(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021374
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】布地の移染防止フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/40 20060101AFI20250205BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250205BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20250205BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B27/36
B32B7/06
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023145668
(22)【出願日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】112128714
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523342908
【氏名又は名称】博楓科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】姚 明賢
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA09B
4F100AA17B
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AA21B
4F100AB10B
4F100AB17B
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4F100AG00H
4F100AK04C
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4F100JN13H
4F100JN22A
4F100JN22H
4F100JN26A
(57)【要約】
【課題】 布地の移染防止フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明により提供される布地に貼着するための布地の移染防止フィルムは、表層と、バリア層アセンブリとを含み、前記表層はポリウレタン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー素材のフィルムであり、前記バリア層アセンブリは染料を遮断できるバリア層を有し、前記表層と結合する。前記フィルムが布地に貼着された時、前記バリア層は布地と前記表層との間に位置することで、布地の色が前記表層に移ることを遮断する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)或いは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)のフィルム材であり、反対側に位置する第1表面と第2表面とを有する表層と、
染料を遮断できるバリア層を有し、前記表層の前記第2表面と結合するバリア層アセンブリと
を含む布地の移染防止フィルム。
【請求項2】
前記バリア層アセンブリは、キャリア層と、第1保護層と、前記バリア層とを備え、
前記キャリア層は、フィルムであり、離型面を有し、剛性は前記第1保護層より大きく、伸び率が前記第1保護層より小さく、
前記第1保護層は、前記キャリア層の前記離型面に設けられ、非粘着性フィルム又は受熱時、粘着性を有するフィルムであり、
前記バリア層は、前記第1保護層に設けられ、前記表層が前記バリア層アセンブリの前記キャリア層を設けない側と結合する請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記表層の第2表面は、前記バリア層と結合する請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記バリア層アセンブリは、前記バリア層に設けられた第2保護層をさらに含み、前記バリア層は前記第1、第2保護層の間に位置し、前記表層の第2表面は前記バリア層と結合する請求項2に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルムが作製した後、布地に貼着される前に前記キャリア層を前記フィルムから剥がす請求項2~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記バリア層は、金、銀、銅、アルミニウム又はその酸化物、若しくは硫化亜鉛、五酸化ニオブ、二酸化ケイ素、二酸化チタンであり、スパッタリング或いは蒸着の方法で前記第1保護層にコーティングされる請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記キャリア層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンであり、前記第1保護層はポリウレタン又はポリウレタン熱塑性弾性体のフィルムである請求項2に記載のフィルム。
