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特開2025-23454情報処理装置、情報処理システム、学習済みモデル、記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023454
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、学習済みモデル、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 40/30 20200101AFI20250207BHJP
【FI】
G06F40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127577
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】523297756
【氏名又は名称】東末 桃
(71)【出願人】
【識別番号】523297767
【氏名又は名称】茂見 憲治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】東末 桃
(72)【発明者】
【氏名】茂見 憲治郎
(57)【要約】
【課題】 コミュニケーション当事者間の認識ずれの解消の一助となる情報処理装置、情報処理システム、学習済みモデル、記憶媒体を提供する。
【解決手段】 本発明の情報処理装置は、プロセッサを備えた情報処理装置であって、プロセッサが、伝達表現を受け付ける処理と、受け付けた前記伝達表現を、前記伝達表現及び当該伝達表現の意味をデータセットとして学習させた第一の学習済みモデルに入力することによって、入力された当該伝達表現の意味を推定する処理を実行する装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えた情報処理装置において、
前記プロセッサは、
伝達表現を受け付ける処理と、
受け付けた前記伝達表現を、伝達表現及び当該伝達表現の意味をデータセットとして学習させた第一の学習済みモデルに入力することによって、入力された当該伝達表現の意味を推定する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報処理装置において、
プロセッサは、
第一の学習済みモデルで推定された伝達表現の意味を、伝達表現の意味、当該伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問に対する正解をデータセットとして学習させた第二の学習済みモデルに入力することによって、入力された前記伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問の正解を生成する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の情報処理装置において、
プロセッサは、
生成された質問に対する回答及び第二の学習済みモデルで生成された正解に基づいて、スコアを算出する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の情報処理装置において、
プロセッサは、
生成された質問に対する回答を、質問パターン、各質問パターンに対する一又は二以上の回答パターン及び類似度をデータセットとして学習させた第三の学習済みモデルに入力することによってスコアを算出する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の情報処理装置において、
プロセッサは、
算出されたスコアを、スコア及び認識ずれの要因をデータセットとして学習させた第四の学習済みモデルに入力することによって、認識ずれの要因を推定する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項4記載の情報処理装置において、
プロセッサは、
伝達表現を、伝達表現の意味及び伝達表現をデータセットして学習させた第五の学習済みモデルに入力することによって、伝達者の意図が反映された修正伝達表現を生成する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
情報処理システムにおいて、
少なくとも、第一端末装置と、当該第一端末装置とネットワーク回線を介して接続された情報処理装置を備え、
前記情報処理装置はプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記第一端末装置から送信された伝達表現を受け付ける処理と、
受け付けた前記伝達表現を、伝達表現及び当該伝達表現の意味をデータセットとして学習させた第一の学習済みモデルに入力することによって、入力された当該伝達表現の意味を推定する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
請求項7記載の情報処理システムにおいて、
プロセッサは、
第一の学習済みモデルで推定された伝達表現の意味を、伝達表現の意味、当該伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問に対する正解をデータセットとして学習させた第二の学習済みモデルに入力することによって、入力された前記伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問の正解を生成する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項9】
請求項8記載の情報処理システムにおいて、
ネットワーク回線を介して情報処理装置に接続された第二端末装置を備え、
プロセッサは、
第一端末装置又は/及び第二端末装置から送信される、質問に対する回答を受け付ける処理と、
受け付けた前記質問に対する回答と第二の学習済みモデルで生成された正解に基づいて、スコアを算出する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項10】
請求項9記載の情報処理システムにおいて、
プロセッサは、
受け付けた回答を、質問パターン、各質問パターンに対する一又は二以上の回答パターン及び類似度をデータセットとして学習させた第三の学習済みモデルに入力することによって、スコアを算出する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項11】
請求項9又は請求項10記載の情報処理システムにおいて、
プロセッサは、
算出されたスコアを、スコア及び認識ずれの要因をデータセットとして学習させた第四の学習済みモデルに入力することによって、認識ずれの要因を推定する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項12】
請求項10記載の情報処理システムにおいて、
プロセッサは、
伝達表現を、伝達表現の意味及び伝達表現をデータセットして学習させた第五の学習済みモデルに入力することによって、伝達者の意図が反映された修正伝達表現を生成する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項13】
