(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022236
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】補修工事の管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20250206BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126648
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】523013019
【氏名又は名称】ツヅラノフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒葛野 勇斗
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】建築物や土木建造物のコンクリート外壁等の補修工事の管理コストを削減し得る補修工事の管理システムを提供する。
【解決手段】ユーザIDに関連付けられた調査用携帯端末3cと、管理サーバ1と、ユーザIDに関連付けられた出力端末3a,3bとを備える。調査用携帯端末3cは、一又は複数の補修箇所を含む補修工事対象面の画像情報の撮影機能と、各補修箇所に対応する補修工事内容情報を設定する補修工事内容設定機能と、撮影された画像情報及び設定された補修工事内容情報を管理サーバ1に送信する機能とを有する。管理サーバ1は、受信した画像情報及び補修工事内容情報をユーザIDに関連付けて管理する機能と、出力端末3a,3bからのリクエストに応じて管理している情報を出力端末3a,3bに提供する機能とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ毎に割り当てられたユーザ識別情報に関連付けられた調査用携帯端末と、管理サーバと、前記ユーザ識別情報に関連付けられた出力端末とを備え、
前記調査用携帯端末は、一又は複数の補修箇所を含む補修工事対象面の画像情報の撮影機能と、各補修箇所に対応する補修工事内容情報を設定する補修工事内容設定機能と、撮影された前記画像情報及び設定された前記補修工事内容情報を前記管理サーバに送信する調査情報送信機能とを有し、
前記管理サーバは、前記調査用携帯端末から受信した前記画像情報及び前記補修工事内容情報を前記ユーザ識別番号に関連付けて管理する機能と、前記出力端末からのリクエストに応じて前記ユーザ識別番号に関連付けて管理している前記画像情報及び前記補修工事内容情報の全部又は一部を前記出力端末に提供する情報提供機能とを有し、
前記出力端末は、前記管理サーバから提供される情報に基づく所定の出力を行う出力機能を有する、
補修工事の管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の補修工事の管理システムにおいて、
前記補修工事内容情報は、前記画像情報中の各補修箇所の領域を示す補修箇所領域情報と、各補修箇所の実際の補修工事面積情報とを含み、
前記調査用携帯端末は、
前記撮影機能による前記画像情報の撮影の際に前記画像情報の縮尺情報を自動生成する機能、及び/又は、手動入力によって前記画像情報の縮尺情報を設定する機能と、
前記画像情報における各補修箇所の領域の面積と、前記縮尺情報とに基づいて、各補修箇所の前記補修工事面積情報を生成する機能と、
をさらに有する、
補修工事の管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の補修工事の管理システムにおいて、
前記補修工事内容情報は、前記画像情報中の各補修箇所の領域を示す補修箇所領域情報と、前記画像情報の縮尺情報とを含み、
前記調査用携帯端末は、前記撮影機能による前記画像情報の撮影の際に前記画像情報の前記縮尺情報を自動生成する機能、及び/又は、手動入力によって前記画像情報の前記縮尺情報を設定する機能を有し、
前記管理サーバは、前記画像情報における各補修箇所の領域の面積と、前記縮尺情報とに基づいて、各補修箇所の実際の補修工事面積情報を生成し、前記情報提供機能は、前記出力端末からのリクエストに応じて前記画像情報、前記補修工事内容情報及び前記補修工事面積情報の全部又は一部を前記出力端末に提供する、
補修工事の管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の補修工事の管理システムにおいて、
