(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024997
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】出力装置、出力装置の制御方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20250214BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129420
(22)【出願日】2023-08-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)集会による公開 ・開催場所 青森市企業局(青森県青森市奥野1丁目2-1) 開催日 1.令和4年12月9日 2.令和5年1月19日 3.令和5年1月20日 (2)販売による公開 ・販売日 令和4年12月21日 販売場所 東京センチュリー株式会社(東京都千代田区神田練塀町3番地) 公開者 株式会社管総研 ・販売日 令和5年3月31日 販売場所 茨城県南水道企業団(茨城県龍ケ崎市長山1-5-2) 公開者 株式会社管総研
(71)【出願人】
【識別番号】502167083
【氏名又は名称】株式会社管総研
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北出 信
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】複数の機器の更新に要する所定期間ごとの更新事業費を最適化する。
【解決手段】出力装置(3)は、入力操作により設定される更新事業費の上限値を取得する操作取得部(312)と、機器の設置時期、更新周期および更新費に基づき、上限値以下となるように、複数の所定期間に亘り更新事業費を平準化する平準化処理部(316)と、平準化した複数の所定期間に亘る更新事業費を出力する第1出力部(381)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の所定期間のそれぞれにおける、施設に配置された複数の機器の少なくとも何れかの機器を更新するときに要する更新事業費の上限値であって、入力操作により設定される前記更新事業費の上限値を取得する取得部と、
前記複数の機器のそれぞれについて予め設定された、前記機器の設置時期、前記機器の更新を行う更新周期、および、前記機器の更新に要する更新費に基づき、前記上限値以下となるように、前記複数の所定期間に亘り前記更新事業費を平準化する平準化処理部と、
平準化した前記複数の所定期間に亘る前記更新事業費を出力する第1出力部と、を備える、出力装置。
【請求項2】
前記複数の機器のそれぞれに対して、前記更新事業費を平準化するときに前記機器を選択する優先順位が設定されており、
前記平準化処理部は、
前記優先順位の順に、前記設置時期および前記更新周期に基づき、前記複数の所定期間のうちの第1期間において前記更新費を加算する加算部と、
前記第1期間において、前記更新事業費が前記上限値を超えたかを判定する判定部と、を備え、
前記加算部は、前記更新事業費が前記上限値を超える場合に、前記第1期間において加算した前記更新費を、前記第1期間に代えて前記第1期間とは異なる第2期間において加算する、請求項1に記載の出力装置。
【請求項3】
前記複数の機器のそれぞれについて、前記機器の安全性の評価指標である評価点を算出する第1算出部と、
前記評価点が低い機器から順に、前記優先順位を設定する設定部と、を備える、請求項2に記載の出力装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記評価点が同点である2以上の機器の前記優先順位について、
前記設置時期からの経過年数から前記更新周期を減算した値が大きい順、
前記設置時期が古い順、および、
前記更新費が安い順、
のうちの何れかの順に従って設定する、請求項3に記載の出力装置。
【請求項5】
前記複数の機器のそれぞれについて、前記更新周期として複数種類の更新周期が設定されており、
前記設置時期、前記複数種類の更新周期、および、前記更新費に基づき、前記複数種類の更新周期のそれぞれに対応する前記更新事業費を、前記複数の所定期間に亘り算出する第2算出部と、
前記第2算出部が算出した前記複数の所定期間に亘る前記更新事業費を、前記複数種類の更新周期ごとに出力する第2出力部と、を備える、請求項1に記載の出力装置。
【請求項6】
前記第2算出部は、入力操作により変更された前記更新周期および前記更新費の少なくとも何れかに基づき、前記複数の更新周期の少なくとも1つに対応する前記更新事業費を算出する、請求項5に記載の出力装置。
【請求項7】
複数の所定期間のそれぞれにおける、施設に配置された複数の機器の少なくとも何れかの機器を更新するときに要する更新事業費の上限値であって、入力操作により設定された前記更新事業費の上限値を取得する取得ステップと、
前記複数の機器のそれぞれについて予め設定された、前記機器の設置時期、前記機器の更新を行う更新周期、および、前記機器の更新に要する更新費に基づき、前記上限値以下となるように、前記複数の所定期間に亘り前記更新事業費を平準化する平準化処理ステップと、
平準化した前記複数の所定期間に亘る前記更新事業費を出力する第1出力ステップと、を含む、出力装置の制御方法。
【請求項8】
請求項1に記載の出力装置における各部としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の部品によって構成される資産が複数組み合わされて構成される施設についての管理および更新の計画を策定するシステムが開示されている。このシステムでは、保全費が予算を超えている年度がある場合に、リスク費用に基づき、事業計画の実施年度を先送りする処理が行われる。リスク費用は、健全度が低下したときに発生しうる故障等に対処するための費用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムにより保全費が補正される場合、各年度において補正後の保全費のばらつきが大きくなる虞がある。保全費に大きなばらつきが生じた場合、各年度におけるユーザの金銭的な負担度が大きく異なる虞があり、各年度の業績等によっては金銭的な負担度を高める虞がある。
【0005】
本開示の一態様は、複数の機器の更新に要する所定期間ごとの更新事業費を最適化することを可能とする出力装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様1に係る出力装置は、複数の所定期間のそれぞれにおける、施設に配置された複数の機器の少なくとも何れかの機器を更新するときに要する更新事業費の上限値であって、入力操作により設定される前記更新事業費の上限値を取得する取得部と、前記複数の機器のそれぞれについて予め設定された、前記機器の設置時期、前記機器の更新を行う更新周期、および、前記機器の更新に要する更新費に基づき、前記上限値以下となるように、前記複数の所定期間に亘り前記更新事業費を平準化する平準化処理部と、平準化した前記複数の所定期間に亘る前記更新事業費を出力する第1出力部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、出力装置は、入力操作により設定された上限値に基づき平準化した更新事業費を出力する。これにより、平準化した更新事業費のユーザへの提示が可能となるため、ユーザは、所望するように更新事業費が平準化されているかを認識できる。所望するように更新事業費が平準化されていない場合には、ユーザは、入力操作により上限値を再設定することにより、出力装置は、再設定された上限値を取得し、当該上限値に基づき再度平準化した更新事業費を出力する。
【0008】
従って、出力装置は、入力操作による上限値の取得と、当該上限値に基づき平準化した更新事業費の出力とを行うことにより、複数の所定期間に亘る更新事業費をユーザが所望するように最適化できる。そのため、所定期間ごとの更新事業費に対する金銭的な負担度を平準化できる。
【0009】
本発明の態様2に係る出力装置は、態様1の出力装置において、前記複数の機器のそれぞれに対して、前記更新事業費を平準化するときに前記機器を選択する優先順位が設定されており、前記平準化処理部は、前記優先順位の順に、前記設置時期および前記更新周期に基づき、前記複数の所定期間のうちの第1期間において前記更新費を加算する加算部と、前記第1期間において、前記更新事業費が前記上限値を超えたかを判定する判定部と、を備え、前記加算部は、前記更新事業費が前記上限値を超える場合に、前記第1期間において加算した前記更新費を、前記第1期間に代えて前記第1期間とは異なる第2期間において加算する。
【0010】
上記構成によれば、出力装置は、上限値を超えないように、複数の所定期間に亘る更新事業費の平準化を行うことができる。
【0011】
本発明の態様3に係る出力装置は、態様2の出力装置において、前記複数の機器のそれぞれについて、前記機器の安全性の評価指標である評価点を算出する第1算出部と、前記評価点が低い機器から順に、前記優先順位を設定する設定部と、を備える。
【0012】
上記構成によれば、評価点が低いほど、機器の劣化が進んでいると推定できる。そのため、出力装置は、劣化が進んでいる機器の更新ほど、予め設定された更新周期に沿って更新費の加算が行われるように、優先的に更新時期を割り当てたうえで、更新事業費の平準化を行うことができる。
【0013】
本発明の態様4に係る出力装置は、態様3の出力装置において、前記設定部は、前記評価点が同点である2以上の機器の前記優先順位について、前記設置時期からの経過年数から前記更新周期を減算した値が大きい順、前記設置時期が古い順、および、前記更新費が安い順、のうちの何れかの順に従って設定する。
