(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025619
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】モータ制御装置及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B62K 17/00 20060101AFI20250214BHJP
B62J 45/412 20200101ALI20250214BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20250214BHJP
B62M 6/45 20100101ALN20250214BHJP
【FI】
B62K17/00
B62J45/412
B62J45/00
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130524
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】512082369
【氏名又は名称】株式会社エムプランニング
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 淳
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BB10
3D212BB13
3D212BB24
3D212BB42
3D212BB53
3D212BB65
3D212BB72
3D212BB74
3D212BB85
(57)【要約】
【課題】搭乗者が地面をキックする必要がない電動キックボードを提供する。
【解決手段】電動キックボードのモータ制御装置10において、走行速度を指示するアクセル26と、発進ボタン25と、モータ23と、アクセル26のオン状態を判定するアクセル判定部13と、発進ボタン25のオン状態を判定する発進ボタン判定部14と、アクセル26がオン状態でかつ発進ボタン25がオン状態である場合に、走行指示が発出されたものとしてモータ23を駆動する制御信号を駆動部20に出力する走行制御部17とを備えた。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動キックボードのモータ制御装置において、
走行速度を指示するアクセルと、
モータと、
発進ボタンと、
前記アクセルのオン状態を判定するアクセル判定部と、
前記発進ボタンのオン状態を判定する発進ボタン判定部と、
前記アクセルがオン状態でかつ前記発進ボタンがオン状態である場合に、走行指示が発出されたものとして前記モータを駆動する制御信号を出力する走行制御部と
を備えたモータ制御装置。
【請求項2】
速度センサと、
前記速度センサにより移動速度を判定する移動速度判定部と
を備え、
前記走行制御部は、前記走行指示が発出された時の前記移動速度がゼロの場合に前記モータを駆動する制御信号を出力する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
速度センサと、
前記速度センサにより移動速度を判定する移動速度判定部と
を備え、
前記走行制御部は、前記走行指示が発出された時の前記移動速度があらかじめ記憶部に記憶した規定速度未満の場合に、前記モータを駆動する制御信号を出力する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
電動キックボードのモータ制御装置において、
走行速度を指示するアクセルと、
モータと、
発進ボタンと、
前記アクセルのオン状態を判定するアクセル判定部と、
前記発進ボタンのオン状態を判定する発進ボタン判定部と、
前記モータを駆動する制御信号を出力する走行制御部と、
前記アクセルがオン状態でかつ前記発進ボタンがオン状態である場合に、前記モータを前記アクセルにより指示された走行速度よりも低速で回転させる制御信号を出力する低速発進部を備えたモータ制御装置。
【請求項5】
速度センサと、
前記速度センサにより移動速度を判定する移動速度判定部と
を備え、
前記低速発進部は、前記移動速度が前記アクセルの指示している走行速度になるまで、前記走行制御部が前記アクセルの指示している走行速度にする時間よりも長い時間をかけて、前記モータの回転を漸増させる制御信号を出力する請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
電動キックボードのモータ制御装置において、
走行速度を指示するアクセルと、
モータと、
発進ボタンと、
前記アクセルのオン状態を判定するアクセル判定部と、
前記発進ボタンのオン状態を判定する発進ボタン判定部と、
前記発進ボタンがオン状態である場合に、前記アクセルの状態にかかわらず、走行指示が発出されたものとして前記モータを駆動する制御信号を出力し、走行を開始した後に、前記アクセルのオン状態を判定し、前記アクセルがオン状態であれば、前記アクセルの指示している走行速度になるように前記モータを駆動する制御信号を出力する走行制御部と
を備えたモータ制御装置。
【請求項7】
アクセルと、発進ボタンと、モータとを備えた電動キックボードのモータ制御方法において、
前記アクセルのオン状態を判定するアクセル判定ステップと、
前記発進ボタンのオン状態を判定する発進ボタン判定ステップと、
前記アクセルがオン状態でかつ前記発進ボタンがオン状態である場合に、走行指示が発出されたものとして前記モータを駆動する制御ステップと
を備えたモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動キックボードのモータ制御装置及びモータ制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者が地面をキックして電動キックボードを動かし、時速3kmの速度になった時点でモータを始動させる電動キックボードが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、モータを始動させるに当たり、搭乗者が地面をキックする必要がない電動キックボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係るモータ制御装置は、アクセルとモータとを有する電動キックボードのモータ制御装置であり、
発進ボタンと、
前記アクセルのオン状態を判定するアクセル判定部と、
前記発進ボタンのオン状態を判定する発進ボタン判定部と、
前記アクセルがオン状態でかつ前記発進ボタンがオン状態である場合に、走行指示が発出されたものとして前記モータを駆動する制御信号を出力する走行制御部と
を備えた。
【発明の効果】
【0006】
本開示では、アクセルがオン状態でかつ発進ボタンがオン状態である場合に、走行制御部がモータを始動するので、搭乗者が地面をキックする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】モータ制御装置10のシート41を除いた平面図。
【
図5】実施の形態1のモータ制御装置10のブロック図。
【
図10】実施の形態2のモータ制御装置10のブロック図。
【
図13】発進ボタン25のみによるモータ制御方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一又は相当する部分については、その説明を適宜省略又は簡略化する。
【0009】
実施の形態1.
