(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026245
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203876
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2023130274
(32)【優先日】2023-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523304386
【氏名又は名称】三宅 義郎
(74)【代理人】
【識別番号】110003915
【氏名又は名称】弁理士法人岡田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 義郎
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB30
3B202BA09
3B202BA16
3B202BE13
3B202ED05
3B202EE08
3B202EF03
(57)【要約】
【課題】歯等への悪影響を与える恐れを軽減する適切な刷掃を行うことが可能な歯ブラシを提供することである。
【解決手段】頭部110の表面に突設された、作業部である前方ブラシ群120a、および毛束若しくは毛束群または毛束若しくは毛束群以外の部材から構成される安定部である後方ブラシ群120bを備え、互いが頭部110の延出方向に沿った配列方向を長手方向とするもの、および互いが頭部110の延出方向に交差する方向に沿った配列方向を長手方向とするもの、の少なくともいずれか一方を含み、頭部110の延出方向に沿って配列されている前方ブラシ群120aおよび後方ブラシ群120bは、互いに離隔しており、頭部110の延出方向に交差する方向に沿って配列されている作業部である前方毛束群122aまたは前方毛束群123a、および安定部である前方毛束群121aは、頭部110の延出方向視で、一方が他方に対して傾斜している、歯ブラシ101。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部の表面に突設された、毛束または毛束群から構成される作業部、および、毛束若しくは毛束群または毛束若しくは毛束群以外の部材から構成される安定部を備え、
前記作業部および前記安定部は、
互いが前記頭部の延出方向に沿った配列方向を長手方向とするもの、および
互いが前記頭部の延出方向に交差する方向に沿った配列方向を長手方向とするもの、
の少なくともいずれか一方を含み、
前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記作業部および前記安定部は、互いに離隔しており、
前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記作業部および前記安定部は、前記頭部の延出方向視で、一方が他方に対して傾斜している、
歯ブラシ。
【請求項2】
前記作業部および前記安定部の組は、
前記頭部の延出方向に沿って配列されているもの、および
前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されているもの、
の両方を含み、
前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記作業部が形成する刷掃面と
前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記安定部が形成する刷掃面とは同一高であり、
前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記作業部が形成する刷掃面は、前記頭部の延出方向視で、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記安定部が形成する刷掃面よりも高い位置にある、
請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記作業部は、
前記頭部の延出方向視で、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記安定部に対して、対称を成すように形成されている、
請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記作業部および前記安定部の組は、
前記頭部の延出方向に沿って配列されているもののみを含み、
前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記作業部が形成する刷掃面と
前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記安定部が形成する刷掃面とは、同一高であり、
前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記作業部が形成する刷掃面は、前記頭部の表面に平行な方向視で、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記安定部が形成する刷掃面よりも、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿った寸法が大きい、
請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記作業部および前記安定部の刷掃面の各々は、
前記頭部の表面に平行な平面視で、前記頭部の先端から後端に向かうにつれて、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿った寸法が大きくなっている、
請求項4に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記頭部を操作するための把柄部と、
前記頭部と前記把柄部とを繋ぐ頸部とを備え、
前記頸部は、前記頭部を、前記頭部の延出方向視で、前記頭部の延出方向に直交する2つの方向の各々に沿ってシフトした位置であって、前記頭部の表面が前記把柄部と相対する側となるような位置にて、前記把柄部と繋いでいる、
請求項1または4に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記頭部を操作するための把柄部と、
前記頭部と前記把柄部とを繋ぐ頸部とを備え、
前記頸部は、前記頭部を、前記頭部の延出方向視で、前記頭部の延出方向に直交する2つの方向の各々に沿ってシフトした位置であって、前記頭部の表面が前記把柄部と相対する側となるような位置にて、前記把柄部と繋いでおり、
前記作業部および前記安定部の刷掃面の各々は、
前記頭部の表面に平行な平面視で、前記頭部の先端から後端に向かうにつれて、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿った寸法が大きくなっている、
請求項1または4に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関し、特に適切な刷掃を行うためものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯ブラシは、虫歯や歯周病の予防のために種々の構成を有する。例えば、特許文献1には、歯の形状に応じた適切な歯磨きを可能とすることを目的とし、頭部の形状や毛束群の配置を考慮した歯ブラシとして、頭部の長手方向の一方の辺から他方の辺に渡った隙間を隔てて、複数の毛束からなる毛束群が複数配置され、その隙間は、毛束群を構成する複数の毛束の間隔よりも広いものとした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、歯ブラシが虫歯や歯周病の予防を考慮した構成を有していても、以下のように、使用者による刷掃によって歯や歯茎に悪影響を与えてしまうことがある。
すなわち、近年、社会の口腔清潔意識の高揚に伴って、歯ブラシ使用者が過度な刷掃をすることにより歯と歯肉の境界付近に於いて歯肉の退縮と露出した歯(セメント質)の歯ブラシによる摩耗さらには喫状欠損(実質欠損)が散見されることを、本発明者は見出した。
【0005】
しかしながら、上記従来の歯ブラシには、楔状欠損のように、不適切な刷掃に基づく歯または歯列および歯茎への悪影響が考慮されていなかった。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、過度の歯ブラシ刷掃による摩耗、楔状欠損が頻繁にみられる実情に鑑み、過度の歯ブラシ刷掃による歯または歯列および歯茎への悪影響を与える恐れを軽減する適切な刷掃を行うことが可能な歯ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、頭部の表面に突設された、毛束または毛束群から構成される作業部、および、毛束若しくは毛束群または毛束若しくは毛束群以外の部材から構成される安定部を備え、前記作業部および前記安定部は、互いが前記頭部の延出方向に沿った配列方向を長手方向とするもの、および互いが前記頭部の延出方向に交差する方向に沿った配列方向を長手方向とするもの、の少なくともいずれか一方を含み、前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記作業部および前記安定部は、互いに離隔しており、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記作業部および前記安定部は、前記頭部の延出方向視で、一方が他方に対して傾斜している、歯ブラシである。
このような本発明は、以下のように要約される。すなわち、歯ブラシに作業部と安定部をいう概念を組込んだことにより、歯ブラシの圧が歯列の突出部に集中することを回避し、且つ、凹凸の激しい歯列面を刷掃するに当たって、歯ブラシ頭部の動揺(ピッチング、ローリング)を防ぎながら歯ブラシの刷掃面が歯面の豊隆面を含むすべての面の接線(接面)に対して常時垂直に当たるように配慮したものである。
【0008】
第2の本発明は、前記作業部および前記安定部の組は、前記頭部の延出方向に沿って配列されているもの、および前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されているもの、の両方を含み、前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記作業部が形成する刷掃面と前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記安定部が形成する刷掃面とは同一高であり、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記作業部が形成する刷掃面は、前記頭部の延出方向視で、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記安定部が形成する刷掃面よりも高い位置にある、第1の本発明の歯ブラシである。
