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  • 特開-カッター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025634
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】カッター
(51)【国際特許分類】
   B65B 69/00 20060101AFI20250214BHJP
   B26D 1/09 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B65B69/00 B
B26D1/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130553
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】504157220
【氏名又は名称】立松丸鋸加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立松 元司
【テーマコード(参考)】
3E058
【Fターム(参考)】
3E058AA04
3E058CA01
3E058EA07
3E058FA08
(57)【要約】
【課題】梱包体が正常な位置からずれて載置された場合でも、梱包体を切断して開袋することができるカッターを提供すること。
【解決手段】梱包体に向かって下降させることにより、前記梱包体を押し切るようにしたカッターにおいて、正面視逆V字状の刃部を有する板状のメインカッターにおける片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状の背部側の面に、正面視V字状の刃部を有する板状のサブカッターにおける片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状の背部側の面を、両カッターの刃部の直線部同士が互いに交差するように固定したカッターであって、前記メインカッターを構成する一対の正面視倒立直角三角形の下端の水平な先端部に底刃部を設けたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梱包体に向かって下降させることにより、前記梱包体を押し切るようにしたカッターにおいて、正面視逆V字状の刃部を有する板状のメインカッターにおける片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状の背部側の面に、正面視V字状の刃部を有する板状のサブカッターにおける片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状の背部側の面を、両カッターの刃部の直線部同士が互いに交差するように固定したカッターであって、前記メインカッターを構成する一対の正面視倒立直角三角形の下端の水平な先端部に底刃部を設けたことを特徴とするカッター。
【請求項2】
一対の前記底刃部は、それぞれ前記メインカッターの正面視逆V字状の前記刃部のそれぞれの下端に向けて、登り勾配をなしていることを特徴とする請求項1記載のカッター。
【請求項3】
前記底刃部の前記登り勾配の角度は、水平方向に対し1°~5°であることを特徴とする請求項2記載のカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば袋状の梱包体を切断して開袋するのに用いられるカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば粉粒体状の工業用原料や食材等を原料メーカーより出荷する際には、大き目の袋に詰められて加工工場等に出荷され、加工工場等においては、袋詰めされた原料を加工装置や小袋などに詰め替えるための自動袋詰装置等に供給するために、袋状の梱包体を切断して開袋し、内容物を一旦ホッパー等に払い出して貯留することが行われている。
【0003】
上記梱包体を切断して開袋し、内容物を自動的にホッパーに払い出す装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【特許文献1】特許3987507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、特許文献1に係る発明であるカッターの改良発明である。まず特許文献1に係る発明について図4および図5を用いて概要を説明する。図4は、特許文献1に係るカッターの正面図、図5は、図4のV-V線縦断側面図である。
【0005】
図4に示すように、開袋装置(1)は、床面より起立する前後方向を向く左右1対のベースフレーム(2)と、その上面に固定された正面視門型の前後1対の刃物支持フレーム(3)と、この支持フレーム(3)の上面に取付けられたエアシリンダ(4)及び左右1対のガイドロッド(5)とを備えている。
【0006】
回動板(10)は、開袋する梱包体(11)を載置するとともに、開袋後に下向きに回動する。回動板(10)は図5に示すように、互いの対向面間に隙間が形成されるようにして、前後2枚設けられている。
【0007】
カッター(12)は、左右対称をなす、例えば厚さ3mmの高速度工具鋼板よりなる左右1対のメインカッター(13)と、それと同厚、同材質の中央に位置するサブカッター(14)とからなり、両メインカッター(13)は、下端が水平にカットされた一対の倒立直角三角形をなし、互いに対向する逆V字状の左右の斜辺には、片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状の刃部(15)が形成されている(図5参照)。
【0008】
上記実施形態のカッター(12)により、例えば粉体が袋詰めされた複数層のクラフト紙製よりなる梱包体(11)を切断して開袋するには、図4に示すように、両メインカッター(13)における刃部(15)の下端間の寸法より短寸の梱包体(11)を、コンベア等により前後の回動板(10)の中央部まで搬送して載置したのち、エアシリンダ(4)を作動させて、カッター取付部材(9)と共にカッター(12)を下降させる。