【0014】
上記構成によれば、評価点が同点である2以上の機器が存在するである場合であっても、当該機器に対して異なる優先順位を設定できる。
【0015】
本発明の態様5に係る出力装置は、態様1から4の何れかの出力装置において、前記複数の機器のそれぞれについて、前記更新周期として複数種類の更新周期が予め設定されており、前記設置時期、前記複数種類の更新周期、および、前記更新費に基づき、前記複数種類の更新周期のそれぞれに対応する前記更新事業費を、前記複数の所定期間に亘り算出する第2算出部と、前記第2算出部が算出した前記複数の所定期間に亘る前記更新事業費を、前記複数種類の更新周期ごとに出力する第2出力部と、を備える。
【0016】
上記構成によれば、出力装置が、複数種類の更新周期のそれぞれについて、複数の所定期間に亘る更新事業費を出力することにより、ユーザは、複数の更新事業費の推移を比較検討したうえで、平準化のために使用される更新事業費の上限値を決定できる。そのため、ユーザは、平準化において好ましいと推定される上限値を早い段階で決定しやすい。
【0017】
本発明の態様6に係る出力装置は、態様5の出力装置において、前記第2算出部は、入力操作により変更された前記更新周期および前記更新費の少なくとも何れかに基づき、前記複数の更新周期の少なくとも1つに対応する前記更新事業費を算出する。
【0018】
上記構成によれば、出力装置は、更新周期および/または更新費が変更されるたびに、変更後の更新周期および/または更新費に基づく更新事業費を出力する。そのため、出力装置は、複数種類の更新周期のそれぞれについて、種々の更新事業費を算出し、出力できる。従って、ユーザは、種々のシミュレーションを経て更新事業費の上限値を決定できる。
【0019】
本発明の態様7に係る出力装置の制御方法は、複数の所定期間のそれぞれにおける、施設に配置された複数の機器の少なくとも何れかの機器を更新するときに要する更新事業費の上限値であって、入力操作により設定された前記更新事業費の上限値を取得する取得ステップと、前記複数の機器のそれぞれについて予め設定された、前記機器の設置時期、前記機器の更新を行う更新周期、および、前記機器の更新に要する更新費に基づき、前記上限値以下となるように、前記複数の所定期間に亘り前記更新事業費を平準化する平準化処理ステップと、平準化した前記複数の所定期間に亘る前記更新事業費を出力する第1出力ステップと、を含む。
【0020】
上記出力装置の制御方法によれば、入力操作により設定された上限値に基づき平準化した更新事業費を出力する。これにより、平準化した更新事業費のユーザへの提示が可能となるため、ユーザは、所望するように更新事業費が平準化されているかを認識できる。所望するように更新事業費が平準化されていない場合には、ユーザは、入力操作により上限値を再設定することにより、上記制御方法において、再設定された上限値を取得し、当該上限値に基づき再度平準化した更新事業費を出力する。
【0021】
従って、上記制御方法では、入力操作による上限値の取得と、当該上限値に基づき平準化した更新事業費の出力とを行うことにより、複数の所定期間に亘る更新事業費をユーザが所望するように最適化できる。そのため、所定期間ごとの更新事業費に対する金銭的な負担度を平準化できる。
【0022】
本発明の各態様に係る劣化予測装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記劣化予測装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記劣化予測装置をコンピュータにて実現させる劣化予測装置のプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係る出力装置およびその制御方法によれば、複数の機器の更新に要する所定期間ごとの更新事業費を最適化することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】出力システムの概略的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】設問データにおいて使用されている設備の名称の一例を示す表である。
【
図3】表示装置が表示するマスタデータの一例を示す図である。
【
図4】表示装置が表示する機器データ一覧画面の一例を示す図である。
【
図5】表示装置が表示するカルテ入力画面の一例を示す図である。
【
図9】表示装置が表示する更新マスタデータの一例を示す図である。
【
図10】表示装置が表示する機器データ一覧画面の一例を示す図である。
【
図11】第1~第3周期パターンのそれぞれについての、更新事業費の算出結果、累積値、および、平均値の一例を示す表である。
【
図12】第1周期パターンについての、更新事業費の算出結果、累積値および平均値の一例を示すグラフである。
【
図13】第2周期パターンについての、更新事業費の算出結果、累積値および平均値の一例を示すグラフである。
【
図14】第3周期パターンについての、更新事業費の算出結果、累積値および平均値の一例を示すグラフである。
【
図15】表示装置が表示する更新年度一覧画面の一例を示す図である。
【
図16】平準化後の更新事業費および累計値の推移の一例と、健全度ごとの更新事業費の推移の一例とを示す表である。
【
図17】平準化後の更新事業費および累計値の推移の一例を示すグラフである。
【
図18】平準化前の各機器の更新年度に基づき算出された機器の健全度の推移を示すグラフである。
【
図19】平準化後の各機器の更新年度に基づき算出された機器の健全度の推移を示すグラフである。
【
図20】優先順位決定部による優先順位の設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図21】制御部が、更新検討期間に亘り更新事業費を平準化し、平準化した更新事業費を出力するまでの一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔出力システム〕
図1は、出力システム1の概略的な構成を示す機能ブロック図である。出力システム1は、事業費を所定期間ごとに算出し、その結果を出力するシステムである。本実施形態では、出力システム1は、更新事業費を所定期間ごとに算出し、その結果を出力するシステムである。
【0026】
事業費は、複数の所定期間のそれぞれにおける、施設に配置された複数の機器の少なくとも何れかの機器を更新(交換)、修繕および/または点検するときに要する事業費である。従って、更新事業費は、複数の所定期間のそれぞれにおける、施設に配置された複数の機器の少なくとも何れかの機器を更新するときに要する事業費である。
【0027】
所定期間は、機器を更新、修繕および/または点検するための各費用が割り当てられる期間であり、例えば会計年度であってよい。以降の説明では、所定期間を「年度」と称することもある。複数の所定期間は、更新事業費の推移が表される期間であり、ユーザが各年度の更新事業費を検討する期間である。以降の説明では、複数の所定期間を「更新検討期間」と称する。
【0028】
施設としては、例えば、水道施設が挙げられる。水道施設には、例えば、取水施設、浄水施設、および、送水配水施設等が含まれる。機器としては、例えば、送水ポンプ、発電設備、電動弁、取水流量計、および、次亜注入機等が挙げられる。その他、機器には、例えば、ポンプ室、沈殿池、配水池、管理棟、減圧弁室、建物等の構造物が含まれてよい。
【0029】
図1に示すように、出力システム1は、例えば、管理装置2、出力装置3、操作装置4、および、表示装置5を備える。
【0030】
管理装置2は、施設に配置された機器の一覧を示す機器リストD21を管理する装置である。機器リストD21には、例えば、機器の名称、機器の種類、製造年月日、設置年月日(設置時期)、および、施設の名称等のデータが含まれる。その他、機器リストD21には、例えば、機器の更新を行う更新周期、機器の修繕を行う修繕周期、機器の点検を行う点検周期、機器の更新に要する更新費、機器の修繕に要する修繕費、および、機器の点検に要する点検費等のデータが含まれる。
【0031】
機器の種類としては、例えば、機器の機能および構造物の種類を示す第1種類データを含んでいてよい。機器の機能としては、例えば、ポンプ、弁、流量計、および、薬品注入機等が挙げられる。構造物の種類としては、例えば、構造物を建造した事業の種類(土木事業による建築物かそれ以外の建物か等)等が挙げられる。また、機器の種類としては、例えば、施設用建物、事務所用建物等、機器が設置される施設の用途を示す第2種類データを含んでいてよい。
図3および
図4等では、第1種類データが「機器ファミリ」と示され、第2種類データが「機器タイプ」と示されている。
【0032】
出力装置3は、事業費を所定期間ごとに算出し、その結果を出力する装置である。本実施形態では、出力装置3は、更新事業費を所定期間ごとに算出し、その結果を出力する装置である。出力装置3の詳細については後述する。
【0033】
操作装置4は、ユーザによる各種入力操作を受け付ける装置である。出力装置3は、操作装置4が受け付けた各種入力操作に従って、種々の処理を行ってもよい。表示装置5は、各種情報を表示する装置である。表示装置5は、出力装置3による種々の処理に基づく出力結果を表示してもよい。
【0034】