前記調査用携帯端末は、複数の工事単位に関する工事単位情報を設定する工事単位設定機能をさらに有し、前記補修工事内容設定機能は、各工事単位内の各補修箇所に対応する前記補修工事内容情報を各工事単位情報に関連付けて設定する、
補修工事の管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の補修工事の管理システムにおいて、
前記調査用携帯端末は、複数の第1工事単位に関する第1工事単位情報を設定する第1工事単位設定機能と、各第1工事単位をさらに区分してなる複数の第2工事単位に関する第2工事単位情報を設定する第2工事単位設定機能とをさらに有し、前記補修工事内容設定機能は、各第2工事単位内の各補修箇所に対応する前記補修工事内容情報を各第2工事単位情報に関連付けて設定する、
補修工事の管理システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の補修工事の管理システムにおいて、
前記管理サーバは、前記調査用携帯端末からのリクエストに応じて前記ユーザ識別番号に関連付けて管理している前記画像情報及び前記補修工事内容情報を前記調査用携帯端末に提供する機能をさらに有し、
前記調査用携帯端末は、前記管理サーバから提供される情報をベースとして前記画像情報及び補修工事内容情報を更新設定可能に構成されている、
補修工事の管理システム。
【請求項7】
ユーザ毎に割り当てられたユーザ識別情報に関連付けられ、補修工事の管理システム用の管理サーバと通信する、補修工事の管理システム用の調査用携帯端末であって、
一又は複数の補修箇所を含む補修工事対象面の画像情報の撮影機能と、各補修箇所に対応する補修工事内容情報を設定する補修工事内容設定機能と、撮影された前記画像情報及び設定された前記補修工事内容情報を前記管理サーバに送信する調査情報送信機能とを有する、
補修工事の管理システム用の調査用携帯端末。
【請求項8】
請求項7に記載の補修工事の管理システム用の調査用携帯端末において、
前記補修工事内容情報は、前記画像情報中の各補修箇所の領域を示す補修箇所領域情報と、各補修箇所の実際の補修工事面積情報とを含み、
前記調査用携帯端末は、
前記撮影機能による前記画像情報の撮影の際に前記画像情報の縮尺情報を自動生成する機能、及び/又は、手動入力によって前記画像情報の縮尺情報を設定する機能と、
前記画像情報における各補修箇所の領域の面積と、前記縮尺情報とに基づいて、各補修箇所の前記補修工事面積情報を生成する機能と、
をさらに有する、
補修工事の管理システム用の調査用携帯端末。
【請求項9】
請求項7に記載の補修工事の管理システム用の調査用携帯端末において、
前記補修工事内容情報は、前記画像情報中の各補修箇所の領域を示す補修箇所領域情報と、前記画像情報の縮尺情報とを含み、
前記調査用携帯端末は、前記撮影機能による前記画像情報の撮影の際に前記画像情報の前記縮尺情報を自動生成する機能、及び/又は、手動入力によって前記画像情報の前記縮尺情報を設定する機能を有する、
補修工事の管理システム用の調査用携帯端末。
【請求項10】
請求項7に記載の補修工事の管理システム用の調査用携帯端末において、
複数の工事単位に関する工事単位情報を設定する工事単位設定機能をさらに有し、前記補修工事内容設定機能は、各工事単位内の各補修箇所に対応する前記補修工事内容情報を各工事単位情報に関連付けて設定する、
補修工事の管理システム用の調査用携帯端末。
【請求項11】
請求項7に記載の補修工事の管理システム用の調査用携帯端末において、
複数の第1工事単位に関する第1工事単位情報を設定する第1工事単位設定機能と、各第1工事単位をさらに区分してなる複数の第2工事単位に関する第2工事単位情報を設定する第2工事単位設定機能とをさらに有し、前記補修工事内容設定機能は、各第2工事単位内の各補修箇所に対応する前記補修工事内容情報を各第2工事単位情報に関連付けて設定する、
補修工事の管理システム用の調査用携帯端末。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか1項に記載の補修工事の管理システム用の調査用携帯端末において、
前記管理サーバは、前記調査用携帯端末からのリクエストに応じて前記ユーザ識別番号に関連付けて管理している前記画像情報及び前記補修工事内容情報を前記調査用携帯端末に提供し、
前記調査用携帯端末は、前記管理サーバから提供される情報をベースとして前記画像情報及び補修工事内容情報を更新設定可能に構成されている、
