(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024635
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】紙製容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 5/24 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
B65D5/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128890
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】508144277
【氏名又は名称】株式会社山文
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 正伍
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB20
3E060AC03
3E060BB01
3E060CD02
3E060CD12
3E060DA30
3E060EA13
(57)【要約】
【課題】紙製の容器としながら、薄手に折り曲げ可能とした紙製容器を提供する。
【解決手段】紙製容器は、食品を収納するための容器である。トレイ100は、底部10と、底部10の周囲を囲む複数の壁部20とを備えている。底部10と、複数の壁部20とで食品の収納空間を画成すると共に、底部10と各壁部20とは、紙製のシートを折り曲げて構成されている。壁部20は、その上端に平坦面22を有しており、平坦面22の幅が、平均で5mm以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納するための紙製容器であって、
底部と、
前記底部の周囲を囲む複数の壁部と、
を備えており、
前記底部と、前記複数の壁部とで食品の収納空間を画成すると共に、
前記底部と各壁部とは、紙製のシートを折り曲げて構成されており、
前記壁部は、その上端に平坦面を有しており、
前記平坦面の幅が、平均で5mm以下である紙製容器。
【請求項2】
請求項1に記載の紙製容器であって、
前記紙製のシートを展開した状態において、前記複数の壁部は、それぞれ、
前記収納空間を構成する内面部と、
前記内面部の対向する辺の内、前記底部と接合された第一辺と対向する第二辺と接合される前記平坦面と、
前記平坦面の、第二辺と対向する第三辺と接合された外面部と、
を備えており、
前記第二辺と前記第三辺がそれぞれ山折りされて、前記平坦面が形成されてなる紙製容器。
【請求項3】
請求項2に記載の紙製容器であって、
前記複数の壁部の少なくとも一部は、前記内面部の隅部において、前記平坦面との境界に凹部を形成しており、
前記凹部に、隣接する壁部の前記平坦面を配置するよう構成してなる紙製容器。
【請求項4】
請求項3に記載の紙製容器であって、
前記複数の壁部は、隣接する壁部との間に折り部を設けており、
前記折り部は、前記内面部の両側において、隅部から前記凹部を隔てて延出されてなる紙製容器。
【請求項5】
請求項4に記載の紙製容器であって、
前記折り部は、中間をV字状に窪ませており、
前記V字状の角度が、130°~160°である紙製容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の紙製容器であって、
前記複数の壁部は、食品の収納空間が開口端に向かって広くなるよう前記底部に対して傾斜されており、
前記複数の壁部の、隣接する壁部の傾斜角度を異ならせてなる紙製容器。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の紙製容器であって、
前記平坦面の幅が2mm~3mmである紙製容器。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の紙製容器であって、
前記紙製のシートが、防水加工されてなる紙製容器。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の紙製容器であって、
前記紙製容器が、複数を積層可能に構成されてなる紙製容器。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の紙製容器であって、
前記紙製容器が、食品収納容器に1個以上が収容されるトレイである紙製容器。
【請求項11】
トムソン刃を有する第一板と、前記第一板と対向する第二板であって、前記トムソン刃の刃先の部分と対応する部分に溝を有する型に、原紙をセットし、幅が5mm以下の折り目部分にハーフカットを形成する工程と、