【請求項8】
前記第2保護層は、前記バリア層上に設けられたフィルムである請求項4に記載のフィルム。
【請求項9】
前記表層の第1表面は、鏡面、マット面であるか、模様を有する請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
前記表層内に蓄光材、反射ガラスビーズ或いはパール粉を添加する請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
一方の表面が反射表面で、反射ガラスビーズを有する反射層をさらに含み、前記反射層は前記表層の第1表面と結合し、前記反射表面が露出する請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
接着剤層をさらに含み、前記キャリア層が剥がされた後、前記接着剤層は前記第1保護層と結合し、前記フィルムは前記接着剤層を介して布地に貼着される請求項5に記載のフィルム。
【請求項13】
前記第1保護層は、受熱時に粘着性が生じ、前記フィルムは受熱時前記第1保護層の粘着性により布地に貼着される請求項2に記載のフィルム。
【請求項14】
前記フィルムは、図形に切り取って布地と貼着される請求項1~4、7~9、12~13のいずれか一項に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに関し、特に、布地によるフィルムの染色を防止できる布地貼着用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
布製の衣服又は織物上に柄或いは文字を入れることにより、衣服又は織の美感を高めることができる。布地の表面に柄或いは文字を入れる方法は、プラスチックフィルムを布地上に貼り付けることである。
【0003】
布地の繊維は、均して染色されて、さまざまな色の布地を作る。プラスチックフィルムを布地に貼設し、一定期間が経過すると、布地の色の染料が布地上のフィルムに滲みこみ、前記フィルムが布地の色を混じり、フィルムの外観が色泣き、色滲みとなり、元の色ではなく、フィルムの見栄えが悪くなり、時間が経つほど布地の色がフィルムに混ざる状況が益々深刻になる。衣服或いは織物上のフィルム外観色が曇っていて不純な場合、捨てられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記欠陥を解決するため、布地の染料がフィルムに移動、滲み込むことを防止できる布地の移染防止フィルムを提供することを目的とする。
【0005】
本発明の別の目的は、移染を発生せず、反射フィルム、蓄光フィルム又は光沢フィルムとなるフィルムを提供することである。
【0006】
本発明の更なる目的は、図形に切り取って布地に貼着できる布地の移染防止フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される布地の移染防止フィルムは、布地への貼着に用いられ、
ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)或いは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)素材で、反対側に位置する第1表面と第2表面とを有する表層と、
染料を遮断できるバリア層を有し、前記表層の前記第2表面と結合し、前記フィルムが布地に貼着された時、前記バリア層は布地と前記表層との間に位置するバリア層アセンブリとを含む。
【0008】
これにより、前記バリア層は、布地の染料分子を遮断することができ、染料分子が前記表層に移動することがなくなり、前記表層の色が損なわれることがなくなる。
【0009】
前記バリア層アセンブリは、キャリア層と、第1保護層と、前記バリア層とを備え、
前記キャリア層は、フィルムであり、剛性は前記第1保護層より大きく、伸び率が前記第1保護層より小さく、
前記第1保護層は、前記キャリア層の離型面に設けられ、非粘着性フィルム又は受熱時、粘着性を有するフィルムであり、
前記バリア層は、前記第1保護層に設けられ、前記表層が前記バリア層アセンブリの前記キャリア層を設けない側と結合する。
【0010】
好ましくは、前記表層の第2表面は、前記バリア層と結合する。
【0011】
好ましくは、前記バリア層アセンブリは、前記バリア層に設けられた第2保護層をさらに含む。前記第2保護層は、前記バリア層上に塗布して形成されたフィルムであり、好ましくは、前記第2保護層は高分子フィルムである。
【0012】
前記フィルムが布地に貼着される前、前記キャリア層を前記フィルムから剥がす。
【0013】