操作装置4および表示装置5は、出力装置3に備えられていてもよい。また、操作装置4および表示装置5は、タッチパネル等、一体型の装置として実現されてもよい。表示装置5は、出力装置3の出力結果をユーザに提示できる装置であればよい。例えば、出力システム1は、表示装置5の代わりに、出力装置3の出力結果を印刷する印刷装置を備えていてもよい。この場合、ユーザは、出力装置3の出力結果を、表示画面に代えて、印刷装置が印刷した印刷物により認識できる。
【0035】
〔出力装置〕
図1に示すように、出力装置3は、例えば、制御部31および記憶部32を備えている。制御部31は、出力装置3の各部を統括的に制御する。制御部31は、例えば、リスト取得部311、操作取得部312(取得部)、優先順位決定部313、リスト更新部314、第2算出部315、平準化処理部316、健全度評価部317、および、出力部318を備える。
【0036】
リスト取得部311は、機器リストD21を取得する。本実施形態では、リスト取得部311は、出力装置3の外部装置である管理装置2から、機器リストD21を取得する。
【0037】
操作取得部312は、操作装置4が受け付けた入力操作に基づくデータを取得する。操作取得部312は、操作装置4を介して、例えば、更新事業費の上限値、更新周期、更新費、または、更新検討期間の入力操作を受け付けた場合に、これらの値を取得する。つまり、更新事業費の上限値、更新周期、更新費、および、更新検討期間は、入力操作により設定または変更可能な値である。
【0038】
優先順位決定部313は、複数の機器のそれぞれに対して設定する優先順位を決定する。優先順位は、平準化処理部316が更新事業費を平準化するときに機器を選択する順位である。平準化処理部316は、優先順位の順に、機器に対応付けられた更新費を、更新検討期間の何れかの期間において加算する。
【0039】
優先順位決定部313は、例えば、対応付け部331、読出部332、第1算出部333、および、設定部334を備える。
【0040】
対応付け部331は、少なくとも1つの機器を含む設備ごとに予め準備された、設備が安全に機能するかどうかを評価するための複数の設問を含む設問データD31を、機器リストD21に含まれる機器に対応付ける。
【0041】
管理装置2が管理する機器リストD21に含まれる機器の名称と、設問データD31に含まれる複数の設問が対応付けられた機器の名称とは異なっている場合がある。すなわち、同じ施設の同じ機器に対して、機器リストD21を作成するときに付与された機器の名称と、複数の設問が作成されたときに付与された機器の名称とが異なっている場合がある。
【0042】
これは、機器リストD21の作成者と、設問データD31の作成者とが異なることに起因する。例えば、機器リストD21は、施設の事業者、または、当該事業者から委託を受けた受託者が作成する。この事業者または受託者が出力システム1を利用するユーザであってよい。一方、設問データD31は、例えば、複数の事業者を管理する管理団体(例:厚生労働省)が作成する。従って、出力装置3によって評価点を算出する場合、機器リストD21に含まれる機器の名称に、設問データD31において使用されている機器の名称を対応付けることにより、機器リストD21に含まれる機器に対して設問を対応付ける必要がある。
【0043】
但し、設問データD31には、上述した事業者または受託者が設定した設問が含まれていてもよい。
【0044】
本明細書では、機器リストD21に含まれる「機器」と便宜上区別するために、設問データD31において使用されている機器を「設備」と称する。
図2は、設問データD31において使用されている設備の名称の一例を示す表である。
【0045】
設問データD31における「設備」は、機器リストD21に含まれる「機器」の少なくとも1つを包含していればよい。すなわち、設問データD31における設備は、機器リストD21に含まれる機器と同一の機器であってもよいし、機器リストD21に含まれる複数の機器の総称であってもよい。また、設問データD31における設備は、機器リストD21に含まれる複数の機器により構成される設備であってもよい。また、機器リストD21に含まれる機器は、施設に配置された機器だけでなく、施設に配置された機器を構成する部品(施設に配置された部品)を指してもよいし、施設に配置された複数の機器により構成される設備(施設に配置された設備)を指してもよい。
【0046】
対応付け部331は、機器リストD21に含まれる機器と、設問データD31において使用されている設備とを対応付けたマスタデータD32を作成する。対応付け部312が作成したマスタデータD32は、記憶部32に記憶される。
図3は、表示装置5が表示するマスタデータD32の一例(マスタデータD32を表示する画面(画像)の一例)を示す図である。
【0047】
本実施形態では、対応付け部331は、
図3に示すように、機器リストD21に含まれる第1種類データおよび第2種類データを、機器ファミリ、機器ファミリ名称、機器タイプおよび機器タイプ名称として反映させる。操作装置4を介して「機器分類」に示される複数の番号のうち1の番号を選択する選択操作を受け付けると、対応付け部312は、
図3に示すように、機器ファミリおよび機器タイプに、当該番号に対応付けられた施設および設備の名称(
図2に示される情報)を対応付ける。このようにして、対応付け部331は、機器リストD21に含まれる全ての機器ファミリおよび機器タイプに、施設および設備の名称を対応付けることにより、機器と設備とを対応付ける。
【0048】
対応付け部331は、機器と設備を対応付けたマスタデータD32を作成することにより、機器と、機器に対応する設問とを対応付けることができる。対応付け部331は、この対応付けに基づき、機器ごとにカルテシートD33を作成する。カルテシートD33は、機器リストD21に含まれる機器に対する調査結果を反映可能なシートである。
【0049】
カルテシートD33には、例えば、機器リストD21に含まれる機器に関する各種データと、当該機器に対応する設問とが対応付けられたデータが含まれる。評価点が算出された機器については、カルテシートD33に、設問に対する回答結果、回答結果に基づく評価点、および、評価点の合計(総合点)が反映される。評価点は、機器の安全性の評価指標の一例である。その他、カルテシートD33には、機器の調査を行った担当者(設問に回答する担当者)、調査年月日、および、機器を設置してからの経過年数の情報が入力されてよい。対応付け部331が「(調査年月日)-(設置年月日)」を算出した結果が、経過年数として、カルテシートD33に反映されてもよい。
【0050】
図4は、表示装置5が表示する機器データ一覧画面の一例を示す図である。機器データ一覧画面は、機器に関する各種データの一覧を表示する画面であり、カルテシートD33に入力されている各種情報を機器ごとに表示する画面である。
図4に示すように、カルテシートD33に入力された情報に基づき、出力部318は、表示装置5に、各種データとして、例えば、機器リストD21から取得した情報、直近の調査年月日、直近の評価点、および、評価点を算出した評価回数等を表示させることができる。
【0051】
読出部332は、評価点の算出対象である対象機器の選択操作を受け付けることにより、対象機器に対応する設問データD31を読み出す。本実施形態では、
図4の機器データ一覧画面において、操作装置4を介して、1つの機器が選択された状態においてカルテ入力ボタンB11に対する入力操作を受け付けると、読出部332は、選択された機器のカルテシートD33を記憶部32から読み出す。この選択された機器が、評価点の算出対象である対象機器となる。この読み出しにより、出力部318は、表示装置5に、対象機器に対応するカルテ入力画面を表示させることができる。カルテ入力画面は、機器に対応付けられた複数の設問を表示可能な画面である。
図5は、表示装置5が表示するカルテ入力画面の一例を示す図である。
【0052】
図4では、機器の名称「高区簡水 配水池」に対して選択操作を受け付けている例を示している。
図4では、選択された状態を網掛けにより表している。「高区簡水 配水池」は、簡易水道における高区配水池を指す。以下の説明では、「高区簡水 配水池」を「高区配水池」と称する。
図4において、「高区配水池」が選択された状態でカルテ入力ボタンB11に対する入力操作を受け付けると、
図5に示すように、表示装置5は、「高区配水池」のカルテ入力画面を表示する。
図5の例では、評価点の算出対象である対象機器は「高区配水池」となる。
【0053】
第1算出部333は、複数の機器のそれぞれについて評価点を算出する。第1算出部333は、対象機器についての複数の設問のそれぞれに対して段階的に設定された複数の評価区分のうちの1の評価区分の選択操作を受け付けることにより、選択された評価区分に対応付けられた判定点に基づき、対象機器の評価点を算出する。
【0054】
図6は、設問データD31の一例を示す表である。
図6は、ポンプ設備用に準備されている設問データD31の一部を示している。
図6に示すように、各設備用の設問データD31において、複数の設問のそれぞれに対して複数の評価区分が対応付けられている。本実施形態では、複数の設問のそれぞれが、複数の評価項目(分類)の何れかに対応付けられている。
【0055】
評価項目は、設備が安全に機能するかどうかを評価する項目であり、各項目において、各項目に関連する少なくとも1つの設問が設定されている。すなわち、複数の設問は、複数の評価項目に分類されている。本実施形態では、評価項目として、「水質」、「水量・水圧」、「経年劣化」、「地震・危機管理」および「維持管理」の5つが設定されている。但し、評価項目の種類は、これらに限られるものではない。
【0056】
評価区分は、設問に対して予め準備された複数の評価の内容を示すものである。本実施形態では、評価区分として、各設問に対して、5つの評価の内容が段階的に設定されている。そのうちの1つである「該当なし」は、評価点の算出対象としないことを意味する。評価区分としては、評価の高い順に、例えば、以下の4つの評価が段階的に設定されていてよい。