【0009】
すると、2点鎖線で示すように、まず両メインカッター(13)の刃部(15)が梱包体(11)の上部の両隅部に接触し、梱包体(11)の内下方に向かって滑りながら移動することにより、梱包体(11)の左右両側部が徐々に内方に向かって切込まれる。
【0010】
ついで、サブカッター(14)の下端が梱包体(11)の中央部に突き刺さり、刃部(18)が梱包体(11)の外下方に向かって滑動することにより、中央から徐々に外側方に向かって切込まれ、両刃部(15)(18)の交差部が梱包体(11)の下方まで移動すると、該梱包体(11)の中央部が完全に切断(剪断)されて開袋される。
【0011】
この際、両刃部(15)(18)は、逆V字状をなして鋭角に交差しているため、刃部に加わる切断終了間際の抵抗が小さく、摩耗の進行も遅くなることにより、切れ味が持続する。従って、切り屑が発生することはなく、かつ梱包体(11)の内部にポリエチレン等の内袋を有していても、それが切断されなくなる恐れもない。
【0012】
上記のように、特許文献1のカッターは、メインカッターの刃部(15)とサブカッターの刃部(18)とにより、斜め上下方向を向く4本の直線刃部が形成され、かつ直線刃部同士は交差しているため、カッターを下降させるだけで、袋状の梱包体等を容易にかつ効率よく切断して開袋することができる。
【0013】
しかし、梱包体(11)は、充填率にバラつきがあり、そのため梱包体(11)の形状がバラつくことがある。さらに、コンベア等により梱包体(11)を搬送し回動板(10)の中央に載置する際に、正常な位置からずれる場合がある。そのため、正常な位置からずれて載置されている梱包体(11)をカッター(12)で切断する際、メインカッター(13)の刃部(15)の無い部分が梱包体(11)と当たるため、梱包体(11)が切断されず、破損したりするトラブルが発生してしまう。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、梱包体が正常な位置からずれて載置された場合でも、梱包体を切断して開袋することができるカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 梱包体に向かって下降させることにより、前記梱包体を押し切るようにしたカッターにおいて、正面視逆V字状の刃部を有する板状のメインカッターにおける片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状の背部側の面に、正面視V字状の刃部を有する板状のサブカッターにおける片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状の背部側の面を、両カッターの刃部の直線部同士が互いに交差するように固定したカッターであって、前記メインカッターを構成する一対の正面視倒立直角三角形の下端の水平な先端部に底刃部を設けたことを特徴とする。
【0016】
(2) 一対の前記底刃部は、それぞれ前記メインカッターの正面視逆V字状の前記刃部のそれぞれの下端に向けて、登り勾配をなしていることを特徴とする。
【0017】
(3) 前記底刃部の前記登り勾配の角度は、水平方向に対し1°~5°であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
(1) メインカッターを構成する一対の正面視倒立直角三角形の下端を水平にカットしているのは、カッターの先端部の強度を確保するため、およびカッターを運搬、交換する際の作業員の安全のためである。今までこの水平な先端部には刃部を設けていなかった。そのため、梱包体がずれて載置された場合に、梱包体を切断して開袋可能にするためには、メインカッターの正面視逆V字状の刃部を長くする対応をとることになる。しかし、この対応では、メインカッターのサイズが大きくなるので、開袋装置全体が大きくなってしまう。そこで、第1の発明によれば、水平な先端部に底刃部を設ければ、開袋装置のサイズを変更する必要がなくなり、コスト的にメリットとなる。また、カッターを運搬、交換する際は、従来から水平な先端部にも刃先カバーを取り付けていたので、安全面においてもコストアップの要因を排除することができる。
【0019】
(2) 第1の発明によれば、メインカッターを構成する一対の正面視倒立直角三角形の下端の水平な先端部に底刃部を設けている。ここで、底刃部が水平な場合、梱包体を切断する際、底刃部が梱包体を押し込んで切断する押切りとなる。この押切りは、底刃部にかかる抵抗が大きくなり、底刃部の研磨、交換サイクルが短くなる恐れがある。第2の発明によれば、底刃部をメインカッターの正面視逆V字状の刃部の下端に向けて登り勾配をなす構成としている。これにより梱包体を切断する際の押切りを避けることができ、底刃部にかかる抵抗を抑えることができる。
【0020】
(3)第2の発明により、底刃部に登り勾配の傾斜をつけることで、梱包体を切断する際の押切りを避けることができる。この登り勾配の傾斜は、角度が大きいほど底刃部にかかる抵抗を小さくすることができる。一方、角度を大きくすると、メインカッターの先端部の強度を確保できない恐れがある。そこで、第3の発明によれば、梱包体の切断確認試験に基づき、底刃部の登り勾配の角度を水平方向に対し1°~5°とし、保守面および安全面において、より実用的な底刃部の形状とした。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のカッターの第1の実施形態と、それを適用した開袋装置の正面図である。
図2図1のカッターの拡大正面図である。
図3】本発明のカッターの第2の実施形態の拡大正面図である。
図4】従来のカッターを適用した開袋装置の正面図である。
図5図4のV-V線縦断側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明のカッター(12)の第1の実施形態を適用した開袋装置(1)の正面図である。メインカッター(13)は、左右対称である一対の倒立直角三角形をしており、各々の先端部は、水平にカットされている。これは、倒立直角三角形の先端部の強度を確保するため、およびカッターを運搬、交換する際の作業員の安全のためである。今まで、この先端部には刃部は設けられていなかった。