***電動キックボード100の構成の説明***
●●●電動キックボード100●●●
図1は、電動キックボード100を示す図である。
【0010】
●特定小型原動機付自転車●
電動キックボード100は、道路交通法における「原動機付自転車」、また定格出力によっては「普通自動二輪車」である。
電動キックボード100は、「道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)」が定める「特定小型原動機付自転車」である。
「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令(令和5年内閣府令第17号)による改正後の道路交通法施行規則(昭和35年総理府令第60号)」で定める「特定小型原動機付自転車」の基準は以下のとおりである。
車体の大きさ:
長さ:190センチメートル以下。
車幅:60センチメートル以下。
車体の構造:
・原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること。
・20キロメートル毎時を超える速度を出すことができないこと。
・走行中に最高速度の設定を変更することができないこと。
・オートマチックトランスミッション機構がとられていること。
・道路運送車両の保安基準第66条の17に規定する最高速度表示灯が備えられていること。
【0011】
以下に述べる電動キックボード100は、前提として、特定小型原動機付自転車に該当する構成と機能を有しているものとする。
【0012】
●特例特定小型原動機付自転車●
電動キックボード100は、「特例特定小型原動機付自転車」である。
「特例特定小型原動機付自転車」とは、「特定小型原動機付自転車」のうち、次の1~5のいずれにも該当するもので、他の車両を牽引していないもの(遠隔操作により通行させることができるものを除く。)をいう。
1.歩道等を通行する間、最高速度表示灯を点滅させていること。
2.最高速度表示灯を点滅させている間は、車体の構造上、6キロメートル毎時を超える速度を出すことができないものであること。
(アクセルの操作により特定小型原動機付自転車を6キロメートル毎時を超えない速度で走行させている場合は、この要件を満たすものではないため、特例特定小型原動機付自転車には該当しない。)
3.側車を付けていないこと。
4.ブレーキが走行中容易に操作できる位置にあること。
5.鋭い突出部のないこと。
【0013】
以下に述べる電動キックボード100は、前提として、特例特定小型原動機付自転車に該当する構成と機能を有しているものとする。
【0014】
電動キックボード100は、自転車に使用されるペダルを有していない。
電動キックボード100は、電動アシスト自転車ではない。
電動キックボード100は、主たる筐体として、踏み台31と、前フレーム32と、後フレーム33とを有する。
【0015】
●踏み台31●
踏み台31は、走行中に足を乗せる平面台である。
踏み台31のサイドには、電動キックボード100を駐輪させるスタンド34がある。
踏み台31は、モータ制御装置10と、駆動部20と、電池22とを、内蔵している。
踏み台31の後部には、シートパイプ42が上方に向かって固定されている。
踏み台31の後部のサイドには、後フレーム33が後方に向かって固定されている。
踏み台31の前部には、前フレーム32が上方に向かって固定されている。
【0016】
●前フレーム32●
前フレーム32は、踏み台31の前部の中央に1個のみ固定されている。
前フレーム32は、前輪カバー54に沿って前方にカーブしている。
前フレーム32は、先端にヘッドパイプ62を固定している。
【0017】
●後フレーム33●
後フレーム33は、踏み台31の後方サイドから、後輪52の車輪軸Xに向かって斜め上に伸びている。
後フレーム33は、先端に後輪52の車輪軸Xを固定している。
後フレーム33は、
図4に示すように、右後フレーム33Rと左後フレーム33Lとを有する。
【0018】
●前輪51と後輪52●
踏み台31の前後には、1輪のみの前輪51と、前輪カバー54と、1輪のみの後輪52と、後輪カバー55とがある。
【0019】
●シート41●
シート41は、座席となるサドルと、サドルを上部に固定したパイプ状のサドルポストとを有する。
シート41のサドルポストは、シートパイプ42に挿入されて固定される。
シート41の高さは、サドルポストの挿入量を変更することにより、調節することができる。
【0020】
●ハンドル61●
ハンドル61は、T字形状をしている。
ハンドル61は、左右に伸び両端にグリップ64を有するハンドルバーと、ハンドルバーから下に伸びたハンドルポストを有する。
ハンドル61の高さは、ハンドルポストの挿入量を変更することにより、調節することができる。
ハンドル61は、踏み台の前方に回転可能に取り付けられている。
ハンドル61は、電源スイッチ21と、発進ボタン25と、アクセル26と、ブレーキレバー27とを固定している。
ハンドル61は、一方のグリップ64の近傍にアクセル26を取り付けている。
ハンドル61は、他方のグリップ64の近傍に発進ボタン25を取り付けている。
図示していないが、電源スイッチ21と、発進ボタン25と、アクセル26とは、モータ制御装置10に電線で接続されている。
【0021】
●ヘッドパイプ62●
ヘッドパイプ62は、上部からハンドルポストの下部を挿入している。
ヘッドパイプ62は、下部からフロントフォーク63の上部を挿入している。
【0022】
●フロントフォーク63●
フロントフォーク63は、前輪51の車輪軸Xを中心にして前輪51を回転可能に取り付けている。
フロントフォーク63の上部は、ヘッドパイプ62に下から挿入されている。
フロントフォーク63は、ヘッドパイプ62に回転可能に取り付けられている。
フロントフォーク63は、ハンドル61の回転操作により、ヘッドパイプ62のパイプ軸を中心にして回転する。
【0023】
●モータ23●
モータ23は、後フレーム33に固定されている。
モータ23の回転により、後輪52が回転する。
【0024】
●側面視の補助フレーム43●
図2に示すように、側面視で、補助フレーム43は、上直線部431と、下直線部432と、屈曲部433とを有する。
【0025】
●平面視の補助フレーム43●
図4に示すように、平面視で、補助フレーム43は、外伸部434と、下伸部435と、弧状曲部436とを有する。
【0026】
●駆動部20●
駆動部20は、モータ制御装置10からの制御信号によりモータ23を駆動する。
【0027】
●電源スイッチ21●
電源スイッチ21は、電動キックボード100の電源スイッチである。
電源スイッチ21は、電池22の電力を、モータ制御装置10と駆動部20とモータ23とに供給するスイッチである。
電源スイッチ21は、ハンドル61の左のグリップ64の内側に固定されている。