・機器の運転の管理において特段の問題無し。
・運転に支障が生じるほどの問題無し。
・軽度の支障を生じており機能の低下が生じる可能性有。
・機能の低下を起こすほどの支障が生じており機能の停止の可能性有。
また、
図6に示す「特別な事項」には、上述した事業者または受託者が機器の機能を評価するために設定した設問および評価区分が反映されてよい。
【0057】
図7は、評価区分と判定点との関係を示す図である。判定点は、評価点を算出するために評価区分に対して設定された点数である。
図7の例では、「該当なし」の評価区分を除き、評価区分には、評価が高い順に高い判定点が設定されている。従って、設問データD31には、各評価区分に対応付けられた判定点も含まれている。本例では、1つの設問に対して「該当なし」を除くと4つの評価区分が設定されており、高評価の評価区分から「3」、「2」、「1」および「0」の判定点が設定されている。
【0058】
図5に示すように、カルテ入力画面には、1つの設問と当該設問に対応する評価区分とが表示される。カルテ入力画面において、操作装置4を介して、1の評価区分の選択操作を受け付けると、第1算出部333は、当該評価区分に対応する判定点を記憶する。
図5の例では、最も評価が高い評価区分(網掛けを施した評価区分)が選択されているため、判定点「3」が表示されている。
【0059】
図5に示すように、カルテ入力画面には、送り/戻りボタンB21が設けられている。操作装置4を介して送り/戻りボタンB21に対する入力操作を受け付けるたびに、出力部318は、表示装置5に、対象機器に対応する複数の設問を1つずつ表示させることができる。
【0060】
本実施形態では、第1算出部333は、評価項目ごとに対象機器の評価点を算出する。本実施形態では、第1算出部333は、「水質」、「水量・水圧」、「経年劣化」、「地震・危機管理」および「維持管理」のそれぞれの評価項目について、対象機器の評価点を算出する。第1算出部333は、対象機器に対する調査が行われるたびに(対象機器に対応する各設問に対する評価区分の選択操作を受け付けた結果として)、対象機器の評価点を算出する。第1算出部333が算出した評価点は、機器ごとに記憶部32に記憶される。
【0061】
第1算出部333は、例えば、以下の評価式:
評価点=100-(3-最低判定点)×25-(M-1)×5
に従って評価点を算出する。最低判定点は、「0」、「1」および「2」の何れかの判定点である。Mは、各評価項目における最低判定点の個数である。但し、本例では、Mの最大値は5に設定されている。例えば、各評価項目において最大設問数が6である場合、最低判定点の個数が5または6の場合には、第1算出部333は、Mに5を入力する。最低判定点「0」の個数が5または6の場合、第1算出部333は、上記評価式に基づき、評価点を5点と算出する。
【0062】
第1算出部333は、判定点「N」の設問については、評価点の算出対象としない。また、各評価項目において、各設問に対する判定点が全て3点である場合には、第1算出部333は、減点無し、すなわち上記評価式においては100点として、評価点を算出する。最低判定点に「0」、「1」、「2」の何れかが含まれる場合、5点、10点、15点、…、70点、75点の何れかが、評価点として算出される。
【0063】
図5に示すように、出力部318は、第1算出部333が算出した対象機器の評価点を表示装置5に出力することにより、カルテ入力画面に対象機器の評価点を表示できる。
【0064】
設定部334は、評価点が低い機器から順に、優先順位を設定する。設定部334は、評価点が低い機器から順に、平準化処理部316が優先的に機器を選択できるように(優先順位が上位となるように)、各機器に対して優先順位を設定する。設定部334は、機器リストD21に含まれる全ての機器に対して優先順位を設定する。設定部334は、機器ごとに設定した優先順位を記憶部32に記憶する。
【0065】
本実施形態では、設定部334は、1回の調査において算出された評価項目ごとの評価点の合計を、優先順位を設定するために用いる。1つの機器に対して複数回に亘って評価点が算出されている場合、設定部334は、複数の評価点のうちの1の評価点を、当該機器の評価点として設定する。本実施形態では、設定部334は、例えば、複数の評価点のうち、直近の調査において算出された評価点の合計を、当該機器の評価点として設定する。
【0066】
設定部334は、評価点が同点である2以上の機器が存在する場合、これらの機器の優先順位については、所定の条件に基づき設定する。これにより、設定部334は、評価点が同点である2以上の機器が存在する場合であっても、当該機器に対して異なる優先順位を設定できる。本実施形態では、設定部334は、以下の(1)~(3)のうちの何れかの順に従って設定する。
(1)設置年月日からの経過年数から更新周期を減算した値が大きい順;
(2)設置年月日が古い順;
(3)更新費が安い順。
【0067】
本実施形態では、設定部334は、評価点が同点である2以上の機器の優先順位について、上記(1)の値が大きいほど平準化処理部316が優先的に機器を選択できるように、優先順位を設定する。設定部334は、上記(1)において値が同じであった2以上の機器については、上記(2)において設置年月日が古いほど平準化処理部316が優先的に機器を選択できるように、優先順位を設定する。設定部334は、上記(2)において設置年月日が同じであった2以上の機器については、上記(3)において更新費が安いほど平準化処理部316が優先的に機器を選択できるように、優先順位を設定する。
【0068】
本実施形態では、設定部334は、上記(1)、(2)、(3)の条件をこの順に適用して優先順位を設定するが、当該条件の適用順はこれに限られない。また、上記(1)~(3)以外の条件を用いて優先順位を設定してもよい。
【0069】
また、設定部334が優先順位を設定する時点において、一度も調査対象となっていない機器(第1算出部333が評価点を算出していない機器。未評価の機器。)が存在する場合もある。この場合、設定部334は、当該機器の評価点として、仮の評価点を設定する。一度も調査対象となっていない機器が複数存在する場合、設定部334は、仮の評価点として一律の評価点(例:500点)を設定する。設定部334は、これらの機器に対して一律の評価点を設定するため、これらの機器の優先順位については、上述したように所定の条件(本実施形態では上記(1)~(3)の条件)に基づき設定する。
【0070】
但し、これらの機器については、設定部334は、調査済の機器(第1算出部333が評価点を算出した機器。評価済の機器。)よりも優先順位を下げて設定する。設定部334は、例えば、調査済の機器で、かつ評価点の合計が500点の機器よりも、優先順位を下げて設定する。
【0071】
つまり本実施形態では、設定部334は、評価済の機器については、評価点が低いほど上位となるように優先順位を設定する。設定部334は、評価点が同点である2以上の機器については、上述した所定の条件を用いて、互いに異なる優先順位を設定する。設定部334は、未評価の機器については、全ての評価済の機器よりも下位となるように優先順位を設定する。また、設定部334は、未評価の機器については、上述した所定の条件を用いて、互いに異なる優先順位を設定する。例えば、評価済の機器に設定した最も低い優先順位が300位である場合、設定部334は、未評価の機器については、301位以降の優先順位であって、かつ互いに異なる優先順位を設定する。
【0072】
リスト更新部314は、機器リストD21を更新する。
図8は、機器リストD21の一例を示す表である。
図8に示すように、機器リストD21には、例えば、機器ごとに、更新周期、更新費、修繕費および点検費が設定される。更新費、修繕費および点検費の単位は千円である。例えば、
図8における更新費の「300」は30万円を意味する。
【0073】
本実施形態では、更新周期としては、複数種類の更新周期が設定されてもよい。
図8に示すように、本実施形態では、複数種類の更新周期として、第1~第3周期パターンが設定される。
【0074】
第1周期パターンは、法定耐用年数を指す。法定耐用年数は、機器に対して法的に設定された、機器の耐用年数である。法定耐用年数は、安全性の観点から余裕をもって設定されるものであり、使用を開始してから実際に機器に不具合が生じると推定されるときまでの年数よりも、十数年~数十年程度短めに設定される。
【0075】
第2周期パターンは、独自耐用年数を指す。独自耐用年数は、ユーザが独自に設定した、機器の耐用年数である。更新費削減の観点から、独自耐用年数は、ユーザの責任のもと、安全性を担保しつつ、実際に機器に不具合が生じると推定されるときまでの年数により近い年数に設定される。
【0076】
第3周期パターンは、延命化策年数を指す。延命化策年数もまた、ユーザが独自に設定した、機器の耐用年数である。延命化策年数は、ユーザの責任のもと、安全性を担保しつつ、独自耐用年数よりもさらに長い年数が設定される。
【0077】
図8に示すように、機器リストD21において、機器によっては、更新周期および/または更新費等が設定されていない場合もある。例えば、更新周期および/または更新費が設定されていない場合、制御部31は、更新事業費を算出できず、また、更新事業費の平準化を行うことができない可能性がある。そのため、更新事業費の算出または平準化の前段階において、リスト更新部314は、各機器において、複数種類の更新周期の全ておよび更新費の値が設定されているかを判定する。リスト更新部314は、値が設定されていない更新周期または更新費が存在すると判定した場合には、当該更新周期または更新費として、予め決められた値を設定する。