学習済みモデルであって、
伝達表現及び当該伝達表現の意味をデータセットとして学習され、
伝達表現が入力データとして入力されると、当該伝達表現の意味を出力するように、コンピュータを機能させる、
ことを特徴とする学習済みモデル。
【請求項14】
学習済みモデルであって、
伝達表現の意味、当該伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問に対する正解をデータセットとして学習され、
請求項13で出力された伝達表現の意味が入力データとして入力されると、当該伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問の正解を生成するように、コンピュータを機能させる、
ことを特徴とする学習済みモデル。
【請求項15】
学習済みモデルであって、
質問パターン、各質問パターンに対する一又は二以上の回答パターン及び類似度をデータセットとして学習され、
受け付けた回答が入力データとして入力されると、当該回答と当該回答に係る質問の正解の類似度を表すスコアを算出するように、コンピュータを機能させる、
ことを特徴とする学習済みモデル。
【請求項16】
学習済みモデルであって、
スコア及び認識ずれの要因をデータセットとして学習され、
請求項14で生成された質問に対する回答と、請求項14の学習済みモデルで生成された正解に基づいて算出されたスコアが入力データとして入力されると、認識ずれの要因を出力するように、コンピュータを機能させる、
ことを特徴とする学習済みモデル。
【請求項17】
学習済みモデルであって、
伝達表現の意味及び伝達表現をデータセットしてとして学習され、
伝達表現が入力データとして入力されると、修正伝達表現を出力するように、コンピュータを機能させる、
ことを特徴とする学習済みモデル。
【請求項18】
請求項13から請求項17のいずれか1項に記載の学習済みモデルを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニケーション当事者間の認識ずれの解消の一助となる情報処理装置、情報処理システム、学習済みモデル、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
システム開発の現場では、システムエンジニア(以下「SE」という)が顧客の要望のヒアリングを行い、システム設計や企画を行う。システム設計や企画の内容は、システム開発に関するドキュメント(以下「システム開発ドキュメント」という)に落とし込まれ、プログラマー等に伝えられる。
【0003】
提示されるシステム開発ドキュメントには、システム構成図、開発スケジュール、ユースケース図、サイトマップ、データベース設計書、テストケース/テストシナリオ、リリースノート、プロジェクト計画書、ユーザーガイド/マニュアル、インターフェース仕様書等が含まれる。
【0004】
SEは、システム開発ドキュメントを提示しながら、当該システム開発ドキュメントや開発案件の詳細を、発話や文字(書面に記載されたもののほか、電子的なテキストを含む。以下同じ。)によってプログラマーに説明する。説明は、直接会って行われるほか、ウェブ会議システム等のオンラインツールを利用して行われる。
【0005】
プログラマー等は、SEから提示されるシステム開発ドキュメント及びSEから発話や文字で伝えられる事項に従ってプログラミング等の作業を行うため、システム開発を円滑且つ正確に行うためには、SEから伝えられる情報が正確であり、且つ、プログラマー等の理解が正確である必要がある。
【0006】
ところで、人から人へと情報を伝える際には当事者間で認識のずれ(以下「認識ずれ」という)が生じることが往々にしてある。この種の認識ずれは、図14に示すように、伝達する側の意図と表現のずれや、伝達する側の表現と受け手側の理解のずれに起因して生じる場合がある。
【0007】
近年は、システム開発を人件費の安い国の企業等に発注する、いわゆる「オフショア開発」の流れがあり(例えば、特許文献1)、言語や文化の違い等によって、認識ずれが生ずるケースが増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-287642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これまで、上記のようなコミュニケーション当事者間の認識ずれの解消に資する技術は提案されておらず、課題を解決するに至っていないのが実情である。
【0010】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、コミュニケーション当事者間の認識ずれの解消の一助となる情報処理装置、情報処理システム、学習済みモデル、記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[情報処理装置]
本発明の情報処理装置は、プロセッサを備えた情報処理装置であって、プロセッサが、伝達表現を受け付ける処理と、受け付けた前記伝達表現を、伝達表現及び当該伝達表現の意味をデータセットとして学習させた第一の学習済みモデルに入力することによって、入力された当該伝達表現の意味を推定する処理を実行する装置である。
【0012】
本発明の情報処理装置は、プロセッサが、第一の学習済みモデルで推定された伝達表現の意味を、伝達表現の意味、当該伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問に対する正解をデータセットとして学習させた第二の学習済みモデルに入力することによって、入力された前記伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問の正解を生成する処理を実行するように構成することもできる。
【0013】
本発明の情報処理装置は、プロセッサが、生成された質問に対する回答及び第二の学習済みモデルで生成された正解に基づいて、スコアを算出する処理を実行するように構成することもできる。
【0014】
本発明の情報処理装置は、プロセッサが、生成された質問に対する回答を、質問パターン、各質問パターンに対する一又は二以上の回答パターン及び類似度をデータセットとして学習させた第三の学習済みモデルに入力することによってスコアを算出するように構成することもできる。
【0015】
本発明の情報処理装置では、算出されたスコアを、スコア及び認識ずれの要因をデータセットとして学習させた第四の学習済みモデルに入力することによって、当該認識ずれの要因を推定する処理を実行するように構成することもできる。
【0016】
本発明の情報処理装置では、プロセッサが、伝達表現を、伝達表現の意味及び伝達表現をデータセットして学習させた第五の学習済みモデルに入力することによって、伝達者の意図が反映された修正伝達表現を生成する処理を実行するように構成することもできる。
【0017】
[情報処理システム]
