した基板の基板面に対して上側の面に、導入口および吐出口が設けられる。このため、剛性が高く湾曲させにくいPEEK樹脂からなるチューブ等を使用して導入口と吐出口とを接続する場合、流体デバイスどうしの間隔を一定以上に保つことが必要になる。
【0018】
図7は、従来技術により流体デバイス110を接続した流体システムを例示している。
図7の例では、内部に流路111が形成された複数の流体デバイス110が、流体デバイス110の基板面112の上部に設けられた吐出口および導入口等の開口部を、チューブ113を用いて接続することにより、接続される。隣り合うマイクロ流体デバイス110の間隔の下限値は、上流のマイクロ流体デバイス110の吐出口115と、下流側の流体デバイス110の導入口114との間でチューブ113を180度湾曲させることができる距離により制限される。
【0019】
また、流体デバイス110どうしの間隔が広いと、反応生成物の収量を確保するため、直列に接続された流体デバイス110を、さらに並列に接続するナンバリングアップを行う場合も、高密度実装することが困難になる。さらに、流路接続用のチューブ113が長くなると、被処理液体の温度を精密に制御することが困難となるという問題点もある。
【0020】
したがって、流体デバイスの側面に液体の導入口および吐出口を設け、これらを相互に接続することは、複数の流体デバイスを接続した流体システムを、小型に構成するうえで有利である。なお、本願において流体デバイスの側面とは、マイクロ流体デバイスを構成する基板の向かい合う最も広い2つの面以外の4つの面を意味する。
【0021】
(流体デバイスとチューブの接続構造)
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
本開示の一実施形態に係る流体デバイス10と送液用のチューブ20との接続構造は、
図1に示すように、流体デバイス10を固定するホルダ30と、ホルダ30により保持された流体デバイス10とチューブ20とを接続するコネクタ40とを含む。
【0023】
流体デバイス10は、基板11と、基板11の内部に形成された流路12とを備える。
図1において基板11は、平面視において矩形の板状の部材である。ただし、基板11の形状はこれに限定されない。基板11の大きさは任意に設定できる。例えば、基板の大きさは、平面視において数cmから数十cmのオーダーとすることができる。また、基板の厚さは、数mmから数cmのオーダーとすることができる。また、基板11の材料は特に限定されず、例えば、ガラス、シリコン、シリカ、石英、樹脂、または、炭化ケイ素などを用いることができる。
【0024】
流路12は、例えば、流路幅がμmオーダーの微細なマイクロ流路である。ただし、流路12の幅は、この範囲に限られない。流路12は、上流側から下流側に向けて流体を通過させる。
図1では、流体デバイス10の上流側と下流側との間の流路12は図示せず省略している。流路12の上流側の端部には、基板11の側面13に導入口14が設けられる。流路12の下流側の端部には、基板11の側面13に吐出口15が設けられる。導入口14は、流体デバイス10に対して外部から供給される液体を受け入れる開口部である。吐出口15は、流体デバイス10の流路12を流れた流体を流体デバイス10の外部に吐出するための開口部である。
【0025】
図1に示した流体デバイス10の流路12は、例えば、上流側の3つの導入口14から流入した液体を順次混合して、反応成分を反応させて生成物を吐出口15から吐出させる。このため、3つの導入口14から繋がる流路12は順次合流して1つの流路となり、基板11内を蛇行して吐出口15に繋がるように構成されてよい。しかし、流路12の形状、ならびに、導入口14および吐出口15の数および配置等はこれに限られず、流体デバイス10が実行する混合および化学反応等の操作内容に応じて自由に設計することができる。
【0026】
流体デバイス10は、例えば、溝状の流路12が形成されたガラス基板上にガラス平板を熱融着させ、密閉空間を形成し、その後ダイサー等で所定のサイズに切断することにより作成することができる。ダイサーで切断された端面に流路12の導入口14と吐出口15とが形成される。ガラス基板への流路12の形成は、流路12の形状、すなわち、流路幅、深さ、および、長さにより種々の加工方法を選択することができる。例えば、流体デバイス10の材質がガラスであって、流路幅100μm以下の場合、エッチング加工法が用いられる。一方、流路幅が200μm以上の場合には機械加工法またはレーザ加工及びエンボス加工法が用いられる。