電源スイッチ21は、左手が左のグリップ64を握った状態で、左手の親指で操作することができる。
電源スイッチ21は、ハンドルバーの中央部にあってもよい。
電源スイッチ21は、ハンドルポストにあってもよい。
【0028】
●電池22●
電池22は、蓄電池である。
【0029】
●モータ23●
モータ23の回転により、後輪52が回転する。
【0030】
●速度センサ24●
速度センサ24は、モータ23の回転速度を検知して電動キックボード100の移動速度を検出する。
速度センサ24は、後輪52の回転速度を検知してもよい。
速度センサ24は、モータ23又は後フレーム33に固定されている。
【0031】
●発進ボタン25●
発進ボタン25は、オン状態で電動キックボード100の発進を許可するボタンである。
発進ボタン25は、ハンドル61の左のグリップ64の内側に固定されている。
発進ボタン25は、左手が左のグリップ64を握った状態で、左手の親指で操作することができる。
発進ボタン25は、電源スイッチ21とともに固定されてもよい。
発進ボタン25と電源スイッチ21は、離れた位置にあってもよい。
【0032】
●アクセル26●
アクセル26は、モータ制御装置10に対して走行速度を指示する。
アクセル26は、回転量又は回転角度を変更することにより走行速度を指示する。
アクセル26は、ハンドル61の右のグリップ64の内側に固定されている。
アクセル26は、右手が右のグリップ64を握った状態で、右手の親指又は右手の手のひらで操作することができる。
【0033】
●ブレーキレバー27●
ブレーキレバー27は、車輪に取り付けられたブレーキ機構(図示なし)を動作させる。
ブレーキレバー27は、ワイヤでブレーキ機構と接続されている。
ブレーキレバー27は、ブレーキ機構により、前輪51又は後輪52との回転を抑制する。
【0034】
●補助フレーム43●
補助フレーム43は、シートパイプ42を後方から支える。
補助フレーム43は、シートパイプ42が後方に倒れることを防止する。
補助フレーム43は、シートパイプ42が後方へ傾斜しているので、シートパイプ42の傾斜を維持するために設けられている。
補助フレーム43は、後輪52を挟んで2本ある。
補助フレーム43の下端は、後フレーム33の後端と車輪軸Xとに固定されている。
補助フレーム43の下端には、後輪52の車輪軸Xを通す貫通孔がある。
補助フレーム43の下端は、車輪軸Xを通した状態で、車輪軸Xに取り付けられたナットにより、固定されている。
補助フレーム43の下端は、側面視で、後フレーム33との交差角度Sが90度であり、補助フレーム43と後フレーム33とは直交している。
補助フレーム43の上端は、シートパイプ42の上部に溶接止めされている。
補助フレーム43の上端は、シートパイプ42の上部に固定されている。
補助フレーム43の上端は、シートパイプ42の長さの半分より上に固定されている。
補助フレーム43の上端は、シートパイプ42の長さの7割より上に固定されていることが望ましい。
補助フレーム43の上端は、シートパイプ42の長さの9割より上に固定されていることが望ましい。
補助フレーム43は、シートパイプ42の環形状を保持する機能も有する。
補助フレーム43が固定された位置でシートパイプ42は環形状の剛性が強化される。
補助フレーム43の上端は、シート41が最下位にあるときシートポストの下端が存在する位置より上に固定されている。
補助フレーム43の上端は、シート41が最上位にあるときシートポストの下端が存在する位置より上に固定されていることが望ましい。
補助フレーム43の上端は、シートパイプ42の上端の環形状の剛性を強化するため、シートパイプ42の上端に固定されていることが望ましい。
シートパイプ42にかかる後方向の力は、補助フレーム43により、車輪軸Xで受けることになる。
体重又は衝撃によりシートパイプ42が後方に倒れようとしても、補助フレーム43が車輪軸Xで支えているのでシートパイプ42が傾くことはない。
【0035】
補助フレーム43は、側面視で、く字形状に曲がっていなくてもよい。
補助フレーム43は、側面視で、全体が円弧状でもよい。
補助フレーム43は、側面視で、全体が直線状でもよい。
補助フレーム43は、平面視で、全体が円弧状でもよい。
補助フレーム43は、平面視で、全体が直線状でもよい。
補助フレーム43は、二股に分かれたフォーク形状であってもよい。
シートパイプ42と2本の直線状の補助フレーム43で三脚形状を構成してもよい。
【0036】
●補強フレーム44●
補強フレーム44は、水平の直線状のパイプである。
補強フレーム44は、2本の補助フレームの間に固定されている。
補強フレーム44は、補助フレーム43が変形することを防止する。
【0037】
●前輪51と後輪52●
前輪51と後輪52との直径が同じである。
前輪51と後輪52とは、空気入れタイヤである。
空気入れタイヤは以下の特徴がある。
1.空気がクッションの役割を果たし、乗り心地が良い。
2.路面の凹凸を吸収する。衝突時に衝撃を和らげる。
3.タイヤと路面との間に生じる騒音が小さくなる。
4.耐久性を維持しながら電動キックボード100と搭乗者との重量を支える。
5.パンクしても容易に交換することができる。
【0038】
●●●寸法と角度●●●
図2に示す寸法と角度の好適な例は、以下のとおりである。
A:高さ1237mm
B:全長1415mm
C:車輪軸間隔1000mm
D:踏み台長322mm
E:傾斜角度105度
F:傾斜角度168度
G:直径32mm
H:直径22mm
I:シート高さ560~760mm
J:直径410mm
K:直径50mm
L:24mm
M:踏み台高さ63.5mm
N:屈曲角度140度
O:地上高118mm
P:型材75mm*40mm
Q:傾斜角度105度
S:交差角度90度
【0039】
図3に示す寸法と角度の好適な例は、以下のとおりである。
W:ハンドル幅580mm
V:踏み台幅220mm
【0040】
電動キックボード100の特徴点は、以下のとおりである。
●シートパイプ42の後方傾斜●(
図2)
シートパイプ42の水平方向に対する後方への傾斜角度Eが90度より大きい。
傾斜角度Eは95度以上115度以下であることが望ましい。
さらに、傾斜角度Eは100度以上110度以下であることが望ましく、105度が最適である。
シートパイプ42の後方への傾斜のため、シートパイプ42が踏み台31に対して垂直に固定された場合に比べて、踏み台31の上空の空間が広くなり、搭乗者が乗降しやすい。
また、シート41の前端が踏み台31の後端より後方にある。
また、シート41の前端がシートパイプ42の下端より後方にある。
よって、踏み台31の上空の空間が広くなり、搭乗者が乗降しやすい。
また、搭乗中に立ち乗りしてもシート41の前端が搭乗者の背中又は臀部にぶつからない。
【0041】
●搭乗者の体重位置(シート中央C位置)●
