(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021700
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】排水ドレン、排水構造及び排水ドレンの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
E04D13/04 D
E04D13/04 C
E04D13/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125606
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】323008811
【氏名又は名称】株式会社TUKAX
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】塚田 友幸
(57)【要約】
【課題】高い防水性を確保するとともに、部品コスト及び施工コストを低減することができる排水ドレン及びその施工方法を提供すること。
【解決手段】溜まった水を排水するために配管に接続して取り付ける排水ドレン100を、樹脂製の配管300に直接接続される筒状部1と、筒状部1の基端部11に一体に形成されたフランジ部2とを備え、筒状部1の先端部12は有機溶剤Oにより配管300と溶着固定可能に構成されるとともに、フランジ部2は樹脂製の防水シート200と有機溶剤Oにより溶着固定可能に構成されるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溜まった水を排水するために配管に接続して取り付ける排水ドレンにおいて、
樹脂製の配管に直接接続される筒状部と、
前記筒状部の基端部に一体に形成されたフランジ部とを備え、
前記筒状部の先端部は有機溶剤により前記配管と溶着固定可能に構成されているとともに、
前記フランジ部は樹脂製の防水シートと有機溶剤により溶着固定可能に構成されていることを特徴とする、排水ドレン。
【請求項2】
前記筒状部及び前記フランジ部は硬質塩化ビニル樹脂のシート材を素材として継ぎ目なく一体に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の排水ドレン。
【請求項3】
前記筒状部は基端部から先端部にかけて徐々に直径が小さくなるテーパー状に形成され、
前記先端部は前記配管の内径よりも小さく、前記基端部は前記配管の内径よりも大きいことを特徴とする、請求項1または2に記載の排水ドレン。
【請求項4】
溜まった水を排水する排水構造において、請求項1に記載の排水ドレンと、前記排水ドレンを水密に被覆する樹脂製の防水シートと、前記排水ドレンと水密に接続される配管とを備え、
前記排水ドレンのフランジ部と前記防水シートとは有機溶剤により一体に溶着固定され、
前記排水ドレンの筒状部と前記配管とが一体に溶着固定されていることを特徴とする、排水構造。
【請求項5】
請求項1に記載の排水ドレンの施工方法であって、
前記フランジ部または取付対象部に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記筒状部に有機溶剤を塗布する第一の溶剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程及び前記第一の溶剤塗布工程に次いで前記筒状部を前記配管に挿入して溶着固定するとともに、前記フランジ部を取付対象部に当接させて取り付ける溶着取付工程と、
前記溶着取付工程に次いで前記フランジ部の表面または軟質塩化ビニル樹脂製の防水シートの裏面に有機溶剤を塗布する第二の溶剤塗布工程と、
前記第二の溶剤塗布工程に次いで前記防水シートを前記フランジ部の表面に被覆して溶着固定するシート溶着工程とを有することを特徴とする、排水ドレンの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等の構造体に溜まった水を排水するために配管に接続して取り付ける排水ドレンに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの屋上やバルコニー等においては、雨水や清掃に用いた水を外部に排水するための排水構造が設けられている。一般的には、水が溜まりやすい床面や、床面とパラペット等の壁面との入隅部に排水口を設け、配管を介して外部に排水するように構成されている。
