(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002127
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】酸性ガス回収装置および酸性ガス回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20241226BHJP
B01D 53/40 20060101ALI20241226BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241226BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241226BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/40 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D61/44 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102068
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康博
(72)【発明者】
【氏名】森垣 勇人
(72)【発明者】
【氏名】村岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】村井 伸次
(72)【発明者】
【氏名】藤田 己思人
(72)【発明者】
【氏名】高田 典子
【テーマコード(参考)】
4D002
4D006
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA01
4D002AA02
4D002AA03
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4D002AA09
4D002AA12
4D002AA15
4D002AB01
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA07
4D002DA31
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4D002EA08
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4D002FA01
4D002HA08
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4D006MA14
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4D020AA03
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4D020AA10
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020BC06
4D020CB08
4D020CC09
4D020CC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱安定性アミン塩の酸成分と金属イオンを除去可能であり、廃液量が低減された酸性ガス回収装置及び回収方法を提供する。
【解決手段】酸性ガスを含有する被処理ガス101と酸性ガス吸収液とを接触させて被処理ガス中の酸性ガスを酸性ガス吸収液110dに吸収させる吸収部1aを有する吸収器1と、酸性ガス吸収後の酸性ガス吸収液111を再生する再生器2と、電気透析によって酸性ガス吸収液104から酸成分を除去して精製する酸成分除去器4と、酸性ガス吸収液中の金属イオンを陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に吸着させる金属イオン吸着器19とを具備してなり、金属イオン吸着器は陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂から金属イオンを脱離させて、再び金属イオンを吸着可能な陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂にする再生機能を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ガスを含有する被処理ガスと、アミンを含有してなる酸性ガス吸収液と、を接触させて前記被処理ガス中の酸性ガスを前記酸性ガス吸収液に吸収させる吸収部を有する吸収器と、
酸性ガス吸収後の酸性ガス吸収液から酸性ガスを回収して、前記酸性ガス吸収液を再生する再生器と、
電気透析によって、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製するとともに、前記除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する、酸成分除去器と、
前記酸性ガス吸収液を通液して、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に接触させて、前記酸性ガス吸収液中の金属イオンを前記陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に吸着させる金属イオン吸着器と、
を具備してなり、
前記金属イオン吸着器は、前記酸成分除去器から排出される酸捕集液を通液することで、前記陽イオン交換樹脂または前記キレート樹脂から金属イオンを脱離させて、再び金属イオンを吸着可能な陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂にする再生機能を有することを特徴とする、酸性ガス回収装置。
【請求項2】
前記酸成分除去器は、陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陰イオン交換膜が配置されることによって形成された二室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陰イオン交換膜の陽極側に配置された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜の陰極側に配置された第二の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室である、請求項1に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項3】
前記酸成分除去器は、陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陽極側から陰極側に向けて、陰イオン交換膜およびバイポーラ膜が、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された三室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陰イオン交換膜の陽極側に配置された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する第一の酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜と前記バイポーラ膜との間に配置された第二の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して酸成分の量が低減した精製液とする吸収液精製室であり、
前記バイポーラ膜の陰極側に配置された第三の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する第二の酸捕集室である、請求項1に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項4】
前記酸成分除去器は、陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陽極側から陰極側に向けて、陰イオン交換膜、バイポーラ膜および陽イオン交換膜が、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された四室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陰イオン交換膜の陽極側に形成された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜と前記バイポーラ膜との間に形成された第二の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室であり、
前記バイポーラ膜と前記陽イオン交換膜との間に形成された第三の室が、前記酸捕集液からアミン成分を除去するアミン除去室であり、
前記陽イオン交換膜の陰極側に形成された第四の室が、前記酸捕集液から除去されたアミン成分を回収するアミン回収室である、請求項1に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項5】
前記酸成分除去器は、陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陽極側から陰極側に向けて、陽イオン交換膜、バイポーラ膜および陰イオン交換膜が、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された四室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陽イオン交換膜の陽極側に形成された第一の室が、前記酸捕集液酸からアミン成分を除去するアミン除去室であり、
前記陽イオン交換膜と前記バイポーラ膜との間に形成された第二の室が、前記酸捕集液から除去されたアミン成分を回収するアミン回収室であり、
前記バイポーラ膜と前記陰イオン交換膜との間に形成された第三の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜の陰極側に形成された第四の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室である、請求項1に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項6】
前記再生器から排出された前記酸性ガス吸収液が、前記金属イオン吸着器に通液された後に、前記酸成分除去器に通液される、請求項1に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項7】
前記金属イオン吸着器を一つ具備してなり、
前記金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、前記金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液とが、同時に行われない、請求項1に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項8】
前記金属イオン吸着器を複数具備してなり、
同一の前記金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、同一の前記金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液とが、同時に行われない、請求項1に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項9】
