(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024996
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】劣化予測装置、劣化予測装置の制御方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20250214BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129419
(22)【出願日】2023-08-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)集会による公開 ・開催場所 青森市企業局(青森県青森市奥野1丁目2-1) 開催日 1.令和4年12月9日 2.令和5年1月19日 3.令和5年1月20日 (2)販売による公開 ・販売日 令和4年12月21日 販売場所 東京センチュリー株式会社(東京都千代田区神田練塀町3番地) 公開者 株式会社管総研 ・販売日 令和5年3月31日 販売場所 茨城県南水道企業団(茨城県龍ケ崎市長山1-5-2) 公開者 株式会社管総研
(71)【出願人】
【識別番号】502167083
【氏名又は名称】株式会社管総研
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北出 信
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】対象機器の劣化予測を簡易に行う。
【解決手段】劣化予測装置(3)は、機器リスト(D21)を取得する取得部(311)と、設問データ(D31)を機器リストに含まれる機器に対応付ける対応付け部(312)と、対象機器に対応する設問データを読み出す読出部(313)と、選択された評価区分に対応付けられた判定点に基づき、対象機器の評価点を算出する算出部(314)と、対象機器の評価点に基づき、対象機器の劣化予測を行う予測部(315)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
劣化予測装置であって、
施設に配置された機器の一覧を示す機器リストを取得する取得部と、
少なくとも1つの機器を含む設備ごとに予め準備された、設備が安全に機能するかどうかを評価するための複数の設問を含む設問データを、前記機器リストに含まれる機器に対応付ける対応付け部と、
前記機器の安全性の評価指標である評価点の算出対象である対象機器の選択操作を受け付けることにより、前記対象機器に対応する設問データを読み出す読出部と、
前記対象機器についての前記複数の設問のそれぞれに対して段階的に設定された複数の評価区分のうちの1の評価区分の選択操作を受け付けることにより、選択された評価区分に対応付けられた判定点に基づき、前記対象機器の評価点を算出する算出部と、
前記対象機器の評価点に基づき、前記対象機器の劣化予測を行う予測部と、を備える、劣化予測装置。
【請求項2】
前記複数の設問は、複数の評価項目に分類されており、
前記算出部は、前記評価項目ごとに前記対象機器の評価点を算出する、請求項1に記載の劣化予測装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記評価項目ごとに算出された前記対象機器の評価点に基づき、前記対象機器の劣化予測を行う、請求項2に記載の劣化予測装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記評価項目ごとに算出された前記対象機器の評価点の合計に基づき、前記対象機器の劣化予測を行う、請求項2に記載の劣化予測装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記対象機器の評価点を複数回算出しており、
前記予測部は、前記算出部が算出した複数の前記対象機器の評価点に対して近似曲線を設定することにより、前記対象機器の劣化予測を行う、請求項1に記載の劣化予測装置。
【請求項6】
劣化予測装置の制御方法であって、
施設に配置された機器の一覧を示す機器リストを取得する取得ステップと、
少なくとも1つの機器を含む設備ごとに予め準備された、設備が安全に機能するかどうかを評価するための複数の設問を含む設問データを、前記機器リストに含まれる機器に対応付ける対応付けステップと、
前記機器の安全性の評価指標である評価点の算出対象である対象機器の選択操作を受け付けることにより、前記対象機器に対応する設問データを読み出す読出ステップと、
前記対象機器についての前記複数の設問のそれぞれに対して段階的に設定された複数の評価区分のうちの1の評価区分の選択操作を受け付けることにより、選択された評価区分に対応付けられた判定点に基づき、前記対象機器の評価点を算出する算出ステップと、
前記対象機器の評価点に基づき、前記対象機器の劣化予測を行う予測ステップと、を含む、制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載の劣化予測装置における各部としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、劣化予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の部品によって構成される資産が複数組み合わされて構成される施設についての管理および更新の計画を策定するシステムが開示されている。このシステムでは、点検者による施設の点検結果を、部品の劣化の度合いを表す健全度に変換(数値化)し、部品ごとにかつシナリオごとに、健全度低下関数に従って健全度を予測する。一例として、前年度の健全度から所定値を減算することにより、健全度が予測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、例えば部品「インペラ」については、健全度算出関数に従って、入力された摩耗の測定値に応じて項目健全度が算出される。また、経過時間の項目健全度についても、所定の式に従って算出される。このように、特許文献1のシステムでは、項目健全度についての算出処理が行われる。
【0005】