シートパイプ42の後方への傾斜により、シート41はシートパイプ42の下端より後方に配置される。
シート41のシート前後方向の中央C(あるいはシートポストの上端)は、シート41の高さが最下位から最上位までのいずれの高さにされた場合でも、後輪52のタイヤの先端と後輪52の車輪軸Xとの間の上部に位置する。
このため、シート41に着席した搭乗者の体重は、後輪52のタイヤの先端と後輪52の車輪軸Xとの間において、下方に向けてかかる。
よって、前輪51が障害物に当たっても電動キックボード100が前のめりになることを防止できる。さらに、前輪51よりも後輪52に多くの体重がかかるため前輪51と路面との摩擦が小さくなりハンドル61の回転操作が軽快になる。
【0042】
●傾斜角度Q=傾斜角度E●
ヘッドパイプ62とシートパイプ42とは平行である。
ヘッドパイプ62の水平方向に対する後方への傾斜角度Qとシートパイプ42の水平方向に対する後方への傾斜角度Eとが同じである。
このため、シート41の高さ又はハンドル61の高さを変化させてもシート41とハンドル61との間隔は変わらないから、高さ変更による搭乗者の違和感がなく、ハンドル操作の違和感が生じない。
【0043】
●傾斜角度Q<傾斜角度E●
シートパイプ42は、ヘッドパイプ62よりも後方に傾斜していてもよい。
シートパイプ42の水平方向に対する後方への傾斜角度Eは、ヘッドパイプ62の水平方向に対する後方への傾斜角度Qより大きくても構わない。
傾斜角度Eが傾斜角度Qより大きい場合は、シート41の高さ又はハンドル61の高さを高くすることにより、シート41とハンドル61との間隔は大きくなる。
通常、体格が大きい搭乗者がシート41の高さ(及びハンドル61の高さ)を高くするから、体格が大きい搭乗者にとってシート41の高さ(及びハンドル61の高さ)を高くすることにより、シート41とハンドル61との間隔が広くなることは都合がよい。
【0044】
●側面視の補助フレーム43●(
図2)
補助フレーム43は、
図2のとおり、側面視で、上直線部431と、下直線部432と、屈曲部433とを有する。
上直線部431は、側面視で、補助フレーム43の上部にある。
上直線部431は、側面視で、シートパイプ42から下に傾斜した直線状のパイプである。
下直線部432は、側面視で、補助フレーム43の下部にある。
下直線部432は、側面視で、上直線部431から下に傾斜した直線状のパイプである。
屈曲部433は、側面視で、上直線部431と下直線部432との間にある。
屈曲部433は、側面視で、屈曲角度Nが140度の屈曲した部分である。
屈曲部433は、側面視で、後方に凸形状の屈曲した部分である。
屈曲部433は、なくてもよく、側面視で、上直線部431と下直線部432が直線状になっていてもよい。
屈曲部433は、円弧状でなくてもよい。
屈曲部433は、角ばっていてもよい。
屈曲部433は、屈曲角度Nが140度でなくてもよい。
屈曲部433は、屈曲角度Nが90度以上180度未満であればよい。
屈曲部433は、屈曲角度Nは、120度以上160度未満が望ましい。
【0045】
●通常衝撃と屈曲部433との関係●(
図2)
補助フレーム43のパイプの直径Hは、シートパイプ42のパイプの直径Gより小さい。
補助フレーム43の強度は、シートパイプ42の強度より弱い。
補助フレーム43の強度は、後フレーム33の強度より弱い。
補助フレーム43のほぼ中央に屈曲部433がある。
したがって、屈曲部433はバネの役目を果たすことができ、屈曲部433があることにより走行中に生じる衝撃を吸収することができる。
屈曲角度Nは、停止時は140度であるが、例えば、走行中の衝撃により139度あるいは141度のように変化する。
したがって、後輪52からシート41への路面から受ける衝撃は、まず後輪52の空気タイヤで吸収し、さらに、屈曲部433の屈曲角度Nの変化により吸収することができる。
【0046】
●過大衝撃と屈曲部433との関係●(
図2)
補助フレーム43には屈曲部433があるため、屈曲部433で折れ曲がりやすい。
屈曲部433は、衝突事故によりシートパイプ42に対して許容範囲以上の想定外の力がかかった場合に、シートパイプ42の後方への傾斜を許容するために設けられている。
屈曲部433が過大衝撃により140度未満の角度になって後方に折れ曲がることにより、シートパイプ42(及びシートポスト)が直線形状を保ったまま後方に倒れることができる。
また、補助フレーム43の下端の貫通孔は、車輪軸Xを通した状態で、車輪軸Xに取り付けられている。
屈曲部433が過大衝撃により140度未満の角度になって折れ曲がる場合には、補助フレーム43の下端の貫通孔が車輪軸Xを中心に回転して、補助フレーム43と後フレーム33との交差角度Sが90度超になる。
このため、シートパイプ42(及びシートポスト)の破損断裂による搭乗者の人体損傷を防止することができる。
【0047】
●補助フレーム43と後フレーム33との関係●(
図2)
側面視で、後フレーム33と、シートパイプ42と、補助フレーム43とにより、略三角形状を形成している。
あるいは、側面視で、後フレーム33と、シートパイプ42と、補助フレーム43とにより、後フレーム33を底辺とする略二等辺三角形を形成している。
補助フレーム43は、シートパイプ42の傾斜を保つとともに、後フレーム33の傾斜を保っている。
踏み台31と後フレーム33とは、側面視で水平ではない。踏み台31に対して後フレーム33は、168度の傾斜角度Hで取り付けられている。
後フレーム33の前方端は、踏み台31の後部に溶接止めされている。
後フレーム33の後方端には、後輪52の車輪軸Xを通す貫通孔がある。
後フレーム33の後方端は、車輪軸Xを通した状態で、車輪軸Xに取り付けられたナットにより、固定されている。
後フレーム33にかかる上下方向の力は、車輪軸Xを介して補助フレーム43で受けることになる。
体重又は衝撃により後フレーム33が上下方向に変形しようとしても、補助フレーム43が車輪軸Xで支えているので、後フレーム33の変形を防止することができる。
【0048】
●車幅●(
図3)
図3のように、平面視で、電動キックボード100のハンドル61を除く車幅(左右方向の長さ)は、踏み台31の踏み台幅V(220mm)が最大である。
ハンドル61を除く車幅(踏み台幅V)は、ハンドル61のハンドル幅W(580mm)の半分以下である。
ハンドル61を除く車幅(踏み台幅V)は、ハンドル61のハンドル幅W(580mm)の30%以上40%以下である。
平面視で、ハンドル61のみが、踏み台幅Vより大きい。
平面視で、シート41の幅は、踏み台幅Vより小さい。
平面視で、2本の後フレーム33の幅は、踏み台幅Vより小さい。
平面視で、2本の補助フレーム43の幅は、踏み台幅Vより小さい。
したがって、電動キックボード100のハンドル61の後部には、突出したものがなく、安全な走行ができる。
