IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 環境計測株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-局舎 図1
  • 特開-局舎 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024648
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】局舎
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
E04H1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128914
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】523301695
【氏名又は名称】環境計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 佳孝
(57)【要約】
【課題】調湿効果があり、製造時に二酸化炭素を排出することがなく、地元業者であっても簡単に設置でき、また、マテリアル、サーマルリサイクルが可能な局舎を提供する。
【解決手段】地面に設けられる基礎部2と、当該基礎部2に固定される床面部3と、当該床面部3から起立する壁面部4と、当該壁面部4の上方を覆う屋根部6と、前記壁面部4に設けられ、室内空間に入退室するための扉部5と、を備え、当該床面部3、壁面部4、屋根部6で囲まれた室内空間に観測用機器8を設置するようにした局舎1において、前記床面部3、壁面部4、扉部5、屋根部6の少なくとも一つを木材で構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に設けられる基礎部と、
当該基礎部に固定される床面部と、
当該床面部から起立する壁面部と、
当該壁面部の上方を覆う屋根部と、
前記壁面部に設けられ、室内空間に入退室するための扉部と、
を備え、
当該床面部、壁面部、屋根部で囲まれた室内空間に観測用機器を設置するようにした局舎において、
前記床面部、壁面部、屋根部、扉部の少なくとも一つを木材で構成するようにしたことを特徴とする局舎。
【請求項2】
前記床面部、壁面部、屋根部、扉部が、断熱層を有する木質パネルで構成されるものである請求項1に記載の局舎。
【請求項3】
前記屋根部が、壁面部から延出した軒部を有するものであり、
当該軒部に日除けシートを吊り下げるための吊り下げ部を有するものである請求項1に記載の局舎
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中の汚染物質や水質、気象、水象などを観測する観測用機器を収容する局舎の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、大気中の汚染物質などを観測する場合、局舎と呼ばれる建物の中に観測用機器を設置し、そこで、環境中の窒素酸化物やPM2.5などの汚染物質や気象、水象などが観測される。
【0003】
ところで、このような局舎は、所定の観測地域に設置された金属製のプレハブの室内空間に、複数の観測機器を設置するとともに、そこから壁面や天井面などを介して空気取込口を延出させ、その空気取込口から外気を取り込んで汚染物質などの観測を行うようにしている(特許文献1)。しかしながら、金属製のプレハブでは、調湿効果がないため、水滴などによって観測用機器に悪影響を及ぼす可能性がある。このため、空調設備を用いて湿度などを調整しなければならないが、電気コストが高くなってしまうといった問題があった。
【0004】
また、このような金属製のプレハブは、工場で製造された部品を現場に搬送して組み立てるようにしているが、このような方法では、局舎を設置する地元の業者に対して利益をもたらせることができない。
【0005】
さらに、このような金属製のプレハブは、製造時に多量の二酸化炭素を排出することになり、また、廃棄時には、金属板の間にポリウレタンなどの断熱性の樹脂が含まれているため、産業廃棄物として処分しなければならないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-188924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するために、調湿効果があり、製造時に二酸化炭素を排出することがなく、地元業者であっても簡単に設置でき、また、マテリアル、サーマルリサイクルが可能な局舎を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、地面に設けられる基礎部と、当該基礎部に固定される床面部と、当該床面部から起立する壁面部と、当該壁面部の上方を覆う屋根部と、前記壁面部に設けられ、室内空間に入退室を許容するための扉部と、を備え、当該床面部、壁面部、屋根部で囲まれた室内空間に観測用機器を設置するようにした局舎において、前記床面部、壁面部、屋根部、扉部の少なくとも一つを木材で構成するようにしたものである。
【0009】
このように構成すれば、木材が有する吸湿性によって、内部空間の湿度をある程度一定に保つことができ、電気コストを大幅に低減することができるようになる。また、製造時に二酸化炭素の排出が少なくなり、さらに、ポリウレタンなどの断熱性樹脂を用いなくても製造することができるため、局舎を解体してマテリアル、サーマルリサイクルすることも可能となる。また、地元の木材を使用することにより、地元業者であっても低コストに局舎を組み立てることができるようになる。
【0010】
また、このような発明において、前記床面部、壁面部、屋根部、扉部を、断熱層を備えた木質パネルで構成する。
【0011】