本発明の情報処理システムは、少なくとも、第一端末装置と、当該第一端末装置とネットワーク回線を介して接続された情報処理装置を備え、情報処理装置はプロセッサを備え、プロセッサは、第一端末装置から送信された伝達表現を受け付ける処理と、受け付けた伝達表現を、伝達表現及び当該伝達表現の意味をデータセットとして学習させた第一の学習済みモデルに入力することによって、入力された当該伝達表現の意味を推定する処理を実行するように構成されたものである。
【0018】
本発明の情報処理システムでは、プロセッサが、第一の学習済みモデルで推定された伝達表現の意味を、伝達表現の意味、当該伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問に対する正解をデータセットとして学習させた第二の学習済みモデルに入力することによって、入力された前記伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問の正解を生成する処理を実行するように構成することもできる。
【0019】
本発明の情報処理システムは、ネットワーク回線を介して情報処理装置に接続された第二端末装置を備え、プロセッサが、第一端末装置又は/及び第二端末装置から送信される、質問に対する回答を受け付ける処理と、受け付けた前記質問に対する回答と第二の学習済みモデルで生成された正解に基づいて、スコアを算出する処理を実行するように構成することもできる。
【0020】
本発明の情報処理システムは、プロセッサが、受け付けた回答を、質問パターン、各質問パターンに対する一又は二以上の回答パターン及び類似度をデータセットとして学習させた第三の学習済みモデルに入力することによって、スコアを算出する処理を実行するように構成することもできる。
【0021】
本発明の情報処理システムでは、プロセッサが、算出されたスコアを、スコア及び認識ずれの要因をデータセットとして学習させた第四の学習済みモデルに入力することによって、認識ずれの要因を推定する処理を実行するように構成することもできる。
【0022】
本発明の情報処理システムでは、プロセッサが、伝達表現を、伝達表現の意味及び伝達表現をデータセットして学習させた第五の学習済みモデルに入力することによって、伝達者の意図が反映された修正伝達表現を生成する処理を実行するように構成することもできる。
【0023】
[学習済みモデル]
本発明の学習済みモデル(第一の学習済みモデル)は、伝達表現及び当該伝達表現の意味をデータセットとして学習され、伝達表現が入力データとして入力されると、当該伝達表現の意味を出力するように、コンピュータを機能させるようにしたものである。
【0024】
本発明の学習済みモデル(第二の学習済みモデル)は、伝達表現の意味、当該伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問に対する正解をデータセットとして学習され、前記第一の学習済みモデルで推定された伝達表現の意味が入力データとして入力されると、当該伝達表現の意味から導き出せる質問又は/及び当該伝達表現の意味から導き出せない質問並びに当該質問の正解を生成するように、コンピュータを機能させるものである。
【0025】
本発明の学習済みモデル(第三の学習済みモデル)は、質問パターン、各質問パターンに対する一又は二以上の回答パターン及び類似度をデータセットとして学習され、受け付けた回答が入力データとして入力されると、当該回答と当該回答に係る質問の正解の類似度を表すスコアを算出するように、コンピュータを機能させるものである。
【0026】
本発明の学習済みモデル(第四の学習済みモデル)は、スコア及び認識ずれの要因をデータセットとして学習され、前記第二の学習済みモデルで生成された質問に対する回答と、当該第二の学習済みモデルで生成された正解に基づいて算出されたスコアが入力データとして入力されると、認識ずれの要因を出力するように、コンピュータを機能させるものである。
【0027】
本発明の学習済みモデル(第五の学習済みモデル)は、伝達表現の意味及び伝達表現をデータセットしてとして学習され、伝達表現が入力データとして入力されると、修正伝達表現を出力するように、コンピュータを機能させるものである。
【0028】
[記憶媒体]
本発明の記憶媒体は、本発明の学習済みモデルが記録されたコンピュータ読み取り可能なものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、コミュニケーション当事者間の認識ずれ解消の一助となり、認識ずれに起因する不都合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】情報処理システムの一例を示す概要図。
図2】第一端末装置及び第二端末装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図3】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図4】情報処理システムの処理フローの一例を示す概要図。
図5】第一の学習済みモデル及び第二の学習済みモデルの入出力の説明図。
図6】(a)は第一の学習済みモデルの生成プロセスの一例を示す説明図、(b)は第二の学習済みモデルの生成プロセスの一例を示す説明図。
図7】(a)は推定された伝達表現の意味の出力例の説明図、(b)は生成された質問及び正解の出力例の説明図。
図8】上位要因、中位要因及び下位要因の一例を示す説明図。
図9】(a)は第三の学習済みモデルの入出力の説明図、(b)は第三の学習済みモデルの生成プロセスの一例を示す説明図。
図10】(a)は第四の学習済みモデルの入出力の説明図、(b)は第四の学習済みモデルの生成プロセスの一例を示す説明図。
図11】修正伝達表現の生成過程のイメージ図。
図12】修正伝達表現の生成過程のイメージ図。
図13】(a)は第五の学習済みモデルの入出力の説明図、(b)は第五の学習済みモデルの生成プロセスの一例を示す説明図。
図14】認識ずれの概念の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態)
本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。ここでは、二人の人物(以下「第一の人物」及び「第二の人物」という)が、情報処理装置(以下「第一端末装置10」及び「第二端末装置20」という)を用いて、オンラインでコミュニケーションをとる場合を一例として説明する。
【0032】
<システムの全体構成>
図1に示すように、本実施形態の情報処理システムは、第一の人物が使用する第一端末装置10と、第二の人物が使用する第二端末装置20と、情報処理装置30を主要構成として備えている。第一端末装置10、第二端末装置20、情報処理装置30はネットワーク回線Nを介して接続されている。
【0033】
<第一端末装置>
第一端末装置10は、第一の人物が使用する装置である。図2に示すように、第一端末装置10は、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、通信モジュール14、入出力I/F15、外部機器I/F16を主要構成として備えている。各要素はバス17を通じて電気的に接続されている。第一端末装置10は各種計算処理モジュールやPC等で構成される。
【0034】