同一の前記金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、同一の前記金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液とを、反復して行なう、請求項7または8に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項10】
前記吸収部から排出されるガスを洗浄液で洗浄するガス洗浄部と、このガス洗浄部から取得された洗浄液の少なくとも一部を、前記酸成分除去器に供給する流路をさらに具備する、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項11】
前記再生器から排出されるガスを冷却して凝縮液を得る凝縮部から取得された凝縮液の少なくとも一部を、前記酸成分除去器に供給する流路をさらに具備する、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項12】
下記の工程(イ)~工程(ホ)を具備してなることを特徴とする、酸性ガス回収方法。
工程(イ):酸性ガスを含有する被処理ガスと、アミンを含有してなる酸性ガス吸収液と、を接触させて前記被処理ガス中の酸性ガスを前記酸性ガス吸収液に吸収させる工程、
工程(ロ):酸性ガス吸収後の酸性ガス吸収液から酸性ガスを回収して、前記酸性ガス吸収液を再生する工程、
工程(ハ):前記工程(イ)または工程(ロ)で酸成分が蓄積した酸性ガス吸収液を、電気透析によって、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製するとともに、前記除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する、酸成分除去器と、
工程(ニ):前記酸性ガス吸収液を通液して、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に接触させて、前記酸性ガス吸収液中の金属イオンを前記陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に吸着させる金属イオン吸着工程、
工程(ホ):前記金属イオンを吸着後の陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に前記酸捕集液を通液することで、前記陽イオン交換樹脂または前記キレート樹脂から金属イオンを脱離させて、再び金属イオンを吸着可能な陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に再生する樹脂再生工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、酸性ガス回収装置および酸性ガス回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の化石燃料を使用する火力発電所や製鉄所などでは、ボイラにおいて化石燃料を燃焼させることで燃焼排ガスが発生する。一般的に、このような燃焼排ガスや、あるいは石炭をガス化した石炭ガス化ガス(ガス化ガス)、天然ガスなどは、例えば、二酸化炭素(CO2)、SOx、NOx、NOx、H2Sなどの酸性ガス成分を含んでいる。
【0003】
従来から、このような酸性ガス成分が大気中に放出されることを抑制するために、酸性ガス成分を含むガスにアミノ基含有化合物(アミン系化合物)を含む吸収液と気液接触させ、この吸収液中に酸性ガス成分を吸収させることで、処理ガスから酸性ガス成分を除去し、酸性ガス成分を回収する方法が精力的に研究されている。
【0004】
例えば、排ガスとアミノ基含有化合物を含む吸収液を接触させて、排ガス中のCO2などの酸性ガス成分を吸収液に吸収させる吸収塔と、酸性ガス成分を吸収した吸収液を加熱して吸収液から酸性ガス成分を放出させる再生塔とを備え、再生された吸収液を再び吸収塔に供給して再利用し、吸収液を吸収塔と再生塔との間の系内を循環して使用するCO2回収装置などが知られている。
【0005】
しかし、運転中にガス中のCO2を吸収する際に、SOx、NOxの他に、硫化カルボニル、シアン化水素、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸などが吸収液中のアミノ基含有化合物と反応して熱安定性アミン塩(Heat Stable Amine Salt:HSAS)と呼ばれる劣化物が生成されることがある。また、吸収液を加熱して再生する際に、熱またはガス中の酸素と反応してアミノ基含有化合物が分解することによっても熱安定性アミン塩が生成されることがある。このような熱安定性アミン塩は、再生塔で吸収液を再生する際の加熱では分解されず、吸収液から分離されないため、吸収液中に蓄積されることになる。
【0006】
このような熱安定性アミン塩が蓄積すると、吸収液の酸性ガス吸収効率が低下するのみならず、装置の腐食の原因となることから、吸収液からの熱安定性アミン塩の除去が望まれている。
【0007】
このような熱安定性アミン塩を吸収液から除去する方法としては、例えば、バイポーラ膜を用いる電気透析が知られている。また、イオン交換膜を透過しアミンの損失が発生することから、バイポーラ膜と陰イオン交換膜を組み合わせ、対向する電極間に、陰極側から陽極側に向かって、順に、アミン精製機能を有する室と、アミン回収機能を有する室と、酸回収機能を有する室との三室構造で構成された電気透析装置を用いて、電気透析により、アミンの損失を抑えながら、吸収液から熱安定性アミン塩を酸捕集液に移動させて除去する方法が考案されている。
【0008】
また、熱安定性アミン塩によって装置が腐食されると、主として装置材料に由来する金属イオンが、吸収液へと溶出することが避けがたい。これらの金属イオンは、吸収液のアミノ基含有化合物の酸化劣化を促進するとともに、さらに熱安定性アミン塩の生成速度を増加させることになる。このようなことから、金属イオン濃度が増加した場合、吸収液の金属イオン濃度を低減する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2014/077373号公報
【特許文献2】米国特許公開第2012/0235087号公報
【特許文献3】特許第6626686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
吸収液から陽イオンである金属イオンを除去する方法としては、陽イオン交換樹脂やキレート樹脂に、金属イオンを吸着させる方法がある。ここで、陽イオン交換樹脂やキレート樹脂は、金属イオンを吸着することで、通常その金属イオン吸着能が低下する。この吸着能が低下した陽イオン交換樹脂やキレート樹脂は、例えば硫酸や塩酸などを含む再生液を通液し、金属イオンを脱離させることで、再び金属イオンの吸着に用いることができるようになる。しかし、そのための再生液が必要となり、かつ通液した後の金属イオンを含む液は、その多くが廃棄処理されていた。
【0011】
また、バイポーラ膜を用いる電気透析によって、吸収液から熱安定性アミン塩を除去する方法では、熱安定性アミン塩を構成する硝酸、硫酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸である酸成分含む酸廃液が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたものであり、廃液量を低減しながら吸収液中に生成される熱安定性アミン塩の酸成分と金属イオンを除去可能であり、かつコストの増大を抑制することができる酸性ガス回収装置および酸性ガス回収方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、アミンを含有してなる酸性ガス吸収液から金属イオンならびに熱安定性アミン塩の酸成分を除去することが可能である。
【0014】
金属イオンの除去に用いられる陽イオン交換樹脂やキレート樹脂は金属イオンを吸着することによって金属イオン吸着能が低下することから、この陽イオン交換樹脂やキレート樹脂から金属イオンを脱離させること(即ち、陽イオン交換樹脂やキレート樹脂の再生)が好ましいが、この陽イオン交換樹脂やキレート樹脂の再生に、酸性ガス回収に用いられる酸捕集液(これは、熱安定性アミン塩の酸成分の蓄積により、いずれ廃液として処理されるものである)を活用できる。
【0015】
このことから、廃液として処理される酸成分が蓄積した酸捕集液を有効活用しつつ、陽イオン交換樹脂やキレート樹脂の再生のための特別な処理剤を別途用いることなしに、陽イオン交換樹脂やキレート樹脂を再生することができ、そして、再度、金属イオンの吸着に用いることができる。
【0016】
したがって、本発明の実施形態による酸性ガス回収装置および酸性ガス回収方法によれば、酸性ガス吸収液中で生成される熱安定性アミン塩の酸成分ならびに金属イオンを除去することができる。かつ、このような酸成分ならびに金属イオンの両者が低減された酸性ガス吸収液を利用できることにより、酸性ガス回収を長期間にわたって安定的かつ効率的に行うことができる。
【0017】
陽イオン交換樹脂やキレート樹脂の再生のための特別な処理剤を別途用いることなしに、酸性ガス回収装置系内部から取得しそれを有効活用できるので、酸性ガス回収装置から生じる廃液量を著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による酸性ガス回収装置の構成を示す概略図
【
図2】本発明の実施形態における酸成分除去器の構成を示す概略図
【
図3】本発明の実施形態における酸成分除去器の構成を示す概略図
【
図4】本発明の実施形態における酸成分除去器の構成を示す概略図
【
図5】本発明の実施形態における酸成分除去器の構成を示す概略図
【
図6】本発明の実施形態における酸成分除去器の構成を示す概略図
【
図7】本発明の実施形態による酸性ガス回収装置の構成を示す概略図
【
図8】本発明の実施形態による酸性ガス回収装置の構成を示す概略図
【
図9】本発明の実施形態における酸成分除去器及び金属イオン吸着器の構成を示す概略図
【
図10】本発明の実施形態における酸成分除去器及び金属イオン吸着器の構成を示す概略図
【
図11】本発明の実施形態による酸性ガス回収装置の構成を示す概略図
【
図12】本発明の実施形態による酸性ガス回収装置の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態による酸性ガス回収装置は、
[1]
酸性ガスを含有する被処理ガスと、アミンを含有してなる酸性ガス吸収液と、を接触させて前記被処理ガス中の酸性ガスを前記酸性ガス吸収液に吸収させる吸収部を有する吸収器と、
酸性ガス吸収後の酸性ガス吸収液から酸性ガスを回収して、前記酸性ガス吸収液を再生する再生器と、
電気透析によって、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製するとともに、前記除去された酸成分を捕集して酸捕集液に吸収させる、酸成分除去器と、
前記酸性ガス吸収液を通液して、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に接触させて、前記酸性ガス吸収液中の金属イオンを前記陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に吸着させる金属イオン吸着器と、
を具備してなり、
前記金属イオン吸着器は、前記酸成分除去器から排出される酸捕集液を通液することで、前記陽イオン交換樹脂または前記キレート樹脂から金属イオンを脱離させて、再び金属イオンを吸着可能な陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂にする再生機能を有することを特徴とする、酸性ガス回収装置。
[2]