好ましくは、前記バリア層は、金、銀、銅又はアルミニウム等の金属或いはその酸化物、若しくは硫化亜鉛、五酸化ニオブ、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の無機物であり、スパッタリング或いは蒸着の方法で前記第1保護層にコーティングされる。
【0014】
好ましくは、前記キャリア層は、PETフィルムであり、前記第1保護層は、樹脂を前記キャリア層に塗布して形成され、ポリウレタン(PU)又はポリウレタン熱塑性弾性体(TPU)のフィルムである。
【0015】
好ましくは、前記表層の第1表面は、鏡面、マット面であるか、模様を有する。
【0016】
好ましくは、前記表層内に蓄光材、反射ガラスビーズ或いはパール粉を添加することにより蓄光フィルム、反射フィルム或いはパール粉の光沢を有するフィルムとなる。
【0017】
好ましくは、前記フィルム材は、前記表層の第1表面に設けられた反射層をさらに含み、前記反射層の表面は前記フィルムに露出する反射表面である。
【0018】
好ましくは、前記第1保護層は、非粘着性フィルムであり、接着剤層は、前記第1保護層に設けられ、前記フィルムは前記接着剤層を介して布地に貼着される。
【0019】
好ましくは、前記第1保護層の素材は、受熱により粘着性が生じ、前記フィルムは受熱時前記第1保護層の粘着性により布地に貼着される。
【0020】
好ましくは、前記バリア層アセンブリの厚さは、20ミクロン以下であり、前記第1保護層、前記バリア層及び前記第2保護層の厚さは、3ミクロン以下である。
【0021】
前記フィルムは、図形に切り取って布地と貼着させることができる。
【0022】
本発明の目的、特徴及び奏する効果は、下記の好ましい実施形態の説明及び図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の好ましい実施形態に係る布地の移染防止フィルムの概略立体図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態に係るバリア層アセンブリの概略断面図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態に係る表層の成形構造を示す概略断面図である。
【
図5】
図2のフィルムからキャリア層及び剥離層を剥がす様子を示すである。
【
図6】
図5のフィルムを布地に貼着した様子を示す図である。
【
図7】本発明の第2の好ましい実施形態に係る布地の移染防止フィルムをキャリア層及び離型層から剥がして布地に貼着した様子を示す概略断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係るフィルムの概略断面図である。
【
図9】
図8のフィルムからキャリア層及び離型層を剥がし、布地に貼着した様子を示す図である。
【
図10】本発明のフィルムから図形を切り出した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び
図2を参照すると、本発明の第1の好ましい実施形態で提供される布地の移染防止フィルム10は、層状構造であり、表層20と、前記表層20と結合するバリア層アセンブリ30とを含む。前記バリア層アセンブリ30は、キャリア層31と、離型層32と、第1保護層34と、バリア層40と、第2保護層36とを含む。前記フィルム10の厚さは、非常に薄く、本明細書の図は各層を例示するだけである。なお、移染(色移りともいう)とは、有色の布地から染料が流れ出して淡い色または無色の布地を染めること、また、染料による色が移ることである。当該移染は、染料が布地から布地上のフィルムに滲みこむことを含む。
【0025】
この好ましい実施形態において、前記表層20及び前記バリア層アセンブリ30は、別々に作製されてから互いに結合される。
図3を参照すると、前記バリア層アセンブリ30の製造方法は、次の通りである。まずキャリア層31を作製し、PET(ポリエチレンテレフタレート、Polyethlene)又はポリエチレン(PE,Polyethylene)を選択することが好ましい。次に液体樹脂を前記キャリア層31の離型面33に塗布して、第1保護層34を形成する。塗布装置のスクレーパーは、前記第1保護層34の厚さ及び平坦度を正確に制御し、成形することができる。好ましくは、前記第1保護層34の素材は、ポリウレタン(PU)或いは熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)である。前記第1保護層34は、成形及び定形した後、スパッタリング又は蒸着装置を用いて前記第1保護層34の表面に1層の金属素材のバリア層40をコーティングし、好ましくは、前記バリア層40は金、銀、銅或いはアルミニウムから選択される。その後、前記バリア層40を保護するため、第2保護層36を前記バリア層40に設け、前記バリア層40は第1、第2保護層34、36の間に位置し、前記二保護層により保護され、バリア層の2つの表面が損傷しないようにする。前記キャリア層31は、前記バリア層アセンブリ30の一方の側に位置し、前記バリア層40及び前記第2保護層36はバリア層アセンブリの他方の側に位置する。