【0027】
図2および
図3に示すように、チューブ20は、流体デバイス10の流路12に供給される液体、および/または、流路12から排出された液体を送液する流路22を有する。チューブ20は、流体デバイス10どうし、または、流体デバイス10と、流体デバイス10に液体原料を供給する液体供給装置、または、流体デバイス10で生成された生成物を貯留するタンクとを接続する。チューブ20の流路22の径は、流体デバイス10の流路12の幅よりも大きくてよい。チューブ20の先端部21は、チューブの中心軸に対して直交する平坦な面を有してよい。
【0028】
チューブ20の材料は、使用される液体の種類、液体の温度、および、内部の流路22に加わる圧力等の種々の条件を考慮して選択することができる。チューブ20の材料としては、耐薬品性、耐熱性、および、耐圧性等に優れるPEEK樹脂、ならびに、PFA(Perfluoroalkoxy Alkane)およびPTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)等のフッ素樹脂が使用されることが多い。
【0029】
図1に示すように、ホルダ30は、それぞれ流体デバイス10の基板11の向かい合う2つの側面13の一方を収容し、基板11を挟み込んで保持する2つの保持部材31aおよび31bを有する。保持部材31aおよび31bは、PEEK樹脂等の高強度の材料により構成されてよい。保持部材31aおよび31bには、それぞれ基板11の一つの側面13を含む端部を収容する溝が形成されており、ホルダ30に基板11を固定した状態で、保持部材31aおよび31bに対して、基板11が正確に位置決めされるように構成される。
【0030】
保持部材31aおよび31bは、それぞれ溝に基板11の端部を嵌め込み、両側から基板11を挟んだ状態で、締結部材32により固定される。例えば、保持部材31aおよび31bは、溝の延在する方向の両端部であって、基板が収容される部分よりも外側に互いに対向する2組の貫通孔が設けられている。保持部材31aおよび保持部材31bは、それぞれの貫通孔を貫通する2組の長尺ボルト33a,33bと、ナット34a,34bとにより、固定される。この場合、長尺ボルト33a,33bと、ナット34a,34bは、締結部材32である。
【0031】
2つの保持部材31a,31bのそれぞれには、流体デバイス10の導入口14および/または吐出口15の位置に対応して、内側にネジ溝が形成されたネジ孔35が設けられる。ネジ孔35は、ホルダ30に流体デバイス10を固定したとき導入口14または吐出口15が位置づけられる位置から、基板11の側面13に垂直となる方向に延びる。
図2に示すように、ホルダ30のネジ孔35に対してコネクタ40を接続することにより、チューブ20の流路22が、流体デバイス10の流路12に流体接続される。
図2では、ネジ孔35の内周は全体にわたってネジ溝が形成されているが、ネジ溝はネジ孔35の一部にのみ形成されてよい。
【0032】
コネクタ40の構成を、
図2および
図3を参照して説明する。
図2は、コネクタ40がホルダ30に接続されている状態の断面図を示す。
図3は、コネクタ40をホルダ30に接続する前の状態を示す。コネクタ40は、フェラル41、押付部材42、および、シール部材であるOリング43を含んで構成される。チューブ20には、先端部21に向かって押付部材42、フェラル41およびOリング43が、この順に挿通される。コネクタ40は、この状態で、チューブ20の中心軸を中心に略回転対称な形状を有する。
【0033】
フェラル41は、略円錐または円錐台の形状を有し、平面の第1面41aと第1面41aの反対側の端部に向けて外径が小さくなるテーパー状の第2面41bとを備える。フェラル41は、円錐または円錐台形状の中心軸に沿ってチューブ20を挿通させる貫通孔41dが形成される。貫通孔41dの内径は、チューブ20の外径より僅かに大きい。フェラル41は、チューブ20が挿通された状態でチューブ20が延在する方向に摺動可能である。フェラル41は、ホルダ30に接続したとき、流体デバイス10の基板11側となる貫通孔41dの一方の端部である第1の端部に第1面41aが位置する。フェラル41の第2面は、貫通孔41dの他方の端部である第2の端部に向けて外径が漸減する形状となっている。フェラル41は、例えば、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂、ポリミド、および、グラファイト等の耐薬品性があり、かつ、圧縮により変形可能な材料で形成される。なお、フェラル41の第1面41aは、平面に限られない。例えば、第1面41aには、Oリング43を部分的に収容するための円形の溝または窪みが設けられていてもよ