前記酸成分除去器は、陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陰イオン交換膜が配置されることによって形成された二室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陰イオン交換膜の陽極側に配置された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜の陰極側に配置された第二の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室である、[1]に記載の酸性ガス回収装置。
[3]
前記酸成分除去器は、陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陽極側から陰極側に向けて、陰イオン交換膜およびバイポーラ膜が、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された三室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陰イオン交換膜の陽極側に配置された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する第一の酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜と前記バイポーラ膜との間に配置された第二の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して酸成分の量が低減した精製液とする吸収液精製室であり、
前記バイポーラ膜の陰極側に配置された第三の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する第二の酸捕集室である、[1]に記載の酸性ガス回収装置。
[4]
前記酸成分除去器は、陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陽極側から陰極側に向けて、陰イオン交換膜、バイポーラ膜および陽イオン交換膜が、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された四室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陰イオン交換膜の陽極側に形成された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜と前記バイポーラ膜との間に形成された第二の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室であり、
前記バイポーラ膜と前記陽イオン交換膜との間に形成された第三の室が、前記酸捕集液酸からアミン成分を除去するアミン除去室であり、
前記陽イオン交換膜の陰極側に形成された第四の室が、前記酸捕集液から除去されたアミン成分を回収するアミン回収室である、[1]に記載の酸性ガス回収装置。
[5]
前記酸成分除去器は、陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陽極側から陰極側に向けて、陽イオン交換膜、バイポーラ膜および陰イオン交換膜が、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された四室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陽イオン交換膜の陽極側に形成された第一の室が、前記酸捕集液酸からアミン成分を除去するアミン除去室であり、
前記陽イオン交換膜と前記バイポーラ膜との間に形成された第二の室が、前記酸捕集液から除去されたアミン成分を回収するアミン回収室であり、
前記バイポーラ膜と前記陰イオン交換膜との間に形成された第三の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜の陰極側に形成された第四の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室である、[1]に記載の酸性ガス回収装置。
[6]
前記再生器から排出された前記酸性ガス吸収液が、前記金属イオン吸着器に通液された後に、前記酸成分除去器に通液される、[1]~[5]のいずれかに記載の酸性ガス回収装置。
[7]
前記金属イオン吸着器を一つ具備してなり、
前記金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、前記金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液とが、同時に行われない、[1]~[6]のいずれかに記載の酸性ガス回収装置。
[8]
前記金属イオン吸着器を複数具備してなり、
同一の前記金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、同一の前記金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液とが、同時に行われない、[1]~[6]のいずれかに記載の酸性ガス回収装置。
[9]
同一の前記金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、同一の前記金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液とを、反復して行なう、[7]または[8]のいずれかに記載の酸性ガス回収装置。
[10]
前記吸収部から排出されるガスを洗浄液で洗浄するガス洗浄部と、このガス洗浄部から取得された洗浄液の少なくとも一部を、前記酸成分除去器に供給する流路をさらに具備する、[1]~[9]のいずれかに記載の酸性ガス回収装置。
[11]
前記再生器から排出されるガスを冷却して凝縮液を得る凝縮部から取得された凝縮液の少なくとも一部を、前記酸成分除去器に供給する流路をさらに具備する、[1]~[10]のいずれかに記載の酸性ガス回収装置。
[12]
下記の工程(イ)~工程(ホ)を具備してなることを特徴とする、酸性ガス回収方法。
工程(イ):酸性ガスを含有する被処理ガスと、アミンを含有してなる酸性ガス吸収液と、を接触させて前記被処理ガス中の酸性ガスを前記酸性ガス吸収液に吸収させる工程、
工程(ロ):酸性ガス吸収後の酸性ガス吸収液から酸性ガスを回収して、前記酸性ガス吸収液を再生する工程、
工程(ハ):前記工程(イ)または工程(ロ)で酸成分が蓄積した酸性ガス吸収液を、電気透析によって、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製するとともに、前記除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する、酸成分除去器と、
工程(ニ):前記酸性ガス吸収液を通液して、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に接触させて、前記酸性ガス吸収液中の金属イオンを前記陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に吸着させる金属イオン吸着工程、
工程(ホ):前記金属イオンを吸着後の陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に前記酸捕集液を通液することで、前記陽イオン交換樹脂または前記キレート樹脂から金属イオンを脱離させて、再び金属イオンを吸着可能な陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に再生する樹脂再生工程。
【0020】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。なお、本明細書では、主として、酸性ガスが二酸化炭素(CO2)である場合について詳細に説明するが、本実施形態は酸性ガスが二酸化炭素(CO2)である場合にのみに限定されない。また、本実施形態において酸性ガスが二酸化炭素(CO2)である場合は、「酸成分」は、熱安定性アミン化合物を形成する二酸化炭素(CO2)以外の酸であり、硝酸、硫酸、塩酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸となる。
【0021】
〔酸性ガス回収装置(その1)〕
図1は、本発明の好ましい実施形態による酸性ガス回収装置の基本構成を示す概略図である。
【0022】
図1に示される酸性ガス回収装置は、酸性ガスを含有する被処理ガス101と、アミンを含有してなる酸性ガス吸収液110dと、を接触させて前記被処理ガス101中の酸性ガスを前記酸性ガス吸収液110dに吸収させる吸収部1aを有する吸収器1と、
酸性ガス吸収後の酸性ガス吸収液111から酸性ガスを回収して、前記酸性ガス吸収液110aを再生する再生器2と、
電気透析によって、前記酸性ガス吸収液104から酸成分を除去して酸成分の量が低減した精製液105とするとともに、前記除去された酸成分を捕集して酸成分濃度が高い酸捕集液107とする、酸成分除去器4と、
前記酸性ガス吸収液104を通液して、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に接触させて、前記酸性ガス吸収液中の金属イオンを前記陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に吸着させる金属イオン吸着器19と、
を具備してなり、
前記金属イオン吸着器19は、前記酸成分除去器4から排出される酸捕集液107、106を通液することで、前記陽イオン交換樹脂または前記キレート樹脂から金属イオンを脱離させて、再び金属イオンを吸着可能な陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂にする再生機能を有するものである。
【0023】
この酸性ガス回収装置では、CO2を含有する被処理ガス(排ガス)101中のCO2を吸収する吸収液は、吸収器1と再生器2との間(以下、系内という)を循環している。吸収器1から再生器2には、排ガス101中のCO2を吸収させた吸収液(リッチ吸収液)111が送給される。リッチ吸収液111が吸収していたCO2は、再生器2において、その一部あるいはほぼ全てのCO2が分離されることによって、再びCO2を吸収可能な吸収液(リーン吸収液)110aになり、その後、110dとして吸収器1に供給される。
【0024】
なお、吸収液は、アミン系化合物(アミノ基含有化合物)と水とを含むアミン系水溶液が好適である。好ましいアミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのような第1級アミン類、ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールのような第2級アミン類、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのような第3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンのようなポリエチレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類のような環状アミン類、キシリレンジアミンのようなポリアミン類、メチルアミノカルボン酸のようなアミノ酸類などが挙げられ、これらを、1種単独で、または2種以上を用いることができる。吸収液は、これらのアミン系化合物を、通常、10~70重量%含む水溶液として使用される。また、吸収液には、必要に応じて、反応促進剤、CO2など酸性ガスの吸収性能を向上させる含窒素化合物、プラント設備の腐食を防止するための防食剤や、泡立ち防止のための消泡剤や、吸収液の劣化防止のための酸化防止剤、PH調整剤など、その他の化合物を、吸収液の効果を損なわない範囲で任意の割合で適宜含有することができる。
