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特開2025-21455火災予兆検知システム、火災予兆検知方法、及び火災予兆検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021455
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】火災予兆検知システム、火災予兆検知方法、及び火災予兆検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/00 20060101AFI20250205BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
G08B25/00 510G
G08B17/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122878
(22)【出願日】2024-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2023124991
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523291215
【氏名又は名称】株式会社RapidX
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】正留 世成
(72)【発明者】
【氏名】正留 世紀人
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA10
5C087AA32
5C087AA37
5C087DD04
5C087DD22
5C087DD23
5C087DD24
5C087DD27
5C087DD30
5C087DD31
5C087EE15
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG14
5C087GG17
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
5G405AB01
5G405AB02
5G405AB03
5G405AB05
5G405AB07
5G405AB08
5G405CA05
5G405CA06
(57)【要約】
【課題】 火災の予兆を早期に検知することができる火災予兆検知システム、火災予兆検知方法、及び火災予兆検知プログラムを提供する。
【解決手段】 火災予兆検知システムは、監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり当該領域の火災の予兆を検知する火災予兆検知システムであって、複数種類のセンサによって取得された領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する測定データ取得部と、測定データ取得部が取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せに基づいて、領域の火災の予兆の有無を判定する予兆有無判定部と、予兆有無判定部により領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する報知部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり当該領域の火災の予兆を検知する火災予兆検知システムであって、
前記複数種類のセンサによって取得された前記領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する測定データ取得部と、
前記測定データ取得部が取得した前記測定データの中から選択された所定の前記指標の測定データの組合せに基づいて、前記領域の火災の予兆の有無を判定する予兆有無判定部と、
前記予兆有無判定部により前記領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、前記領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する報知部と、
を備えることを特徴とする火災予兆検知システム。
【請求項2】
前記予兆有無判定部は、所定の前記指標の測定データの組合せと前記領域の火災の予兆の有無との対応関係を予め学習した予兆学習モデルを用い、当該予兆学習モデルに、前記測定データ取得部が取得した前記測定データの中から選択された所定の前記指標の測定データの組合せを入力することで、前記領域の火災の予兆の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項3】
前記監視対象となる領域の種類を受け付ける受付部を、更に備え、
前記予兆有無判定部は、
前記監視対象となる領域の種類と前記指標の測定データの組合せとの対応関係を定めたテーブルを参照して、前記受付部が受け付けた前記監視対象となる領域の種類に基づいて、前記指標の前記測定データの組合せを決定することを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項4】
前記予兆有無判定部により前記領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、前記予兆有無判定部の当該判定の根拠となった所定の前記指標の測定データの組合せに基づいて、当該火災の予兆の危険度を判定する危険度判定部を更に備え、
前記報知部は、前記予兆有無判定部により前記領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、前記領域の監視者に火災の予兆が有ること及び前記危険度判定部により判定された当該予兆の危険度を報知することを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項5】
前記危険度判定部は、所定の前記指標の測定データの組合せと前記領域の火災の予兆の危険度との対応関係を予め学習した危険度学習モデルを用い、当該危険度学習モデルに、前記予兆有無判定部の前記領域の火災の予兆が有るとする判定の根拠となった所定の前記指標の測定データの組合せを入力することで、前記領域の火災の予兆の危険度を判定することを特徴とする請求項4に記載の火災予兆検知システム。
【請求項6】
前記測定データ取得部は、
複数の前記指標の各々の測定データに一又は複数の閾値が設定され、前記指標の各々において前記閾値を超えた前記測定データを前記複数種類のセンサの各々から取得する
ことを特徴とする請求項1に記載に火災予兆検知システム。
【請求項7】
前記複数種類のセンサは、前記領域の匂いを測定する匂いセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項8】
前記複数種類のセンサは、前記領域の2次元平面を所定の区画に区切って各区画の温度を数値として示す2次元温度分布を測定する2次元サーモパイル放射温度センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項9】
前記複数種類のセンサは、前記領域の気圧を測定する気圧センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項10】
前記複数種類のセンサは、前記領域の定常状態における温度及び湿度を測定する温湿度センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項11】
前記複数種類のセンサは、前記領域の空気の汚れを測定する空気汚れセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項12】
前記複数種類のセンサは、前記領域の煙の濃度を検知する煙センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項13】
前記複数種類のセンサは、前記領域の一酸化炭素の濃度を検知する一酸化炭素センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項14】
前記複数種類のセンサは、前記領域の二酸化炭素の濃度を検知する二酸化炭素センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項15】
前記複数種類のセンサは、前記領域の照度を測定する照度センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項16】
前記複数種類のセンサは、前記領域の騒音の大きさを測定する騒音センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項17】
前記複数種類のセンサは、前記領域の酸素の濃度を測定する酸素センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項18】
前記複数種類のセンサは、無人飛行体又はロボットに搭載され、
前記無人飛行体又はロボットは、遠隔操作又は自律制御により前記領域を飛行若しくは走行することを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項19】
前記測定データ取得部が取得した前記測定データを教師なしクラスタリングすることで、前記測定データに含まれる前記領域の環境の複数の指標の各々の測定データの外れ値を、前記複数の指標の各々の測定データの異常値として抽出する異常値抽出部と、
前記異常値に基づいて前記領域の火災の予兆の有無を判定する異常値予兆判定部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の火災予兆検知システム。
【請求項20】
前記測定データ取得部が取得した前記測定データを教師なしクラスタリングすることで、前記測定データに含まれる前記領域の環境の複数の指標の各々の測定データの外れ値を、前記複数の指標の各々の測定データの異常値として抽出する異常値抽出部と、
前記異常値に基づいて、複数の前記指標の各々の測定データの前記閾値を再設定する閾値再設定部と、を更に備え、
前記測定データ取得部は、
複数の前記指標の各々において前記閾値再設定部により再設定された前記閾値を超えた前記測定データを前記複数種類のセンサの各々から取得する
ことを特徴とする請求項6に記載に火災予兆検知システム。
【請求項21】
監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり当該領域の火災の予兆を検知する火災予兆検知方法であって、
コンピュータは、
前記複数種類のセンサによって取得された前記領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する測定データ取得ステップと、
前記測定データ取得ステップにおいて取得した前記測定データの中から選択された所定の前記指標の測定データの組合せに基づいて、前記領域の火災の予兆の有無を判定する予兆有無判定ステップと、
前記予兆有無判定ステップにおいて前記領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、前記領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する報知ステップと、
を実行することを特徴とする火災予兆検知方法。
【請求項22】
