(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023872
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】洗身用被覆具
(51)【国際特許分類】
A41D 13/05 20060101AFI20250206BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20250206BHJP
A41B 9/12 20060101ALI20250206BHJP
A41C 3/00 20060101ALI20250206BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20250206BHJP
A41D 13/04 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
A41D13/05 118
A41D31/02 A
A41B9/12 Z
A41C3/00 Z
A41D13/12 145
A41D13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024209243
(22)【出願日】2024-12-02
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2022-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年11月19日以降断続的にインスタグラムにて本考案を公開。詳細は別紙資料1に記載のとおりである。 (2)令和3年12月15日以降断続的にツイッターにて本考案を公開した。詳細は別紙資料2に記載のとおりである。 (3)令和4年9月11日以降断続的にブログにて本考案を公開した。詳細は別紙資料3に記載のとおりである。 (4)令和3年12月1日にフェイスブックにて公開。 (5)令和3年12月12日にクラウドファンディングの開始予告にて公開。 (6)令和3年12月17日にフェイスブックにて公開。 (7)令和3年12月29日にフェイスブックにて公開。 (8)令和4年1月10日に乳がん体験者の会PiFのSNSにて公開。 (9)令和4年1月11日にクラウドファンディングCAMPFIREにて公開。 (10)令和4年1月16日にチラシ頒布にて公開。 (11)令和4年2月17日にラジオ放送にて公開。 (12)令和4年2月17日にYouTubeにて公開。 (13)令和4年2月17日にインスタグラムのライブにて公開。 (14)令和4年5月1日にネットショップにて公開。 (15)令和4年6月22日にチラシ頒布および販売にて公開。 (16)令和4年6月23日にチラシ頒布および販売にて公開。 (17)令和4年6月27日にチラシ頒布にて公開。 (18)令和4年7月5日に販売にて公開。 (19)令和4年7月7日にインスタグラムにて公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (20)令和4年7月23日におかげマルシェにて公開。 (21)令和4年9月8日にチラシ頒布および販売にて公開。 (22)令和4年9月10日に南林間エシカルフェスタにて公開。 (23)令和4年9月23日にインターネットサイトsodaneにて公開。 (24)令和4年9月23日にヤフーニュースにて公開。 (25)令和4年10月1日、10月2日にTOKYOハンドメイド祭にて公開。 (26)令和4年10月6日に楽天市場にて公開。 (27)令和4年10月10日にくまがやピンクリボンの会 AYA支部主催のピンクリボンマルシェにて公開。 (28)令和4年10月12日にインターネットのコミュニケーション・サービス「Peer Ringで話そう!」にて公開。 (29)令和4年10月25日にネットショップtracoにて公開。 (30)令和4年10月25日にチラシ頒布および販売にて公開。 (31)令和3年12月15日~令和4年8月15日にチラシを添付したメールを送信することで公開。詳細は別紙資料4に記載のとおりである。 (32)令和3年12月14日~令和4年8月19日にチラシを提供することで公開。詳細は別紙資料5に記載のとおりである。 (33)令和4年4月25日に乙女温泉@塚越屋七兵衛にてチラシ頒布および商品展示により公開。
(71)【出願人】
【識別番号】524446597
【氏名又は名称】株式会社arikata