前記ハーフカットを形成した紙製のシートを、製函機で製函する工程と
を含む紙製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙箱の容器に関し、例えば弁当やおせち料理などの食品を小分けに収納するトレイ型の紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
弁当箱やおせち料理の容器等の食品を収納する容器は、従来よりプラスチックなどの樹脂製が多く利用されてきた(例えば特許文献1参照)。近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染などの影響により、脱プラスチックの動きが加速している。またSDGs等に鑑みても、食品容器についてもポジティブリスト制度やプラスチック製の容器を使用しないことが求められており、紙製の容器が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紙製の容器は見た目の高級感はあるが、紙の切り口が見えると貧弱に見えてしまう。そこで、紙の切り口を見せず、更に高級感を出すために、紙製の容器を折り返して厚みを持たせた容器とすることが考えられる。すなわち、壁の上端に平坦面を設けた、いわゆる額縁を付加した紙製の容器である。またこのような紙製容器は、ただ折り返すだけでなく、額縁をつけることで見た目の高級感と共になお一層の強度も持たせることができる。
【0005】
一般に紙製の容器は、製函機を用いて自動で組み立てられるところ、製函機による折り曲げには限度があり、幅7mm程度といった、ある程度の太い幅でしか折り曲げられないという問題があった。一方で、紙製の容器が厚過ぎると、容器内の収納容積が減少するという問題があった。
【0006】
本開示は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、紙製の容器としながら、薄手に折り曲げ可能とした紙製容器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本開示の形態1に係る紙製容器は、食品を収納するための紙製容器であって、底部と、前記底部の周囲を囲む複数の壁部と、を備えており、前記底部と、前記複数の壁部とで食品の収納空間を画成すると共に、前記底部と各壁部とは、紙製のシートを折り曲げて構成されており、前記壁部は、その上端に平坦面を有しており、前記平坦面の幅が、平均で5mm以下である。上記構成により、壁部の上端を折り返して平坦部を設けつつ、製函機による自動製函に対応した紙製容器を実現できる。
【0008】
また本開示の形態2に係る紙製容器は、上記形態において、前記紙製のシートを展開した状態において、前記複数の壁部は、それぞれ、前記収納空間を構成する内面部と、前記内面部の対向する辺の内、前記底部と接合された第一辺と対向する第二辺と接合される前記平坦面と、前記平坦面の、第二辺と対向する第三辺と接合された外面部と、を備えており、前記第二辺と前記第三辺がそれぞれ山折りされて、前記平坦面が形成されている。上記構成により、紙製のシートの一面を、紙製容器の収納空間と、壁部の外面の両方に表出させることができるので、シートの一面のみを化粧面として、見栄えを向上させることができる。
【0009】
さらに本開示の形態3に係る紙製容器は、上記いずれかの形態において、前記複数の壁部の少なくとも一部は、前記内面部の隅部において、前記平坦面との境界に凹部を形成しており、前記凹部に、隣接する壁部の前記平坦面を配置するよう構成している。上記構成により、壁部に平坦面を設けつつも、壁部同士の界面において干渉を避け、隙間なく接合させることができる。
【0010】
さらにまた本開示の形態4に係る紙製容器は、上記いずれかの形態において、前記複数の壁部は、隣接する壁部との間に折り部を設けており、前記折り部は、前記内面部の両側において、隅部から前記凹部を隔てて延出されている。上記構成により、壁部同士の間に設けた折り部を壁部同士の界面において干渉させずに折り込むことが可能となる。
【0011】
さらにまた本開示の形態5に係る紙製容器は、上記いずれかの形態において、前記折り部は、中間をV字状に窪ませており、前記V字状の角度が、130°~160°である。
【0012】
さらにまた本開示の形態6に係る紙製容器は、上記いずれかの形態において、前記複数の壁部は、食品の収納空間が開口端に向かって広くなるよう前記底部に対して傾斜されており、前記複数の壁部の、隣接する壁部の傾斜角度を異ならせている。
【0013】