監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり当該領域の火災の予兆を検知する火災予兆検知プログラムであって、
コンピュータに、
前記複数種類のセンサによって取得された前記領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する測定データ取得機能と、
前記測定データ取得機能において取得した前記測定データの中から選択された所定の前記指標の測定データの組合せに基づいて、前記領域の火災の予兆の有無を判定する予兆有無判定機能と、
前記予兆有無判定機能において前記領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、前記領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する報知機能と、
を発揮させることを特徴とする火災予兆検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災予兆検知システム、火災予兆検知方法、及び火災予兆検知プログラムに関し、特に火災の予知を早期に検知することができる火災予兆検知システム、火災予兆検知方法、及び火災予兆検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの建築物は火災警報設備やスプリンクラーなどの消防用設備が備えられるが、建設中の建築物の工事現場では火災警報設備及び消防用設備の設置がされていない場合があり、火災に対する対策として警備員による見回りと消火用水バケツしかない場合がある。
【0003】
例えば、建築中の建築物の工事現場は、煙草の火、及び溶接時に発生する火花や溶けた金属の飛散などが原因で火事になることがあった。これらの火の不始末は、人が居る時間帯では燻(くすぶ)っている状態で目立ちにくく人に気づかれずに、数時間後の人が居なくなる時間帯になって炎が出て延焼してしまうことがあった。以上のことから、このような工事現場では特に火災を早期に発見することが望まれ、火が燻った状態など火災の予兆を早期に検知できる設備などが求められる。
また、屋外及び野外の施設についても火災を検知する設備が設置されていない場合があり、日中の人が居る時間帯の火の不始末が原因で、その数時間後の人が居なくなる時間帯になり出火することがあった。このため屋外及び野外の施設についても、火災の予兆を早期に検知できる設備などが求められる。
【0004】
特許文献1において、空気に含まれる煙の有無を感知する火災検知システムが提案されている。火災の予兆を示す火が燻った状態では煙の量は少量であるため、特許文献1に開示の火災検知システムでは、火が燻った状態を感知することが困難な場合があり、火災の予兆を発見できない虞があった。依然として火が燻った状態など火災の予兆を早期に検知することができる火災予兆検知システムの提案が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-075361号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、火災の予兆を早期に検知することができる火災予兆検知システム、火災予兆検知方法、及び火災予兆検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、第1の態様に係る火災予兆検知システムは、監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり当該領域の火災の予兆を検知する火災予兆検知システムであって、複数種類のセンサによって取得された領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する測定データ取得部と、測定データ取得部が取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せに基づいて、領域の火災の予兆の有無を判定する予兆有無判定部と、予兆有無判定部により領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する報知部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、予兆有無判定部は、所定の指標の測定データの組合せと領域の火災の予兆の有無との対応関係を予め学習した予兆学習モデルを用い、当該予兆学習モデルに、測定データ取得部が取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せを入力することで、領域の火災の予兆の有無を判定することとしてもよい。
【0009】
第3の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、監視対象となる領域の種類を受け付ける受付部を、更に備え、予兆有無判定部は、監視対象となる領域の種類と指標の測定データの組合せとの対応関係を定めたテーブルを参照して、受付部が受け付けた監視対象となる領域の種類に基づいて、指標の測定データの組合せを決定することとしてもよい。
【0010】
第4の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、予兆有無判定部により領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、予兆有無判定部の当該判定の根拠となった所定の指標の測定データの組合せに基づいて、当該火災の予兆の危険度を判定する危険度判定部を更に備え、報知部は、予兆有無判定部により領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、領域の監視者に火災の予兆が有ること及び当該予兆の危険度を報知することとしてもよい。
【0011】
第5の態様は、第4の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、危険度判定部は、所定の指標の測定データの組合せと領域の火災の予兆の危険度との対応関係を予め学習した危険度学習モデルを用い、当該危険度学習モデルに、予兆有無判定部の領域の火災の予兆が有るとする判定の根拠となった所定の指標の測定データの組合せを入力することで、領域の火災の予兆の危険度を判定することとしてもよい。
【0012】
第6の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、測定データ取得部は、複数の指標の各々の測定データに一又は複数の閾値が設定され、指標の各々において閾値を超えた測定データを複数種類のセンサの各々から取得することとしてもよい。
【0013】
第7の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の匂いを測定する匂いセンサを含むこととしてもよい。
【0014】
第8の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の2次元平面を所定の区画に区切って各区画の温度を数値として示す2次元温度分布を測定する2次元サーモパイル放射温度センサを含むこととしてもよい。
【0015】
第9の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の気圧を測定する気圧センサを含むこととしてもよい。
【0016】
第10の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の定常状態における温度及び湿度を測定する温湿度センサを含むこととしてもよい。
【0017】
第11の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の空気の汚れを測定する空気汚れセンサを含むこととしてもよい。
【0018】
第12の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の煙の濃度を検知する煙センサを含むこととしてもよい。
【0019】
第13の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の一酸化炭素の濃度を検知する一酸化炭素センサを含むこととしてもよい。
【0020】
第14の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の二酸化炭素の濃度を検知する二酸化炭素センサを含むこととしてもよい。
【0021】
第15の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の照度を測定する照度センサを含むこととしてもよい。
【0022】
第16の態様は、第1の態様に係る火災予兆検知システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の騒音の大きさを測定する騒音センサを含むこととしてもよい。
【0023】
第17の態様は、第1の態様に係る火災予兆検視システムにおいて、複数種類のセンサは、領域の酸素の濃度を測定する酸素センサを含むこととしてもよい。
【0024】
第18の態様は、第1の態様に係る火災予兆検視システムにおいて、複数種類のセンサは、無人飛行体又はロボットに搭載され、無人飛行体又はロボットは、遠隔操作又は自律制御により領域を飛行若しくは走行することとしてもよい。
【0025】
第19の態様は、第1の態様に係る火災予兆検視システムにおいて、測定データ取得部が取得した測定データを教師なしクラスタリングすることで、測定データに含まれる領域の環境の複数の指標の各々の測定データの外れ値を、複数の指標の各々の測定データの異常値として抽出する異常値抽出部と、異常値に基づいて領域の火災の予兆の有無を判定する異常値予兆判定部と、を更に備えることとしてもよい。
【0026】
第20の態様は、第6の態様に係る火災予兆検視システムにおいて、測定データ取得部が取得した測定データを教師なしクラスタリングすることで、測定データに含まれる領域の環境の複数の指標の各々の測定データの外れ値を、複数の指標の各々の測定データの異常値として抽出する異常値抽出部と、異常値に基づいて、複数の指標の各々の測定データの閾値を再設定する閾値再設定部と、を更に備え、測定データ取得部は、指標の各々において閾値再設定部により再設定された閾値を超えた測定データを複数種類のセンサの各々から取得することとしてもよい。
【0027】
第21の態様に係る火災予兆検知方法は、監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり当該領域の火災の予兆を検知する火災予兆検知方法であって、コンピュータは、複数種類のセンサによって取得された領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する測定データ取得ステップと、測定データ取得ステップにおいて取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せに基づいて、領域の火災の予兆の有無を判定する予兆有無判定ステップと、予兆有無判定ステップにおいて領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する報知ステップと、を実行することを特徴とする。
【0028】