前記プロセッサ11は、バス17で接続された各機器を制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)等で構成される。
【0035】
プロセッサ11は、処理の実行に必要なプログラムをストレージ13からメモリ12にロードし、各処理を実行する。なお、一部のプログラムがメモリ12に記憶されている場合、プロセッサ11は当該プログラムの処理も実行する。
【0036】
前記メモリ12は、データや命令を記憶する主記憶装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0037】
前記ストレージ13は、プログラムやデータ、後述する各種学習済みモデルを保存する補助記憶装置であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等で構成される。
【0038】
前記通信モジュール14は、外部機器と無線通信(データ通信)を行うためのインターフェースであり、TCP/IPをはじめ、Bluetooth Low Energy(登録商標)やBluetooth(登録商標)、3G、4G(LTE)、5G等の各種通信規格に従って通信が行われる。
【0039】
前記入出力I/F15は、第一端末装置10に入力装置や出力装置を接続するためのインターフェースであり、例えば、ネットワークカメラやキーボード、マウス、タッチパネル、マイク、スキャナ等の各種入力装置、ディスプレイやプロジェクタ、プリンタ、スピーカ等の各種出力装置が接続される。
【0040】
前記外部機器I/F16は、入出力装置以外の各種外部機器を接続するためのインターフェースである。外部機器I/F16には、各種シリアルインターフェースやパラレルインターフェースが含まれる。
【0041】
<第二端末装置>
第二端末装置20は第二の人物が使用する装置であり、各種計算処理モジュールやPC等で構成される。図2に示すように、第二端末装置20も、プロセッサ21、メモリ22、ストレージ23、通信モジュール24、入出力I/F25、外部機器I/F26を主要構成として備えている。各要素はバス27を通じて電気的に接続されている。第二端末装置20は、第二端末装置20の各要素は第一端末装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
<情報処理装置>
情報処理装置30はいわゆるサーバであり、各種計算処理モジュールやPC等で構成される。図3に示すように、情報処理装置30も、プロセッサ31、メモリ32、ストレージ33、通信モジュール34、入出力I/F35、外部機器I/F36を主要構成として備えている。各要素はバス37を通じて電気的に接続されている。情報処理装置30に含まれる各構成は第一端末装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
情報処理装置30は、複数の端末装置に対して安定的にサービスを提供できるよう、無停電電源38やバックアップ装置39などを接続しておくのが好ましい。無停電電源38やバックアップ装置39には既存のものを用いることができる。
【0044】
情報処理装置30では、プロセッサ11が、(1)伝達表現の意味の推定、(2)質問及び当該質問に対する正解の生成、(3)スコアの算出、(4)要因の推定、(5)支援策の特定等の処理を実行する。情報処理装置30が実行する各処理の詳細については後述する。
【0045】
なお、本願において、「伝達表現」とは、ドキュメント、発話又は文字で伝えられた情報のうち、コンピュータが読み取り可能なデジタル情報を意味する。また、本願において、「システム開発ドキュメント」とは、伝達表現のうち、特にシステム開発に関するドキュメントを意味し、システム構成図、開発スケジュール、ユースケース図、サイトマップ、データベース設計書、テストケース/テストシナリオ、リリースノート、プロジェクト計画書、ユーザーガイド/マニュアル、インターフェース仕様書等が含まれる。
【0046】
また、「伝達表現」は、日本語や英語で記載されたものに限らず、スペイン語、フランス語、ドイツ語といった各種言語で記載されたものが含まれる。「伝達表現」には、先に例示した図表以外の各種図表も含まれる。
【0047】
また、本願において、「伝達表現の意味」とは、開発の目的や伝達表現に明示されている内容など、各伝達表現に含まれる画像や文字列から客観的に認識される事項を意味する。
【0048】
<情報処理システムの処理フロー>
次に、本実施形態の情報処理システムの処理フローの概要について説明する。図4は、本実施形態の情報処理システムの処理フローの一例を示すものである。
【0049】
図4に示すように、第一の人物は、自身が使用する第一端末装置10を用いて、情報処理装置30に対して、スペースの生成をリクエストする(S101)。
【0050】
情報処理装置30は、第一端末装置10からのリクエストを受け付けてスペースを生成し(S102)、生成したスペースのURL等、当該スペースに関する情報(以下「スペース情報」という)を第一端末装置10及び第二端末装置20に通知する。
【0051】
第一の人物は、情報処理装置30からスペース情報を受け取ると、第一端末装置10で当該スペースにアクセスし、伝達表現をアップロードする(S103)。第二の人物は、情報処理装置30からスペース情報を受け取ると、第二端末装置20で当該スペースにアクセスする。
【0052】
情報処理装置30は、第一端末装置10からアップロードされた伝達表現を受け付け、当該伝達表現の意味を推定する(S104)。伝達表現の意味の推定方法については後述する。
【0053】
情報処理装置30は、伝達表現の意味を推定した後、その伝達表現の意味に基づいて質問及び当該質問に対する正解を生成し(S105)、当該質問を第一端末装置10及び第二端末装置20に送信する。質問及び正解の生成方法については後述する。
【0054】
質問を受信した第一の人物及び第二の人物は、自身が利用する第一端末装置10及び第二端末装置20から、当該質問に対する回答を情報処理装置30にアップロードする(S106)。
【0055】
情報処理装置30は、アップロードされた回答を受け付け、夫々の回答に基づいてスコアを算出する(S107)。スコアの算出方法については後述する。
【0056】
情報処理装置30は、算出されたスコアに基づいて、認識ずれの要因を推定する(S108)。要因の推定方法については後述する。
【0057】
情報処理装置30は、推定された要因に紐づく支援策を特定し(S109)、その支援策を第一端末装置10又は/及び第二端末装置20に送信する。支援策の特定方法については後述する。
【0058】
なお、伝達表現のアップロードは種々の方法で行うことができ、例えば、ブラウザ上での直接入力、音声入力、会議中の発話を自動で拾う、電子メール、チャット入力、ファイルのドラッグアンドドロップ等の方法で行うことができる。
【0059】
<情報処理装置で実行される処理>
次に、情報処理装置30で実行される各処理、具体的には、(1)伝達表現の意味の推定、(2)質問及び当該質問に対する正解の生成、(3)スコアの算出、(4)要因の推定、(5)支援策の特定について説明する。
【0060】
(1)伝達表現の意味の推定