このように断熱層を有する木質パネルで構成すれば、断熱と調湿の効果を高めることができ、電気コストをより削減することができるようになる。
【0012】
さらに、前記屋根部に、壁面部から延出した軒部を設けるとともに、当該軒部に日除けシートを吊り下げるための吊り下げ部を設けるようにする。
【0013】
このように構成すれば、寒冷紗などの日除けシートを吊り下げることによって、壁面に直射日光が当たらないようにすることができ、より、内部温度を下げることができるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地面に設けられる基礎部と、当該基礎部に固定される床面部と、当該床面部から起立する壁面部と、当該壁面部の上方を覆う屋根部と、前記壁面部に設けられ、室内空間に入退室するための扉部と、を備え、当該床面部、壁面部、屋根部で囲まれた室内空間に観測用機器を設置するようにした局舎において、前記床面部、壁面部、屋根部、扉部の少なくとも一つを木材で構成するようにしたので、木材が有する吸湿性によって、内部空間の湿度をある程度一定に保つことができ、電気コストを大幅に低減することができるようになる。また、製造時に二酸化炭素の排出が少なくなり、さらに、ポリウレタンなどの断熱性樹脂を用いなくても製造することができるため、局舎を解体してマテリアル、サーマルリサイクルすることも可能となる。また、地元の木材を使用することにより、地元業者であっても低コストに局舎を組み立てることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態における局舎の正面概略図
図2】同形態における側面概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
この実施の形態における局舎1は、大気中の汚染物質や水質、気象、水象などを観測するための観測用機器8を収容できるようにしたものであって、図1図2に示すように、地面に設けられる基礎部2と、当該基礎部2に固定される床面部3と、当該床面部3から起立する壁面部4と、当該壁面部4の上方を覆う屋根部6と、前記壁面部4に設けられ、室内空間に入退室するための扉部5と、を備え、前記床面部3、壁面部4、扉部5、屋根部6の少なくとも一つを木材で構成するようにしたものである。そして、このように木材で構成することによって、金属製の局舎と比べて、内部空間の湿度を一定に保てるようにするとともに、設置地域の木材などを使用できるようにすることによって、地元業者による施工により地域活性を図ることができるようにしたものである。以下、本実施の形態における局舎1について詳細に説明する。
【0018】
まず、内部に収容される観測用機器8は、大気中の窒素酸化物やPM2.5などの微小粒子状物質、水質、雨量、水位、地震波、環境放射能などの気象や水象を観測できるようにしたもので、大気中の汚染物質を観測する場合は、局舎1の外部に延出するように設けられた空気取込口81から外気を吸引し、そこに含まれる汚染物質を観測できるように構成される。これらの、観測用機器8は、コンセント9を介して外部電源で駆動され、あるいは、災害時には、補助用電源によっても駆動されるようになっている。
【0019】
このような観測用機器8を収容する局舎1は、地面に設けられる基礎部2と、当該基礎部2に固定される床面部3と、当該床面部3から起立する壁面部4と、当該壁面部4の上方を覆う屋根部6と、前記壁面部4に設けられ、室内空間に入退室するための扉部5とを備えて構成される。
【0020】
このうち、基礎部2は、地面にコンクリートなどを流し込んで設けられるものであって、布基礎やベタ基礎などで施工される。このうち布基礎で施工する場合は、逆T字状の鉄筋を地面から突出させ、これにコンクリートを流し込んで、コンクリートの厚みを抑えられるようにしたものである。一方、ベタ基礎は、地面にコンクリートを厚く流し込んで設けられるもので、湿気を建物に伝えにくくすることができ、また、シロアリによる被害を防げるようにしたものである。この実施の形態では、局舎1として木材を使用するようにしているため、木材の腐食を防止するとともに、シロアリの被害を軽減するために、ベタ基礎によって基礎を構築するようにしている。
【0021】
この基礎に設けられる床面部3は、観測用機器8の荷重に耐えられるような強度を有するように設けられる。この床面部3については、直射日光も当たらず、内部の温度上昇の原因に直接影響を与えないため、金属製パネルなどで構成することもできるが、ここでは、木材を用いて構成する。このとき、木材で床面部3を構成する場合、地面からの湿度によって腐食を生じてしまう可能性があるため、好ましくは、通気性をよくするために基礎部2に通気部21を設けておくとともに、床面部3に床面開口部31を設けるようにしてもよい。そして、床面開口部31を開けることによって、通気性を良くして、内部空間における温度上昇を低減させるようにしておく。
【0022】
一方、壁面部4は、この床面部3から起立して側面を囲うように設けられるものであって、ここでは、内部に断熱層を有するツーバイフォーの木材で構成されたパネルで設けられる。このパネルは、横2インチ、縦4インチの木材を組んで枠組みを作り、その枠組に面材を接合して構成されるものであって、その内部に木質繊維などの断熱材を封入して設けられる。そして、このパネルをそれぞれ併設させることによって、断熱層を有する壁面部4を構成するようにしている。そして、このように構成された壁面部4に開口部41を設け、その開口部41を開けることによって空気を循環させて、内部温度の上昇を抑えられるようにしている。
【0023】
なお、この壁面部4には、人が内部空間に出入りできるようにした扉部5が設けられる。この扉部5については、同様に木材で構成されたパネルで構成してもよく、あるいは、既製品の金属製の扉で構成するようにしてもよい。
【0024】