第22の態様に係る火災予兆検知プログラムは、監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり当該領域の火災の予兆を検知する火災予兆検知プログラムであって、コンピュータに、複数種類のセンサによって取得された領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する測定データ取得機能と、測定データ取得機能において取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せに基づいて、領域の火災の予兆の有無を判定する予兆有無判定機能と、予兆有無判定機能において領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する報知機能と、を発揮させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る火災予兆検知システム等は、監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり当該領域の火災の予兆を検知する火災予兆検知システムであって、複数種類のセンサによって取得された領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する測定データ取得部と、測定データ取得部が取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せに基づいて、領域の火災の予兆の有無を判定する予兆有無判定部と、予兆有無判定部により領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する報知部と、を備えることを特徴とするので、火災の予兆を早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は本実施形態に係る火災予兆検知システムの概要を説明するための図である。
図2図2は本実施形態に係る火災予兆検知システムを含むインフラ構成図の一例である。
図3図3は本実施形態に係る環境測定端末の設置の態様の一例を説明するための図である。
図4図4は本実施形態に係る火災予兆検知システムのハードウェア構成の一例を説明するためのブロック図である。
図5図5は本実施形態に係る環境測定端末のハードウェア構成の一例を説明するためのブロック図である。
図6a図6aは本実施形態に係る環境測定端末の回路構成の一例を説明するための図である。
図6b図6bは本実施形態に係る環境測定端末の回路構成の一例を説明するための図である。
図6c図6cは本実施形態に係る環境測定端末の回路構成の一例を説明するための図である。
図6d図6dは本実施形態に係る環境測定端末の回路構成の一例を説明するための図である。
図7図7は本実施形態に係る火災予兆検知システムの機能的構成の一例を説明するためのブロック図である。
図8図8は本実施形態に係る監視対象となる領域の種類と当該領域の環境の複数の指標の測定データの組合せとの対応関係を定めたテーブルの一例を示す図である。
図9図9は本実施形態に係る監視対象となる領域の環境の複数の指標の測定データの組合せの一例を説明するための図である。
図10図10は本実施形態に係る火災予兆検知システムの実験結果の一例について説明するための図である。
図11図11は本実施形態に係る火災予兆検知プログラムのフローチャートの一例である。
図12図12は他の実施形態に係る火災予兆検知プログラムのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(火災予兆検知システム10の概要について)
図1乃至図10を参照して本開示に係る火災予兆検知システム10の一実施形態について説明する。
先ず、図1を参照して、本実施形態に係る火災予兆検知システム10の概要について説明する。
【0032】
火災予兆検知システム10は、監視対象となる領域に設置され当該領域の環境を測定する複数種類のセンサと通信可能であり、当該領域の環境を複数種類のセンサでもって測定し、火災の予兆を検知するものである。
複数種類のセンサは後述の環境測定端末20に実装される。複数種類のセンサは、環境測定端末20のCPU20eによって制御され、複数種類のセンサの測定データは火災予兆検知システム10へ送信される。
【0033】
環境測定端末20が監視対象となる領域に設置されることで、複数種類のセンサが当該領域に設置される。なお、複数種類のセンサが環境測定端末20に内蔵されている場合に限らず、複数種類のセンサが環境測定端末20から離れ監視対象となる領域に個別に設置され、その測定データを環境測定端末20が取得して火災予兆検知システム10に送信するようにしてもよい。
監視対象となる領域とは、火災の予兆を検知したい領域であり、ビル、物流倉庫、及び各種工場の建設現場が想定される。なお、監視対象となる領域は、建設現場に限定されるものではなく、火災を監視し火災の予兆を検知したい場所であればよく、広い範囲のものが監視対象となる領域になり得る。例えば、住宅、介護施設、保育施設、発電所、森林、ダム、漁港、鉄道の線路、空港の滑走路などでもよく、建設工事中又は建設工事の完了後の何れの場合であってもよく、建築物を伴わない、例えば、畑、公園、グランド、駐車場などの屋外の規模の大きい施設なども監視対象となる領域になり得る。更には、バス、鉄道、船、飛行機、潜水艇、宇宙船などの移動体の内部についても、監視対象の領域となり得る。
監視対象となる領域が1台の環境測定端末20に実装された複数種類のセンサの測定可能な範囲を超える場合は、複数の環境測定端末20が監視対象となる領域に設置されて監視対象となる領域全体を網羅する。
【0034】
本実施形態における複数種類のセンサとは、図5に示す様に、匂いセンサ21、2次元サーモパイル放射温度センサ22、気圧センサ23、温湿度センサ24、空気汚れセンサ25、煙センサ26、一酸化炭素センサ27、二酸化炭素センサ28、照度センサ29、騒音センサ30、暗視機能付きカメラ31、及び酸素センサ32などのことであり、これらのセンサを用いて、監視対象となる領域の環境の様々な指標を測定する。
なお、火災予兆検知システム10又は環境測定端末20の改良などにより、これらの複数種類のセンサの中には使用されなくなり環境測定端末20に搭載されなくなることがあり、又は他のセンサに置き換えられる場合もあり得る。
【0035】
匂いセンサ21は、監視対象となる領域の匂いを測定する。
匂いセンサ21は、数ある匂いの中で、火災の予兆において火の燻(くすぶ)った状態(燻焼状態)にて発生する匂いとして、「きな臭さ」を検知し、その強弱を測定して数値化し出力する。匂いとは、匂い物質が微粒子状あるいはガス状となった状態を指す。匂いセンサ21の原理は、半導体方式、水晶振動子方式、FETバイオセンサ方式、及びMSS方式などが挙げられる。
匂いセンサ21は、パルス電圧が印加されて、匂い分子の濃度に応じたセンサ抵抗値が検出される。匂いセンサ21のセンサ抵抗の両端に生じたアナログ電圧が、後述の環境測定端末20のCPU20eに入力される。
【0036】
半導体方式は、匂い分子が半導体表面の酸素と吸着する時に変化する抵抗値を測定することで、匂い分子の濃度を導出する。半導体の種類としては、金属酸化物半導体が一般的であるが、有機半導体を用いた方式も存在する。
水晶振動子方式は、水晶振動子に貼り付けられた感応膜が匂い分子を捕集すると、振動子の共振周波数が低下するが、その周波数の低下量を計測することで匂い分子の濃度を導出する方式である。感応膜には、天然脂質あるいは合成脂質が用いられる。感応膜を貼ったセンサを複数同時に用いると、複数の匂い分子を識別することができる。
【0037】
FETバイオセンサ方式は、トランジスタの絶縁膜上に固定されたプローブ分子が、吸着したガス分子の電荷を検知し、その電荷に起因する電気信号を解析することで、ガス分子の成分・濃度を導出することができる。FETは、Field Effect Transistor(電界効果トランジスタ)の略称である。
MSS方式は、感応膜にガス分子が吸着した際に応力が発生するが、応力によって変化する電気抵抗を分析してガス分子の成分・濃度を導出する。MSSはMembrane-type Surface stress Sensor(膜型表面応力センサー)の略称である。
【0038】
2次元サーモパイル放射温度センサ22は、監視対象となる領域の2次元平面を所定の区画に区切って各区画の温度を数値として示す2次元温度分布を測定する。2次元サーモパイル放射温度センサ22は、離れた場所の2次元的な温度分布の計測が可能である。2次元サーモパイル放射温度センサ22は、離れた物質から放射される赤外線放射エネルギーをレンズにより集めて縦8個×横8個に配列された計64個のサーモパイル(thermopile:熱電堆)に照射することで2次元的な熱分布を計測する。従って、2次元サーモパイル放射温度センサ22は、監視対象となる領域を縦8列×横8列に配列された64個の区画に分割し、当該区画の温度の各々に64個のサーモパイルの各々の検出温度を対応付けて2次元的な温度分布を計測する。
【0039】
2次元サーモパイル放射温度センサ22は、測定した温度データをI2C通信で後述の環境測定端末20のCPU20eのデータ要求に返答する形式でデジタル出力し、64個のサーモパイルにより検出された温度を64個の温度データとして所定の間欠時間で送信する。I2C(Inter-Integrated Circuit)通信とは、クロック信号に同期させてデータの通信を行う同期式シリアル通信の通信インターフェースの一つである。なお、2次元サーモパイル放射温度センサ22の通信方式は、I2C通信に限定されるものではなく、2次元サーモパイル放射温度センサ22の仕様変更または改良などにより他の通信方式に変更され得る。
【0040】
この間欠時間は、2次元サーモパイル放射温度センサ22を含むセンサ回路に組み込まれたロータリスイッチにより切り替えることができ、間欠時間を4秒間隔、10秒間隔、30秒間隔、又は60秒間隔に切り替えることができる。なお、間欠時間はこれらに限定されるものではなく、他の間欠時間であってもよい。また、間欠時間は、TXインターフェースによる通信のTX信号のLOWレベルを検知したタイミングに同期させることができ、2次元サーモパイル放射温度センサ22はTX信号のLOWレベルを検知したタイミングで64個の温度データを吐き出させて送信することができる。
【0041】
2次元サーモパイル放射温度センサ22は、2次元サーモパイル放射温度センサ22を含むセンサ回路に組み込まれた測定開始用押しボタンスイッチが押されることで測定を開始する。
【0042】
気圧センサ23は、監視対象となる領域の気圧を測定する。
各種センサの出力値は、当該気圧の値により変動するため、監視対象となる領域の気圧を気圧センサ23により測定した測定値に基づいて、各種センサの出力値を補正する。
気圧センサ23は、8ピンDIPモジュールであり、測定された気圧は内部で補正及び換算されて、24ビットの読み取り値を4096で除算することで気圧(hPa)が得られる。気圧センサ23の測定データは、I2C通信で後述の環境測定端末20のCPU20eのデータ要求に返答する形式でデジタル出力される。
なお、気圧センサ23の通信方式は、I2C通信に限定されるものではなく、気圧センサ23の仕様変更または改良などにより他の通信方式に変更され得る。
【0043】
温湿度センサ24は、監視対象となる領域の温度と湿度とを測定する。
温湿度センサ24は、定常状態における当該領域の温度と湿度とを測定することで、火災の燻焼による温度と湿度との変化の監視を可能とする。温湿度センサ24は、温度と湿度を同時に測定する複合センサーモジュールであり、I2C通信で後述の環境測定端末20のCPU20eのデータ要求に返答する形式でデジタル出力される。