第一端末装置10から送信された伝達表現を受け付けると、情報処理装置30のプロセッサ31が、伝達表現の意味を推定する処理を実行する。
【0061】
伝達表現の意味の推定は、学習済みモデル(説明の便宜上、以下では「第一の学習済みモデル」という)を用いて行うことができる。図5に第一の学習済みモデルの一例を示す。
【0062】
図5に示すように、第一の学習済みモデルは、伝達表現を入力とし、当該伝達表現の意味を出力とするものである。
【0063】
図6(a)に示すように、第一の学習済みモデルは、モデル生成装置にデータセットを入力し、当該データセットを機械学習させることによって生成することができる。データセットとしては、伝達表現(データ)及び当該伝達表現の意味(ラベル)を用いることができる。
【0064】
別の言い方をすれば、データである伝達表現に、当該伝達表現の意味をラベルとして付与したラベル付きデータをデータセットとして用いることができる。
【0065】
通常、伝達表現には、一又は二以上の画像及び文字列が含まれている。ここで使用されるラベル付きデータは、伝達表現に含まれる各画像及び各文字列に、当該各画像及び各文字列の伝達表現の意味がラベルとして付与されたものを意味する。
【0066】
機械学習を行う手法に限定はなく、ニューラルネットワークやランダムフォレスト、SVM等の各種アルゴリズムを用いることができる。機械学習を行う手法はこれ以外であってもよい。
【0067】
伝達表現の意味の推定を、第一の学習済みモデルを用いて行う場合、プロセッサ11は次のような処理を実行する。
【0068】
はじめに、プロセッサ11は、第一端末装置10からアップロードされた伝達表現を受け付け、当該伝達表現をストレージ13に記憶する。
【0069】
次いで、プロセッサ11は、ストレージ13に記憶された伝達表現を読み出し、第一の学習済みモデルに入力する。
【0070】
第一の学習済みモデルに伝達表現が入力されると、第一の学習済みモデルでは、伝達表現のテキスト化、テキストの解析、伝達表現の意味の出力等の処理が実行される。
【0071】
伝達表現のテキスト化は、例えば、光学的文字認識(OCR:Optical Character Recognition/Reader)等の既存の文字変換技術を用いて行うことができる。
【0072】
伝達表現のテキスト化にOCRを用いる場合、伝達表現に含まれる画像と文字列の分離、文字列の解析、文字の解析等を経て、伝達表現がテキスト化される。
【0073】
伝達表現が発話(音声)の場合、既存の又は新規の音声認識技術により、当該音声をテキスト化することができる。音声認識では、音響分析、音響モデルを用いた音素特定、言語モデルや発音辞書を用いた単語変換、文章出力等の処理を経て、音声がテキスト化される。
【0074】
テキストの解析は、自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)技術を用いて行うことができる。具体的には、テキスト化されたデータについて、形態素解析、構文解析、意味解析、文脈解析等を実行することによってテキストの解析を行うことができる。
【0075】
形態素解析では、テキストデータを最小単位(単語)に分け、各単語に品詞や活用形などの情報が割り当てられる。構文解析では、形態素解析で分けられた単語間の係り受けなど、各単語がどのような関係にあるのかが解析される。
【0076】
意味解析では、構文解析された文の意味の解釈が行われる。文脈解析では、文と文の繋がりが解析される。形態素解析や構文解析、意味解析、文脈解析は、既存の技術を用いて行うほか、新規な技術を用いて行うこともできる。
【0077】
この実施形態では、以上の解析を経て、伝達表現に含まれるテキスト毎に伝達表現の意味が推定され、推定された伝達表現の意味が、構文を揃えたテキストのリストとして出力されるようにしてある。
【0078】
図7(a)は伝達表現の意味の出力例である。図7(a)に示す例では、伝達表現の意味がカテゴリ別に出力されている。図7(a)の例では、カテゴリとして「開発の目的」「ドキュメント内容」「開発管理」「品質管理」が設定されているが、カテゴリは一例であり、これ以外であっても良い。なお。カテゴリは、認識ずれの要因特定につながるような形で設定するのが好ましい。
【0079】
(2)質問及び当該質問に対する正解の生成
前工程で伝達表現の意味が推定されると、その伝達表現の意味に基づいて質問及び当該質問に対する正解を生成する処理が実行される。
【0080】
質問及び正解の生成は、学習済みモデルを用いて行うことができる。図5に、質問及び正解の生成を行う学習済みモデル(説明の便宜上、以下では「第二の学習済みモデル」という)の一例を示す。
【0081】
図5に示すように、第二の学習済みモデルは、前工程(前記(1)の工程)で推定された伝達表現の意味を入力とし、伝達表現の意味から導き出せる質問(以下「導出可能質問」という)又は/及び伝達表現の意味から導き出せない質問(以下「導出不能質問」という)と、当該質問に対する正解を出力とするものである。
【0082】
図6(b)に示すように、第二の学習済みモデルは、モデル生成装置にデータセットを入力し、当該データセットを機械学習させることによって生成することができる。データセットとしては、伝達表現の意味(データ)、導出可能質問又は/及び導出不能質問並びに当該質問に対する正解(ラベル)を用いることができる。
【0083】
別の言い方をすれば、データである伝達表現の意味に、導出可能質問又は/及び導出不能質問と、当該各質問(導出可能質問又は/及び導出不能質問)に対する正解をラベルとして付与したラベル付きデータをデータセットとして用いることができる。
【0084】
第一の学習済みモデルの場合と同様、機械学習を行う手法に限定はなく、ニューラルネットワークやランダムフォレスト、SVM等の各種アルゴリズムを用いることができる。機械学習を行う手法はこれ以外であってもよい。
【0085】
質問及び当該質問に対する正解の生成を、第二の学習済みモデルを用いて行う場合、プロセッサ11は、次のような処理を実行する。
【0086】
はじめに、プロセッサ31は、ストレージ33に記憶された伝達表現の意味を読み出し、第二の学習済みモデルに入力する。
【0087】
第二の学習済みモデルに伝達表現の意味が入力されると、第二の学習済みモデルでは、伝達表現の意味の入力を受け、テキストの解析、質問・正解の生成等の処理が実行される。ここで入力されるのはテキストデータである。
【0088】
テキスト解析は、入力されたテキストデータについて、形態素解析、構文解析、意味解析、文脈解析などの解析を実行することによって行われる。形態素解析、構文解析、意味解析、文脈解析などの解析は、入力されたテキストデータ毎に行われる。
【0089】
第二の学習済みモデルでは、テキスト解析によって特徴語の抽出が行われる。特徴語の抽出は、既存の又は新規の技術を用いて行うことができる。テキスト解析によって特徴語が抽出されると、その特徴語に基づいて内部処理を実行し、質問及び正解が生成される。
【0090】
図7(b)は質問及び正解の出力例である。図7(b)に示す例では、質問及び正解がカテゴリ別に出力されている。カテゴリは、質問及び正解を生成する基となる伝達表現の意味のカテゴリと対応するようにしてある。
【0091】