【0078】
これにより、第2算出部315による更新事業費の算出時、および、平準化処理部316による更新事業費の平準化時において、複数の機器のそれぞれについて、更新周期および更新費が予め設定されていることになる。本実施形態では、更新周期として複数の更新周期が予め設定されていることになる。
【0079】
機器リストD21において、修繕周期および/または修繕費が設定されていない場合、並びに、点検周期および/または点検費が設定されていない場合についても、リスト更新部314は、設定されていない項目について、予め決められた値を設定してよい。
【0080】
また、機器リストD21において設置年月日が設定されていない場合、制御部31は、例えば、更新事業費を算出できず、また、更新事業費の平準化を行うことができない。従って、更新事業費の算出または平準化の前段階において、リスト更新部314は、機器リストD21において設置年月日が設定されていない機器が存在するかを判定する。リスト更新部314が、設置年月日が設定されていない機器が1つでも存在すると判定した場合には、制御部31は、設置年月日の入力を要する旨を報知してもよい。これにより、更新事業費の算出時、および、更新事業費の平準化時において、複数の機器のそれぞれについて、設置年月日が予め設定されている状態とすることができる。
【0081】
図9は、表示装置5が表示する更新マスタデータD34の一例(更新マスタデータD34を表示する画面の一例)を示す図である。更新マスタデータD34では、機器ごと、または、機器の種類ごとに、複数種類の更新周期、更新費、修繕費、および、点検費が予め設定されている。更新マスタデータD34における機器の名称および機器の種類は、機器リストD21における機器の名称および機器の種類と一致している。更新マスタデータD34は、機器リストD21を作成するユーザにより作成されてよい。
図9の例では、機器の種類ごとに、複数種類の更新周期および更新費等が予め設定されている。
【0082】
制御部31は、
図9の画面に示す「分類」において、操作装置4を介して、「更新」、「修繕」または「点検」を選択する入力操作を受け付け可能である。「更新」が選択された場合には、
図9に示すように、出力部318は、表示装置5に、複数種類の更新周期(第1~第3周期パターン)および更新費を表示させる。「修繕」が選択された場合には、出力部318は、表示装置5に、修繕周期および修繕費を表示させる。「点検」が選択された場合には、出力部318は、表示装置5に、点検周期および点検費を表示させる。
【0083】
リスト更新部314は、機器リストD21と更新マスタデータD34とを照合することにより、機器リストD21において設定されていない更新周期および更新費等について、更新マスタデータD34において予め設定されている値を入力する。これにより、機器リストD21に含まれる全ての機器のそれぞれに対して更新周期および更新費等が設定される。
【0084】
第2算出部315は、設置年月日、複数種類の更新周期、および、更新費に基づき、複数種類の更新周期のそれぞれに対応する更新事業費を、更新検討期間に亘り算出する。本実施形態では、第2算出部315は、設置年月日、第1~第3周期パターン、および、更新費に基づき、第1~第3周期パターンのそれぞれに対応する更新事業費を、更新検討期間に亘り算出する。
【0085】
第2算出部315は、機器ごとに、設置年月日に更新周期を加算して、機器を更新する年度(更新年度)を算出する。第2算出部315は、機器ごとに設定された更新費を、算出した年度において加算していくことにより、年度ごとの更新事業費を算出する。第2算出部315は、ユーザにより設定された更新検討期間において、年度ごとの更新事業費を算出する。
【0086】
図10は、表示装置5が表示する機器データ一覧画面の一例を示す図である。機器データ一覧画面は、機器に関する各種データの一覧を表示する画面であり、カルテシートD33に入力されている各種情報に加え、機器リストD21に含まれる更新周期および更新費等の情報を機器ごとに表示する画面である。更新周期および更新費等の情報は、カルテシートD33に含まれていてもよい。
【0087】
制御部31は、
図10の機器データ一覧画面に示す「分類」において、操作装置4を介して、「更新」、「修繕」または「点検」を選択する入力操作を受け付け可能である。「更新」が選択された場合には、
図10に示すように、出力部318は、表示装置5に、複数種類の更新周期(第1~第3周期パターン)および更新費を表示させる。「修繕」が選択された場合には、出力部318は、表示装置5に、修繕周期および修繕費を表示させる。「点検」が選択された場合には、出力部318は、表示装置5に、点検周期および点検費を表示させる。
【0088】
機器データ一覧画面が表示されている状態において、操作取得部312は、操作装置4を介して、更新周期および更新費の値を変更する入力操作を受け付けることが可能である。機器データ一覧画面に表示される更新周期および更新費の値は、以下の3つの値のいずれかである。
(A)機器リストD21に予め設定されている値(リスト取得部311が取得した機器リストD21に含まれる値);
(B)更新マスタデータD34から取得して機器リストD21に入力された値;
(C)入力操作により入力された値。
【0089】
機器リストD21に含まれる機器ごとの更新周期の値、および、機器ごとの更新費の値には、上記(A)~(C)の何れであるかを示すデータが対応付けられる。そのため、出力部318は、表示装置5に、機器リストD21またはカルテシートD33を出力するときに当該データも出力する。これにより、表示装置5は、機器データ一覧画面において、機器ごとの更新周期の値、および、機器ごとの更新費の値が、それぞれ上記(A)~(C)の何れであるかを区別するように表示できる。
【0090】
図10に示すように、領域A32において、「機器リスト」、「マスタ」および「入力」の領域がそれぞれ異なる表示態様で示されている。例えば、「機器リスト」、「マスタ」および「入力」の領域は、色分けして表示されてよい。領域A32の「機器リスト」の表示態様は、更新周期または更新費の値が、上記(A)の値であることを示す。領域A32の「マスタ」の表示態様は、更新周期または更新費の値が、上記(B)の値であることを示す。領域A32の「入力」の表示態様は、更新周期または更新費の値が、上記(C)の値であることを示す。
【0091】
機器データ一覧画面において、機器ごとの更新周期の値、および、機器ごとの更新費の値が表示される領域は、領域A32の「機器リスト」、「マスタ」および「入力」の何れかの表示態様にて表示される。
図10の例では、機番「KN000002」の「第1周期パターン」が、上記(B)の値であることを示している。また、機番「KN000005」の「第2周期パターン」が、上記(C)の値であることを示している。それ以外の更新周期および機更新費の値は、上記(A)の値であることを示している。
【0092】
修繕周期および修繕費、並びに、点検周期および点検費についても、上述した更新周期および更新費が表示されるように表示されてよい。
【0093】
第2算出部315は、上記(A)~(C)の値の何れかを用いて、第1~第3周期パターンのそれぞれに対応する更新事業費を、更新検討期間に亘り算出する。従って、操作取得部312が更新周期または更新費の値を変更する入力操作を受け付けた場合、第2算出部315は、変更された更新周期および更新費の少なくとも何れかに基づき、第1~第3周期パターンの少なくとも1つに対応する更新事業費を算出する。
【0094】
第2算出部315は、更新事業費の算出を第2算出部315に行わせる入力操作と、更新検討期間の入力操作とを受け付けると、機器リストD21に含まれる全ての機器について、第1~第3周期パターンに示される更新周期と、更新費とを読み出す。
【0095】
本実施形態では、
図10の機器データ一覧画面において、操作装置4を介して、期間入力領域A31に更新検討期間の開始年および終了年が入力された状態で、算出ボタンB31に対する入力操作を受け付ける場合を考える。この場合、第2算出部315は、機器リストD21に含まれる全ての機器についての更新周期と更新費とを記憶部32から読み出す。
【0096】
期間入力領域A31は、更新検討期間の開始年および終了年の入力を受け付け可能な領域である。算出ボタンB31は、更新事業費の算出を第2算出部315に行わせる入力操作を受け付け可能なボタンである。そして、第2算出部315は、第1~第3周期パターンのそれぞれについて、入力された更新検討期間に亘り、各年度の更新事業費を算出する。
【0097】
制御部31は、期間入力領域A31に開始年および/または終了年が入力されていない状態において算出ボタンB31への入力操作を受け付けた場合、開始年および/または終了年の入力を要する旨を報知してもよい。
【0098】
図11~
図14は、第1~第3周期パターンのそれぞれについての、更新検討期間内の各年度における更新事業費の算出結果、各年度までの更新事業費の累積値、および、更新検討期間における更新事業費の平均値の一例を示す表およびグラフである。本実施形態では、第2算出部315は、各年度における更新事業費の他、更新検討期間の開始年から各年度までの更新事業費の累積値、および、更新検討期間における更新事業費の平均値を算出する。
【0099】
図11は、第1~第3周期パターンのそれぞれについての、更新事業費の算出結果、累積値、および、平均値の一例を示す表である。
図12は、第1周期パターンについての、更新事業費の算出結果、累積値および平均値の一例を示すグラフである。