さらにまた本開示の形態7に係る紙製容器は、上記いずれかの形態において、前記平坦面の幅が2mm~3mmである。
【0014】
さらにまた本開示の形態8に係る紙製容器は、上記いずれかの形態において、前記紙製のシートが、防水加工されている。
【0015】
さらにまた本開示の形態9に係る紙製容器は、上記いずれかの形態において、前記紙製容器が、複数を積層可能に構成されている。
【0016】
さらにまた本開示の形態10に係る紙製容器は、上記いずれかの形態において、前記紙製容器が、食品収納容器に1個以上が収容されるトレイである。
【0017】
さらにまた本開示の形態11に係る紙製容器の製造方法は、トムソン刃を有する第一板と、前記第一板と対向する第二板であって、前記トムソン刃の刃先の部分と対応する部分に溝を有する型に、原紙をセットし、幅が5mm以下の折り目部分にハーフカットを形成する工程と、前記ハーフカットを形成した紙製のシートを、製函機で製函する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係る紙製容器を含む食品収納容器を示す斜視図である。
【
図2】
図1の食品収納容器からトレイを抜いた分解斜視図である。
【
図5】複数のトレイを重ね合わせる状態を示す断面図である。
【
図6】
図3のトレイのVI-VI線における断面図である。
【
図7】
図3のトレイのVII-VII線における断面図である。
【
図9】
図8のトムソン刃で原紙にハーフカットを施す様子を示す模式断面図である。
【
図10】
図3のトレイの組立状態を示す要部拡大図付き斜視図である。
【
図11】
図3のトレイの組立状態を示す要部拡大図付き斜視図である。
【
図12】
図3のトレイの組立状態を示す要部拡大図付き斜視図である。
【
図13】
図3のトレイの組立状態を示す要部拡大図付き斜視図である。
【
図14】実施形態2に係るトレイを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本開示の技術思想を具体化するための例示であって、本開示は紙製容器を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本開示を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0020】
コンビニエンスストアやスーパーマーケット等で販売されている弁当箱や、百貨店のおせち重箱など、食品の容器には、従来よりプラスチックなどの樹脂製品が多用されてきた。しかしながら、このようなプラスチック製品による土壌汚染、海洋汚染などの環境負荷、石油資源の枯渇などの観点から、脱プラスチックの動きが活発化している。このような状況において、令和2年6月1日より施行された「食品容器具・容器包装のポジティブリスト制度」によって脱プラへの動きが加速し、例えば弁当容器に入れるプラスチック製の小鉢やトレーをできるだけ使わないようにしたいと要望が一層高まっている。そこで、紙製の小鉢が求められている。
【0021】
現在流通しているプラスチック製の小鉢には、その殆どに額縁が付加されている。すなわち、プラスチック製の壁部の上端を、水平面状に成型している。これに対し、現在市場に出回っている紙製の小鉢の殆どは、額縁を有してない。それは、製函機によって自動で額縁付の容器を製函しようとすれば、機械で折り目を付ける関係上、ある程度の幅をもたせた額縁にするか、額縁のない折り曲げたものしかできない。特に、小鉢のような小サイズの容器に細い額縁を付けることは製函機による製函が困難であった。また製函機によらず、紙製の小鉢に手作業による折り加工で額縁を付そうとすれば、コスト的に国内での製造が困難であった。また、中国等の海外で製造しようとしても、折り線が綺麗にそろわず、また紙材の品質上の問題もあり、食品用として使用するには懸念があった。
【0022】
さらに、新型コロナウィルスのまん延に加え、ウクライナ紛争などの国際情勢によって物流がストップし、原材料の高騰の重なり、輸入品に頼る構造の不安定要因が明らかとなった。また一方では、プラスチックなどの樹脂製品による海洋汚染等の懸念から、脱プラスチックの動きも加速している。このような情勢において、紙製小鉢の安定供給が急務となっている。加えて、プラスチック製の小鉢に対し、コストがかかる紙製小鉢の付加価値を高めることも、市場に受け入れられるために必要となる。紙製の小鉢に額縁を付加することで、見た目の豪華さにもつなげられる。このような背景に鑑みて、本発明者は鋭意研究の結果、紙製の容器にボリューム感を持たせて高級感を演出するように、従来より市場には出回っていない額縁を付けた紙製小鉢を機械で自動生産化に対応可能とした発明を成すに至ったものである。
