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特開2025-2315円筒穴の仕上げ加工方法、ホルダ選択支援装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002315
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】円筒穴の仕上げ加工方法、ホルダ選択支援装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 35/00 20060101AFI20241226BHJP
   B23B 29/02 20060101ALI20241226BHJP
   B23B 31/117 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B23B35/00
B23B29/02 Z
B23B31/117 610F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102399
(22)【出願日】2023-06-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.JIMTOF 2022のパンフレット 発行日 令和4年10月1日 刊行物 「JIMTOF 2022 11/8(火)~13(日)第31回日本国際工作機械見本市のご案内」 2.YouTubeショート(JIMTOF 2022) ウェブサイトの掲載日 令和4年10月10日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/shorts/F96C24sRrsc https://www.youtube.com/shorts/hShS4ftDNg0 3.YouTube(JIMTOF 2022) ウェブサイトの掲載日 令和4年11月2日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=1bGdPmseJo8&t=142s&ab_channel=MST_TOOLING 4.JIMTOF 2022 開催日 令和4年11月8日(火)~13日(日) 展示会名 JIMTOF 2022(第31回日本国際工作機械見本市) 5.「機械と工具」誌 発行日 令和4年11月10日 刊行物 機械と工具 2022年11月号 6.「生産財マーケティング」誌 発行日 令和4年11月1日 刊行物 月刊生産財マーケティング 2022年11月号、第A-171ページ 7.「機械技術」誌 発行日 令和4年11月5日 刊行物 機械技術2022年12月臨時増刊号 8.「ツールエンジニア」誌 発行日 令和4年11月1日 刊行物 ツールエンジニア2022年11月号、第35ページ 9.展示会「THAI METALEX 2022」 開催日 令和4年11月16日(水)~19日(土) 展示会名 THAI METALEX 2022 10.YouTube(JIMTOF 2022のハイライト) ウェブサイトの掲載日 令和4年11月28日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=_Zoc7-_ew5w&ab_channel=MST_TOOLING 11.展示会「TOOL TECH 2023」 開催日 令和5年1月19日(木)~25日(水) 展示会名 TOOL TECH 2023 12.日本物流新聞 発行日 令和5年2月10日 刊行物 日本物流新聞2023年2月10日号
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 13.プレスリリース プレスリリースの配信日 令和5年2月24日 プレスリリースの配信先 株式会社日本物流新聞社 日刊大阪アド株式会社(「日刊工業新聞」、「機械技術」誌、「型技術」誌) 株式会社ニュースダイジェスト社(「生産財マーケティング」誌) 株式会社日本産機新聞社 日本工業出版株式会社(「機械と工具」誌) 株式会社大河出版(「ツールエンジニア」誌) 14.日本物流新聞 発行日 令和5年3月10日 刊行物 日本物流新聞2023年3月10日号 15.展示会「INTERMOLD KOREA 2023」 開催日 令和5年3月14日(火)~18日(土) 展示会名 INTERMOLD KOREA 2023 16.日刊工業新聞 発行日 令和5年3月15日 刊行物 日刊工業新聞2023年3月15日号 17.YouTubeショート(INTERMOLD KOREA 2023) ウェブサイトの掲載日 令和5年3月18日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/shorts/-rLhUEj3Ek8 18.管機産業新聞 発行日 令和5年3月22日 刊行物 管機産業新聞2023年3月22日号 19.「機械と工具」誌 発行日 令和5年3月31日 刊行物 機械と工具 2023年4月号、第4ページ 20.自社ホームページでの製品紹介 ウェブサイトの掲載日 令和5年4月3日 ウェブサイトのアドレス https://www.mst-corp.co.jp/mc_tool/millbore/ 21.「生産財マーケティング」誌 発行日 令和5年4月1日 刊行物 月刊生産財マーケティング 2023年4月号、第A-146ページ 22.日本産機新聞 発行日 令和5年4月5日 刊行物 日本産機新聞2023年4月5日号 23.日本物流新聞 発行日 令和5年4月10日 刊行物 日本物流新聞2023年4月10日号、第8面 24.展示会「CIMT 2023」 開催日 令和5年4月10日(月)~15日(土) 展示会名 CIMT 2023(中国国際工作機械見本市) 25.「型技術」誌 発行日 令和5年4月12日 刊行物 型技術2023年5月号、第008ページ
