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特開2025-26046注湯流量制御方法、注湯流量制御装置、及び注湯流量制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026046
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】注湯流量制御方法、注湯流量制御装置、及び注湯流量制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B22D 37/00 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B22D37/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131387
(22)【出願日】2023-08-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・刊行物名「日本鋳造工学会 第181回全国講演大会講演概要集,2023年181巻31」 発行日 令和5年5月10日 ・研究集会名 日本鋳造工学会 第181回全国講演大会 開催場所 近畿大学東大阪キャンパス(大阪府東大阪市小若江3-4-1) 開催日 令和5年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】523307505
【氏名又は名称】田崎 良佑
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田崎 良佑
(72)【発明者】
【氏名】田口 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】澤木 俊孝
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014LA04
(57)【要約】
【課題】高精度な注湯流量制御を実現する。
【解決手段】注湯流量制御方法(S100)は、取鍋に関する力覚情報と、当該取鍋から流出する溶湯に関する視覚情報とを取得する取得工程(S101)と、前記力覚情報及び前記視覚情報を参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定する決定工程(S103)と、を含み、前記決定工程では、前記取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋に関する力覚情報と、当該取鍋から流出する溶湯に関する視覚情報とを取得する取得工程と、
前記力覚情報及び前記視覚情報を参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定する決定工程と、
を含み、
前記決定工程では、
前記取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更する
注湯流量制御方法。
【請求項2】
前記決定工程では、
前記取鍋からの溶湯の流量の変動がより小さい期間において、前記力覚情報の重みをより大きく設定する
請求項1に記載の注湯流量制御方法。
【請求項3】
前記決定工程では、
前記取鍋の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合に、前記視覚情報の重みよりをより大きく設定する
請求項1に記載の注湯流量制御方法。
【請求項4】
前記決定工程は、
前記力覚情報を参照して、前記取鍋から流出する溶湯の流量に関する第1の推定量を算出する第1の推定工程と、
前記視覚情報を参照して、前記流量に関する第2の推定量を算出する第2の推定工程と、
前記第1の推定量と前記第2の推定量とを参照して、前記取鍋の動きに関する制御量を導出する導出工程と
を含んでいる請求項1から3の何れか1項に記載の注湯流量制御方法。
【請求項5】
前記導出工程は、
前記第1の推定量を参照して、第1のフィードバック制御量を算出する第1のフィードバック制御量算出工程と、
前記第2の推定量を参照して、第2のフィードバック制御量を算出する第2のフィードバック制御量算出工程と、
前記第1のフィードバック制御量と前記第2のフィードバック制御量との重み付け和であって、前記取鍋の姿勢及び動きに応じた重みによる重み付け和から、前記取鍋の動きに関する制御量を算出する算出工程と
を含んでいる請求項4に記載の注湯流量制御方法。
【請求項6】
前記第1の推定工程では、
前記取鍋内の前記溶湯の液面面積の、前記取鍋の傾動角度での微分を含む数理モデルを用いて、前記第1の推定量を算出し、
前記算出工程では、前記数理モデルの逆モデルを用いて、前記取鍋の動きに関する制御量を算出する
請求項5に記載の注湯流量制御方法。
【請求項7】
前記第2の推定工程では、
前記取鍋から流出する溶湯の撮像画像に対してエッジ検出処理を適用し、
前記エッジ検出処理で検出された複数のエッジペアに関し、各エッジペアの中点を通る流線を取得する処理と、
前記エッジ検出処理で検出された複数のエッジペアに関し、各エッジペアからエッジ幅を取得し、楕円近似により前記流出する溶湯の断面積を算出する処理と
を実行する
請求項5に記載の注湯流量制御方法。
【請求項8】
前記取鍋として、
有底の容器部と、
前記容器部の底部から前記容器部の開口部に向けて前記容器部から漸次離れる方向に延在する筒状の注湯部と、
を有する取鍋を用いる、請求項1から3の何れか1項に記載の注湯流量制御方法。
【請求項9】
取鍋に関する力覚情報と、当該取鍋から流出する溶湯に関する視覚情報とを取得する取得部と、
前記力覚情報及び前記視覚情報を参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定する決定部と、
を備え、
前記決定部は、
前記取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更する
注湯流量制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の注湯流量制御装置としてコンピュータを機能させるための注湯流量制御プログラムであって、上記取得部、および上記決定部としてコンピュータを機能させるための注湯流量制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注湯流量制御方法、注湯流量制御装置、及び注湯流量制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
取鍋の傾動を制御することによって注湯流量の制御を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、目標注湯重量パターン線図を制御目標とし、取鍋重量計測値より計算した実注湯重量を制御量とするフィードバック制御を行う自動注湯制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-57629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、取鍋重量計測値より計算した実注湯重量を制御量としているため、取鍋及び当該取鍋内の溶湯の状況によっては、精度のよい注湯を行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、高精度な注湯流量制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る注湯流量制御方法は、取鍋に関する力覚情報と、当該取鍋から流出する溶湯に関する視覚情報とを取得する取得工程と、前記力覚情報及び前記視覚情報を参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定する決定工程と、を含み、前記決定工程では、前記取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更する。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る注湯流量制御装置は、取鍋に関する力覚情報と、当該取鍋から流出する溶湯に関する視覚情報とを取得する取得部と、前記力覚情報及び前記視覚情報を参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定する決定部と、を備え、前記決定部は、前記取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更する。