なお、温湿度センサ24の通信方式は、I2C通信に限定されるものではなく、温湿度センサ24の仕様変更または改良などにより他の通信方式に変更され得る。
【0044】
空気汚れセンサ25は、監視対象となる領域の空気の汚れを測定する。
空気汚れセンサ25は、空気汚れの原因とされる一酸化炭素ガス、水素ガス、アンモニアガス、メタンガス、エタノールガス、プロパンガス、及びイソブタンガスを検出することが可能であるが、検出したガスの種類を特定することができず、ガスの選択性は無い。
なお、本実施形態の空気汚れセンサ25はガスの複数の種類を個別に特定して検出する性能を有しないが、検出対象となる複数種類のガスの種類を個別に特定して検出するガスセンサを空気汚れセンサとして用いてもよい。または、検出対象となる複数種類のガスごとに異なる種類のガスセンサでもって検出するようにしてもよい。
【0045】
空気汚れセンサ25は、5V直流電圧で使用し、測定値をアナログ電圧として出力する。空気汚れセンサ25は、ガスを検知するとその割合に応じて出力電圧を増幅させる。空気汚れセンサ25のヒーターの消費電流は25~35mAであり、消費電流を抑えるため、ENピンを使って動作を止めることができる。空気汚れセンサ25の出力端子は、バッファー回路を介してオフセット付き10倍差動増幅回路に接続される。当該10倍差動増幅回路の出力端子は後述の環境測定端末20のCPU20eに接続され、空気汚れセンサ25のアナログ電圧は、後述の環境測定端末20のCPU20eに入力される。バッファー回路は、空気汚れセンサ25の出力電圧及び信号強度を補正する目的で用いられる。
【0046】
煙センサ26は、監視対象となる領域の煙の濃度を検知する。
煙センサ26は、光学式微粒子センサであり微小粒子状物質(PM2.5)を検出する。微小粒子状物質(PM2.5)とは、大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5マイクロメートル以下の非常に小さな粒子のことであり、その成分には、炭素成分、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩のほか、ケイ素、ナトリウム、アルミニウムなどの無機元素などが含まれる。
【0047】
煙センサ26は、火災の煙の主な成分である一酸化炭素、炭酸ガス、シアン化水素(青酸ガス)、及び塩素ガスなどを検出する。
煙センサ26は、その中央部分の貫通穴を通って流入する空気に対して発光素子(LED)より光を照射し、微小粒子(煙成分)によって散乱された光を受光素子(フォトダイオード)で検出し、当該受光素子の出力信号を増幅して出力する。発光素子からの光は、レンズ及びスリットにより絞られた光になる。受光素子も不要光をできるだけカットし、検出光を効率良く受光する為、発光部と同様にレンズ及びスリットにより絞っている。これらの光軸の交叉した個所が検出領域となる。
【0048】
微小粒子が無い時でも不要光を受けて受光素子から出力電圧が発生する。受光素子からは受光量に比例した出力電流が得られ、これを増幅回路にて増幅し、粉塵濃度に比例したアナログ電圧(パルス出力)として出力する。煙センサ26の出力端子は、ピークホールド(Peak Hold)回路の入力端子に接続され、当該ピークホールド回路の出力端子はLPF(Low Pass Filter)回路の入力端子に接続される。当該LPF回路の出力端子は後述の環境測定端末20のCPU20eに接続される。
ピークホールド回路は、一定時間又はリセットされるまで最大値を保持する回路のことである。
【0049】
一酸化炭素センサ27は、監視対象となる領域の一酸化炭素の濃度を検知する。
一酸化炭素センサ27は、選択性があり一酸化炭素の絶対値測定が可能である。一酸化炭素センサ27は、電気化学式ガスセンサである。電気化学式ガスセンサは、化学反応を電流と電圧に変換する原理を利用して、測定対象となる物質の量に比例した電気信号を生成する。一酸化炭素センサ27は、一酸化炭素濃度とセンサ出力電流の関係が直線的であり、既知の一酸化炭素濃度のガスでセンサ出力電流を校正することで一酸化炭素濃度の定量的な測定に使用することができる。
【0050】
一酸化炭素センサ27に接続された負荷抵抗を挟む両端子の電圧を差動増幅回路の入力端子に接続する。当該差動増幅回路の出力端子はLPF回路の入力端子に接続され、LPF回路の出力端子は後述の環境測定端末20のCPU20eに接続される。
【0051】
二酸化炭素センサ28は、監視対象となる領域の二酸化炭素の濃度を検知する。
二酸化炭素センサ28は、NDIR(非分散型赤外)方式の二酸化炭素のセンサであり、モジュールとして一体化しており、5Vの直流電源で動作しアナログ電圧のPWM出力をする。NDIR(non-dispersive infrared:非分散型赤外)方式ガスセンサは、放射された赤外線が対象ガス(二酸化炭素)の分子振動を引き起こすことにより、特定波長の赤外線が吸収される現象を利用してガスを検知する。赤外線の透過率(透過光強度と放射源からの放射光強度の比)は、対象ガスとなる二酸化炭素の濃度によって決定される。二酸化炭素分子は赤外領域の波長4.26μmを吸収する性質があり、二酸化炭素濃度が高くなればなるほど、波長4.26μmの赤外線が吸収されることになり、赤外線の強さを測定すれば二酸化炭素濃度を測定することができる。
二酸化炭素センサ28のPWM出力の出力端子は後述の環境測定端末20のCPU20eに接続される。
【0052】
照度センサ29は、監視対象となる領域の照度を測定する。
照度センサ29は、夜間における火災の早期高感度計測を可能とする。
照度センサ29は、フォトトランジスタであり、照射された光によって発生する光電流を増幅して出力する。照度センサ29は、温度補償回路に接続され、使用温度により変化(温度ドリフト)する出力特性などが補正される。照度センサ29の出力端子は後述の環境測定端末20のCPU20eに接続される。温度ドリフトとは、出力特性の周囲温度の変化に対する変動分のことをいう。
【0053】
騒音センサ30は、監視対象となる領域の騒音の大きさを測定する。
騒音センサ30は、ECM(エレクトレット・コンデンサー・マイク)である。騒音センサ30の出力電圧は、増幅回路により増幅されたのち、rms(root mean square:二乗平均平方根)変換回路により交流の電気信号の大きさを表す指標の一つである実効値に変換される。その後、10HzのLPF回路及びレベル変換回路を通過して、後述の環境測定端末20のCPU20eに入力される。実効値は、交流の電気信号の実効的は大きさを示す値であり、騒音センサ30の出力電圧の大きさの比較に用いられる。
【0054】
暗視機能付きカメラ31は、監視対象となる領域を撮影する。
暗視機能付きカメラ31は、当該領域が暗い場合でも撮影できるように、暗視補正機能又は赤外線機能が備わっている。暗視補正機能とは光源が少ない薄暗い場所でも自動で感度を増幅する機能のことをいう。赤外線機能は、物体から放射される赤外線を可視化する機能のことをいう。
暗視機能付きカメラ31の出力端子は後述の環境測定端末20のCPU20eに接続され、暗視機能付きカメラ31の撮影データはCPU20eに入力される。
また、環境測定端末20は、暗視機能付きカメラ31に代えてサーモカメラを備えることとしてもよく、暗視機能付きカメラ31に加えてサーモカメラを備えてもよい。サーモカメラとは、赤外線カメラの一種であり、被写体が放射する赤外線を捉えて被写体の温度の計測を可能とするカメラであり、サーモグラフィカメラとも呼ばれる。絶対零度以上の全ての物体は、その温度に応じた赤外線を放射する特性を有しており、赤外線カメラは被写体が放射する赤外線を捉えて撮影するカメラの総称である。従って、環境測定端末20は、監視対象となる領域の温度を計測することができ、当該領域の高温状態などの異常を検知することが可能となる。また、環境測定端末20は、特定のガス、例えばメタンなどの炭化水素系ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、及びアンモニアなどを検知することが可能であり、監視対象となる領域におけるこれら特定のガスの発生を検知することが可能となる。
【0055】
酸素センサ32は、監視対象となる領域の酸素の濃度を測定する。
酸素センサ32は、監視対象となる領域の酸欠の検知、及び酸素濃度の管理を目的として用いられる。
酸欠は、空気中の酸素の割合が少なくなることをいい、人の健康及び生命維持に重大な影響を及ぼす虞が有る。
酸素は燃焼を助ける性質があるため、監視対象となる領域の酸素の濃度が高まると火災の危険性が増加する。
具体的には、酸素濃度が高まることにより、物質の着火温度が低くなり火が着きやすくなるので、予兆有無判定部14の監視対象となる領域の火災の予兆の有無の判定に酸素センサ32が測定した酸素の濃度が加味される。
また、予兆学習モデルは、酸素センサ32が測定した監視対象となる領域の酸素の濃度の測定データを所定の指標の測定データの組合せに含め、これら測定データの組合せと監視対象となる領域の火災の予兆の有無との対応関係を予め学習することとなる。
また、酸素濃度が高まることにより、火炎温度が上昇し燃焼が速くなるため燃焼範囲が広がるとともに爆発の可能性が高まるため危険性が増すので、危険度判定部15の監視対象となる領域の火災の予兆の危険度の判定に酸素センサ32が測定した酸素の濃度が加味される。
また、危険度学習モデルは、酸素センサ32が測定した監視対象となる領域の酸素の濃度の測定データを所定の指標の測定データの組合せに含め、これら測定データの組合せと監視対象となる領域の火災の予兆の危険度との対応関係を予め学習することとなる。
酸素センサ32の出力端子は後述の環境測定端末20のCPU20eに接続され、酸素センサ32の測定データはCPU20eに入力される。
【0056】
なお、上記した複数種類のセンサの測定データは、様々なノイズの影響を受けることが想定される。このため、複数種類のセンサは、DCDCコンバータで昇圧され安定化された電源によって駆動されてもよい。また、複数種類のセンサの測定データを後述の環境測定端末20のCPU20eに入力する直前において、干渉抑制フィルタ及び外れ値除去フィルタを通過させるようにしてもよい。また、複数種類のセンサの測定データに含まれるノイズを当該測定データから分離させて、深層学習アルゴリズムに学習させて、当該学習済みの深層学習アルゴリズムにより、複数種類のセンサの測定データに含まれるノイズを除去させるようにしてもよい。
【0057】
(火災予兆検知システム10を含むインフラ構成について)
次に図2を参照して、火災予兆検知システム10を含むインフラ構成について説明する。図2は本実施形態に係る火災予兆検知システム10を含むインフラ構成図の一例である。
【0058】
図2に示す様に、火災予兆検知システム10及び環境測定端末20(環境測定端末A20a、環境測定端末B20b)はインターネット11に接続される。火災予兆検知システム10及び環境測定端末20(環境測定端末A20a、環境測定端末B20b)は、インターネット11を介して双方向の交信が可能である。なお、火災予兆検知システム10と環境測定端末20(環境測定端末A20a、環境測定端末B20b)は、インターネット11を介することなく有線通信又は無線通信により直接接続されてもよい。有線通信は、例えば、有線LAN(Local Area Network)による通信のことを言う。無線通信は、例えば、無線LAN又はブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)などの近距離無線通信のことを言う。
【0059】