【0025】
被処理ガス101の典型例は、CO2を含有する排気ガスであって、例えば、火力発電所などのボイラやガスタービンなどから排出される燃焼排ガス、製鉄所で発生するプロセス排ガスなどである。被処理ガス101は、好ましくは、送風機などにより昇圧され、冷却器で冷却された後、煙道を介して吸収器1の下部から器内に供給することができる。
【0026】
図1に示される吸収器1は、排ガス101中のCO
2をリーン吸収液110dに吸収させるCO
2吸収部(酸性ガス吸収部)1aと、CO
2吸収部1aで酸性ガスが除去された被処理ガス(CO
2除去排ガス)を洗浄液121aで洗浄し、CO
2除去排ガスに同伴するアミンを回収するガス洗浄部3を有している。
【0027】
ここで、CO2吸収部1aは、好ましくは充填材で形成され、気液接触効率を高めている。CO2吸収部1aの上方には液分散器を設けることができ、吸収器1に供給されるリーン吸収液110dは、液分散器によりCO2吸収部1aに向けて分散落下する。吸収器1内に送給された排ガス101は、吸収器1の下部から塔頂(上部)側に向けて流れる。CO2吸収部1aにおいて、吸収器内を上昇する排ガス101は、リーン吸収液110dと対向流接触すると、例えば、下記式(1)、(2)のような反応が起きて、熱分解性塩(R3NH2CO2)および熱安定性アミン塩(R3NHX)が形成され、排ガス101中のCO2は、リーン吸収液110dに吸収されて、排ガス101中から除去される。
【0028】
リーン吸収液110dは、排ガス101中のCO2を吸収して、リッチ吸収液111となり、吸収器1の下部に貯留される。このリッチ吸収液111には熱分解性塩および熱安定性アミン塩が含まれる。
【0029】
リッチ吸収液111には、排ガス101に含まれる酸素との反応により生じた有機酸、排ガス101に含まれるSOx、NOx、硫化カルボニル、シアン化水素、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸などの吸収によって生じた熱安定性アミン塩が蓄積される。ここで、Rは、水素、置換または非置換のアルキル基(ヘテロ環を形成している場合もある)を示す。
R3N+CO2+H2O → R3NH2CO3 ・・・(1)
R3N+HX → R3NHX ・・・(2)
【0030】
CO2吸収部1aを通過したCO2除去排ガスは、吸収器1の内部を上昇して、ガス洗浄部3に供給される。
【0031】
ガス洗浄部3では、CO2除去排ガスを洗浄液121aで洗浄してCO2除去排ガスに同伴するアミンを回収している。本実施形態では、ガス洗浄部3でCO2除去排ガスは洗浄液洗浄液121aで洗浄される。ガス洗浄部3は、吸収器1の内部に設けられ、CO2吸収部1aよりもCO2除去排ガスのガス流れ方向の下流側である、CO2吸収部1aの上部に設けられている。ガス洗浄部3の上方には液分散器が設けられ、吸収器1に供給される洗浄液121aは液分散器によりガス洗浄部3に向けて分散落下させる。ガス洗浄部3では、CO2除去排ガスが洗浄液121aで洗浄されて、CO2除去排ガスに同伴するアミンがCO2除去排ガスから除去される。なお、ガス洗浄部3は吸収器1内に収容されているが、吸収器1の外部に設け、吸収器1と独立したガス洗浄器としてもよい。
【0032】
CO2除去排ガスと接触した後の洗浄液121aは、ガス洗浄部3の下部に設けられた洗浄液貯留部(図示せず)に貯留され、洗浄液貯留部には洗浄液循環ラインL11が連結されている。洗浄液循環ラインL11には、循環ポンプ12が設けられており、洗浄液121aは循環ポンプ12により送液され、ガス洗浄部3の上部から再び供給される。
【0033】
洗浄液121aは、酸性側であるほど洗浄効率が高く、例えば、純水や硫酸水などが用いられる。
【0034】
洗浄液121aにはCO2除去排ガス中のアミンが含まれるため、洗浄液121aがガス洗浄部3と洗浄液循環ラインL11とを循環し続けると、洗浄液121a中のアミン濃度が増え続けるため、洗浄液121aのアミン回収性能が低下することがある。ガス洗浄部3と洗浄液循環ラインL11との間を循環している洗浄液121aの一部は外部へ排出してもよく、系内の吸収液と混合してもよい。洗浄液循環ラインL11には新しい洗浄液を補充することができる。
【0035】
CO2除去排ガスは、ガス洗浄部3で浄化された後、処理後燃焼排ガス102として、吸収器1の上部から外部に排出される。
【0036】
一方、吸収器1の下部に貯留されたリッチ吸収液111は、吸収器1の下部から排出され、リッチ吸収液供給ラインL3を通って、リッチ吸収液供給ラインL3に設けられたポンプ(図示せず)により昇圧され、熱交換器9において再生器2で再生されたリーン吸収液110aと熱交換された後、再生器2に供給される。熱交換器9では、リッチ吸収液111を、リーン吸収液110aと熱交換させることにより、リーン吸収液110aが熱源となって、リッチ吸収液111が加熱される。逆に、リッチ吸収液111が冷却源となって、リーン吸収液110aが冷却される。なお、熱交換器9としては、プレート熱交換器、シェル&チューブ熱交換器などの公知の熱交換器を用いることができる。
【0037】
再生器2は、リッチ吸収液111からCO2を放出させて、リッチ吸収液111をリーン吸収液110aとして再生している。リッチ吸収液111は、再生器2内に供給され、リボイラ8で水蒸気(スチーム)により加熱されることにより、リッチ吸収液111に含まれるCO2が脱離して、リッチ吸収液111中に含まれる一部ないしほぼ全てのCO2が除去されたリーン吸収液110aとなる。
【0038】
この際、リッチ吸収液111は、水蒸気を発生すると共に、残留するCO2がCO2ガスとして放出される。発生した水蒸気およびCO2ガスは、再生器出口ガス118として再生器2から放出される。
【0039】
再生器2から排出されたリーン吸収液110aは、リーン吸収液110a用ポンプ(図示せず)によって熱交換器9を介してリーン吸収液110aとして吸収器1に供給される。
【0040】
CO2ガスは、リーン吸収液110aから同時に蒸発する水蒸気と共に、再生器2の上部から排出される。CO2ガスおよび水蒸気を含む再生器出口ガス118は、冷却器6で冷却水により冷却され、水蒸気が凝縮して水になる。そして、この凝縮水とCO2ガスを含む再生器出口ガス119は、気液分離器7に供給され、CO2ガスが凝縮水から分離され、CO2ガス103は外部に排出される。また、凝縮水120aは、気液分離器7の下部から抜き出され、再生器2の上部に供給される。
【0041】
再生器2の下部に貯留されるリーン吸収液110aは、再生器2の下部からリーン吸収液排出ラインL4から排出され、熱交換器9においてリッチ吸収液111と熱交換して冷却される。その後、リーン吸収液110aは、冷却器5で冷却された後、吸収器1に供給される。
【0042】
リーン溶液排出ラインL4から分岐し、金属イオン吸着器19および酸成分除去器4と連結した吸収液抜き出しラインL8が設けられ、吸収器1に供給されるリーン溶液110aの一部は、被処理リーン吸収液104として、金属イオン吸着器19に通液された後、酸成分除去器4の吸収液精製室10(詳細は後述)に供給される。また、酸成分除去器4とリーン溶液排出ラインL10とを連結する精製吸収液供給ラインL9が設けられていて、酸成分除去器4の吸収液精製室から排出される精製リーン溶液105は、精製吸収液供給ラインL9を通ってリーン溶液排出ラインL10に供給される。なお、
図1では液抜き出しラインL8がリーン溶液排出ラインL4から分岐する位置は、冷却器5と吸収器1との間にしており好ましいが、冷却器5よりも吸収液の流れ方向の上流側としてもよい。また、精製吸収液供給ラインL9の接続位置はリーン溶液排出ラインL10でなくてもよく、例えばリッチ吸収液供給ラインL3でもよい。
【0043】
一方、酸成分除去器4の酸捕集室11から排出される酸捕集液107は、酸捕集液タンク18を経由し、酸捕集液106の全量または一部が酸捕集室11に再循環されるか、あるいは酸捕集液106の一部は、金属イオン吸着器19に通液される。
【0044】
酸捕集液107には、酸成分除去器4によってリーン吸収液104から除去された、硫酸や硝酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸である酸成分が含まれる。
【0045】
図1に示される酸性ガス回収装置では、リーン溶液排出ラインL4から分岐し、酸成分除去器4と連結した吸収液抜き出しラインL8の途中に金属イオン吸着器19が設けられている。この金属イオン吸着器19には、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂が充填されていて、被処理リーン吸収液104が金属イオン吸着器19を通過することで、被処理リーン吸収液104中の金属イオン(例えば、鉄イオン)などが陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に吸着し、被処理リーン吸収液104中の金属イオン濃度が低下する。金属イオン濃度が低下することで、吸収液のアミノ基含有化合物の酸化劣化の促進効果が抑制される。
【0046】
金属イオン吸着器19には、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂のいずれかの少なくとも1種類が充填されており、陽イオン交換樹脂とキレート樹脂が混合されていても構わない。吸収液に蓄積する陽イオンの種類に合わせていずれの樹脂を使用しても構わないが、キレート樹脂の方が陽イオンの中での金属イオンに対する選択性が高いので、より好ましい。
【0047】
陽イオン交換樹脂としては、陽イオン交換基を有する樹脂を使用する。陽イオン(金属イオン)を吸着した陽イオン交換樹脂は、硫酸などの酸水溶液を通液することで吸着した陽イオンを除去することができ、繰り返し使用することができる。具体的には、DIAION SK104H、DIAION PK208, DIAION WK10(三菱ケミカル株式会社製、商品名)など公知の陽イオン交換樹脂を用いることができる。
【0048】
キレート樹脂としては、金属イオンとキレート構造を作る官能基を有する樹脂を使用する。金属イオンを吸着したキレート樹脂は、硫酸などの酸水溶液を通液することで吸着した陽イオンを除去することができ、繰り返し使用することができる。陽イオン交換樹脂と比較して特定の金属に対する選択性が高く、陽イオンとして存在するアミンを含む酸性ガス吸収液中の金属を除去するために、より好ましい。具体的には、DIAION CR11, DIAION CR20(三菱ケミカル株式会社製、商品名)など公知のキレート樹脂を用いることができる。
【0049】
なお、
図1では金属イオン吸着器19が酸成分除去器4の前段に設置されている。すなわち、再生器2から排出された酸性ガス吸収液104が、金属イオン吸着器19に通液された後に、酸成分除去器4に通液されるようになっている。こうすることで金属イオンをはじめとする不純物が酸成分除去器4へ導入される量が低減され、酸成分除去器4の運転の安定に好ましい。しかし、金属イオン吸着器19の設置位置はそのほかの位置でも構わず、例えば精製吸収液供給ラインL9や、リーン液供給ラインL10と吸収器1の間でも構わない。
【0050】
図1に示される酸性ガス回収装置では、金属イオン吸着器19への酸性ガス吸収液104の通液と、金属イオン吸着器19への酸成分除去器4から排出された酸捕集液108の通液とが同時に行われないようになっている。
【0051】