補修工事の管理システム用の調査用携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や土木建造物のコンクリート外壁等の補修工事の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種補修工事業界の慣習として、補修工事費用は、各補修箇所の工事内容及び補修面積に基づき工費を算出している。高層ビル等の大規模建造物の場合には補修箇所の数が膨大となることがあるが、従来は、工事現場において補修工事を行なった際に各補修箇所毎に施工業者作業員が工事内容及び補修面積を台帳等に記録しておき、この台帳を施工業者事務所に持ち帰って、施工業者事務員が膨大な数の補修箇所の情報をコンピュータに入力し、工費積算の根拠となる数量表等を作成していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の管理方法では事務作業負担が膨大となり、事務コストが膨らむ要因となる。そこで、本発明は、補修工事の管理を効率的に行ない得る補修工事の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る補修工事の管理システムは、ユーザ毎に割り当てられたユーザ識別情報に関連付けられた調査用携帯端末と、管理サーバと、前記ユーザ識別情報に関連付けられた出力端末とを備えていてよい。前記調査用携帯端末は、一又は複数の補修箇所を含む補修工事対象面の画像情報の撮影機能と、各補修箇所に対応する補修工事内容情報を設定する補修工事内容設定機能と、撮影された前記画像情報及び設定された前記補修工事内容情報を前記管理サーバに送信する調査情報送信機能とを有することができる。前記管理サーバは、前記調査用携帯端末から受信した前記画像情報及び前記補修工事内容情報を前記ユーザ識別番号に関連付けて管理する機能と、前記出力端末からのリクエストに応じて前記ユーザ識別番号に関連付けて管理している前記画像情報及び前記補修工事内容情報の全部又は一部を前記出力端末に提供する情報提供機能とを有する。前記出力端末は、前記管理サーバから提供される情報に基づく所定の出力を行う出力機能を有することができる。
【0005】
また、本発明に係る補修工事の管理システム用の調査用携帯端末は、ユーザ毎に割り当てられたユーザ識別情報に関連付けられ、補修工事の管理システム用の管理サーバと通信する。好ましくは、調査用携帯端末は、一又は複数の補修箇所を含む補修工事対象面の画像情報の撮影機能と、各補修箇所に対応する補修工事内容情報を設定する補修工事内容設定機能と、撮影された前記画像情報及び設定された前記補修工事内容情報を前記管理サーバに送信する調査情報送信機能とを有する。
【発明の効果】
【0006】
かかる本発明の管理システム及び調査用携帯端末によれば、事前調査において調査作業員が調査用携帯端末を用いて補修箇所の画像情報を撮影するとともに、各補修箇所に対応する補修工事内容情報を設定して、これら情報を管理サーバに送信することで、前記画像情報及び前記補修工事内容情報を前記ユーザ識別番号に関連付けて管理サーバで集約管理することができる。そして、適宜の出力機能を有する出力端末によって、ユーザ識別情報に関連付けられた情報を画面出力乃至帳票出力することで、例えば工事現場作業員が前記出力端末として機能するタブレット端末を用いて、事前調査によって設定された補修工事内容情報を画像情報とともに画面で確認しながら補修工事を行なったり、帳票出力用の前記出力端末として機能する事務用コンピュータを用いて事務作業員が工費積算根拠となる数量表を出力したりすることが可能となり、事務作業を含めた補修工事の管理を効率的に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】補修工事の管理システムのシステム概要図である。
【
図2】調査用携帯端末の全機能のメニュー構成図である。
【
図3】調査用携帯端末の工事リスト画面構成図である。
【
図4】調査用携帯端末の工事設定画面構成図である。
【
図5】調査用携帯端末の工法・マーカー設定画面構成図である。
【
図6】調査用携帯端末の工区設定画面構成図である。
【
図7】調査用携帯端末の図面リスト画面構成図である。
【
図8】調査用携帯端末の補修箇所登録画面構成図である。
【
図9】調査用携帯端末の画像撮影画面構成図である。
【
図10】調査用携帯端末の補修工事内容最終確認画面構成図である。
【
図11】調査用携帯端末の補修箇所指示マーカ設定画面構成図である。
【
図12】調査用携帯端末又は出力端末の数量表出力画面構成図である。