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 和香子
(72)【発明者】
【氏名】三上 美紀
(57)【要約】
【課題】少なくとも乳房を覆うことができ、公衆浴場において使用した場合であっても人目を引きにくく、かつ着用したまま身体を洗うことが可能であって、洗髪の際に首回りに溜まった泡を洗い流しやすい上、入浴時の取扱い性も良好な洗身用被覆具を提供する。
【解決手段】洗身用被覆具100は、一方方向に長尺の長尺体であり、長手方向の両端部側に被覆部20を有するとともに、被覆部20間に中間部(メッシュ部10)を有し、中間部(メッシュ部10)を構成する生地のメッシュ値が、被覆部20を構成する生地のメッシュ値よりも小さくなるよう構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方方向に長尺の長尺体であり、
長手方向の両端部側に被覆部を有するとともに、
前記被覆部間に中間部を有し、
前記中間部を構成する生地のメッシュ値が、前記被覆部を構成する生地のメッシュ値よりも小さいことを特徴とする洗身用被覆具。
【請求項2】
前記中間部がメッシュ生地から構成されたメッシュ部であり、
前記被覆部が一枚または二枚以上の非メッシュ生地を備える請求項1に記載の洗身用被覆具。
【請求項3】
前記被覆部を構成する少なくとも一枚の生地が、一方面と他方面とにおいて相対的に凹凸形状が設けられた立体生地から構成されている請求項1または請求項2に記載の洗身用被覆具。
【請求項4】
前記被覆部が、二枚以上の生地を重ねて多層に構成されている請求項1または請求項2に記載の洗身用被覆具。
【請求項5】
多層に構成された前記被覆部の、一方側の最外層はガーゼ生地からなる請求項4に記載の洗身用被覆具。
【請求項6】
前記長尺体の任意の位置に第一留め部が設けられるとともに、
前記長尺体の長手方向において2つ折りにしたときに、前記前記第一留め部に対応する位置に第二留め部が設けられており、
前記第一留め部と前記第二留め部とが留め合わされることによって、互いの位置が固定される請求項1または請求項2に記載の洗身用被覆具。
【請求項7】
前記長尺体の長手方向における前記中間部の寸法が、24cm以上56cm以下である請求項1または請求項2に記載の洗身用被覆具。
【請求項8】
使用者の首に掛けられた際、
前記長尺体の両端が腹部中間部で終端する請求項1または請求項2に記載の洗身用被覆具。
【請求項9】
使用者の首に掛けた際、
前記長尺体の両端が腹部より下方において終端する請求項1または請求項2記載の洗身用被覆具。
【請求項10】
前記長尺体の短手方向の寸法が18cm以上30cm以下である請求項1または請求項2に記載の洗身用被覆具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴時などにおいて身体を洗う際などに首に掛けて乳房などを被覆するための被覆具に関する。
【背景技術】
【0002】
乳房の外科的治療などを受け、本来の乳房の形状と異なる形状となった女性は、人目が気になり公衆浴場等の利用を躊躇する場合がある。また、外科的治療などは受けていないものの、例えば思春期の女性などは他人に乳房を見られることに抵抗感を感じる場合がある。湯に浸かっている際には比較的乳房は人目に付きづらいものの、洗身時や風呂場を移動する際に周囲からの視線が気になる場合がある。
【0003】
また、一人で入浴が困難になった高齢者、病人、怪我人等(以下、高齢者等という)は、介助者に入浴をサポートしてもらい洗身を任せる場合がある。このような場合において、高齢者等が乳房や下腹部が介助者の目に晒されることに抵抗感を感じる場合がある。
【0004】
これに対し、例えば入浴時に乳房や下腹部を隠すための着用着として下記特許文献1には、温泉入浴用水着(以下、従来技術1ともいう)が提案されている。従来技術1は、長方形または台形状の水着生地や布地の両端をプレスファスナーやホックで留めることが可能である。かかる従来技術1を胸部や下腹部に巻いて着用することで、ストラップレスブラジャーあるいは腰巻のような体裁で乳房や下腹部を覆い隠すことができる。
【0005】
また、下記特許文献2には、2枚の布体を表裏に縫着し、短手方向の略中央が長手方向の途中から開脚可能に形成された洗身用前掛け具(以下、従来技術2ともいう)が提案されている。従来技術2は、開脚終端が身体の前側に位置するよう、上述する開脚可能な部分に首を通して使用者の体に掛け使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-180397号公報