酸性ガス吸収液104の通液により、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に金属イオンが吸着して、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の金属イオン吸着性能が低下するが、その後、酸捕集液108を通液することで、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂から金属イオンを脱離させて、再び金属イオンを吸着可能な陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に再生することができる。すなわち、金属イオンが吸着した陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を含む金属イオン吸着器19へ処理リーン吸収液104の通液を止め、酸成分除去器4の酸捕集室11から排出される酸捕集液106の一部あるいは全部を金属イオン吸着器19へ通液することで、吸着した金属イオンを陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂から脱離することができる。その後、酸捕集液108の通液を止め、再び処理リーン吸収液104を通液することで吸収液104から金属イオンを除去することができる。
【0052】
金属イオン吸着器19へ通液する酸捕集液108の酸の種類や濃度は、酸性ガス吸収液に蓄積する酸の種類や酸成分除去器4で除去される酸成分の除去速度によって変わり、任意の種類と濃度の酸捕集液を使用できるが、酸濃度が高い方が陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を効率よく再生できるため好ましい。金属イオン吸着器19へ通液する酸捕集液108の酸濃度は例えば0.1moL/L以上ある方が好ましく、1moL/L以上であるとより好ましい。
【0053】
酸捕集液108中の酸濃度を大きくするため、酸成分除去器4において酸捕集液106の全量または一部が酸捕集室11に再循環される量や時間を調整し、酸捕集液106中の酸濃度が高い状態となるように酸成分除去器4を運転すると、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を効率よく再生できるため好ましい。
【0054】
金属イオン吸着器19への酸性ガス吸収液104の通液と、金属イオン吸着器19への酸成分除去器4から排出された酸捕集液108の通液とは、反復して行なうことができる。
【0055】
なお、酸成分除去器4の酸捕集室11に供給され、酸酸捕集室11から排出される酸捕集液107には、吸収液中のアミンの一部が漏出することがあり、酸捕集液108の酸性度を低下させる場合がある。吸収液の熱安定性塩量が多いほど、漏出アミンに対する酸成分の割合は大きくなり、酸捕集液108の酸性度が大きくなり、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率が大きくなる。そのため、吸収液の熱安定性塩量に応じて、金属イオン吸着器19の再生実施の有無を制御することで、効率よく陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を実施できる。なお、必要に応じて、酸性度が大きい酸捕集液をタンク(図示せず)に一時保管しておき、それを金属イオン吸着器19に供給して陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を実施することができる。
【0056】
酸捕集液106は、酸捕集液ラインL12から分岐して金属イオン吸着器19に供給されているが、その分岐位置はどこでも構わず、酸捕集液107から分岐しても構わない。
【0057】
また、酸捕集液108の通液後、図示しない硫酸や塩酸などの酸性液を流通させて、さらに陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を促進することができる。
【0058】
また、キレート樹脂は、酸性液による再生処理の後、さらに水酸化ナトリウム水溶液などを通液することで、金属イオン吸着性能をさらに大きくすることもできる。例えば、酸捕集液108を通液後に、図示しない水酸化ナトリウム水溶液を通液することが好ましい。
【0059】
本実施形態によれば、本来廃液となる酸捕集液108および陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生用廃液量を低減しながら、吸収液中に生成される熱安定性アミン塩の酸成分と金属イオンを除去可能であり、かつコストの増大を抑制することができる酸性ガス回収装置を提供することができる。
【0060】
〔酸成分除去器〕
本発明の実施形態による酸性ガス回収装置における酸成分除去器4の詳細について、
図4を参照してさらに説明する。
【0061】
<酸成分除去器(その1)>
酸成分除去器の好ましい一具体例としては、
陽極と、陰極と、これらの陽極と陰極との間に、陰イオン交換膜が配置されることによって形成された二室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陰イオン交換膜の陽極側に配置された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室であり、
前記陰イオン交換膜の陰極側に配置された第二の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室である、酸性ガス回収装置を挙げることができる。
このような酸成分除去器4の好ましい一具体例としては、
図2に示されるように、陽極13と、陰極14と、これらの陽極13と陰極14との間に、陰イオン交換膜15A-1が配置されることによって形成された二室(即ち、酸捕集室11aおよび吸収液精製室10a)からなる電気透析構造を具備してなるもの、を挙げることができる。
【0062】
<酸成分除去器(その2)>
上記の酸成分除去器(その1)で示される酸成分除去器4には、陰イオン交換膜15A-1と陰極14との間に、必要に応じて、バイポーラ膜17BPを配置することができる。
【0063】
図3に示される好ましい酸成分除去器4は、陽極13と、陰極14と、これらの陽極13と陰極14との間に、陽極13側から陰極14側に向けて、陰イオン交換膜15A-1およびバイポーラ膜17BPが、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された三室からなる電気透析構造を具備してなり、
【0064】
前記陰イオン交換膜15A-1の陽極13側に配置された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液104から除去された酸成分X-を捕集して酸成分濃度が高い酸捕集液107とする酸捕集室11aであり、
【0065】
前記陰イオン交換膜15A-1と前記バイポーラ膜17BPとの間に配置された第二の室が、前記酸性ガス吸収液104から酸成分X-を除去して酸成分の量が低減した精製液105とする吸収液精製室10aであり、
【0066】
前記バイポーラ膜17BPの陰極側14に配置された第三の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液104から除去された酸成分X-を捕集して酸成分濃度が高い酸捕集液107とする酸捕集室11bである、酸成分除去器を挙げることができる。
【0067】
陽極13と陰極14との間に、陰イオン交換膜(A)とバイポーラ膜(BP)とが交互に配置され(例えば、陽極13-(A)=(BP)-(A)=(BP)-(A)=(BP)-(A)=(BP)-(A)=(BP)・・・・・(A)=(BP)-陰極14のように配置され)、上記「-」の位置に酸捕集室が配置され、上記「=」の位置に吸収液精製室が配置されてなる電気透析構造を具備するものも、本発明の実施形態の酸成分除去器に該当する。
【0068】
<酸成分除去器(その3)>
上記の酸成分除去器(その1)で示される酸成分除去器4には、陽極13と陰極14との間に、必要に応じて、バイポーラ膜17BPならびに第二の陰イオン交換膜15A-2を配置することができ、バイポーラ膜17BPと第二の陰イオン交換膜15A-2との間に酸捕集室11bを配置することができ、第二の陰イオン交換膜15A-2の陰極14側に吸収液精製室10bを配置することができる。
【0069】
図4に示される好ましい酸成分除去器4は、陽極13と、陰極14と、これらの陽極13と陰極14との間に、陽極13側から陰極14側に向けて、第一の陰イオン交換膜15A-1、バイポーラ膜17BPおよび第二の陰イオン交換膜15A-2が、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された四室からなる電気透析構造を具備してなり、
【0070】
前記第一の陰イオン交換膜15A-1の陽極13側に配置された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液104から除去された酸成分X-を捕集して酸成分濃度が高い酸捕集液とする酸捕集室11aであり、
【0071】
前記第一の陰イオン交換膜15A-1と前記バイポーラ膜17BPとの間に配置された第二の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液104から酸成分X-を除去する吸収液精製室10aであり、
【0072】
前記バイポーラ膜17BPと前記第二の陰イオン交換膜15A-2との間に配置された第三の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液104から除去された酸成分X-を捕集して酸成分濃度が高い酸捕集液とする酸捕集室11bであり、
【0073】
前記第二の陰イオン交換膜15A-2の陰極14側に配置された第四の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から酸成分X-を除去する吸収液精製室10bである、酸成分除去器である。
【0074】
図4に示すように、酸成分除去器4は、陽極13、陰極14、陰イオン交換膜15A-1、15A-2、バイポーラ膜17BPを備えている。この酸成分除去器4内は、陰イオン交換膜15A-1、15A-2、バイポーラ膜17BPで、吸収液精製室10a、10b、酸捕集室11a、11bの4つの領域に区画されている。陽極13と陰極14との間には、陽極13から陰極14へ向かって、順に、陰イオン交換膜15A-1、バイポーラ膜17BP、陰イオン交換膜15A-2が配置されている。陽極13および陰極14は、電極液中に浸漬していてもよい。
【0075】
なお、本実施形態では、上記酸捕集室11a、11b、吸収液精製室10a、10bがそれぞれ2つ形成されているが、吸収液精製室および酸捕集室が1組以上形成されていればよく、さらに複数形成されていてもよい。また、吸収液精製室および酸捕集室の組み合わせが同数でなくてもよい。吸収液精製室および酸捕集室が1組以上形成されていれば、その他に酸捕集室、吸収液精製室が単独の室で存在することができる。
【0076】
バイポーラ膜17BPは、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とが積層された複合膜であり、陽極13側を陰イオン交換膜とし、陰極14側を陽イオン交換膜となるように配置される。水の存在下で水の理論分解電圧以上で電圧を印加すると、水を水素イオンと水酸化物イオンに電解することができる。具体的には、ネオセプタBP-1E(株式会社アストム製、商品名)など公知のバイポーラ膜を用いることができる。
【0077】
陰イオン交換膜15A-1、15A-2としては、陰イオンを通過させ、陽イオンの通過を遮断することができる、陰イオン交換基を有する高分子膜を使用する。陰イオン交換膜15Aとしては、例えば、4級アンモニウム基の強塩基性基に、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基などの弱塩基性官能基を有する高分子からなる膜などを用いることができる。具体的には、ネオセプタAMX、ネオセプタAHA(株式会社アストム製、商品名);セレミオンAMV、セレミオンAMT、セレミオンDSV、セレミオンASV、セレミオンAHO(AGCエンジニアリング株式会社旭硝子社製、商品名)など公知の陰イオン交換膜を用いることができる。