なお、図2には便宜上、2台の環境測定端末20(環境測定端末A20a、環境測定端末B20b)が掲載されているが、これに限定されるものでは無く、1台の環境測定端末20、又は3台以上の環境測定端末20が火災予兆検知システム10に接続され使用されてもよい。
また、図2には便宜上、1台の火災予兆検知システム10が掲載されているが、これに限定されるものではなく、2台以上の火災予兆検知システム10が1台以上の環境測定端末20に接続され使用されてもよい。
【0060】
(環境測定端末20の設置の態様について)
次に図3を参照して、環境測定端末20の設置の態様について説明する。図3は本実施形態に係る環境測定端末20の設置の態様の一例を説明するための図である。
環境測定端末20は、監視対象となる領域において、天井33から吊るされた状態で設置されてもよいし、床に立設されたスタンド34に取り付けられて設置されてもよいし、或いは、作業員のヘルメット37に固定されて設置されてもよい。また、環境測定端末20は、天井、壁、床に取り付けられて設置されてもよいし、ドローン、ロボット、及びナノボットなどの空中又は地上を移動することができる機器に取り付けられ移動しながら使えるようにしてもよい。
【0061】
複数種類のセンサは、無人飛行体又はロボットに搭載され、無人飛行体又はロボットは、遠隔操作又は自律制御により監視対象となる領域を飛行若しくは走行することとしてもよい。
図3に示す様に、ドローンなどの無人飛行体(unmanned aerial vehicle:UAV)35に環境測定端末20が搭載され、環境測定端末20に実装された複数種類のセンサが監視対象となる領域の環境を測定する。無人飛行体35は、監視対象となる領域の内部を旋回飛行したりホバリングしたりしている間に環境測定端末20に実装された複数種類のセンサが監視対象となる領域の環境を測定する。
無人飛行体35は、ドローンの他にクワッドロータ、又はマルチコプターなどと呼ばれる。
無人飛行体35は、無線による遠隔操作されてもよいし、自律制御による自動飛行機能によって飛行してもよい。無線による遠隔操作とは、無人飛行体35を操縦する人がコントローラ(不図示)を使用して、無人飛行体35を遠隔地から無線通信により操縦することをいう。自律制御による自動飛行機能とは、無人飛行体35が自分自身で周囲の環境を認識し、予め設定されたルート又は指示に従って飛行することをいい、予め作成されて実装された飛行計画に従って飛行することをいう。
無人飛行体35に設置された環境測定端末20に実装された複数種類のセンサの測定データは、Wi-Fi(登録商標)又はブルートゥース(Bluetooth)などの無線通信により火災予兆検知システム10へと送信される。
【0062】
図3に示す様に、ロボットの例として4本足ロボット36に環境測定端末20が設置され、環境測定端末20に実装された複数種類のセンサが監視対象となる領域の環境を測定する。4本足ロボット36は、監視対象となる領域の内部で停止したり、低速で走行したりするなどしている間に環境測定端末20に実装された複数種類のセンサが監視対象となる領域の環境を測定する。
4本足ロボット36は、無人飛行体35と同様に、無線による遠隔操作されてもよいし、自律制御による自動走行機能によって走行してもよい。
4本足ロボット36に設置された環境測定端末20に実装された複数種類のセンサの測定データは、無人飛行体35と同様に、Wi-Fi(登録商標)又はブルートゥース(Bluetooth)などの無線通信により火災予兆検知システム10へと送信される。
なお、ロボットは、4本足ロボット36に限定されるものではなく、2本足ロボット、若しくは3本以上の足を持つロボットであってもよいし、足の代わりにタイヤ若しくは車輪を備えるロボットであってもよいし、足、タイヤ、及び車輪を持たず他の移動手段(例えば、レール、ロープなど)を用いて移動するロボットであってもよい。
【0063】
(火災予兆検知システム10のハードウェア構成について)
次に図4を参照して、火災予兆検知システム10のハードウェア構成について説明する。図4は本実施形態に係る火災予兆検知システムのハードウェア構成の一例を説明するためのブロック図である。
【0064】
火災予兆検知システム10は、いわゆるコンピュータであり、通信インターフェース10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、記憶部10d、CPU(Central Processing Unit)10e、及び、入出力インターフェース10f等を備えている。
【0065】
通信インターフェース10aは、火災予兆検知システム10が扱うデータについて、インターネット11を介して他の機器との間の送受信を行う機能を備える。他の機器は、環境測定端末20、及び他の火災予兆検知システム10のことである。火災予兆検知システム10がブルートゥースにより他の機器と接続する場合は、通信インターフェース10aはブルートゥースのインターフェースとなる。また、火災予兆検知システム10が無線LANにより他の機器と接続する場合は、通信インターフェース10aは無線LANのインターフェースとなる。
【0066】
記憶部10dは、火災予兆検知システム10の記憶装置として利用でき、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive)、及びフラッシュメモリ(Flash Memory)などで構成され、更にはクラウドストレージを利用して記憶部10dを構成することもできる。火災予兆検知システム10の記憶部10dは、データベースとして構成されてもよい。記憶部10dをデータベースとして構成することで、膨大なデータを効率よく管理することができ、検索性及びアクセス性に優れ、必要な情報を素早く参照することができるようになる。
【0067】
また、火災予兆検知システム10の記憶部10dは、後述の火災予兆検知プログラム、火災予兆検知システム10が動作する上で必要となるOS(Operating System)、その他の各種アプリケーション、及び当該アプリケーションによって利用される各種データなどが記憶される。
【0068】
火災予兆検知システム10は、後述する火災予兆検知プログラムをROM10b若しくは記憶部10dに保存し、RAM10cなどで構成されるメインメモリに当該火災予兆検知プログラムを取り込む。CPU10eは、当該火災予兆検知プログラムを取り込んだメインメモリにアクセスして、当該火災予兆検知プログラムを実行する。
なお、火災予兆検知プログラムは、環境測定端末20の各々のROM20b若しくは記憶部20dに保存されて、CPU20eによって実行されてもよい。
【0069】
入出力インターフェース10fは、火災予兆検知システム10の外部装置に対してデータなどの送受信を行う。外部装置とは、火災予兆検知システム10に対してデータなどの入出力を行う入力装置10g及び出力装置10hのことである。入力装置10gは例えばキーボード及びマウスなどのことであり、出力装置10hは例えばモニタ、プリンタ、及びスピーカなどのことである。
【0070】
(環境測定端末20のハードウェア構成について)
次に、図5を参照して環境測定端末20のハードウェア構成について説明する。図5は環境測定端末20のハードウェア構成の一例を説明するためのブロック図である。
【0071】
環境測定端末20は、通信インターフェース20a、ROM20b、RAM20c、記憶部20d、CPU20e、及び、入出力インターフェース20f、及び複数種類のセンサを備えている。複数種類のセンサはCPU20eに直接接続される。複数種類のセンサは、匂いセンサ21、2次元サーモパイル放射温度センサ22、気圧センサ23、温湿度センサ24、空気汚れセンサ25、煙センサ26、一酸化炭素センサ27、二酸化炭素センサ28、照度センサ29、騒音センサ30、及び暗視機能付きカメラ31である。複数種類のセンサのうち、2次元サーモパイル放射温度センサ22、気圧センサ23、温湿度センサ24、暗視機能付きカメラ31、及び酸素センサ32の測定データは、I2C通信で後述の環境測定端末20のCPU20eのデータ要求に返答する形式でデジタル出力される。また、二酸化炭素センサ28の測定データは、PWM信号として環境測定端末20のCPU20eに入力される。
また、空気汚れセンサ25、一酸化炭素センサ27、照度センサ29、及び、騒音センサ30の測定データは、差動増幅回路などを経た後に、12bitADC(Analog to digital converter:アナログデジタル変換回路)によりアナログ信号をデジタル信号に変換されて環境測定端末20のCPU20eに入力される。
また、煙センサ26の測定データは、一定時間ピークホールドされた値が12bitADCによりアナログ信号をデジタル信号に変換されて環境測定端末20のCPU20eに入力される。
なお、匂いセンサ21、2次元サーモパイル放射温度センサ22、気圧センサ23、温湿度センサ24、空気汚れセンサ25、煙センサ26、一酸化炭素センサ27、二酸化炭素センサ28、照度センサ29、騒音センサ30、暗視機能付きカメラ31、及び酸素センサ32の通信方式は、これらセンサの仕様変更または改良などに伴い他の通信方式に変更され得る。
【0072】
CPU20eは、匂いセンサ21、2次元サーモパイル放射温度センサ22、気圧センサ23、温湿度センサ24、空気汚れセンサ25、煙センサ26、一酸化炭素センサ27、二酸化炭素センサ28、照度センサ29、騒音センサ30、暗視機能付きカメラ31、及び酸素センサ32を制御して、これら複数種類のセンサの測定データを取得して火災予兆検知システム10へ送信する。
【0073】
通信インターフェース20aは、環境測定端末20が扱うデータについて、インターネット11を介して他の機器との間の送受信を行う機能を備える。他の機器は、主に火災予兆検知システム10のことである。環境測定端末20がブルートゥースにより他の機器と接続する場合は、通信インターフェース10aはブルートゥースのインターフェースとなる。また、環境測定端末20が無線LANにより他の機器と接続する場合は、通信インターフェース20aは無線LANのインターフェースとなる。
【0074】
記憶部10dは、環境測定端末20の記憶装置として利用でき、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive)、及びフラッシュメモリ(Flash Memory)などで構成される。また、環境測定端末20の記憶部20dは、環境測定端末20が動作する上で必要となるファームウェア、及び各種データなどが記憶される。
【0075】
入出力インターフェース20fは、環境測定端末20の外部装置に対してデータなどの送受信を行う。外部装置とは、環境測定端末20に対してデータなどの入出力を行う入力装置及び出力装置(不図示)のことである。
【0076】
なお、環境測定端末20のCPU20eは、PICマイコン(Peripheral Interface Controller micro computer)を用いてもよい。PICマイコンは、パーソナルコンピュータのような汎用的な使用には向かないが、センサなどの周辺機器の制御など特定用途の制御に好適に用いることができる。また、CPU20eとして、M5stack、Raspberry Pi、Arduino、ESPなどのマイコンを用いてもよいし、機器の制御機能を備えた各種半導体などを用いてもよい。
【0077】
(環境測定端末20の回路構成について)
次に、図6a~図6dを参照して、環境測定端末20の回路構成について説明する。図6a~図6dは環境測定端末20の回路構成の一例を説明するための図である。
【0078】