したがって、図7(b)の例では、質問と正解が、「開発の目的」「ドキュメント内容」「開発管理」「品質管理」のカテゴリ毎に生成され、当該カテゴリ毎に出力されている。
【0092】
例えば、「開発の目的」というカテゴリの質問と正解を生成する場合、「○○は△△を□□によって解決します。」という伝達表現の意味(入力)に対し、「○○は□□によって何を解決しますか?」という質問及び当該質問に対する「△△」という正解(出力)が生成される。
【0093】
また、「ドキュメント内容」というカテゴリの質問と正解を生成する場合、「○○は△△を□□で入力します。」という伝達表現の意味(入力)に対し、「誰が△△を入力しますか?」という質問及び当該質問に対する「〇〇」という正解(出力)が生成される。
【0094】
また、「開発管理」というカテゴリの質問と正解を生成する場合、「○○は△△を担当します。」という伝達表現の意味(入力)に対し、「△△は誰が担当しますか?」という質問及び当該質問に対する「〇〇」という正解(出力)が生成される。
【0095】
また、「品質管理」というカテゴリの質問と正解を生成する場合、「○○は△△のとき□□でなければなりません。」という伝達表現の意味(入力)に対し、「○○が□□でなければならないのはいつですか?」という質問及び当該質問に対する「△△」という正解(出力)が生成される。
【0096】
第二の学習済みモデルでは、前述の例のような導出可能質問のほか、導出不能質問を生成することもできる。
【0097】
例えば、「開発管理」のカテゴリの質問と正解を生成する場合において、「○○は△△を担当します。」という伝達表現の意味に対し、「☆☆は誰が担当しますか?」という導出不能質問と、当該導出不能質問に対する「不明」という正解が生成される。
【0098】
質問及び正解は、コミュニケーション当事者(本実施形態では、第一の人物と第二の人物)間の認識ずれの要因に紐づけて分類しておくことが望ましい。
【0099】
質問を認識ずれの要因と紐づけて分類しておくことで、質問に対する回答や正答率、正答度合い等を、後述する要因の推定をする際のデータとして利用することができる。
【0100】
なお、認識ずれの要因(換言すれば、質問の分類)は、段階的に設定しておくことができる。例えば、「物理的要因」と「非物理的要因」を上位要因と位置付け、各上位要因に、中位要因や下位要因を設定することができる。
【0101】
「物理的要因」とは、例えば、使用する端末装置やマイク、スピーカ、ネットワーク等の不備に起因する要因を意味する。具体的には、音声が割れる、音声が途切れる、音声が聞こえないといったことが想定される。「非物理的要因」とは、「物理的要因」以外の要因を意味する。
【0102】
また、ここでいう中位要因とは、各上位要因の下位概念として位置付けられる要因であり、下位要因とは、各中位要因の下位概念として位置づけられる要因を意味する。
【0103】
例えば、図8に示すように、「非物理的要因」の中位要因として、「伝達情報の不備」と「解釈の仕方の違い」を設定することができる。この場合、「伝達情報の不備」の下位要因として「表現」「背景知識」を、「解釈の仕方の違い」の下位要因として、「言語」「文化」「バイアス」等を設定することができる。
【0104】
「表現」が要因となる場面としては、例えば、伝達表現に情報の不足や誤り、矛盾が含まれている場合等が、「背景知識」が要因となる場面としては、例えば、伝達表現には含まれない前提として必要な情報や知識が不足している場合等が想定される。
【0105】
「言語」が要因となる場面としては、例えば、コミュニケーション当事者間の第一言語が異なる場合等が、「文化」が要因となる場面としては、例えば、同じ言葉を受け取ったときの捉え方や行動が異なる場合、納期などの時間に対する考え方が異なる場合等が、「バイアス」が要因となる場面としては、例えば、コミュニケーションの相手方に対して先入観や期待(例えば、相手の肩書やキャリア等)を持っている場合等が想定される。
【0106】
このように、認識ずれの要因(質問及び正解の分類)を階層化(細分化)することで、コミュニケーション当事者(本実施形態では、第一の人物と第二の人物)間の認識ずれの要因をより細かく特定することができ、具体的な支援策の特定が可能となる。
【0107】
なお、要因特定のためには質問及び正解を認識ずれの要因に紐づけて分類しておくことが望ましいが、質問及び正解の中には、認識ずれの要因に紐づけられていないものを含めることもできる。
【0108】
(3)スコアの算出
第一端末装置10及び第二端末装置20からアップロードされた回答を受け付けると、当該回答に基づいてスコアを算出する処理が実行される。スコアは、第一の人物と第二の人物の夫々について算出する。
【0109】
スコアの算出は、例えば、生成された質問に対する回答及び第二の学習済みモデルで生成された正解に基づいて算出することができる。具体的には、回答と正解から正答数を算出し、その正答数と質問数の比率(すなわち、正答率)をスコア(正答率スコア)とすることができる。
【0110】
正答率をスコアとする場合、スコアは、全体の正答率から算出するほか、質問及び正解が認識ずれの要因に紐づけて分類されている場合、当該分類別の正答率から算出するようにしても良い。以下では、全体の正答率から算出されたスコアを「全体スコア」といい、分類別の正答率から算出されたスコアを「分類別スコア」という場合がある。
【0111】
例えば、認識ずれの要因として、「表現」、「背景知識」、「言語」、「文化」、「バイアス」が設定され、質問及び正解がそれら各要因に紐づけられて分類されている場合、「表現」に紐づけられた質問の正答率、「背景知識」に紐づけられた質問の正答率、「言語」に紐づけられた質問の正答率、「文化」に紐づけられた質問の正答率、「バイアス」に紐づけられた質問の正答率から、分類別スコアを算出することができる。
【0112】
なお、算出された第一の人物のスコアからは、当該第一の人物の意図と表現のずれを把握することができ、第二の人物のスコアからは、第一の人物の表現と第二の人物の理解のずれを把握することができる。
【0113】
すなわち、第一の人物のスコアが低い場合(正答率が低い場合)は、第一の人物の意図と表現にずれが大きいことが把握でき、第一の人物のスコアが高い場合(正答率が高い場合)は、第一の人物の意図と表現にずれが小さいことが把握できる。
【0114】
同様に、第二の人物のスコアが低い場合(正答率が低い場合)は、第一の人物の表現と第二の人物の理解にずれが大きいことが把握でき、第二の人物のスコアが高い場合(正答率が高い場合)は、第一の人物の表現と第二の人物の理解にずれが小さいことが把握できる。
【0115】
ここで説明したスコアの算出方法は一例であり、スコアはこれ以外の方法で算出することもできる。例えば、正答率でスコアを算出する代わりに、正解と回答の類似度(類似度スコア)でスコア化することもできる。
【0116】
この場合、スコアを既出の学習済みモデルとは別の学習済みモデル(説明の便宜上、以下では、「第三の学習済みモデル」という)を用いて算出することができる。図9(a)に第三の学習済みモデルの一例を示す。
【0117】