【0049】
●平面視の補助フレーム43●(
図4)
補助フレーム43は、平面視で、電動キックボード100の外郭の内側に存在している。
補助フレーム43は、平面視で、踏み台31と後フレーム33の外郭の内側に存在している。
補助フレーム43は、
図4のとおり、平面視で、外伸部434と、下伸部435と、弧状曲部436を有する。
外伸部434は、平面視で、補助フレーム43の上部にある。
外伸部434は、平面視で、シートパイプ42の外側に直線状に伸びている。
外伸部434は、平面視で、シートパイプ42の左右から、前後方向に対して直角方向に伸びている。
下伸部435は、平面視で、補助フレーム43の下部にある。
下伸部435は、平面視で、外伸部434から後方に直線状に伸びている。
弧状曲部436は、平面視で、外伸部434と下伸部435との間にある。
弧状曲部436は、平面視で、中心角が90度の円弧の曲部である。
【0050】
●外伸部434●(
図4)
外伸部434は、シートパイプ42の左右両側に溶接止めされている。
外伸部434は、シートパイプ42の左右方向にまっすぐ伸びているので、シートパイプ42が左右に倒れるのを防止する。
外伸部434はなくてもよい。外伸部434がない場合は、弧状曲部436の端部がシートパイプ42の左右両側に溶接止めされる。
【0051】
●下伸部435●(
図4)
平面視で、右補助フレーム43Rの下伸部435と左補助フレーム43Lの下伸部435とは、平行である。
右補助フレーム43Rの下伸部435と左補助フレーム43Lの下伸部435との内側幅は、後輪52のタイヤ幅と後輪カバー55のカバー幅よりも大きい。
右補助フレーム43Rの下伸部435と左補助フレーム43Lの下伸部435との外側幅は、踏み台31の踏み台幅Vと同じか、踏み台31の踏み台幅Vよりも小さい。
右補助フレーム43Rの下伸部435と左補助フレーム43Lの下伸部435との外側幅は、後フレーム33の幅と同じか、後フレーム33の幅よりも小さい。
平面視で、右補助フレーム43Rの下伸部435と左補助フレーム43Lの下伸部435とは、後フレーム33の外郭の内側に存在している。
【0052】
●弧状曲部436●(
図4)
弧状曲部436は、平面視で、外伸部434と下伸部435とが直角方向になるように外伸部434と下伸部435とを連結している。
弧状曲部436は、
図3のように、平面視で、シート41の下に隠れた状態で配置されている。
弧状曲部436は、シート41から左右にはみ出ていないので、搭乗者の乗降を邪魔することがない。
弧状曲部436は、前方と左右とに向かって凸形状の滑らかな円弧形状を呈しているので、搭乗者を傷つけることはなく、物体をひっかけることもない。
【0053】
●前輪51と後輪52の直径●(
図2)
電動キックボード100の全長Bに対して、前輪51と後輪52との直径の合計値は、60%(50%以上)である。
電動キックボード100の全長Bに対して、前輪51と後輪52との各直径Jは、30%(28.9%)を占めている。
直径J÷全長B*100=410mm÷1415mm*100=28.9%
車輪の直径が大きい場合、以下の利点がある。
1.タイヤの回転エネルギーを地面に伝えやすい。
2.はずみ車効果により速度の安定化が図れる。
3.タイヤの寿命が長くなる。
4.空気入れタイヤを採用できる。
踏み台31の前後の長さは、全長Bに対して最大で40%になる。
踏み台31の前後の長さが短いという欠点を補うため、シートパイプ42を後方へ傾斜させ、踏み台31の上空間を広くしている。
【0054】
***モータ制御装置10の構成の説明***
●●●モータ制御装置10●●●(
図5)
図5は、モータ制御装置10のブロック図である。
モータ制御装置10は、踏み台31に内蔵されている。
モータ制御装置10は、プロセッサ11とメモリ12と記憶部18とを有する。
モータ制御装置10は、アクセル26と発進ボタン25とがオン状態の場合に、電動キックボード100を発進させる制御信号を駆動部20へ出力する。
【0055】
以下に述べるモータ制御方法は、コンピュータであるモータ制御装置10を用いて実現することができる。
コンピュータは、プロセッサ11とメモリ12と記憶部18と図示していない入出力インタフェースといったハードウェアを備える。これらのハードウェアは、信号線を介して互いに接続されている。
【0056】
プロセッサ11は、演算処理を行うICであり、他のハードウェアを制御する。
例えば、プロセッサ11は、CPUである。
ICは、Integrated Circuitの略称である。
CPUは、Central Processing Unitの略称である。
【0057】
メモリ12は、揮発性の記憶装置である。
メモリ12は、主記憶装置又はメインメモリとも呼ばれる。
例えば、メモリ12はRAMである。
メモリ12に記憶されたデータは必要に応じて記憶部18に保存される。
RAMは、Random Access Memoryの略称である。
【0058】
記憶部18は、不揮発性の記憶装置である。
例えば、記憶部18は、ROM、HDD、フラッシュメモリ又はこれらの組み合わせである。
記憶部18に記憶されたデータは必要に応じてメモリ12にロードされる。
ROMは、Read Only Memoryの略称である。
HDDは、Hard Disk Driveの略称である。
【0059】
入出力インタフェースは、入力装置及び出力装置が接続されるポートである。
例えば、入出力インタフェースはUSB端子であり、入力装置はキーボード及びマウスであり、出力装置はディスプレイ装置である。
コンピュータの入出力は入出力インタフェースを用いて行われる。
USBは、Universal Serial Busの略称である。
【0060】
コンピュータは、制御プログラムを備える。制御プログラムはソフトウェアである。
【0061】
制御プログラムは、メモリ12にロードされて、プロセッサ11によって実行される。
記憶部18には、さらに、OSが記憶されている。OSの少なくとも一部は、メモリ12にロードされて、プロセッサ11によって実行される。
プロセッサ11は、OSを実行しながら、制御プログラムを実行する。
OSは、Operating Systemの略称である。
【0062】
プログラムとプログラムの入出力データとは、記憶デバイスに記憶される。
メモリ12と記憶部18は、記憶デバイスとして機能する。
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。
プログラムは、プログラムプロダクトとも呼ばれる。
プロセッサ11及びプロセッサ11と協働する回路とをサーキットリと呼ぶ。
【0063】
以下に述べるモータ制御装置10の動作は、制御プログラムを使用して実現する。
【0064】
●プロセッサ11●