【0026】
図4を参照すると、前記表層20は、液体樹脂を離型層25の離型表面26に塗布して形成され、前記離型層25は離型紙或いは離型フィルムであり得、前記離型表面26は離型剤を塗布することによりで形成することができ、離型層25の素材特性により形成することもできすなわち、離型層25の素材自体が離型特性を有することで前記離型表面26を形成し、離型剤を塗布する必要ない。前記表層20が定形された後、前記表層20を作製することができ、離型層25から前記表層を取り外すことができる。
【0027】
表層20を前記バリア層アセンブリ30の第2保護層36と結合することで、前記フィルムを作製できる。或いは、前記バリア層アセンブリ30は、前記第2保護層36を含まず、前記表層20が前記バリア層40上に直接貼着され、前記フィルムを作製する。前記フィルムを布地に貼着させようとする時、前記キャリア層31及び前記離型層32を剥がして前記第1保護層34を露出させてからキャリア層及び離型層を除去した前記フィルムを布地に貼着させ、前記フィルムは前記第1保護フィルム34がある側で前記布地に貼着され、前記表層20が布地に露出する。前記フィルム10を図形に切り取って布地に貼着することで、布地に図形を持たせることができる。前記バリア層40の遮断により、布地中の染料分子は前記バリア層40を通過することができないため、表層20は布地の染料により汚染されない。
【0028】
1つの製造方法において、前記フィルム10がホットメルト接着剤で布地に貼着されるように、前記第1保護層34は、粘着性を有する素材(例えばホットメルト接着剤)であり得る。
【0029】
1つの製造方法において、前記第1保護層34は、非粘着性であり、接着剤層を前記保護層34に設け、前記フィルム10は前記接着剤層で布地に貼着される。
【0030】
前記表層20を形成する樹脂には蓄光材、反射ガラスビーズ又はパール粉を添加することにより、前記フィルムは布地染料を遮断できる蓄光フィルム、反射フィルム或いはパール光沢を有するフィルムとなることができる。
【0031】
前記表層20の表面を鏡面、マット面に加工できる或いは模様を有することで、フィルムの外面に鏡面或いはマット面の表面効果及び様々模様を持たせることができる。
【0032】
フィルム10の別の製造方法は、反射層を前記表層20に設け、前記反射層は前記フィルムに露出され、前記フィルムに反射フィルムを形成させることができる。前記反射層の反射元素は、反射ガラスビーズ或いは反射プリズムであり得る。
【0033】
図3を参照すると、本実施形態において、前記フィルム10の前記キャリア層31は、二軸延伸PETであり得、延伸が極めて低く、優れた平坦度及び均一な厚さを有し、力を受けた時、伸び率及び変形量が低い。離型層32は、前記キャリア層31の表面に設けられ、離型剤を前記キャリア層31から成る表層に塗布して、前記キャリア層31の表面に離型面33を形成させる。実施上、PET素材のキャリア層31に離型剤を添加することにより、離型層を塗布することなくキャリア層31の一方の表面を直接離型面に形成させることができる。前記キャリア層31は、またキャリア層の一方の表面が離型面を形成するように、離型性を有する素材(例えば高密度ポリエチレンで、ポリエチレンが離型作用を有する)を選択することもできる。ポリエチレンは、剛性が高く、延性が低く、平坦性の良いフィルムとして作製することができる。
【0034】
前記第1保護層34は、液体樹脂を前記キャリア層31の離型面33に塗布することで形成され、かつ前記第1保護層34は粘着性を発生できる樹脂又は非粘着性樹脂を選択でき、保護層34は
図6の実施例のように可選用ポリウレタン(PU)で、無粘着性を選択することができる。第1保護層34は、
図2の実施形態において熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)素材のホットメルト接着剤を使用し、受熱時、粘着性を生じることができる。
【0035】
前記バリア層40は、前記第1保護層34の表面にコーティングし、前記バリア層40の内部に細孔がなく、物質通過を遮断する効果を奏する。前記バリア層は、この好ましい実施例において層状の金属媒体で、物理気相成長法(PVD、Physical Vapor Deposition)内の真空蒸着(Vacuum Evaporation)の方法で金属材料(例えば銀、アルミニウム、金、銅)又はその酸化物を表層20上にコーティングさせ、若しくはマグネトロンスパッタリングイオンプレーティングで硫化亜鉛、五酸化ニオブ、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の無機物を前記第1保護層34にコーティングさせ、又は真空スパッタリング(Sputtering)或いはイオンプレーティング(Ion Plating)の方法で銀イオン或いはアルミニウムイオン、金イオン或いは銅イオン等の金属材料を第1保護層に真空スパッタリングする。前記バリア層の具体的な製造方法:二軸延伸PETフィルムを用い、前記PETフィルムに離型剤を塗布し、前記PETフィルムの離型面33にPUフィルム(前記第1保護層)を塗布し、次に前記PUフィルムに前記バリア層40をコーティングする。本実施例のバリア層はアルミニウムを使用する。前記バリア層40の一表面に前記第2保護層36を設け、前記第2保護層36は本実施例においてPU樹脂を前記バリア層40に塗布することで形成したフィルムであり、バリア層40を保護するために用いられる。