【0008】
本発明の各態様に係る注湯流量制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記注湯流量制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記注湯流量制御装置をコンピュータにて実現させる注湯流量制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、高精度な注湯流量制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御システムが備える各構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態における溶湯の流量の推移を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態に係る制御装置による処理の流れを示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係る制御装置が備える決定部の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る制御装置が備える第1の推定部の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の一実施形態に係る取鍋及び溶湯に関する各種のパラメータを説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態に係る制御装置による視覚情報による流量推定処理を説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態に係る制御装置による視覚情報による流量推定処理を説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
<制御システム1の概要>
本実施形態に係る制御システム(注湯流量制御システム)1は、大まかに言えば、
・取鍋に関する力覚情報と、当該取鍋から流出する溶湯に関する視覚情報とを取得し、
・前記力覚情報及び前記視覚情報を参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定する
というシステムである。ここで、制御システム1は、
・前記取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更する
という構成を有している。
【0012】
このように、本実施形態に係る制御システム1では、取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更するという構成を有しているため、高精度な注湯流量制御を行うことができる。以下では、当該制御システム1に係る各構成及び各処理に関し、詳細に説明する。なお、溶湯の物質の具体例は本実施形態を限定するものではない。
【0013】
<制御システム1の具体的構成>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る制御システム(注湯流量制御システム)1の構成を示すブロック図である。図1に示すように制御システム1は、制御装置100と注湯システム500とを備えている。
【0014】
(注湯システム500)
まず、注湯システム500について説明する。注湯システム500は、鋳型CMに形成された注湯口SPに溶湯MMを注ぎ込むためのシステムであり、制御装置100によって制御される。図2は、注湯システム500が備える物理的構成が例示された制御システム1の模式図である。図2に示すように、注湯システム500は、取鍋200、支持装置300、第1のカメラC1、及び第2のカメラC2を備えている。
【0015】
(取鍋200)
取鍋200は、図2に示すように、有底の容器部201と、注湯部202とを備えている。ここで、注湯部202は、図2に示すように、容器部201の底部から当該容器部201の開口部203に向けて、当該容器部201から漸次離れる方向に延在する筒状の構成である。なお、図2に示す例では、注湯部202及び容器部201は、それぞれ円筒状に構成されているが、これは本実施形態を限定するものではない。
【0016】
取鍋200が上記の構成を有することにより、筒状の注湯部202を備えない、いわゆる“上注ぎ型”の取鍋に比して、容器部201内における液面面積が、少なくとも注湯部202内の液面面積を差し引いた小さいものとなり、当該取鍋200内の溶湯MMの液面振動を抑制することができるので、取鍋200の姿勢や動きが安定したものとなり、溶湯MMの流量の制御を好適に行うことができる。また、筒状の注湯部202を備えていることにより、取鍋200から流出する溶湯MMが略柱状となり、カメラでの撮像を的確に行うことができる。
【0017】
(支持装置300)
支持装置300は、当該取鍋200を支持する構成である。ここで、支持装置300は、当該取鍋200の並進位置、及び向き(姿勢)を変更可能に構成されている。ここで、取鍋200の並進位置は、一例として、当該取鍋200の重心の(X,Y,Z)座標によって規定することができる。また、具体的な座標系としては、図2に示すように、鉛直方向下向きをZ軸の正の向きとした座標系を用いることができるが、これは本実施形態を限定するものではない。また、取鍋200の向き(姿勢)は、一例として、取鍋200に設定された基準軸(例えば、円筒状に構成された容器部201の中心軸CL)の、上記座標系における向きとして表すことができる。例えば、取鍋200の向き(姿勢)は、オイラー角によって表現されてもよいが、当該例は本実施形態を限定するものではない。
【0018】
図2に示すように、支持装置300は、
・一端が取鍋200に固定された第1のアームA1、
・上記第1のアームA1の他端と、第2のアームA2の一端とを接続するジョイントJ1、及び
・上記第2のアームA2
等を備えている。また、第1のアームA1、第2のアームA2、及びジョイントJ1は、一例として、
・第1のアームA1と第2のアームA2との相対的な向きを変更するための1又は複数のモータ等の駆動機構、及び
・第1のアームA1と第2のアームA2との相対的な捻じれを変更するための1又は複数のモータ等の駆動機構
等の少なくとも何れかを備えている。また、これらの駆動機構は、制御装置100から供給される制御データ(制御情報ともいう)OPDによって制御される。
【0019】
支持装置300は、一例として上記の構成を有することにより、制御装置100から供給される制御データOPDに応じて、取鍋200の並進位置、及び向き(姿勢)を変更可能に、当該取鍋200を支持することができる。なお、詳しくは後述するが、当該制御データOPDには、制御装置100によって導出された取鍋200の角速度に関する制御量ωinputが含まれる。
【0020】
また、図2に示すように、支持装置300には、力覚センサKSが設けられている。ここで、力覚センサKSは、取鍋200に関する力覚情報を取得するための構成であり、一例として、取鍋200に関する6軸の力覚センサである。力覚センサKSは、一例として、
・当該力覚センサKSを基準とした座標系における、取鍋200の各軸方向の力成分(Fx、Fy、Fz)、及び
・各軸回りのトルク成分(Tx、Ty、Tz)
を検出可能に構成されている。力覚センサKSが検出した力覚情報(力覚データ、力覚センサデータともいう)KDは、制御装置100に供給される。なお、力覚センサKSは、取鍋200が備える構成としてもよい。
【0021】
なお、図2に示す支持装置300の具体的構成は本実施形態を限定するものではなく、支持装置300は、他のアームやジョイントを更に備える構成としてもよいし、上記アーム及びジョイントに代えて、他の構成を備えていてもよい。
【0022】
(カメラ)
図2に示すように、注湯システム500は、1又は複数のカメラ(図2に示す例では第1のカメラC1、及び第2のカメラC2)を備えている。当該1又は複数のカメラは、取鍋200の開口部203から流出する溶湯MMを撮像できるよう画角が調整されている。また、注湯システム500が複数のカメラを備える場合、これら複数のカメラは、取鍋200の開口部203から流出する溶湯MMを複数の角度から撮像できるよう配置されている。これら1又は複数のカメラから撮像した撮像情報(撮像データという)は制御装置100に供給される。なお、以下では、第1のカメラC1が撮像した撮像データを、符号VD1によって表し、第2のカメラC2が撮像した撮像データを、符号VD2によって表すことがある。また、複数の符号VD1,VD2,・・・を合わせて、VDと表現することもある。