本開示の一態様は、対象機器の劣化予測を簡易に行うことが可能な劣化予測装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様1に係る劣化予測装置は、施設に配置された機器の一覧を示す機器リストを取得する取得部と、少なくとも1つの機器を含む設備ごとに予め準備された、設備が安全に機能するかどうかを評価するための複数の設問を含む設問データを、前記機器リストに含まれる機器に対応付ける対応付け部と、前記機器の安全性の評価指標である評価点の算出対象である対象機器の選択操作を受け付けることにより、前記対象機器に対応する設問データを読み出す読出部と、前記対象機器についての前記複数の設問のそれぞれに対して段階的に設定された複数の評価区分のうちの1の評価区分の選択操作を受け付けることにより、選択された評価区分に対応付けられた判定点に基づき、前記対象機器の評価点を算出する算出部と、前記対象機器の評価点に基づき、前記対象機器の劣化予測を行う予測部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、劣化予測装置は、機器リストを取得し、機器ごとに設問データを対応付ける。そのため、劣化予測装置は、設問が対応付けられた設備と、機器リストに含まれる機器とが異なる場合であっても、機器に対応する評価区分の選択操作の受け付けが可能となる。
【0008】
また、劣化予測装置は、選択された1の評価区分に対応する判定点に基づき評価点を算出する。そのため、劣化予測装置は、簡易な処理により対象機器の劣化予測を行うことができる。
【0009】
従って、劣化予測装置は、評価区分の選択操作を受け付けるだけで、処理負荷を低減した状態で対象機器の劣化予測を行うことができる。
【0010】
本発明の態様2に係る劣化予測装置は、態様1の劣化予測装置において、前記複数の設問は、複数の評価項目に分類されており、前記算出部は、前記評価項目ごとに前記対象機器の評価点を算出する。
【0011】
上記構成によれば、劣化予測装置は、複数の設問を分類した評価項目ごとの評価点を算出することにより、評価項目ごとの劣化予測と、全ての評価項目を考慮した劣化予測との両方を行うことが可能となる。
【0012】
本発明の態様3に係る劣化予測装置は、態様2の劣化予測装置において、前記予測部は、前記評価項目ごとに算出された前記対象機器の評価点に基づき、前記対象機器の劣化予測を行う。
【0013】
上記構成によれば、ユーザは、評価項目ごとの機器の劣化予測を把握することが可能となる。従って、ユーザは、ある評価項目の劣化予測の結果が対象設備の更新(交換)を要すると判断できる場合、その他の評価項目の劣化予測の結果によらず、対象設備の更新を行うことが可能となる。
【0014】
本発明の態様4に係る劣化予測装置は、態様2または3の劣化予測装置において、前記予測部は、前記評価項目ごとに算出された前記対象機器の評価点の合計に基づき、前記対象機器の劣化予測を行う。
【0015】
上記構成によれば、ユーザは、全ての設問に対する評価区分の選択を考慮した対象製品の劣化の推移を把握することが可能となる。
【0016】
本発明の態様5に係る劣化予測装置は、態様1から4の何れかの劣化予測装置において、前記算出部は、前記対象機器の評価点を複数回算出しており、前記予測部は、前記算出部が算出した複数の前記対象機器の評価点に対して近似曲線を設定することにより、前記対象機器の劣化予測を行う。
【0017】
上記構成によれば、劣化予測装置は、より正確な劣化予測を行うことができる。
【0018】
本発明の態様6に係る劣化予測装置の制御方法は、施設に配置された機器の一覧を示す機器リストを取得する取得ステップと、少なくとも1つの機器を含む設備ごとに予め準備された、設備が安全に機能するかどうかを評価するための複数の設問を含む設問データを、前記機器リストに含まれる機器に対応付ける対応付けステップと、前記機器の安全性の評価指標である評価点の算出対象である対象機器の選択操作を受け付けることにより、前記対象機器に対応する設問データを読み出す読出ステップと、前記対象機器についての前記複数の設問のそれぞれに対して段階的に設定された複数の評価区分のうちの1の評価区分の選択操作を受け付けることにより、選択された評価区分に対応付けられた判定点に基づき、前記対象機器の評価点を算出する算出ステップと、前記対象機器の評価点に基づき、前記対象機器の劣化予測を行う予測ステップと、を含む。
【0019】
上記劣化予測装置の制御方法によれば、機器リストを取得し、機器ごとに設問データを対応付ける。そのため、上記制御方法では、設問が対応付けられた設備と、機器リストに含まれる機器とが異なる場合であっても、機器に対応する評価区分の選択操作の受け付けが可能となる。
【0020】
また、上記制御方法では、選択された1の評価区分に対応する判定点に基づき評価点を算出する。そのため、上記制御方法では、簡易な処理により対象機器の劣化予測を行うことができる。
【0021】
従って、上記制御方法では、評価区分の選択操作を受け付けるだけで、処理負荷を低減した状態で対象機器の劣化予測を行うことができる。
【0022】
本発明の各態様に係る劣化予測装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記劣化予測装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記劣化予測装置をコンピュータにて実現させる劣化予測装置のプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係る劣化予測装置およびその制御方法によれば、評価区分の選択操作を受け付けるだけで、処理負荷を低減した状態で対象機器の劣化予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る劣化予測システムの概略的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】設問データにおいて使用されている設備の名称の一例を示す表である。
【
図3】表示装置が表示するマスタデータの一例を示す図である。
【
図4】表示装置が表示する機器データ一覧画面の一例を示す図である。