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 26.展示会「INTERMOLD 2023」 開催日 令和5年4月12日(水)~15日(土) 展示会名 INTERMOLD 2023(第34回金型加工技術展) 27.YouTube(「ミルボア」紹介) ウェブサイトの掲載日 令和5年4月18日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=OehDj4ZRUPk&t=26s&ab_channel=MST_TOOLING 28.YouTube(「ミルボア」紹介、英語版) ウェブサイトの掲載日 令和5年4月24日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=mtTG28vxuWQ&t=86s&ab_channel=MST_TOOLING 29.YouTube(CIMT 2023のダイジェスト) ウェブサイトの掲載日 令和5年4月26日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=DhqSVehqEaI&ab_channel=MST_TOOLING 30.「ツールエンジニア」誌 発行日 令和5年4月28日 刊行物 ツールエンジニア2023年5月号、第9ページ 31.「西川ニュース」誌 発行日 令和5年4月27日 刊行物 ロボテック情報 西川ニュース135号(2023年5月号)、第7ページ 32.山善ものづくりハンドブック「セレシナ」 発行日 令和5年4月1日 刊行物 山善ものづくりハンドブック「セレシナ vol.11」、第145ページ 33.「機械技術」誌 発行日 令和5年5月25日 刊行物 機械技術2023年6月号、第19ページおよび第62~63ページ 34.日本物流新聞 発行日 令和5年6月10日 刊行物 日本物流新聞2023年6月10日号、第5面 35.「タナカ善ニュース」誌 発行日 令和5年6月9日 刊行物 第65号タナカ善ニュース夏号 36.展示会「DMC 2023」 開催日 令和5年6月11日(日)~14日(水) 展示会名 DMC 2023(第22回中国国際金型技術と設備展示会)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 37.YouTube(DMC 2023の紹介) ウェブサイトの掲載日 令和5年6月13日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=FfPztJiXXBc&ab_channel=MST_TOOLING 38.「ミルボア」の貸出 貸出日 令和5年5月31日 販売相手先 フジ精工株式会社 39.展示会「大阪機械加工システム展」 開催日 令和5年2月16日(木)~17日(金) 展示会名 大阪機械加工システム展(ジーネット) 40.展示会「2023広島どてらい市」 開催日 令和5年3月3日(金)~4日(土) 展示会名 2023広島どてらい市 41.展示会「2023岐阜どてらい市」 開催日 令和5年3月4日(土)~5日(日) 展示会名 2023岐阜どてらい市 42.展示会「2023北関東どてらい市」 開催日 令和5年3月10日(金)~11日(土) 展示会名 2023北関東どてらい市 43.展示会「中部機械加工システム展」 開催日 令和5年3月16日(木)~17日(金) 展示会名 中部機械加工システム展(ジーネット) 44.展示会「2023静岡どてらい市」 開催日 令和5年3月17日(金)~18日(土) 展示会名 2023静岡どてらい市 45.展示会「2023東北どてらい市」 開催日 令和5年4月7日(金)~8日(土) 展示会名 2023東北どてらい市 46.展示会「ナンシン機工プライベートショー」 開催日 令和5年4月14日(金)~15日(土) 展示会名 ナンシン機工プライベートショー 47.展示会「第17回TACプライベートショー」 開催日 令和5年4月20日(木)~22日(土) 展示会名 第17回TACプライベートショー 48.展示会「MEX金沢2023」 開催日 令和5年5月18日(木)~20日(土) 展示会名 MEX金沢2023(第59回機械工業見本市金沢) 49.展示会「2023東北信どてらい市」 開催日 令和5年5月19日(金)~20日(土) 展示会名 2023東北信どてらい市
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 50.展示会「国興展2023」 開催日 令和5年5月25日(木)~26日(金) 展示会名 国興展2023 51.展示会「2023モテキ感謝セール」 開催日 令和5年6月2日(金)~3日(土) 展示会名 2023モテキ感謝セール(モテキトータルフェア) 52.展示会「2023中部どてらい市」 開催日 令和5年6月8日(木)~10日(土) 展示会名 2023中部どてらい市 53.展示会「2023新潟どてらい市」 開催日 令和5年6月9日(金)~10日(土) 展示会名 2023新潟どてらい市 54.展示会「2023鹿児島どてらい市」 開催日 令和5年6月10日(土)~12日(月) 展示会名 2023鹿児島どてらい市 55.展示会「2023富山どてらい市」 開催日 令和5年6月16日(金)~17日(土) 展示会名 2023富山どてらい市 56.展示会「2023米子どてらい市」 開催日 令和5年6月17日(土)~19日(月) 展示会名 2023米子どてらい市
(71)【出願人】
【識別番号】591286982
【氏名又は名称】株式会社MSTコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】溝口 春機
【テーマコード(参考)】
3C032