【0023】
(制御装置100)
続いて、制御装置100の構成について説明する。図1に示すように、制御装置100は、制御部110、及び記憶部120を備えている。
【0024】
(記憶部120)
記憶部120には、制御部110が備える各部によって参照されるデータ、及び制御部110が備える各部によって生成されたデータが格納されている。一例として、記憶部120には、
・目標流量プロファイルTFR
・数理モデルMD
が格納されている。
【0025】
ここで、目標流量プロファイルTFRは、一例として、後述する制御部110の決定部12によって参照されるデータであり、取鍋200による注湯流量の目標値の時系列(推移)を含んで構成される。図3は、目標流量プロファイルTFRの一例を示すグラフである。制御装置100は、取鍋200による注湯流量が、目標流量プロファイルTFRが示す目標流量になるべく近くなるよう、取鍋200による注湯流量を制御する。
【0026】
図3には、取鍋200による実際の(又は推定された)注湯流量MFRの時系列(推移)も示されている。制御装置100は、取鍋200による注湯流量が、目標流量プロファイルTFRが示す目標流量に追随するよう取鍋200による注湯流量を制御するものであると表現してもよい。
【0027】
なお、図3に関する理論及び実証は、流体として水を用いたものである。より具体的に言えば、図3における縦軸のflowrateの値は、溶湯の代わりに水を用いた実験値であり、注ぎ始めと注ぎ終わりの2つの期間に挟まれた、定量注ぎ期間P1における流量として、1.5×10-4 m3/s の例を示したものである。このように、本例では、流体として水を用いているが、本実施形態に係る構成は、流体として任意の溶湯(溶融金属)にも適用可能である。
【0028】
数理モデルMDは、一例として、後述する制御部110の決定部12によって参照されるモデルである。記憶部120は、当該数理モデルMDを規定する複数のパラメータの各値を格納しており、これらのパラメータは、上記決定部12によって参照される。数理モデルMDの詳細については後述する。
【0029】
(制御部110)
制御部110は、制御装置100の各部を制御する。また、制御部110は、図1に示すように、取得部11及び決定部12を備えている。
【0030】
(取得部11)
取得部11は、取鍋200に関する力覚情報KDと、当該取鍋200から流出する溶湯MMに関する視覚情報VDとを取得する。
【0031】
ここで、取得部11が取得する力覚情報KDは、一例として、上述した力覚センサKSによって検出された、取鍋200に関する力覚センシングデータである。取得部11は、当該力覚情報KDから、取鍋200の並進位置、並進速度、及び並進加速度、並びに、取鍋200の角度、角速度、角加速度の少なくとも何れかを特定することができる。換言すれば、取得部11は、力覚情報KDを参照して、取鍋200の並進位置、並進速度、及び並進加速度、並びに、取鍋200の角度、角速度、角加速度の少なくとも何れかを取得することができる。
【0032】
なお、取鍋200の角度(傾動角度)のことを取鍋200の向き又は姿勢とも表現し、取鍋200の並進速度、並進加速度、角速度(傾動角速度)、及び角加速度のことを取鍋200の動きと表現することもある。
【0033】
(決定部12)
決定部12は、取得部11が取得した力覚情報KD及び視覚情報VDを参照して、取鍋200の動きに関する制御量を決定する。ここで、視覚情報VDには、一例として、第1のカメラC1が撮像した撮像データVD1及び第2のカメラC2が撮像した撮像データVD2が含まれ得る。
【0034】
一例として、決定部12は、力覚情報KD及び視覚情報VDを参照して、取鍋200の角速度に関する制御量ωinputを決定する。また、決定部12は、取鍋200の姿勢及び動きに応じて、力覚情報KD及び視覚情報VDの重み付けを変更する。ここで、力覚情報KD及び視覚情報VDのそれぞれの重みとは、取鍋200の動きに関する制御量を決定する処理において、力覚情報KD及び視覚情報VDのそれぞれをどの程度参照して決定するかを示す度合いのことを指す。
【0035】
また、図1に示すように、決定部12は、第1の推定部121、第2の推定部122、重み決定部123、及び制御量導出部124を備えている。
【0036】
(第1の推定部121)
第1の推定部121は、力覚情報KDを参照して、取鍋200から流出する溶湯MMの流量に関する第1の推定量を算出する。ここで、算出された第1の推定量は、一例として、後述する第1のフィードバック制御量を算出するために参照される。第1の推定部121による具体的な処理については後述する。
【0037】
(第2の推定部122)
第2の推定部122は、視覚情報VDを参照して、取鍋200から流出する溶湯MMの流量に関する第2の推定量を算出する。ここで、算出された第2の推定量は、一例として、後述する第2のフィードバック制御量を算出するために参照される。第2の推定部122による具体的な処理については後述する。
【0038】
(重み決定部123)
重み決定部123は、取鍋200の姿勢及び動きに応じて、力覚情報KD及び視覚情報VDの重み付けを変更する。一例として、重み決定部123は、取鍋200の姿勢及び動きに応じて、上記第1の推定量及び上記第2の推定量の重み付を変更する。或いは、重み決定部123は、取鍋200の姿勢及び動きに応じて、上記第1のフィードバック制御量及び上記第2のフィードバック制御量の重み付けを変更する。重み決定部123による具体的な処理については後述する。
【0039】
(制御量導出部124)
制御量導出部124は、前記第1の推定量と前記第2の推定量とを参照して、取鍋200の動きに関する制御量を導出する。一例として、制御量導出部124は、前記第1のフィードバック制御量と前記第2のフィードバック制御量との重み付け和であって、取鍋200の姿勢及び動きに応じた重みによる重み付け和から、当該取鍋200の動きに関する制御量を算出する。ここで、取鍋200の動きに関する制御量の一例として、取鍋200の角速度に関する制御量ωinputが挙げられる。
【0040】
(制御装置100による処理の流れ)
以下では、図4を参照して、制御装置100による処理の流れについて説明する。図4は、制御装置100による処理(注湯流量制御方法S100)の流れを示すフロー図である。
【0041】
(工程S101)
工程S101において、取得部11は、取鍋200に関する力覚情報KDと、当該取鍋200から流出する溶湯MMに関する視覚情報VDとを取得する。取得部11によるより具体的な処理については上述したためここでは説明を省略する。
【0042】
(工程S102)
続いて、工程S102において、第1の推定部121は、工程S101にて取得された力覚情報KDを参照して、取鍋200から流出する溶湯MMの流量に関する第1の推定量を算出する。また、第2の推定部122は、工程S101にて取得された視覚情報VDを参照して、取鍋200から流出する溶湯MMの流量に関する第2の推定量を算出する。本工程S102における具体的な処理については後述する。
【0043】
(工程S103)
続いて、工程S103において、制御量導出部124は、工程S102にて算出した第1の推定量と第2の推定量とを参照して、取鍋200の動きに関する制御量を導出する。また、導出された制御量を含む制御データOPDは、注湯システム500に供給され、当該制御データOPDによって取鍋200の動きが制御される。本工程S103における具体的な処理については後述する。
【0044】
なお、工程S102及び工程S103の処理を通じた上記制御量の決定処理において、取鍋200の姿勢及び動きに応じて重み決定部123によって変更された重み付けを有する力覚情報KD及び視覚情報VDが参照される。
【0045】
(工程S104)
続いて、工程S104において、制御部110は、制御量導出に関する終了条件が満たされているか否かを判定する。一例として、制御部110は、予め定められた所定のタイムステップ分、又は、予め定められた所定の時間の間、上述した工程S101~工程S103が繰り返し行われたか否かを判定する。
【0046】
終了条件が満たされていると判定した場合(工程S104でYES)、制御部110は処理を終了し、そうでない場合(工程S104でNO)、工程S101に戻り、取得部11により、次のタイムステップにおける取鍋200に関する力覚情報KDと、当該取鍋200から流出する溶湯MMに関する視覚情報VDとを取得する。
【0047】