[実施形態1]
【0023】
本開示の実施形態1に係る収納容器1000を、
図1の斜視図に示す。この図に示す収納容器1000は、食品を収納する容器の例を示しており、例えばおせち料理用の重箱や弁当箱として利用できる。ここでは蓋LD付きの例を示しているが、蓋のない容器としてもよい。また以下の例では食品用について説明するが、他の用途、例えば薬や小物、贈答品などの容器やトレイに本開示を適用することもできる。特に、見栄えのよさが要求される高級品の収納容器やトレイとして、本開示を好適に適用できる。
【0024】
収納容器1000は、
図2の分解斜視図に示すように複数のトレイ100を収納している。
図2の例では、小鉢状の同一形状のトレイ100を6個、収納容器1000に収納する例を示しているが、本開示はこの構成に限られず、各トレイの形状や、収納容器に収納するトレイを数を任意に設定できる。また各トレイ100は、開口部分に向かうほど幅広となるように、各壁部20を底部10に対して垂直姿勢から傾斜させることが好ましい。特に壁部20を、逆等脚台形状、あるいは逆ハの字状にテーパーを設けることで、
図5の断面図に示すように、同一形状のトレイ100を積層することが可能である。
【0025】
各トレイ100は、
図3の斜視図に示すように、上方を開口した有底箱状に形成される。
図3のトレイ100は、底部10と、この底部10の周囲を囲む複数の壁部とを備える。底部10は、矩形状に形成される。この例では正方形状としているが、要求される容量や外形等に応じて、長方形状としてもよいことはいうまでもない。
【0026】
底部10と複数の壁部20とで、食品の収納空間が画成される。また底部10と各壁部20とは、
図4の展開図に示すように、紙製のシートを折り曲げて構成されている。紙製のシートとしては、片面PPまたはPEをラミネートしてあるボール、食品ニスをコーティングした紙など、食品衛生基準に合致する紙であれば利用できる。シートに防水加工を施すことで、汁気の多い食品の収納も可能となる。シートの防水加工や着色などは、シートの一面のみ(例えば
図4の紙面側)に施すことが好ましい。これにより、裏面側の加工を省いて、加工の容易さと低コスト化を図ることができる。
(壁部20)
【0027】
複数の壁部20は、それぞれ、内面部21と、平坦面22と、外面部23とで構成される。内面部21は、底部10の周囲を構成する4辺である第一辺1と接合される。この例では、4つの壁部20が設けられている。各壁部20は、
図3等に示すように逆等脚台形状に形成されている。これにより、各壁部20は開口面に向かって末広がりに傾斜され、
図5に示すように複数のトレイ100を積層可能とできる。
図4の展開図に示す例では、正面側の壁部20の、内面部21の左右の隅部の角度θ1を、95°としている。一方、左右の壁部20b、20cの内面部21の隅部の角度θ2を、97°としている(壁部20の傾斜角度を異ならせた理由については、後述)。
(内面部21)
【0028】
複数の内面部21は、底部10と共に食品等の収納空間を構成する。各内面部21は、長辺側の第一辺1、及びこの第一辺1と対向する第二辺2と、短辺側の第四辺4、及びこの第四辺4と対向する第五辺5を有する。第一辺1は、底部10と接合される。第二辺2は、平坦面22と接合される。また第四辺4と第五辺5は、それぞれ折り部30と接続される。
(平坦面22)
【0029】
平坦面22は、壁部20の内面部21と外面部23の間に形成される。この平坦面22は、収納空間の周縁、すなわち額縁として機能する。各平坦面22は第二辺2と第三辺3を有し、第二辺2で内面部21と接合され、第三辺3で外面部23と接合される。第二辺2と第三辺3の間の幅は、5mm以下としている。
(外面部23)
【0030】
外面部23は、内面部21から平坦面22を介して折り返されて、壁部20の外面を構成する。外面部23は、第三辺3を介して平坦面22と接合される。内面部21から平坦面22を介して折り返された外面部23は、
図6の断面図等に示すように、その先端を内面部21に接するように接着される。いわば、折り返された外面部23は、平坦面22及び内面部21の一部とで断面視において三角形を形成する。なお、
図5の例では、外面部23の先端は内面部21の途中と接合されているが、本開示はこの構成に限られず、例えば外面部の長さを内面部とほぼ等しくなるように延長してもよい。これにより、トレイの側面を外面部で形成して、トレイの側面に継ぎ目をなくして見栄えを良くできる。また外面部23と内面部21との接着には、ホットメルトが利用される。
(フラップ部24)
【0031】
外面部23の内、対向する一対の外面部23、