【0023】
メインカッター(13)は、正面視逆V字状の刃部(15)を有する例えば厚さ3mmの高速度工具鋼板より形成され、刃部(15)は、片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状に形成されている。片刃状に形成された刃部(15)の刃先角度は、例えば20°とされている。
【0024】
サブカッター(14)は、正面視V字状の刃部(18)を有する例えば厚さ3mmの高速度工具鋼板より形成され、刃部(18)は、片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状に形成されている。片刃状に形成された刃部(18)の刃先角度は、例えば20°とされている。
【0025】
カッター(12)は、メインカッター(13)の背部側の面に、サブカッター(14)背部側の面を、正面視逆V字状の刃部(15)および正面視V字状の刃部(18)の両カッターの刃部の直線部同士が互いに交差するようにして固定したカッターである(以上、図5参照)。
【0026】
本発明のカッター(12)を示す図1と従来のカッターを示す図4とを比較した場合の相違点は、メインカッター(13)において、一対の倒立直角三角形の各々の水平な先端部に底刃部(35)を設けたことである。今までこの水平な先端部には刃部が設けられていなかった。一対の倒立直角三角形の各々の水平な先端部に底刃部(35)を設けた理由については後述する。
【0027】
メインカッター(13)の先端部に設けた底刃部(35)は、メインカッター(13)の刃部(15)と一体として使用されるので、先端部に設けた底刃部(35)も、片面(背部側)のみを鋭角に切削した片刃状に形成され、刃先角度は、20°とされている。
【0028】
図2は、図1のカッター(12)の拡大正面図である。メインカッター(13)は、正面視逆V字状の刃部(15)が斜め下方向に最下部(P点)まで形成され、メインカッター(13)の水平な先端部に底刃部(35)が形成され、刃部(15)と底刃部(35)とは、P点でつながっている。
【0029】
メインカッター(13)の水平な先端部に底刃部(35)を形成した理由を図1および図4により説明する。梱包体(11)は、充填率にバラつきがあり、そのため梱包体(11)の形状がバラつくことがある。さらに、コンベア等により梱包体(11)を搬送し回動板(10)の中央に載置する際に、正常な位置からずれる場合がある。そのため、正常な位置からずれて載置されている梱包体(11)を図4に示す従来のカッター(12)で切断する際、メインカッター(13)の刃部(15)の無い部分が梱包体(11)と当たるため、梱包体(11)が切断されず、破損したりするトラブルが発生してしまう。
【0030】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、図1に示すようにメインカッター(13)の水平な先端部に底刃部(35)を形成し、梱包体(11)が正常な位置からずれて載置されたばあいでも、梱包体(11)を切断して開袋することができるようにしたものである。
【0031】
梱包体(11)が正常な位置からずれて載置されたばあいに、メインカッター(13)の正面視逆V字状の刃部(15)を長くすることで対応することができる。しかし、この対応では、メインカッター(13)のサイズが大きくなるので、開袋装置(1)全体が大きくなってしまう。そこで、メインカッター(13)において、一対の倒立直角三角形の各々の水平な先端部に底刃部(35)を設ければ、開袋装置(1)のサイズを変更する必要がなくなり、装置のサイズアップ面、コスト面でメリットとなる。また、メインカッター(13)を運搬、交換する際は、従来から水平な先端部にも刃先カバーを取り付けていたので、安全面においてもコストアップの要因を排除することができる。
【0032】
図3は、本発明のカッター(12)の第2の実施形態の拡大正面図である。メインカッター(13)の底刃部(35)は、正面視逆V字状の刃部(15)の左右の下端部(P点)に向けて登り勾配をなしている。
【0033】
図2に示す第1の実施形態では、メインカッター(13)を構成する一対の正面視倒立直角三角形の下端の水平な先端部に底刃部(35)を設けている。ここで、底刃部(35)が水平な場合、梱包体(11)を切断する際、底刃部(35)が梱包体(11)を押し込んで切断する押切りとなる。この押切りは、底刃部(35)にかかる抵抗が大きくなり、底刃部(35)の研磨、交換サイクルが短くなる恐れがある。図3に示す第2の実施形態によれば、底刃部(35)がメインカッター(13)の正面視逆V字状の刃部(15)の左右の下端部(P点)に向けて登り勾配となる構成としている。これにより梱包体(11)を切断する際の押切りを避けることができ、底刃部(15)にかかる抵抗を抑えることができるので、底刃部(15)の研磨、交換サイクルが短くなることを防止できる。
【0034】
底刃部(11)のメインカッター(13)の刃部(15)の左右の下端部(P点)に向けた登り勾配の角度は、角度が大きいほど底刃部(35)にかかる抵抗を小さくすることができる。一方、角度を大きくすると、メインカッター(13)の先端部の強度を確保できない恐れがある。そこで、梱包体(11)の切断確認試験に基づき、底刃部(11)の登り勾配の角度を水平方向に対し1°~5°とした。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、特許文献1のカッターに底刃部(35)を設ける本願の改良発明により、梱包体(11)が正常な位置からずれて載置された場合でも、開袋装置(1)のサイズを変更することなく梱包体(11)を切断して開袋することができる。
【符号の説明】
【0036】
(1)開袋装置
(2)ベースフレーム
(3)刃物支持フレーム
(4)エアシリンダ
(5)ガイドロッド
(9)カッター取付部材
(10)回動板
(11)梱包体
(12)カッター
(13)メインカッター
(14)サブカッター
(15)刃部
(18)刃部
(35)底刃部
図1
図2
図3
図4
図5