この排水口には、排水ドレンと呼ばれる部材が用いられる。排水ドレンは、建物等の構造体内部に設けられた配管と排水口とを水密に接続させる役割を担っている。
【0003】
前述の排水ドレンを取り付ける場合には、取付対象部となる床面や入隅部に対する防水性及び配管に対する防水性の確保が重要であり、施工において防水性が確保できないと漏水が生じて建物等の構造体の腐食や劣化の原因となる。
そのため、排水ドレンの表面に別途軟質樹脂製の防水シートを被覆して固定する一方で、配管に対しては継手を介して接着剤を用いて固定する方法や、配管にねじ加工を施して固定を行うのが一般的になっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、繊維強化樹脂製の横引きドレイン管(前述の「排水ドレン」に相当)に対して、エルボ型の継手を介して塩化ビニル製排水管(前述の「配管」に相当)と接続する例が開示されている。
詳述すると、特許文献1の横引きドレイン管800は、
図7に示すように、L字状に形成された鍔板本体81と管本体82とを備えている。これら鍔板本体81と管本体82とは、マトリックス樹脂に軟質樹脂を用いた繊維強化樹脂によって構成されている。そして、管本体82は塩化ビニル製排水管に連結されるとされている。
また、鍔板本体81と床及び壁とを覆うようにガラス繊維シートを接着剤により敷設することで、鍔板本体81と床及び壁との隙間に水が侵入することを防止している。
【0005】
管本体82及び塩化ビニル製排水管と継手との接続の詳細については言及されていないが、
図7に示すようなエルボ型の継手を介して塩化ビニル製排水管と接続する場合には、一般的に接着剤を塗布して接着固定する方法が採用される。エルボ型に限らず配管用の継手は内径部がテーパー状に形成されており、塩化ビニル製排水管を挿入することで継手の管体が僅かに弾性変形して拡開する。その反発力によって塩化ビニル製排水管の外径部と継手の内径部とを確実に密着させることができる。特許文献1の技術においても、横引きドレイン管800側に対しても同様の作用を利用して接着固定するものと解される。
なお、特許文献1の技術では、管本体82はテーパー状に先細りする構成とされているが、これは継手の内径に応じて適宜の深さに挿入して密着固定させることで、種々の内径の継手に対応させるためと解される。
【0006】
また、特許文献2には、横引き用のルーフドレン(前述の「排水ドレン」に相当)と横引き管(前述の「配管」に相当)とをねじによって接続する例が開示されている。
詳述すると、特許文献2のルーフドレイン900は、
図8に示すように、L字状に形成された本体部91に防水シート92の浮きを押さえるシート押え部93が固定されており、シート押え部93にストレーナ94が固定されて構成されている。
本体部91には円筒形状に延びる接続部95が備えられており、接続部95の内周部には雌ねじ加工が施されている。そして、外周部に雄ねじ加工が施された横引き管96とねじ固定されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3206461号公報
【特許文献2】特開2018-168659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、鍔板本体と防水シートであるガラス繊維シートとの防水性を接着剤によって確保している。また、管本体82と継手との防水性も接着剤によって確保している。
接着剤は、液状の合成樹脂等が固体化することで接着する。塗布時には接着面の微細な凹凸に入り込むため接触面積が大きくなることで、固体化したときの分子間力が増大するため強い接着力を発揮する。
【0009】
しかし、接着剤による固定の場合、接着剤を構成している合成樹脂が接着対象部との間に介在しているにすぎず、分子間力による接着力を超える力が加わると接着層が剥離したり破断したりして防水性を確保できなくなる恐れがある。