【
図13】調査用携帯端末又は出力端末の数量表プレビュー画面構成図である。
【
図14】調査用携帯端末又は出力端末の補修箇所画像のプレビュー画面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好ましい態様において、補修工事の管理システムは、ユーザ毎に割り当てられたユーザ識別情報に関連付けられた調査用携帯端末と、管理サーバと、前記ユーザ識別情報に関連付けられた出力端末とを備えていてよい。
【0009】
前記調査用携帯端末は、一又は複数の補修箇所を含む補修工事対象面の画像情報の撮影機能と、各補修箇所に対応する補修工事内容情報を設定する補修工事内容設定機能と、撮影された前記画像情報及び設定された前記補修工事内容情報を前記管理サーバに送信する調査情報送信機能とを有することができる。前記管理サーバは、前記調査用携帯端末から受信した前記画像情報及び前記補修工事内容情報を前記ユーザ識別番号に関連付けて管理するデータベース機能と、前記出力端末からのリクエストに応じて前記ユーザ識別番号に関連付けて管理している前記画像情報及び前記補修工事内容情報の全部又は一部を前記出力端末に提供する情報提供機能とを有することができる。
【0010】
前記出力端末は、前記管理サーバから提供される情報に基づく所定の出力を行う出力機能を有することができる。
【0011】
なお、各ユーザは、異なる複数の施工業者(システムを利用する顧客企業など)であってよく、ユーザ識別情報は、各顧客企業毎に割り当てられたユニークな文字列情報であってよい。また、ユーザ識別情報は、各顧客企業毎に割り当てた顧客識別情報と、顧客内の各グループや担当毎に割り当てたサブ識別情報との組合せであってもよい。また、各ユーザは、一の会社内の担当者又は担当部署であってよく、この場合は、ユーザ識別情報は、担当者又は担当部署毎に割り当てられたユニークな文字列情報であってよい。
【0012】
調査用携帯端末へのユーザ識別情報の関連付けは、適宜の態様であってよい。例えば、調査用携帯端末をユーザに貸与する場合には、貸与する際にサービス管理者が調査用携帯端末にユーザ識別情報をユーザによる書き換えができない態様で記憶させておき、調査用携帯端末が管理サーバに情報を送信する際にユーザ識別情報もあわせて送信するように構成することで、管理サーバ側でユーザ識別情報と送信される情報とを関連付けて管理することができる。また、各ユーザが保有する携帯端末を調査用携帯端末として使用する場合には、利用開始時にユーザの操作によってユーザ識別情報(ログインID)とパスワードとを管理サーバに送信させ、ユーザ認証を行うことによって、かかる認証有効期間(ログイン中)は管理サーバ側で当該調査用携帯端末をユーザ識別情報に関連付けて管理することができる。
【0013】
補修対象面の画像情報は、複数撮影可能に構成することができる。これにより、複数の壁面、床面及び天井面など、補修すべき箇所が散在していても各補修対象面毎に画像情報の撮影を行ない、各画像情報に含まれる(すなわち写り込んだ)各補修箇所毎に補修工事内容情報を設定していくことができる。好ましくは、各画像情報に複数の補修箇所を含めることができるようシステム構成するが、各画像情報に含めることのできる補修箇所は一箇所のみとし、各補修箇所毎に画像情報を撮影するようにシステム構成することもできる。画像情報はビットマップ画像データであってよく、その画像フォーマットはJPEG、HEIF、GIF、PNG、BMPなどの適宜のものであってよい。
【0014】
管理サーバは、典型的にはデータベースサーバである。管理サーバは、典型的には、管理する情報の実体を、管理サーバ自身にローカル接続された記憶装置(ストレージ)に記憶するが、管理する情報の実体はネットワーク接続された外部のストレージサーバに記憶して、管理情報のみをサーバ自身にローカル接続された記憶装置に記憶してもよい。
【0015】
管理サーバは、複数のサーバからなるサーバ群であってもよい。例えば、管理サーバは、一又は複数のデータベースサーバと、Webサーバと、一又は複数のアプリケーションサーバとから構成されていてよい。これら複数のサーバは、共通の一のコンピュータに実装されていてもよいし、個々のサーバ毎に別のコンピュータに実装されていてもよい。
【0016】
出力端末は、調査用携帯端末と同一の携帯端末であってよい。すなわち、一の携帯端末に、調査用携帯端末として機能させるプログラムと、出力端末として機能させるプログラムとをインストールすることができる。
【0017】