図13は、第2周期パターンについての、更新事業費の算出結果、累積値および平均値の一例を示すグラフである。
図14は、第3周期パターンについての、更新事業費の算出結果、累積値および平均値の一例を示すグラフである。
【0100】
図11~
図14の例では、更新検討期間の開始年が2023年に設定され、終了年が2062年に設定されている。
図12~
図14のグラフにおいて、横軸は更新検討期間の各年度(時間経過)を示し、縦軸は更新事業費および累積値を示す。
【0101】
図11~
図14に示すように、第1~第3周期パターンによって、更新事業費の推移が異なることがわかる。そのため、第1~第3周期パターンによって、累積値および平均値も異なることがわかる。後述する第2出力部382が、表示装置5に、第1~第3周期パターンのそれぞれについての更新事業費の算出結果、累積値および平均値を表示させることにより、ユーザは、各周期パターンにおいて互いに異なる更新事業費の推移を把握できる。また、更新周期および/または更新費の変更により、各周期パターンにおける更新事業費の推移も変わってくる。
【0102】
平準化処理部316は、複数の機器のそれぞれについて予め設定された、設置年月日、更新周期、および、更新費に基づき、操作取得部312が取得した上限値以下となるように、更新検討期間に亘り更新事業費を平準化する。平準化処理部316は、例えば、加算部361および判定部362を備える。
【0103】
加算部361は、設定部334が機器に対して設定した優先順位の順に、設置年月日および更新周期に基づき、更新検討期間のうちの第1期間において更新費を加算する。判定部362は、第1期間において、更新事業費が上限値を超えたかを判定する。加算部361は、更新事業費が上限値を超える場合には、第1期間において加算した更新費を、第1期間に代えて第1期間とは異なる第2期間において加算する。
【0104】
加算部361は、優先順位が最も高い機器、すなわち更新費を加算する優先度が最も高い機器について、設置年月日に更新周期を加算した年度(第1期間)に、更新費を加算する(割り当てる)。各年度において、更新費が加算される前の更新事業費は0である。従って、各年度において最初に更新費が加算された(割り当てられた)場合、当該更新費が当該年度の更新事業費となる。
【0105】
判定部362は、加算部361が更新費を加算した年度の更新事業費が上限値を超えたかを判定する。当該年度の更新事業費が上限値を超えていないと判定部362が判定した場合には、加算部361は、次に優先順位が高い機器について、設置年月日に更新周期を加算した年度(第1期間)に、更新費を加算する。判定部362は、当該年度の更新事業費が上限値を超えたかを判定する。加算部361および判定部362は、加算部361が更新費を加算した年度の更新事業費が上限値を超えたと判定部362が判定するまで、この処理を繰り返す。
【0106】
そして、ある時点において加算部361が更新費を加算した年度の更新事業費が上限値を超えたと判定部362が判定した場合を考える。この場合、加算部361は、当該年度において加算した更新費を当該年度から削除し、当該更新費を、当該年度とは別年度(第2期間)において加算する。判定部362は、別年度において更新費を加算した結果、別年度の更新事業費が上限値を超えたかを判定する。
【0107】
別年度の更新事業費が上限値を超えていないと判定部362が判定した場合には、加算部361および判定部362は、ある時点において更新費の加算対象となった機器の次に優先順位が高い機器に対する処理を行う。別年度の更新事業費が上限値を超えたと判定部362が判定した場合には、更新費の加算先の更新事業費が上限値を超えないと判定部362が判定するまで、加算部361および判定部362による処理が繰り返される。
【0108】
このようにして、優先順位が最も低い機器、すなわち更新費を加算する優先度が最も低い機器の更新費を該当する年度に加算するまで、加算部361および判定部362による処理が繰り返される。すなわち、加算部361および判定部362による処理は、優先順位が最上位の機器から最下位の機器まで順に行われる。これにより、平準化処理部316は、上限値を超えないように、更新検討期間における更新事業費の平準化を行うことができる。また、評価点が低いほど優先度が高くなるように優先順位が設定されるため、平準化処理部316は、劣化が進んでいると推定できる機器ほど、優先的に更新時期を割り当てたうえで、更新事業費の平準化を行うことができる。
【0109】
本実施形態では、上記別年度は、更新費の加算対象であった年度の次の年度である。但し、上記別年度は、更新費の加算対象であった年度の前の年度であってもよい。また、上記別年度として次の年度が設定された後、当該別年度でも更新事業費が上限値を超えた場合には、最初に更新費の加算対象であった年度の前の年度を上記別年度として設定してもよい。
【0110】
また、平準化処理部316は、上記別年度に更新費を加算した場合、更新費の加算対象であった年度に、次に優先順位が高い機器の更新費を加算してもよい。この場合、平準化処理部316は、更新費の加算対象であった年度に、次に優先順位が高い機器の更新費を加算しても、当該年度の更新事業費が上限値を超えない場合に、当該年度に、次に優先順位が高い機器の更新費を加算する。
【0111】
さらに、平準化処理部316は、ある年度の更新事業費が隣接する更新事業費よりも所定値以上低い場合、更なる平準化処理を行ってもよい。平準化処理部316は、例えば、以下の条件の全てを満たす機器の更新費を、所定値以上低い年度に加算してもよい。
・所定値以上低い年度に比較的近い年度に加算された更新費である;
・所定値以上低い年度に上記更新費を加算しても上限値を超えない;
・上記更新費が加算されていた年度から当該更新費を減じても、更新費を減じた年度の更新事業費が隣接する更新事業費よりも所定値以上低くならない。
【0112】
上記所定値、および、加算対象とできる更新費が割り当てられた年度の範囲は、例えばユーザの設定により決められていてよい。
【0113】
このように、平準化処理部316は、各年度の更新事業費が上限値を超えないように、更新費を、更新費の加算対象であった年度よりも先の年度に加算する先送りを行う。または、平準化処理部316は、各年度の更新事業費が上限値を超えないように、更新費を、更新費の加算対象であった年度よりも前の年度に加算する前倒しを行う。
【0114】
図15は、表示装置5が表示する更新年度一覧画面の一例を示す図である。更新年度一覧画面は、更新年度を機器ごとに表示する画面である。
図15の例では、機器リストD21に含まれる機器の名称等の各種データに加え、平準化処理に用いられる設置年月日、更新費用および優先順位と、初回の更新年度および最終の更新年度との情報を機器ごとに表示している。初回の更新年度および最終の更新年度は、機器リストD21に予め設定された設置年月日および更新周期から算出した結果であってもよいし、平準化処理によって変更された更新年度であってもよい。平準化処理部316は、平準化後の各機器の更新年度を記憶部32に記憶する。
【0115】
制御部31は、
図15の更新年度一覧画面に示す「分類」において、操作装置4を介して、「更新」、「修繕」または「点検」を選択する入力操作を受け付け可能である。
図15は、「更新」が選択された場合の表示画面の一例である。「修繕」が選択された場合には、出力部318は、例えば、表示装置5に、修繕を行う修繕年度(例:初回の修繕年度と最終の修繕年度)および修繕費を表示させる。「点検」が選択された場合には、出力部318は、例えば、表示装置5に、点検を行う点検年度(例:初回の点検年度と最終の点検年度)および点検費を表示させる。
【0116】
更新年度一覧画面においても、領域A32に示す表示態様により、上記(A)~(C)の値が区別して表示される。
【0117】
平準化処理部316は、更新事業費の平準化を平準化処理部316に行わせる入力操作と、更新検討期間の入力操作とを受け付けると、機器リストD21に含まれる全ての機器について、更新周期と更新費とを記憶部32から読み出す。平準化処理部316は、更新事業費の上限値の入力を受け付けている場合に、更新周期および更新費を読み出す。
【0118】
本実施形態では、
図15の更新年度一覧画面において、操作装置4を介して、期間入力領域A31に更新検討期間の開始年および終了年が入力された状態で、かつ、上限値入力領域A41に更新事業費の上限値が入力された状態を考える。この状態において、平準化ボタンB41に対する入力操作を受け付けた場合、平準化処理部316は、機器リストD21に含まれる全ての機器についての更新周期と更新費とを記憶部32から読み出す。
【0119】
上限値入力領域A41は、一年度の更新事業費の上限値の入力を受け付け可能な領域である。操作取得部312は、上限値入力領域A41において受け付けた更新事業費の上限値を取得する。平準化ボタンB41は、更新事業費の平準化を平準化処理部316に行わせる入力操作を受け付け可能なボタンである。平準化ボタンB41への入力操作を受け付けると、平準化処理部316は、読み出した更新周期及び更新費を用いて、入力された更新検討期間に亘り、取得した上限値以下となるように更新事業費を平準化する。本実施形態では、平準化処理部316は、更新周期として法定耐用年数(第1周期パターン)を用いる。
【0120】
制御部31は、期間入力領域A31に開始年および/または終了年が入力されていない状態において平準化ボタンB41への入力操作を受け付けた場合、開始年および/または終了年の入力を要する旨を報知してもよい。また、制御部31は、上限値入力領域A41に上限値が入力されていない状態において平準化ボタンB41への入力操作を受け付けた場合、上限値の入力を要する旨を報知してもよい。