図4においては左右に位置する外面部23は、その両側にフラップ部24を設けている。フラップ部24は山折りされて、トレイ100を組み立てた際に隣接する壁部20の内面部21と外面部23の間に挟み込まれて、糊付けされる。
(折り部30)
【0032】
トレイ100を組み立てた際に壁部20同士が隣接する部分には、折り部30を設けている。折り部30は、壁部20の側面の第四辺4と第五辺5に、それぞれ設けられる。各折り部30は、V字状に形成され、V字の中央には、折曲させるための第六辺6を設けている。折り部30も、フラップ部24と同様に隣接する壁部20の内面部21と外面部23の間に挟み込まれて、糊付けされる。
【0033】
折り部30は、第六辺6を中心に折曲される。上述の通り折り部30は、第六辺6の端縁における角度θ3を180°の直線状とせず、V字状としている。折り部30の折り目となる第六辺6の端縁の角度θ3は、小さすぎると製函機を通し難くなる。また大きすぎると、トレイ同士を積み重ねるスタッキングに支障を生じる。加えて、トレイのサイズが小さい場合に、紙製シートの折曲に対する反発力が大きくなって、内面部21等に接着した折り部30の糊はがれの原因となることが判明した。そこで、上述した製函機やスタッキング等を考慮して、V字状の角度θ3を、130°~160°、好ましくは140°~150°、最も好ましくは145°とする。
(凹部25)
【0034】
正面側と背面側の壁部20には、平坦面22と内面部21の境界の端部において、凹部25を形成している。凹部25は
図10、
図11の要部拡大図に示すように、左右の壁部20の、平坦面22を設けた端部が収まるようにするための部位である。凹部25を形成したことで、壁部20同士を接合させる際に抵触なくスムーズに接合させることが可能となる。このため凹部25の深さ、すなわち平坦面22の端面から内面部21を切り欠いた部分までの長さd5は、
図11に示すように左右の平坦面22の幅d3やd1とほぼ等しく形成することが好ましい。
【0035】
また折り部30は、内面部21の両側において、隅部から凹部25を隔てて延出されている。このような構成とすることで、壁部20同士の間に設けた折り部30を壁部20同士の界面において、折り部30の干渉を少なくして折り込むことが可能となる。具体的には、凹部25の底の長さd6、すなわち内面部21の端縁から、折り部30を突出させた位置までの長さd6は、トレイ100を組み立てた際に隣接する内面部21(
図4において底部10の左右の内面部21)において、同じく内面部21の端縁から折り部30を突出させた位置までの長さd7と一致させることが好ましい。
【0036】
図4の展開図において、第一辺1を谷折りとし、第二辺2と第三辺3をそれぞれ山折りとすることで、
図6、
図7の断面図に示すように、紙製のシートの表面が紙製容器の収納空間と、紙製容器の外面とに表出する。これにより、紙製のシートの表面側のみに着色や防水加工を施しながら、これらの加工面側を紙製容器の外観として表出させて、見栄えを向上できる。
【0037】
加えて、内面部21と外面部23の間に平坦面22を設けたことで、壁部20に厚みを持たせて食品容器の枠、いわば額縁を表現し、外観上のボリューム感や高級感を増すことが可能となる。特に紙製のシートで構成した容器は、プラスチックなどの容器と比べて強度的に弱く、薄い紙で構成されたトレイは貧弱な印象を与えることがあった。これに対し本実施形態に係るトレイ100では、紙を内面部21と外面部23の間で折り返す部分に平坦面22を設けたことで、厚みを表現して強度を増すと共に、見た目の上でも強靱な印象を与え、紙製であることを感じさせないボリューム感や高級感などを付加できる。
【0038】
一方で、このような額縁すなわち平坦面が大きすぎると、食品の収納空間がその分だけ狭くなる。しかし、平坦面を狭くしようとすると、紙製のシートを折り曲げて平坦面を形成していることから、折曲線を近接させて設ける必要があるところ、折曲線を近接させることが難しいという問題があった。特に製函機を用いて自動で紙製のシートを折曲させる場合は、幅7mm程度が限界とされていた。このように、従来は狭い幅の平坦面を綺麗に形成することが困難であった。
【0039】
これに対し本実施形態1に係るトレイ100では、紙製シートSTの打ち抜き加工に用いる型50を工夫して、製函機での製函が可能なトレイ100を実現している。具体的には、
図8の分解斜視図に示すように、型50はトムソン刃53を設けた木型となる第一板51と、この第一板51と対向する受け板あるいは面板となる第二板52で構成される。トムソン刃53は、紙製の原紙を