【
図5】表示装置が表示するカルテ入力画面の一例を示す図である。
【
図8】対象機器について、算出部が評価項目ごとに算出した複数の評価点と、当該複数の評価点に基づく劣化予測の結果との一例を示す表およびグラフである。
【
図9】対象機器について、算出部が評価項目ごとに算出した複数の評価点と、当該複数の評価点に基づく劣化予測の結果との一例を示すグラフである。
【
図10】制御部による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔劣化予測システム〕
図1は、劣化予測システム1の概略的な構成を示す機能ブロック図である。劣化予測システム1は、施設に配置された機器の機能を評価するシステムである。具体的には、劣化予測システム1は、施設に配置された機器の劣化を予測するシステムである。
【0026】
施設としては、例えば、水道施設が挙げられる。水道施設には、例えば、取水施設、浄水施設、および、送水配水施設等が含まれる。機器としては、例えば、送水ポンプ、発電設備、電動弁、取水流量計、および、次亜注入機等が挙げられる。その他、機器には、例えば、ポンプ室、沈殿池、配水池、管理棟、減圧弁室、建物等の構造物が含まれてよい。
【0027】
図1に示すように、劣化予測システム1は、例えば、管理装置2、劣化予測装置3、操作装置4、および、表示装置5を備える。
【0028】
管理装置2は、施設に配置された機器の一覧を示す機器リストD21を管理する装置である。機器リストD21には、例えば、機器の名称、機器の種類、製造年月日、設置年月日(設置時期)、および、施設の名称等のデータが含まれる。
【0029】
機器の種類としては、例えば、機器の機能および構造物の種類を示す第1種類データを含んでいてよい。機器の機能としては、例えば、ポンプ、弁、流量計、および、薬品注入機等が挙げられる。構造物の種類としては、例えば、構造物を建造した事業の種類(土木事業による建築物かそれ以外の建物か等)等が挙げられる。また、機器の種類としては、例えば、施設用建物、事務所用建物等、機器が設置される施設の用途を示す第2種類データを含んでいてよい。
図3および
図4では、第1種類データが「機器ファミリ」と示され、第2種類データが「機器タイプ」と示されている。
【0030】
劣化予測装置3は、施設に配置された機器の機能を評価する装置である。具体的には、劣化予測装置3は、施設に配置された機器の劣化を予測する装置である。劣化予測装置3の詳細については後述する。
【0031】
操作装置4は、ユーザによる各種入力操作を受け付ける装置である。劣化予測装置3は、操作装置4が受け付けた各種入力操作に従って、種々の処理を行ってもよい。表示装置5は、各種情報を表示する装置である。表示装置5は、劣化予測装置3による種々の処理に基づく出力結果を表示してもよい。
【0032】
操作装置4および表示装置5は、劣化予測装置3に備えられていてもよい。また、操作装置4および表示装置5は、タッチパネル等、一体型の装置として実現されてもよい。表示装置5は、劣化予測装置3の出力結果をユーザに提示できる装置であればよい。例えば、劣化予測システム1は、表示装置5の代わりに、劣化予測装置3の出力結果を印刷する印刷装置を備えていてもよい。この場合、ユーザは、劣化予測装置3の出力結果を、表示画面に代えて、印刷装置が印刷した印刷物により認識できる。
【0033】
〔劣化予測装置〕
図1に示すように、劣化予測装置3は、例えば、制御部31および記憶部32を備えている。制御部31は、劣化予測装置3の各部を統括的に制御する。制御部31は、例えば、取得部311、対応付け部312、読出部313、算出部314、予測部315、および、出力部316を備える。
【0034】
取得部311は、機器リストD21を取得する。本実施形態では、取得部311は、劣化予測装置3の外部装置である管理装置2から、機器リストD21を取得する。
【0035】
対応付け部312は、少なくとも1つの機器を含む設備ごとに予め準備された、設備が安全に機能するかどうかを評価するための複数の設問を含む設問データD31を、機器リストD21に含まれる機器に対応付ける。
【0036】
管理装置2が管理する機器リストD21に含まれる機器の名称と、設問データD31に含まれる複数の設問が対応付けられた機器の名称とは異なっている場合がある。すなわち、同じ施設の同じ機器に対して、機器リストD21を作成するときに付与された機器の名称と、複数の設問が作成されたときに付与された機器の名称とが異なっている場合がある。
【0037】
これは、機器リストD21の作成者と、設問データD31の作成者とが異なることに起因する。例えば、機器リストD21は、施設の事業者、または、当該事業者から委託を受けた受託者が作成する。この事業者または受託者が劣化予測システム1を利用するユーザであってよい。一方、設問データD31は、例えば、複数の事業者を管理する管理団体(例:厚生労働省)が作成する。従って、劣化予測装置3によって機器の劣化予測を行う場合、機器リストD21に含まれる機器の名称に、設問データD31において使用されている機器の名称を対応付けることにより、機器リストD21に含まれる機器に対して設問を対応付ける必要がある。
【0038】
但し、設問データD31には、上述した事業者または受託者が設定した設問が含まれていてもよい。
【0039】
本明細書では、機器リストD21に含まれる「機器」と便宜上区別するために、設問データD31において使用されている機器を「設備」と称する。
図2は、設問データD31において使用されている設備の名称の一例を示す表である。
【0040】
設問データD31における「設備」は、機器リストD21に含まれる「機器」の少なくとも1つを包含していればよい。すなわち、設問データD31における設備は、機器リストD21に含まれる機器と同一の機器であってもよいし、機器リストD21に含まれる複数の機器の総称であってもよい。また、設問データD31における設備は、機器リストD21に含まれる複数の機器により構成される設備であってもよい。また、機器リストD21に含まれる機器は、施設に配置された機器だけでなく、施設に配置された機器を構成する部品(施設に配置された部品)を指してもよいし、施設に配置された複数の機器により構成される設備(施設に配置された設備)を指してもよい。