なお、タイムステップの間隔が予め定められている場合(例えば、上記工程S101~S103を、1秒間にN回繰り返すことが定められている場合)、制御部110は、工程S104において、次のタイムステップの開始タイミングまで処理を待機する構成としてもよい。或いは、タイムステップの間隔が予め定められていない場合、制御部110は、工程S104において、処理を待機することなく、工程S101に戻り、取得部11により、次のタイムステップにおける取鍋200に関する力覚情報KDと、当該取鍋200から流出する溶湯MMに関する視覚情報VDとを取得する構成としてもよい。何れの場合であっても、制御部110は、S104において終了条件が満たされたと判定されるまで、工程S101~S103の処理を繰り返す。
【0048】
制御部110が上記のような処理を行うことによって、工程S103において決定された制御量を含む制御データOPDが注湯システム500に対して逐次的に供給され、当該制御量に応じて、取鍋200の動きが逐次的に制御される。
【0049】
上記の処理を行う制御装置100によれば、
・取鍋200に関する力覚情報KDと、当該取鍋200から流出する溶湯MMに関する視覚情報VDとを取得し(工程S101)、
・前記力覚情報KD及び前記視覚情報VDを参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定し(工程S102~S103)、
・前記決定する工程(工程S102~S103)では、前記取鍋200の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報KD及び前記視覚情報VDの重み付けを変更する。
【0050】
このように、上記の処理を行う制御装置100は、取鍋200の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報KD及び前記視覚情報VDの重み付けを変更するという構成を有しているため、高精度な注湯流量制御を行うことができる。
【0051】
(決定部12の具体的構成例)
以下では、図5を参照して、決定部12の具体的構成例、及び決定部12による具体的処理例について説明する。図5は、決定部12の具体的構成例を示すブロック図である。図5に示すように、決定部12は、力覚参照流量推定部(第1の推定部)121、視覚参照流量推定部(第2の推定部)122、重み決定部123、及び、制御量導出部124を備えている。
【0052】
また、制御量導出部124は、図5に示すように、力覚FB制御部1241、視覚FB制御部1242、統合部1243、FF制御部1244、第1の減算部1245、及び第2の減算部1246を備えている。なお、上記各部の名称におけるFBはフィードバックを示しており、FFはフィードフォワードを示しているが、当該名称は本実施形態を限定するものではない。また、「減算部」との名称は本実施形態を限定するものではなく、符号を反転させたうえで加算するという観点からは「加算部」と表現してもよい。
【0053】
(力覚参照流量推定部(第1の推定部)121)
力覚参照流量推定部121には、図5に示すように、FF制御部1244が算出した取鍋200の角速度に関する制御量ωinputと、注湯システム500から供給される力覚情報KDとが入力される。
【0054】
力覚参照流量推定部121は、上記制御量ωinputと力覚情報KDとを参照して、取鍋200から流出する溶湯MMの流量に関する第1の推定量frを算出する。一例として、力覚参照流量推定部121は、拡張カルマンフィルタを用いて、第1の推定量frを算出する。また、力覚参照流量推定部121は、一例として、取鍋200内の溶湯MMの液面面積の、前記取鍋200の傾動角度での微分を含む数理モデルMDを用いて、前記第1の推定量を算出する。力覚参照流量推定部121は、複数のタイムステップの各々において、第1の推定量frを算出する。力覚参照流量推定部121によるより具体的な処理については、参照する図面を代えて後述する。算出した第1の推定量frは、第1の減算部1245に供給される。
【0055】
(視覚参照流量推定部(第2の推定部)122)
視覚参照流量推定部122には、図5に示すように、注湯システム500から供給される視覚情報VDが入力される。視覚参照流量推定部122は視覚情報VDを参照して、取鍋200から流出する溶湯MMの流量に関する第2の推定量frを算出する。一例として、視覚参照流量推定部122による第2の推定量frの算出処理には、
・取鍋200から流出する溶湯MMの撮像画像(視覚情報VD1及びVD2の少なくとも何れかが示す撮像画像)に対してエッジ検出処理を適用する処理と、
・前記エッジ検出処理で検出された複数のエッジペアに関し、各エッジペアの中点を通る流線を取得する処理と、
・前記エッジ検出処理で検出された複数のエッジペアに関し、各エッジペアからエッジ幅を取得し、楕円近似により前記流出する溶湯MMの断面積を算出する処理と
が含まれる。視覚参照流量推定部122は、複数のタイムステップの各々において、第2の推定量frを算出する。算出した第2の推定量frは、第2の減算部1246に供給される。
【0056】
(第1の減算部1245)
第1の減算部1245及び第2の減算部1246には、目標流量プロファイルTFRに含まれる当該タイムステップにおける目標流量qrefが供給される。
【0057】
第1の減算部1245は、一例として、目標流量qrefから第1の推定量frを減算して得られる第1の流量誤差eを算出し、算出した第1の流量誤差eを力覚FB制御部1241に供給する。なお、第1の減算部1245は、複数のタイムステップの各々において、上記第1の流量誤差eを算出する。第1の減算部1245は、このようにして、目標流量プロファイルTFRに含まれる各タイムステップにおける目標流量qrefと、各タイムステップにおける第1の推定量frとの差分である第1の流量誤差eを逐次的に算出し、算出した第1の流量誤差eを力覚FB制御部1241に供給する。
【0058】
(第2の減算部1246)
一方、第2の減算部1246は、一例として、目標流量qrefから第2の推定量frを減算して得られる第2の流量誤差eを算出し、算出した第2の流量誤差eを視覚FB制御部1242に供給する。なお、第2の減算部1246は、複数のタイムステップの各々において、上記第2の流量誤差eを算出する。第2の減算部1246は、このようにして、目標流量プロファイルTFRに含まれる各タイムステップにおける目標流量qrefと、各タイムステップにおける第2の推定量frとの差分である第2の流量誤差eを逐次的に算出し、算出した第2の流量誤差eを視覚FB制御部1242に供給する。
【0059】
(力覚FB制御部1241)
力覚FB制御部1241は、第1の減算部1245から供給される第1の流量誤差eを参照して、第1のフィードバック制御量qを算出する。上述した第1の減算部1245による処理と力覚FB制御部1241による処理は、第1の推定量frを参照して、第1のフィードバック制御量qを算出する第1のフィードバック制御量算出処理と表現することもできる。なお、力覚FB制御部1241は、複数のタイムステップの各々において、第1のフィードバック制御量qを算出する。
【0060】
(視覚FB制御部1242)
視覚FB制御部1242は、第2の減算部1246から供給される第2の流量誤差eを参照して、第2のフィードバック制御量qを算出する。上述した第2の減算部1246による処理と視覚FB制御部1242による処理は、第2の推定量frを参照して、第2のフィードバック制御量qを算出する第2のフィードバック制御量算出処理と表現することもできる。なお、視覚FB制御部1242は、複数のタイムステップの各々において、第2のフィードバック制御量qを算出する。
【0061】
このように、力覚FB制御部1241及び視覚FB制御部1242により、力覚情報KD及び視覚情報VDを参照したフィードバック制御を実現することができる。このため、力覚FB制御部1241及び視覚FB制御部1242を備える制御装置100によれば、力覚情報KD及び視覚情報VDを参照したフィードバック制御によって、注湯流量の制御を好適に行うことができる。
【0062】
(重み決定部123)
重み決定部123は、取鍋200の姿勢及び動きに応じて、力覚情報KD及び視覚情報VDの重み付けを変更する。一例として、重み決定部123は、
・目標流量プロファイルTFR、視覚情報VD、及び力覚情報KDの少なくとも何れかを参照して、取鍋200の姿勢及び動きを特定し、