図9(a)に示すように、第三の学習済みモデルは、第一端末装置10又は第二端末装置20からアップロードされた回答を入力とし、当該回答と前工程で生成された正解との類似度(スコア)を出力とするものである。類似度は、ベクトルと距離によって表される。類似度の算出は回答毎に行われる。
【0118】
図9(b)に示すように、第三の学習済みモデルは、モデル生成装置にデータセットを入力し、当該データセットを機械学習させることによって生成することができる。データセットとしては、質問パターン及び各質問パターンに対する一又は二以上の回答パターン(データ)と、各質問パターンに対する各回答パターンの類似度(ラベル)を用いることができる。
【0119】
別の言い方をすれば、データである質問パターン及び各質問パターンに対する一又は二以上の回答パターンに、類似度をラベルとして付与したラベル付きデータをデータセットとして用いることができる。
【0120】
機械学習を行う手法に限定はなく、ニューラルネットワークやランダムフォレスト、SVM等の各種アルゴリズムを用いることができる。機械学習を行う手法はこれ以外であってもよい。
【0121】
なお、第三の学習済みモデルには、新規に学習させた学習済みモデルを用いるほか、事前学習済みモデル(例えば、BERT)をベースに転移学習やファインチューニングしたものを用いることができる。
【0122】
回答と正解の類似度(類似度スコア)を第三の学習済みモデルで算出する場合、プロセッサ11は次のような処理を実行する。
【0123】
はじめに、プロセッサ11は、ストレージに記憶された回答を読み出し、第三の学習済みモデルに入力する。ここで入力される回答は、テキストデータである。
【0124】
第三の学習済みモデルに回答が入力されると、第三の学習済みモデルでは、当該回答が
「正解」、「別回答」、「回答なし」に区分される。「正解」、「別回答」、「回答なし」の区分(判定)は、自然言語処理の技術やその他の既存技術を用いて行うことができる。
【0125】
その後、第三の学習済みモデルでは、「別回答」に区分された回答について前処理及びベクトル化が行われ、その後、得られたベクトルを用いて回答と正解の類似度(スコア)の算出が行われる。
【0126】
前記前処理では、例えば、文章のクリーニング処理や形態素解析、単語の正規化、ストップワードの除去などが実行される。
【0127】
前記ベクトル化では、前処理によって得られた各単語がベクトルに変換される。ベクトル化は、単語の出現回数を用いる手法や単語の分散表現を用いた手法など、既存の又は新規の手法を用いて行うことができる。
【0128】
単語の出現回数を用いる手法としては、Bag of Words(BoW)やTerm Frequency - Inverse Document Frequency(TF-IDF)、潜在的意味検索(LSI:Latent Semantic Indexing)等を、単語の分散表現を用いる手法としては、Word 2 Vec等を用いることができる。
【0129】
ベクトル化が完了すると、得られたベクトルを用いて回答と正解の類似度の算出が行われる。類似度の算出は、既存の又は新規の手法を用いて行うことができ、例えば、コサイン類似度やユークリッド距離等を用いて行うことができる。
【0130】
(4)要因の推定
正答率スコアや類似度スコア等のスコアが算出されると、そのスコアを用いて、認識ずれの要因を推定する処理が実行される。ここでいう要因とは、第一の人物の意図と第二の人物の理解にずれ(ギャップ)が生じた原因(背景情報)を意味する。
【0131】
要因の推定は、学習済みモデルを用いて行うことができる。図10(a)に、要因の推定を行う学習済みモデル(説明の便宜上、以下では「第四の学習済みモデル」という)の一例を示す。
【0132】
図10(a)に示すように、第四の学習済みモデルは、第一の人物のスコア又は第二の人物のスコアを入力とし、第一の人物の意図と第二の人物の理解のずれの要因を出力とするものである。
【0133】
スコアには、前記(3)で算出されたスコア、具体的には、正答率スコアや類似度スコア等を用いることができる。正答率スコアを用いる場合、スコアは全体スコアでも分類別スコアでもよいが、分類別スコアの方が、要因推定の精度が高くなる。類似度スコアを用いる場合、要因推定の精度は正答率スコアを用いる場合よりも高くなる。
【0134】
図10(b)に示すように、第四の学習済みモデルは、モデル生成装置にデータセットを入力し、当該データセットを機械学習させることによって生成することができる。データセットとしては、スコア(データ)と、認識ずれの要因(ラベル)を用いることができる。
【0135】
別の言い方をすれば、データであるスコアに、認識ずれの要因(背景情報)をラベルとして付与したラベル付きデータをデータセットとして用いることができる。
【0136】
付与するラベルには、上位要因のほか、各上位要因に関連する中位要因や、各中位要因に関連する下位要因を用いることができる。中位要因及び下位要因の意味は前述のとおりである。
【0137】
機械学習を行う手法に限定はなく、ニューラルネットワークやランダムフォレスト、SVM等の各種アルゴリズムを用いることができる。機械学習を行う手法はこれ以外であってもよい。
【0138】
(5)支援策の特定
支援策の特定は、例えば、予め要因毎に支援策を設定しておき、特定された要因に応じて、当該要因に紐づけられた支援策を提示することで実行することができる。
【0139】
支援策は、例えば、上位要因単位で設定するほか、各上位要因に関連する中位要因や、各中位要因に関連する下位要因単位で設定しておくのが好ましい。
【0140】
支援策の一例として、第一の人物(伝える側)の意図が正しく反映された伝達表現(以下「修正伝達表現」という)を生成することが考えられる。
【0141】
図11に示すように、第一の人物によって発信された伝達表現に、第一の人物の意図が正しく反映されているとは限らない。第一の人物の表現と意図にギャップが存在する場合、第一の人物の意図に合うように伝達表現を修正し(修正伝達表現を生成し)、提示することができる。
【0142】
具体的には、図12に示すように、第一の人物の表現、伝達表現の意味(伝達表現から客観的に把握できる意味)及び第一の人物の回答と伝達表現の意味のずれに基づいて、伝達表現を修正し、修正伝達表現を生成することができる。第一の人物の回答と伝達表現の意味のずれは、例えば、第三の学習済みモデルで算出された類似度スコアから特定することができる。
【0143】
修正伝達表現の生成は、学習済みモデル(説明の便宜上、以下では「第五の学習済みモデル」という)を用いて行うことができる。図13(a)に第五の学習済みモデルの一例を示す。
【0144】
図13(a)に示すように、第五の学習済みモデルは、伝達表現を入力とし、修正伝達表現を出力とするものである。
【0145】
図13(b)に示すように、第五の学習済みモデルは、モデル生成装置にデータセットを入力し、当該データセットを機械学習させることによって生成することができる。データセットとしては、伝達表現の意味(データ)及び伝達表現(ラベル)を用いることができる。
【0146】
別の言い方をすれば、データである伝達表現の意味に、伝達表現をラベルとして付与したラベル付きデータをデータセットとして用いることができる。伝達表現の意味には、第一の学習済みモデルによって推定されたものを用いることができる。