い。
【0034】
押付部材42は、外周部にネジ山が形成されたネジ部42aと、ローレット加工等が施された手動回転部42bとを含む円筒状の部材である。ネジ部42aは、ホルダ30のネジ孔35に対して螺合するように構成される。押付部材42は、手動回転部42bを手動により回転させることにより、ネジ部42aがネジ孔35に螺合してホルダ30に結合する。
図2および
図3では、ネジ部42aには外周の全体にわたりネジ山が形成されているが、ネジ山は押付部材42のネジ孔35に嵌入する部分の一部にのみ形成されてよい。ネジ山が形成されていない部分も含めてネジ孔35に嵌入する部分をネジ部42aと呼ぶ。押付部材42は、中心軸に沿って、チューブ20を挿通させる貫通孔42dを有する。押付部材42がチューブ20に対して回転摺動可能なように、貫通孔42dの内径は、チューブ20の外径よりも大きい。
【0035】
押付部材42のネジ部42aのホルダ30に結合される側の先端部には、貫通孔42dの位置を中心に凹んだ凹部42cが形成される。凹部42cは、コネクタ40が、ホルダ30に接続されたとき、フェラル41の第2面41bに少なくとも部分的に当接する形状を有する。凹部42cは、フェラル41の第2面41bのテーパー形状に対応して、第2面41bが嵌合する形状を有してよい。しかし、凹部42cは、フェラル41の第2面41bが丁度接するようなテーパー形状の面を有する必要はない。凹部42cは、フェラル41の変形後の形状を考慮した形状を有してよい。また、凹部42cは、貫通孔41dの周りを周回する全方向から第2面41bに接する形状であればよい。凹部42cの形状は、ホルダ30にコネクタ40をネジ込むとき、フェラル41の第2面41bに放射方向内向きの押圧力が均等に加わる形状であればよい。
【0036】
Oリング43は、チューブ20が挿通された状態で、フェラル41の第1面側に配置される、例えばゴム等の弾性を有する環状の部材である。Oリング43は、コネクタ40がホルダ30に接続されたとき、流体デバイス10の基板11の側面13と、フェラル41の第1面41aとの間で押圧され変形および膨張する。これにより、Oリング43は、流体デバイス10の流路12とチューブ20の流路22との間を漏れがないように密閉する。なお、シール部材は、Oリング43に限られない。コネクタ40は、流体デバイス10の側面13と、フェラル41の第1面41aとの間を封止するため、ガスケットまたはゴムパッキン等の他の形態のシール部材を使用してもよい。
【0037】
(流体デバイスとチューブとを接続する方法)
次に、
図4のフローチャートを参照して、本開示のコネクタ40を使用する流体デバイス10の流路12の開口部、すなわち、導入口14または吐出口15と、チューブ20の先端部21とを接続する方法について説明する。
【0038】
まず、作業者は、ホルダ30に流体デバイス10を固定する(ステップS1)。この状態で、流体デバイス10の流路12の各開口部は、ホルダ30のネジ孔35の流体デバイス10側端部の中心と略一致する。
【0039】
作業者は、チューブ20を、押付部材42、フェラル41およびOリング43に挿通させる(ステップS2)。ステップS2はステップS1よりも前に実行されてもよい。ステップS1とステップS2との順序は問わない。
【0040】
作業者は、押付部材42の手動回転部42bを持ち、チューブ20をホルダ30のネジ孔35に通す(ステップS3)。作業者はチューブ20の先端部21を流体デバイス10の開口部の周りの側面13に突き当てる。これにより、流体デバイス10の流路12と、チューブ20の流路22とが、結合される。以下のステップS4~S7は、チューブ20
の先端部21が、流体デバイス10の側面13に突き当っている状態で実行される。
【0041】
42を
作業者は、押付部材42をホルダ30の方向に動かし、ネジ部42aをホルダ30のネジ孔35に位置合わせして、手動回転部42bを回転させネジ部42aをホルダ30のネジ孔35に羅合させる(ステップS4)。
【0042】