・特定した取鍋200の姿勢及び動きに応じて、上記第1のフィードバック制御量及び上記第2のフィードバック制御量の重み付けを決定する。重み決定部123が決定した重みを表す情報は、統合部1243に供給される。なお、重み決定部123は、複数のタイムステップの各々において、上記重み付けを決定する。重み決定部123によるより具体的は処理については後述する。
【0063】
(統合部1243)
統合部1243は、重み決定部123によって決定された重みを用いて第1のフィードバック制御量qと第2のフィードバック制御量qと統合することにより統合後の制御量qinputを算出する。一例として、統合部1243は、重み決定部123によって決定された重みを用いた重み付け和によって、第1のフィードバック制御量(力覚参照フィードバック制御量)qと第2のフィードバック制御量((視覚参照フィードバック制御量))qとを加算する。より具体的には、統合部1243は、
input = F×q + (1-F)×q
によって統合後の制御量qinputを算出する。ここで、Fは、第1のフィードバック制御量(力覚参照フィードバック制御量)qに乗ぜられる重み係数であり、0から1までの値として、重み決定部123によって決定される。また、1-Fは、第2のフィードバック制御量(視覚参照フィードバック制御量)qiに乗ぜられる重み係数であり、上記Fの値に応じて定まる。算出された統合後の制御量qinputは、FF制御部1244に供給される。なお、統合部1243は、複数のタイムステップの各々において、上記統合後の制御量qinputを算出する。
【0064】
(FF制御部1244)
FF制御部1244は、統合部1243によって算出された統合後の制御量qinputを参照して、前記取鍋200の動きに関する制御量として、取鍋200の角速度に関する制御量ωinputを算出する。算出された制御量ωinputは、注湯システム500に供給されると共に、上述した力覚参照流量推定部121に供給され、第1の推定量frを算出するために参照される。
【0065】
このように、統合部1243及びFF制御部1244による処理には、前記第1のフィードバック制御量qと前記第2のフィードバック制御量qとの重み付け和であって、前記取鍋200の姿勢及び動きに応じた重みによる重み付け和から、前記取鍋200の動きに関する制御量ωinputを算出する算出処理が含まれる。また、上記算出処理には、上述した数理モデルMDの逆モデルを用いて、前記取鍋200の動きに関する制御量ωinputを算出する処理が含まれ得る。
【0066】
より具体的には、FF制御部1244は、上述した数理モデルMDの逆モデル
【数1】
を用いて、上記統合後の制御量qinputから、制御量ωinputを算出する。なお、制御量ωの下付き添え字の「input」は注湯システム500への入力という見方に基づく。一方、当該制御量は、FF制御部1244又は決定部12からの出力という見方もできるので、制御量ωinputのことを制御量ωoutputと表記することもある。ここで、上記逆モデルを表す上記(式1)に含まれる各パラメータについて、図7を参照して説明すれば以下の通りである。
・θ:取鍋200の傾動角度
・A(θ):取鍋200内の溶湯MMの液面面積
・href(t):タイムステップtにおける上積み高さ
・V(θ):取鍋200内の溶湯MMの内部体積
なお、上記(式1)におけるcは、溶湯MM内部の粘性抵抗および管内界面での流動抵抗などに依存して定まる係数であり、一例として、溶湯MMの流れやすさ又は流れにくさを0~1の数値で表現したものである。
【0067】
このように、上述した数理モデルMD及び当該数理モデルMDの逆モデルには、取鍋200内の溶湯MMの液面面積A(θ)の、当該取鍋200の傾動角度θでの微分が含まれている。このように、液面面積A(θ)のθ微分を含む項を有する数理モデルMD及び当該数理モデルMDの逆モデルを用いることによって、図2及び図7に示すような特有の形状を有する取鍋200に対しても、上述した第1の推定量を好適に算出することができると共に、制御量ωinputを好適に算出することができる。
【0068】
(力覚参照流量推定部(第1の推定部)121の構成例)
続いて、上述した力覚参照流量推定部(第1の推定部)121の具体的な構成例及び処理例について説明する。図6は、力覚参照流量推定部121の具体的な構成例を示すブロック図である。図6に示すように、力覚参照流量推定部121は、ゲイン算出部1211、数理モデル参照部1212、加算部1213、及び減算部1214を備えている。力覚参照流量推定部121が備える上記各構成は拡張されたカルマンフィルタを構成し、力覚参照流量推定部121は、当該拡張されたカルマンフィルタを用いて第1の推定量frを算出することができる。
【0069】
(加算部1213)
加算部1213は、後述するゲイン算出部1211によって算出された拡張カルマンゲインを制御量ωinputに対して加算又は乗算することによって、ゲイン後の制御量を算出し、算出されたゲイン後の制御量を、数理モデル参照部1212に供給する。
【0070】
(数理モデル参照部1212)
数理モデル参照部1212は、上記ゲイン後の制御量を参照し、数理モデルMDを用いることによって、複数の状態量を算出する。ここで、当該複数の状態量には、対応する観測値が存在する状態量である第1種の状態量ST1と、対応する観測値が存在しない状態量である第2種の状態量ST2とが含まれる。
【0071】
ここで、対応する観測値が存在する上記第1種の状態量ST1には、一例として、
・取鍋200の角度(傾動角度θ)に関する状態量(図7参照)
・取鍋200内の溶湯MMの重量
などが含まれる。一方、対応する観測値が存在しない上記第2種の状態量ST2には、一例として、
・取鍋200から流出する溶湯MMの流出流量q(qref)(図7参照)
・取鍋200内の溶湯MMの上積み高さhref図7参照)
などが含まれる。
【0072】
数理モデル参照部1212は、数理モデルMDを用いて、溶湯MMの流出流量qの一例として、上述した第1の推定量frを算出し、算出した第1の推定量frを、上述した第1の減算部1245に供給する。
【0073】
なお、数理モデル参照部1212が用いる数理モデルMDを例示すれば以下の通りである。
【数2】
【数3】
ここで、上記(式3)において、Lfは、取鍋200の開口部(出湯口、ノズル)203における溶湯MMの幅を示しており、anは、当該開口部(出湯口、ノズル)203の内径を示している。また、上記(式2)及び(式3)の双方を注湯流量に関する数理モデルMDと捉えてもよいし、上記(式2)を物質収支に基づく注湯流量に関する数理モデルMDと捉え、上記(式3)を、上積み高さに基づく注湯流量の導出式(ベルヌーイの式)と捉えてもよい。なお、上記(式2)及び(式3)における流出流量qref及び傾動角速度ωrefは、制御部110における数理モデルMDの用い方に応じて、適宜qinput及びωinput(又はωoutput)に置き換わり得る。また、上記数理モデルMDへの入力として、ωinput(又はωoutput)に代えて、ゲイン後のωinput(又はゲイン後のωoutput)が入力され得る。
【0074】
数理モデルMDの逆モデル(式1)に関して説明したように、数理モデルMDには、取鍋200内の溶湯MMの液面面積A(θ)の、当該取鍋200の傾動角度θでの微分が含まれている。このように、液面面積A(θ)のθ微分を含む項を有する数理モデルMD及び当該数理モデルMDの逆モデルを用いることによって、図2及び図7に示すような特有の形状を有する取鍋200に対しても、上述した第1の推定量を好適に算出することができると共に、制御量ωinputを好適に算出することができる。
【0075】
(減算部1214)
減算部1214は、数理モデル参照部1212が算出した複数の状態量のうち、第1種の状態量と、当該第1種の状態量に対応する観測値との差分を算出し、算出した差分をゲイン算出部1211に供給する。一例として、減算部1214は、数理モデル参照部1212が算出した複数の状態量のうち、力覚情報KDに対応する状態量と、注湯システム500から取得した力覚情報KDとの差分を算出し、算出した差分をゲイン算出部に提供する。
【0076】
(ゲイン算出部1211)
ゲイン算出部1211は、減算部1214から供給される差分に応じて拡張カルマンゲインを算出する。一例として、ゲイン算出部1211は、数理モデル参照部1212が算出した複数の状態量のうち、力覚情報KDに対応する状態量と、注湯システム500から取得した力覚情報KDとの差分に応じて拡張カルマンゲインを算出する。算出された拡張カルマンゲインは、加算部1213に供給される。
【0077】