また、この壁面部4の上方に設けられる屋根部6は、天井面62や屋根を構成するものであって、奥側に傾斜させた片流れ屋根や、左右に傾斜させた切妻屋根などによって構成されるが、ここでは、奥側に傾斜させた片流れ屋根で構成する。そして、この片流れ屋根などで構成された屋根部6の下方側に水平な天井面62を設け、屋根部6と天井面62との間に隙間を設けて、屋根部6に当たる直射日光による熱を壁面通気口64から逃がし、室内空間の温度が高くならないようにしている。また、このように屋根部6を構成する場合、壁面部4と同様に、木材で構成しているが、その木材の表面側にトタンや瓦などで覆って腐食を防止できるようにしてもよい。また、この屋根部6の外縁は、壁面部4から外側に大きく延出するように設けられ、これによって軒部61を形成するようにしている。そして、その軒部61の下面に、日除けシート7を吊り下げるためのフックなどの係止部63を設けておき、この係止部63に日除けシート7を着脱可能に取り付けられるようにしている。なお、この日除けシート7としては、農業用の寒冷紗や、遮光ネットなどを用いることができ、さらに、その下方部分については、ブロック体71などに固定して、風などで振れないようにしている。
【0025】
そして、このように構成された局舎1の壁面部4や屋根部6には、観測用機器8から延出された空気取込口81を通すための穴部42が設けられる。この穴部42は、円形ドリルなどによって壁面部4に円形の穴を形成し、そこに空気取込口81を通して、周囲をシリコンなどで封止するようにしている。
【0026】
また、この局舎1の壁面部4には、外部電源を供給するためのコンセント9が設けられる。このコンセント9は、外部のAC電源を供給するもので、内部の観測用機器8やエアコンなどを可動させるために設けられる。
【0027】
次に、このように構成された局舎1の製造方法について説明する。
【0028】
まず、局舎1を設置する場所の地盤を調査し、軟弱地である場合は、基礎杭などを設けることによって基礎となる地盤を固める。
【0029】
そして、このように地盤を固めた後、局舎1の基礎のための枠組みをした上で、その中にコンクリートを流し込んで、ベタ基礎による基礎部2を構成する。このベタ基礎を構成する際、あらかじめ、床下に空気を通すための通気部21を設けておく。
【0030】
そして、このようにベタ基礎を構成した後、その上に壁面部4を立設させるとともに、その壁面部4で囲まれた内側に床面部3を設ける。
【0031】
次に、このように壁面部4を設けた後、その上に屋根部6を形成するとともに、屋根部6の下方側に天井面62を設け、屋根部6と天井面62との間に空間を形成しておく。
【0032】
また、このように壁面部4を設ける場合、出入口となる部分に扉部5を取り付け、室内空間への観測用機器8の搬入などを行えるようにする。
【0033】
そして、このように局舎1を設けた後、内部に観測用機器8や空調設備などを搬入し、設置や電源への接続を行う。このとき、観測用機器8から空気取込口81を延出させる場合、壁面部4に円形ドリルを用いて穴部42を開け、空気取込口81を延出させる。
【0034】
そして、このように局舎1を設けた後、夏季などのように直射日光が当たるような場合は、屋根部6の軒部61に設けられたフックなどの係止部63に日除けシート7を取り付け、直射日光が壁面部4に当たらないようにする。
【0035】
このように上記実施の形態によれば、地面に設けられる基礎部2と、当該基礎部2に固定される床面部3と、当該床面部3から起立する壁面部4と、当該壁面部4の上方を覆う屋根部6と、前記壁面部4に設けられ、室内空間に入退室するための扉部5と、を備え、当該床面部3、壁面部4、屋根部6で囲まれた室内空間に観測用機器8を設置するようにした局舎1において、前記床面部3、壁面部4、屋根部6、扉部5の少なくとも一つを木材で構成するようにしたので、木材が有する吸湿性によって、内部空間の湿度をある程度一定に保つことができ、大幅に電気コストを低減させることができるようになる。また、製造時に二酸化炭素の排出が少なくなり、さらに、ポリウレタンなどの断熱性樹脂を用いなくても製造することができるため、局舎を解体してマテリアル、サーマルリサイクルすることも可能となる。また、地元の木材を使用することにより、地元業者であっても低コストに局舎を組み立てることができるようになる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、エアコンなどの空調設備を設けるようにしたが、壁面部4の開口部41や床面開口部31の開閉などのよって温度調整が可能な場合は、エアコンなどの空調設備を設けないようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、ツーバイフォーの木質パネルによって局舎1を設けるようにしたが、軸組工法によって局舎1を構成するようにしてもよい。
【0039】
さらに、上記実施の形態では、観測用機器8で大気中の窒素酸化物やPM2.5などの微小粒子状物質、水質、雨量、水位、地震波、環境放射能などの気象や水象などを観測するようにしたが、これらのデータを局舎1内に設置された無線装置からデータを送信するようにしてもよい。特に、本実施の形態のように、木材で局舎1を構成した場合は、金属製の局舎と比べて電波の減衰が少なくなり、安定した通信が可能になる。
【0040】
また、上記実施の形態では、壁面部4に開口部41を設けて開閉させるようにしたが、これを換気扇で構成するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、観測用機器8から空気取込口81を外側上方に延出させるようにしたが、水質調査などを行う場合は、水取込口を水中に延出させるようにするとよい。
【符号の説明】
【0042】
1・・・局舎
2・・・基礎部
3・・・床面部
4・・・壁面部
5・・・扉部
6・・・屋根部
7・・・日除けシート
8・・・観測用機器
9・・・コンセント
図1
図2