図6aは、環境測定端末20の回路構成のうち、主に空気汚れセンサ25、煙センサ26、及び二酸化炭素センサ28に関するアナログ回路の構成を示す。
図6bは、環境測定端末20の回路構成のうち、主に一酸化炭素センサ27に関するアナログ回路の構成を示す。
図6cは、環境測定端末20の回路構成のうち、主にCPU20eとして用いるPICマイコンの端子の接続に関するデジタル回路の構成を示す。
図6dは、環境測定端末20の回路構成のうち、主に2次元サーモパイル放射温度センサ22、気圧センサ23、温湿度センサ24、及び照度センサ29に関するデジタル回路の構成を示す。
【0079】
(火災予兆検知システム10の機能的構成について)
図7を参照して、火災予兆検知システム10の機能的構成について説明する。図7は火災予兆検知システム10の機能的構成の一例を説明するためのブロック図である。
【0080】
火災予兆検知システム10は、後述する火災予兆検知プログラムを実行することで、CPU10eに、受付部12、測定データ取得部13、予兆有無判定部14、危険度判定部15、報知部16、異常値抽出部17、異常値予兆判定部18、及び閾値再設定部19などの機能部を備える。
【0081】
受付部12は、監視対象となる領域の種類を受け付ける。
受付部12は、火災予兆検知システム10の使用者又は監視対象となる領域の所有者若しくは監督者などが入力する監視対象となる領域の種類を受け付ける。
監視対象となる領域の種類とは、例えば、ビル、物流倉庫、石油化学工場、機械工場、金属工場、食品工場、製薬工場、製紙工場、又は半導体工場などの建設途中の工事現場などのことであり、置かれている物資の違いにより種類が分かれる。なお、監視対象となる領域の種類は、この他にも、住宅、介護施設、保育施設、発電所、森林、ダム、漁港、駅、空港などがあり、更には建設工事中又は建設工事の完了後の何れの場合であってもよく、建築物を伴わない、例えば、畑、公園、グランド、駐車場などの屋外の規模の大きい施設なども監視対象となる領域になり得る。更には、バス、鉄道、船、飛行機、潜水艇、宇宙船などの移動体の内部についても、監視対象の領域となり得る。
【0082】
測定データ取得部13は、複数種類のセンサによって取得された監視対象となる領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する。
測定データ取得部13は、複数種類のセンサから直接的に測定データを取得してもよいし、又は、インターネット11上にあるサーバなどに一旦記憶された複数種類のセンサの測定データを、当該サーバから取得してもよい。このサーバは、例えば、IoTサーバのことを言い、オンプレミス型サーバ又はクラウド型サーバのことである。
複数の指標とは、監視対象となる領域における、匂い、気圧、温度、湿度、空気の汚れ、煙の濃度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、照度、騒音の大きさなどのことをいう。
測定データ取得部13は、取得した複数種類のセンサの測定データを記憶部10dに保存する。
【0083】
測定データ取得部13は、複数の指標の各々の測定データに一又は複数の閾値が設定され、指標の各々において閾値を超えた測定データを複数種類のセンサの各々から取得することとしてもよい。
【0084】
環境測定端末20において、複数種類のセンサの測定データの各々に1又は複数の閾値が設定され、CPU20eが閾値を超えたと判定した測定データを火災予兆検知システム10に送信する。測定データ取得部13は、環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ向けて送信された測定データを取得する。
複数種類のセンサの測定データは膨大なデータ容量になることが想定されるため、火災予兆検知システム10において有用と思われる測定データのみを送信することは、環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信する測定データを少なくすることができる。
【0085】
閾値は、火災予兆検知システム10へ送信する測定データの下限又は上限を規定する場合は1個設定される。例えば、下限の閾値が設定された場合、設定された閾値以上の測定データが環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信される。また、上限の閾値が設定された場合、設定された閾値以下の測定データが環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信される。
【0086】
閾値は、1種類の測定データに対して複数設定されてもよく、火災予兆検知システム10へ送信する測定データの下限及び上限を規定し、1つの帯域の測定データのみ環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信する場合は2個設定される。例えば、下限の閾値と上限の閾値とが設定された場合、設定された下限の閾値から上限の閾値までの値をとる測定データが環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信される。2つの帯域の測定データが環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信される場合、1つの指標の測定データに対して合計4個の閾値が規定される。
【0087】
予兆有無判定部14は、測定データ取得部13が取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
予兆有無判定部14は、監視対象となる領域の種類と、当該領域の環境の指標の測定データの組合せとの対応関係を定めたテーブルを参照して、受付部12が受け付けた監視対象となる領域の種類に基づいて、指標の測定データの組合せを決定する。
【0088】
図8を参照して、テーブルについて説明する。図8は監視対象となる領域の種類と当該領域の環境の複数の指標の測定データの組合せとの対応関係を定めたテーブルの一例を示す図である。
テーブルは、監視対象となる領域の種類ごとに、予兆有無判定部14が監視対象となる領域の火災の予兆の有無の判定に用いる指標の測定データの組合せを規定する。当該テーブルが規定する組み合わせは一例に過ぎず、これに限定されるものでは無く、変更され得るものである。
【0089】
監視対象となる領域がビルの建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、温度、二酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
監視対象となる領域が物流倉庫の建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、温度、二酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
【0090】
監視対象となる領域が石油化学工場の建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、温度、空気の汚れ、一酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
監視対象となる領域が機械工場の建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、温度、煙の濃度、二酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
【0091】
監視対象となる領域が金属工場の建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、温度、煙の濃度、二酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
監視対象となる領域が食品工場の建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、湿度、一酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
【0092】
監視対象となる領域が製薬工場の建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、気圧、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
監視対象となる領域が製紙工場の建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、気圧、温度、二酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
【0093】
監視対象となる領域が半導体工場の建築中の工事現場である場合、予兆有無判定部14は、匂い、温度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、及び酸素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
【0094】
図9を参照して、予兆有無判定部14の監視対象となる領域の火災の予兆の有無の判定について説明する。図9は監視対象となる領域の環境の複数の指標の測定データの組合せの一例を説明するための図である。
【0095】
図9に示す例では、予兆有無判定部14は、監視対象となる領域の環境の複数の指標として、一酸化炭素濃度、温度、及び二酸化炭素濃度の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
一酸化炭素濃度のグラフ線41、温度のグラフ線42、及び二酸化炭素濃度のグラフ線43は、それぞれ時間の経過による変化を示している。予兆有無判定部14は、一酸化炭素濃度、温度、及び二酸化炭素濃度の測定データの時間の経過による移り変わりの態様を複合的観点からみて監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
【0096】
従って、測定データの各々に閾値を設けることなく、一酸化炭素濃度、温度、及び二酸化炭素濃度の測定データの相関に基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無が判定される。相関とは、二つ以上のものが密接に関わり合い、一つが変化すると他の残りのものも変化するような関係をいう。
【0097】
報知部16は、予兆有無判定部14により監視対象となる領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、当該領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する。
報知部16は、当該領域の監視者に対して、電子メール、プッシュ通知、所定の電話番号への架電、及び警報音の鳴動などでもって報知する。プッシュ通知とは、スマートフォンなどのアプリケーションの機能を利用して通知を行うことをいう。
【0098】
予兆有無判定部14は、監視対象となる領域の環境の所定の指標の測定データの組合せと当該領域の火災の予兆の有無との対応関係を予め学習した予兆学習モデルを用い、当該予兆学習モデルに、測定データ取得部13が取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せを入力することで、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。
【0099】