特に、防水シート等の広い面積に接着剤を塗布する場合には、その一部が剥離することで防水シートが浮いて波打ち、そこに力が加わって剥離が進展する可能性がある。このような理由から、防水シートを接着により固定する場合には、防水性を向上させるために、特許文献2のような防水シートの押さえを別途設けることが従来から行われており、製造コストや施工コストが増大するという問題があった。
【0010】
また、排水ドレンと配管とを継手を介して接続する場合には、接着剤による防水性の低下の問題の他、継手の部品コストと施行の手間によって施工コストが増大するという問題がある。
一方、特許文献2では、継手を介さず排水ドレンと配管とを直接接続している。しかし、ねじによる固定の場合、排水ドレン及び配管に対するねじ加工の手間が増大する。また、ねじのみでは隙間から漏水する懸念があるため、シーリング剤を併用しなければならず、部品の加工コストに加えて施工コストも増大するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い防水性を確保するとともに、部品コスト及び施工コストを低減することができる排水ドレン、排水構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明の排水ドレンは、建物等の構造体において、雨水や清掃に用いた水等が溜まった際、その水を排水するために配管に接続して取り付ける排水ドレンである。本発明の排水ドレンは、樹脂製の配管に直接接続される筒状部と、前記筒状部の基端部に一体に形成されたフランジ部とを備えている。
【0013】
また、前記筒状部の先端部は有機溶剤により前記配管と溶着固定可能に構成されているとともに、前記フランジ部は樹脂製の防水シートと有機溶剤により溶着固定可能に構成されている。
【0014】
筒状部が配管と有機溶剤で溶着可能に構成されていることにより、配管に有機溶剤を塗布して配管と当接させると、配管の素材と筒状部の素材とが溶融して表面の一部が混ざりあった状態で結合する。素材が混ざり合った状態で結合すると、混ざり合った体積の範囲において結合のための分子間力が働く。
一方、接着剤の接着の場合には、互いの素材と接着剤の合成樹脂とが接している面においてのみ結合のための分子間力が働く。
上記のように、本発明の構成では、接着剤による接着の場合と比較して、結合のための分子間力が働く範囲が大きくなるため、強固に結合させることができる。
【0015】
有機溶剤により溶着固定可能に構成する点については、フランジ部においても同様である。フランジ部と樹脂製の防水シートとを有機溶剤により溶着固定可能とすることにより、接着剤によってフランジ部と防水シートとを接着する場合と比較して、強固に結合させることができる。
【0016】
上述のように、本発明の排水ドレンは、筒状部の先端部が有機溶剤により配管と溶着固定可能に構成されているとともに、フランジ部が樹脂製の防水シートと有機溶剤により溶着固定可能に構成されている。このような構成により、有機溶剤を用いて施工することで、防水シート・排水ドレン・配管の3者が強固に結合されて一体化される。そのため、施工時及び施工後において、外力が生じた場合であっても、結合部が剥離したり破断したりして防水性を喪失することがなくなるという特徴がある。
【0017】
前述の課題を解決するために本発明が採用した手段としては、上記手段に加え、前記筒状部及び前記フランジ部を硬質塩化ビニル樹脂のシート材を素材として継ぎ目なく一体に形成することも可能である。
前記手段においては、筒状部とフランジ部とが、硬質塩化ビニル樹脂のシート材を素材として継目なく一体に形成されていればその製造方法は問わないが、一例として挙げるならば、例えば真空成形により継ぎ目なく一体に形成する方法等を採用することができる。
【0018】
本発明における硬質塩化ビニル樹脂の硬質とは、JIS K 6741に記載の「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質に相当する。
【0019】
筒状部とフランジ部とがシート材と素材として継目なく一体に形成されていることで、強度が低下しやすい段差部分や結合部が存在しない。そのため、力が加わったときに破断して防水性を喪失する可能性が低くなる。