出力端末は、汎用コンピュータであってもよい。前記管理サーバにWebサーバ機能を持たせ、出力端末を、Webサーバとの通信によって前記画像データ及び前記補修工事内容情報を取得してこれらに基づく画面出力や帳票出力等の適宜の出力を行うWeb端末として構成することもできる。
【0018】
前記補修工事内容情報は、前記画像情報中の各補修箇所の領域を示す補修箇所領域情報と、各補修箇所の実際の補修工事面積情報とを含んでいてよい。補修箇所領域情報は、例えば、画像情報中に写り込んだ各補修箇所を囲む四角形や円形等のベクター情報であってもよく、補修箇所を含む領域を塗りつぶしてなるラスター情報であってもよい。補修工事面積情報は、四角形の補修箇所を含む領域の縦横の実際の寸法(例えば、縦5cm×横20cmなど)で表されるものであってもよく、実際の面積値(例えば100cm2や1m2など)で表されるものであってもよい。
【0019】
補修箇所領域情報は、撮影された画像情報をAIによって解析することにより自動生成するよう構成してもよいし、作業者がタッチ操作等の適宜の操作によって手動生成するよう構成することもできる。好ましくは、AIによる自動生成機能を実装した上で、AIによる自動生成結果が適切でない場合に作業者の操作によって修正乃至再設定可能に構成することができる。
【0020】
前記調査用携帯端末は、前記撮影機能による前記画像情報の撮影の際に前記画像情報の縮尺情報を自動生成する機能、及び/又は、手動入力によって前記画像情報の縮尺情報を設定する機能をさらに有していてよい。画像情報の縮尺情報の自動生成は適宜の方法で行なうことができ、例えば、調査用携帯端末にLiDARセンサーが設けられている場合、LiDarセンサーによって測定される補修対象面までの距離と、画像情報を撮影するカメラのレンズの焦点距離情報とに基づいて、画像情報の縮尺情報を自動的に算出することができる。LiDARセンサーを内蔵する市販のタブレット端末の多くは、撮影画像の縮尺情報や実寸を算出するソフトウェアライブラリが標準で実装されているため、かかる標準ライブラリを利用することで容易に撮影画像の縮尺情報等を自動生成するよう構成することができる。また、LiDARセンサーが設けられていない場合でも、カメラのレンズの焦点距離と、フォーカス機構の挙動とに基づいて、画像情報の縮尺情報や画像に写り込む被写体の寸法情報等をAIにより解析するライブラリが実装されていれば、かかるライブラリを利用することで縮尺情報等を自動生成することもできる。前記調査用携帯端末は、前記画像情報における各補修箇所の領域の面積(すなわち、画像における各補修箇所の領域のピクセル数)と、前記縮尺情報とに基づいて、各補修箇所の前記補修工事面積情報(すなわち、補修工事領域の実際の面積情報)を生成する機能をさらに有していてよい。
【0021】
これに代えて、前記補修工事内容情報は、前記画像情報中の各補修箇所の領域を示す補修箇所領域情報と、前記画像情報の縮尺情報とを含むことができる。前記調査用携帯端末は、前記撮影機能による前記画像情報の撮影の際に前記画像情報の前記縮尺情報を自動生成する機能、及び/又は、手動入力によって前記画像情報の前記縮尺情報を設定する機能を有していてよい。前記管理サーバは、前記画像情報における各補修箇所の領域の面積と、前記縮尺情報とに基づいて、各補修箇所の実際の補修工事面積情報を生成し、前記情報提供機能は、前記出力端末からのリクエストに応じて前記画像情報、前記補修工事内容情報及び前記補修工事面積情報の全部又は一部を前記出力端末に提供するよう構成することができる。この場合、補修工事面積情報は、補修工事用携帯端末ではなく、管理サーバにおいて生成される。
【0022】
なお、出力端末からのリクエストの種類乃至内容、並びに、前記画像情報、前記補修工事内容情報及び前記補修工事面積情報のうちどの情報を出力端末に提供するかは、出力端末の機能や目的に応じて予め管理サーバにおいてプログラムしておくことが好ましい。
【0023】
前記調査用携帯端末は、複数の工事単位(例えば一の工事現場における工区など)に関する工事単位情報を設定する工事単位設定機能をさらに有し、前記補修工事内容設定機能は、各工事単位内の各補修箇所に対応する前記補修工事内容情報を各工事単位情報に関連付けて設定するよう構成できる。これによれば、工事単位毎に補修工事内容情報をまとめて管理することができる。なお、工区とは、施工業者の管理上設定されるものであり、工事現場毎にどのように工区を定めるかは不定である。例えば、階数毎に工区が定められる場合もあれば、東側壁面1~3階を第1の工区、西側壁面1~3階を第2の工区などと定められる場合もある。