【0041】
対応付け部312は、機器リストD21に含まれる機器と、設問データD31において使用されている設備とを対応付けたマスタデータD32を作成する。対応付け部312が作成したマスタデータD32は、記憶部32に記憶される。
図3は、表示装置5が表示するマスタデータD32の一例(マスタデータD32を表示する画面(画像)の一例)を示す図である。
【0042】
本実施形態では、対応付け部312は、
図3に示すように、機器リストD21に含まれる第1種類データおよび第2種類データを、機器ファミリ、機器ファミリ名称、機器タイプおよび機器タイプ名称として反映させる。操作装置4を介して「機器分類」に示される複数の番号のうち1の番号を選択する選択操作を受け付けると、対応付け部312は、
図3に示すように、機器ファミリおよび機器タイプに、当該番号に対応付けられた施設および設備の名称(
図2に示される情報)を対応付ける。このようにして、対応付け部312は、機器リストD21に含まれる全ての機器ファミリおよび機器タイプに、施設および設備の名称を対応付けることにより、機器と設備とを対応付ける。
【0043】
対応付け部312は、機器と設備を対応付けたマスタデータD32を作成することにより、機器と、機器に対応する設問とを対応付けることができる。対応付け部312は、この対応付けに基づき、機器ごとにカルテシートD33を作成する。カルテシートD33は、機器リストD21に含まれる機器に対する調査結果を反映可能なシートである。
【0044】
カルテシートD33には、例えば、機器リストD21に含まれる機器に関する各種データと、当該機器に対応する設問とが対応付けられたデータが含まれる。評価点が算出された機器については、カルテシートD33に、設問に対する回答結果、回答結果に基づく評価点、および、評価点の合計(総合点)が反映される。評価点は、機器の安全性の評価指標の一例である。その他、カルテシートD33には、機器の調査を行った担当者(設問に回答する担当者)、調査年月日、および、機器を設置してからの経過年数の情報が入力されてよい。対応付け部312が「(調査年月日)-(設置年月日)」を算出した結果が、経過年数として、カルテシートD33に反映されてもよい。
【0045】
図4は、表示装置5が表示する機器データ一覧画面の一例を示す図である。機器データ一覧画面は、機器に関する各種データの一覧を表示する画面であり、カルテシートD33に入力されている各種情報を機器ごとに表示する画面である。
図4に示すように、カルテシートD33に入力された情報に基づき、出力部316は、表示装置5に、各種データとして、例えば、機器リストD21から取得した情報、直近の調査年月日、直近の評価点、および、評価点を算出した評価回数等を表示させることができる。
【0046】
読出部313は、評価点の算出対象である対象機器の選択操作を受け付けることにより、対象機器に対応する設問データD31を読み出す。本実施形態では、
図4の機器データ一覧画面において、操作装置4を介して、1つの機器が選択された状態においてカルテ入力ボタンB11に対する入力操作を受け付けると、読出部313は、選択された機器のカルテシートD33を記憶部32から読み出す。この選択された機器が、評価点の算出対象である対象機器となる。この読み出しにより、出力部316は、表示装置5に、対象機器に対応するカルテ入力画面を表示させることができる。カルテ入力画面は、機器に対応付けられた複数の設問を表示可能な画面である。
図5は、表示装置5が表示するカルテ入力画面の一例を示す図である。
【0047】
図4では、機器の名称「高区簡水 配水池」に対して選択操作を受け付けている例を示している。
図4では、選択された状態を網掛けにより表している。「高区簡水 配水池」は、簡易水道における高区配水池を指す。以下の説明では、「高区簡水 配水池」を「高区配水池」と称する。
図4において、「高区配水池」が選択された状態でカルテ入力ボタンB11に対する入力操作を受け付けると、
図5に示すように、表示装置5は、「高区配水池」のカルテ入力画面を表示する。
図5の例では、評価点の算出対象である対象機器は「高区配水池」となる。
【0048】
算出部314は、対象機器についての複数の設問のそれぞれに対して段階的に設定された複数の評価区分のうちの1の評価区分の選択操作を受け付けることにより、選択された評価区分に対応付けられた判定点に基づき、対象機器の評価点を算出する。
【0049】
図6は、設問データD31の一例を示す表である。
図6は、ポンプ設備用に準備されている設問データD31の一部を示している。
図6に示すように、各設備用の設問データD31において、複数の設問のそれぞれに対して複数の評価区分が対応付けられている。本実施形態では、複数の設問のそれぞれが、複数の評価項目(分類)の何れかに対応付けられている。
【0050】
評価項目は、設備が安全に機能するかどうかを評価する項目であり、各項目において、各項目に関連する少なくとも1つの設問が設定されている。すなわち、複数の設問は、複数の評価項目に分類されている。本実施形態では、評価項目として、「水質」、「水量・水圧」、「経年劣化」、「地震・危機管理」および「維持管理」の5つが設定されている。但し、評価項目の種類は、これらに限られるものではない。
【0051】
評価区分は、設問に対して予め準備された複数の評価の内容を示すものである。本実施形態では、評価区分として、各設問に対して、5つの評価の内容が段階的に設定されている。そのうちの1つである「該当なし」は、評価点の算出対象としないことを意味する。評価区分としては、評価の高い順に、例えば、以下の4つの評価が段階的に設定されていてよい。
・機器の運転の管理において特段の問題無し。
・運転に支障が生じるほどの問題無し。
・軽度の支障を生じており機能の低下が生じる可能性有。
・機能の低下を起こすほどの支障が生じており機能の停止の可能性有。
また、
図6に示す「特別な事項」には、上述した事業者または受託者が機器の機能を評価するために設定した設問および評価区分が反映されてよい。
【0052】