また、シート材の素材として硬質塩化ビニル樹脂を用いることで、樹脂それ自体の強度が高いことに加え、一般的に塩化ビニル樹脂から構成されている配管や防水シートとの有機溶剤による溶着性が向上する。つまり、同種の素材が溶融して混ざり合い結合するため、異種素材同士が溶着する場合よりも、より強固に結合させることができる。
【0020】
前述の課題を解決するために本発明が採用した他の手段としては、前記筒状部を基端部から先端部にかけて徐々に直径が小さくなるテーパー状に形成し、前記先端部を前記配管の内径よりも小さく、前記基端部は前記配管の内径よりも大きくすることも可能である。
【0021】
筒状部をテーパー状に形成し、基端部よりも先端部の方が小さくなるように形成することで、平行管体を有する一般的な配管に挿入した場合に、配管の内壁と筒状部のテーパー状の先端部の稜線とが強く当接する。稜線が強く当接すると、筒状部が内側に僅かに弾性変形するため、その反発力によって筒状部と配管の内壁とが隙間なく密接するうえ、有機溶剤により溶融した部分が隙間なく密着固定される。
これにより、施工時には、配管に筒状部を挿入するだけで確実な防水性と強度を得ることができる。
【0022】
また、本発明の他の手段として、溜まった水を排水する排水構造において、上述の排水ドレンと、前記排水ドレンを水密に被覆する樹脂製の防水シートと、前記排水ドレンと水密に接続される配管とを備え、前記排水ドレンのフランジ部と前記防水シートとは有機溶剤により一体に溶着固定され、前記排水ドレンの筒状部と前記配管とが一体に溶着固定されている構成とすることも可能である。
【0023】
上記排水構造の構成により、防水シート・排水ドレン・配管の3つが有機溶剤によって溶着固定されるため、相互に強固に結合されて一体化される。3つが溶融一体化されていることで、排水構造全体として高い強度を備えることができるため、施工後においても、長期間にわたって防水性能を維持することができる。
【0024】
一方、本発明においては、前述の排水ドレンの施工方法として、以下の工程を有する方法を採用することも可能である。
まず、本発明の排水ドレンの施工方法は、前記フランジ部または取付対象部に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記筒状部に有機溶剤を塗布する第一の溶剤塗布工程とを有する。これら接着剤塗布工程と第一の溶剤塗布工程とは何れが先であっても構わない。
【0025】
次に、前記接着剤塗布工程及び前記第一の溶剤塗布工程に次いで前記筒状部を前記配管に挿入して溶着固定するとともに、前記フランジ部を取付対象部に当接させて取り付ける溶着取付工程を有する。
溶着取付工程においては、筒状部と配管の溶着と、フランジ部の取付対象部への取付は同時に行う他、何れかが先に行われてもよい。また、フランジ部の取付対象部への取付は特定の手段に限定されるものではないが、一例を挙げるならば接着剤による固定やねじによる固定が挙げられる。
【0026】
次に、前記溶着取付工程に次いで前記フランジ部の表面または軟質塩化ビニル樹脂製の防水シートの裏面に有機溶剤を塗布する第二の溶剤塗布工程を有する。最後に、前記第二の溶剤塗布工程に次いで前記防水シートを前記フランジ部の表面に被覆して溶着固定するシート溶着工程を有する。
【0027】
本発明の排水ドレンの施工方法は、特に、第一の溶剤塗布工程と第二の溶剤塗布工程とを有することにより、防水シート・排水ドレン・配管の3つが強固に結合されて一体化される。そのため、施工時及び施工後において、外力が生じた場合であっても、結合部が剥離したり破断したりして防水性を喪失することがなくなるという特徴がある。
【発明の効果】
【0028】
前述のとおり、本発明の排水ドレンは、有機溶剤により溶着固定可能に構成された筒状部とフランジ部とを備えることにより、接着剤による接着と比較してより強固に一体化できる。特に、筒状部と配管とを、継手を介することなく溶着することができる。
また、上記構成の排水ドレンを取り付ける施工方法においては、有機溶剤を用いた第一の溶剤塗布工程と第二の溶剤塗布工程とを有することで、防水性を喪失する恐れがなく容易に施行することができる。