【特許文献2】特許第6732086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述する従来技術1、2にはそれぞれ以下の課題があった。
即ち、従来技術1は、ストラップレスブラジャーあるいは腰巻の体裁であるため、水着着用不可の公衆浴場では使用しにくいという問題があった。また仮に水着の着用が咎められない場合であっても、多くの人が全裸で浴場に出入りしている中、従来技術1を着用することにより、余計に人目を引いてしまい注目を浴びる虞があった。また、特許文献1には、洗身時には従来技術1を取り外し、洗身後に再度着用される旨が説明されており、かかる使用態様によれば、従来技術1は洗身時において視線が気になるという問題を何ら解決できない。
【0008】
これに対し、従来技術2は開脚終端側が自由端となっており使用者の上半身前側に垂れ下がっているだけであるため、洗身時に従来技術2を取り外すことなく、当該自由端の横から内側に手を入れて体を洗うことができる。
しかしながら、従来技術2を着用した場合、一枚の大きな布を被ったような体裁になり、多くの人が全裸で浴場に出入りしている中、周囲に違和感を与え、余計に人目を引き注目を集める虞があった。
【0009】
また、従来技術2を着用した場合、首の周囲にも開脚終端側と同じ布が存在しているため、洗髪時にシャンプー等の泡が首回りに溜まりやすく、洗い落とすのに手間がかかるという問題があった。
さらにまた、公衆浴場等において入浴する際には、衛生上の観点から従来技術2を体から取り外し湯に浸からないようにする必要があり、湯浴から上がった際にまた着用する必要がある。その際、周囲の人になるべく気づかれないよう濡れた布体を脱着するのは難しく、また取り外した際の当該布体の置き場にも思案が必要である。
【0010】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、少なくとも乳房を覆うことができ、公衆浴場において使用した場合であっても人目を引きにくく、かつ着用したまま身体を洗うことが可能であって、洗髪の際に首回りに溜まった泡が洗い流しやすい上、入浴時の取扱い性も良好な洗身用被覆具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の洗身用被覆具は、一方方向に長尺の長尺体であり、長手方向の両端部側に被覆部を有するとともに、上記被覆部間に中間部を有し、上記中間部を構成する生地のメッシュ値が、上記被覆部を構成する生地のメッシュ値よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗身用被覆具は、一方方向に長尺であるため、使用時に周囲の注目を集めることなく首に掛けやすい。本発明の使用者は、洗身用被覆具を首に掛けた状態で体を洗うことができ、かつ首回りにシャンプー等の泡が溜まった場合であっても、ちょうど首回りにおいて目の粗い中間部が配置されているため、当該泡を容易に洗い流しやすい。
また使用者は、湯浴に入る際には、本発明の洗身用被覆具を頭に巻き付けることができ、また湯浴から上がった際には、素早く首に掛けた状態に戻すことができる。これら一連の行為は、首に掛けた浴用タオルを頭に巻き付けて、またそれを首に戻す行為を連想させうるため、公衆浴場において被覆具を身に着けていることを周囲の人に気づかれにくい。
【0013】
本発明は、少なくとも乳房を被覆して、当該乳房が人目に晒されることを回避することができるが、適宜、長尺体の長さを変更することによって、さらに下腹部までを被覆することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態の洗身用被覆具の平面図である。
【
図2】
図1に示す洗身用被覆具のII-II端面図である。
【
図3】(3A)は使用者が第一実施形態の洗身用被覆具を着用した状態の説明図であり、(3B)は入浴時に使用者が第一実施形態の洗身用被覆具を頭に巻き付けた状態の説明図である。
【
図4】使用者が本発明の第二実施形態の洗身用被覆具を着用した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。まず本発明の概要について説明する。