図7は、評価区分と判定点との関係を示す図である。判定点は、評価点を算出するために評価区分に対して設定された点数である。
図7の例では、「該当なし」の評価区分を除き、評価区分には、評価が高い順に高い判定点が設定されている。従って、設問データD31には、各評価区分に対応付けられた判定点も含まれている。本例では、1つの設問に対して「該当なし」を除くと4つの評価区分が設定されており、高評価の評価区分から「3」、「2」、「1」および「0」の判定点が設定されている。
【0053】
図5に示すように、カルテ入力画面には、1つの設問と当該設問に対応する評価区分とが表示される。カルテ入力画面において、操作装置4を介して、1の評価区分の選択操作を受け付けると、算出部314は、当該評価区分に対応する判定点を記憶する。
図5の例では、最も評価が高い評価区分(網掛けを施した評価区分)が選択されているため、判定点「3」が表示されている。
【0054】
図5に示すように、カルテ入力画面には、送り/戻りボタンB21が設けられている。操作装置4を介して送り/戻りボタンB21に対する入力操作を受け付けるたびに、出力部316は、表示装置5に、対象機器に対応する複数の設問を1つずつ表示させることができる。
【0055】
本実施形態では、算出部314は、評価項目ごとに対象機器の評価点を算出する。本実施形態では、算出部314は、「水質」、「水量・水圧」、「経年劣化」、「地震・危機管理」および「維持管理」のそれぞれの評価項目について、対象機器の評価点を算出する。算出部314は、対象機器に対する調査が行われるたびに(対象機器に対応する各設問に対する評価区分の選択操作を受け付けた結果として)、対象機器の評価点を算出する。算出部314が算出した評価点は、機器ごとに記憶部32に記憶される。
【0056】
算出部314は、例えば、以下の評価式:
評価点=100-(3-最低判定点)×25-(M-1)×5
に従って評価点を算出する。最低判定点は、「0」、「1」および「2」の何れかの判定点である。Mは、各評価項目における最低判定点の個数である。但し、本例では、Mの最大値は5に設定されている。例えば、各評価項目において最大設問数が6である場合、最低判定点の個数が5または6の場合には、算出部314は、Mに5を入力する。最低判定点「0」の個数が5または6の場合、算出部314は、上記評価式に基づき、評価点を5点と算出する。
【0057】
算出部314は、判定点「N」の設問については、評価点の算出対象としない。また、各評価項目において、各設問に対する判定点が全て3点である場合には、算出部314は、減点無し、すなわち上記評価式においては100点として、評価点を算出する。最低判定点に「0」、「1」、「2」の何れかが含まれる場合、5点、10点、15点、…、70点、75点の何れかが、評価点として算出される。
【0058】
評価点には定性的な評価が対応付けられていてもよい。例えば、100点の評価点には「優」の評価、75~55点の評価点には「良」の評価、50点以下には「不良」の評価が対応付けられていてもよい。
【0059】
図5に示すように、出力部316は、算出部314が算出した対象機器の評価点を表示装置5に出力することにより、カルテ入力画面に対象機器の評価点を表示できる。また、出力部316は、表示装置5に、対象機器の評価点と共に定性的な評価を表示させてもよい。本実施形態では、評価項目ごとに対象機器の評価点が算出される。そのため、定性的な評価も、評価項目ごとに表示されてよい。
【0060】
予測部315は、算出部314が算出した対象機器の評価点に基づき、対象機器の劣化予測を行う。すなわち、予測部315は、劣化予測を行う前に算出された対象機器の評価点(過去の評価点)に基づき、機器の劣化傾向(評価点の推移の傾向)を予測する。本実施形態では、予測部315は、算出部314が複数回に亘って算出した対象機器の評価点に対して、近似曲線を設定することにより、対象機器の劣化予測を行う。予測部315は、複数の評価点を用いて対象機器の劣化予測を行うことより、より正確な劣化予測を行うことができる。
【0061】
予測部315は、回帰分析を行うことにより、算出部314が算出した複数の評価点に対して近似曲線を設定する。近似曲線としては、例えば、線形近似曲線および指数近似曲線等が挙げられる。予測部315は、操作装置4を介して、劣化予測を行う対象機器の選択操作と、劣化予測を行う将来の時期(例:年月日)の入力操作とを受け付けると、選択された対象機器について複数回に亘り算出された評価点を、記憶部32から読み出す。そして、予測部315は、読み出した複数の評価点に基づき、将来の時期までにどの程度評価点が低下するかを予測する。
【0062】
予測部315は、予め設定された近似曲線を用いて、読み出した複数の評価点に対するフィッティングを行う。但し、予測部315は、例えば、フィッティングの結果に応じて、フィッティングする近似曲線を変更してもよい。予測部315は、例えば、予め設定された線形近似曲線を用いてフィッティングを行った結果、決定係数(R2)が所定値よりも小さい場合には、指数近似曲線を用いてフィッティングを行ってもよい。所定値は、実験等により決定されてよい。
【0063】
予測部315は、記憶されている全ての評価点を用いて対象機器の劣化予測を行ってもよいし、一部の評価点のみを用いて対象機器の劣化予測を行ってもよい。一部の評価点のみを用いて劣化予測を行う場合、予測部315は、直近の調査から数えて、予め設定されている所定回数(例:10回)分の調査において算出された評価点を用いて、対象機器の劣化予測を行ってもよい。また、予測部315は、各年度(所定期間)において複数回の調査結果(評価点)が得られている場合には、各年度から、予め設定されている調査回数(例:1回)分の評価点を用いて、対象機器の劣化予測を行ってもよい。予測部315は、ある年度から複数回分の評価点を読み出す場合、直近の調査から数えて複数回分の評価点を読み出してもよい。
【0064】
本実施形態では、予測部315は、評価項目ごとに算出された対象機器の評価点に基づき、対象機器の劣化予測を行う。予測部315は、対象機器について、評価項目ごとに、複数回に亘り算出された評価点の全てまたは一部を読み出すことにより、評価項目ごとの対象機器の劣化予測を行う。本実施形態では、予測部315は、「水質」、「水量・水圧」、「経年劣化」、「地震・危機管理」および「維持管理」のそれぞれの評価項目について、対象機器の劣化予測を行う。