3C036
3C046
【Fターム(参考)】
3C032DD00
3C036AA13
3C046KK02
(57)【要約】
【課題】人のスキルを要せず、切り屑の絡み付きによる機械停止等を生じにくく、穴径の異なる複数の円筒穴を低コストで仕上げることが可能な円筒穴の仕上げ加工方法を提供する。
【解決手段】焼きばめホルダ1と超硬合金製の超硬アーバ2と交換式工具3とを使用し、マシニングセンタで交換式工具3を回転させながらワークWの円筒穴20の中心まわりをらせん状に移動させることで円筒穴20の内周面を仕上げ加工する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W)の円筒穴(20)の内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工方法であって、
マシニングセンタの主軸(8)のテーパ穴(9)に挿入して固定されるテーパシャンク部(5)と、前記テーパシャンク部(5)とは反対側の軸方向に延びて先端が開口するチャック筒部(6)とを有する焼きばめホルダ(1)と、
前記チャック筒部(6)に挿入して焼きばめにより固定される基端部(11)と、前記基端部(11)から前記チャック筒部(6)の外側に軸方向に延びる棒状の軸部(12)と、前記軸部(12)の先端に開口する工具取付穴(13)とを有する超硬合金製の超硬アーバ(2)と、
前記超硬アーバ(2)の先端の前記工具取付穴(13)に着脱可能に固定される交換式工具(3)と、を使用し、
前記マシニングセンタで前記交換式工具(3)を回転させながら前記ワーク(W)の円筒穴(20)の中心まわりをらせん状に移動させることで前記円筒穴(20)の内周面を仕上げ加工する、円筒穴の仕上げ加工方法。
【請求項2】
前記交換式工具(3)が前記円筒穴(20)の内周面の前記主軸(8)から遠い側の端(23)を加工するときに前記チャック筒部(6)の先端から前記円筒穴(20)の内周面の前記主軸(8)に近い側の端(22)までの軸方向距離が1mm以上25mm未満となるような前記焼きばめホルダ(1)と前記超硬アーバ(2)と前記交換式工具(3)の組み合わせで前記円筒穴(20)の内周面を仕上げ加工する請求項1に記載の円筒穴の仕上げ加工方法。
【請求項3】
前記ワーク(W)は、前記円筒穴(20)の前記主軸(8)に近い側の端(22)の開口縁に対して径方向外側にずれた位置から所定の高さで立ち上がる内壁面(21)を有する形状のものであり、
前記交換式工具(3)が前記円筒穴(20)の内周面の前記主軸(8)から遠い側の端(23)を加工するときに前記焼きばめホルダ(1)のチャック筒部(6)が前記内壁面(21)に干渉せずに前記内壁面(21)と軸直角方向に対向する位置関係となるような前記焼きばめホルダ(1)と前記超硬アーバ(2)と前記交換式工具(3)の組み合わせで前記円筒穴(20)の内周面を仕上げ加工する請求項1または2に記載の円筒穴の仕上げ加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の円筒穴の仕上げ加工方法に使用するホルダ選択支援装置であって、
ユーザーが、前記ワーク(W)の材質と、前記円筒穴(20)の穴径の仕上げ寸法と、前記円筒穴(20)の内周面の軸方向長さと、前記円筒穴(20)の内周面の前記主軸(8)に近い側の端(22)の開口縁から前記内壁面(21)までの径方向距離と、前記内壁面(21)の高さとを含む入力データを入力し、
前記入力データと、あらかじめ登録された複数種類の前記焼きばめホルダ(1)の情報と、あらかじめ登録された複数種類の前記超硬アーバ(2)の情報と、あらかじめ登録された複数種類の前記交換式工具(3)の情報とに基づいて、前記交換式工具(3)が前記円筒穴(20)の内周面の前記主軸(8)から遠い側の端(23)を加工するときに前記焼きばめホルダ(1)のチャック筒部(6)が前記内壁面(21)に干渉せずに前記内壁面(21)と軸直角方向に対向する位置関係となるような前記焼きばめホルダ(1)と前記超硬アーバ(2)と前記交換式工具(3)の組み合わせを選択して画面出力するホルダ選択支援装置。
【請求項5】
前記交換式工具(3)が前記円筒穴(20)の内周面の前記主軸(8)から遠い側の端(23)を加工するときに前記焼きばめホルダ(1)のチャック筒部(6)が前記内壁面(21)と軸直角方向に対向する位置関係となるような前記焼きばめホルダ(1)と前記超硬アーバ(2)と前記交換式工具(3)の組み合わせが複数あるときは、その複数の前記焼きばめホルダ(1)と前記超硬アーバ(2)と前記交換式工具(3)の組み合わせを、軸直角方向の剛性の高い順に並べて画面出力する請求項4に記載のホルダ選択支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒穴の仕上げ加工方法、およびその仕上げ加工方法に使用するホルダ選択支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに形成された円筒穴の内周面を仕上げ加工する場合、一般に、ボーリングヘッドが使用される(例えば、特許文献1)。図6にボーリングヘッド50の一例を示す。ボーリングヘッド50は、工作機械の主軸51のテーパ穴52に挿入して固定されるテーパシャンク部53と、そのテーパシャンク部53から軸方向に延びる棒状の軸部54と、その軸部54の先端に設けられた刃部55とを有する。刃部55は、軸部54に対して径方向に移動可能に支持されており、調整ねじ56を操作することで刃部55の径方向位置を調節することができるようになっている。
【0003】