【0009】
第3の本発明は、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記作業部は、前記頭部の延出方向視で、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記安定部に対して、対称を成すように形成されている、第2の本発明の歯ブラシである。
【0010】
第4の本発明は、前記作業部および前記安定部の組は、前記頭部の延出方向に沿って配列されているもののみを含み、前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記作業部が形成する刷掃面と前記頭部の延出方向に沿って配列されている前記安定部が形成する刷掃面とは、同一高であり、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記作業部が形成する刷掃面は、前記頭部の表面に平行な方向視で、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿って配列されている前記安定部が形成する刷掃面よりも、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿った寸法が大きい、第1の本発明の歯ブラシである。
【0011】
第5の本発明は、前記作業部および前記安定部の刷掃面の各々は、前記頭部の表面に平行な平面視で、前記頭部の先端から後端に向かうにつれて、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿った寸法が大きくなっている、第4の本発明の歯ブラシである。
【0012】
第6の本発明は、前記頭部を操作するための把柄部と、前記頭部と前記把柄部とを繋ぐ頸部とを備え、前記頸部は、前記頭部を、前記頭部の延出方向視で、前記頭部の延出方向に直交する2つの方向の各々に沿ってシフトした位置であって、前記頭部の表面が前記把柄部と相対する側となるような位置にて、前記把柄部と繋いでいる、第1または第4の本発明の歯ブラシである。
【0013】
第7の本発明は、前記頭部を操作するための把柄部と、前記頭部と前記把柄部とを繋ぐ頸部とを備え、前記頸部は、前記頭部を、前記頭部の延出方向視で、前記頭部の延出方向に直交する2つの方向の各々に沿ってシフトした位置であって、前記頭部の表面が前記把柄部と相対する側となるような位置にて、前記把柄部と繋いでおり、前記作業部および前記安定部の刷掃面の各々は、前記頭部の表面に平行な平面視で、前記頭部の先端から後端に向かうにつれて、前記頭部の延出方向に交差する方向に沿った寸法が大きくなっている、第1または第4の本発明の歯ブラシである。
【発明の効果】
【0014】
以上のような本発明は、歯または歯列および歯茎への悪影響を与える恐れを軽減する適切な刷掃を行うことが可能になるという効果を奏する。
【0015】
本発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す斜視図である。
【
図2】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す正面図であり、(B)は
図2(A)のA-A断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す平面図である。
【
図4】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシを左下顎の歯列の頬側面に当てた状態を咬合面から観た図であり、(B)は
図4(A)のB-B断面図である。
【
図5】(A)は本発明の第1の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシの構成を示す正面図であり、(B)は本発明の第1の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシの構成を示す平面図
【
図6】(A)は本発明の第1の実施の形態の他の変形例1に係る歯ブラシの構成を示す正面図であり、(B)は本発明の第1の実施の形態の他の変形例1に係る歯ブラシの構成を示す平面図である。
【
図7】(A)は本発明の第1の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシの構成を示す正面図であり、(B)は(A)のC-C断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシの構成を示す平面図である。
【
図9】(A)は本発明の第1の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシの構成を示す正面図であり、(B)は本発明の第1の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシの構成を示す平面図である。
【
図10】(A)は本発明の第2の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す右側面図であり、(B)は本発明の第2の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す正面図であり、(C)は本発明の第2の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す平面図である。
【
図11】(A)は本発明の第2の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシの構成を示す正面図であり、(B)は本発明の第2の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシの構成を示す平面図である。
【
図12】(A)は本発明の第2の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシの構成を示す右側面図であり、(B)は本発明の第2の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシの構成を示す正面図であり、(C)は本発明の第2の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシの構成を示す平面図である。
【
図13】(A)は本発明の第2の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシの構成を示す右側面図であり、(B)は本発明の第2の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシの構成を示す平面図であり、(C)は本発明の第2の実施の形態の他の変形例3に係る歯ブラシの構成を示す右側面図であり、(D)は本発明の第2の実施の形態の他の変形例3に係る歯ブラシの構成を示す平面図
【
図14】(A)は本発明の第3の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す右側面図であり、(B)は本発明の第3の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す底面図であり、(C)は(B)のD-D断面図である。
【
図15】本発明の第3の実施の形態に係る歯ブラシの使用状態を説明するための図である。
【
図16】本発明の第4の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す斜視図である。
【
図17】本発明の第4の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す平面図である。
【
図18】(A)は本発明の他の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す右側面図であり、(B)は本発明の他の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す底面図であり、(C)は(B)のE-E断面図である。
【
図19A】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す平面図である。
【
図19B】(B)は、左上下顎の歯列を、閉口位で軽く接触させた状態で、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシを、その上下歯の頬側面を同時に覆うように当てたときの図である。(C)は
図19B(B)のF-F断面図である。
【
図20】本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す斜視図である。
【
図21】(A)は本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す正面図であり、(B)は
図21(A)のG-G断面図である。
【
図22】(A)は本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシを左下顎の歯列の舌側面に当てた状態を咬合面から観た図であり、(B)は
図22(A)のH-H断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す斜視図であり、
図2(A)は第1の実施の形態の歯ブラシの要部の構成を示す正面図であり、
図2(B)は
図2(A)のA-A断面図であり、
図3は第1の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す平面図である。
【0018】
各図に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシ100は、頭部110、頭部110の主面に埋設され、かつ歯を刷掃するブラシ本体となる毛束群が埋設されるブラシ部120、および頭部110と使用者が歯ブラシを掴んで操作するための把柄部(図示せず)とを接続する頸部130を備える。なお、頭部110、頸部130、および把柄部の各々は、合成樹脂製であることが好ましい。頭部110、頸部130、および把柄部の各々は、各々が別体で組み合わされていてもよいし、それらの全部または一部が一体成型されていてもよい。
【0019】
以下、本明細書において、
図1に示すように、頭部110の、頸部130に接続される側を後側と呼び、頭部110の、何も接続されない先端側を、前側と呼び、頭部110の前側と後側とを繋ぐ方向を、頭部の延出方向と定め、前後方向と呼ぶ。また、頭部110を前方から見たときに右手寄りになる側を、右側と呼び、頭部110を前方から見たときに左手寄りになる側を、左側と呼び、頭部110の延出方向に直交する方向を左右方向と呼ぶ。更に、頭部110においてブラシ部120が埋設されている面の側を上側と呼び、ブラシ部120が埋設されていない面の側を下側と呼び、上側および下側を結ぶ、前後方向および左右方向の両方に直交する方向を、上下方向と呼ぶ。これら各方向は、各図に直交座標により示す。