【0065】
また、予測部315は、評価項目ごとに算出された対象機器の評価点の合計に基づき、対象機器の劣化予測を行う。予測部315は、対象機器について、評価項目ごとに、複数回に亘り算出された評価点の全てまたは一部を読み出す。そして、予測部315は、調査ごとに評価点の合計を算出する。例えば、予測部315が、各年度から調査1回分の評価点を、直近10年分を読み出す場合を考える。この場合、予測部315は、各年度において、「水質」の評価点、「水量・水圧」の評価点、「経年劣化」の評価点、「地震・危機管理」の評価点、および、「維持管理」の評価点を加算することにより、年度ごとに評価点の合計を算出する。これらの年度ごとに算出された評価点の合計(この例では10個の評価点の合計)を用いて、対象機器の劣化予測を行う。
【0066】
図8および
図9は、対象機器について、算出部314が評価項目ごとに算出した複数の評価点と、当該複数の評価点に基づく劣化予測の結果との一例を示す図である。
【0067】
図8の符号1001は、算出部314が評価項目ごとに算出した複数の評価点と、当該複数の評価点に基づく劣化予測の結果との一例を示す表である。
図8の符号1002は、各年度に対応する評価点の合計と、当該評価点の合計に基づく劣化予測の結果との一例を示すグラフである。
【0068】
図9の符号1011は、評価項目「水質」に対応する複数の評価点と、当該複数の評価点に基づく劣化予測の結果との一例を示すグラフである。
図9の符号1012は、評価項目「水量・水圧」に対応する複数の評価点と、当該複数の評価点に基づく劣化予測の結果との一例を示すグラフである。
図9の符号1013は、評価項目「経年劣化」に対応する複数の評価点と、当該複数の評価点に基づく劣化予測の結果との一例を示すグラフである。
【0069】
図8および
図9のグラフにおいて、横軸は評価年(時間経過)を示し、縦軸は評価点の合計(総合点)または評価点を示す。
【0070】
図8および
図9では、対象機器が「高区配水池」である場合の評価点の算出結果および劣化予測の結果の一例を示している。劣化予測を行う将来の時期としては、2030年が指定されている。
図8および
図9では、
図8に示す各年度(6年度分)における1回の調査結果から得られた評価点に基づき、2023年における調査日から2030年度までの対象機器の劣化予測(評価点の予測)が行われている。
【0071】
図8の符号1001において「総合点」は、各年度について、5つの評価項目のそれぞれに対して算出または予測された評価点の合計を示す。
図8の符号1002に示すグラフGR1は、算出部314が算出した評価点の合計に基づき、対象機器の劣化予測を行った結果をグラフ化したものである。具体的には、グラフGR1は、
図8の符号1001に示す表における1回目~6回目の「総合点」に対して線形近似曲線を用いてフィッティングした結果を示している。
【0072】
図9の符号1011~符号1013に示すグラフGR2~GR4はそれぞれ、「水質」、「水量・水圧」および「経年劣化」のそれぞれについて、算出部314が算出した評価点に基づき、対象機器の劣化予測を行った結果をグラフ化したものである。すなわち、
図9の各グラフGR2~GR4は、
図8の符号1001に示す表において、「水質」、「水量・水圧」および「経年劣化」のそれぞれについて、1回目~6回目の評価点に対して線形近似曲線を用いてフィッティングした結果を示している。
【0073】
図8の符号1001に示す表において、評価年「2030年」に示された数値は、上記のように線形近似曲線を用いてフィッティングした結果得られた数値である。「地震・危機管理」および「維持管理」についてのグラフの図示は割愛している。
【0074】
図8および
図9に示すように、グラフGR1~GR4が示す機器の劣化傾向はそれぞれ異なっている。つまり、総合点を用いた劣化予測の結果を示すグラフGR1が示す機器の劣化傾向と、各評価項目の評価点を用いた劣化予測の結果を示すグラフGR2~GR4が示す機器の劣化傾向とは、互いに異なっている。また、各評価項目における劣化予測の結果を示すグラフGR2~GR4のそれぞれについても、機器の劣化傾向が互いに異なっている。
【0075】
このように、総合点を用いて得られた機器の劣化傾向(全ての設問への回答を用いて得られた機器の劣化傾向)と、評価項目ごとに得られた機器の劣化傾向とは、互いに異なり得る。また、各評価項目の間における機器の劣化傾向についても、互いに異なり得る。
【0076】
例えば、総合点または評価点が5割以下となった場合に、機器の機能が停止する可能性を考慮して、機器の更新または修繕を行うことを要すると判断する場合を考える。
図8および
図9の例では、2023年の調査時点において、総合点は5割以上(265点)であるのに対し、「水質」、「水量・水圧」、「経年劣化」および「維持管理」の評価項目においては5割以下(45点または50点)である。従って、本例では、2023年の調査時点において、総合点の観点からは機器の更新または修繕を行うことを要しないが、評価項目の観点からは機器の更新または修繕を行うことを要することがわかる。
【0077】
図8および
図9の例では、2023年の調査時点において、総合点の観点と評価項目の観点とにおいて機器の更新または修繕を行うかどうかの結果が異なったが、直近の調査時点において、総合点も各評価項目の評価点も5割以上である可能性は十分にある。その場合であっても、
図8および
図9に示すように、総合点を用いて得られた機器の劣化傾向と、評価項目ごとに得られた機器の劣化傾向とは、互いに異なり得る。そのため、総合点が5割以下となると予測される時期と、評価項目の評価点が5割以下となると予測される時期とは、互いに異なり得る。また、各評価項目の間においても、評価点が5割以下となると予測される時期は、互いに異なり得る。
【0078】
総合点を用いて得られた機器の劣化傾向は、評価項目ごとに得られた機器の劣化傾向によりも緩やかな傾向を示しやすい。そのため、総合点が所定点以下となるよりも早くに、何れかの評価項目の評価点が所定点以下となりやすい。所定点は、機器の更新または修繕を行うことを要する点数であり、実験等により決定されてよい。