【0078】
吸収液精製室10aは、陰イオン交換膜15A-1とバイポーラ膜17BPとの間の領域であり、吸収液精製室10aの陽極13側に陰イオン交換膜15A-1が配置され、陰極14側にバイポーラ膜17BPが配置されている。
【0079】
酸捕集室11aは、吸収液精製室10aの陽極13側に位置し、前記陰イオン交換膜15A-1を介して設置されている。
【0080】
酸捕集室11bは、バイポーラ膜17BPと陰イオン交換膜15A-2との間の領域であり、酸捕集室11bの陽極13側にバイポーラ膜17BPが配置され、陰極14側に陰イオン交換膜15A-2が配置されている。
【0081】
吸収液精製室10bは、酸捕集室11bの陰極14側に位置し、前記陰イオン交換膜15A-2を介して設置されている。
【0082】
吸収液精製室10aおよび10bには、被処理リーン吸収液104が供給される。また、酸捕集室11aおよび11bには、酸捕集液106が供給される。
【0083】
リーン吸収液104としては、
図1に示す酸性ガス回収装置のリーン吸収液110aを用い、酸性ガス回収装置から連続的または完結的に抜き出してもよく、あるいは酸性ガス回収後の吸収液でも構わない。
【0084】
陽極13および陰極14の間に電圧が印加されると、吸収液精製室10aおよび10bでは、被処理リーン吸収液104に含まれる熱安定性アミン塩の酸成分(X-)は陰イオンであるため、陽極13側に引かれる。これにより、吸収液精製室10a中の熱安定性塩の酸成分(X-)は、吸収液精製室10aから陰イオン交換膜15A-1を通過して酸捕集室11aに移動するため、被処理リーン吸収液104から熱安定性アミン塩の酸成分(X-)が除去され、酸捕集液106に熱安定性アミン塩の酸成分が蓄積する。
【0085】
そして、吸収液精製室10b中の熱安定性塩の酸成分(X-)は、吸収液精製室10bから陰イオン交換膜15A-2を通過して酸捕集室11bに移動するため、被処理リーン吸収液104から熱安定性アミン塩の酸成分(X-)が除去され、酸捕集室11bの酸捕集液107が酸捕集液106として酸成分除去器に循環されるにしたがって、酸捕集液106に熱安定性アミン塩の酸成分(X-)が蓄積する。
【0086】
また、バイポーラ膜17BPでは、膜内部で水の電気分解が起きて、水素イオン(H+)はバイポーラ膜17BPの陽イオン交換膜側(陰極14側)、水酸化物イオン(OH-)はバイポーラ膜17BPの陰イオン交換膜側(陽極13側)に移動する。そのため、水酸化物イオン(OH-)はバイポーラ膜17BPから吸収液精製室10aに移動し、水素イオン(H+)はバイポーラ膜17BPから酸捕集室11bに移動するため、水酸化物イオン(OH-)が吸収液精製室10aに供給され、酸捕集液106に水素イオン(H+)が供給される。
【0087】
吸収液精製室10aおよび10bから排出されたリーン吸収液105は、酸性ガス回収装置に供給してもよく、吸収液精製室10aおよび10bに再び循環供給してさらに熱安定性アミン塩の酸成分を除去しても構わない。また、別途設置した吸収液タンクを介して運転しても構わない。
【0088】
酸捕集室11aおよび11bから排出された酸捕集液107は、酸捕集室11aおよび11bに再び循環供給される。別途設置する酸捕集液タンクを介して循環運転しても構わない。
【0089】
このようにリーン吸収液104から熱安定性アミン塩の酸成分(X-)が除去される。
熱安定性アミン塩の酸成分(X-)としては、硫酸や硝酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸が挙げられ、酸捕集液107には、リーン吸収液104から除去された、硫酸や硝酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸である酸成分が含まれる。
【0090】
酸捕集液107中に含まれる酸の種類や濃度は、酸性ガス吸収液に蓄積する酸の種類や酸成分除去器4での酸成分の除去速度によって変わり、任意の種類と濃度に設定できる。酸捕集液中の酸成分濃度が高い方が、
図1の金属イオン吸着器19に通液した場合に、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を効率よく再生できるため好ましい。金属イオン吸着器19へ通液する酸捕集液の酸成分の酸濃度は0.1moL/L以上ある方が好ましく、1moL/L以上であるとより好ましい。
【0091】
酸捕集液107中の酸濃度を大きくするため、酸成分除去器4において酸捕集液107の全量または一部が酸捕集室11に再循環される量や時間を調整し、酸濃度が高い状態となるように酸成分除去器4を運転すると、金属イオン吸着器19へ通液した場合、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を効率よく再生できるため好ましい。
【0092】
<酸成分除去器(その4)>
本発明の実施形態による酸性ガス回収装置における酸成分除去器4について、
図5を参照してさらに説明する。
【0093】
図5に示される酸成分除去器4は、陽極13と、陰極14と、これらの陽極13と陰極14との間に、陽極13側から陰極側に向けて、陰イオン交換膜15A、バイポーラ膜17BPおよび陽イオン交換膜16Cが、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された四室からなる電気透析構造を具備してなり、
前記陰イオン交換膜15Aの陽極13側に形成された第一の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室11aであり、
前記陰イオン交換膜15Aと前記バイポーラ膜17BPとの間に形成された第二の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室10aであり、
前記バイポーラ膜17BPと前記陽イオン交換膜16Cとの間に形成された第三の室が、前記酸捕集液酸からアミン成分を除去するアミン除去室11bであり、
前記陽イオン交換膜16Cの陰極14側に形成された第四の室が、前記酸捕集液から除去されたアミン成分を回収するアミン回収室10bである、酸成分除去器である。
【0094】
図5に示すように、酸成分除去器4は、陽極13、陰極14、陽イオン交換膜16C、陰イオン交換膜15A、バイポーラ膜17BPを備えている。この酸成分除去装置4内は、陽イオン交換膜16C、陰イオン交換膜15A、バイポーラ膜17BPで、吸収液精製室10a、アミン回収室10b、酸捕集室11a、アミン除去室11bの4つの領域に区画されている。陰極14と陽極13との間には、陽極13から陰極14へ向かって、順に、陰イオン交換膜15A、バイポーラ膜17BP、陽イオン交換膜16C、が配置されている。陰極14、陽極13は電極液中に浸漬させていてもよい。
【0095】
なお、本実施形態では、上記酸捕集室11a、吸収液精製室10a、アミン除去室11b、およびアミン回収室10bがそれぞれ1つ形成されているが、吸収液精製室および酸捕集室が1組以上、アミン除去室およびアミン回収室が1組以上形成されていればよく、さらに複数形成されていてもよい。また、吸収液精製室および酸捕集室の組み合わせと、アミン除去室およびアミン回収室の組み合わせの数が同数でなくてもよい。吸収液精製室および酸捕集室が1組以上、アミン除去室およびアミン回収室が1組以上形成されていれば、その他酸捕集室、吸収液精製室、アミン除去室、およびアミン回収室が単独の室で存在しても構わない。
【0096】
吸収液精製室10aは、陰イオン交換膜15Aとバイポーラ膜17BPとの間の領域であり、吸収液精製室10aの陽極側に陰イオン交換膜15Aが配置され、陰極側にバイポーラ膜17BPが配置されている。
【0097】
酸捕集室11aは、吸収液精製室10aの陽極側に位置し、前記陰イオン交換膜15Aを介して設置されている。
【0098】
アミン除去室11bは、バイポーラ膜17BPと陽イオン交換膜16Cとの間の領域であり、アミン除去室11bの陽極側にバイポーラ膜17BPが配置され、陰極側に陽イオン交換膜16Cが配置されている。
【0099】
アミン回収室10bは、アミン除去室11bの陰極側に位置し、前記陽イオン交換膜16Cを介して設置されている。
【0100】
吸収液精製室10aおよびアミン回収室10bは、被処理リーン吸収液104が供給される。また、酸捕集室11aおよびアミン除去室11bは、酸捕集液106が供給される。
【0101】
リーン吸収液104としては
図1に示す酸性ガス回収装置で使用されたリーン吸収液110aを用い、酸性ガス回収装置から連続的または完結的に抜き出してもよく、あるいは酸性ガス回収装置使用後の吸収液でも構わない。
【0102】
陽極13および陰極14の間に電圧が印加されると、吸収液精製室10aでは、被処理リーン吸収液104に含まれる熱安定性アミン塩の酸成分(X-)は陰イオンであるため、陽極13側に引かれる。これにより、吸収液精製室10a中の熱安定性塩の酸成分(X-)は、吸収液精製室10aから陰イオン交換膜15Aを通過して酸捕集室11aに移動するため、被処理リーン吸収液104から熱安定性アミン塩の酸成分(X-)が除去され、酸捕集液106に熱安定性アミン塩の酸成分が蓄積する。
【0103】
また、バイポーラ膜17BPでは、膜内部で水の電気分解が起きて、水素イオンはバイポーラ膜17BPの陽イオン交換膜側(陰極14側)、水酸化物イオンはバイポーラ膜17BPの陰イオン交換膜側(陽極13側)に移動する。そのため、水酸化物イオンはバイポーラ膜17BPから吸収液精製室10aに移動し、水素イオンはバイポーラ膜17BPから酸捕集室11aに移動するため、水酸化物イオンが吸収液精製室10aに供給され、酸捕集液106に水素イオンが供給される。
【0104】
吸収液精製室10aから排出されたリーン吸収液105は、酸性ガス回収装置に供給してもよく、吸収液精製室10aに再び循環供給してさらに熱安定性アミン塩の酸成分を除去しても構わない。また、別途設置した吸収液タンクを介して運転しても構わない。
【0105】
酸捕集室11aから排出された酸捕集液107は、酸捕集室11aに再び循環供給される。別途設置する酸捕集液タンクを介して循環運転しても構わない。
【0106】
このようにリーン吸収液から熱安定性アミン塩の酸成分は除去されるが、一方で吸収液精製室10aのリーン吸収液104中のアミンもイオン交換膜を通過し酸捕集液に移動し、酸捕集液にアミンが蓄積する。
【0107】
酸捕集液107は酸成分除去装置4に酸捕集液106として循環供給されるため、
アミン除去室11bでは、酸捕集液106に含まれるアミン成分のうち陽イオンとなっているアミン(R3NH+)(R=水素または、置換または非置換のアルキル基。ヘテロ環を形成しても構わない。)は、陰極14側に引かれる。これにより、アミン除去室11b中のアミン(R3NH+)は、アミン除去室11bから陽イオン交換膜16Cを通過してアミン回収室10bへ移動し、液105がリーン吸収液104として酸成分除去器に循環されるにしたがってリーン吸収液104にアミン(R3NH+)が蓄積することで、酸捕集液へ移動して損失となっていたアミンを回収できるので、アミンの損失量を低減することができる。
【0108】
熱安定性アミン塩の酸成分(X-)としては、硫酸や硝酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸が挙げられ、酸捕集液107には、リーン吸収液104から除去された、硫酸や硝酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸である酸成分が含まれる。