力覚参照流量推定部121は、上記の構成を有することによって、拡張カルマンフィルタにより状態量を好適に算出(推定)することができる。また、当該状態量の一つである、取鍋200から流出する溶湯MMの流量に関する第1の推定量frを好適に算出し、制御量導出部124に提供することができる。
【0078】
(視覚参照流量推定部(第2の推定部)122による処理例)
続いて、図8及び図9を参照して、視覚参照流量推定部122による処理例について説明する。図8及び図9は、視覚参照流量推定部122による処理を模式的に示す図である。図8に示すように、視覚参照流量推定部122は、視覚情報VD1及び視覚情報VD2の少なくとも何れかを参照し、当該視覚情報が示す画像における測定領域DRに対してエッジ検出処理を適用する。ここで、当該エッジ検出処理は、図8に示すように、複数の水平メッシュHMの各々に対して行うと好適である。
【0079】
上記エッジ検出処理を行うことにより、視覚参照流量推定部122は、測定領域DRに含まれる溶湯MMに関し複数のエッジペアを特定することができる。そして、視覚参照流量推定部122は、図8に示すように、当該複数のエッジペアに関し、各エッジペアの中点を通る流線FLを特定(取得)する。ここで、当該特定処理には、図8に示すように、2次関数を用いたフィッティング処理が用いられてもよい。また、視覚参照流量推定部122は、上記処理を行うことにより得られた流線FLを参照し、放物落下運動を仮定することによって、溶湯MMの流速を算出する。
【0080】
また、図9に示すように、当該複数のエッジペアに関し、各エッジペアからエッジ幅を取得し、楕円近似により前記流出する溶湯の断面積を算出する。ここで、注湯システム500が備えるカメラが2台の場合、図9に示すように、取鍋200から見て側面側に配置された第1のカメラC1による撮像情報(視覚情報とも呼ぶ)VD1、及び取鍋200から見て正面側に配置された第2のカメラC2による撮像情報(視覚情報とも呼ぶ)VD2の双方を参照し、双方の撮像情報に対して上述したエッジ検出処理を適用すると好適である。
【0081】
或いは、注湯システム500が3台のカメラを備える構成とし、3台目のカメラC3を、取鍋200から見て斜め45度付近となるように配置し、当該カメラC3による撮像情報VD3に対しても上述したエッジ検出処理を適用すると更に好適である。
【0082】
カメラ2台の場合には、図9に示すように、2つのエッジ幅a及びbを用いて溶湯MMの断面積Sを算出すればよいし、カメラ3台の場合には、図9に示すように、3つのエッジ幅a、b及びcを用いて溶湯MMの断面積Sを算出すればよいし
このように、視覚参照流量推定部122による処理には、
・取鍋200から流出する溶湯MMの撮像画像に対してエッジ検出処理を適用し、
・前記エッジ検出処理で検出された複数のエッジペアに関し、各エッジペアの中点を通る流線を取得する処理と、
・前記エッジ検出処理で検出された複数のエッジペアに関し、各エッジペアからエッジ幅を取得し、楕円近似により前記流出する溶湯の断面積を算出する処理と
を実行するという処理が含まれる。
【0083】
視覚参照流量推定部122は上記の処理を行うことにより、取鍋200から流出する溶湯MMの流量に関する第2の推定量frを好適に算出し、制御量導出部124に提供することができる。
【0084】
<重み決定部123による重み決定処理例>
以下では、重み決定部123による重み決定処理の例について説明する。
【0085】
(重み決定処理例1)
重み決定部123は、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより小さい期間において、力覚情報KDの重みFをより大きく設定する構成としてもよい。一例として、重み決定部123は、
・取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより小さい期間において、第1のフィードバック制御量(力覚参照フィードバック制御量)qに乗ぜられる重み係数F(P1)の値と、
・取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより大きい期間において、第1のフィードバック制御量(力覚参照フィードバック制御量)qに乗ぜられる重み係数F(P2)の値とを、
F(P1)>F(P2)
となるように設定してもよい。
【0086】
なお、本処理例における「流量の変動がより小さい期間」及び「変動がより大きい期間」は、重み決定部123により、これら2つの期間における流量の変動を相対的に比較することよって特定される構成としてもよいし、重み決定部123により、対象の各期間における流量の変動を予め定められた閾値と比較することによって特定される構成としてもよい。
【0087】
また、本処理例における「流量の変動がより小さい期間」及び「変動がより大きい期間」は、逐次的に取得される力覚情報KDを参照して、逐次的に決定される構成としてもよいがこれに限られない。重み決定部123は、予め目標流量プロファイルTFRを参照して、当該プロファイルに含まれる複数の部分期間の各々について、当該期間が「流量の変動がより小さい期間」及び「変動がより大きい期間」の何れに相当するかを予め推定(特定)する構成としてもよい。
【0088】
例えば、重み決定部123は、溶湯MMの注ぎ始めの期間P21(図3の例では2秒から8秒頃までの期間)及び溶湯MMの注ぎ終わりの期間P22(図3の例では20秒から25秒頃までの期間)における溶湯MMの流量の変動は、上記2つ期間に挟まれた、溶湯MMの定量注ぎ期間P1(図3の例では8秒頃から20秒頃までの期間)における溶湯MMの流量の変動よりも大きいと特定し、
F(P1)>F(P21)
F(P1)>F(P22)
となるように設定してもよい。
【0089】
発明者の得た知見によれば、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより小さい期間では、力覚情報KDの信頼性が向上する。換言すれば、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより小さい期間では、力覚情報KDを参照することにより、取鍋200の動きを好適に制御することができる。
【0090】
一方で、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより大きい期間では、溶湯MMに加わる鉛直方向(Z軸)の加速度等に起因して、力覚情報KDの信頼性が低下する。換言すれば、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより大きい期間では、力覚情報KDを参照しても、取鍋200の動きを好適に制御することが難しい場合が生じる。
【0091】
一方、視覚情報VDは、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動には大きく依存せず、一定の信頼性を提供する。換言すれば、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより小さい期間であってもより大きい期間であっても、上述した構成により視覚情報VDを参照することにより、取鍋200の動きを好適に制御することができる。
【0092】
このため、本例のように、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより小さい期間において、力覚情報KDの重みFをより大きく設定する構成とすれば、取鍋200からの溶湯MMの流量の変動がより小さい期間であってもより大きい期間であっても、取鍋200の動きをより好適に制御することができる。
【0093】
(重み決定処理例2)
重み決定部123は、取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合に、視覚情報VDの重みよりをより大きく設定する構成としてもよい。一例として、重み決定部123は、
・取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合において、第2のフィードバック制御量(視覚参照フィードバック制御量)qに乗ぜられる重み係数「1-F(P3)」の値と、
・取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより小さい場合において、第2のフィードバック制御量(視覚参照フィードバック制御量)qに乗ぜられる重み係数「1-F(P4)」の値とを、
1-F(P3)>1-F(P4)
となるように設定してもよい。換言すれば、
F(P3)<F(P4)
となるように設定してもよい。
【0094】