プロセッサ11は、アクセル判定部13と、発進ボタン判定部14と、移動速度判定部15と、走行制御部17とを有する。
アクセル判定部13と、発進ボタン判定部14と、移動速度判定部15と、走行制御部17は、制御プログラムとして実現することができる。
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラム及びデータを読み込み、プログラムを実行する。
【0065】
●メモリ12●
メモリ12は、プログラム及びデータを記憶する。
メモリ12は、揮発性メモリである。
【0066】
●記憶部18●
記憶部18は、プログラム及びデータを記憶する。
記憶部18は、不揮発性メモリである。
記憶部18は、予め、規定速度として時速3kmという速度を記憶しているものとする。
【0067】
●アクセル判定部13●
アクセル判定部13は、アクセル26のオン状態を判定する。
アクセル判定部13は、アクセル26が指定する電動キックボード100の速度を判定する。
【0068】
●発進ボタン判定部14●
発進ボタン判定部14は、発進ボタン25のオン状態を判定する。
【0069】
●移動速度判定部15●
移動速度判定部15は、速度センサ24により電動キックボード100の移動速度を判定する。
【0070】
●走行制御部17●
走行制御部17は、アクセル26がオン状態でかつ発進ボタン25がオン状態である場合に、走行指示が発出されたものとしてモータ23を駆動する制御信号を生成して駆動部20に出力する。
【0071】
***モータ制御装置10の制御方法の説明***
●アクセル26と発進ボタン25による制御●(
図6)
以下、
図6により、モータ制御装置10のモータ制御方法について説明する。
モータ制御方法は、アクセル26と、発進ボタン25と、モータ23とを備えた電動キックボード100のモータ制御方法である。
モータ制御方法は、アクセル判定ステップS11と発進ボタン判定ステップS14と走行制御ステップS20とを備える。
【0072】
●搭乗者●
搭乗者は、以下の動作をする。
スタンド34を折りたたむ。
右足を踏み台31に載せ、左足を地面についている。
電動キックボード100の電源スイッチ21をオンにする。
右手で右のグリップ64をにぎり、右の親指でアクセル26をオンにする。
左手で左のグリップ64をにぎり、左の親指で発進ボタン25をオンにする。
【0073】
電源スイッチ21がオンになると、
図6に示すモータ制御方法が起動する。
アクセル判定ステップS11では、アクセル判定部13がアクセル26のオン状態を判定する。アクセル26がオフ状態である場合は、アクセル判定ステップS11を繰り返す。
発進ボタン判定ステップS14では、発進ボタン判定部14が発進ボタン25のオン状態を判定する。発進ボタン25がオフ状態である場合は、アクセル判定ステップS11へ戻る。
走行制御ステップS20では、アクセル26がオン状態でかつ発進ボタン25がオン状態である場合に、走行指示が発出されたものとして、走行制御部17が、モータ23を駆動する制御信号を生成して駆動部20に出力する。
駆動部20は、制御信号に従い、電池22の電力によりモータ23を回転させ、電動キックボード100の走行を開始させる。
電動キックボード100の走行が開始されると、搭乗者は地面から左足を離し、踏み台31に載せる。
その後、走行制御部17は、アクセル26により指示された速度で電動キックボード100を走行させる。
【0074】
●モータ制御方法の変形例●
●アクセル26・発進ボタン25・速度センサ24による制御●(
図7)
以下、
図7により、速度センサ24を使用したモータ制御方法の変形例について説明する。
図7は、
図6のアクセル判定ステップS11と発進ボタン判定ステップS14との間に移動速度判定ステップS12を設けたものである。
移動速度判定ステップS12では、移動速度判定部15が速度センサ24の検知結果から電動キックボード100の移動速度を検出する。
電動キックボード100が停止中であれば、発進ボタン判定ステップS14に遷移する。
電動キックボード100が移動中であれば、アクセル判定ステップS11へ戻る。
結果として、電動キックボード100が停車中のみ発進ボタン25が有効になる。換言すれば、電動キックボード100が移動中の場合、発進ボタン25は無視される。
走行制御ステップS20では、アクセル26がオン状態でかつ発進ボタン25がオン状態でかつ移動速度がゼロである場合に、走行制御部17が、走行指示が発出されたものとして、走行制御部17が、モータ23を駆動する制御信号を生成して駆動部20に出力する。
【0075】
●規定速度を使用した発進●(
図8)
以下、
図8により、規定速度を使用したモータ制御方法の変形例について説明する。
図8では、移動速度判定ステップS12で、移動速度判定部15が、記憶部18に予め記憶していた規定速度(例えば時速3km)を読みだす。そして、移動速度判定部15が、速度センサ24の検知結果から、電動キックボード100の現在の移動速度が、
「速度=0」、
「0<速度<時速3km」、
「速度≧時速3km」
のいずれであるかを判定する。
【0076】
「速度=0」の場合は、電動キックボード100が停止中であり、
図7と同様に、発進ボタン判定ステップS14に遷移する。
「0<速度<時速3km」の場合は、電動キックボード100が搭乗者のキックにより移動開始中であると判定し、アクセル判定ステップS11へ戻る。
「速度≧時速3km」の場合は、電動キックボード100が搭乗者のキックにより規定速度以上になったと判定し、走行制御ステップS20に遷移する。
【0077】
結果として、電動キックボード100は以下の2通りの発進が可能になる。
1.停車中でアクセル26と発進ボタン25とがオン状態のとき。
2.搭乗者が地面をキックして電動キックボード100の速度が規定速度以上となり、アクセル26がオン状態のとき。
【0078】
●規定速度を使用した発進●(
図9)
以下、
図9により、規定速度を使用したモータ制御方法の別な変形例について説明する。
図9が
図8と異なる点は、電動キックボード100が規定速度未満で移動中あっても発進ボタン25を有効にする点である。
図9では、移動速度判定ステップS12で、移動速度判定部15が、記憶部18に予め記憶していた規定速度(例えば時速3km)を読みだす。そして、移動速度判定部15が、速度センサ24の検知結果から、電動キックボード100の現在の移動速度が、
「速度<時速3km」、
「速度≧時速3km」
のいずれであるかを判定する。
【0079】
「速度<時速3km」の場合は、電動キックボード100が停止中又は規定速度未満で移動中あり、
図7と同様に、発進ボタン判定ステップS14に遷移する。
「速度≧時速3km」の場合は、
図7と同様に、走行制御ステップS20に遷移する。
【0080】
結果として、電動キックボード100は以下の2通りの発進が可能になる。