これらにより、本発明には、高い防水性を確保するとともに、部品コスト及び施工コストを低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の排水ドレンを表す斜視図及び断面図である。
【
図2】本発明の排水ドレンの製造方法を表す説明図である。
【
図3】本発明の排水ドレンの施工方法を表すフローチャートである。
【
図4】本発明の排水ドレンの施工方法を表す説明図である。
【
図5】本発明の排水ドレンの変形例1を表す斜視図及び断面図である。
【
図6】本発明の排水ドレンの変形例2を表す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態について、
図1から
図4に基づいて以下に説明する。
なお、各図は説明のために模式的に記載されており、寸法や形状は一部強調または簡略化して示されている。
【0031】
図1に示す排水ドレン100は、取付対象部である建物の屋上の床面Fとパラペット等の壁面Wとの入隅部に取り付けられる、いわゆる横引き用のドレンである。排水ドレン100は、塩化ビニル樹脂製の配管300に直接接続される筒状部1と、筒状部1の基端部11に一体に形成されたフランジ部2とを備えている。取付対象部となる建物の床面Fや壁面Wは、木製やコンクリート製等種々の材質で構成されたものとすることができる。
【0032】
図1の形態では、筒状部1は薄肉の台形錐であって、基端部11よりも先端部12の方が、僅かに直径が小さくなるようにテーパー状に形成されている。
また、フランジ部2は薄板状であって、床面に平行な第一の面21と壁面に平行な第二の面22とからなる断面L字状を呈している。この第二の面22における筒状部1の基端部11との境界部には、筒状部1と連通する開口部23が設けられている。
筒状部1とフランジ部2とは、何れも略同じ肉厚に形成されており、
図1の形態では約3mmであるが、厚さは適宜選択することができる。
【0033】
フランジ部2の第一の面21及び第二の面22の各々の面積は、大きい方が床面Fや壁面Wとの接着面積及び防水シート200との溶着面積を大きくすることができ、好ましくは開口部23の直径の2倍の幅と奥行きであり、より好ましくは開口部23の直径の3倍の幅と奥行きである。
図1の形態では、第一の面21及び第二の面22は、開口部23の3倍の幅と2倍の奥行としている。
【0034】
フランジ部2の第一の面21及び第二の面22には、四隅に所定の大きさの孔24・24…が設けてある。この孔24・24…は、排水ドレン100の施工において、取付対象部に対して直接締め込む木ねじ等を挿通させるための孔である。
【0035】
上記のような形状の排水ドレン100は、全体が硬質の塩化ビニル樹脂から形成されており、筒状部1の先端部12は有機溶剤Oにより配管300と溶着固定可能である。また、フランジ部2は、後述する軟質塩化ビニル樹脂製の防水シート200と有機溶剤Oにより溶着固定可能である。
【0036】
図1の形態の排水ドレン100は、例えば、
図2に示すような真空成形により製造することができる。
まず、
図2(a)に示すように、シート状の硬質塩化ビニル樹脂シートSを加熱しながら金型Mの直上に配置する。
次いで、
図2(b)に示すように、金型Mに多数設けられた吸気口V・V…から空気を吸引するとともに、硬質塩化ビニル樹脂シートSを金型Mに被覆するように降下させる。すると、加熱により軟化した硬質塩化ビニル樹脂シートSは吸気口V・V…からの吸気による減圧によって、金型Mの形状に延伸しながら変形して成形される。
最後に、
図2(c)に示すように、冷却した成形品S’を金型Mから抜き取り、
図2(d)に示すように、外周部や孔24・24…、筒状部1の先端部12を抜型Dで打ち抜いて排水ドレン100を得る。
【0037】
上記製造方法で製造される排水ドレン100は、筒状部1及びフランジ部2が継ぎ目なく一体に形成された構成とすることができる。また、真空成形により一体の状態で製造することができるため、部品コストを低減することができる。
【0038】
次に、
図1の排水ドレン100を施工する方法を、
図3と
図4とを用いて説明する。