【0020】
(頭部)
頭部110は、歯ブラシ100の前後方向に沿って先端に位置する部位である。頭部110は、前側から見て、中央部111、中央部111の右側に位置する右側部112、および中央部111の左側に位置する左側部113が一体的に形成される。頭部110の前側には、前面110frが形成される。
【0021】
頭部110において、中央部111は、前後左右方向の平面に対して平行面をなす、平面視で前後方向を長手方向とする略矩形の外形の中央埋設面111aを有する。右側部112は、中央部111の右側の長辺から中央埋設面111aに向かう傾斜面である、平面視で前後方向を長手方向とする略矩形の外形の右側埋設面112aを有する。左側部113は、中央部111の左側の長辺から中央埋設面111aに向かう傾斜面である、平面視で前後方向を長手方向とする略矩形の外形の左側埋設面113aを有する。なお、右側埋設面112aおよび左側埋設面113aは、前後方向視で、中央埋設面111aに対して左右対称をなす角度で傾斜している。
【0022】
(ブラシ部)
ブラシ部120は、頭部110の中央部111の中央埋設面111aに埋設される中央ブラシ部121、頭部110の右側部112の右側埋設面112aに埋設される右側ブラシ部122、および頭部110の左側部113の左側埋設面113aに埋設される左側ブラシ部123を有する。
【0023】
ブラシ部120において、中央ブラシ部121は中央埋設面111aに直交する向きに埋設される。右側ブラシ部122は右側埋設面112aに直交する向きに埋設される。左側ブラシ部123は左側埋設面113aに直交する向きに埋設される。
【0024】
また、前から見て、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123の各々の先端は同一高の刷掃面を形成し、中央ブラシ部121の先端は右側ブラシ部122および左側ブラシ部123より低い刷掃面を形成する。
【0025】
これにより、頭部110において、中央ブラシ部121は上下方向に沿って直立し、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123は、それぞれ中央ブラシ部121に向かって傾斜するとともに、それらの刷掃面をなす先端は、中央ブラシ部121の先端よりも上方に位置する。
図2(A)に示す、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123の各々の中央ブラシ部121への傾斜角θは、5°≦θ≦45°の範囲にあることが好ましい。
【0026】
ブラシ部120の中央ブラシ部121、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123の各々は、前後方向を長手方向として配列された一対の毛束群を有する。具体的には、中央ブラシ部121は、頭部110の前寄りに埋設された前方毛束群121aと、前方毛束群121aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群121bとを有する。右側ブラシ部122は、頭部110の前方寄りに埋設された前方毛束群122aと、前方毛束群122aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群122bとを有する。左側ブラシ部123は、頭部110の前方寄りに埋設された前方毛束群123aと、前方毛束群123aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群123bとを有する。
【0027】
前方毛束群121aおよび後方毛束群121bの各々は、各図に示すように、前後方向に配列された一対の毛束から構成される。前方毛束群122aおよび後方毛束群122b、並びに前方毛束群123aおよび後方毛束群123bの各々の毛束群は、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された2対(4束)の毛束から構成される。なお、前方毛束群121aおよび後方毛束群121bの各々は、各図に示すように、前後方向に配列された一対の毛束から構成されているが、各々の毛束群は、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された2対(4束)の毛束から構成されてもよい。
【0028】
前方毛束群121a、前方毛束群122aおよび前方毛束群123aは、特に
図3に示すように、前後方向において前寄りの同一位置にそれぞれ配置されることで、左右方向を長手方向として配列された、前方ブラシ群120aを構成する。後方毛束群121b、後方毛束群122bおよび後方毛束群123bは、前後方向において後ろ寄りの同一位置にそれぞれ配置されることで、左右方向を長手方向として配列された、後方ブラシ群120bを構成する。
【0029】
なお、前方ブラシ群120aと後方ブラシ群120bとがなす所定間隔は、頬側歯面を刷掃する場合、歯が一本以上収まる程度の寸法であることが好ましく、少なくとも、一本の歯に対して前方ブラシ群120aおよび後方ブラシ群120bの刷掃面の両方が接することがない程度の寸法であることが好ましい。一方、舌側歯面を刷掃する場合、前方ブラシ群120aと後方ブラシ群120bとがなす所定間隔は、近接していてもよい。
【0030】
また、
図2(B)に示すように、左側ブラシ部123の前方毛束群123aおよび後方毛束群123bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t1は、中央ブラシ部121の前方毛束群121aおよび後方毛束群121bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t2よりも大きいことが好ましい。同様に、右側ブラシ部122の前方毛束群122aおよび後方毛束群122bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t1は、中央ブラシ部121の前方毛束群121aおよび後方毛束群121bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t2よりも大きいことが好ましい。
【0031】
以上の構成を備えた本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシ100は、ブラシ部120が、前方ブラシ群120aおよび後方ブラシ群120bの組み合わせにより構成され、前方ブラシ群120aが、前方毛束群121aおよび前方毛束群122a、並びに前方毛束群121aおよび前方毛束群123aの組み合わせを含むように構成され、後方ブラシ群120bが、後方毛束群121bおよび後方毛束群122b、並びに後方毛束群121bおよび後方毛束群123bの組み合わせを含むように構成され、各々の組み合わせが、後述する作業部および安定部の組み合わせに対応することを特徴とする。
【0032】
以下、
図4を併せて参照して、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシ100の好適な使用例に基づき、歯ブラシ100の作用効果を説明する。
【0033】
図4(A)に模式的に示す、左下顎の歯列200における刷掃を例にとる。
図4(A)は、は本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシを左下顎の歯列の頬側面に当てた状態を咬合面から観た図である。歯ブラシ100は、口腔内にてブラシ部120の刷掃面が、歯210、歯220、歯230、歯240および歯250を含む歯列200の頬側(表側)に相対する姿勢となるように用いる。ただし、この例では、歯ブラシ100は使用者の右手に把持されて用いられるものとし、ブラシ部120の刷掃面は歯列200の頬側(表側)に相対させるものとした。以下の各実施の形態の説明においても、断りのない限り、歯ブラシ100は使用者の右手に把持されて用いられるものとする。
【0034】
図4(A)の実線で示すように、まず、後方ブラシ群120bを歯列の手前側の歯250に接触させ、所望の位置に位置決めする。そして、後方ブラシ群120bを位置決めした状態を保ちつつ、前方ブラシ群120aを歯列の奥側の歯230にあてがい、把柄部を操作して前方ブラシ群120aを矢印301bで示す方向と運動範囲で動かすことにより歯230を刷掃する。続いて、
図4(A)の点線で示す位置に歯ブラシ100を移動させ、後方ブラシ群120bを歯列の歯240に接触させ、前方ブラシ群120aを歯列のさらに奥側の歯220にあて、矢印301aで示す方向と運動範囲で動かすことにより歯220を刷掃する。
【0035】
上記の動作において、後方ブラシ群120bと歯250との接触位置を支点として働かせ、把柄部の操作は、後方ブラシ群120bへ力を加えるためというよりは、前方ブラシ群120aの動きに反映させるためということを意識して行うのが好ましい。更に、歯または歯茎に伝わる後方ブラシ群120bの触感を利用して、歯列200における歯210~歯250に対する前方ブラシ群120aの位置や姿勢を把握するようにすることが好ましい。
【0036】
このように、第1の実施の形態に係る歯ブラシ100においては、歯列の頬側(表側)または舌側(裏側)に対する刷掃に際して、ブラシ部120の前方ブラシ群120aが、歯列中の所望の歯に対して刷掃を行う作業部として働き、ブラシ部120の後方ブラシ群120bが、前方ブラシ群120aを使用者の操作に応じて上記所望の歯に誘導し、安定した状態で刷掃し易くする安定部として働く。なお、第1の実施の形態の歯ブラシ100は、特に、歯列の頬側に対する刷掃により好適に用いられる。
【0037】
更に、刷掃に際しては、狭い口腔内において、歯ブラシ100を延出方向に小刻みに往復運動させるのであるが、
図4(A)の実線部及び点線部の位置関係が示すように、前方ブラシ群120a及び後方ブラシ群120bの位置が乖離しているので、歯列200の突出部に対して過度なブラシ圧が集中することなく、歯ブラシ100のピッチングを防ぎながら安定して刷掃することができる。換言すると、刷掃に際して、たとえ、好適な使用例から外れて前方ブラシ群120a及び後方ブラシ群120bが、必要以上のブラシ圧にて用いられたとしても、ブラシ圧を前方ブラシ群120a及び後方ブラシ群120bが接する歯列200上の2か所に分散させることにより、歯列200の特定の1か所の突出部に対し、過度な歯ブラシ100圧が集中した刷掃がなされる恐れを回避することができる。
図4(A)に示す矢印301aは、点線部で示される歯ブラシ100の位置において、1歯分の距離で、歯ブラシ100の反復運動の動かす方向と大きさを示し、