図4に示す展開図のように紙製シートSTを型抜きするパターンを第一板51に形成される。また、展開図の各折り目の部分にはハーフカットを設けるよう、折り目に沿って刃先の短いトムソン刃53を設けている。トレイ100の平坦面22にあたる、展開図の内で第二辺2と第三辺3の部分には、トムソン刃53が近接して設けられることになる。
【0040】
一方で第二板52には、
図9の断面図に示すように、第一板51のトムソン刃53の刃先の部分と対応する部分、特にトムソン刃53同士が近接する領域には、溝54を設けている。これにより、紙製シートST上の近接した領域であっても綺麗にハーフカットを施すことができ、折曲線に沿って製函機で組み立てることが可能となる。この結果、幅が狭い平坦面22を形成したトレイ100を得ることが可能となる。
【0041】
平坦面22の幅dは、5mm以下とする。好ましくは、平坦面22の幅を1mm~4mmとし、より好ましくは2mm~3mmとする。
図4に示すように、各壁部20の平坦面22の幅d1~d4は、等しくすることが好ましい。ただ、平坦面22の幅を壁部20毎に変化させてもよい。例えば
図6の断面図に示すように、内面部21と外面部23の間が空間となる壁部20の平坦面22の幅d1、d3よりも、
図7の断面図に示すように、内面部21と外面部23の間に折り曲げ片が介在されることになる壁部20の平坦面22の幅d2、d4を、大きくしてもよい。
【0042】
以上のようにして、額縁を有する紙製容器を得ることができる。特に、
図5に示すように壁部20を構成する外面部23を折り返して、平坦面22を設けつつ、壁部20をテーパー状に傾斜させた見栄えのよい紙製の小鉢を構成できる。
【0043】
本発明者の試験によれば、額縁付の紙製の小鉢を製造する上では、様々な技術的課題が存在することが判明した。まず、壁部20の上端にあたる平坦面22を両端で折り返して額縁状に形成するに際して、型抜きされた紙製シートを折り曲げる必要があるところ、紙目による反発が生じるため、折り目がゆがんだり、がたつきが出たりして、綺麗に箱の形状に仕上がらないという問題があった。具体的には、
図4の展開図において、第二辺2と第三辺3の罫線をそれぞれ山折りするにあたり、これらの罫線同士の間隔が狭いため、紙製シートを折曲させる際の反発が大きくなり、製函機での製函を行い難いという技術課題があった。そのため、シートを抜く際に折り目や額縁の罫線が綺麗に出るように、高圧(例えば400t)の抜き機械を使用した。
【0044】
本実施形態においては、製函にあたり第二辺2と第三辺3を共に、逆方向に折曲して折り癖を付けておく。これにより、罫線での反発が抑制され、正折りする際には意図した罫線通りに折れ易くなる。
[トレイ100の製造方法]
【0045】
ここで、トレイ100の製造方法を説明する。まず型に原紙をセットし、型抜きを行う。この際、折り目部分にはそれぞれハーフカットを形成する。ここで、平坦面22を構成する2本の折り目である第二辺2と第三辺3の間は、幅5mm以下としている。
【0046】
次にハーフカットを形成した紙製のシートを、製函機で製函する。ここで、トレイ100を製函する詳細を、
図4、
図10~
図14を参照して説明する。
図4の展開図において、各壁部20の、第二辺2と第三辺3を、
図6の断面図に示すようにそれぞれ山折りにして、平坦面22と外面部23を形成する。また、第一辺1を谷折りにして、底部10の周囲の内面部21を直立させる。一方で、隣接する壁部20の間で、折り部30を折り込む。具体的には、第四辺4と第五辺5をそれぞれ山折りとし、第六辺6を谷折りとする。
【0047】
ここで、4つの壁部20の内、説明のため正面側の壁部20a(
図4において底部10の下部)について第一辺1のみを谷折りし、左右の壁部20b、20cについては第二辺2と第三辺3をそれぞれ山折りにした状態を、
図10の斜視図に示す。正面側の内面部21の背面側には、両側にそれぞれ折り部30が折られている。
図10の例では、折り部30を見易くするため、左右の壁部20b、20cの外面部23に設けられたフラップ部24を、意図的に第七辺7、第八辺8で谷折りして開いた状態としている。
図10の正面側の壁部20aに対し、左右の壁部20b、20cを近接させる。
【0048】
そして
図11に示すように、左右の壁部20b、20cの、平坦面22の端縁がそれぞれ、正面側の壁部20aの平坦面22の両側下にそれぞれ形成した溝54に入り込むように当接される。この状態で、左右の壁部20b、20cの角度が決まる。そして、正面側の壁部20aの左右の折り部30を、それぞれ内面部21の背面に接するようにそれぞれ折り込む。さらに
図12の斜視図に示すように、左右の壁部20b、20cに設けたフラップ部24を、それぞれ折り部30に重なるように山折りに折り込む。この状態で