まず、予備的工程として、筒状部1の先端部12を配管300に挿入し、しっかり挿入された位置における筒状部1と配管300との境界部がわかるように、筒状部1に対してマーキングを施しておくとよい(図示せず)。なお、この作業は必須ではなく、排水ドレン100の成形時に筒状部1に予め目印を付けておくなど、別の方法を採用することもできる。
【0039】
次に、接着剤塗布工程では、
図4(a)に示すように、フランジ部2または取付対象部である床面F及び壁面Wに接着剤Gを塗布する。この工程で使用する接着剤は取付対象部の材質に合わせて種々のものを用いることができるが、微細な凹凸面に入り込んで密着性を向上させるために、ゴム系接着剤等の柔軟性のあるものが好ましい。
また、塗布においては、オイルポンプで塗布する方法や、スプレー、ヘラ等を用いて隙間なく均等な厚さとなるように塗り広げるのが好ましい。
【0040】
次に、第一の溶剤塗布工程として、
図4(b)に示すように、筒状部1に有機溶剤Oを塗布する。この工程で用いる有機溶剤Oは、樹脂、特に塩化ビニル樹脂をよく溶解する性質を持つものであれば、芳香族系炭化水素類、ケトン類、エステル類等種々のものを用いることができるが、例えば、アセトン、シクロヘキサン、メチルエチルケトンを主成分とする第二種有機溶剤のように、塗布後に容易に垂れ落ちない程度の粘性を有するものが好ましい。
また、塗布においては、刷毛で塗布する方法の他、布帛に染み込ませて塗布する方法等、種々の方法を採用することができる。
【0041】
上述の接着剤塗布工程と第一の溶剤塗布工程とは、何れを先に実施しても構わないが、ゴム系の接着剤Gは溶媒がやや揮発して弾力性を有してから貼り合わせた方が良いことに加え、有機溶剤Oは揮発しやすいことから、接着剤塗布工程を先に実施し、第一の溶剤塗布工程を後に実施するのが好ましい。
【0042】
次に、接着剤塗布工程及び第一の溶剤塗布工程に次いで実施される溶着取付工程では、
図4(c)に示すように、筒状部1を配管300に挿入して溶着固定するとともに、フランジ部2を取付対象部である床面F及び壁面Wに当接させて取り付ける。
【0043】
筒状部1を配管300に挿入する場合には、塗布した有機溶剤Oが揮発してしまわないうちに、筒状部1の所定の位置に設けたマーキングの位置までしっかりと押し込み、所定時間保持する。
このとき、筒状部1がテーパー状となっていることで、平行管である配管300に挿入すると、筒状部1の先端部12の稜線が配管300の内壁に当接しながら押し込まれるとともに、先端部12が僅かに内側に弾性変形する。この変形による反発力によって、先端部12の外径部と配管300の内壁とが密着して溶着される。
【0044】
また、フランジ部2を取付対象部である床面F及び壁面Wに当接させるときは、塗布した接着剤Gがしっかりと密着するように押し付け、所定時間保持する。
ここで、フランジ部2に設けられた孔24・24…に木ねじ(図示せず)を挿通して固定することで、接着剤Gが完全硬化するまで押さえておく必要がなく、硬化後も排水ドレン100が浮き上がってくることを防止することができる。なお、この場合、皿ねじを用いることで、ねじ頭がフランジ部2から突出することがないため、防水シート200を溶着固定する際に不陸となることを防止することができる。
【0045】
溶着取付工程においては、筒状部1の配管300に対する溶着固定と、フランジ部2の取付対象部への取り付けとは、何れが先であってもよいが、有機溶剤Oは揮発しやすいことから、配管300に対する溶着固定を先に実施するのが好ましい。
【0046】
次に、溶着取付工程に次いで実施される第二の溶剤塗布工程では、
図4(d)に示すように、フランジ部2の表面または防水シート200の裏面に有機溶剤Oを塗布する。この工程で用いる有機溶剤Oは、第一の溶剤塗布工程で用いるものと同一のものであってもよいが、揮発しないうちに広い面積に素早く塗り広げるために、粘性の低いものを使用してもよい。例えば、テトラヒドロフランやメチルエチルケトンを主成分とする第二種有機溶剤のように、低粘度で刷毛等に染み込ませたり、注油器等で直接吹き付けることができる程度の粘度であることが好ましい。
なお、ここで、床面F及び壁面Wにおけるフランジ部2に隣接する部分については、接着剤Gを塗布する。
【0047】