図4(A)に示す矢印301bは、実線部で示される歯ブラシ100の位置において、1歯分の距離で、歯ブラシ100の反復運動の動かす方向と大きさを示す。このように、各位置における歯列に対する接線方向が異なることから、動かす方向も異なる。
【0038】
次に、
図4(B)に、
図4(A)のB-B断面図を示す。
図4(B)に示すように、中央ブラシ部121の前方毛束群121aを、歯220の頬側221においてもっとも大きく膨らんだ部位である最大豊隆部220Xまたはその近傍に接触させ、位置決めする。そして、前方毛束群121aを位置決めした状態を保ちつつ、左側ブラシ部123の前方毛束群123aを最大豊隆部220Xより下方で歯肉辺縁の間の汚れが付きやすい表面221Aにあてがい、把柄部を操作して前方毛束群123aを歯列の配列方向に沿って前後に動かすことにより、表面221Aを刷掃する。
【0039】
上記の動作において、前方毛束群121aと歯220との接触位置を安定部(支点)として働かせ、把柄部の操作は、前方毛束群121aへ力を加えるためというよりは、前方毛束群123aの動きに反映させるためということを意識して行うことができる。
【0040】
すなわち、安定部である中央ブラシ部121の前方毛束群121aが支点として働くことにより、歯ブラシ100の頭部110がローリングすることが抑制されることで歯ブラシ100の回転ブレを防ぎ、刷掃中に、歯ブラシ100の頭部110を前後方向に動かす時、作業部である左側ブラシ部123の前方毛束群123aの刷掃面が歯の表側に対して、常に一定の姿勢で接することとなる。
【0041】
更に、この場合において、前方毛束群122aは、頭部110が前方毛束群121aと歯220との接触位置を支点として揺動する際に、歯220の最大豊隆部220Xから先端側221Bで支持して、頭部110の回転ブレを小さくする安定部として働く。
【0042】
なお、この動作に際しても、
図4(A)に示す場合と同様にして、歯または歯茎に伝わる前方毛束群121aの触感を利用して、歯220の頬側221における最大豊隆部220Xの位置において、歯ブラシ100を持つ手に感知しながら刷掃することができる。
【0043】
このように、第1の実施の形態に係る歯ブラシ100は、ブラシ部120による歯の頬側(表側)に対する刷掃に際して、左側ブラシ部123の前方毛束群123aが歯列中の歯に対する刷掃を行う作業部として働き、ブラシ部120の中央ブラシ部121の前方毛束群121aが、前方ブラシ群120aを使用者の操作に応じて歯の表側に対して適正な姿勢、目標位置に誘導し、安定した状態で刷掃し易くする安定部として働くことが可能な構成を有する。
【0044】
更に、第1の実施の形態に係る歯ブラシ100は、特に
図2(A)に示すように、作業部となる前方毛束群123aが、安定部となる前方毛束群121aに向かって傾斜しているとともに前方毛束群121aよりも高い刷掃面を有する構成としたことにより、以下の効果を奏する。すなわち、
図4(B)に例示されるように、歯220の頬側221は、最大豊隆部220Xを頂上として、それより上方(先端側)および下方(歯肉側)に連なる表面部分が、湾曲した凸形状を有するのに対し、歯ブラシ100は上記の構成としたことにより、前方毛束群121aが最大豊隆部220Xまたはその近傍に位置決めされている状態では、前方毛束群123aの刷掃面は、歯220の最大豊隆部220Xより下方(歯肉側)の表面221Aに対して略垂直な状態にて接することとなる。
【0045】
この場合において、歯ブラシ100は、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123の各々の中央ブラシ部121への傾斜角θを、5°≦θ≦45°の範囲にあるとしたことにより、性別年齢等多岐にわたる使用者の歯の形状に追従して、前方毛束群121aが最大豊隆部220Xまたはその近傍に位置決めされている状態において、前方毛束群123aの刷掃面を、歯の最大豊隆部220Xより下方(歯肉側)の表面221Aに対して略垂直な状態にて接するようにさせることが可能となる。
【0046】
これにより、歯ブラシ100の使用者は、表面221Aと歯茎300との間に滞留する歯垢を、ブラシ部120が適切な姿勢で歯を刷掃していることの手ごたえを感じながら、確実に除去することができる。その結果、過度の歯ブラシ刷掃、すなわち、過度なブラシ圧や過剰な刷掃の回数による摩擦がなされることが抑制され、楔状欠損や歯茎への損傷を回避できる。
【0047】
更に、歯ブラシ100の使用者は、
図4(B)に示すように、刷掃に際して、少なくとも、前方毛束群121aおよび前方毛束群122aが歯に接した状態が保たれるように使用すれば、前方毛束群121aを介して歯220との接触を保ちながら、ブラシ圧に対する安定部(緩衝体)として働かせることができる。これにより、前方毛束群123aの刷掃面が表面221Aに対して過度のブラシ圧で接することが回避される。
【0048】
なお、
図4(A)(B)を参照した説明においては、右下顎の歯列200における刷掃を例にとったが、歯ブラシ100は、上下歯列の任意の個所を対象とすることができる。その場合、作業部および安定部として働く各毛束群の対応は、以下の通りとなる。
【0049】
右下顎および左上顎の歯列を対象とした場合は、左側ブラシ部123の前方毛束群123aが作業部として働き、中央ブラシ部121の前方毛束群121aおよび右側ブラシ部122の前方毛束群122aが安定部として働く。
【0050】
左下顎および右上顎の歯列を対象とした場合は、
図4(B)に示す場合と同様、右側ブラシ部122の前方毛束群122aが作業部として働き、中央ブラシ部121の前方毛束群121aおよび左側ブラシ部123の前方毛束群123aが安定部として働く。
【0051】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシ100によれば、上下左右すべての歯または歯列および歯茎への悪影響を与える恐れを回避する適切な刷掃を行うことが可能になる。
【0052】
なお、前後方向視にて作業部および安定部を構成する前方ブラシ群120aおよび後方ブラシ群120bは、左右方向視にて作業部および安定部を構成するブラシ部120の中央ブラシ部121、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123に対し、上下方向視で直交するものとしたが、以上説明した作用効果を奏する限りの範囲において、任意の角で交差するものとしてもよい。
【0053】
(第1の実施の形態の変形例1)
上記の説明において、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシ100は、特に
図3に示すように、前方毛束群122aおよび後方毛束群122b、並びに前方毛束群123aおよび後方毛束群123bの各々の毛束群が、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された4束の毛束から構成されるものとした。しかしながら、
図5(A)(B)に示すように、第1の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシ100Aは、
図3に示す歯ブラシ100の前方毛束群122aおよび後方毛束群122b、並びに前方毛束群123aおよび後方毛束群123bの各々の毛束群を前後方向にそれぞれ2束ずつ、左右方向にそれぞれ3束ずつ配列された、6束の毛束から構成されるものとしてもよい。
【0054】
また、
図6(A)(B)に示すように、第1の実施の形態の他の変形例1に係る歯ブラシ100Bは、
図3に示す歯ブラシ100の前方毛束群122aおよび後方毛束群122b、並びに前方毛束群123aおよび後方毛束群123bの各々の毛束群を、前後方向にそれぞれ2束ずつ、左右方向に1束が配列された、2束の毛束から構成されるものとしてもよい。
【0055】
要するに、本発明の作業部または安定部として働くブラシの毛束群を構成する毛束の数は任意であってよい。
【0056】
更に、上記の説明においては、本発明の作業部または安定部として働くブラシは、複数の毛束を有する毛束群から構成されるものとしたが、単一の毛束から構成されるものであってもよい。更に、本発明の頭部としての頭部110、および本発明の作業部または安定部として働くブラシは、その前後方向または左右方向の寸法の大小によって限定されるものではない。なお、第1の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシ100A、100Bは、特に、歯列の頬側に対する刷掃により好適に用いられる。
【0057】
(第1の実施の形態の変形例2)
上記の説明において、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシ100は、ブラシ部120の右側ブラシ部122の前方毛束群122aまたは左側ブラシ部123の前方毛束群123aが作業部として働き、ブラシ部120の中央ブラシ部121の前方毛束群121aが安定部として働くことが可能な構成であるとしたが、安定部は、毛束群や毛束により構成されるブラシでなくともよい。
【0058】
すなわち、
図7(A)(B)および
図8は、歯ブラシ100において、中央部111の中央埋設面111aに、安定部として、中央ブラシ部121に変えて、シリコン材料によるストッパ141を設けた変形例である歯ブラシ100Cを示す図である。
【0059】
各図に示すように、第1の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシ100Cの中央ブラシ部121の代わりに、
図3に示す歯ブラシ100のストッパ141として、頭部110の前寄りに埋設された前方ストッパ141aと、前方ストッパ141aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方ストッパ141bとを有する。
【0060】
ここで、右側ブラシ部122の前方毛束群122aおよび後方毛束群122bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t1は、ストッパ141の前方ストッパ141aおよび後方ストッパ141bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t2よりも大きいことが好ましい。同様に、左側ブラシ部123の前方毛束群123aおよび後方毛束群123bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t1は、ストッパ141の前方ストッパ141aおよび後方ストッパ141bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t2よりも大きいことが好ましい。
【0061】