本発明の洗身用被覆具は、一方方向に長尺の長尺体である。当該長尺体の長手方向の両端部側には少なくとも乳房を被覆可能な被覆部が設けられている。また一方の被覆部と他方の被覆部との間には中間部が設けられている。本発明において、中間部は、上述する被覆部を構成する生地のメッシュ値よりもメッシュ値の小さい生地によって構成されている。上記構成を備える本発明の洗身用被覆具を使用者の首に掛けることによって、使用者の首回りに上記中間部を配置させるとともに、使用者の少なくとも乳房を被覆する位置に被覆部を配置させることが可能である。これによって、使用者は公衆浴場などの風呂場において、特段の人目を引くことなく乳房を隠すことが可能である。
【0016】
本発明に関し、中間部または被覆部を構成する生地のメッシュ値とは、各部位を構成する生地が一枚(単層)である場合には当該生地のメッシュ値をいい、各部位を構成する生地が2枚以上(多層)である場合にはそれらの生地各々のメッシュ値の総和をいう。ここでメッシュ値とは、一般的なメッシュ値の定義と同意で用い、具体的には1インチ(2.54cm)の間における、繊維(または繊維の束)の本数をいう。
【0017】
本発明の洗身用被覆具を首に掛けた使用者は、その状態で洗身可能である。そして洗髪の際にシャンプーの泡などが首回りに溜まった場合であっても、首回りに配置された中間部が被覆部と比較してメッシュ値が小さく目の粗い生地により構成されているため、シャワーなどにより当該泡を洗い流しやすい。一方、被覆部は相対的にメッシュ値が大きく目の細かい生地により構成されるため、当該被覆部を通して被覆された体が外部から視認されにくい。
【0018】
以下では、中間部がメッシュ生地から構成されたメッシュ部であり、被覆部が一枚または二枚以上の非メッシュ生地を備える被覆部である実施形態を用いて本発明を説明する。
【0019】
(第一実施形態)
以下に、本発明の洗身用被覆具の第一実施形態について
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態である洗身用被覆具100の平面図である。
図2は、
図1に示す洗身用被覆具100のII-II端面図である。
図3Aは、使用者200が洗身用被覆具100を着用した状態の説明図であり、
図3Bは、入浴時に使用者200が洗身用被覆具100を頭に巻き付けた状態の説明図である。
【0020】
図1に示すように、洗身用被覆具100は、一方方向に長尺の長尺体であり首に掛けやすい形状である。本実施形態では、具体的には平面視、長方形の形状であるが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で長方形以外の長尺体として構成されてもよい。
洗身用被覆具100は、長手方向中間部においてメッシュ生地で構成されたメッシュ部10と、メッシュ部10の両端それぞれにおいて設けられた被覆部20とを備える。被覆部20は、一枚または二枚以上の非メッシュ生地を用いて構成されている。メッシュ部10を構成するメッシュ生地のメッシュ値は、被覆部20を構成する非メッシュ生地のメッシュ値よりも小さく、相対的に生地の目が粗くなるよう構成されている。
【0021】
上述する構成を備える洗身用被覆具100は、
図3Aに示すとおり、長尺体であるため使用者200の首に掛けて着用することができ、首に掛けた際に、あたかもタオルを掛けたような体裁となり、被覆具を着用していることが他者に気づかれにくい。このような着用状態において乳房は被覆部20によって被覆されるため、使用者200は人目を引くことなく乳房の露出を回避することができる。
また、洗身用被覆具100は、長手方向中間部、即ち、ちょうど首に掛かる部分にメッシュ部10が設けられているため、シャンプーの泡等が首回りに溜まっても容易に洗い流すことができ、使用性が良好である。
【0022】
さらに使用者200は、湯浴に浸かる際には
図3Bに示すとおり湯浴に体を沈めつつ、洗身用被覆具100を頭に巻き付けることができる。また湯浴から上がる際には、頭に巻き付けた洗身用被覆具100を再度首に掛ければよい。これら一連の動作は、タオルを頭に巻き付け、かつ巻き付けたタオルを解くという動作を連想させるため、周囲の者は被覆具を使用していることを気づきにくい。
【0023】
本実施形態の洗身用被覆具100は、使用者200の首に掛けられた際、長尺体の両端(端部40、40)が腹部中間部で終端するよう構成されており、入浴時に乳房が露出することを回避したい要望を持つ使用者200に好適である。尚、本発明に関し、腹部とは、使用者200のみぞおちから恥骨までの部分を指す。
