(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023643
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】演算装置、演算方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/18 20200101AFI20250207BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20250207BHJP
G06F 113/14 20200101ALN20250207BHJP
【FI】
G06F30/18
G06Q50/08
G06F113:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127967
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】502167083
【氏名又は名称】株式会社管総研
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岩野 裕次
(72)【発明者】
【氏名】開發 健太郎
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA03
5B146DE13
5B146DE16
5B146DG01
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】管路の工事に必要な部材の概算数量を正確かつ容易に算出する。
【解決手段】演算装置(1)は、管路を示す配管図から、管路が屈曲する屈曲箇所の数と、管路が分岐する分岐箇所の数と、の合計である箇所数と、管路の長さである管路長と、を取得する取得部(55)と、取得部(55)によって取得された箇所数及び管路長を用いて、管路の工事に必要な部材の概算数量を算出する数量算出部(56)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を示す配管図から、前記管路が屈曲する屈曲箇所の数と、前記管路が分岐する分岐箇所の数と、の合計である箇所数と、前記管路の長さである管路長と、を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記箇所数及び前記管路長を用いて、前記管路の工事に必要な部材の概算数量を算出する数量算出部と、を備える、演算装置。
【請求項2】
前記配管図において、前記管路は複数の線分で示されており、
互いに延伸方向が異なる2つの線分に係る端点での交点の数を前記屈曲箇所の数として特定し、少なくとも3つの線分に係る端点での交点の数を前記分岐箇所の数として特定する特定部をさらに備え、
前記取得部は、前記特定部によって特定された前記屈曲箇所の数及び前記分岐箇所の数を取得する、請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記配管図において、前記管路は複数の線分で示されており、
前記配管図において定義された座標に基づく前記複数の線分の長さの合計を前記管路長に変換する変換部をさらに備え、
前記取得部は、前記変換部による変換によって得られた前記管路長を取得する、請求項1または2に記載の演算装置。
【請求項4】
前記配管図を表示する表示部と、
前記配管図を作成するための作成操作を受け付ける操作部と、をさらに備え、
前記表示部は、前記操作部が前記作成操作を受け付けている間、前記箇所数及び前記管路長の少なくとも一方を表示する、請求項1または2に記載の演算装置。
【請求項5】
前記数量算出部によって算出された前記概算数量に基づき、前記管路の工事に必要な概算費用を算出する費用算出部をさらに備える、請求項1または2に記載の演算装置。
【請求項6】
演算装置が実行する演算方法であって、
前記演算装置が備える取得部が、管路を示す配管図から、前記管路が屈曲する屈曲箇所の数と、前記管路が分岐する分岐箇所の数と、の合計である箇所数と、前記管路の長さである管路長と、を取得する取得ステップと、
前記演算装置が備える数量算出部が、前記取得ステップによって取得された前記箇所数及び前記管路長を用いて、前記管路の工事に必要な部材の概算数量を算出する算出ステップと、を含む、演算方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の演算装置における各部としてコンピュータを機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置、演算方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、管布設工事に要する配管材料、管工及び土工の単価を含む部品マスターデータベースを備え、工種及びルート条件により階層的に区分け設定した部品で表される配管図を生成する配管設計支援システムが開示されている。