前方ストッパ141aおよび後方ストッパ141bは、それぞれ前方毛束群122aおよび後方毛束群122bと同一寸法、同一個数であることが好ましいが、先端形状は、歯や歯茎を傷つけることがないよう、図示のように曲面であることが好ましい。また、弾性や可撓性等の材料特性は、使用時に適切なブラシ圧を保ち易くするため、作業部として働く他のブラシ部と同様であることが好ましい。また、ストッパ141の材料は、シリコン材料であるとしたが、口腔に入れても衛生上の不具合がないとされる素材であれば、ポリプロピレン等の合成樹脂材料、その他任意の材料を用いることができる。
【0062】
要するに、本発明の安定部は、作業部として働くブラシが、歯に対して適正な姿勢で、目標位置を保ちつつ刷掃するように誘導し、安定させるように働くことが可能な構成を有していればよく、刷掃の機能を有さない構成として実現されるものであってもよい。なお、第1の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシ100Cは、特に、歯列の頬側に対する刷掃により好適に用いられる。
【0063】
(第1の実施の形態の変形例3)
上記の説明において、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシ100は、頭部110が、中央部111、右側部112、および左側部113が一体的に形成されるものとしたが、頭部110は、中央部111と右側部112または左側部113のいずれか一方のみとを有するものであってもよい。
【0064】
すなわち、
図9(A)(B)に示すように、第1の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシ100Dは、
図3に示す歯ブラシ100において、頭部110から左側部113を省いて、中央部111および右側部112のみを有する状態を示している。
【0065】
第1の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシ100Dは、右側ブラシ部122の前方毛束群122aが作業部として働き、中央ブラシ部121の前方毛束群121aが安定部として働くことで、右上顎および左下顎の歯列の頬側を対象とした刷掃に好適となる。
【0066】
一方、中央部111および左側部113を有する場合は、左側ブラシ部123の前方毛束群123aが作業部として働き、中央ブラシ部121の前方毛束群121aが安定部として働くことで、左上顎および右下顎の歯列の頬側を対象とした刷掃に好適となる。なお、第1の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシ100Dは、特に、歯列の頬側に対する刷掃により好適に用いられる。
【0067】
要するに、本発明の作業部と安定部との組み合わせは、その具体的な個数や配置によって限定されるものではない。
さらに、以上の説明においては、ブラシ部120の前方ブラシ群120aが、歯列中の所望の歯に対して刷掃を行う作業部として働き、ブラシ部120の後方ブラシ群120bが、前方ブラシ群120aを使用者の操作に応じて上記所望の歯に誘導し、安定した状態で刷掃し易くする安定部として働くものとしたが、使用者の操作に応じて、ブラシ部120の前方ブラシ群120aが安定部として働き、ブラシ部120の後方ブラシ群120bが作業部として働くものとしてもよい。これは、以下に説明する各実施の形態においても同様である。
【0068】
(第2の実施の形態)
図10(A)は本発明の第2の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す右側面図であり、
図10(B)は第2の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す正面図であり、
図10(C)は第2の実施の形態に係る歯ブラシの構成を示す平面図である。ただし、
図1~
図9と同一または相当する構成については、同一符号を付し、共通する構成については、詳細な説明は省略する。
【0069】
第2の実施の形態に係る歯ブラシ101は、特に、歯列の舌側面の刷掃時に、柄が前歯の歯先に当たることを回避するための歯ブラシである。
第2の実施の形態に係る歯ブラシ101は、頭部150が、平面視で前後方向を長手方向とするとともに、前方の左右寸法が後方の左右寸法よりも小さくなっている多角形の外形であって、前後方向および左右方向がなす平面に対する平行面をなす埋設面150aのみを有する。頭部150の前側には、前面150frが形成される。
【0070】
頭部150は、埋設面150aに埋設されるブラシ部151を有する。ブラシ部151は、前後方向に配列され、埋設面150aに直交する向きに埋設された一対の毛束群である前方毛束群151aおよび後方毛束群151bを有する。
【0071】
前方毛束群151aは、頭部150の前寄りに埋設された毛束群であり、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された4束の毛束から構成される。後方毛束群151bは、頭部150の後寄りであって前方毛束群151aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された毛束群である。そして、後方毛束群151bは、前後方向に2束ずつ、左右方向にそれぞれ4束ずつ配列された8束の毛束から構成される。さらに、後方毛束群151bは、頭部150の後寄りの右側において、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された4束の毛束から構成される右側後方毛束群152bを含む。また、後方毛束群151bは、頭部150の後寄りの左側において、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された4束の毛束から構成される左側後方毛束群153bを含む。
【0072】
前方毛束群151aおよび後方毛束群151bを構成する各々の毛束は、前後方向左右方向の両方にて等間隔で配置される。したがって、左右方向の寸法において、後方毛束群151bは前方毛束群151aよりも大きくなっており、埋設面150aの平面形状は、この前方毛束群151aおよび後方毛束群151bの左右方向の寸法の違いに対応したものとなっている。
【0073】
以上のような構成を備えた本発明の第2の実施の形態に係る歯ブラシ101は、ブラシ部151が、前方毛束群151aおよび後方毛束群151bの組み合わせにより構成されることにより、
図4(A)を参照して説明した、第1の実施の形態の歯ブラシ100の前方ブラシ群120aおよび後方ブラシ群120bの組み合わせと同様の作用効果を奏する。すなわち、ブラシ部151においては、歯列の舌側(裏側)に対する刷掃に際して、前方毛束群151aが、歯列中の所望の歯に対して刷掃を行う作業部として働き、後方毛束群151bが、前方毛束群151aを使用者の操作に応じて上記所望の歯に誘導し、安定した状態で刷掃し易くする安定部として働く。
【0074】
したがって、歯または歯列および歯茎への悪影響を与える恐れを軽減する適切な刷掃を行うことが可能になる。
【0075】
更に、第2の実施の形態に係る歯ブラシ101は、左右方向の寸法において、後方毛束群151bが前方毛束群151aよりも大きく、毛束群の外形を略3角形にすることにより、以下の作用効果を奏する。すなわち、左上顎および右下顎の歯列の舌側の刷掃を対象とした場合は、前方毛束郡151aが作業部として働き、後方毛束群151bの右側後方毛束群152bが安定部として働く。他方、右上顎および左下顎の歯列を対象とした場合は、前方毛束郡151aが作業部として働き、後方毛束群151bの左側後方毛束群153bが安定部として働く。これにより、歯ブラシ101の使用の際に、ブラシ部120の作業部としての前方毛束群151aのみが歯列に接してしまう恐れを低減して、作業部および安定部の組み合わせを利用し、かつ、歯ブラシの頸部130および把柄部(図示しない)が前歯の先端に干渉されることなく、好適な刷掃を、より容易に実現することが可能となる。
【0076】
(第2の実施の形態の変形例1)
上記の説明において、本発明の第2の実施の形態に係る歯ブラシ101は、前方毛束群151aおよび後方毛束群151bの埋設されている埋設面150aが、前後方向および左右方向がなす平面に対する平行面をなすものとしたが、埋設面は、左右両側が屈曲したものであってもよい。
【0077】
すなわち、
図11(A)(B)に、第2の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシ101Aを示す。歯ブラシ101Aは、左右両側が屈曲した凹曲面を有する。本変形例の歯ブラシ101Aは、頭部150の埋設面が、平面視で多角形の外形である。この歯ブラシ101Aは、前後左右方向の平面に対して平行面をなす中央埋設面111aを有する。そして、中央埋設面111aの右側の長辺から中央埋設面111aに向かう傾斜面である右側埋設面112aを有する。右側埋設面112aは、平面視で前後方向を長手方向とする略台形の外形である。さらに、中央埋設面111aの左側の長辺から中央埋設面111aに向かう傾斜面である左側埋設面113aを有する。左側埋設面113aは、平面視で前後方向を長手方向とする略台形の外形である。
【0078】
ブラシ部151の前方毛束群151aは、中央埋設面111aにのみ設けられ、後方毛束群151bは、中央埋設面111aから右側埋設面112aおよび左側埋設面113aの各々に渡って設けられる。さらに、後方毛束群151bは、頭部150の後寄りの右側での中央埋設面111aおよび右側埋設面112aにおいて前後方向に2束ずつ配列され、右側埋設面112aに前後方向に2束ずつ配設された4束の毛束から構成される右側後方毛束群152bを含む。また、後方毛束群151bは、頭部150の後寄りの左側での中央埋設面111aおよび左側埋設面113aにおいて前後方向に2束ずつ配列され、左側埋設面113aに前後方向に2束ずつ配設された4束の毛束から構成される左側後方毛束群153bを含む。
【0079】
これにより、後方毛束群151bを構成する各々の毛束群のうち、右側埋設面112aおよび左側埋設面113aの各々に埋設された毛束群は、
図11に示すように、前後方向視で、中央埋設面111aに埋設された毛束群に向かって傾斜している。
【0080】
第2の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシ101Aは、上記の構成を有することにより、第2の実施の形態の歯ブラシ101と同様の作用効果を奏することに加えて、以下の作用効果を奏する。すなわち、左上顎および右下顎の歯列の舌側を対象とした場合は、前方毛束郡151aが作業部として働き、後方毛束群151bの右側後方毛束群152bが安定部として働く。他方、右上顎および左下顎の歯列を対象とした場合は、前方毛束郡151aが作業部として働き、後方毛束群151bの左側後方毛束群153bが安定部として働く。これにより、歯ブラシ101の使用の際に、ブラシ部120の作業部としての前方毛束群151aのみが歯列に接してしまう恐れを低減して、作業部および安定部の組み合わせを利用し、かつ、歯ブラシの頸部130が前歯の先端に干渉されることなく、好適な刷掃を、歯の舌側面の最大豊隆部を抱えるようにしてより安定的に実現することが可能となる。