作業者は、押付部材42をネジ孔35に対してネジ部42aが羅合する方向に回転させて、押付部材42を流体デバイス10に向けて前進させる(ステップS5)。押付部材42が、チューブ20の先端部21の方向に前進することにより、フェラル41の第2面41bに当接すると、フェラル41も押付部材42に押されて流体デバイス10の方向に前進する。さらに、Oリング43にフェラル41の第1面41aが当接すると、Oリング43も、フェラル41に押されて流体デバイス10の方向に前進する。さらに、作業者が手動回転部42bを回転させると、Oリング43が流体デバイス10の側面13に当接する。
【0043】
作業者が、さらに、手動回転部42bを回転させることにより、押付部材42に押されたフェラル41の第1面41aと流体デバイス10の側面13との間で、Oリング43が押圧される(ステップS6)。押圧されたOリング43は、
図2に示すように変形する。Oリング43が側面13を押圧する押圧力により、Oリング43と側面13との接する部分での液体の漏れが防止される。また、同様に、Oリング43とフェラル41の第1面41aとの接する部分での液体の漏れが防止される。その結果、流体デバイス10の流路12とチューブ20の流路22の接続部分から、Oリング43の外側への液体の漏れを防止することができる。また、Oリング43は、チューブ20の外周を押圧することにより、流体デバイス10の流路12とチューブ20の流路22接続部分から、チューブ20の外周とフェラル41の貫通孔41cの内周との間への液体の漏れを防止することができる。
【0044】
作業者が、さらに、手動回転部42bを回転させることにより、フェラル41は、押付部材42により流体デバイス10に向かって押し付けられる。これにより、Oリング43を第1面41aと流体デバイス10の側面13との間で押圧した状態で、フェラル41の第2面41bに、内向きの方向の成分を有する押圧力が働く。これにより、フェラル41は、変形され、チューブ20を内向きに締め付けた状態で固定される(ステップS7)。その結果、チューブ20の外周とフェラル41の貫通孔42dとの間の漏れが防止される。なお、ステップS6によるOリング43の押圧と、ステップS7によるフェラルの変形とは、順次実行されるのではなく、並行して実行されてよい。
【0045】
以上のように、本開示のコネクタ40を用いた接続方法によれば、流体デバイス10とチューブ20との接続において、シール部材であるOリング43による封止に加え、フェラル41の変形による封止効果により、より液体漏れの発生を防止することができる。これにより、本開示のコネクタ40を用いた接続方法では、より高い圧力が流路12に加わる流体デバイス10に適用することができる。
【0046】
さらに、本開示のコネクタ40は、一つのコネクタで複数のチューブ20を接続する方式ではなく、導入口14および吐出口15等の個々の開口部とチューブ20との接続ごとに、コネクタ40を設けている。このため、個々の接続ごとに、液体の漏れが生じないように押付部材42に加えるトルクを調節および管理することが可能になる。
【0047】
また、本開示のコネクタ40では、Oリング43にチューブ20を挿通させた状態でチューブ20の先端部21を流体デバイス10の側面13に突き当てて固定している。これにより、Oリング43が動いたり膨張したりすることにより流路が狭められたり、チューブ20の先端部21が動いたりすることがない。
【0048】
(流体システム)
次に、本開示のコネクタ40を含む接続構造を用いて複数の流体デバイス10を直列的に接続した流体システム50A、50Bについて説明する。なお、以下の
図5および
図6では、ホルダ30およびコネクタ40については省略し、主として流体デバイス10とチューブ20のみを表示する。また、個々の流体デバイス10を区別するため、流体デバイス10A-10Hとして表記する。また、個々のチューブ20を区別して、チューブ20A-20Oと表記する。導入口14および吐出口15についても表示を省略する。以下において、2つ以上の流体デバイス10A-10Hは、まとめて流体デバイス10と表記される場合がある。2つ以上のチューブ20A-20Oは、まとめてチューブ20と表記される場合がある。
【0049】