当該配管設計支援システムは、部品マスターデータベース及び配管図に基づいて、工種及びルート条件により階層的に区分けした積算書生成のための基データを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の配管設計支援システムでは、積算書を生成するためにルート条件を設定する必要があり、積算書を生成するための作業において改善の余地がある。本発明の一態様は、管路の工事に必要な部材の概算数量を正確かつ容易に算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る演算装置は、管路を示す配管図から、前記管路が屈曲する屈曲箇所の数と、前記管路が分岐する分岐箇所の数と、の合計である箇所数と、前記管路の長さである管路長と、を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記箇所数及び前記管路長を用いて、前記管路の工事に必要な部材の概算数量を算出する数量算出部と、を備える。
【0006】
演算装置が配管図から箇所数及び管路長を取得するため、ユーザが配管図から箇所数を数える必要がなく、また管路長を把握する必要もない。よって、箇所数の数え間違いのリスク及び管路長の入力間違いのリスクをなくすことができる。したがって、演算装置は、取得した箇所数及び管路長を用いて、管路の工事に必要な部材の概算数量を正確かつ容易に算出することができる。
【0007】
本発明の態様2に係る演算装置は、態様1の演算装置において、前記配管図において、前記管路は複数の線分で示されており、互いに延伸方向が異なる2つの線分に係る端点での交点の数を前記屈曲箇所の数として特定し、少なくとも3つの線分に係る端点での交点の数を前記分岐箇所の数として特定する特定部をさらに備え、前記取得部は、前記特定部によって特定された前記屈曲箇所の数及び前記分岐箇所の数を取得する。
【0008】
演算装置は、線分が屈曲する場合、及び、線分が分岐する場合のいずれの場合においても、箇所数を正確に取得することができる。よって、演算装置は、様々な場合に対応して箇所数を取得することができる。
【0009】
本発明の態様3に係る演算装置は、態様1または2の演算装置において、前記配管図において、前記管路は複数の線分で示されており、前記配管図において定義された座標に基づく前記複数の線分の長さの合計を前記管路長に変換する変換部をさらに備え、前記取得部は、前記変換部による変換によって得られた前記管路長を取得する。
【0010】
配管図において管路が複数の線分で示されており、配管図において座標が定義されているため、演算装置は、座標に基づく複数の線分の長さの合計を管路長に変換することで、管路長を容易に取得することができる。
【0011】
本発明の態様4に係る演算装置は、態様1から3のいずれかの演算装置において、前記配管図を表示する表示部と、前記配管図を作成するための作成操作を受け付ける操作部と、をさらに備え、前記表示部は、前記操作部が前記作成操作を受け付けている間、前記箇所数及び前記管路長の少なくとも一方を表示する。
【0012】
ユーザは、配管図を作成している間、表示部によって表示された箇所数及び管路長の少なくとも一方を確認することができる。このため、ユーザは、箇所数及び管路長の少なくとも一方を確認しながら、配管図を作成することができる。
【0013】
本発明の態様5に係る演算装置は、態様1から4のいずれかの演算装置において、前記数量算出部によって算出された前記概算数量に基づき、前記管路の工事に必要な概算費用を算出する費用算出部をさらに備える。演算装置は、取得した箇所数及び管路長を用いて、管の概算数量を正確かつ容易に算出した上で、管の概算数量に基づき、管路の工事に必要な概算費用を算出することができる。
【0014】
本発明の態様6に係る演算方法は、演算装置が実行する演算方法であって、前記演算装置が備える取得部が、管路を示す配管図から、前記管路が屈曲する屈曲箇所の数と、前記管路が分岐する分岐箇所の数と、の合計である箇所数と、前記管路の長さである管路長と、を取得する取得ステップと、前記演算装置が備える数量算出部が、前記取得ステップによって取得された前記箇所数及び前記管路長を用いて、前記管路の工事に必要な部材の概算数量を算出する算出ステップと、を含む。
【0015】
本発明の各態様に係る演算装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記演算装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記演算装置をコンピュータにて実現させる演算装置のプログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、管路の工事に必要な部材の概算数量を正確かつ容易に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る演算装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す演算装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す演算装置が備える表示部に表示される配管図の一例を示す図である。
【
図4】表示部に表示される条件設定画面の一例を示す図である。
【