【0079】
従って、予測部315が、評価項目ごとに算出された対象機器の評価点に基づき、対象機器の劣化予測を行うことにより、ユーザは、評価項目ごとの機器の劣化予測の結果を把握することが可能となる。そのため、ユーザは、ある評価項目の劣化予測の結果が対象機器の更新または修繕を要すると判断できる場合、その他の評価項目の劣化予測の結果によらず、対象機器の更新または修繕を行うことを計画することが可能となる。
【0080】
また、ユーザは、ある評価項目の劣化予測の結果が対象機器の更新または修繕を要すると判断できる場合、対象機器を構成する複数の部品のうち、当該評価項目に関係する部品のみを更新または修繕することも可能となる。
【0081】
一方、予測部315が、総合点に基づき対象機器の劣化予測を行うことにより、ユーザは、全ての設問に対する評価区分の選択を考慮した対象製品の劣化の推移を把握することが可能となる。すなわち、ユーザは、対象機器の劣化傾向の大きな流れを把握できる。
【0082】
このように、算出部314が、複数の設問を分類した評価項目ごとの評価点を算出することにより、予測部315は、評価項目ごとの劣化予測と、全ての評価項目を考慮した劣化予測との両方を行うことが可能となる。
【0083】
出力部316は、表示装置5に対して各種データを出力する。出力部316は、例えば、機器リストD21を表示装置5に送信する。これにより、表示装置5は、
図3に示すような、マスタデータD32を作成するための画面を表示できる。出力部316は、例えば、カルテシートD33を表示装置5に送信する。これにより、表示装置5は、
図4に示すような機器データ一覧画面、および、
図5に示すようなカルテ入力画面を表示できる。
【0084】
また、出力部316は、例えば、算出部314による対象機器の評価点の算出結果、および、予測部315による対象機器の劣化予測の結果を表示装置5に送信する。これにより、表示装置5は、
図8および
図9に示すような、算出部314が算出した評価点および総合点、または、予測部315が予測した評価点および総合点を、表形式およびグラフ形式により表示できる。
【0085】
記憶部32は、制御部31が使用する各種データを記憶する。
図1に示すように、記憶部32は、例えば、設問データD31、マスタデータD32およびカルテシートD33を記憶する。記憶部32には、機器ごとに準備された設問データD31、および、機器ごとに作成されたカルテシートD33が記憶される。その他、記憶部32は、例えば、管理装置2から取得した機器リストD21を記憶する。また、記憶部32は、算出部314が算出した評価点、および、予測部315が予測した評価点および総合点等を機器ごとに記憶する。
【0086】
劣化予測装置3は、記憶部32を備えていなくてもよい。この場合、記憶部32を、劣化予測装置3と通信可能に接続できる記憶装置として、劣化予測システム1が備えていてよい。
【0087】
〔劣化予測装置の制御方法〕
図10は、制御部31による処理の流れの一例を示すフローチャートである。本処理の流れは、劣化予測装置3の制御方法の一例を示すものである。
【0088】
制御部31では、まず、取得部311が、管理装置2から機器リストD21を取得する(S1;取得ステップ)。また、対応付け部312は、記憶部32から設問データD31を読み出す。機器リストD21の取得と設問データD31の読み出しとの処理順は問わない。
【0089】
対応付け部312は、取得部311が取得した機器リストD21に含まれる機器と、記憶部32から読み出した設問データD31に対応付けられている設備とを対応付けることにより、マスタデータD32を作成する。対応付け部312は、この対応付けにより、機器リストD21に含まれる機器に、設問データD31を対応付けることができる。対応付け部312は、この対応付けに基づき、機器ごとにカルテシートD33を作成する(S2;対応付けステップ)。
【0090】
その後、出力部316は、入力操作に応じて、
図4に示す機器データ一覧画面を表示装置5に表示させる。制御部31は、表示装置5が機器データ一覧画面を表示している状態において、対象機器のカルテシートD33の読み出し操作を受け付けたかを判定する(S3)。制御部31は、1つの機器が選択された状態においてカルテ入力ボタンB11(
図4参照)に対する入力操作を受け付けたかを判定する。
【0091】
制御部31は、機器データ一覧画面が表示されている状態において、上記読み出し操作の受け付けを待機する(S3でNOの場合)。制御部31が、上記読み出し操作を受け付けたと判定した場合(S3でYESの場合)、読出部313は、選択された機器(対象機器)のカルテシートD33を記憶部32から読み出す。これは、読出部313が、対象機器の選択操作を受け付けることにより、対象機器の設問データD31を記憶部32から読み出すことを意味する(S4:読出ステップ)。出力部316は、読出部313が読み出したカルテシートD33に基づき、表示装置5に、対象機器に対応するカルテ入力画面(
図5参照)を表示させる(S5)。
【0092】
制御部31は、表示装置5がカルテ入力画面を表示している状態、すなわち設問を表示している状態において、設問に対応付けられた複数の評価区分のうちの1の評価区分に対する選択操作を受け付けたかを判定する(S6)。
【0093】
制御部31は、カルテ入力画面が表示されている状態において、上記選択操作の受け付けを待機する(S6でNOの場合)。制御部31は、表示された設問に対して1の評価区分の選択操作を受け付けたと判定した場合(S6でYES)、対象機器に対応付けられた全ての設問において、1の評価区分に対する選択操作を受け付けたか判定する(S7)。
【0094】
制御部31は、対象機器に対応付けられた全ての設問において上記評価区分の選択操作を受け付けていないと判定した場合(S7でNO)、S6の処理を行う。このようにして、制御部31は、対象機器に対応付けられた全ての設問において上記評価区分の選択操作を受け付ける。
【0095】