洗身用被覆具100の寸法は、使用対象者の体形や年齢などを加味して適宜決定することができる。例えば、使用者200が平均的な体形の成人女性である場合には、長手方向の寸法は、90cm以上125cm以下の範囲であることが好ましく、92cm以上120cm以下であることがより好ましく、95cm以上115cm以下であることがさらに好ましい。かかる範囲であれば、充分に乳房を被覆することが可能であるとともに、入浴時に頭に巻きやすい。
【0024】
また洗身用被覆具100の短手方向の寸法L3は、特に限定されないが、18cm以上30cm以下であることが好ましく、20cm以上28cm以下であることがより好ましい。かかる範囲であれば、充分に乳房を被覆することが可能であるとともに、着用時に周囲の者に違和感を与えにくい。またこのように、一般的な浴用タオルよりも短手方向の寸法を小さくすることによって、
図3Bのごとく頭に巻き付けやすい。
【0025】
(メッシュ部)
洗身用被覆具100を構成する長尺体は、長手方向中間部においてメッシュ生地で構成されたメッシュ部10を有する。
ここでメッシュ生地とは、多数の穴が形成された生地であり、例えば、トリコット編み機やラッセル編み機などで作製される。
【0026】
本実施形態におけるメッシュ部10は、一枚のメッシュ生地から構成されているが、本発明は、メッシュ部10が二枚以上のメッシュ生地から構成されることを包含する。首に掛かる部位にメッシュ部10を備えることによって、シャンプー等の泡が首回りに溜まった際に洗い流しやすい上、更に以下の優れた効果を発揮する。
【0027】
例えば、一般的な浴用タオルを首に掛けた場合、首回りでは短手方向にタオルが寄り集まりやすく、それにつられて、上半身前側に位置する当該浴用タオルの両端部側にドレープが残りやすい。したがって、一般的な浴用タオルを首に掛けた場合、乳房の一部がタオルから露出しやすい。
一方、洗身用被覆具100は、メッシュ部10を構成するメッシュ生地が、被覆部20を構成する非メッシュ生地に比べて目開きが大きいため、相対的に生地のコシが弱い。そのため、洗身用被覆具100を首に掛けた際に、首回りでメッシュ部10が短手方向に寄り集まりやすい。そして、首回りにおいて短手方向に寄り集まったメッシュ部10につられて被覆部20の短辺24も短手方向に寄り集まるのではなく、
図3Aに示すように上半身前側で短手方向に開いた状態で配置された被覆部20の短辺24につられてメッシュ部10も短手方向に広がりやすい。この結果、使用者200の乳房は、被覆部20から露出することなく充分に被覆されうる。尚、ここでいう被覆部20の短辺24とは、
図3Aに示すとおり、被覆部20のメッシュ部10寄りの短辺を指している。
【0028】
(被覆部)
長尺体である洗身用被覆具100は、
図1に示すようにメッシュ部10の両端それぞれにおいて一枚または二枚以上の非メッシュ生地を備えて構成された被覆部20を備える。被覆部20が使用者200の上半身前側に位置することによって、乳房が被覆される。
【0029】
本発明に関し、非メッシュ生地とは、上述するメッシュ生地を除く生地の総称であって、織物、編物、不織布を含む。非メッシュ生地は、綿、絹、麻などの天然繊維、およびポリエステルやナイロンなどの化学繊維等の一般的な繊維を用いて製造された生地から適宜選択することができる。
【0030】
本発明に用いられる非メッシュ生地は、上述するメッシュ生地よりもメッシュ値が大きく、室内灯下で広げた状態で一方側面から目視で観察した際に、他方面側を視認できない程度に目開きが小さいものであることが好ましい。尚、以下の記載では、生地に関し一方面側から他方面側が視認できない性質を非透視性といい、また一方面側から他方面側を目視可能な性質を透視性という場合がある。
【0031】
被覆部20は、一枚の生地から構成された単層であってもよいし、二枚以上の生地を重ねて多層に構成されてもよい。より具体的には、被覆部20は一枚の非メッシュ生地から構成されてもよいし、二枚以上の非メッシュ生地の積層または少なくとも一枚の非メッシュ生地とメッシュ生地の積層により構成されてもよい。被覆部20が二枚以上の生地により多層に構成された場合には、各生地のメッシュ値の総和が、中間部であるメッシュ部10のメッシュ値よりも大きくなるよう調整される。