【0121】
図16は、平準化後の更新事業費の推移および累計値の一例を示す表である。
図17は、平準化後の更新事業費および累計値の推移の一例を示すグラフである。
図16および
図17に示す平準化後の更新事業費は、法定耐用年数に基づき、更新検討期間に亘り更新事業費を平準化した結果である。
図16および
図17に示す累計値は、各年度までの、平準化後の更新事業費の累計値である。本実施形態では、平準化処理部316は、更新事業費の平準化の他、更新検討期間の開始年から各年度までの更新事業費の累積値も算出する。
図16において、「平準化後の更新事業費」は「事業費(平準化)」と示され、「累積値」は「事業費(平準化)累計」と示されている。
図17は、
図16に示す平準化後の更新事業費および累計値をグラフ化したものである。
【0122】
図16および
図17の例では、更新検討期間の開始年が2023年に設定され、終了年が2062年に設定されている。また、更新事業費の上限値は、2億円に設定されている。
図17のグラフにおいて、横軸は更新検討期間の各年度(時間経過)を示し、縦軸は更新事業費および累積値を示す。
【0123】
図17に示すように、
図12に示す第2算出部315の算出結果に比べ、更新事業費が平準化されていることがわかる。また、上限値を適宜変更することにより、更新費を加算する年度が変更されるため、更新事業費の推移も変わってくる。
【0124】
健全度評価部317は、機器の設置年月日と法定耐用年数とに基づき、各年度における機器の健全度を評価する。本実施形態では、健全度として、例えば、健全度が高い順から「健全」、「経年化」及び「老朽化」の3パターンが設定されている。
【0125】
健全度評価部317は、健全度を評価する対象年度において、経過年数が法定耐用年数以内である機器の健全度を「健全」と評価する。健全度評価部317は、対象年度において、経過年数が法定耐用年数の1.0~1.5倍の範囲内である機器の健全度を「経年化」と評価する。健全度評価部317は、対象年度において、経過年数が法定耐用年数の1.5倍を超える機器の健全度を「老朽化」と評価する。
【0126】
図18および
図19は、機器の健全度の推移の一例を示すグラフである。
図18は、平準化前の各機器の更新年度に基づき算出された機器の健全度の推移を示すグラフである。
図19は、平準化後の各機器の更新年度に基づき算出された機器の健全度の推移を示すグラフである。
図18および
図19のグラフにおいて、横軸は更新検討期間の各年度(時間経過)を示す。また、縦軸は、健全度が「健全」と評価された機器数、健全度が「経年化」と評価された機器数、および、健全度が「老朽化」と評価された機器数の、全機器数に対する割合を示す。
【0127】
図18および
図19に示すように、平準化前後において、機器の健全度の推移が異なることがわかる。上限値の設定により更新費を加算する年度が変更されることにより、各年度における機器の健全度も変わってくるためである。従って、上限値を適宜変更することにより、機器の健全度の推移も変わってくる。
【0128】
図16は、健全度ごとの更新事業費の推移の一例を示す表である。
図16において、「健全資産(更新なし)」は平準化前において、「健全資産(更新あり)」は平準化後において、健全度が「健全」の機器についての更新費を、年度ごとに合計した値である。「経年化資産(更新なし)」は平準化前において、「経年化資産(更新あり)」は平準化後において、健全度が「経年化」の機器についての更新費を、年度ごとに合計した値である。「老朽化資産(更新なし)」は平準化前において、「老朽化資産(更新あり)」は平準化後において、健全度が「老朽化」の機器についての更新費を、年度ごとに合計した値である。
【0129】
例えば、平準化処理部316が、各年度において、健全度評価部317により評価された機器の健全度ごとに更新費を振り分けることにより、
図16に示す更新事業費の推移を得ることができる。上限値の変更により更新費を加算する年度も変更されるため、健全度ごとの更新事業費の推移も変わってくる。
【0130】
出力部318は、表示装置5に対して各種データを出力する。出力部318は、例えば、機器リストD21を表示装置5に送信する。これにより、表示装置5は、
図3に示すような、マスタデータD32を作成するための画面を表示できる。出力部318は、例えば、カルテシートD33を表示装置5に送信する。これにより、表示装置5は、
図4に示すような機器データ一覧画面、および、
図5に示すようなカルテ入力画面を表示できる。
【0131】
出力部318は、例えば、第1出力部381および第2出力部382を備える。
【0132】
第1出力部381は、表示装置5に、平準化処理部316が平準化した更新検討期間に亘る更新事業費を出力する。これにより、表示装置5は、
図18に示すような更新事業費および累積値の推移を示すグラフを表示できる。表示装置5は、
図16に示すような年度ごとの更新事業費および累積値を示す表を表示できる。
【0133】
第2出力部382は、第2算出部315が算出した更新検討期間に亘る各年度の更新事業費を、第1~第3周期パターンごとに出力する。これにより、表示装置5は、
図11~
図14に示すような更新事業費の算出結果、累積値および平均値を示す表およびグラフを表示できる。
【0134】
出力部318は、表示装置5に、各機器の更新費、および、平準化により得られた各機器の更新年度を出力する。これにより、表示装置5は、各機器の更新費、および、平準化後の各機器の更新年度を表示できる。平準化時に用いた各機器の更新費(変更されている場合には変更後の更新費)、および、平準化により得られた各機器の更新年度が記憶部32に記憶されることにより、出力部318は、表示装置5に、これらの情報を出力できる。従って、制御部31は、ユーザが最終的に決定した更新費および更新年度を記憶部32に記憶すると共に、表示装置5に出力できる。そして、表示装置5は、
図15に示すような更新年度一覧画面を表示できる。
【0135】
出力部318は、表示装置5に、健全度評価部317が評価した健全度を出力する。これにより、表示装置5は、
図18および
図19に示すような機器の健全度の推移を示すグラフを表示できる。また、出力部318は、平準化処理部316が機器の健全度ごとに更新費を振り分けた結果を出力することにより、表示装置5は、
図16に示すような健全度ごとの更新事業費の推移を示す表を表示できる。
【0136】
上述したように、平準化処理部316は、入力操作により設定された上限値に基づき、更新検討期間に亘り更新事業費を平準化する。そして、第1出力部381は、表示装置5に、
図17に示すような平準化された更新事業費を表示させる。これにより、ユーザは、表示された更新事業費の推移により、所望するように更新事業費が平準化されているかを認識できる。所望するように更新事業費が平準化されていない場合には、ユーザは、入力操作により上限値を再設定する。これにより、制御部31は、再設定された上限値を取得し、当該上限値に基づき更新検討期間に亘り更新事業費を再度平準化し、平準化した更新事業費を表示装置5に再度表示させる。
【0137】
従って、制御部31は、入力操作による上限値の取得と、当該上限値に基づき平準化した更新事業費の出力とを行うことにより、更新検討期間に亘る更新事業費をユーザが所望するように最適化できる。
【0138】
本実施形態では、上述したように、第2出力部382は、表示装置5に、第1~第3周期パターンのそれぞれについて、
図11~
図14に示すような更新事業費の算出結果、累積値および平均値を表示させる。そのため、ユーザは、複数の更新事業費の推移を比較検討したうえで、平準化のために使用される更新事業費の上限値を決定できる。従って、ユーザは、平準化において好ましいと推定される上限値を早い段階で決定しやすい。
【0139】
また、第2出力部382は、表示装置5に、更新周期および/または更新費が変更されるたびに、変更後の更新周期および/または更新費に基づく更新事業費を表示させる。そのため、第2出力部382は、第1~第3周期パターンのそれぞれについて、様々なパターンの更新事業費を、表示装置5に表示させることができる。従って、ユーザは、種々のシミュレーションを経て更新事業費の上限値を決定できる。
【0140】
また、出力部318は、表示装置5に、健全度評価部317が評価した健全度の推移(
図19に示すような健全度の推移)を表示させる。そのため、ユーザは、表示された健全度の推移により、健全度の推移が所望する推移であるかを認識できる。所望するように健全度が推移していない場合には、ユーザは、入力操作により上限値を再設定することにより、制御部31は、平準化により再度特定された各機器の更新年度を用いて、各機器の健全度を評価し、評価した健全度の推移を表示装置5に表示させる。従って、ユーザは、健全度の推移も認識しつつ、所望する更新事業費の推移となるよう上限値を設定できる。
【0141】
例えば、ユーザは、各年度において、健全度が「健全」であると評価された機器の割合が比較的高く、健全度が「経年化」および「老朽化」であると評価された機器の割合が比較的少ない場合に、健全度の推移が所望する推移であると認識してよい。
【0142】
このように、ユーザは、更新事業費を平準化した結果、第1~第3周期パターンのそれぞれについての算出結果等、および、健全度の評価結果を参考にしながら、更新事業費の推移が所望する推移となるよう上限値を適宜調整できる。
【0143】
記憶部32は、制御部31が使用する各種データを記憶する。