なお、本処理例における「角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合」及び「角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより小さい場合」は、重み決定部123により、ある期間(タイミング)における角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさを、他の期間(タイミング)における角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさと比較することによって特定される構成としてもよい。或いは、各期間における角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさを、予め定められた閾値と比較することによって特定される構成としてもよい。
【0095】
また、本処理例における「角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合」及び「角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合」は、逐次的に取得される力覚情報KDを参照して、逐次的に決定される構成としてもよいがこれに限られない。重み決定部123は、予め目標流量プロファイルTFRを参照して、当該プロファイルに含まれる複数の部分期間の各々について、当該期間が「角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合」及び「角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより小さい場合」の何れに相当するかを予め推定(特定)する構成としてもよい。
【0096】
また、上記の構成は、重み決定部123は、取鍋200の動きを規定する角加速度と取鍋200内の溶湯MMの質量との積、及び並進加速度と取鍋200内の溶湯MMの質量との積の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合に、視覚情報VDの重みよりをより大きく設定する構成であると表現してもよい。
【0097】
発明者の得た知見によれば、取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合に、視覚情報VDの信頼性が向上する。換言すれば、取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合、視覚情報VDを参照することにより、取鍋200の動きを好適に制御することができる。
【0098】
一方、取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより小さい場合には、力覚情報KDの信頼性が向上する。換言すれば、取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより小さい場合、力覚情報KDを参照することにより、取鍋200の動きを好適に制御することができる。
【0099】
このため、本例のように、取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合に、視覚情報VDの重みよりをより大きく設定する構成とすれば、取鍋200の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合であっても、より小さい場合であっても、取鍋200の動きをより好適に制御することができる。
【0100】
(重み決定処理例3)
重み決定部123は、
・溶湯MMの物質の組成
・溶湯MMの物性値
・溶湯MMの物性値の温度依存性
・溶湯MMの温度
等に応じて、力覚情報KD及び視覚情報VDの重み付けを更に変更する構成としてもよい。例えば、溶湯MMがある特定の物質Aである場合に、力覚情報KD又は視覚情報VDの初期値に正のオフセットを加算し、そうでない場合には、当該オフセットを加算しない構成としてもよい。また、そのうえで、上記重み決定処理例1及び重み決定処理例2の何れかを適用する構成としてもよい。
【0101】
また、溶湯MMの粘性が所定の値以上である場合に、力覚情報KD又は視覚情報VDの初期値に正のオフセットを加算し、そうでない場合には、当該オフセットを加算しない構成としてもよい。また、そのうえで、上記重み決定処理例1及び重み決定処理例2の何れかを適用する構成としてもよい。
【0102】
また、溶湯MMの粘性の温度依存性が所定の値以上である場合に、力覚情報KD又は視覚情報VDの初期値に正のオフセットを加算し、そうでない場合には、当該オフセットを加算しない構成としてもよい。また、そのうえで、上記重み決定処理例1及び重み決定処理例2の何れかを適用する構成としてもよい。
【0103】
また、溶湯MMの温度が所定の値以上である場合に、力覚情報KD又は視覚情報VDの初期値に正のオフセットを加算し、そうでない場合には、当該オフセットを加算しない構成としてもよい。また、そのうえで、上記重み決定処理例1及び重み決定処理例2の何れかを適用する構成としてもよい。
【0104】
発明者の得た知見によれば、力覚情報KD及び視覚情報VDの信頼性は、溶湯MMの物質の組成、溶湯MMの物性、及び溶湯MMの温度等によっても変動し得る。
【0105】
このため、本例のように、溶湯MMの物質の組成、溶湯MMの物性、及び溶湯MMの温度等に応じて、力覚情報KD及び視覚情報VDの重み付けを更に変更する構成とすれば、溶湯MMの物質の組成、溶湯MMの物性、及び溶湯MMの温度等がどのようなものであったとしても、取鍋200の動きを好適に制御することができる。
【0106】
(重み決定処理例4)
また、重み決定部123は、力覚情報KD及び視覚情報VDの少なくとも何れかを参照して、取鍋200内の溶湯MMに所定の大きさ以上の液面振動が発生したか否かを判定し、液面振動が発生した場合には、力覚情報KDの重みを低下させる構成としてもよい。
【0107】
発明者の得た知見によれば、取鍋200内の溶湯MMに所定の大きさ以上の液面振動が発生した場合、力覚情報KDの信頼性が低下する。上記の構成によれば、液面振動が発生した場合には、力覚情報KDの重みを低下させるので、液面振動が発生した場合であってもそうでない場合であっても、取鍋200の動きを好適に制御することができる。
【0108】
(重み決定処理例5)
重み決定部123は、視覚情報VD及び力覚情報KDの少なくとも何れかを入力とし、視覚情報VD及び力覚情報KDの少なくとも何れかに関する重みを出力とする学習済のモデルを用いて、視覚情報VD及び力覚情報KDの少なくとも何れかに関する重みを設定する構成としてもよい。
【0109】
上記モデルは、例えば、視覚情報VD及び力覚情報KDの少なくとも何れかと、視覚情報VD及び力覚情報KDの少なくとも何れかに関する正解データとしての重みとを含む教師データを参照することによって予め学習しておくことができる。そのようなモデルとして、例えばCNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)等のニューラルネットワークを用いることができるが、これは本例を限定するものではなく、その他の構成を有するモデルを用いてもよい。
【0110】
[ソフトウェアによる実現例]
制御装置100の制御ブロック(特に、取得部11、決定部12)は、集積回路(ICチップ)などに形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、制御装置100は、例えば、コンピュータ(電子計算機)を用いて構成される。
【0111】
(制御装置100の物理的構成)
図10は、制御装置100として用いられるコンピュータの物理的構成を例示したブロック図である。制御装置100は、図10に示すように、バス1010と、プロセッサ1001と、主メモリ1002と、補助メモリ1003と、通信インタフェース1004と、出入力インタフェース1005とを備えたコンピュータによって構成可能である。プロセッサ1001、主メモリ1002、補助メモリ1003、通信インタフェース1004、および出入力インタフェース1005は、バス1010を介して互いに接続されている。出入力インタフェース1005には、入力装置1006および出力装置1007が接続されている。
【0112】
プロセッサ1001としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、またはこれらの組み合わせなどが用いられる。
【0113】