このボーリングヘッド50の使用例を説明する。まず、図7に示すように、ボーリングヘッド50をツールプリセッタ57にセットし、ボーリングヘッド50の調整ねじ56を操作することで、ボーリングヘッド50の先端の刃部55の径方向位置を、円筒穴58の穴径の仕上げ寸法に対応する径方向位置からわずかに径方向内側にオフセットした位置に調整する。次に、図6に示すように、ボーリングヘッド50を工作機械の主軸51にセットし、ボーリングヘッド50を定位置(円筒穴58の中心位置)で回転させながら円筒穴58に軸方向に挿入することで、円筒穴58の内周面を軸方向全長にわたって切削する。
【0004】
その後、円筒穴58の穴径を測定し、その測定値と穴径の仕上げ寸法との差を求める。また、図7に示すように、ボーリングヘッド50を再びツールプリセッタ57にセットし、穴径の測定値と仕上げ寸法の差の分だけボーリングヘッド50の先端の刃部55の径方向位置が径方向外側に移動するよう、手作業で刃部55の位置調整を行なう。その後、再び、図6に示すように、ボーリングヘッド50を工作機械の主軸51にセットし、ボーリングヘッド50を定位置で回転させながら円筒穴58に軸方向に挿入することで、円筒穴58の内周面を軸方向全長にわたって切削し、円筒穴58の穴径を所定の仕上げ寸法に仕上げる。以上のように、円筒穴58の内周面の仕上げ加工は、ボーリングヘッド50を使用して行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-079517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6図7に示すように、ボーリングヘッド50を使用して円筒穴58の仕上げ加工を行なう場合、以下のような問題がある。
【0007】
図6に示すように、円筒穴58の内周面を切削し、その後、図7に示すように、穴径の測定値と仕上げ寸法の差の分だけボーリングヘッド50の先端の刃部55の径方向位置が径方向外側に移動するよう、手作業で刃部55の位置調整を行なうのに人のスキルが必要であり、手間と時間もかかる。また、図8図9に示すように、ボーリングヘッド50を定位置で回転させながら円筒穴58に軸方向に挿入する加工は、長くつながった切り屑を生じやすく、その切り屑がボーリングヘッド50に絡み付いて機械停止等の問題が生じやすい。また、図6図8に示すように、穴径の異なる複数の円筒穴58を仕上げ加工する場合、軸径の異なる複数のボーリングヘッド50を準備する必要があるので、コストがかかる。また、ボーリングヘッド50を交換するための手間と時間もかかる。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、人のスキルを要せず、切り屑の絡み付きによる機械停止等を生じにくく、穴径の異なる複数の円筒穴を低コストで仕上げることが可能な円筒穴の仕上げ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の発明者は、焼きばめにより工具を固定する焼きばめホルダと、超硬合金で形成された超硬アーバとを使用すれば、焼きばめホルダは、一般的なコレット式ホルダに比べて工具の振れを著しく小さく抑えることが可能であり、また超硬アーバは、一般的な鋼製アーバに比べて軸直角方向の剛性が著しく高いことから、焼きばめホルダがワークに干渉しない範囲で焼きばめホルダからの超硬アーバの突出長がなるべく短くなるように焼きばめホルダと超硬アーバの組み合わせを選択することにより、ワークの円筒穴の内周面を、ボーリングヘッドで仕上げ加工するのと同等かそれ以上の精度で加工することが可能であることを見出した。
【0010】
この知見に基づき、この発明では、上記の課題を解決するため、以下の構成の円筒穴の仕上げ加工方法を提供する。
[構成1]
ワークの円筒穴の内周面を仕上げ加工する円筒穴の仕上げ加工方法であって、
マシニングセンタの主軸のテーパ穴に挿入して固定されるテーパシャンク部と、前記テーパシャンク部とは反対側の軸方向に延びて先端が開口するチャック筒部とを有する焼きばめホルダと、
前記チャック筒部に挿入して焼きばめにより固定される基端部と、前記基端部から前記チャック筒部の外側に軸方向に延びる棒状の軸部と、前記軸部の先端に開口する工具取付穴とを有する超硬合金製の超硬アーバと、
前記超硬アーバの先端の前記工具取付穴に着脱可能に固定される交換式工具と、を使用し、
前記マシニングセンタで前記交換式工具を回転させながら前記ワークの円筒穴の中心まわりをらせん状に移動させることで前記円筒穴の内周面を仕上げ加工する、円筒穴の仕上げ加工方法。
【0011】
この構成を採用すると、焼きばめホルダは、一般的なコレット式ホルダに比べて工具の振れを著しく小さく抑えることが可能であり、また超硬アーバは、一般的な鋼製アーバに比べて軸直角方向の剛性が著しく高いことから、焼きばめホルダがワークに干渉しない範囲において焼きばめホルダからの超硬アーバの突出長がなるべく短くなるように焼きばめホルダと超硬アーバの組み合わせを選択することにより、ワークの円筒穴の内周面を、ボーリングヘッドで仕上げ加工するのと同等かそれ以上の精度で加工して所定の穴径に仕上げることができる。また、円筒穴の穴径が所定の仕上げ寸法になるように、交換式工具がらせん状に移動するときのらせん径をマシニングセンタの数値制御で自動的に調整するこが可能である。そのため、手作業による刃部の位置調整が不要であり、人のスキルを要しない。また、交換式工具を回転させながら円筒穴の中心まわりをらせん状に移動させるので、円筒穴の内周面を加工するときの切り屑が細かく分断され、長くつながった切り屑が生じにくい。そのため、切り屑の絡み付きによる機械停止等を生じにくい。また、穴径の異なる複数の円筒穴を仕上げ加工する場合、交換式工具がらせん状に移動するときのらせん径をマシニングセンタの数値制御で変更することで、穴径の異なる複数の円筒穴を仕上げ加工することができる。そのため、低コストであり、手間と時間もかからない。
【0012】
[構成2]