【0109】
図1に示した金属イオン吸着器19の再生では、酸捕集液の酸性度が大きい方が陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率が大きくなる。酸捕集液107にアミンが蓄積していると酸捕集液の酸性度は低下するが、本実施形態における酸捕集液107はアミンが除去されるため、酸性度は大きくなる。そのため、本実施形態の酸捕集液107を
図1に示した金属イオン吸着器19の再生に用いることで、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率が大きくなり、好ましい。酸捕集液107中に含まれる酸の種類や濃度は、吸収液に蓄積する酸の種類や酸成分除去器4での酸成分の除去速度によって変わり、任意の種類と濃度に設定できる。酸捕集液中の酸成分濃度が高い方が、
図1の金属イオン吸着器19に通液した場合に、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を効率よく再生できるため好ましい。金属イオン吸着器19へ通液する酸捕集液の酸成分の酸濃度は0.1moL/L以上ある方が好ましく、1moL/L以上であるとより好ましい。
【0110】
酸捕集液107中の酸成分の酸濃度を大きくするため、酸成分除去器4において酸捕集液107の全量または一部が酸捕集室11に再循環される量や時間を調整し、酸濃度が高い状態となるように酸成分除去器4を運転すると、金属イオン吸着器19へ通液した場合、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を効率よく再生できるため好ましい。
【0111】
<酸成分除去器(その5)>
本発明の実施形態による酸性ガス回収装置における酸成分除去器4について、
図6を参照してさらに説明する。
【0112】
図6に示すように、前記酸成分除去器4は、陽極13と、陰極14と、これらの陽極13と陰極14との間に、陽極13側から陰極14側に向けて、陽イオン交換膜16C、バイポーラ膜17BPおよび陰イオン交換膜15Aが、この順番で、それぞれ離間して配置されることによって形成された四室からなる電気透析構造を具備してなり、
【0113】
前記陽イオン交換膜16Cの陽極13側に形成された第一の室が、前記酸捕集液酸からアミン成分を除去するアミン除去室11bであり、
【0114】
前記陽イオン交換膜16Cと前記バイポーラ膜17BPとの間に形成された第二の室が、前記酸捕集液から除去されたアミン成分を回収するアミン回収室10bであり、
【0115】
前記バイポーラ膜17BPと前記陰イオン交換膜15Aとの間に形成された第三の室が、前記酸成分を含む酸性ガス吸収液から除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する酸捕集室11aであり、
【0116】
前記陰イオン交換膜15Aの陰極14側に形成された第四の室が、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製する吸収液精製室10aである、酸性ガス回収装置である。
【0117】
図6に示すように、酸成分除去装置4は、陽極13、陰極14、陽イオン交換膜16C、陰イオン交換膜15A、バイポーラ膜17BPを備えている。この酸成分除去装置4内は、陽イオン交換膜16C、陰イオン交換膜15A、バイポーラ膜17BPで、吸収液精製室10a、アミン回収室10b、酸捕集室11a、アミン除去室11bの4つの領域に区画されている。陰極14と陽極13との間には、陽極13から陰極14へ向かって、順に、陽イオン交換膜16C、バイポーラ膜17BP、陰イオン交換膜15A、が配置されている。陰極14、陽極13は電極液中に浸漬させていてもよい。
【0118】
なお、本実施形態では、上記酸捕集室11a、吸収液精製室10a、アミン除去室11b、およびアミン回収室10bがそれぞれ1つ形成されているが、吸収液精製室および酸捕集室が1組以上、アミン除去室およびアミン回収室が1組以上形成されていればよく、さらに複数形成されていてもよい。また、吸収液精製室および酸回収室の組み合わせと、アミン除去室およびアミン回収室の組み合わせの数が同数でなくてもよい。吸収液精製室および酸捕集室が1組以上、アミン除去室およびアミン回収室が1組以上形成されていれば、その他に酸捕集室、吸収液精製室、アミン除去室、およびアミン回収室が単独の室で存在しても構わない。
【0119】
酸捕集室11aは、陰イオン交換膜15Aとバイポーラ膜17BPとの間の領域であり、酸捕集室11aの陽極側にバイポーラ膜17BPが配置され、陰極側に陰イオン交換膜15Aが配置されている。
【0120】
吸収液精製室10aは、酸捕集室11aの陰極側に位置し、前記陰イオン交換膜15Aを介して設置されている。
【0121】
アミン回収室10bは、バイポーラ膜17BPと陽イオン交換膜16Cとの間の領域であり、アミン回収室10bの陽極側に陽イオン交換膜16Cが配置され、陰極側にバイポーラ膜17BPが配置されている。
【0122】
アミン除去室11bは、アミン回収室10bの陽極側に位置し、前記陽イオン交換膜16Cを介して設置されている。
【0123】
吸収液精製室10aおよびアミン回収室10bは、被処理リーン吸収液104が供給される。また、酸捕集室11aおよびアミン除去室11bは、濃縮液106が供給される。
【0124】
リーン吸収液104としては
図1に示す酸性ガス回収装置で使用されたリーン吸収液110aを用い、酸性ガス回収装置から連続的または完結的に抜き出してもよく、あるいは酸性ガス回収装置使用後の吸収液でも構わない。
【0125】
両電極に電圧が印加されると、吸収液精製室10aでは、被処理リーン吸収液104に含まれる熱安定性アミン塩の酸成分(X-)は陰イオンであるため、陽極13側に引かれる。これにより、吸収液精製室10a中の熱安定性塩の酸成分(X-)は、吸収液精製室10aから陰イオン交換膜15Aを通過して酸捕集室11aに移動するため、被処理リーン吸収液104から熱安定性アミン塩の酸成分(X-)が除去され、濃縮液106に熱安定性アミン塩の酸成分が蓄積する。
【0126】
また、バイポーラ膜17BPでは、膜内部で水の電気分解が起きて、水素イオンはバイポーラ膜17BPの陽イオン交換膜側(陰極14側)、水酸化物イオンはバイポーラ膜17BPの陰イオン交換膜側(陽極13側)に移動する。そのため、水酸化物イオンはバイポーラ膜17BPからアミン回収室10bに移動し、水素イオンはバイポーラ膜17BPから酸捕集室11aに移動するため、水酸化物イオンがリーン吸収液104に供給され、濃縮液106に水素イオンが供給される。
【0127】
吸収液精製室10aから排出されたリーン吸収液105は、酸性ガス回収装置に供給してもよく、吸収液精製室10aに再び循環供給してさらに熱安定性アミン塩の酸成分を除去しても構わない。また、別途設置した吸収液タンクを介して運転しても構わない。
【0128】
酸捕集室11aから排出された濃縮液107は、酸捕集室11aに再び循環供給される。別途設置する濃縮液タンクを介して循環運転しても構わない。
【0129】
このようにリーン吸収液から熱安定性アミン塩の酸成分は除去されるが、一方で吸収液精製室10aのリーン吸収液104中のアミンもイオン交換膜を通過し濃縮液に移動し、濃縮液にアミンが蓄積する。
【0130】
濃縮液107は酸成分除去装置4に濃縮液106として循環供給されるため、アミン除去室11bでは、濃縮液106に含まれるアミン成分のうち陽イオンとなっているアミン(R3NH+)(R=水素または、置換または非置換のアルキル基。ヘテロ環を形成しても構わない。)は、陰極14側に引かれる。これにより、アミン除去室11b中のアミン(R3NH+)は、アミン除去室11bから陽イオン交換膜16Cを通過してアミン除去室11bに移動し、リーン吸収液104にアミン(R3NH+)が蓄積することで、濃縮液へ移動して損失となっていたアミンが回収され損失量を低減することができる。
【0131】
熱安定性アミン塩の酸成分(X-)としては、硫酸や硝酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸が挙げられ、酸捕集液107には、リーン吸収液104から除去された、硫酸や硝酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸である酸成分が含まれる。
【0132】
図1に示した金属イオン吸着器19の再生では、酸捕集液の酸性度が大きい方が陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率が大きくなる。酸捕集液107にアミンが蓄積していると酸捕集液の酸性度は低下するが、本実施形態における酸捕集液107はアミンが除去されるため、酸性度は大きくなる。そのため、本実施形態の酸捕集液107を
図1に示した金属イオン吸着器19の再生に用いることで、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率が大きくなり、好ましい。酸捕集液107中に含まれる酸の種類や濃度は、吸収液に蓄積する酸の種類や酸成分除去器4での酸成分の除去速度によって変わり、任意の種類と濃度に設定できる。酸捕集液中の酸成分濃度が高い方が、
図1の金属イオン吸着器19に通液した場合に、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を効率よく再生できるため好ましい。金属イオン吸着器19へ通液する酸捕集液の酸成分の酸濃度は0.1moL/L以上ある方が好ましく、1moL/L以上であるとより好ましい。
【0133】
酸捕集液107中の酸成分の酸濃度を大きくするため、酸成分除去器4において酸捕集液107の全量または一部が酸捕集室11に再循環される量や時間を調整し、酸濃度が高い状態となるように酸成分除去器4を運転すると、金属イオン吸着器19へ通液した場合、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂を効率よく再生できるため好ましい。
【0134】
〔酸性ガス回収装置(その2)〕
図7は、本発明の好ましい実施形態による酸性ガス回収装置の基本構成を示す概略図である。
【0135】
この酸性ガス回収装置においては、処理リーン吸収液104が、金属イオン吸着器19を通過することなく酸成分除去器4に供給されるように、バイパスラインL15が設けられている。こうすることで、金属イオンを吸着して金属イオン吸着性能が低下した金属イオン吸着器19を再生するために酸捕集液108を通液している際に、処理リーン吸収液104をバイパスラインL15を通過して酸成分除去部4へ供給することができるようになっている。
【0136】
したがって、この酸性ガス回収装置では、酸捕集液108を陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生のために金属イオン吸着器19へ通液しているときであっても、処理リーン吸収液104をバイパスラインL15を通じ酸成分除去部4へ供給することができるので、酸成分除去部4における酸成分除去を中断することなく連続的に実施することができる。
【0137】
〔酸性ガス回収装置(その3)〕
本発明の実施形態による酸性ガス回収装置の好ましい具体例としては、金属イオン吸着器を複数具備してなるものであって、
同一の前記金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、
同一の前記金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液とが、
同時に行われないようになっているものを挙げることができる。
【0138】
図8および
図9は、金属イオン吸着器を二つ具備する酸成分除去装置の基本構成を示す概略図であり、
図10(イ)および