【0147】
機械学習を行う手法に限定はなく、ニューラルネットワークやランダムフォレスト、SVM等の各種アルゴリズムを用いることができる。機械学習を行う手法はこれ以外であってもよい。
【0148】
第五の学習済みモデルの伝達表現が入力されると、第五の学習済みモデルでは、第一の人物の回答と伝達表現の意味に基づいて、伝達表現の意味が伝達表現の正しい意味に修正され、当該伝達表現の正しい意味に基づいて修正伝達表現が生成される処理が実行される。
【0149】
生成された修正伝達表現は、第一端末装置10に送信される。このとき、第一端末装置10には、生成された修正伝達表現だけを送信することもできるが、修正伝達表現に、第二の人物の回答から特定される認識ずれの要因(第四の学習済みモデルで推定された要因)を加味した対策情報を付加して送信することもできる。
【0150】
例えば、第四の学習済みモデルで推定された要因が「言語」である場合、受け取る側の母語の翻訳文を付けるように促すことができ、推定された要因が「背景知識の不足」である場合、その背景知識を第二の人物に伝えるように促すこと等ができる。
【0151】
また、推定された要因が「文化」である場合、伝達表現で使用されている用語が、伝える側の国においてどのような意味で使われているかを伝えるように促すことができる。このとき、関連サイト情報等を提供するように促すこともできる。
【0152】
このほか、例えば、要因が、色やシンボルの意味の違いのように「文化」の違いにある場合には、伝える側の色やシンボルに対する考え方の説明等、文化的差異の理解を促進するような説明を加えるように促すことができる。
【0153】
また、専門用語を知らない場合のように、要因が「背景知識」にある場合には、専門用語の説明など、不足する背景知識について補足説明するよう促すことができる。このほか、要因が何らかの「バイアス」にある場合には、そのバイアスを解消するような説明を加えるように促すことができる。
【0154】
上記の対策情報は一例であり、対策情報は、伝達表現と第二の人物の理解のギャップが小さくなるような情報であれば、その内容は特に限定されない。なお、対策情報は必要に応じて付加すればよい。また、修正伝達表現と対策情報は、同時に送信することも別々に送信することもできる。
【0155】
(その他の実施形態)
前記実施形態の構成は一例であり、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形、変更が可能である。
【0156】
前記実施形態では、二人の人物(第一の人物及び第二の人物)が、オンラインでコミュニケーションをとる場合を一例としているが、コミュニケーション当事者は三人以上であっても良い。この場合、ネットワーク回線Nを介して接続される情報端末の台数も三台以上とすることができる。
【0157】
前記実施形態では、図4に示すように、第一端末装置10及び第二端末装置20が情報処理端末に接続されている場合を一例としているが、伝達表現の意味を推定する処理に関しては、少なくとも、第一端末装置10及び情報処理端末がネットワーク回線Nを介して接続されていれば実行可能である。
【0158】
前記実施形態では、本発明の情報処理システムをウェブブラウザからアクセス可能なウェブアプリとして構成する場合を一例としているが、本発明の情報処理システムは、各情報処理装置端末にインストールするネイティブアプリとして構成することもできる。
【0159】
前記実施形態では説明を省略しているが、情報処理装置30の構成は構築する情報処理システムに合わせて設計すればよく、情報処理装置30に実装された機能を複数のサーバ装置に分散することも、単一のサーバ装置に集約することもできる。
【0160】
前記実施形態では、特に限定していないが、第一端末装置10や第二端末装置20への質問の送信と、それに対する第一端末装置10や第二端末装置20からの回答は、一問ずつ行うことも複数問をまとめて行うこともできる。
【0161】
いずれの場合も、質問に対する回答を学習用データとして学習するモデル生成装置(例えば、第二の学習済みモデルを生成するモデル生成装置)を情報処理装置30の外部機器I/F36に接続しておき、後続する(直後に限らない)質問として、当該回答を踏まえた質問が生成されるようにすることもできる。
【0162】
前記実施形態では、特に限定していないが、本発明の情報処理システムでは、第一端末装置10に対する処理と第二端末装置20に対する処理を並行して実行するほか、いずれか一方の端末装置に対する処理を先行し、当該処理の完了後に、他方の端末装置に対する処理を実行するようにすることもできる。
【0163】
前者の場合(処理を並行して実行する場合)、第一の人物の意図と表現にずれがある場合に、そのずれをその都度解消することができる。同様に、第一の人物の表現(伝達表現)と第二の人物の理解にずれがある場合も、そのずれをその都度解消することができる。
【0164】
後者の場合(一方の端末装置に対する処理を先行して実行する場合)、例えば、伝達表現をアップロードする第一端末装置10に対する処理を先行して実行し、第一の人物の意図と表現(伝達表現)のずれを解消したのち、第二端末装置20に対する処理を実行することができる。
【0165】
この場合、第一の人物の意図と表現にずれがある場合に、第二の人物に伝達される前にそのずれを解消することができるため、第二の人物が、第一の人物の意図が反映されていない伝達表現に触れる機会が減り、第一の人物の表現(伝達表現)と第二の人物の理解にずれが生じる確率を低減することができる。
【0166】
その他、情報処理システムは全体として機能すればよく、いずれの機能をいずれの装置に実装するかは、構築する情報処理システムに合わせて設計することができる。
【0167】
本発明は、オンライン面接やオンライン会議等、システム開発の場面以外のコミュニケーションの場面において利用することもできる。この場合、情報処理システムを構成する要素は前記実施形態と異なる構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、各種ドキュメントを用いたコミュニケーションに際して利用することができ、前記実施形態で説明した例のように、伝達表現を用いてオンラインでコミュニケーションを行う場合に、特に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0169】
10 第一端末装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 ストレージ
14 通信モジュール
15 入出力I/F
16 外部機器I/F
17 バス
20 第二端末装置
21 プロセッサ
22 メモリ
23 ストレージ
24 通信モジュール
25 入出力I/F
26 外部機器I/F
27 バス
30 情報処理装置
31 プロセッサ
32 メモリ
33 ストレージ
34 通信モジュール
35 入出力I/F
36 外部機器I/F
37 バス
38 無停電電源
39 バックアップ装置
N ネットワーク回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14