非透視性を発揮しやく、濡れた際にも体のラインが現れにくいという観点から、被覆部20は二枚以上の生地を重ねて多層に構成されることが好ましい。
【0032】
本実施形態では、身体に着用した状態で洗身用被覆具100が濡れた際にも体のラインが現れにくいという性質をより充分に発揮させる観点から、被覆部20を構成する少なくとも一枚の非メッシュ生地として、
図2に示すとおり立体生地25aが用いられている。立体生地を被覆部20に用いることによって、被覆部20の水はけを良好なものとすることが可能であり濡れた洗身用被覆具100を首に掛けた状態が持続しても首に荷重負担がかかり難く、また軽く絞るだけで洗身用被覆具100から水が滴り難い状態とすることが可能である。上述する水はけによる荷重負担の軽減効果や水分を容易に絞ることができるといった効果は、立体生地25aとして後述するリップル生地や凹凸生地を用いることによって特に良好に発揮されうる。
ここで立体生地25aとは、一方面と他方面とにおいて相対的に凹凸形状が設けられることで立体性を有する生地を指す。具体的には、生地の一方面に設けられた凸部21と、これと相対して他方面に設けられた凹部22とからなる凹凸形状が生地の面方向に多数形成された生地を指し、面方向全体に凹凸形状が形成されていることが好ましい。上記凹凸形状は、本発明の趣旨から鑑みれば目視で確認可能な程度の寸法であることが好ましい。
尚、
図2では凹凸形状として凸部面がフラットな凸部21と凹部面がフラットな凹部22とからなる態様を示したが、本発明はこれに限定されず、たとえ蛇腹のような山状の凸部とこれに相対する谷状の凹部とから構成された凹凸形状を包含する。
【0033】
立体生地25aの製造方法は特に限定されないが、例えばフラットに作製された生地を用い、任意の加工方法で凹凸形状を付与された生地であってもよい。具体的には、例えばリップル加工を施されたリップル生地やエンボス加工処理がなされたエンボス加工生地などが挙げられる。尚、リップル加工とは、薄手の織物に苛性ソーダ等の液を付着させて収縮させ生地に凹凸形状を付与する加工方法をいう。
また、立体生地25aは、織物または編物を作製する工程において立体性が付与された生地であってもよい。具体的には、例えば経糸と緯糸を浮かすことで凹凸形状が付与されたワッフル生地、立体的な六角形模様を有するハニカム生地、収縮の差が異なる2種以上の糸を使用して作成されるサッカー生地、平編みとタック網とを交互に行うことで生地表面に立体性が付与された鹿の子生地などが挙げられる。
【0034】
また被覆部20は、一枚の生地から構成された単層であってもよいが、本実施形態では、
図2に示すとおり、被覆部20は多層に構成されており、少なくとも一方側の最外層はガーゼ生地25bで構成されている。ガーゼ生地25bが肌に当接する向きで被覆部20を配置させることで、肌当たりが良好となり好ましい。
特には
図2に示すとおり、最外層を構成するガーゼ生地25bと、立体生地25aとを備える被覆部20を備える洗身用被覆具100であれば、使用時の肌心地が良好であって、かつ濡れた際に、肌と立体生地25aとの間に一層の生地(ガーゼ生地25b)が存在するため、被覆部20に被覆された体のラインがより目立ちにくくなり好ましい。本実施形態では、被覆部20を構成するは立体生地25aとガーゼ生地25bとは、外縁部において互いが縫製されてなる縫製部23により接合され積層されている。
【0035】
上記ガーゼ生地25bは、一般的にガーゼと称される生地から適宜選択することができ、より具体的には、例えば細径の木綿糸等を用い比較的目の粗い平織により作製された生地が挙げられる。
【0036】
(メッシュ部の寸法L1および被覆部の寸法L2)
図1に示すとおり、本実施形態では洗身用被覆具100の長手方向において、中間部として設けられたメッシュ部10の両端それぞれに被覆部20が配置されている。
ここで上記長尺体の長手方向におけるメッシュ部10の寸法L1は、首回りを覆う長さであって、かつ使用者200の乳房より上側で終端することが好ましく、具体的に例えば24cm以上56cm以下であることが好ましく、35cm以上50cm以下であることが好ましく、40cm以上48cm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