図10(ロ)は、本装置の運転を示す概略図である。なお、3つ以上の金属イオン吸着器を設けて、リーン吸収液と酸捕集液の供給を任意に分けて構わない。また、
図8に示された場所以外に設置されていても構わない。
【0139】
図8~
図10に示される酸性ガス回収装置は、金属イオン吸着器を二つ具備する酸性ガス回収装置であって、具体的には、第一の金属イオン吸着器19の他に、第二の金属イオン吸着器20が設けられていて、一方の金属イオン吸着器19に処理リーン吸収液104が通液されているときは、残りの金属イオン吸着器20には、酸成分除去器4から排出された酸捕集液108が通液されるようになっている。また、一方の金属イオン吸着器19に酸捕集液108が通液されているときは、残りの金属イオン吸着器20には、酸成分除去器4から排出された処理リーン吸収液104が通液されるようになっている。
【0140】
こうすることで、一方の金属イオン吸着器で陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を行っているときでも、残りの金属イオン吸着器において、処理リーン吸収液104から金属イオンを除去することが可能となる。したがって、処理リーン吸収液104から金属イオンを除去しながら、残りの金属イオン吸着器において陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を行うことができる。すなわち、酸成分除去部4における酸成分除去を中断することなく、金属イオンの陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂への金属イオン吸着と、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂からに金属イオンの脱離とを、同時に実施することできる。
【0141】
図10(イ)には、酸成分除去部4における酸成分除去を中断することなく、金属イオン吸着器19において金属イオン吸着を行ない、金属イオン吸着器20において陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を行なうことが示されている。
図10(ロ)には、酸成分除去部4における酸成分除去を中断することなく、金属イオン吸着器20において金属イオン吸着を行ない、金属イオン吸着器19において陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を行なうことが示されている。
【0142】
このような金属イオン吸着器を複数具備する酸成分除去装置においては、
同一の前記金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、
同一の前記金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液とを、
反復して行なうことによって、複数の金属イオン吸着器において、それぞれの陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を行うことができ、そして、それぞれの金属イオン吸着器において金属イオンの吸着を行うことができる。
【0143】
例えば、
図10(イ)に示されるように、同一の金属イオン吸着器(金属イオン吸着器19)への酸性ガス吸収液の通液と、
図10(ロ)に示されるように、同一の金属イオン吸着器(金属イオン吸着器19)への酸捕集液の通液とを、反復して行なうことによって、複数の金属イオン吸着器において、それぞれの陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生を行うことができ、かつそれぞれの金属イオン吸着器において金属イオンの吸着を行うことができる。
【0144】
また、金属イオン吸着器への前記酸性ガス吸収液の通液と、残りの金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液は、同時で無くてもよく、金属イオン吸着器へ前記酸性ガス吸収液を通液している間に、金属イオン吸着器への前記酸成分除去器から排出された酸捕集液の通液を停止していても構わない。
【0145】
〔酸性ガス回収装置(その4)〕
図11は、本発明の好ましい実施形態による酸性ガス回収装置の基本構成を示す概略図である。
【0146】
この酸性ガス回収装置は、
図1に示される各構成に加えて、
前記吸収部1aから排出されるガスを洗浄液121aで洗浄するガス洗浄部3と、
このガス洗浄部3から取得された洗浄液の少なくとも一部121bを、前記酸成分除去器4に供給する流路L16をさらに具備する。
【0147】
こうすることで、酸捕集液106として使用する液使用量を削減でき、廃液量をさらに低減することができる。
【0148】
ガス洗浄部3の洗浄液121bはアミンを含有する。そのため、酸捕集液106,107として使用する場合に、酸性度が小さくなり、金属イオン吸着器19の再生に用いた場合の陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率は小さくなる。本実施形態における酸成分除去器として、酸成分除去器(その4)または酸成分除去器(その5)を用いることで、酸捕集液106,107中のアミンが回収されるため酸捕集液106,107の酸性度は大きくなるため、酸捕集液106,107を金属イオン吸着器19の再生に用いることで、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率が大きくなり、より好ましい。
【0149】
〔酸性ガス回収装置(その5)〕
図12は、本発明の好ましい実施形態による酸成分除去装置の基本構成を示す概略図である。
【0150】
この酸性ガス回収装置は、
図1に示される各構成に加えて、
前記再生器2から排出されるガス118を冷却して凝縮液を得る凝縮部6から取得された凝縮液119の少なくとも一部120bを、前記酸成分除去器4に供給する流路L17をさらに具備する。
【0151】
こうすることで、酸捕集液106として使用する液使用量を削減でき、廃液量をさらに低減することができる。
【0152】
凝縮液119は二酸化炭素やアミンを含有する。そのため、酸捕集液106,107として使用する場合に、アミンを含有する分だけ酸性度が小さくなり、金属イオン吸着器19の再生に用いた場合の陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率は小さくなる。本実施形態における酸成分除去器として、酸成分除去器(その4)または酸成分除去器(その5)を用いることで、酸捕集液106,107中のアミンが回収されるため酸捕集液106,107の酸性度は大きくなるため、酸捕集液106,107を金属イオン吸着器19の再生に用いることで、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂の再生効率が大きくなり、より好ましい。
【0153】
〔酸成分の除去方法〕
本発明の実施形態による酸性ガス回収方法は、下記の工程(イ)~工程(ホ)を具備してなることを特徴とする。
【0154】
工程(イ):酸性ガスを含有する被処理ガスと、アミンを含有してなる酸性ガス吸収液と、を接触させて前記被処理ガス中の酸性ガスを前記酸性ガス吸収液に吸収させる工程、
工程(ロ):酸性ガス吸収後の酸性ガス吸収液から酸性ガスを回収して、前記酸性ガス吸収液を再生する工程、
工程(ハ):前記工程(イ)または工程(ロ)で酸成分が蓄積した酸性ガス吸収液を、電気透析によって、前記酸性ガス吸収液から酸成分を除去して精製するとともに、前記除去された酸成分を酸捕集液に吸収させて捕集する、酸成分除去器と、
工程(ニ):前記酸性ガス吸収液を通液して、陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に接触させて、前記酸性ガス吸収液中の金属イオンを前記陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に吸着させる金属イオン吸着工程、
工程(ホ):前記金属イオンを吸着後の陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に前記酸捕集液を通液することで、前記陽イオン交換樹脂または前記キレート樹脂から金属イオンを脱離させて、再び金属イオンを吸着可能な陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に再生する樹脂再生工程。
【0155】
このような本発明の実施形態による酸性ガス回収方法は、上述および各図面等で詳述された本発明の実施形態による酸性ガス回収装置において実施することができる。
【0156】
尚、本発明の酸性ガス回収方法は、
図1~
図12に示された各種の装置等において実現される各種の操作ないし工程が実施される酸性ガス回収方法も、実施形態として包含する。
【0157】
工程(ニ)と工程(ホ)は同時に実施されても構わない。
【0158】
また、工程(ハ)では吸収液の熱安定性塩量が多いほど、漏出アミンに対する酸成分の割合は大きくなり、酸捕集液の酸性度が大きくなるため、吸収液の熱安定性塩量に応じて、工程(ホ)実施の有無を制御することで、効率よい樹脂再生が実施できる。また、酸性度が大きい酸捕集液を捕集液タンクに一時保管し、金属イオン吸着性能が低下した場合に、図示しない捕集液タンクからの酸捕集液を用いて工程(ホ)を実施しても構わない。
【0159】
酸捕集液108は、酸捕集液ラインL12から分岐して供給されているが、その分岐位置はどこでも構わず、酸捕集液107から分岐しても構わない。
【0160】
以下、本発明の実施例と比較例を説明する。
30wt%モノエタノールアミン水溶液に、鉄イオンが100 mg/Lとなるよう鉄イオンを添加することで、アミン吸収液Aを調製した。キレート樹脂(DIAION CR11、三菱ケミカル株式会社製)にこれ以上鉄イオンが吸着できなくなるまで、アミン吸収液Aを通液し、鉄イオンが吸着したキレート樹脂を得た。
【0161】
30wt%モノエタノールアミン水溶液に、硫酸が3000 mg/Lとなるよう硫酸を添加することで、アミン吸収液Bを調製した。酸成分除去器(その3)の構造を持つ電気透析装置を用いて、アミン吸収液Bから硫酸を除去し、除去した硫酸を含む酸捕集液を得た。
【0162】
実施例として、吸着したキレート樹脂にキレート樹脂の体積の4倍の酸捕集液を通液後、キレート樹脂体積の3倍の1moL/L水酸化ナトリウム水溶液を通液した。その後、キレート樹脂体積の3倍の脱イオン水を通液しキレート樹脂を洗浄した。洗浄したキレート樹脂に、アミン吸収液Aを通液したところ、アミン吸収液A中の鉄イオンが除去された。
【0163】
比較例として、吸着したキレート樹脂にキレート樹脂体積の4倍の脱イオン水を通液後、キレート樹脂体積の3倍の1moL/L水酸化ナトリウム水溶液を通液した。その後、キレート樹脂体積の3倍の脱イオン水を通液しキレート樹脂を洗浄した。洗浄したキレート樹脂に、アミン吸収液Aを通液したが、アミン吸収液A中の鉄イオンは除去されなかった。
【0164】
以上、本発明のいくつかの実施形態による酸成分除去装置、除去方法を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更あるいは付加等を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0165】
1:吸収器、2:再生器、4:酸成分除去器、18:気液分離器、13:陽極、14:陰極、15A-1:第一の陰イオン交換膜、16C:陽イオン交換膜、17BP:バイポーラ膜、15A-2:第二の陰イオン交換膜、11a:酸回収室、10a:吸収液精製室、11b:酸回収室、10b:吸収液精製室、19:金属イオン吸着器、20:第2の金属イオン吸着器