図5の流体システム50Aは、同一平面上に配置された複数の流体デバイス10A-10Dと、これら流体デバイス10A-10Dに導入、および/またはこれらの流体デバイス10A-10Dから吐出される液体を送液するチューブ20A-20Iを含む。チューブ20A,20Bは、流体デバイス10Aの側面13に設けられた導入口14に接続され、例えば液体供給装置等からの液体を流体デバイス10Aに供給する。チューブ20Cは、流体デバイス10Aの側面13に設けられた吐出口15と流体デバイス10Bの側面13に設けられた導入口14とを接続し、流体デバイス10Aで処理され吐出された液体を、流体デバイス10Bに送液する。チューブ20Dは、流体デバイス10Bの側面13に設けられた導入口14に接続され、液体供給装置または他の流体デバイス10からの液体を、流体デバイス10Bに供給する。流体デバイス10B,10C,10Dは、流体デバイス10Aに類似し、チューブ20E,20Gはチューブ20Cに類似し、チューブ20F,20Hはチューブ20Dに類似するので、説明を省略する。流体デバイス10Dの吐出口15にはチューブ20Iが接続され、流体デバイス10Dで処理された後の液体の生成物を貯留用のタンク等に送液する。
【0050】
流体システム50Aは、隣り合う流体デバイス10A-10Dの対向する側面13に設けられた吐出口15と導入口14との間を、側面13に対して垂直に接続されたチューブ20C,20E、20Gにより接続する。すなわち、チューブ20C,20E,20Dは、両端部のコネクタ40が、各流体デバイス10の載置される面に沿う方向に接続される。このため、流体システム50Aでは、チューブ20C,20E,20Gを、上流側の流体デバイス10の吐出口15と下流側の流体デバイス10の導入口14との間で大きく湾曲させる必要がない。その結果、流体システム50Aでは、隣り合う流体デバイス10A-10Dの間隔を短く設定することが可能になる。さらに、隣り合う流体デバイス10A-10Dの間で、吐出口15と導入口14とをそれぞれの側面13の互いに対向する位置に配置することにより、チューブ20C,20E,20Gを直線的に配置することが可能になる。これによって、流体デバイス10A-10Dの間隔をさらに短くすることができる。
【0051】
図6の流体システム50Bは、立体的に配置された4つの流体デバイス10E-10Hと、これら流体デバイス10E-10Hに供給される液体および/またはこれら流体デバイス10E-10Hから吐出される液体を送液するチューブ20J-20Pとを含む。チューブ20J,20Kは、
図5の流体システム50Aのチューブ20A,20Bに類似し、液体供給装置等からの液体を流体デバイス10Eに供給する。チューブ20L,20M,20Oは、
図5の流体システム50Aのチューブ20C,20E,20Gと類似し、それぞれ上流側の流体デバイス10E,10F,10Gの側面13に位置する吐出口15と、下流側の流体デバイス10F,10G,10Hの側面13に位置する導入口14とに接続される。すなわち、流体デバイス10Eと10F,流体デバイス10Fと10G、および、流体デバイス10Gと10Hは、それぞれチューブ20L,20M,20Oを用いて
、互いの側面に位置する開口部が接続される。チューブ20L,20M,20Oは、それぞれ流体デバイス10E,10F,10Gで処理され、吐出された液体を、流体デバイス10F,10G,10Hに送液する。チューブ20Nは、
図5のチューブ20D,20F,20Hに類似し、チューブ20Pは、
図5のチューブ20Iに類似するので、説明を省略する。
【0052】
流体システム50Bにおいて、流体デバイス10E-10Hは、例えば、上段及び下段を有する上下2段のラックに配置されてよい。すなわち、流体デバイス10E-10Hは、水平方向のみでなく互いに対して上下方向の異なる位置に配置されてよい。上下方向は、流体デバイス10の基板11を水平に配置したとき、基板11の延在する面に垂直な方向である。例えば、流体デバイス10E,10Gは上段のラックに配置され、流体デバイス10F,10Hは下段のラックに配置される。チューブ20L,20Oは、それぞれ、上段のラックに配置される流体デバイス10E,10Gの吐出口15と、下段のラックに配置される流体デバイス10F,10Hの導入口14との間を接続する。チューブ20Mは、下段のラックに配置される流体デバイス10Fの吐出口15と、上段のラックに配置される流体デバイス10Gの導入口14との間を接続する。
【0053】
チューブ20L,20M,20Oは、何れも、流体デバイス10E-10Hの側面13に対して垂直に接続されている。そのため、チューブ20L,20M,20Oの長さは、例えば、一端を上段の流体デバイスの上面に垂直に接続され、他端を下段の流体デバイスの上面に垂直に接続され、その間でチューブを引き回す場合に比べて、短くすることができる。本発明者らが行った試作によれば、流体デバイスの従来技術による接続方法を用いて流体デバイス10を直列に接続した場合と比べ、本開示の接続構造により、流体デバイス10を上下2段に配置した場合、必要な空間長を約1/3にできることが確認された。さらに、従来技術では、基板の基板面に対してコネクタを垂直に接続するため、必然的に基板の上部に大きな空間を必要とした。一方、本開示の流体システム50Bでは、コネクタ40は、流体デバイス10の基板11に沿う方向に接続されるので、上段の流体デバイス10と下段の流体デバイスとの間隔を狭くして配置することができる。