【0036】
本発明者は、実験によりバリア層40が前記キャリア層31を介して形成されず、直接金、銀、銅、アルミニウム等の金属又は前記硫化亜鉛、五酸化ニオブ、二酸化ケイ素、二酸化チタン等の無機物をPUフィルムにコーティングした場合、PUフィルムには一定の伸び率があるため、変形及び応力が生じやすく、PUフィルムに波打ちやシワなどの凹凸が生じやすくなり、PUフィルム上にコーティングした金属バリア層は応力や変形などの欠陥を生じ、バリア層40に隙間、破断を生じさせて穴を形成し、布地の染料分子を遮断することできなくなるため、PUフィルムに金属バリア層を直接コーティングする方法は現実的ではないことを見出した。この好ましい実施形態は、伸び率が低く、厚さが均一なPETフィルム又はPEフィルムを金属バリア層のキャリアとし、キャリアに成形が良好なバリア層をコーティングし、バリア層の厚さを均一にさせ、応力や変形を生じさせず、また隙間や亀裂もなく、布地の染料が前記バリア層を通過するのを効果的に遮断できる。本発明は、PETフィルム又はPEフィルムをキャリアとして用い、キャリア上にPU(第1保護層)を塗布してからバリア層をコーティングし、PET又はPEのより強い剛性と低延伸性(延伸性及び変形量が低い)を介して、バリア層を安定させることで、緻密で応力、変形及び破損のないバリア層をコーティングし、布地の染料分子が表層に移動するのを遮断する目的を達成することができる。前記第1、第2保護層34、36の厚さは非常に薄く、前記キャリア層31の剛性は第1保護層34より大きく、延伸性及び伸縮性が第1保護層よりはるかに低いため、第1保護層34は伸縮、延伸せず、平らでシワがなく、バリア層に応力、変形或いは破損が生じることがない。
【0037】
前記第1保護層34の厚さが薄ければ薄いほど、前記バリア層40の変形が少なくなる。この好ましい実施形態において、前記第1保護層34、前記バリア層40及び前記第2保護層36から成る厚さは3ミクロン(μm)以下、0.3~3ミクロンの間にあり、好ましくは2ミクロン以下、より好ましくは1ミクロン以下である。前記バリア層アセンブリ30の厚さは、20ミクロン(μm)以下、好ましくは16ミクロン以下、より好ましくは14ミクロン以下である。
【0038】
前記表層20は、
図4に示すように、液体樹脂を前記離型層25に塗布することで形成され、表層20の素材はポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)或いは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)から選択することができ、本実施形態において、前記表層はポリウレタンである。前記表層20は、反対側に位置する第1表面22と第2表面24とを有し、前記第1表面22は前記離型層25に面し、前記離型表面26と結合する。
【0039】
前記離型層25の離型表面26は、鏡面(又は平滑面、光沢面)、マット面に加工又は凹凸模様を設けることで、前記表層20の第1表面22を鏡面、マット面又は模様を有するものにさせ、模様は前記離型表面26の鏡像であり、フィルム10の外面に鏡面或いはマット面の表面効果及び様々な模様を有させる。
【0040】
前記表層20が作製された後、第2表面24を前記バリア層アセンブリ30の第2保護層36と結合させて、前記フィルム10に作製する。前記表層20がある側は、前記フィルム10の外側であり、
図2において、表層20はフィルム10の外面である。代替的に、前記バリア層アセンブリ30は、PU素材の第2保護層36を含まず、PU素材の表層20の第2表面24は前記バリア層40と貼着する。前記バリア層40は、前記第1保護層34及び前記表層20の間に位置する。
【0041】
前記フィルム10は、布地に貼着するために用いられ、
図5を参照すると、布地に貼着しようとする前に、前記キャリア層31及び離型層32は、フィルム10から剥がされ、剥がした後
図6に示すように、前記第1保護層34はキャリア層31によって覆われておらず露出しており、前記フィルム10aは前記表層20、前記第2保護層36、前記バリア層40及び前記第1保護層34のみを保持している。符号10aは、キャリア層及び離型層が剥がされたフィルムを示し、前記表層20は前記フィルム10aの外面であり、前記保護層42がある側の表面は前記フィルム10aの内面である。