【0024】
前記調査用携帯端末は、複数の第1工事単位に関する第1工事単位情報を設定する第1工事単位設定機能と、各第1工事単位をさらに区分してなる複数の第2工事単位に関する第2工事単位情報を設定する第2工事単位設定機能とをさらに有し、前記補修工事内容設定機能は、各第2工事単位内の各補修箇所に対応する前記補修工事内容情報を各第2工事単位情報に関連付けて設定するよう構成することもできる。これによれば、例えば、複数の工事現場(補修対象となる建築物や土木建造物)毎に第1工事単位情報(例えば、ビル名と工事IDなど)を設定し、各第1工事単位情報毎に第2工事単位情報(例えば、工区の名称など)を設定しておき、第2工事単位毎に補修工事内容情報をまとめて管理しておくことにより、複数の大規模な補修工事を同時期に施工する場合であっても効率良く補修工事を管理することができる。
【0025】
上記補修工事の管理システムにおいて、前記管理サーバは、前記調査用携帯端末からのリクエストに応じて前記ユーザ識別番号に関連付けて管理している前記画像情報及び前記補修工事内容情報を前記調査用携帯端末に提供する機能をさらに有していてよく、前記調査用携帯端末は、前記管理サーバから提供される情報をベースとして追加的に前記画像情報及び補修工事内容情報を更新設定可能に構成されていてよい。これによれば、複数の調査作業員によって所定期間かけてすべての補修箇所を分担して調査する場合、過去に別の作業員が調査した情報を閲覧することによって、調査作業の重複回避や、継続的な調査作業を行なうことができ、一層の調査作業の効率化を図ることができる。
【実施例0026】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施例に係る補修工事管理システムのシステム概要図を示している。補修工事管理システムは、管理サーバとして機能するクラウドサーバ1を有している。クラウドサーバ1は、サービス運営会社によって本実施形態に係る補修工事管理サービスをユーザである施工業者(工事依頼会社及び/又は工事請負会社)に提供するよう運営管理され、インターネットを介して課金サービス用サーバ2や、端末3a,3b,3cと通信可能に構成されている。なお、
図1において、工事依頼会社、工事請負会社及び現場は、一のユーザにおける各担当者が本サービスを利用する状況例を示している。
【0028】
クラウドサーバ1は、本サービスを契約するユーザの端末3a,3b,3cでログインすることにより、本サービスに関する各種機能を端末に対して提供する。クラウドサーバ1は、別事業者が運営する課金サービス用サーバとAPI接続され、ユーザが本サービスの料金をオンライン継続課金することによりユーザに対するサービスを有効化する。クラウドサーバ1は、各ユーザの端末3a,3b,3c内に設定されたデータをクラウドストレージにバックアップする標準バックアップ機能を有する。サービスの基本料金ではバックアップ容量が所定の上限容量に設定されている。バックアップ容量は、オプション料金の支払いによって追加可能である。バックアップされたデータは、端末3a,3b,3cからのリクエストによって端末に送信されて復元される(情報提供機能)。
【0029】
クラウドサーバ1は、バックアップされたデータをユーザID(ユーザ識別情報)に関連付けて管理するデータベース機能を有し、工事依頼会社の担当者は、端末3aを用いてすべての工事の情報をクラウドサーバ1から取得して、すべての工事の総括表、若しくは、各工事のすべての補修箇所の総括表などを出力することが可能である。また、現場作業者や工事請負会社事務所の作業管理者は、クラウドサーバ1にバックアップされたデータ(情報)を端末3c,3bにダウンロードすることによって、ダウンロードしたデータ(すなわちサーバから提供される情報)に基づいて画像情報及び補修工事内容情報を確認したり、ダウンロードデータにおいて既に設定されている画像情報及び補修工事内容情報を編集したり、新たな補修箇所についての画像情報及び補修工事内容情報を追加設定したりすることができるように構成されている。
【0030】
なお、バックアップ機能とともに、若しくは、バックアップ機能に代えて、端末3a,3b,3cを用いて設定される情報はすべてリアルタイムでクラウドサーバ1に送信されるように構成することもできる。
【0031】
データベース機能は、リレーショナルデータベースシステムによって構成されていてもよいが、一定のフォーマットでテキストファイルの形式でユーザIDと各種情報とを関連付けて記述されたものであってもよく、その他適宜の態様のシステム構成によって実装可能である。