主メモリ1002としては、例えば、半導体RAM(random access memory)などが用いられる。
【0114】
補助メモリ1003としては、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体を備えていてもよい。例えば、補助メモリ1003としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはこれらの組み合わせなどが用いられる。補助メモリ1003には、上述した制御装置100の動作をプロセッサ1001に実行させるためのプログラム(注湯流量制御プログラム)が格納されている。プロセッサ1001は、補助メモリ1003に格納されたプログラムを主メモリ1002上に展開し、展開したプログラムに含まれる各命令を実行する。
【0115】
通信インタフェース1004は、ネットワーク(例えばインターネット)に接続するインタフェースである。
【0116】
出入力インタフェース1005としては、例えば、USBインタフェース、赤外線、またはBluetooth(登録商標)などの近距離通信インタフェース、またはこれらの組み合わせが用いられる。
【0117】
入力装置1006としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、またはこれらの組み合わせなどが用いられる。出力装置1007としては、例えば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、またはこれらの組み合わせが用いられる。
【0118】
なお、注湯流量制御システム1は、一例として制御装置100を含んでいるが、本発明の注湯流量制御システムは、制御装置100を含まなくても、制御装置100の機能的な構成を含む種々の構成の連携によっても構築され得る。
【0119】
〔まとめ〕
本明細書に記載の内容には以下の態様が含まれる。
【0120】
(態様1)
取鍋に関する力覚情報と、当該取鍋から流出する溶湯に関する視覚情報とを取得する取得工程と、
前記力覚情報及び前記視覚情報を参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定する決定工程と、
を含み、
前記決定工程では、
前記取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更する
注湯流量制御方法。
【0121】
上記の構成によれば、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0122】
(態様2)
前記決定工程では、
前記取鍋からの溶湯の流量の変動がより小さい期間において、前記力覚情報の重みをより大きく設定する
態様1に記載の注湯流量制御方法。
【0123】
上記の構成によれば、前記取鍋からの溶湯の流量の変動がより小さい期間において、前記力覚情報の重みをより大きく設定するので、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0124】
(態様3)
前記決定工程では、
前記取鍋の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合に、前記視覚情報の重みよりをより大きく設定する
態様1又は2に記載の注湯流量制御方法。
【0125】
上記の構成によれば、前記取鍋の動きを規定する角加速度及び並進加速度の少なくとも何れかの大きさがより大きい場合に、前記視覚情報の重みよりをより大きく設定するので、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0126】
(態様4)
前記決定工程は、
前記力覚情報を参照して、前記取鍋から流出する溶湯の流量に関する第1の推定量を算出する第1の推定工程と、
前記視覚情報を参照して、前記流量に関する第2の推定量を算出する第2の推定工程と、
前記第1の推定量と前記第2の推定量とを参照して、前記取鍋の動きに関する制御量を導出する導出工程と
を含んでいる
態様1から3の何れか1項に記載の注湯流量制御方法。
【0127】
上記の構成によれば、前記第1の推定量と前記第2の推定量とを参照して、前記取鍋の動きに関する制御量を導出するので、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0128】
(態様5)
前記導出工程は、
前記第1の推定量を参照して、第1のフィードバック制御量を算出する第1のフィードバック制御量算出工程と、
前記第2の推定量を参照して、第2のフィードバック制御量を算出する第2のフィードバック制御量算出工程と、
前記第1のフィードバック制御量と前記第2のフィードバック制御量との重み付け和であって、前記取鍋の姿勢及び動きに応じた重みによる重み付け和から、前記取鍋の動きに関する制御量を算出する算出工程と
を含んでいる態様4に記載の注湯流量制御方法。
【0129】
上記の構成によれば、前記第1の推定量と前記第2の推定量とを参照したフィードバック制御により、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0130】
(態様6)
前記第1の推定工程では、
前記取鍋内の前記溶湯の液面面積の、前記取鍋の傾動角度での微分を含む数理モデルを用いて、前記第1の推定量を算出し、
前記算出工程では、前記数理モデルの逆モデルを用いて、前記取鍋の動きに関する制御量を算出する
態様5に記載の注湯流量制御方法。
【0131】
上記の構成によれば、前記取鍋内の前記溶湯の液面面積の、前記取鍋の傾動角度での微分を含む数理モデルを用いるので、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0132】
(態様6)
前記第2の推定工程では、
前記取鍋から流出する溶湯の撮像画像に対してエッジ検出処理を適用し、
前記エッジ検出処理で検出された複数のエッジペアに関し、各エッジペアの中点を通る流線を取得する処理と、
前記エッジ検出処理で検出された複数のエッジペアに関し、各エッジペアからエッジ幅を取得し、楕円近似により前記流出する溶湯の断面積を算出する処理と
を実行する
態様5に記載の注湯流量制御方法。
【0133】
上記の構成によれば、上記流線を取得する処理及び上記溶湯の断面積を算出する処理により前記流量に関する第2の推定量を算出するので、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0134】
(態様8)
前記取鍋として、
有底の容器部と、
前記容器部の底部から前記容器部の開口部に向けて前記容器部から漸次離れる方向に延在する筒状の注湯部と、
を有する取鍋を用いる、
態様1から7の何れか1項に記載の注湯流量制御方法。
【0135】
上記取鍋が上記の構成を有することによって、当該取鍋内の溶湯の液面振動を抑制することができるので、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0136】
(態様9)
取鍋に関する力覚情報と、当該取鍋から流出する溶湯に関する視覚情報とを取得する取得部と、
前記力覚情報及び前記視覚情報を参照して前記取鍋の動きに関する制御量を決定する決定部と、
を備え、
前記決定部は、
前記取鍋の姿勢及び動きに応じて前記力覚情報及び前記視覚情報の重み付けを変更する
注湯流量制御装置。
【0137】
上記の構成によれば、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0138】
(態様10)
態様9に記載の注湯流量制御装置としてコンピュータを機能させるための注湯流量制御プログラムであって、上記取得部、および上記決定部としてコンピュータを機能させるための注湯流量制御プログラム。
【0139】
上記の構成によれば、高精度な注湯流量制御を実現することができる。
【0140】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
1 ・・・制御システム(注湯流量制御システム)
100 ・・・制御装置(注湯流量制御装置)
300 ・・・支持装置
500 ・・・注湯システム
110 ・・・制御部
11 ・・・取得部
12 ・・・決定部
121 ・・・第1の推定部
122 ・・・第2の推定部
123 ・・・重み決定部
124 ・・・制御量導出部
S100 ・・・注湯流量制御方法
S101 ・・・取得工程
S102 ・・・推定工程
S103 ・・・決定工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10