図5】表示部に表示される算出結果を示す画面の一例を示す図である。
【
図6】表示部に表示される管路長及び土工長を示す画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<演算装置1の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る演算装置1の構成の一例を示すブロック図である。演算装置1は、配管図に示される管路の工事に必要な部材の概算数量と、管路の工事に必要な概算費用と、を算出する装置である。演算装置1は、例えばPC(Personal Computer)である。また、演算装置1は、設計積算CAD(Computer Aided Design)ソフトを用いて、概算数量設計方式により管路の設計を行う装置である。当該管路の設計には、既存の管に対して管を追加で敷設する場合の設計と、更地に新規に管を敷設する場合の設計と、がある。
【0019】
概算数量設計方式は、工事の発注者が設計を行う段階で工事に必要な部材の概算数量を算出し、受注者が施工を行う段階で工事に必要な部材の数量が詳細に判明した時点で、工事に必要な部材について確定した数量で設計を変更する方式である。また、概算数量設計方式は、水道事業体において設計積算業務の負担軽減及び管路の更新を促進するために、発注前の詳細な設計図を省略し、設計での部材の数量を概算数量とすることで設計積算業務を軽減する方式である。
【0020】
設計積算CADソフトは、水道事業体において図面作成及び積算業務の効率化を図るためのものであり、工事に必要な部材の概算数量を自動的に算出し、工事に必要な概算費用を算出するためのものである。設計積算CADソフトは、後述する記憶部4に予め記憶されている。
【0021】
図1に示すように、演算装置1は、表示部2と、操作部3と、記憶部4と、制御部5と、を備える。表示部2は、例えば、制御部5による処理内容と、ユーザによって作成される配管図と、を表示する。操作部3は、ユーザによる配管図を作成するための作成操作を受け付けるものであり、例えば、マウス及びキーボードである。記憶部4は、例えば、制御部5による処理内容と、ユーザによって作成される配管図と、を記憶する。
【0022】
制御部5は、表示制御部51と、記憶制御部52と、特定部53と、変換部54と、取得部55と、数量算出部56と、費用算出部57と、を備える。記憶制御部52は、記憶部4に記憶されているデータを読み込む処理と、記憶部4にデータを記憶する処理と、を実行する。制御部5が備える各部のうち記憶制御部52以外の構成の詳細については後述する。制御部5は、演算装置1が備える各部を制御する。
【0023】
<演算装置1の処理>
図2は、
図1に示す演算装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。以下の説明は、演算装置1が実行する演算方法の説明も兼ねている。
図2に示すように、操作部3が、配管図を作成するための作成操作を受け付けることにより、表示制御部51は、表示部2に配管図を表示させる(S1)。具体的には、表示制御部51は、
図3に示すような配管
図PP1,PP2を表示部2に表示させる。
図3は、
図1に示す演算装置1が備える表示部2に表示される配管図の一例を示す図である。
【0024】
<配管図の作成>
配管図は、例えば、管路を示す概略平面図である。配管図において、管路は複数の線分で示されている。ユーザは、操作部3を操作して点を特定することで、特定された点を結ぶ線分を管路として作図することができる。よって、ユーザは、操作部3を操作することで、配管の位置が明記された簡易な配管図を作成することができる。
【0025】
ここで、特定部53は、互いに延伸方向が異なる2つの線分に係る端点での交点の数を屈曲箇所の数として特定し、少なくとも3つの線分に係る端点での交点の数を分岐箇所の数として特定する(S2)。屈曲箇所は、管路が屈曲する箇所であり、分岐箇所は、管路が分岐する箇所である。
【0026】
例えば、
図3の符号101に示すように、配管
図PP1に3つの線分SE1,SE2,SE3と、2つの交点P1,P2と、が示されている場合を考える。この場合、特定部53は、互いに延伸方向が異なる2つの線分SE1,SE2に係る端点での交点P1と、互いに延伸方向が異なる2つの線分SE2,SE3に係る端点での交点P2と、の数の合計である2個を、屈曲箇所の数として特定する。
【0027】
また、例えば、
図3の符号102に示すように、配管
図PP2に3つの線分SE4,SE5,SE6と、1つの交点P3と、が示されている場合を考える。この場合、特定部53は、互いに延伸方向が異なる3つの線分SE4,SE5,SE6に係る端点での交点P3の数である1個を、分岐箇所の数として特定する。
【0028】
特定部53が屈曲箇所の数及び分岐箇所の数を特定した後、変換部54は、配管図において定義された座標に基づく複数の線分の長さの合計を、管路の長さである管路長に変換する(S3)。具体的には、例えば、配管図には直交座標が定義されており、変換部54は、2つの点の座標から、当該2つの点を結ぶ線分の長さを算出する。変換部54は、複数の線分のそれぞれについて長さを算出し、複数の線分の長さの合計を算出する。