【0042】
次に、
図6に示すように、前記フィルム10aの内面を布地60に貼着する。
図2の実施形態において、前記第1保護層34は、TPUホットメルト接着剤であり、貼着の時、
図6に示すように、前記保護層34を前記布地60の外面と接触させ、次にアイロンや加熱装置により前記フィルム10aに熱エネルギーを与えることで、ホットメルト接着剤に受熱により溶融して粘着性を生じさせ、前記フィルム10aを前記布地60に接着する。
【0043】
図7のフィルムは、同様に表層20と、前記表層20に結合され、キャリア層31と、離型層32と、第1保護層34と、バリア層40と、第2保護層36とを含むバリア層アセンブリ30とを備え、前記第1保護層34はPUであり、
図7のフィルム10aはキャリア層31及び離型層32が剥がされたものである。前記フィルムは、前記第1保護層34の表面に設けられた接着剤層38(例えばゲル又は接着剤)をさらに含む。前記フィルムを貼着しようとする時、キャリア層31及び離型層32を剥がして前記第1保護層34を露出させ、前記接着剤層38を前記第1保護層34と結合させ、前記フィルム10aの内面を布地60に接触させ、前記接着剤層38でフィルム10aを前記布地60に貼着する。
【0044】
フィルム10aが布地60に貼着された後、前記バリア層40は、表層20と布地60の間に位置する。本発明の金属素材のバリア層40内には細孔がなく、本発明で開示する製造方法及び構造により、前記バリア層40は応力を持たず、変形、亀裂又は穴も発生しない。前記フィルム10aを布地60に貼り付けた後、
図6及び
図7に示すように、前記バリア層40は、布地60の染料分子62を遮断できることで、染料分子62を前記表層20に移動することができなくなり、表層20は布地60の色の混じりを受けず、表層20の色が純粋なままであり、布地の染料分子に汚染されないようにする。
【0045】
本発明の実施において、前記表層20内に蓄光材、反射ガラスビーズ或いはパール粉を添加して前記表層20が蓄光、反射の機能を提供するか、パール粉により形成された色つやを有するようにさせ、前記フィルムは布地の染料を遮断できるだけではなく、蓄光フィルム、反射フィルム或いはパール光沢を有するフィルムにもなる。
【0046】
図8は、本発明のフィルム10の第3の好ましい実施形態を示す。前記フィルムは、
図2の構造或いは
図7の構造とすることができ、相違点として、前記フィルム10は前記表層20の第1表面22に貼り付けされた反射層50をさらに含むことである。前記反射層50は、樹脂からなる層であり、一方の表面が複数の反射ガラスビーズ54を設けた反射表面52である。前記反射表面52は、外側に面し、前記フィルム10aに露出する。
【0047】
図9を参照すると、前記フィルム10のキャリア層31及び離型層32を剥がした後、前記フィルム10aの内面を布地60上に貼着し、前記フィルム10aは、
図5に示すように、TPU素材の第1保護層34を介して、或いは
図6に示すように、接着剤層38を介して布地60に貼着され、前記反射層50の反射表面52は布地60に露出して、安全性が向上する。前記バリア層40は、布地の染料分子62を遮断することができる。
【0048】
図10を参照すると、前記フィルム10(10a)は、手作業又はコンピュータ機器により非文字の図形及び文字の図形(例えば英語のLOVE)を含む様々な図形70に切り取ることができる。
図10において、前記図形70の表層20がある側は、フィルムの外側で、第1保護層34がある側はフィルムの内側である。切り取った後の図形70は、フィルムの内側で布地に貼着されることで、布地の表面に図形を持たせ、前記バリア層40は表層20と布地との間に位置する。
【0049】
本発明は、布地に貼着されたフィルムに金属媒体或いは無機物のバリア層40を設け、染料分子を遮断することで、布地染料分子がフィルムの表層20に滲み込むことができないようにし、表層20にそれ自身の色を維持させ、布地の染料の色の影響を受けて色つやを損なうことがないようにする。本発明者の実験によれば、フィルムを布地に貼着した後、90℃の高温下で168時間の過酷な条件を経ても、フィルムの表層はそれ自身の色を維持し、布地の染料分子はフィルム内のバリア層40により確実に遮断され、前記バリア層を通過させることができなかった。
【0050】
上記実施形態は、本発明の特徴を提示するものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の均等な修正は均しく本発明の保護範囲に含まれるものとみなされる。
【符号の説明】
【0051】
10、10a フィルム
20 表層
22 第1表面
24 第2表面
25 離型層
26 離型表面
30 バリア層アセンブリ
31 キャリア層
32 離型層
33 離型面
34 第1保護層
36 第2保護層
38 接着剤層
40 バリア層
50 反射層
52 反射表面
54 反射ガラスビーズ
60 布地
62 染料分子
【外国語明細書】