最後に実施されるシート溶着工程は、
図4(e)に示すように、第二の溶剤塗布工程に次いで防水シート200をフランジ部2の表面に被覆して溶着固定する。
被覆した防水シート200に皺が生じて波打たないように注意しながら、所定時間保持する。
なお、防水シート200はフランジ部2の開口部23に合わせて円形に抜かれているが、その境界部はシーリング剤によって末端処理することで、防水性を高めることができるとともに、防水シート200のめくれや破れを防止することができる。
【0048】
以上の工程により施工された排水構造は、防水シート200・排水ドレン100・配管300の3つが有機溶剤Oによって溶着固定されるため、相互に強固に結合されて一体化される。3つが溶融一体化されていることで、排水構造全体として高い強度を備えることができるため、施工後においても、長期間にわたって防水性能を維持することができる。
なお、必要に応じてストレーナを装着することで、落ち葉等の異物が流入して配管300が閉塞することを防止することができる。
【0049】
『変形例1』
本発明においては上記の形態に限定されず、他の形態を採用することもできる。例えば、
図5に示す排水ドレン101は、取付対象部である建物の屋上の床面Fの中途部分に取り付けられる、いわゆる縦引き用のドレンである。排水ドレン101は、塩化ビニル樹脂製の配管300に直接接続される筒状部1と、筒状部1の基端部11に一体に形成されたフランジ部2とを備えているが、フランジ部2は、床面Fと平行な第一の面21のみによって構成され、ねじによる固定のための孔が無い点が
図1の形態と異なる。
【0050】
図5の形態であっても、
図2に示す製造方法と同様の方法で製造することができるが、その他、射出成形や旋盤加工によって製造することもできる。
図5の排水ドレン101の施工方法については、
図3及び
図4の方法と同様である。
【0051】
『変形例2』
本発明においては、さらに他の形態を採用することもできる。例えば、
図6に示す排水ドレン102は、
図1と同様の横引き用のドレンであるが、筒状部1の先端部12が、大径部13と小径部14とを有する段付き構造となっている点が異なる。
配管300である硬質塩化ビニル管は、JIS K 6741によって規格化されたものを用いることができるが、建築物等の構造体においては、この規格のうち、直径50mmまたは直径75mmのものを使用する場合が一般的である。なお、これ以外の直径のものを使用することもある。
【0052】
しかし、筒状部1を何れかの直径の配管300に合わせた大きさとすると、構造体の設計に応じて、複数種類のドレンを準備しておかなければならず、部品コストや管理コストの増大を招く。
そこで、本変形例では、筒状部1の先端部12を、直径75mmの配管に合わせた大径部13と、直径50mmの配管に合わせた小径部14とを有する段付き構造としている。
【0053】
排水ドレン102の施工においては、配管300が直径50mmのものであるときには、小径部14に対して有機溶剤Oを塗布し配管300に挿入する。
一方、配管300が直径75mmのものであるときには、小径部14を切り落として、大径部13に対して有機溶剤Oを塗布し配管300に挿入する。このとき、小径部14を切り落とさずに大径部13を配管300に挿入すると、排水の流路が小径部14によって狭められてしまうため、建築物によっては施工上の基準を満たさなくなる恐れがあるため注意を要する。
【0054】
以上のように、本発明の排水ドレンでは、高い防水性を確保するとともに、部品コスト及び施工コストを低減することができるものであるが、建築物の屋上やバルコニーに限らず、屋内の水回りの排水構造や、屋外の噴水施設や飲水設備回り、路肩の排水設備等、種々の排水構造に対して用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
100,101,102 排水ドレン
1 筒状部
11 基端部
12 先端部
13 大径部
14 小径部
2 フランジ部
21 第一の面
22 第二の面
23 開口部
24 孔
200 防水シート
300 配管
G 接着剤
M 金型
O 有機溶剤
S 硬質塩化ビニル樹脂シート
S’ 成形品
V 吸気口