1.停車中又は規定速度未満で移動中に、アクセル26と発進ボタン25とがオン状態のとき。
2.搭乗者が地面をキックして電動キックボード100の速度が規定速度以上となり、アクセル26がオン状態のとき。
【0081】
***実施の形態1の効果の説明***
実施の形態1のモータ制御装置10によれば、発進ボタン25を設けたので、電動キックボード100が停車中あるいは規定速度以下の場合でも、電動キックボード100の発進が可能になる。
このため、以下のように搭乗者が地面をキックして電動キックボード100の速度が規定速度以上にできない場合でも電動キックボード100を発進させることができる。
1.上り坂における発進。
2.水たまり、砂地、凹凸等によりキックしにくい路面における発進。
3.老人、女性、病人、又は、障害者等のキック力を有していない搭乗者による発進。
【0082】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0083】
***モータ制御装置10の構成の説明***
●低速発進部16を使用した発進●(
図10)
図10は、
図5のモータ制御装置10の構成に低速発進部16を追加したものである。
図10のように、モータ制御装置10は、低速発進部16を有する。
低速発進部16は、アクセル26により指示された走行速度よりもモータ23を低速で回転させる制御信号を生成し、駆動部20に出力する。
【0084】
***モータ制御装置10の制御方法の説明***
●
図6+低速発進部16●(
図11)
以下、
図11により、モータ制御装置10のモータ制御方法について説明する。
図11は、
図6の発進ボタン判定ステップS14と走行制御ステップS20との間に低速発進ステップS19を設けたものである。
低速発進ステップS19において、低速発進部16は、モータ23をアクセル26により指示された走行速度よりも低速で回転させる制御信号を生成し、駆動部20に出力する。
低速発進部16は、モータ23の回転をアクセル26により指示された走行速度になるまで漸増させる。ここで「漸増させる」とは、走行制御部17がアクセル26により指示された走行速度にするまでの時間よりも、低速発進部16がアクセル26により指示された走行速度にするまでの時間のほうが遅いことを意味する。
低速発進部16は、アクセル26により指示された走行速度になった時点で処理を終える。
その後は、走行制御ステップS20において、走行制御部17がアクセル26の指示に従って電動キックボード100を走行させる。
例えば、停止状態でアクセル26が時速5kmを指示している場合、低速発進部16は、は、電動キックボード100の速度を一気にゼロから時速5kmにするのではなく、時間をかけて時速1km、時速2km、時速3km、時速4km、時速5kmという順で速度を漸増させる。電動キックボード100の速度がアクセル26の指示速度に達した時点で低速発進部16は走行制御部17に引き継ぐ。
【0085】
●低速発進部16によるモータ制御方法の変形例●
●
図9+低速発進部16●(
図12)
以下、
図12により、モータ制御装置10の別なモータ制御方法について説明する。
図12は、
図9の発進ボタン判定ステップS14と走行制御ステップS20との間に低速発進ステップS19を設けたものである。
例えば、搭乗者のキックにより電動キックボード100が時速2kmで移動中にアクセル26が時速5kmを指示しているものとする。この場合、低速発進部16は、電動キックボード100の速度を一気に時速2kmから時速5kmにするのではなく、時間をかけて時速3km、時速4km、時速5kmという順で速度を漸増させる。電動キックボード100の速度がアクセル26の指示速度に達した時点で低速発進部16は走行制御部17に引き継ぐ。
【0086】
●
図7+低速発進部16●(図なし)
図示しないが、
図7の発進ボタン判定ステップS14と走行制御ステップS20との間に低速発進ステップS19を設けてもよい。
【0087】
●
図8+低速発進部16●(図なし)
図示しないが、
図8の発進ボタン判定ステップS14と走行制御ステップS20との間に低速発進ステップS19を設けてもよい。
【0088】
***実施の形態2の効果の説明***
低速発進部16があるため、アクセル26の操作ミスによる電動キックボード100の暴走を防止することができる。
電動キックボード100を誤って発進させた場合でも、低速発進部16があるため、低速状態のうちにブレーキにより電動キックボード100を停車させることができる。
【0089】
***変形例1***
前述したモータ制御装置10のモータ制御方法において、アクセル判定ステップS11と発進ボタン判定ステップS14と移動速度判定ステップS12との判定順番はいずれが先であっても構わない。あるいは、同時に判定してもよい。
【0090】
【0091】
***変形例3***
発進ボタン25が押された場合、以下のような警告を発する。
1.「発進します」という警告音声の発出。
2.「ビー」という警告ブザーの発出。
3.ランプの点滅による警告光の発出。
【0092】
***変形例4***
電源スイッチ21、発進ボタン25、アクセル26、又は、ブレーキレバー27の取付場所は、操作しやすい場所であれば、ハンドルバー以外でもよい。
電源スイッチ21、発進ボタン25、アクセル26、又は、ブレーキレバー27の取付場所は、ハンドルポスト、ヘッドパイプ62、前フレーム32、又は、シートパイプ42でもよい。
電源スイッチ21、発進ボタン25、アクセル26、又は、ブレーキレバー27の取付場所は、踏み台31でもよい。
電源スイッチ21、発進ボタン25、アクセル26、又は、ブレーキレバー27は、手で操作されてもよいし、足で操作されてもよい。
電源スイッチ21、又は、発進ボタン25の構造は、トグルキータイプでもよいし、プッシュキータイプでもよいし、ターンキータイプでもよい。
アクセル26、又は、ブレーキレバー27の構造は、回転式でもよいし、レバー式でもよいし、ペダル式でもよい。
【0093】
***変形例5***
図13は、発進ボタン25のみによるモータ制御方法のフローチャートである。
アクセル26の状態にかかわらず、発進ボタン25がオン状態になったら、走行制御部17が制御信号を生成して駆動部20に出力して、モータ23の回転を開始してもよい。
アクセル判定部13は、電動キックボード100の発進後にアクセル26の状態を判定する。
走行制御部17は、アクセル26がオン状態になれば、アクセル26の速度指示に従って電動キックボード100を走行させる。
走行制御部17は、アクセル26がオン状態にならなければ、電動キックボード100を停止させる。あるいは、走行制御部17は、記憶部18に記憶した基準速度で電動キックボード100を走行させ続ける。