【0054】
また、流体デバイス、特に、マイクロ流体デバイスで化学反応操作を行う場合、精密な温度制御が必要とされる。例えば、化学反応を短時間で促進するために、液体の温度を、100°Cから150°C程度に加温する場合がある。しかし、流体デバイス10を接続するチューブ20が長い場合、チューブ20内を送液される際に液体が外気温の影響を受けることがある。本開示の流体システム50Bでは、チューブ20の長さを従来技術よりも短くできるので、被処理液体の温度変化を少なくすることができる。
【0055】
なお、
図5および
図6では、直列接続される流体デバイス10の数を4つとして説明したが、流体デバイス10の数は4つに限られない。さらに多数の流体デバイス10を直列に接続することができる。また、流体デバイス10を立体的に配置する場合、流体デバイス10の高さ方向の段数は2段に限られない。流体デバイス10は、さらに多数の段数に配置することができる。また、流体システム50は、直列接続された複数の流体デバイス10の組を、さらに並列に複数配列するナンバリングアップにより、生成物の収量を増やすことが可能になる。このように、多数の流体デバイス10を配列する場合でも、本開示の流体システム50Bは、高さ方向にも流体デバイス10を配置し、かつ、流体デバイス10どうしの間隔を狭くすることができるので、比較的コンパクトに構成することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。上記実施形態のコネクタ、流体デバイス、流体デバイスの接続構造、及び流体システムの構成等は一例に過ぎない。本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜構
成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、流体デバイスの導入口14および吐出口15は、矩形の流体デバイス10の向かい合う2つの側面13に配置されていた。しかし、導入口14および吐出口15の位置はこれに限定されない。例えば、導入口14および吐出口15は、矩形の流体デバイス10の隣り合う2つの側面、3つの側面、または、4つの側面に配置されてよい。それぞれの場合、ホルダ30はそれぞれの導入口14および吐出口15の位置に応じて、コネクタ40が接続できるように構成されてよい。
【0058】
また、
図5および
図6の流体システム50A,50Bでは、類似の構造を有する流体デバイス10が複数直列に接続されていた。しかし、直列に接続される流体デバイス10は、同一または類似の構造を有する必要はない。それぞれの流体デバイス10は、それぞれ異なる構造を有してよい。
【0059】
本開示の流体デバイス10は、流路の幅がμmオーダーのマイクロ流体デバイスとして説明したが、本開示の流体デバイス10の流路の寸法はこれに限られない。流体デバイス10は、幅1mm以上の流路、または、幅1μm未満の流路を有するものであってもよい。
【0060】
上記実施形態では、流体デバイス10が実行する操作は、液体の混合および反応等とした。しかし、流体デバイス10が実行する操作はこれらに限られない。また、流体デバイス10の流路を通る流体は、液体のみに限られず気体を含んでもよい。流体デバイス10が実行する操作は、液相混合、液相反応、気液混合、気液反応、抽出、蒸留、濃縮、スラリー混合、固相抽出、粒子の分離・分液、晶析、および細胞培養等を含んでよい。
【符号の説明】
【0061】
10,10A-10H 流体デバイス
11 基板
12 流路
13 側面
14 導入口(開口部)
15 吐出口(開口部)
20,20A-20P チューブ
21 先端部
22 流路
30 ホルダ
31a,31b 保持部材
32 締結部材
33a,33b 長尺ボルト
34a、34b ナット
35 ネジ孔
40 コネクタ
41 フェラル
41a 第1面
41b 第2面
41c: 貫通孔
42 押付部材
42a ネジ部
42b 手動回転部
42c 凹部
42d 貫通孔
43 Oリング(シール部材)
50 流体システム
110 流体デバイス
111 流路
112 基板面
113 チューブ