予兆学習モデルの教師有り学習データは次のように作成される。
火災の予兆有りのアノテーションが付された学習データは、火災の予兆が有る状態の監視対象となる領域の環境の指標の測定データの組合せに対して、当該測定データの組合せにおける当該領域の火災の予兆が有ったとするメタデータを付与することで一組のデータセットとして生成される。
【0100】
火災の予兆無しのアノテーションが付された学習データは、火災の予兆が無い状態の監視対象となる領域の環境の指標の測定データの組合せに対して、当該測定データの組合せにおける当該領域の火災の予兆が無かったとするメタデータを付与することで一組のデータセットとして生成される。
火災の予兆有りのアノテーションが付された学習データと火災の予兆無しのアノテーションが付された学習データとをそれぞれ多数作成し、多数の学習データでもって予兆学習モデルを機械学習することで、予兆学習モデルの予測精度は向上する。
なお、予兆学習モデルの学習データは、監視対象となる領域の種類の一つひとつについて作成される必要がある。
【0101】
また、予兆学習モデルの学習データは、火災予兆検知システム10の運用によって取得された監視対象となる領域の環境の測定データを用いて新たに作成される。当該測定データが所定数蓄積されるたびに学習データを新たに作成し、予兆学習モデルに機械学習を施すことで学習量が増えて予兆学習モデルの予測精度を向上させることができる。
【0102】
危険度判定部15は、予兆有無判定部14により監視対象となる領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、予兆有無判定部14の当該判定の根拠となった所定の当該領域の環境の複数の指標の測定データの組合せに基づいて、当該火災の予兆の危険度を判定する。
報知部16は、予兆有無判定部14により監視対象となる領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、当該領域の監視者に火災の予兆が有ること及び危険度判定部15により判定された当該予兆の危険度を報知する。
【0103】
危険度とは、検知された火災の予兆から発生することが予想される火災損害のことをいう。火災損害とは、焼き損害と消火損害とを合わせた損害のことをいい、焼き損害は火災の炎や高温によって焼けたり、壊れたり、変質したものなどの損害のことであり、消火損害は消火のために受けた水濡れ損害、消火中に生じた破損や汚損などの損害のことである。なお、危険度はこれに限らず、他の損害を考慮してもよい。例えば、火災損害の消火のための経費の予測値を含めてもよいし、人命に関わる損害である人的損害を考慮してもよい。
危険度のレベル(等級)の区分は複数に分けられていてもよく、例えば、2区分、3区分、又は5区分などに分けられる。本実施形態の危険度について、損害の大きい順に、レベル1、レベル2、レベル3の三段階に区分されているものとする。
【0104】
危険度判定部15は、監視対象となる領域の環境の所定の指標の測定データの組合せと当該領域の火災の予兆の危険度との対応関係を予め学習した危険度学習モデルを用い、危険度学習モデルに、予兆有無判定部14の当該領域の火災の予兆が有るとする判定の根拠となった所定の当該指標の測定データの組合せを入力することで、当該領域の火災の予兆の危険度を判定する。
【0105】
危険度学習モデルの教師有り学習データは次のように作成される。
危険度をレベル1とするアノテーションが付された学習データは、危険度がレベル1の状態の監視対象となる領域の環境の指標の測定データの組合せに対して、当該測定データの組合せにおける当該領域の火災の予兆の危険度がレベル1であったとするメタデータを付与することで一組のデータセットとして生成される。
危険度をレベル2とするアノテーションが付された学習データは、危険度がレベル2の状態の監視対象となる領域の環境の指標の測定データの組合せに対して、当該測定データの組合せにおける当該領域の火災の予兆の危険度がレベル2であったとするメタデータを付与することで一組のデータセットとして生成される。
危険度をレベル3とするアノテーションが付された学習データは、危険度がレベル3の状態の監視対象となる領域の環境の指標の測定データの組合せに対して、当該測定データの組合せにおける当該領域の火災の予兆の危険度がレベル3であったとするメタデータを付与することで一組のデータセットとして生成される。
【0106】
危険度をレベル1、レベル2、及びレベル3とするアノテーションが付された学習データの各々において多数作成し、多数の学習データでもって危険度学習モデルを機械学習することで、危険度学習モデルの予測精度は向上する。
なお、危険度学習モデルの学習データは、予兆学習モデルの学習データと同様に、監視対象となる領域の種類の一つひとつについて作成される必要がる。
【0107】
また、危険度学習モデルの学習データは、予兆学習モデルの学習データと同様に、火災予兆検知システム10の運用によって取得された監視対象となる領域の環境の測定データを用いて新たに作成される。当該測定データが所定数蓄積されるたびに学習データを新たに作成し、危険度学習モデルに機械学習を施すことで学習量が増えて危険度学習モデルの予測精度を向上させることができる。
【0108】
異常値抽出部17は、測定データ取得部13が取得した測定データを教師なしクラスタリングすることで、この測定データに含まれる、監視対象となる領域の環境の複数の指標の各々の測定データの外れ値を、複数の指標の各々の測定データの異常値として抽出する。
異常値抽出部17は、測定データ取得部13が取得した測定データを教師なし学習データとし、この教師なし学習データに対してクラスタリングを行う。
外れ値とは、他と比べて極端に小さい値または極端に大きな値のことをいう。
異常値抽出部17は、例えばK-means又は階層的クラスタリングなどのアルゴリズムを用いて、測定データ取得部13により取得された監視対象となる領域の環境の複数の指標の各々の測定データの内部の類似性に基づいて、これら測定データ内にグループ(クラスター)を作るとともに、そのグループにも属さない外れ値を異常値として抽出する。このクラスタリングは、監視対象となる領域の環境の複数の指標の測定データの夫々に対して行われ、複数の指標の測定データごとに異常値を抽出する。
クラスタリングとは、教師なし学習の一種であり、ラベル(アノテーション)の無いデータを対象とし、データ間の類似度(距離)を計算して、データをいくつかのグループ(クラスター)に分類する分析手法である。クラスタリングは、全てのデータ間の距離を計算する。
クラスタリングは、データをグループ化するので、データのパターン又は構造が見つけ易くなるとともに、グループから外れるデータの外れ値を見つけ易くするものである。従って、クラスタリングは、データに含まれる異常値の抽出に役立つものである。
クラスタリングは、結合型(アグロメラティブ)アルゴリズムと分離型(ディビシブ)アルゴリズムがある。結合型(アグロメラティブ)とは、最初に各データを1つのクラスターとして扱い、徐々にクラスターを統合していく方式である。分離型(ディビシブ)とは、はじめにすべてのデータを1つのクラスターとして扱い、そこから事前に指定したクラスター(グループ)数になるまで分割していく方式である。
異常値抽出部17は、教師なし学習の一種であるクラスタリングを用いることで、教師あり学習データを作成するという手間のかかる作業をすることなく、測定データ取得部13が取得した膨大な測定データの中から異常値を抽出することができる。
なお、火災予兆検知システム10が実行する教師なし学習は、クラスタリングに限定されるものではなく、他の教師なし学習を実行してもよい。火災予兆検知システム10は、例えば、取得したデータそのものが持つ構造及び特徴の分析を行うために、取得したデータの中で頻出するパターンを発見するため、取得したデータのグループ分け、又は取得したデータの簡略化を行うためなどに教師なし学習を用いてもよい。
また、火災予兆検知システム10は、例えば教師なし学習の一種である敵対的生成ネットワークを用いてもよく、取得したデータから特徴を学習することによって実在しないデータの生成、又は取得したデータの特徴に沿ってデータを変換することが可能となる。
また、火災予兆検知システム10は、例えば教師なし学習の一種であるアソシエーション分析を用いてもよく、取得したデータ同士の間の関連性を発見することが可能となる。
また、火災予兆検知システム10は、例えば教師なし学習の一種である主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)を用いてもよく、取得したデータが持つ複数の説明変数を要約(次元削減)し新たな説明変数を見出して、この新たな説明変数を当該データの主成分とすることで当該データを理解しやすくすることが可能となる。
【0109】
異常値予兆判定部18は、異常値抽出部17により抽出された異常値に基づいて領域の火災の予兆の有無を判定する。
異常値予兆判定部18は、異常値抽出部17により抽出された異常値が予め設定された閾値を超えた場合に監視対象となる領域の火災の予兆が有ると判定してもよい。この閾値は監視対象となる領域の環境の複数の指標の各々に設定され、複数の指標の各々の測定データの何れかにおいて異常値が、設定された閾値を超えた場合に、異常値予兆判定部18は監視対象となる領域の火災の予兆が有ると判定することとしてもよいし、又は所定の数の指標において異常値が閾値を超えた場合に監視対象となる領域の火災の予兆が有ると判定することとしてもよい。
又は、異常値予兆判定部18は、異常値抽出部17により抽出された異常値と、監視対象となる領域の火災の予兆の有無との対応関係を予め学習した学習モデルを用いて、異常値抽出部17により抽出された異常値に基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定することとしてもよい。
異常値予兆判定部18は異常値抽出部17により抽出された異常値に基づいて領域の火災の予兆の有無を判定し、予兆有無判定部14は測定データ取得部13が取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せに基づいて監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する。従って、異常値予兆判定部18と予兆有無判定部14とは、異なる2個の基準(一方は異常値、他方は測定データの組合せ)により監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定することができる。
【0110】
閾値再設定部19は、異常値抽出部17が抽出した異常値に基づいて、複数の指標の各々の測定データの閾値を再設定する。
閾値再設定部19は、異常値抽出部17が監視対象となる領域の環境の複数の指標ごとに抽出した異常値に基づいて、測定データ取得部13が複数種類のセンサの各々から測定データを取得する際に用いる閾値を再設定する。
閾値再設定部19は、例えば異常値の70%の値を閾値に設定するなどしてもよいが、70%に限定されるものではなく、1%から99%の間の何れの値であってもよい。
測定データ取得部13は、複数の指標の各々において閾値再設定部19により再設定された閾値を超えた測定データを複数種類のセンサの各々から取得する。