前記交換式工具が前記円筒穴の内周面の前記主軸から遠い側の端を加工するときに前記チャック筒部の先端から前記円筒穴の内周面の前記主軸に近い側の端までの軸方向距離が1mm以上25mm未満となるような前記焼きばめホルダと前記超硬アーバと前記交換式工具の組み合わせで前記円筒穴の内周面を仕上げ加工する構成1に記載の円筒穴の仕上げ加工方法。
【0013】
この構成を採用すると、円筒穴の内周面の主軸から遠い側の端を加工するときのチャック筒部の先端から円筒穴の内周面の主軸に近い側の端までの軸方向距離を1mm以上確保することができるので、円筒穴の内周面を仕上げ加工するときに焼きばめホルダのチャック筒部の先端がワークに干渉するのを確実に回避することができる。また、円筒穴の内周面の主軸から遠い側の端を加工するときのチャック筒部の先端から円筒穴の内周面の主軸に近い側の端までの軸方向距離が25mm未満とされているので、焼きばめホルダからの超硬アーバの突出長が短く抑えられ、焼きばめホルダと超硬アーバと交換式工具を組み合わせた状態での軸直角方向の剛性がきわめて高いものとなる。
【0014】
[構成3]
前記ワークは、前記円筒穴の前記主軸に近い側の端の開口縁に対して径方向外側にずれた位置から所定の高さで立ち上がる内壁面を有する形状のものであり、
前記交換式工具が前記円筒穴の内周面の前記主軸から遠い側の端を加工するときに前記焼きばめホルダのチャック筒部が前記内壁面に干渉せずに前記内壁面と軸直角方向に対向する位置関係となるような前記焼きばめホルダと前記超硬アーバと前記交換式工具の組み合わせで前記円筒穴の内周面を仕上げ加工する構成1または2に記載の円筒穴の仕上げ加工方法。
【0015】
この構成を採用すると、円筒穴の内周面の主軸から遠い側の端を加工するときに、内壁面と軸直角方向に対向する位置で焼きばめホルダが超硬アーバを保持するので、焼きばめホルダからの超硬アーバの突出長を短く抑えることができる。そのため、焼きばめホルダと超硬アーバと交換式工具を組み合わせた状態での軸直角方向の剛性がきわめて高いものとなり、円筒穴の内周面を高い精度に仕上げることができる。
【0016】
また、この発明では、上記の円筒穴の仕上げ加工方法に使用するホルダ選択支援装置として、以下の構成のものを併せて提供する。
[構成4]
構成3に記載の円筒穴の仕上げ加工方法に使用するホルダ選択支援装置であって、
ユーザーが、前記ワークの材質と、前記円筒穴の穴径の仕上げ寸法と、前記円筒穴の内周面の軸方向長さと、前記円筒穴の内周面の前記主軸に近い側の端の開口縁から前記内壁面までの径方向距離と、前記内壁面の高さとを含む入力データを入力し、
前記入力データと、あらかじめ登録された複数種類の前記焼きばめホルダの情報と、あらかじめ登録された複数種類の前記超硬アーバの情報と、あらかじめ登録された複数種類の前記交換式工具の情報とに基づいて、前記交換式工具が前記円筒穴の内周面の前記主軸から遠い側の端を加工するときに前記焼きばめホルダのチャック筒部が前記内壁面に干渉せずに前記内壁面と軸直角方向に対向する位置関係となるような前記焼きばめホルダと前記超硬アーバと前記交換式工具の組み合わせを選択して画面出力するホルダ選択支援装置。
【0017】
このホルダ選択支援装置を使用すると、ワークが、円筒穴の主軸に近い側の端の開口縁に対して径方向外側にずれた位置から所定の高さで立ち上がる内壁面を有する形状のものである場合に、焼きばめホルダがワークの内壁面に干渉しない範囲において、焼きばめホルダからの超硬アーバの突出長がなるべく短くなるような焼きばめホルダと超硬アーバと交換式工具の組み合わせを容易に選択することが可能である。
【0018】
[構成5]
前記交換式工具が前記円筒穴の内周面の前記主軸から遠い側の端を加工するときに前記焼きばめホルダのチャック筒部が前記内壁面に干渉せずに前記内壁面と軸直角方向に対向する位置関係となるような前記焼きばめホルダと前記超硬アーバと前記交換式工具の組み合わせが複数あるときは、その複数の前記焼きばめホルダと前記超硬アーバと前記交換式工具の組み合わせを、軸直角方向の剛性の高い順に並べて画面出力する構成4に記載のホルダ選択支援装置。
【0019】
このホルダ選択支援装置を使用すると、焼きばめホルダからの超硬アーバの突出長がなるべく短くなるような焼きばめホルダと超硬アーバと交換式工具の組み合わせが複数ある場合に、そのうち最も剛性が高い組み合わせを選択することが可能であり、また、最も剛性が高い組み合わせを選択することができない事情が存在する場合は、2番目に剛性が高い組み合わせを選択することが可能となるなど、その場の状況に応じて最適な選択をすることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
この発明の円筒穴の仕上げ加工方法は、円筒穴の穴径が所定の仕上げ寸法になるように、交換式工具がらせん状に移動するときのらせん径をマシニングセンタの数値制御で自動的に調整するこが可能である。そのため、手作業による刃部の位置調整が不要であり、人のスキルを要しない。また、交換式工具を回転させながら円筒穴の中心まわりをらせん状に移動させるので、円筒穴の内周面を加工するときの切り屑が細かく分断され、長くつながった切り屑が生じにくい。そのため、切り屑の絡み付きによる機械停止等を生じにくい。また、穴径の異なる複数の円筒穴を仕上げ加工する場合、交換式工具がらせん状に移動するときのらせん径をマシニングセンタの数値制御で変更することで、穴径の異なる複数の円筒穴を仕上げ加工することができる。そのため、低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施形態にかかる円筒穴の仕上げ加工方法で使用する焼きばめホルダと超硬アーバと交換式工具の一例を示す図
図2図1の超硬アーバの近傍の拡大図
図3図1に示す焼きばめホルダと超硬アーバと交換式工具の組み合わせで円筒穴の内周面を切削した後、円筒穴の穴径をタッチプローブで測定する状態を示す図