【0081】
なお、後方毛束群151bにおける毛束群は、第1の実施の形態の歯ブラシ100のように、中央埋設面111aに埋設されたものが、右側埋設面112aおよび左側埋設面113aの各々に埋設された毛束群よりも低い刷掃面を有し、右側埋設面112aおよび左側埋設面113aの各々に埋設された毛束群が、中央埋設面111aに埋設された毛束に対して、5°≦θ≦45°の範囲にある傾斜角θで傾斜していてもよい。この場合、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏するように、歯ブラシ101Aを用いることができる。なお、第2の実施の形態の変形例1に係る歯ブラシ101Aは、歯列の舌側に対する刷掃により好適に用いられる。
【0082】
(第2の実施の形態の変形例2)
上記の説明において、本発明の第2の実施の形態に係る歯ブラシ101は、前方毛束群151aおよび後方毛束群151bを構成する各々の毛束が、前後方向および左右方向の両方にて等間隔で配置されるものとしたが、前方毛束群および後方毛束群を構成する各々の毛束は、前後方向および左右方向の両方またはいずれか一方が互いに異なる間隔で配置されるものであってもよい。
【0083】
すなわち、
図12(A)(B)(C)に示すように、第2の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシ101Bは、前方毛束群および後方毛束群を構成する各々の毛束が、左右方向において互いに異なる間隔で配置されている。第1の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシ101Bは、頭部150の、平面形状略台形の埋設面150aの右辺側に埋設される右側ブラシ部152、および左辺側に埋設される左側ブラシ部153を有する。
【0084】
右側ブラシ部152は、頭部150の前寄りに埋設された前方毛束群152aと、頭部150の後寄りであって前方毛束群152aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群152bとを有する。左側ブラシ部153は、頭部150の前寄りに埋設された前方毛束群153aと、頭部150の後寄りであって前方毛束群153aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群153bとを有する。
【0085】
前方毛束群152aおよび前方毛束群153aの各々は、頭部150の前寄りに埋設された毛束群であり、前後方向に2束ずつ、左右方向にそれぞれ1束ずつ配列された2束の毛束から構成される。
【0086】
後方毛束群152bおよび後方毛束群153bの各々は、頭部150の後寄りに埋設された毛束群であり、前後方向に2束ずつ、左右方向にそれぞれ1束ずつ配列された2束の毛束から構成される。
【0087】
更に、
図12(C)に示すように、前方毛束群152aを構成する前後方向に配列された毛束のうち、後側の毛束152a2は、前側の毛束152a1よりも右寄りに位置している。後方毛束群152bを構成する前後方向に配列された毛束のうち、前側の毛束152b1は、前方毛束群152aの後側の毛束152a2よりも右寄りに位置し、後側の毛束152b2は、前側の毛束152b1よりも右寄りに位置している。
【0088】
同様に、前方毛束群153aを構成する前後方向に配列された毛束のうち、後側の毛束153a2は、前側の毛束153a1よりも左寄りに位置している。後方毛束群153bを構成する前後方向に配列された毛束のうち、前側の毛束153b1は、前方毛束群153aの後側の毛束153a2よりも左寄りに位置し、後側の毛束153b2は、前側の毛束153b1よりも左寄りに位置している。
【0089】
これにより、右側ブラシ部152の前方毛束群152aおよび後方毛束群152bを構成する各々の毛束は、前方から後方に向かうにつれて徐々に右側へ傾斜する列を形成する。同様に、左側ブラシ部153の前方毛束群153aおよび後方毛束群153bを構成する各々の毛束は、前方から後方に向かうにつれて徐々に左側へ傾斜する列を形成する。
【0090】
すなわち、右側ブラシ部152および左側ブラシ部153は、全体として、埋設面150a上において、頭部150の先端から後端に向かうにつれて、頭部150の延出方向に直交する方向である左右方向に沿った寸法が大きくなっている。
【0091】
第2の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシ101Bは、上記の構成を有することにより、第2の実施の形態に係る歯ブラシ101と同様の作用効果を奏することに加えて、以下の作用効果を奏する。すなわち、第2の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシ101Bは、右下顎および左上顎の歯列の舌側の刷掃時に、歯ブラシの把柄部が前歯の先端に当たらないようにするために、右側ブラシ部152を構成する毛束が、前方から後方に向かうにつれて徐々に右側へ傾斜する列を形成している。これにより、頭部150の長軸を左側に傾斜させて口腔内へ挿入したときに生ずる右側ブラシ部152の傾きが補償され、右側ブラシ部152を構成する各々の毛束を、歯列の歯頸部を結ぶ線に対して平行に近い姿勢で接触させることができる。従って、作業部および安定部の組み合わせを利用した好適な刷掃を、より安定的に実現することが可能となる。
【0092】
同様に、第2の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシ101Bは、左下顎および右上顎の歯列の舌側の刷掃時に、歯ブラシの把柄部が前歯の先端に当たらないようにするために、左側ブラシ部153を構成する毛束が、前方から後方に向かうにつれて徐々に左側へ傾斜する列を形成している。これにより、頭部150を右側に傾斜させて口腔内へ挿入したときに生ずる左側ブラシ部153の傾きが補償され、左側ブラシ部153を構成する各々の毛束を、歯列の歯頸部を結ぶ線に対して平行に近い姿勢で接触させることができる。従って、作業部および安定部の組み合わせを利用した好適な刷掃を、より安定的に実現することが可能となる。なお、第2の実施の形態の変形例2に係る歯ブラシ110Bは、歯列の舌側に対する刷掃により好適に用いられる。
【0093】
(第2の実施の形態の変形例3)
上記の説明において、本発明の第2の実施の形態に係る歯ブラシ101は、ブラシ部151の前方毛束群151aが作業部として働き、ブラシ部151の後方毛束群151bが安定部として働くことが可能な構成であるとしたが、安定部は、毛束群や毛束により構成されるブラシでなくともよい。
【0094】
すなわち、
図13(A)(B)に示すように、第2の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシ101Cは、頭部150の埋設面150aの形状を、平面視で前後方向を長手方向とする矩形状の外形とするとともに、後方毛束群151bに変えて、シリコン材料によるストッパ142が設けられる。
【0095】
歯ブラシ101Cにおいて、ストッパ142は、それぞれ前方毛束群151aと同一寸法、同一個数であることが好ましいが、先端形状は、歯や歯茎を傷つけることがないよう、図示のように曲面であることが好ましい。また、弾性や可撓性等の材料特性は、使用時に適切なブラシ圧を保ち易くするため、作業部として働く他のブラシ部と同様であることが好ましい。また、ストッパ142の材料は、シリコン材料であるとしたが、口腔に入れても衛生上の不具合がないとされる素材であれば、ポリプロピレン等の合成樹脂材料、その他任意の材料を用いることができる。
【0096】
要するに、本発明の安定部は、作業部として働くブラシが、歯の表側に対して適正な姿勢、目標位置を保ちつつ刷掃するように誘導し、安定させるように働くことが可能な構成を有していればよく、刷掃の機能を有さない構成として実現されるものであってもよい。なお、第2の実施の形態の変形例3に係る歯ブラシ101Cは、特に、歯列の頬側に対する刷掃により好適に用いられる。
【0097】
更に、
図13(C)(D)に示すように、第2の実施の形態の他の変形例3に係る歯ブラシ101Dとして、前方毛束群151aおよびストッパ142の間隙に、毛束群124を設けた構成としてもよい。歯ブラシ101Dの毛束群124は、前方毛束群151aの刷掃面およびストッパ142の頂上の高さよりも低い刷掃面を有する毛束群である。毛束群124の刷掃面の高さは前方毛束群151aの刷掃面の1/2未満であることが好ましい。これにより、作業部および安定部の組み合わせを利用した好適な刷掃を妨げることなく、効率よい歯磨きを行うことが可能となる。なお、第2の実施の形態の他の変形例3に係る歯ブラシ101Dは、特に、歯列の頬側に対する刷掃に加えて、歯列最後端の後面の刷掃により好適に用いられる。
【0098】
なお、毛束群124のような毛束群は、第1の実施の形態に係る歯ブラシ100や、第1の実施の形態の各変形例に係る歯ブラシ100Aないし100Dにおいて設けるようにしてもよい。
【0099】
(第3の実施の形態)
図14(A)は本発明の第3の実施の形態に係る歯ブラシ102の構成を示す右側面図であり、
図14(B)は本第3の実施の形態に係る歯ブラシ102の構成を示す底面図であり、
図14(C)は
図14(B)のD-D断面図である。ただし、
図1~13と同一または相当する構成については、同一符号を付し、共通する構成については、詳細な説明は省略する。
【0100】
第3の実施の形態に係る歯ブラシ102は、舌側の刷掃の際に、歯ブラシの柄が前歯の切端に干渉することを回避することを目的とした歯ブラシである。
第3の実施の形態に係る歯ブラシ102は、頭部150として、平面視で前後方向を長手方向とする矩形状の外形であって、前後方向および左右方向がなす平面に対する平行面をなす埋設面150aのみを有する。
【0101】
歯ブラシ102においては、更に、把柄部160が、上下方向においては埋設面150aの上方に、左右方向においては埋設面150aの左辺の側より左側に、それぞれシフトした位置であって、埋設面150aが把柄部160と相対する側となるような位置に配置される。頭部150と把柄部160とは、頸部130により接続される。頸部130は、後端132の接続先である把柄部160の先端161から斜め下、且つ斜め右に斜交して延出し、先端131が頭部150の左側面150c上に固定される。
【0102】