また本実施形態では、メッシュ部10の両端に位置する各被覆部20の寸法L2は、乳房全体を被覆可能であって、かつ洗身用被覆具100の長手方向の寸法が一般的な浴用タオルと比較して違和感のない程度の長さとなるよう調整されることが好ましい。具体的には、洗身用被覆具100の長手方向において、一つの被覆部20の寸法L2は、20cm以上50cm以下であることが好ましく、24cm以上45cm以下であることがより好ましく、28cm以上40cm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
(留め部)
本実施形態では、使用時に首から洗身用被覆具100が脱落したり、被覆部20の位置が大きくずれたりすることを防止するために、留め部が設けられている。
具体的には、
図1および
図3に示すとおり、長尺体である洗身用被覆具100の任意の位置に第一留め部31が設けられるとともに、当該長尺体を長尺方向に二つ折りにした際に、第一留め部31に対応する位置に、第二留め部32が設けられている。第一留め部31と第二留め部32とが留め合わされることによって、互いの位置が固定され、洗身用被覆具100の着用状態を安定させることができる。
【0039】
第一留め部31および第二留め部32は、留め合わされることによって互いの位置が固定されるものであればよく、例えば、面ファスナー、ホック、スナップボタン、ボタンとボタンホールなどの任意の留め手段から適宜選択することができる。
【0040】
第一留め部31および第二留め部32が設けられる位置は特に限定されないが、例えば本実施形態のように被覆部20の任意の位置に設けられることが好ましく、より具体的には、第一の被覆部20aの一方側の面に第一留め部31が設けられるとともに、第二の被覆部20bの他方側の面に第二留め部32が設けられるとよい。このような位置関係であれば、
図3Aに示すように第一の被覆部20aおよび第二の被覆部20bのぞれぞれの一方側の面が外側に向いた状態で、両者の一部が重ね合わせることができる。これによって、より充分に乳房を被覆することができるとともに、外観上、第一留め部31および第二留め部32が目視されることが回避される。尚、本実施形態では留め部は一か所に設けられているが、留め部の数は適宜変更してよい。
【0041】
(収納部)
本実施形態の洗身用被覆具100は、未使用時にコンパクトな収納状態を維持可能とするため、第三留め部33と第四留め部34とからなる収納部を備える。具体的には
図1に示すとおり、第三留め部33は長尺体である洗身用被覆具100の一方側の面の長手方向端部寄りに設けられたボタンであり、第四留め部34は洗身用被覆具100の上記長手方向端部に設けられたリングである。例えば洗身用被覆具100を短手方向に半分に折り畳むとともに、第三留め部33が設けられていない側から、第三留め部33が表側に表出する向きに洗身用被覆具100を折り畳むか巻き上げてコンパクトな状態とし、第三留め部33と第四留め部34とを留め合わせることでコンパクトな収納状態を維持可能である。上記リングは例えば、ゴム紐などの伸縮性の部材から構成されることが好ましい。
但し、第三留め部33および第四留め部34は、上述するボタンとリングに限定されず、互いに留め合わされることによって、互いの位置が固定されるものであればよく、例えば、面ファスナー、ホックなどに変更可能である。また、第三留め部33であるボタンを省略し、第四留め部34のリングをゴム紐で構成し、当該ゴム紐で収納状態の洗身用被覆具100をひとまとめにして収納状態を維持することもでき、あるいは、第三留め部33であるボタンを省略し、第四留め部34として一本または二本の紐を取り付けて、当該紐で収納状態の洗身用被覆具100をひとまとめにして結わき収納状態を維持することもできる。
【0042】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態である洗身用被覆具110について
図4を用いて説明する。
図4は、使用者210が本発明の第二実施形態である洗身用被覆具110を着用した状態の説明図である。
図4は、長手方向の寸法が第一実施形態の洗身用被覆具100よりも長く設計されるとともに、第一留め部31と第二留め部32とからなる留め部が複数箇所設けられたこと以外は、第一実施形態と同様に構成されている。
【0043】
本実施形態の洗身用被覆具110は、
図4に示すとおり、成人女性(使用者210)の首に掛けた際、長尺体である洗身用被覆具110の両端(端部40、40)が腹部より下方において終端しており、
図4のように起立した状態、あるいは図示省略する椅子などに腰を掛けた状態において、被覆部20によって乳房だけでなく下腹部も被覆される。