なお、閾値再設定部19は、1種類の測定データに対して閾値を複数設定してもよく、火災予兆検知システム10へ送信する測定データの下限及び上限を再設定し、1つの帯域の測定データのみ環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信する場合は2個再設定される。例えば、下限の閾値と上限の閾値とが再設定された場合、再設定された下限の閾値から上限の閾値までの値をとる測定データが環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信される。2つの帯域の測定データが環境測定端末20から火災予兆検知システム10へ送信される場合、1つの指標の測定データに対して合計4個の閾値が再設定される。
閾値再設定部19によれば、異常値抽出部17が抽出した異常値に基づいて測定データ取得部13が用いる閾値を再設定することができる。
【0111】
(火災予兆検知システム10の実験結果について)
次に図10を参照して、火災予兆検知システム10の実験結果について説明する。図10は火災予兆検知システム10の実験結果の一例について説明するための図である。
【0112】
図10は、監視対象となる領域の2次元平面を縦8個×横8個に配列した計64個の区画に区切って示す2次元サーモパイル放射温度センサ22の温度分布の測定結果を示す。図10の1個のマスが2次元平面の1つの区画に相当し、各マスの中の数字が各区画の温度(℃)を示す。
図10に示す様に、2次元サーモパイル放射温度センサ22の温度分布の測定結果は、温度の最も高い区画が示されることで当該区画に火災の予兆の原因が存在する可能性のある区画を示唆することができる。更に、区画の温度に応じて、温度分布の測定結果を示すマスの色を変えることで、温度分布が視覚的に認識され易くなる。
【0113】
(火災予兆検知方法及び火災予兆検知プログラムについて)
次に図11を参照して、本発明の一実施形態に係る火災予兆検知プログラムについて、火災予兆検知方法とともに説明する。図11は本実施形態に係る火災予兆検知プログラムのフローチャートの一例である。
【0114】
火災予兆検知方法は、火災予兆検知プログラムに基づいて、火災予兆検知システム10のCPU10eにより実行される。
火災予兆検知プログラムは、図11に示す様に、受付ステップS12、測定データ取得ステップS13、予兆有無判定ステップS14、危険度判定ステップS15、及び報知ステップS16を備える。
【0115】
火災予兆検知プログラムは、火災予兆検知システム10のCPU10eに対して、受付機能、測定データ取得機能、予兆有無判定機能、危険度判定機能、及び報知機能の各種機能を実現させる。これらの機能は、図11のフローチャートに示される順に実行されるが、適宜、順序を入れ替えて実行することもできる。なお、各機能は前述の火災予兆検知システム10の各種機能部の説明と重複するため、その詳細な説明は省略する。
【0116】
受付機能は、監視対象となる領域の種類を受け付ける(S12:受付ステップ)。
受付機能は、火災予兆検知システム10の使用者又は監視対象となる領域の所有者若しくは監督者などが入力する監視対象となる領域の種類を受け付ける。
【0117】
測定データ取得機能は、複数種類のセンサによって取得された監視対象となる領域の環境の複数の指標の各々の測定データを取得する(S13:測定データ取得ステップ)。
測定データ取得機能は、環境測定端末20から複数種類のセンサの測定データを取得する。
【0118】
予兆有無判定機能は、測定データ取得機能において取得した測定データの中から選択された所定の指標の測定データの組合せに基づいて、監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定する(S14:予兆有無判定ステップ)。
【0119】
危険度判定機能は、予兆有無判定機能において監視対象となる領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、予兆有無判定機能における当該判定の根拠となった所定の当該領域の環境の複数の指標の測定データの組合せに基づいて、当該火災の予兆の危険度を判定する(S15:危険度判定ステップ)。
【0120】
報知機能は、予兆有無判定機能において監視対象となる領域に火災の予兆が有ると判定された場合に、当該領域の監視者に火災の予兆が有ることを報知する(S16:報知ステップ)。
【0121】
(他の実施形態に係る火災予兆検知方法及び火災予兆検知プログラムについて)
図12を参照して、他の実施形態に係る火災予兆検知プログラムについて、火災予兆検知方法とともに説明する。図12は他の実施形態に係る火災予兆検知プログラムのフローチャートの一例である。
図12に示した他の実施形態に係る火災予兆検知プログラムのフローチャートは、図11に示した火災予兆検知プログラムのフローチャートと比べて、異常値抽出ステップS17、異常値予兆判定ステップS18、及び閾値再設定ステップS19が追加された点で異なる。
他の実施形態に係る火災予兆検知方法は、図12に示した他の実施形態に係る火災予兆検知プログラムに基づいて、火災予兆検知システム10のCPU10eにより実行される。
図12に示した他の実施形態に係る火災予兆検知プログラムは、受付ステップS12、測定データ取得ステップS13、予兆有無判定ステップS14、危険度判定ステップS15、報知ステップS16、異常値抽出ステップS17、異常値予兆判定ステップS18、及び閾値再設定ステップS19などを備える。
【0122】
図12に示した他の実施形態に係る火災予兆検知プログラムは、火災予兆検知システム10のCPU10eに対して、受付機能、測定データ取得機能、予兆有無判定機能、危険度判定機能、報知機能、異常値抽出機能、異常値予兆判定機能、及び閾値再設定機能などを実現させる。これらの機能は図12のフローチャートに示される順に実行されるが、適宜、順番を入れ替えて実行することもできる。
以下、図12に示した他の実施形態に係る火災予兆検知方法、及び火災予兆検知プログラムについて、図11に示した火災予兆検知方法、及び火災予兆検知プログラムに対して異なる点についてのみ説明する。
また、各機能は前述の火災予兆検知システム10の各種機能部の説明と重複するため、その詳細な説明は省略する。
【0123】
異常値抽出機能は、測定データ取得機能が取得した測定データを教師なしクラスタリングすることで、測定データに含まれる領域の環境の複数の指標の各々の測定データの外れ値を、複数の指標の各々の測定データの異常値として抽出する(S17:異常値抽出ステップ)。
【0124】
異常値予兆判定機能は、異常値に基づいて領域の火災の予兆の有無を判定する(S18:異常値予兆判定ステップ)。
【0125】
閾値再設定機能は、異常値に基づいて、複数の指標の各々の測定データの閾値を再設定する(S19:閾値再設定ステップ)。
【0126】
上記した実施形態の火災予兆検知システム10によれば、監視対象となる領域に対して、匂いセンサ21、2次元サーモパイル放射温度センサ22、気圧センサ23、温湿度センサ24、空気汚れセンサ25、煙センサ26、一酸化炭素センサ27、二酸化炭素センサ28、照度センサ29、騒音センサ30、及び暗視機能付きカメラ31の複数のセンサを用いて、複数の環境の指標でもって監視するため、火災の予兆を早期に検知することができる。
【0127】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、監視対象となる領域の複数の環境の指標の測定データの組合せに基づき、機械学習された予兆学習モデルを用いて当該領域の火災の予兆の有無を判定するので、環境の指標の測定データに閾値を設定して測定データが当該閾値を超えたか否かによって火災の予兆の有無を判定する場合と比較して、測定データに対して閾値を固定することなく、複数の環境の指標の相関を考慮して火災の予兆の有無を判定するので、より現実に近い判定を早期に行うことができる。
【0128】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、監視対象となる領域の種類に応じて、当該領域の環境の指標の測定データの組合せを決定するので、当該領域の特性に合わせて火災の予兆の有無を判定することができるので、より早く火災の予兆の有無を判定することができる。
【0129】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、機械学習された危険度学習モデルを用い火災の予兆が有ると判定された領域の危険度を判定するので、より正確に危険度を判定することができる。
【0130】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、監視対象となる領域の酸素濃度を加味して、当該領域の火災の予兆の有無を判定することができる。
【0131】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、監視対象となる領域の酸素濃度を加味して、火災の予兆の危険度を判定することができる。
【0132】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、無人飛行体35又はロボット36に環境測定端末20を搭載しているので、ユーザは自分の好きな領域に環境測定端末20を移動させることができて、その領域の火災の予兆の有無を判定することができる。
【0133】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、教師なし学習の一種であるクラスタリングを用いることで、教師あり学習データを作成するという手間のかかる作業をすることなく、測定データ取得部13が取得した膨大な測定データの中から異常値を抽出することができる。
【0134】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、異常値予兆判定部18と予兆有無判定部14とは、異なる2個の基準(一方は異常値、他方は測定データの組合せ)により監視対象となる領域の火災の予兆の有無を判定することができる。
【0135】
さらに、火災予兆検知システム10によれば、閾値再設定部19は異常値抽出部17が抽出した異常値に基づいて測定データ取得部13が用いる閾値を再設定することができる。
【0136】
なお、本発明は上記した実施形態に係る火災予兆検知システム10、火災予兆検知方法、及び、火災予兆検知プログラムに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、若しくは応用例により実施可能である。
【符号の説明】
【0137】
10 火災予兆検知システム
10a 通信インターフェース
10b ROM
10c RAM
10d 記憶部
10e CPU
10f 入出力インターフェース
10g 入力装置
10h 出力装置
11 インターネット
12 受付部
13 測定データ取得部
14 予兆有無判定部
15 危険度判定部
16 報知部
17 異常値抽出部
18 異常値予兆判定部
19 閾値再設定部
20 環境測定端末
20a 通信インターフェース
20b ROM
20c RAM
20d 記憶部
20e CPU
20f 入出力インターフェース
21 匂いセンサ
22 2次元サーモパイル放射温度センサ
23 気圧センサ
24 温湿度センサ
25 空気汚れセンサ
26 煙センサ
27 一酸化炭素センサ
28 二酸化炭素センサ
29 照度センサ
30 騒音センサ
31 暗視機能付きカメラ
32 酸素センサ
33 天井
34 スタンド
35 無人飛行体
36 4本足ロボット
37 ヘルメット
41 一酸化炭素濃度のグラフ線
42 温度のグラフ線
43 二酸化炭素濃度のグラフ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
図8
図9
図10
図11
図12