頭部150は、埋設面150aに埋設されるブラシ部151を有する。ブラシ部151は、前後方向に配列され、埋設面150aに直交する向きに埋設された一対の毛束群である前方毛束群151aおよび後方毛束群151bを有する。
【0103】
前方毛束群151aは、頭部150の前寄りに埋設された毛束群であり、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された4束の毛束から構成される。後方毛束群151bは、頭部150の後寄りであって前方毛束群151aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された毛束群であり、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された4束の毛束から構成される。
【0104】
前方毛束群151aおよび後方毛束群151bを構成する各々の毛束は、前後方向左右方向の両方にて等間隔で配置される。したがって、前方毛束群151aおよび後方毛束群151bは同一形状を有する。
【0105】
以上のような構成を備えた本発明の第3の実施の形態に係る歯ブラシ102は、頭部150がブラシ部151を有することにより、
図4(A)を参照して説明した、第1の実施の形態の歯ブラシ100の前方ブラシ群120aおよび後方ブラシ群120bの組み合わせと同様の作用効果を奏する。すなわち、ブラシ部151においては、歯列の舌側(裏側)に対する刷掃に際して、前方毛束群151aが、歯列中の所望の歯に対して刷掃を行う作業部として働き、後方毛束群151bが、前方毛束群151aを使用者の操作に応じて上記所望の歯に誘導し、安定した状態で刷掃し易くする安定部として働く。
【0106】
したがって、歯または歯列および歯茎への悪影響を与える恐れを軽減する適切な刷掃を行うことが可能になる。
【0107】
更に、第3の実施の形態に係る歯ブラシ102は、把柄部160が、上下方向においては埋設面150aの上方に、左右方向においては埋設面150aの左辺の側より左側に、それぞれシフトした位置であって、埋設面150aが把柄部160と相対する側となるような位置に配置されることにより、以下の作用効果を奏する。すなわち、従来のような、頭部と把持部とが一直線上に構成される歯ブラシでは、舌側(裏側)の刷掃に際しては、前歯の尖端が歯ブラシの頸部130や把柄部160に干渉するため、歯ブラシは常に斜め向きに口腔内に挿入する必要があり、その結果、頭部は傾斜した姿勢で歯列の舌側(裏側)にて接することとなり、好適な刷掃が困難であった。
【0108】
これに対し、第3の実施の形態に係る歯ブラシ102は、
図15に示すように、把柄部160が口腔内で歯列200の頬側201に位置するとき、頸部130が歯列200を上から跨ぐ。そのとき、頭部150は、図中に示すように位置するその埋設面150aを、歯列200の舌側202に相対する向きとなるよう配置される。このようにして、歯ブラシ102の使用者は、ブラシ部151を構成する各々の毛束の先端を、歯列200の舌側202に対して好適な姿勢で接触させることができる。これにより、舌側に対しても、作業部および安定部の組み合わせを利用した好適な刷掃を、より安定的に実現することが可能となる。
【0109】
なお、
図14および
図15に示す歯ブラシ102は、左下顎および右上顎の歯列を対象とした刷掃に好適な構成の例である。
【0110】
これに対し、以下の構成とすることにより、右下顎および左上顎の歯列を対象とした刷掃に好適な歯ブラシ102が得られる。すなわち、右下顎および左上顎の歯列を対象とした歯ブラシ102は、把柄部160が、上下方向においては埋設面150aの上方にシフトした位置にあり、左右方向においては埋設面150aの右辺側より右側にシフトした位置とされる。そして、埋設面150aが把柄部160と相対する側となるような位置に配置される。また、頸部130は、後端132の接続先である把柄部160の先端161から斜め下、且つ斜め左に斜交して延出する。これにより、頸部130の先端131が頭部150の右側面150b上に固定される。
【0111】
(第4の実施の形態)
図16は、本発明の第4の実施の形態に係る歯ブラシ103の構成を示す斜視図であり、
図17は第4の実施の形態に係る歯ブラシ103の構成を示す平面図である。ただし、
図1~15と同一または相当する構成については、同一符号を付し、共通する構成については、詳細な説明は省略する。第4の実施の形態に係る歯ブラシ103は、歯列の舌側に対する刷掃により好適に用いられる。
【0112】
本第4の実施の形態に係る歯ブラシ103は、頭部150の、平面形状三角形状の埋設面150aの右側に埋設される右側ブラシ部152、および左辺側に埋設される左側ブラシ部153を有する。
【0113】
右側ブラシ部152は、頭部150の前寄りに埋設された前方毛束群152aと、頭部150の後寄りであって前方毛束群152aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群152bとを有する。左側ブラシ部153は、頭部150の前寄りに埋設された前方毛束群153aと、頭部150の後寄りであって前方毛束群153aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群153bとを有する。
【0114】
前方毛束群152aおよび前方毛束群153aの各々は、頭部150の前寄りに埋設された毛束群であり、前後方向に2束ずつ、左右方向にそれぞれ1束ずつ配列された2束の毛束から構成される。
【0115】
後方毛束群152bおよび後方毛束群153bの各々は、頭部150の後寄りに埋設された毛束群であり、前後方向に2束ずつ、左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された4束の毛束から構成される。
【0116】
更に、
図17に示すように、前方毛束群152aを構成する前後方向に配列された毛束のうち、後側の毛束152a2は、前側の毛束152a1よりも右寄りに位置している。後方毛束群152bを構成する前後方向に配列された毛束群のうち、前側の毛束群152b3は、前方毛束群152aの後側の毛束152a2よりも右寄りに位置し、後側の毛束群152b4は、前側の毛束群152b3よりも右寄りに位置している。
【0117】
同様に、前方毛束群153aを構成する前後方向に配列された毛束のうち、後側の毛束153a2は、前側の毛束153a1よりも左寄りに位置している。後方毛束群153bを構成する前後方向に配列された毛束群のうち、前側の毛束群153b3は、前方毛束群153aの後側の毛束153a2よりも左寄りに位置し、後側の毛束群153b4は、前側の毛束群153b3よりも左寄りに位置している。
【0118】
これにより、右側ブラシ部152を構成する前方毛束群152aおよび後方毛束群152bを構成する各々の毛束は、前方から後方に向かうにつれて徐々に右側へ傾斜する列を形成する。同様に、左側ブラシ部153を構成する前方毛束群153aおよび後方毛束群153bを構成する各々の毛束は、前方から後方に向かうにつれて徐々に左側へ傾斜する列を形成する。
【0119】
すなわち、右側ブラシ部152および左側ブラシ部153は、全体として、埋設面150a上において、頭部150の先端から後端に向かうにつれて、頭部150の延出方向に直交する方向である左右方向に沿った寸法が大きくなっている、
【0120】
把柄部160は、頭部150の埋設面150aに対して上方にシフトし、左右方向においては埋設面150aの中心線と同一線上となる位置であって、埋設面150aが把柄部160と相対する側となるような位置に配置される。頭部150と把柄部160とを接続する頸部130は、左右方向においては埋設面150aの中心線と同一線上となる位置に配置され、上下方向においては、把柄部160から頭部150へ向かって俯角をなすよう斜交して延出する。
【0121】
更に、頸部130は、先端131は後端132より幅狭、すなわち左右寸法が小さくなっていることにより、上下方向視において、右側面133および左側面134は、把柄部160から頭部150に向かって窄まる向きに斜交する傾斜面として形成される。一方、頭部150において、右側ブラシ部152に隣接する右側面150cは頸部130の右側面133と平行をなし、左側ブラシ部153に隣接する左側面150bは頸部130の左側面134と平行をなすように、それぞれ形成される。
【0122】
第4の実施の形態に係る歯ブラシ103は、上記の構成を有することにより、以下の作用により、第3の実施の形態の歯ブラシ101と同様の効果を奏する。すなわち、口腔内の右下顎および左上顎の歯列の舌側を対象とした刷掃に際しては、頸部130および把柄部160が歯列を上から跨いで、頭部150を、埋設面150aが歯列200の舌側(裏側)に相対する向きとなるよう配置させるとともに、頭部150を歯ブラシ103の右側に向かって傾斜させて口腔内へ挿入したときに生ずる右側ブラシ部152の傾きを補償して、右側ブラシ部152を構成する各々の毛束を、歯列の歯頸部を結んだ線に平行に近い姿勢で接触させることができる。
【0123】
一方、口腔内の左下顎および右上顎の歯列を対象とした刷掃に際しては、頸部130および把柄部160が歯列200を跨いで、頭部150を埋設面150aが歯列200の舌側(裏側)に相対する位置に配置させるとともに、頭部150を歯ブラシ103の左側に向かって傾斜させて口腔内へ挿入したときに生ずる左側ブラシ部153の傾きを補償して、左側ブラシ部153を構成する各々の毛束を、歯列の歯頸部を結んだ線に平行に近い姿勢で接触させることができる。
【0124】
要するに、第4の実施の形態に係る歯ブラシ103によれば、第3の実施の形態の歯ブラシ102が、刷掃の位置に応じて頭部150に対する把柄部160のシフト位置を互いに違えた二本のブラシを必要とするところ、一本の歯ブラシによって口腔内の上下左右すべての刷掃位置に対応して、作業部および安定部の組み合わせを利用した好適な刷掃を、より安定的に実現することが可能となる。
なお、右側ブラシ部152および左側ブラシ部153の各々は、埋設面150aの垂線に対し、内向きに、好ましくは5°≦θ≦45°の範囲にある傾斜角θで傾斜していてもよい。これにより、歯列の表側を刷掃する場合は、右側ブラシ部152および左側ブラシ部153の各々を作業部または安定部として働かせて、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏するように、歯ブラシ103を用いることができる。
【0125】
(他の実施の形態)
更に、他の実施の形態の歯ブラシ104として、
図18(A)は歯ブラシ104の右側面図、
図18(B)はその底面図、および
図18(C)は
図18(B)のE-E断面図を示す。他の実施の形態の歯ブラシ104は、第3の実施の形態の歯ブラシ102と同様の頸部130および把柄部160を備える一方で、頭部150として、従来の歯ブラシと同様、埋設面150aに直交する向きにて埋設される、前後方向に等間隔で配列された毛束群を有するブラシ部125を備えた構成としてもよい。