【0029】
例えば、
図3の符号101に示す配管
図PP1において、変換部54は、線分SE1の長さL1と、線分SE2の長さL2と、線分SE3の長さL3と、の合計を算出する。また、
図3の符号102に示す配管
図PP2において、変換部54は、線分SE4の長さL4と、線分SE5の長さL5と、線分SE6の長さL6と、の合計を算出する。
【0030】
変換部54は、配管図の縮尺に基づいて、算出した複数の線分の長さの合計を管路長に変換する。変換部54が複数の線分の長さの合計を管路長に変換した後、取得部55は、配管図から、屈曲箇所の数と分岐箇所の数との合計である箇所数と、管路長と、を取得する(S4)。具体的には、取得部55は、特定部53によって特定された屈曲箇所の数及び分岐箇所の数を取得するとともに、変換部54による変換によって得られた管路長を取得する。ステップS4は取得ステップの一例である。
【0031】
以上により、演算装置1は、線分が屈曲する場合、及び、線分が分岐する場合のいずれの場合においても、箇所数を正確に取得することができる。よって、演算装置1は、様々な場合に対応して箇所数を取得することができる。また、配管図において管路が複数の線分で示されており、配管図において座標が定義されているため、演算装置1は、座標に基づく複数の線分の長さの合計を管路長に変換することで、管路長を容易に取得することができる。
【0032】
取得部55が箇所数及び管路長を取得した後、表示制御部51は、
図4に示すように、概算数量を算出するための条件設定画面PP3を表示部2に表示させる(S5)。
図4は、表示部2に表示される条件設定画面の一例を示す図である。条件設定画面PP3は、概算数量の算出に必要な条件と、当該条件の数値と、を示す画面である。
【0033】
条件設定画面PP3は、取得部55によって取得された箇所数及び管路長の数値が示された表31を含む。この場合、ユーザが操作部3を操作して配管図を作成すると、条件設定画面PP3の表31に、取得部55によって取得された箇所数及び管路長の数値が自動的に入力される。
【0034】
よって、ユーザは、操作部3を操作して管の口径のみを入力することで、概算数量の算出に必要な条件を演算装置1に設定することができる。また、ユーザは、表計算ソフトを使用して概算数量を算出するための計算表を作成する必要がなく、当該計算表に箇所数及び管路長を手入力する作業を省略できる。さらに、ユーザは、現地での測量等により取得した管路長及び箇所数を上記計算表に入力する必要がない。
【0035】
なお、ユーザは、操作部3を操作して、管の口径に加えて管の継手形式を入力可能であってもよい。また、ユーザは、操作部3を操作することで、条件設定画面PP3において管の口径、管の継手形式、管路長及び箇所数を変更可能であってもよい。つまり、操作部3は、管の口径、管の継手形式、管路長及び箇所数の少なくとも1つを変更する操作を受け付け可能である。
【0036】
表示部2が条件設定画面PP3を表示した後、ユーザが操作部3を操作することで、条件設定画面PP3に含まれる計算ボタン32を押下すると、数量算出部56は、取得部55によって取得された箇所数及び管路長を用いて、管路の工事に必要な部材の概算数量を算出する(S6)。ステップS6は算出ステップの一例である。具体的に以下に説明する。
【0037】
数量算出部56は、以下の数式(1)により、概算数量の算出に必要な補正係数を算出する。数式(1)は、補正係数を算出するための数式の一例であり、口径が300mmである管についての数式である。数式(1)について、Aは補正係数であり、Lは管路長[m]である。Nは、管路の単位長さあたりの箇所数[個]であり、取得部55によって取得された箇所数を単位長さあたりの箇所数に変換した数値である。当該単位長さは例えば100mである。
【0038】
【0039】
数式(1)に含まれる数値は、管の口径及び管の継手形式により変化する数値であり、過去の管路の工事実績に基づき予め設定された数値である。数式(1)は、管の口径及び管の継手形式毎に設計積算CADソフトに設定されている。よって、数量算出部56は、複数種類の管のそれぞれについて予め定められた数値と、箇所数及び管路長と、により補正係数を算出する。
【0040】
また、数量算出部56は、以下の数式(2)により、管路の工事に必要な部材の概算数量を算出する。数式(2)は、概算数量を算出するための数式の一例である。数式(2)について、Bは管路の単位長さあたりの概算数量であり、Aは補正係数であり、Lは管路長[m]であり、qは管路の単位長さあたりの標準数量である。
【0041】
【0042】
また、qは、複数種類の管のそれぞれに係る単位長さあたりの工事に必要な部材の標準数量である。当該工事に必要な部材は、例えば、直管、切管もしくは異形管(曲管またはT字管)等の管、または、仕切弁もしくは消火栓等である。qは、複数種類の管のそれぞれに対して、工事に必要な部材毎に、過去の管路の工事実績から算出された材料費または布設費に基づき予め設定された数値である。数式(2)は、設計積算CADソフトに設定されている。
【0043】