図13に示すように、正面側の壁部20aの外面部23を、平坦面22を介して山折りに折り返し、内面部21の背面側に重ねる。この状態で、折り部30やフラップ部24、外面部23を、内面部21に固定する。固定には、糊や接着剤、両面テープやセロハンテープ等の既知の固定具が適宜利用できる。このようにして、
図3の斜視図に示すようなトレイ100が組み立てられる。
【0049】
このように折り部30にフラップ部24を重ねることで、折り部30をフラップ部24で隠して、仮に外面部23が剥がれたとしても目立たなくできる。なお、
図13の例では、壁部20の内、図において正面側の壁部20aの、内面部21に折り部30を固定している。ただ本開示はこの構成に限られず、折り部30を、正面側の壁部20aでなく、左右の壁部20b、20cの内面部21に固定してもよい。
【0050】
さらに、折り部30を固定する側の壁部(
図13等では正面側の壁部20a)は、内面部21と外面部23の間に折り部30やフラップ部24を挟む分、壁部20の厚さが他の壁部(
図13等の例では左右の壁部20b、20c)よりも厚くなる。このような厚さの相違を考慮して、壁部20を傾斜させる角度を、各壁部20で一定とせず、正面側と側面側で異ならせてもよい。
図4の展開図に示す例では、底部10から垂直姿勢に折り曲げる正面側の壁部20aの角度θ2を、97°としている。一方、左右の壁部20b、20cの角度θ1を、95°としている。このように、折り部30やフラップ部24を重ねた壁部20aの角度を、他の壁部20b、20cよりも大きくしたことで、トレイ100の組み立てに際して無理が生じないように組みやすくできる。すなわち、折り曲げた際の紙の厚み分から生じる相違を、異なる角度で吸収している。この角度の相違によって、製函機を通した製函を可能とし、また収納容器のスタッキングも可能としている。
[実施形態2]
【0051】
図3、
図6等に示した実施形態1に係るトレイ100では、外面部23を内面部21よりも短く形成している。特に
図1や
図2に示すように、トレイ100を収納容器1000に詰めて用いる態様においては、トレイ100の外周部分は表出しないため、見栄えをそれ程気にしなくて済む。このような場合には、外面部23を短くして、材料コストを低減できる。
【0052】
ただ、トレイ同士の間隔が開いていて、トレイの周囲が視認できる場合等、外観を気にする用途においては、外面部23を内面部21と同程度に延長してもよい。このような例を実施形態2に係るトレイ200として、
図14の断面図に示す。このように外面部23Bをトレイ200の底部10まで延長することで、トレイ200の側面を表面を加工した外面部23Bで覆って、見栄えを向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示の紙製容器及びその製造方法は、弁当箱やおせち料理の重箱、菓子箱等に用いる、小分けするための食品用小鉢として好適に利用できる。
【0054】
またプラスチックトレーに代えて天然由来の紙製の小鉢やトレイを活用することで、従来の石油由来のプラスチックの使用量を低減させ、またプラスチックの投棄による土壌、海洋の汚染を抑制して環境負荷を低減できる結果、2015年9月の国連サミットで採択された国際目標SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられた17のゴール及び169のターゲットの内、
・「8.働きがいも経済成長も」、「8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。」
・「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。」、
・「11.住み続けられるまちづくりを」、「11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。」、
・「12.つくる責任 つかう責任」、「12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。」、「12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」などに資する技術である。
【符号の説明】
【0055】
1000…収納容器
100、200…トレイ
1…第一辺
2…第二辺
3…第三辺
4…第四辺
5…第五辺
6…第六辺
7…第七辺
8…第八辺
10…底部
20…壁部
21…内面部
22…平坦面
23、23B…外面部
24…フラップ部
25…凹部
30…折り部
50…型
51…第一板
52…第二板
53…トムソン刃
54…溝
LD…蓋
ST…紙製シート;ST2…型抜きされた紙製シート