このように、走行制御部17は、発進ボタンがオン状態である場合に、アクセルの状態にかかわらず、走行指示が発出されたものとしてモータを駆動する制御信号を出力する。
走行制御部17は、走行を開始した後に、アクセルのオン状態を判定し、アクセルがオン状態であれば、アクセルの指示している走行速度になるようにモータを駆動する制御信号を出力する。
【0094】
図13の発進ボタン判定ステップS14と走行制御ステップS20との間にブレーキがオン状態であることを判定するブレーキ判定ステップを設け、ブレーキがオン状態のときに走行制御ステップS20を動作させてもよい。
結果として、発進ボタン25がオン状態で、ブレーキがオン状態のとき、電動キックボード100の走行が開始できる。
図13の発進ボタン判定ステップS14と走行制御ステップS20との間に低速発進ステップS19を設けてもよい。
【0095】
***モータ制御装置10の特徴***
電動キックボード100のモータ制御装置10は、
アクセル26のオン状態を判定するアクセル判定部13と、
発進ボタン25のオン状態を判定する発進ボタン判定部14と、
アクセル26がオン状態でかつ発進ボタン25がオン状態である場合に、走行指示が発出されたものとしてモータ23を駆動する走行制御部17と
を備えた。
【0096】
電動キックボード100のモータ制御装置10は、
速度センサ24により移動速度を判定する移動速度判定部15と
を備え、
走行制御部17は、走行指示が発出された時の移動速度がゼロの場合にモータ23を駆動する。
【0097】
走行制御部17は、走行指示が発出された時の移動速度があらかじめ記憶部18に記憶した規定速度未満の場合に、モータ23を駆動してもよい。
【0098】
電動キックボード100のモータ制御装置10は、
アクセル26がオン状態でかつ発進ボタン25がオン状態である場合に、モータ23をアクセル26により指示された走行速度よりも低速で回転させる低速発進部16を備える。
【0099】
低速発進部16は、移動速度がアクセル26の指示している走行速度になるまでモータ23の回転を漸増させる。
低速発進部16は、移動速度がアクセル26の指示している走行速度になるまで、走行制御部17がアクセル26の指示している走行速度にする時間よりも長時間をかけて、モータ23の回転を漸増させる制御信号を出力する。
【0100】
***モータ制御装置10のモータ制御方法の特徴***
アクセル26と、発進ボタン25と、モータ23とを備えた電動キックボードのモータ制御方法は、
アクセル26のオン状態を判定するアクセル判定ステップS11と、
発進ボタン25のオン状態を判定する発進ボタン判定ステップS14と、
アクセル26がオン状態でかつ発進ボタン25がオン状態である場合に、走行指示が発出されたものとしてモータ23を駆動する走行制御ステップS20と
を備える。
【0101】
モータ制御方法は、速度センサ24の検知結果から電動キックボード100の移動速度を検出する移動速度判定ステップS12を備え、
走行制御ステップS20では、電動キックボード100の移動速度がゼロ又は規定速度未満の場合に、走行指示が発出されたものとしてモータ23を駆動する。
【0102】
モータ制御方法は、モータ23をアクセル26により指示された走行速度よりも低速で回転させる低速発進ステップS19を備え、
低速発進ステップS19では、低速発進部16が、走行制御部17がアクセル26により指示された走行速度にする場合よりも長い時間をかけて、アクセル26により指示された走行速度になるまでモータ23の回転を漸増させる。
【0103】
***電動キックボード100の構造の特徴***
電動キックボード100は、
踏み台31と、
後輪52と、
踏み台31の後方に伸び、後輪52を回転可能に取り付けた後フレーム33と、
踏み台31に固定されたシートパイプ42と、
シートパイプ42の上部と後フレーム33との間に固定された補助フレーム43と
を備える。
【0104】
シートパイプ42は、後方に傾斜した状態で踏み台31に固定されている。
【0105】
シートパイプ42は、下端が踏み台31に固定され、上部が補助フレーム43に固定されている。
【0106】
後フレーム33は、
後輪52の右側にある右後フレーム33Rと、
後輪52の左側にある左後フレーム33Lと
を有する。
【0107】
補助フレーム43は、
上端がシートパイプ42の右側が固定され下端が右後フレーム33Rに固定された右補助フレーム43Rと、
上端がシートパイプ42の左側が固定され下端が左後フレーム33Lに固定された左補助フレーム43Lと
を有する。
【0108】
補助フレーム43は、側面視で、上部にシートパイプ42から下に傾斜した直線状の上直線部431と、下部に上直線部431から下に傾斜した直線状の下直線部432とを有し、上直線部431と下直線部432との間に屈曲した屈曲部433とを有する。
【0109】
補助フレーム43は、平面視で、上部にシートパイプ42から外側に伸びた外伸部434と、下部に外伸部434から後方に伸びた下伸部435とを有し、外伸部434と下伸部435との間に弧状の曲部とを有する。
【0110】
右補助フレーム43Rと左補助フレーム43Lとに水平に固定された補強フレーム44を有する。
【0111】
電動キックボード100は、後フレーム33と、シートパイプ42と、補助フレーム43とにより、略三角形状を形成している。
【0112】
電動キックボード100は、
踏み台の前方に回転可能に取り付けられたハンドル61と、
ハンドルの一方のグリップの近傍に取り付けられたアクセル26と、
ハンドルに他方のグリップの近傍に取り付けられた発進ボタン25と、
踏み台31に内蔵され、アクセル26と発進ボタン25とがオン状態の場合に、電動キックボード100を発進させるモータ制御装置10と
を有する。
【符号の説明】
【0113】
100 電動キックボード、10 モータ制御装置、11 プロセッサ、12 メモリ、13 アクセル判定部、14 発進ボタン判定部、15 移動速度判定部、16 低速発進部、17 走行制御部、18 記憶部、20 駆動部、21 電源スイッチ、22 電池、23 モータ、24 速度センサ、25 発進ボタン、26 アクセル、27 ブレーキレバー、31 踏み台、32 前フレーム、33 後フレーム、33R 右後フレーム、33L 左後フレーム、34 スタンド、41 シート、42 シートパイプ、43 補助フレーム、43R 右補助フレーム、43L 左補助フレーム、44 補強フレーム、51 前輪、52 後輪、54 前輪カバー、55 後輪カバー、61 ハンドル、62 ヘッドパイプ、63 フロントフォーク、64 グリップ、431 上直線部、432 下直線部、433 屈曲部、434 外伸部、435 下伸部、436 弧状曲部、S11 アクセル判定ステップ、S12 移動速度判定ステップ、S14 発進ボタン判定ステップ、S19 低速発進ステップ、S20走行制御ステップ。