かかる洗身用被覆具110であれば、一人で入浴が困難になった高齢者等が、介助者に入浴をサポートしてもらう際、胸部や下腹部が介助者の目に晒されることを回避することができ、高齢者等における入浴介助の抵抗感を減じることができる。
【0044】
洗身用被覆具110のメッシュ部10の好ましい寸法は、第一実施形態に示す好ましい範囲と同様である。
一方、洗身用被覆具110の長手方向における被覆部20の寸法は特に限定されず、少なくとも椅子に腰かけた際に、使用者210の腹部より下方に端部40が位置すればよく、例えば35cm以上70cm以下であることが好ましく、38cm以上60cm以下であることがより好ましく、42cm以上50cm以下であることがさらに好ましい。洗身用被覆具110の端部40は、
図4に示すように起立した使用者210の腹部よりも下方において終端することが好ましいが、少なくとも図示省略する着座した使用者210の腹部よりも下方に端部40が位置することによって、使用者210の下腹部が被覆部20によって被覆されるとよい。
【0045】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様を含む。
例えば、上述では、中間部がメッシュ生地からなるメッシュ部であり、被覆部に非メッシュ生地が用いられた実施形態を示したが、本発明は、中間部を構成する生地としてガーゼなどの比較的コシの弱い生地を選択し、一方、被覆部を構成する生地として、中間部を構成する生地よりもメッシュ値の大きい生地が選択される態様を包含する。また本発明は、長尺体全体においてメッシュ生地あるいはガーゼなどの比較的コシの弱い生地が使用されるとともに、長尺体の両端部側において更なる生地を重ねて縫製し中間部よりもメッシュ値の高い被覆部を設けることもできる。
また第一実施形態および第二実施形態において説明した事項は、中間部がメッシュ生地以外の生地から構成された本発明の他の態様に関しても適宜参照されうる。
【0046】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)一方方向に長尺の長尺体であり、
長手方向の両端部側に被覆部を有するとともに、
前記被覆部間に中間部を有し、
前記中間部を構成する生地のメッシュ値が、前記被覆部を構成する生地のメッシュ値よりも小さいことを特徴とする洗身用被覆具。
(2)前記中間部がメッシュ生地から構成されたメッシュ部であり、
前記被覆部が一枚または二枚以上の非メッシュ生地を備える(1)に記載の洗身用被覆具。
(3)前記被覆部を構成する少なくとも一枚の生地が、一方面と他方面とにおいて相対的に凹凸形状が設けられた立体生地から構成されている(1)または(2)に記載の洗身用被覆具。
(4)前記被覆部が、二枚以上の生地を重ねて多層に構成されている(1)~(3)のいずれか一項に記載の洗身用被覆具。
(5)多層に構成された前記被覆部の、一方側の最外層はガーゼ生地からなる(4)に記載の洗身用被覆具。
(6)前記長尺体の任意の位置に第一留め部が設けられるとともに、
前記長尺体の長手方向において2つ折りにしたときに、前記前記第一留め部に対応する位置に第二留め部が設けられており、
前記第一留め部と前記第二留め部とが留め合わされることによって、互いの位置が固定される(1)~(5)のいずれか一項に記載の洗身用被覆具。
(7)前記長尺体の長手方向における前記中間部の寸法が、24cm以上56cm以下である(1)~(6)のいずれか一項に記載の洗身用被覆具。
(8)使用者の首に掛けられた際、前記長尺体の両端が腹部中間部で終端する(1)~(7)のいずれか一項に記載の洗身用被覆具。
(9)使用者の首に掛けた際、前記長尺体の両端が腹部より下方において終端する(1)~(7)のいずれか一項に記載の洗身用被覆具。
(10)前記長尺体の短手方向の寸法が18cm以上30cm以下である(1)~(9)のいずれか一項に記載の洗身用被覆具。
【符号の説明】
【0047】
10・・・メッシュ部
20・・・被覆部
20a・・・第一の被覆部
20b・・・第二の被覆部
21・・・凸部
22・・・凹部
23・・・縫製部
24・・・短辺
25a・・・立体生地
25b・・・ガーゼ生地
31・・・第一留め部
32・・・第二留め部
33・・・第三留め部
34・・・第四留め部
40・・・端部
100、110・・・洗身用被覆具
200、210・・・使用者
L1・・・メッシュ部の寸法
L2・・・被覆部の寸法
L3・・・長尺体の短手方向の寸法