図4図2に示す円筒穴よりも大きい穴径の円筒穴の内周面を、図1に示す焼きばめホルダと超硬アーバと交換式工具の組み合わせで仕上げ加工する状態を示す図
図5図4に示す加工で生じる切り屑の状態を示す図
図6】ボーリングヘッドで円筒穴の内周面を仕上げ加工する比較例を示す図
図7図6に示すボーリングヘッドの刃部の径方向位置をツールプリセッタで調整する状態を示す図
図8図6に示す円筒穴よりも大きい穴径の円筒穴の内周面を、図6に示すボーリングヘッドよりも大きい外径をもつボーリングヘッドで仕上げ加工する状態を示す図
図9図8に示す加工で生じる切り屑の状態を示す図
図10】この発明の実施形態にかかるホルダ選択支援装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、この発明の実施形態にかかる円筒穴の仕上げ加工方法で使用する焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の一例を示す。
【0023】
焼きばめホルダ1は、フランジ部4と、フランジ部4から軸方向(図では上方)に延びるテーパシャンク部5と、フランジ部4からテーパシャンク部5とは反対側の軸方向(図では下方)に延びるチャック筒部6とを有する。フランジ部4の外周には、マシニングセンタの工具交換用マニピュレータ(図示せず)で把持するための周方向溝7が形成されている。
【0024】
テーパシャンク部5は、マシニングセンタの主軸8のテーパ穴9に挿入して固定される部分である。マシニングセンタは、主軸8の軸線方向であるZ軸方向(図では上下方向)と、Z軸方向に直交するX軸方向(図では左右方向)、Y軸方向(図では紙面に直交する方向)の合計3軸方向の動作を同時制御することが可能なものを使用している。テーパシャンク部5は、主軸8のテーパ穴9の内面に接触する部分が7/24の勾配の円すい面(軸方向距離に対する直径の変化の割合が7/24の円すい面)とされた7/24テーパシャンクである。テーパシャンク部5の先端(図では上端)には、テーパシャンク部5を主軸8に引き込んで固定するためのプルスタッド10が設けられている。ここでは、テーパシャンク部5として7/24テーパシャンクを例に挙げて説明したが、主軸8のテーパ穴9の内面に接触する部分が1/10の勾配の円すい面とされた1/10テーパシャンク(いわゆるHSKシャンク)を採用することも可能である。
【0025】
チャック筒部6は、先端が開口する筒状に形成されている。チャック筒部6の外周面は、フランジ部4から遠ざかるほど小径となる先細形状とされている。先細形状の外周面をもつチャック筒部6として、図では、凹曲線(好ましくは凹の二次曲線)を母線とする円すい状の外周面をもつチャック筒部6を示したが、母線形状が直線の円すい面を外周面とするチャック筒部6を採用することも可能であり、また、外径が一定の円筒面とその円筒面からチャック筒部6の先端に向かって次第に小径となる円すい面とからなる外周面をもつチャック筒部6を採用することも可能である。
【0026】
テーパシャンク部5とフランジ部4とチャック筒部6は、鋼材で一体に形成されている。ここで、チャック筒部6を構成する鋼材は、フランジ部4およびテーパシャンク部5を構成する鋼材よりも線膨張係数の大きい鋼材が採用されている。具体的には、鋼材で一体に形成されたフランジ部4およびテーパシャンク部5に、フランジ部4およびテーパシャンク部5を構成する鋼材よりも線膨張係数の大きい鋼材(例えば、オーステナイト鋼)で形成されたチャック筒部6を溶接等により一体化した構成が採用されている。このようにすると、チャック筒部6の熱膨張率が大きいことから、比較的低温での焼きばめが可能となり、チャック筒部6に焼きばめで固定された超硬アーバ2の振れを著しく小さく抑えることが可能となる。
【0027】
図2に示すように、超硬アーバ2は、焼きばめホルダ1のチャック筒部6に挿入して焼きばめにより固定される基端部11と、基端部11からチャック筒部6の外側に軸方向に延びる棒状の軸部12と、軸部12の先端に開口する工具取付穴13とを有する。基端部11と軸部12は、軸方向に細長い円柱状であり、超硬合金で一体に形成されている。図では、軸部12の外径が基端部11の外径よりもわずかに小さい超硬アーバ2を示したが、軸部12の外径と基端部11の外径が同一寸法の超硬アーバ2を採用することも可能である。工具取付穴13は、内周に雌ねじをもつねじ穴部14と、ねじ穴部14に対して軸部12の先端側に形成された嵌合穴部15とを有する。
【0028】
交換式工具3は、超硬アーバ2の先端の工具取付穴13に着脱可能に固定されている。交換式工具3は、本体部16と、本体部16に取り付けられたインサートチップ17と、本体部16の後端から軸方向に延びる嵌合軸部18と、嵌合軸部18から軸方向に延びるねじ軸部19とを有する。ねじ軸部19は、工具取付穴13のねじ穴部14にねじ係合し、嵌合軸部18は、工具取付穴13の嵌合穴部15に嵌合して本体部16を径方向に位置決めしている。インサートチップ17は、周方向に180°の間隔をおいて切れ刃をもつ側面切削用の二枚刃のチップである。インサートチップ17の外周の切れ刃は、軸方向に真っ直ぐ延びる0.8mm以上のストレート部分を有する。
【0029】
上述の焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3を使用して、図1に示すワークWの円筒穴20の内周面を仕上げ加工する方法の一例を説明する。
【0030】
図1に示すように、ワークWは、円筒穴20の軸線方向が主軸8の軸線方向と平行になるように、マシニングセンタの図示しないテーブルに取り付けられている。ワークWは、円筒穴20の主軸8に近い側の端22(図では上端)の開口縁に対して径方向外側にずれた位置から所定の高さで立ち上がる内壁面21を有する。ここでは、内壁面21は、円筒穴20と同軸に形成された穴の内面である。