【0032】
サービス運営会社は、課金サービスを経由した課金状況やユーザとの契約内容を確認しつつ、管理用WEBアプリを用いて自社端末4から契約ユーザ管理やライセンス認証等を行う。
【0033】
端末3a,3b,3cは、タブレット端末やスマートフォンなどの携帯端末であって、サービス運営会社が提供する調査工程DX化アプリをインストールして実行することにより、クラウドサーバ1と通信する調査用携帯端末及び出力端末として機能する。すなわち、本実施例では、各端末3a,3b,3cがそれぞれ、調査用携帯端末及び出力端末として機能する。調査工程DX化アプリは、ユーザログイン機能、工事/工区データ作成機能(第1及び第2の工事単位設定機能)、図面データ取込機能、補修箇所撮影機能(画像情報の撮影機能)、撮影画像のAI解析・自動採寸・電子黒板機能(補修工事内容設定機能、縮尺情報自動生成機能、縮尺情報手動設定機能、及び、補修工事面積情報生成機能)、補修箇所プロット機能、図面・写真帳・数量表・総括表等の出力機能、及び、バックアップ管理機能(情報提供機能)を有している。当該アプリは、端末3a,3b,3cとしてアップル社のiPad(登録商標)を用いる場合には、Apple App Storeを利用して配信することができる。
【0034】
図2は、調査工程DX化アプリが提供する機能のメニュー構成例を示している。ユーザがログインすると、
図3に示す工事リスト画面を表示する。工事リスト画面では、その時点で登録されている工事のリストが一覧表示され、各工事の表示をタッチ操作することによって
図4に示す工事設定画面が表示される。工事設定画面では、各工事の詳細情報(第1の工事単位情報)を設定可能である。例えば、工事設定画面の「工法・カラーの設定」メニューをタッチ操作すると、
図5に示す工法・マーカー設定画面が表示され、当該工事における補修工事の工法の種類と、後述する補修箇所登録画面にマーカー表示する際の各工法毎の色とを設定することができる。
【0035】
また、工事リスト画面において、所定の工事追加操作(例えば、空欄箇所のタッチ操作等)によって、新規工事を追加可能に構成されている。なお、本実施例において、工事リストに登録される工事は、工事依頼会社が受注する各工事であってよい。
【0036】
本実施例では、各工事毎に、複数の工区を設定可能に構成されており、
図4に示す工事設定画面の「工区データ」をタッチ操作することによって、
図3と同様の工区リスト一覧表示画面が表示される(
図2も参照)。工区リスト一覧表示画面において、登録されている各工区の表示をタッチ操作すると、
図6に示す工区設定画面が表示される。工区設定画面では、各工区の詳細情報(第2の工事単位情報)を設定可能である。また、工区設定画面の「図面リスト」をタッチ操作すると、
図7に示す図面リスト画面が表示される。図面リスト画面には、各工区内の複数の図面を所定の登録方法によって登録可能である。例えば、事前に各補修工事対象の様々な図面をアップロードしておき、図面リスト画面において所定操作によってアップロード済みの図面を選択して追加登録することもできるし、図面リスト画面における所定操作によって図面アップロード画面を表示させ、新たな図面を追加登録可能に構成することもできる。
【0037】
図面リスト画面において登録された図面名をタッチ操作すると、
図8に示す図面モード画面が表示され、図示例では補修工事対象の建築物の東面立面図が表示されている。この図面モード画面で、図面中の補修箇所の位置をタッチ操作すると、
図8に示すように「補修箇所を登録/キャンセル」とのポップアップ表示がなされ、「補修箇所を登録」をタップすると
図9に示す画像撮影画面に切り替わる。
【0038】
画像撮影画面では、端末に内蔵されたカメラの映像が全画面表示されるとともに、インカメラ/アウトカメラ切り換えボタン5、計測ボタン6、撮影ボタン7及びキャンセルボタン8が表示されている。カメラ切り換えボタン5をタップする毎に、各端末に内蔵されたインカメラによる撮影かアウトカメラによる撮影かが切り替わる。計測ボタン6をタップすると、後述する補修箇所領域R1,R2,R3のそれぞれの実際の寸法(例えば、縦寸法及び横寸法)を計測する。撮影ボタン7をタップすると、現在表示されている画像情報の撮影が行われ、
図10に示す補正工事内容最終確認画面に遷移する。キャンセルボタン8をタップすると、撮影がキャンセルされて図面モード画面に戻る。
【0039】