図1に示すように、記憶部32は、例えば、設問データD31、マスタデータD32、カルテシートD33、および、更新マスタデータD34を記憶する。記憶部32には、機器ごとに準備された設問データD31、および、機器ごとに作成されたカルテシートD33が記憶される。
【0144】
その他、記憶部32は、例えば、管理装置2から取得した機器リストD21を記憶する。リスト更新部314が機器リストD21の値を更新した場合、記憶部32には、更新後の機器リストD21が記憶される。また、記憶部32は、入力操作に基づき設定又は変更された各種値、第1算出部333が算出した機器ごとの評価点、設定部334が設定した機器ごとの優先順位、および、平準化処理部316による平準化の結果を記憶する。平準化の結果には、平準化後の各機器の更新年度が含まれてよい。
【0145】
出力装置3は、記憶部32を備えていなくてもよい。この場合、記憶部32を、出力装置3と通信可能に接続できる記憶装置として、出力システム1が備えていてよい。
【0146】
〔出力装置の制御方法〕
図20および
図21は、制御部31による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0147】
<優先順位の設定処理>
図20は、優先順位決定部313による優先順位の設定処理の一例を示すフローチャートである。
図20では、対応付け部331による処理は完了しているものとする。
【0148】
優先順位決定部313では、まず、読出部332は、入力操作によって選択された対象機器のカルテシートD33を読み出す(S1)。制御部31は、表示装置5にカルテ入力画面に表示させて、対象機器に対して設定された全ての設問についての評価区分の選択操作を受け付ける。第1算出部333は、選択された評価区分に基づき、対象機器の評価点を算出する(S2)。
【0149】
優先順位決定部313は、第1算出部333が全ての機器に対する評価点の算出を行ったかを判定する(S3)。優先順位決定部313は、全ての機器に対する評価点の算出が完了するまで、S1およびS2の処理を行う(S3でNO)。優先順位決定部313が全ての機器に対する評価点の算出が完了したと判定した場合(S3でYES)、設定部334は、評価点が低い機器から順に優先順位を設定する(S4)。
【0150】
このとき、設定部334は、評価点が同点である2以上の機器が存在するかを判定する(S5)。設定部334は、評価点が同点である2以上の機器が存在すると判定した場合(S5でYES)、上述したような所定の条件に従ってこれらの機器に優先順位を設定する(S6)。設定部334は、評価点が同点である2以上の機器が存在しなくなるまで、S5およびS6の処理を繰り返す。
【0151】
これにより、機器リストD21に含まれる全ての機器に対して、互いに異なる優先順位が設定される。評価点が同点である2以上の機器が存在しない場合、優先順位決定部313は、本処理を終了する(S5でNO)。
【0152】
<平準化された更新事業費を出力するまでの処理>
図21は、制御部31が、更新検討期間に亘り更新事業費を平準化し、平準化した更新事業費を出力するまでの一連の処理の一例を示すフローチャートである。本処理の流れは、出力装置3の制御方法の一例を示すものである。
【0153】
制御部31は、まず、操作装置4が更新事業費の上限値の入力操作を受け付けたかを判定する(S11)。制御部31は、更新事業費の上限値の入力操作を受け付けるまで待機する(S11でNO)。操作装置4が更新事業費の上限値を受け付けたと制御部31が判定した場合(S11でYES)、操作取得部312は、更新事業費の上限値を取得する(S12;取得ステップ)。
【0154】
また、制御部31は、操作装置4が更新検討期間の入力操作を受け付けたかを判定する(S13)。制御部31は、更新検討期間の入力操作を受け付けるまで待機する(S13でNO)。操作装置4が更新検討期間の入力操作を受け付けたと制御部31が判定した場合(S13でYES)、操作取得部312は、更新検討期間を取得する(S14;取得ステップ)。
【0155】
本実施形態では、更新事業費の上限値および更新検討期間の入力操作の受け付けは、
図15に示す更新年度一覧画面を表示している状態で行われる。S11及びS12と、S13及びS14との処理順は問わない。
【0156】
次に、平準化処理部316は、入力された更新検討期間において、各年度における更新事業費が、入力された更新事業費の上限値以下となるように、更新事業費を平準化する(S15;平準化処理ステップ)。
【0157】
本実施形態では、平準化処理部316は、各機器に設定された優先順位に従って、該当する年度に更新費を加算していく。平準化処理部316は、更新費を加算した年度において更新事業費が上限値を超えた場合には、当該年度に加算した更新費を削除し、当該更新費を別年度に加算する。平準化処理部316は、この処理を繰り返す。また、平準化処理部316は、ある年度の更新事業費が隣接する年度の更新事業費よりも所定値以上低い場合には、別年度からある年度に更新費を移行することにより、更新事業費の更なる平準化を行ってもよい。
【0158】
第1出力部381は、平準化後の各年度の更新事業費を、表示装置5に出力する(S16;第1出力ステップ)。これにより、表示装置5は、平準化後の各年度の更新事業費を表示する。本実施形態では、表示装置5は、平準化後の各年度の更新事業費を、
図17に示すようなグラフとして表示する。
【0159】
〔その他の構成例〕
上述した判定点および評価式は、あくまで一例を示したにすぎない。対象機器の実際の劣化度合いに応じた評価が反映されるように評価点を算出できるように、設定されている設問数および/または評価区分数に応じて判定点および評価式が準備されていればよい。
【0160】
また、評価項目ごとに評価点が算出されなくてもよい。例えば、2以上の評価項目において設定された設問に対する判定点に基づき、評価点が算出されてもよい。すなわち、複数の評価項目を含む評価項目群に対して1の評価点が算出されてもよい。これには、対象機器に設定された全ての設問に対する判定点に基づく評価点の算出も含まれる。この場合も、上述のように、設定されている設問数および/または評価区分数に応じて判定点および評価式が準備されていればよい。
【0161】
また、設定部334は、1回の調査において算出された評価項目ごとの評価点の合計(総合点)を用いて、各機器の優先順位を設定しなくてもよい。設定部334は、予め設定された特定の評価項目の評価点を用いて、各機器の優先順位を設定してもよい。特定の評価項目として、2以上の評価項目(但し、全ての評価項目を除く)が設定されている場合には、設定部334は、2以上の評価項目の合計を用いて、各機器の優先順位を設定してもよい。
【0162】
また、第2算出部315は、法定耐用年数、独自耐用年数および延命化策年数(第1~第3周期パターン)ではない、各機器に設定された更新周期を用いて、各年度の更新事業費の算出等を行ってもよい。上記3つの周期パターン以外の周期パターンは、複数準備されていてもよい。制御部31は、例えば、上記3つのパターン以外の周期パターンを、各機器の独自耐用年数および/または延命化策年数と入れ替えて設定してもよい。
【0163】
平準化処理部316および健全度評価部317の処理において、法定耐用年数に代えて、独自耐用年数または延命化策年数を用いてもよい。
【0164】
制御部31は、平準化後の更新事業費に修繕費および点検費を加算してもよい。この場合、第1出力部381は、平準化後の更新事業費に修繕費および点検費を加算したデータを、表示装置5に出力してもよい。これにより、表示装置5は、修繕費および点検費を加算した状態において、平準化後の更新事業費の推移を表示できる。
【0165】
〔出力装置およびその制御方法による主たる効果〕
上述したように、制御部31は、入力操作による上限値の取得と、当該上限値に基づき平準化した更新事業費の出力とを行うことにより、更新検討期間に亘る更新事業費をユーザが所望するように最適化できる。そのため、年度ごとの更新事業費に対する金銭的な負担度を平準化できる。
【0166】
本実施形態では、制御部31は、更新事業費を平準化した結果、第1~第3周期パターンのそれぞれについての算出結果等、および、健全度の評価結果を、表示装置5に出力する。従って、ユーザは、表示装置5に表示されるこれらの情報を参考にしながら、更新事業費の推移が所望する推移となるよう上限値を適宜調整できる。そのため、制御部31は、ユーザに簡易な操作を行わせるだけで、かつ、ユーザに不要な手間を生じさせることなく、ユーザが所望するように更新事業費を最適化できる。
【0167】
〔ソフトウェアによる実現例〕
出力装置3(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部31に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0168】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0169】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0170】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0171】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0172】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0173】
3 出力装置
312 操作取得部(取得部)
315 第2算出部
316 平準化処理部
333 第1算出部
334 設定部
361 加算部
362 判定部
381 第1出力部