【0031】
ところで、焼きばめホルダ1は、チャック筒部6の内径寸法、フランジ部4からチャック筒部6の先端までの軸方向長さ、チャック筒部6の外周面の母線形状などが異なる複数種類のものがある。図2に示す超硬アーバ2も、基端部11の外径寸法、軸部12の軸方向長さなどが異なる複数種類のものがある。そのため、円筒穴20の内周面を仕上げ加工するに際して、その加工に使用することが可能な焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせが多く存在する。
【0032】
この点に関し、この実施形態では、図2に示す円筒穴20の内周面の主軸8(図1参照)から遠い側の端23を交換式工具3で加工するときにチャック筒部6の先端から円筒穴20の内周面の主軸8に近い側の端22までの軸方向距離が1mm以上25mm未満となるような焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせを選択して使用している。また、図1に示す円筒穴20の内周面の主軸8から遠い側の端23を交換式工具3で加工するときに焼きばめホルダ1のチャック筒部6が内壁面21に干渉せずに内壁面21と軸直角方向に対向する位置関係となるような焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせを選択して使用している。
【0033】
そして、図2に示すように、主軸8を回転駆動することで交換式工具3を回転させながら、マシニングセンタのXYZの同時3軸制御により交換式工具3をワークWの円筒穴20の中心まわりをらせん状に移動させることで円筒穴20の内周面を軸方向全長にわたって切削する。このとき、切削後の円筒穴20の穴径が仕上げ寸法(目標寸法)よりもわずかに小さくなるように切削を行なう。
【0034】
その後、図3に示すように、マシニングセンタのタッチプローブ24で、円筒穴20の穴径を測定する。その後、再び、図2に示すように、主軸8を回転駆動することで交換式工具3を回転させながら、マシニングセンタのXYZの同時3軸制御により交換式工具3をワークWの円筒穴20の中心まわりをらせん状に移動させることで円筒穴20の内周面を軸方向全長にわたって切削する。このとき、マシニングセンタは、タッチプローブ24による円筒穴20の穴径の測定値に基づいて、切削後の円筒穴20の穴径が仕上げ寸法(目標寸法)になるように、図2に示す交換式工具3がらせん状に移動するときのらせん径を数値制御で自動的に調整する。
【0035】
上記方法で円筒穴20の内周面を仕上げ加工すると、焼きばめホルダ1は、一般的なコレット式ホルダに比べて工具の振れを著しく小さく抑えることが可能であり、また超硬アーバ2は、一般的な鋼製アーバに比べて軸直角方向の剛性が著しく高いことから、図2に示すように、焼きばめホルダ1がワークWに干渉しない範囲において焼きばめホルダ1からの超硬アーバ2の突出長がなるべく短くなるように焼きばめホルダ1と超硬アーバ2の組み合わせを選択することにより、ワークWの円筒穴20の内周面を、ボーリングヘッド50(図6参照)で仕上げ加工するのと同等かそれ以上の精度で加工して所定の穴径に仕上げることができる。
【0036】
また、上記方法で円筒穴20の内周面を仕上げ加工すると、円筒穴20の穴径が所定の仕上げ寸法になるように、図2に示す交換式工具3がらせん状に移動するときのらせん径をマシニングセンタの数値制御で自動的に調整することができる。そのため、手作業による刃部の位置調整が不要であり、人のスキルを要しない。
【0037】
また、図4図5に示すように、交換式工具3を回転させながら円筒穴20の中心まわりをらせん状に移動させるので、円筒穴20の内周面を加工するときの切り屑が細かく分断され、長くつながった切り屑が生じにくい。そのため、切り屑の絡み付きによる機械停止等を生じにくい。
【0038】
また、図2図4に示すように、穴径の異なる複数の円筒穴20を仕上げ加工する場合、交換式工具3がらせん状に移動するときのらせん径をマシニングセンタの数値制御で変更することで、穴径の異なる複数の円筒穴20を仕上げ加工することができる。そのため、低コストであり、手間と時間もかからない。
【0039】
また、図1に示す円筒穴20の内周面の主軸8から遠い側の端23を交換式工具3で加工するときにチャック筒部6の先端から円筒穴20の内周面の主軸8に近い側の端22までの軸方向距離が1mm以上となるような焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせを選択して使用しているので、円筒穴20の内周面を仕上げ加工するときに焼きばめホルダ1のチャック筒部6の先端がワークWに干渉するのを確実に回避することができる。
【0040】
また、図1に示す円筒穴20の内周面の主軸8から遠い側の端23を交換式工具3で加工するときにチャック筒部6の先端から円筒穴20の内周面の主軸8に近い側の端22までの軸方向距離が25mm未満となるような焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせを選択して使用しているので、焼きばめホルダ1からの超硬アーバ2の突出長が短く抑えられ、焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3を組み合わせた状態での軸直角方向の剛性がきわめて高いものとなり、円筒穴20の内周面を高い精度に仕上げることができる。
【0041】