また、本実施例では、AIによる画像解析によって壁面の破損箇所を自動検出し、補修箇所を自動設定する機能が本アプリに実装されており、
図9に示す例では、自動検出された補修箇所が3つの四角枠領域R1,R2,R3で表示されている。各四角枠領域を示す内部情報が、補修箇所領域情報となる。自動検出される領域はカメラの移動によってリアルタイムに更新されるように構成することができる。
【0040】
少なくとも現場で事前調査に用いる端末3cにはLiDARセンサーが内蔵されているものを用いることが好ましく、端末3cは、カメラによる撮影時に、端末3cと撮影対象との間の距離を測定可能に構成できる。測定される距離と、カメラのレンズの焦点距離やフォーカス機構の制御値等によって、撮影される画像の縮尺情報を自動生成する機能を端末3cは有している。補修箇所領域R1~R3のそれぞれの実寸は、撮影される画像において各領域のピクセル数と縮尺情報とによって自動生成することができる。
【0041】
端末3cに撮影画像の縮尺情報を生成する機能が無い場合や、自動生成される縮尺情報を手動操作で修正する機能が要求される場合には、手動入力によって撮影される画像情報の縮尺情報を設定する機能を実装することができる。例えば、撮影画像にデジタル定規を表示させ、各領域R1~R3のデジタル定規が示す寸法が、補修工事対称面の補修領域の実際の寸法と一致するようにデジタル定規の縮尺を手動で変更可能に構成することで、手動入力による縮尺設定機能を実装できる。これに代えて、縮尺情報を数値で手動入力可能に構成してもよい。
【0042】
好ましいタイミングで撮影ボタン7をタップすると、その時点の画像情報が撮影されるとともに、自動検出された領域R1,R2,R3を示す補正箇所領域情報及びその縮尺情報が一時的に記憶され、
図10に示す補修工事内容最終確認画面に遷移する。この画面では、各領域R1,R2,R3の大きさや形状の修正並びに削除を行うことができるよう構成することができ、さらに、自動検出されなかった補修箇所の領域を手動入力によって追加するよう構成することができる。また、設定された各領域をタップにより選択すると、
図10の右下部に示すような電子黒板が表示され、補修工事内容情報として、選択された補修領域に対応する工法、補修箇所を識別する補修番号、選択された補修領域の寸法並びに面積、及び日付が表示される。補修領域の寸法並びに面積は、撮影画像のピクセル数と、上記縮尺情報とに基づいて算出される。電子黒板に表示される工法、補修領域の寸法並びに面積、日付は、編集ボタンをタップすることで表示される編集画面(図示せず)において手動入力で編集可能である。
【0043】
すべての補修箇所について補修工事内容情報の設定の確認後、撮影完了ボタン10をタップすると、撮影された画像情報と、各補修箇所に対応する補修工事内容情報とが関連付けられた状態で保存されて、図面モード画面に戻る。このとき、図面と撮影面との関係を示すマーカを設定可能に構成することで、撮影面が、床面であるのか、図面の正面に現れる壁面であるのか、図面に対して左右壁面であるのか等を示すマーカを設定しておくことができる。例えば、
図11は、撮影された画像情報の位置を起点として、下向き矢印のマーカを設定した例を示しており、これにより撮影した画像が床面であることを指示することができる。
【0044】
調査作業員が端末3cを用いてすべての補修箇所について上記作業を繰り返すことによって、すべての補修箇所に関連する多数の画像情報と、各画像情報に関連付けられた一又は複数の補修工事内容情報とが端末3c内に保存され、上記バックアップの実行によって、設定したすべての情報をクラウドサーバ1にアップロードする。
【0045】
工事依頼会社事務所や工事請負会社事務所の担当者は、各工事に関する情報をクラウドサーバ1から端末3a,3b(出力端末)にダウンロードし、上記アプリの各種出力機能を実行することによって、
図12及び
図13に示すような工費算定基準となる数量表を出力したり、
図14に示すように各画像情報と、それに関連付けられた補修工事内容情報とを画面出力により確認することが可能である。数量表は、各工事毎若しくは各工区毎に、設定されたすべての補修箇所について若しくは各工法別に、補修箇所及びその補修面積のリストの形式で出力することができる。これによれば、各工法の単価と、各工法の補修面積の総数とを積算することによって、容易且つ迅速に工法別の総補修工事費を算出できる。なお、出力される情報やその出力フォーマットはユーザの要望によって適宜設計することができ、本発明は、特定の出力に限定されるものではない。