数式(1)及び(2)の出典は、「管路更新を促進する工事イノベーション研究会(第2期)報告書」(88-89頁,[online],令和5年5月29日,一般社団法人 日本ダクタイル鉄管協会,[令和5年7月31日検索],インターネット<URL:https://www.jdpa.gr.jp/study/images/20230529_houkoku.pdf>)である。
【0044】
以上により、演算装置1が配管図から箇所数及び管路長を取得するため、ユーザが配管図から箇所数を数える必要がなく、また管路長を把握する必要もない。よって、箇所数の数え間違いのリスク及び管路長の入力間違いのリスクをなくすことができる。したがって、演算装置1は、取得した箇所数及び管路長を用いて、管路の工事に必要な部材の概算数量を正確かつ容易に算出することができる。また、現地測量等により管路長を取得する作業が不要となる。
【0045】
さらに、数量算出部56は、複数種類の管のそれぞれに係る単位長さあたりの工事に必要な部材の標準数量を補正係数により補正するとともに、補正した標準数量及び管路長から、管路の工事に必要な部材の概算数量を算出する。これにより、例えば、異形管が少ない直線的な管路と、異形管が多い複雑な管路と、で同じ標準数量を一律に適用する場合に比べて、概算数量と実際の数量との差を小さくすることができる。また、ユーザは、配管図を作成するだけで概算数量を把握することができる。
【0046】
数量算出部56が概算数量を算出した後、費用算出部57は、数量算出部56によって算出された概算数量に基づき、管路の工事に必要な概算費用を算出する(S7)。具体的には、ユーザが操作部3を操作して、弁栓類等について1箇所あたりの材料費と、土工費と、を入力する。
【0047】
費用算出部57は、入力された材料費及び土工費と、数量算出部56によって算出された概算数量と、を用いて概算費用を算出する。ここで、費用算出部57は、材料、土工事及び管工事の数量を計上し、概算費用を自動的に算出する。よって、ユーザは、表計算ソフトを使用する必要がなく、水道事業体が保有する積算ソフトに概算数量を入力する作業が不要となる。つまり、設計積算CADソフトのみで概算費用を算出することができ、表計算ソフト及び上記積算ソフトが不要となる。
【0048】
以上により、演算装置1は、取得した箇所数及び管路長を用いて、管の概算数量を正確かつ容易に算出した上で、管の概算数量に基づき、管路の工事に必要な概算費用を算出することができる。
【0049】
図5は、表示部2に表示される算出結果を示す画面の一例を示す図である。表示制御部51は、
図5に示すように、算出画面PP4を表示部2に表示させる。算出画面PP4は、数量算出部56による概算数量の算出結果41と、費用算出部57による概算費用の算出結果42と、を含む。表示部2に概算数量及び概算費用が表示されることにより、ユーザは、概算数量及び概算費用を確認できる。
【0050】
なお、ステップS2~ステップS7が実行されるタイミングは、操作部3が配管図を作成するための作成操作を受け付けている間のタイミングであってもよく、配管図の作成が完了したタイミングであってもよい。
【0051】
<変形例>
図6は、表示部2に表示される管路長及び土工長を示す画面の一例を示す図である。表示制御部51は、操作部3が配管図を作成するための作成操作を受け付けている間、
図6に示すように、管路長確認画面PP5を表示部2に表示させてもよい。管路長確認画面PP5は、管路長を示す部分61と、土工長を示す部分62と、を含む。また、管路長確認画面PP5は、箇所数を示す部分をさらに含んでもよい。土工長は、土工事が行われる場所の長さであり、管を埋めるために掘削される場所の長さである。
【0052】
よって、表示部2は、操作部3が上記作成操作を受け付けている間、箇所数及び管路長の少なくとも一方を表示する。これにより、ユーザは、配管図を作成している間、表示部2によって表示された箇所数及び管路長の少なくとも一方を確認することができる。このため、ユーザは、箇所数及び管路長の少なくとも一方を確認しながら、配管図を作成することができる。
【0053】
〔ソフトウェアによる実現例〕
演算装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部5に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0054】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0055】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0056】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0057】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された複数の技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 演算装置
2 表示部
3 操作部
53 特定部
54 変換部
55 取得部
56 数量算出部
57 費用算出部
P1、P2、P3 交点
PP1、PP2 配管図
SE1~SE6 線分