また、図1に示すように、円筒穴20の内周面の主軸8から遠い側の端23を交換式工具3で加工するときに焼きばめホルダ1のチャック筒部6が内壁面21に干渉せずに内壁面21と軸直角方向に対向する位置関係となるような焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせを選択して使用しているので、焼きばめホルダ1からの超硬アーバ2の突出長が短く抑えられ、焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3を組み合わせた状態での軸直角方向の剛性がきわめて高いものとなり、円筒穴20の内周面を高い精度に仕上げることができる。
【0042】
上記の仕上げ加工を行なう際、ユーザーは、焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせを選択する必要がある。その際、ユーザーが最適な組み合わせを容易に選択可能とするホルダ選択支援装置の一例を説明する。
【0043】
図10に示すように、ホルダ選択支援装置は、入力部30と情報処理部31と出力部32とを有する。情報処理部31には、図1に示すチャック筒部6の内径寸法、フランジ部4からチャック筒部6の先端までの軸方向長さ、チャック筒部6の外周面の母線形状などが異なる複数種類の焼きばめホルダ1の寸法および剛性に関する情報と、図2に示す基端部11の外径寸法、軸部12の軸方向長さなどが異なる複数種類の超硬アーバ2の寸法および剛性に関する情報と、型番、刃先径などが異なる複数種類の交換式工具3の寸法および切削条件の情報とがあらかじめ登録されている。
【0044】
そして、ユーザーが、図10に示す入力部30に、図1に示すワークWの材質と、円筒穴20の穴径の仕上げ寸法(目標寸法)と、円筒穴20の内周面の軸方向長さと、円筒穴20の内周面の主軸8に近い側の端22の開口縁から内壁面21までの径方向距離と、内壁面21の高さとを含む入力データを入力すると、図10に示す情報処理部31は、ユーザーが入力した入力データと、あらかじめ登録された複数種類の焼きばめホルダ1の情報と、あらかじめ登録された複数種類の超硬アーバ2の情報と、あらかじめ登録された複数種類の交換式工具3の情報とに基づいて、図1に示す交換式工具3が円筒穴20の内周面の主軸8から遠い側の端23を加工するときに焼きばめホルダ1のチャック筒部6が内壁面21に干渉せずに内壁面21と軸直角方向に対向する位置関係となるような焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせを選択し、その組み合わせを図10に示す出力部32に画面出力する。このとき、焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせが複数あるときは、その複数の組み合わせを、軸直角方向の剛性の高い順に並べて画面出力する。ここで、軸直角方向の剛性は、交換式工具3を超硬アーバ2を介して焼きばめホルダ1で片持ち支持した状態で交換式工具3の刃部に定荷重(例えば9.8Nの荷重)を軸直角方向に負荷したときのチャック筒部6および超硬アーバ2のたわみによる交換式工具3の刃部の軸直角方向の変位量を計算し、その計算値を使用することができる。
【0045】
このホルダ選択支援装置を使用すると、図1に示すように、ワークWが、円筒穴20の主軸8に近い側の端22の開口縁に対して径方向外側にずれた位置から所定の高さで立ち上がる内壁面21を有する形状のものである場合に、焼きばめホルダ1がワークWの内壁面21に干渉しない範囲において、焼きばめホルダ1からの超硬アーバ2の突出長がなるべく短くなるような焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせを容易に選択することが可能である。
【0046】
また、焼きばめホルダ1からの超硬アーバ2の突出長がなるべく短くなるような焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3の組み合わせが複数ある場合に、そのうち最も剛性が高い組み合わせを選択することが可能であり、また、最も剛性が高い組み合わせを選択することができない事情が存在する場合は、2番目に剛性が高い組み合わせを選択することが可能となるなど、その場の状況に応じて最適な選択をすることが可能である。
【0047】
焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3とを使用して円筒穴の内周面を仕上げ加工すると、ボーリングヘッド50(図6参照)で仕上げ加工するのと同等かそれ以上の精度で加工することが可能であることを確認するため、図1に示す構成の焼きばめホルダ1と超硬アーバ2と交換式工具3とを使用した円筒穴の仕上げ加工(実施例)と、図6に示す構成のボーリングヘッド50を使用した円筒穴の仕上げ加工(比較例)とを行ない、比較例の仕上げ加工後の円筒穴の寸法精度と、実施例の仕上げ加工後の円筒穴の寸法精度とを比較する試験を行なった。
【0048】
この試験で使用したワークの円筒穴の穴径は50mm、円筒穴の軸方向長さは30mmである。切削条件は、次の表1に示すとおりである。
【表1】
【0049】
試験結果は、次の表2に示すとおりである。
【表2】
【0050】
表2に示すように、実施例の仕上げ加工方法で円筒穴の内周面を仕上げ加工した場合、比較例(ボーリングヘッド)で円筒穴の内周面を仕上げ加工する場合と同等かそれ以上の精度で加工可能であることを確認することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 焼きばめホルダ
2 超硬アーバ
3 交換式工具
5 テーパシャンク部
6 チャック筒部
8 主軸
9 テーパ穴
11 基端部
12 軸部
13 工具取付穴
20 円筒穴
21 内壁面
22 主軸に近い側の端
23 主軸から遠い側の端
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10