制御部31が、対象機器に対応付けられた全ての設問において上記評価区分の選択操作を受け付けたと判定した場合(S7でYES)、算出部314は、選択された評価区分に対応付けられた判定点に基づき、評価点を算出する(S8;算出ステップ)。本実施形態では、算出部314は、上述した評価式を用いて、評価項目ごとに評価点を算出する。
【0096】
その後、予測部315は、算出部314が算出した評価点に基づき、対象機器の劣化予測を行う(S9;予測ステップ)。
【0097】
本実施形態では、算出部314は、算出した評価点を記憶部32に記憶している。予測部315は、劣化予測を行う対象機器の選択操作と、劣化予測を行う将来の時期の入力操作とを受け付けると、選択された対象機器について複数回に亘り算出された評価点を、記憶部32から読み出す。予測部315は、複数回に亘り算出された評価点に対して線形近似曲線を用いてフィッティングを行うことにより、上記将来の時期までの評価点の低下の推移を予測する。本実施形態では、予測部315は、評価項目ごとに対象機器の劣化予測を行うと共に、総合点を基づく対象機器の劣化予測を行う。
【0098】
出力部316が、予測部315による対象機器の劣化予測の結果を、表示装置5に出力する。これにより、表示装置5は、対象機器の劣化予測の結果を表示する(S10)。本実施形態では、表示装置5は、
図8および
図9に示すような対象機器の劣化予測の結果を表示する。
【0099】
〔その他の構成例〕
上述した判定点および評価式は、あくまで一例を示したにすぎない。対象機器の実際の劣化度合いに応じた評価が反映されるように評価点を算出できるように、設定されている設問数および/または評価区分数に応じて判定点および評価式が準備されていればよい。
【0100】
また、評価項目ごとに評価点が算出されなくてもよい。例えば、2以上の評価項目において設定された設問に対する判定点に基づき、評価点が算出されてもよい。すなわち、複数の評価項目を含む評価項目群に対して1の評価点が算出されてもよい。これには、対象機器に設定された全ての設問に対する判定点に基づく評価点の算出も含まれる。この場合も、上述のように、設定されている設問数および/または評価区分数に応じて判定点および評価式が準備されていればよい。
【0101】
また、表示装置5に、対象機器の評価点と共に定性的な評価を表示させる場合、制御部31は、評価項目ごとに定性的な評価を表示させるだけでなく、総合点に対する定性的な評価を表示させてもよい。すなわち、制御部31は、表示装置5に、評価項目ごとの定性的な評価の表示、および/または、総合点に対する定性的な評価の表示を行わせてもよい。総合点に対する定性的な評価を表示させる場合、総合点の多寡に対応付けて定性的な評価が設定されていればよい。
【0102】
また、予測部315による劣化予測の結果の提示は、表形式およびグラフ形式の両方で行われなくてもよく、表形式だけで行われてもよいし、グラフ形式だけで行われてもよい。劣化予測の結果は、ユーザが対象機器の劣化の推移を把握できるように提示されればよい。
【0103】
また、対象機器の評価点が1つしか存在しない場合には、予測部315は、回帰分析を行うことができない。そのため、この場合、制御部31は、劣化予測を行うことができない旨を、例えば表示装置5を介して報知してもよい。
【0104】
〔劣化予測装置およびその制御方法による主たる効果〕
制御部31は、機器リストD21を取得し、機器リストD21に含まれる機器ごとに設問データD31を対応付ける。そのため、制御部31は、設問が対応付けられた設備と、機器リストD21に含まれる機器とが異なる場合であっても、機器に対応する評価区分の選択操作の受け付けが可能となる。従って、制御部31は、評価区分の選択に基づく対象機器の劣化予測を行うことが可能となる。
【0105】
上述したように、施設を管理する事業者または受託者と、複数の施設において使用可能な汎用的な設問を準備する準備者とが異なる場合がある。この場合、事業者または受託者が施設を管理するために使用する機器の名称と、準備者が設問に対応付ける機器の名称とが異なる場合がある。また、このような場合、機器リストD21の取得先(本実施形態では記憶部32)と、設問データD31の取得先(本実施形態では管理装置2)とが異なることになる。このような状況においても、制御部31は、機器リストD21に含まれる機器ごとに設問データD31を対応付けることにより、上記評価区分の選択操作の受け付けを可能とする。
【0106】
また、制御部31は、選択された1の評価区分に対応する判定点に基づき評価点を算出する。そのため、制御部31は、簡易な処理により対象機器の劣化予測を行うことができる。
【0107】
本実施形態では、評価項目ごとに複数の設問が分類されているため、制御部31は、評価項目ごとに評価点を算出できる。そのため、制御部31は、評価項目ごとの対象機器の劣化予測の結果を出力できると共に、全ての評価項目を考慮した対象機器の劣化予測(総合点に基づく対象機器の劣化予測)の結果を出力できる。従って、ユーザに、対象機器の劣化予測の結果を多方面から提示できるため、ユーザは、対象機器の更新または修繕を行う時期の判断を、多角的に行うことが可能となる。
【0108】
〔ソフトウェアによる実現例〕
劣化予測装置3(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部31に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0109】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0110】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0111】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0112】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0113】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
3 劣化予測装置
311 取得部
312 対応付け部
313 読出部
314 算出部
315 予測部
D21 機器リスト
D31 設問データ