【0126】
他の実施の形態に係る歯ブラシ104によれば、把柄部160が口腔内で歯列の表側に位置するとき、頸部130が歯列を上から跨いで、頭部150を、埋設面150aが歯列200の舌側(裏側)に相対する向きとなるよう配置させ、ブラシ部151を構成する各々の毛束を、歯列の舌側において、歯列の歯頸部を結んだ線に平行に近い姿勢で接触させることができる。
【0127】
これにより、以下の効果を奏する。すなわち、歯列、特に舌側の刷掃に際しては、従来の歯ブラシでは、歯ブラシの把持部が前歯の歯先に干渉するために、歯ブラシは常に斜め向きに口腔内に挿入する必要があった。その結果、頭部は傾斜した姿勢で歯列の舌側(裏側)にて接することとなり、良好な刷掃が困難であった。
【0128】
このような不具合に対し、本実施の形態の歯ブラシ104によれば、歯ブラシの頭部が傾斜した姿勢で歯列の舌側(裏側)にて接することなく、良好な刷掃を行うことができる。
【0129】
以上のように、本発明は、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、構成、形状、材質、数量、位置または配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【0130】
すなわち、例えば、本発明に係る歯ブラシ100は、
図4(B)に示すように、中央ブラシ部121の前方毛束群121aを、歯220の頬側221においてもっとも大きく膨らんだ部位である最大豊隆部220Xまたはその近傍に接触させ、位置決めしたうえで、前方毛束群121aを位置決めした状態を保ちつつ、左側ブラシ部123の前方毛束群123aを最大豊隆部220Xより下方で歯肉辺縁の間の汚れが付きやすい表面221Aにあてがい、把柄部を操作して前方毛束群123aを歯列の配列方向に沿って前後に動かすことにより、表面221Aを刷掃したものである。
【0131】
しかしながら、これに限るものではない。
図19A(A)は本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシの要部の構成を示す平面図である。
図19B(B)は、左上下顎の歯列を、閉口位で軽く接触させた状態で、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシを、その上下歯の頬側面を同時に覆うように当てたときの図である。
図19B(C)は
図19B(B)のF-F断面図である。
【0132】
図19B(C)は左側上下歯を軽く接触させ、上顎歯210
1~260
1および下顎歯210
2~260
2の頬側面を揃えた状態で、その上顎歯210
1~260
1および下顎歯210
2~260
2の頬側面を歯ブラシ100で同時にあてがったときのF-F断面図である。このように、歯ブラシ100の左右の大きさを拡げたものを用いることにより、歯ブラシ100による刷掃に際して、中央ブラシ部121の前方毛束群121aが安定部として働き、歯ブラシ100の右側ブラシ部122の前方毛束群122aが上顎側の歯列の表面221Aに対して作業部として働くようにし、同時に、歯ブラシ100の左側ブラシ部123の前方毛束群123aを下顎側の歯列の表面221Aに対して作業部として働くようにしてもよい。このように、歯ブラシ100の使用者が、下顎を少し側方に移動させ、上下歯列頬側面が揃うような位置でこの歯ブラシ100を使用すれば、上下歯列の歯垢の付着しやすい部位を同時に刷掃することができ、日常生活の限られた時間内に効率的に刷掃できることが期待される。
【0133】
(第5の実施の形態)
図20は、本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシ105の要部の構成を示す斜視図である。
図21(A)は本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシ105の要部の構成を示す正面図であり、
図21(B)は
図21(A)のG-G断面図である。
図22(A)は本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシ105を左下顎の歯列の舌側面に当てた状態を咬合面から観た図であり、
図22(B)は
図22(A)のH-H断面図である。
【0134】
各図に示すように、本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシ105は、頭部110、頭部110の主面に埋設され、かつ歯を刷掃するブラシ本体となる毛束群が埋設されるブラシ部120、および頭部110と使用者が歯ブラシを掴んで操作するための把柄部(図示せず)とを接続する頸部130を備える。なお、頭部110、頸部130、および把柄部の各々は、合成樹脂製であることが好ましい。頭部110、頸部130、および把柄部の各々は、各々が別体で組み合わされていてもよいし、それらの全部または一部が一体成型されていてもよい。
【0135】
以下、本明細書において、
図20に示すように、頭部110の、頸部130に接続される側を後側と呼び、頭部110の、何も接続されない先端側を、前側と呼び、頭部110の前側と後側とを繋ぐ方向を、頭部の延出方向と定め、前後方向と呼ぶ。また、頭部110を前方から見たときに右手寄りになる側を、右側と呼び、頭部110を前方から見たときに左手寄りになる側を、左側と呼び、頭部110の延出方向に直交する方向を左右方向と呼ぶ。更に、頭部110においてブラシ部120が埋設されている面の側を上側と呼び、ブラシ部120が埋設されていない面の側を下側と呼び、上側および下側を結ぶ、前後方向および左右方向の両方に直交する方向を、上下方向と呼ぶ。これら各方向は、各図に直交座標により示す。
【0136】
(頭部)
頭部110は、歯ブラシ105の前後方向に沿って先端に位置する部位である。頭部110は、前側から見て、中央部111、中央部111の右側に位置する右側部112、および中央部111の左側に位置する左側部113が一体的に形成される。頭部110の前側には、前面110frが形成される。
【0137】
頭部110において、中央部111は、前後左右方向の平面に対して平行面をなす、平面視で前後方向を長手方向とする略矩形の外形の中央埋設面111aを有する。右側部112は、中央部111の右側の長辺から中央埋設面111aに向かう傾斜面である、平面視で前後方向を長手方向とする略矩形の外形の右側埋設面112aを有する。左側部113は、中央部111の左側の長辺から中央埋設面111aに向かう傾斜面である、平面視で前後方向を長手方向とする略矩形の外形の左側埋設面113aを有する。なお、右側埋設面112aおよび左側埋設面113aは、前後方向視で、中央埋設面111aに対して左右対称をなす角度で傾斜している。
【0138】
(ブラシ部)
ブラシ部120は、頭部110の中央部111の中央埋設面111aに埋設される中央ブラシ部121、頭部110の右側部112の右側埋設面112aに埋設される右側ブラシ部122、および頭部110の左側部113の左側埋設面113aに埋設される左側ブラシ部123を有する。
【0139】
ブラシ部120において、中央ブラシ部121は中央埋設面111aに直交する向きに埋設される。右側ブラシ部122の毛束は右側埋設面112aに直交する向きに埋設される。左側ブラシ部123は左側埋設面113aに直交する向きに埋設される。
【0140】
また、
図21(B)に示すように、左側ブラシ部123の前方毛束群123aおよび後方毛束群123bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t1は、中央ブラシ部121の前方毛束群121aおよび後方毛束群121bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t2よりも大きいことが好ましい。同様に、右側ブラシ部122の前方毛束群122aおよび後方毛束群122bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t1は、中央ブラシ部121の前方毛束群121aおよび後方毛束群121bの先端から中央埋設面111aまでの寸法t2よりも大きいことが好ましい。
【0141】
これにより、頭部110において、中央ブラシ部121は上下方向に沿って直立し、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123は、それぞれ中央ブラシ部121に向かって傾斜するとともに、それらの刷掃面をなす先端は、中央ブラシ部121の先端と同一の高さに位置する。
図21(A)に示すように、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123の各々の中央ブラシ部121への傾斜角θは、45°前後にあることが好ましい。
【0142】
ブラシ部120の中央ブラシ部121、右側ブラシ部122および左側ブラシ部123の各々は、前後方向を長手方向として配列された一対の毛束群を有する。具体的には、中央ブラシ部121は、頭部110の前寄りに埋設された前方毛束群121aと、前方毛束群121aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群121bとを有する。右側ブラシ部122は、頭部110の前方寄りに埋設された前方毛束群122aと、前方毛束群122aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群122bとを有する。左側ブラシ部123は、頭部110の前方寄りに埋設された前方毛束群123aと、前方毛束群123aから後方に所定間隔空けた位置に埋設された後方毛束群123bとを有する。
【0143】
前方毛束群121aおよび後方毛束群121bの各々は、各図に示すように、前後方向に配列された2対(4束)の毛束から構成される。前方毛束群122aおよび後方毛束群122b、並びに前方毛束群123aおよび後方毛束群123bの各々の毛束群は、前後方向および左右方向にそれぞれ2束ずつ配列された2対(4束)の毛束から構成される。
【0144】
前方毛束群121a、前方毛束群122aおよび前方毛束群123aは、特に
図20に示すように、前後方向において前寄りの同一位置にそれぞれ配置されることで、左右方向を長手方向として配列された、前方ブラシ群120aを構成する。後方毛束群121b、後方毛束群122bおよび後方毛束群123bは、前後方向において後ろ寄りの同一位置にそれぞれ配置されることで、左右方向を長手方向として配列された、後方ブラシ群120bを構成する。
【0145】
なお、前方ブラシ群120aと後方ブラシ群120bとがなす所定間隔は、舌側歯面を刷掃する場合、少なくとも二本の歯が収まる程度の寸法であることが好ましい。また、前方ブラシ群120aと後方ブラシ群120bとがなす所定間隔は、少なくとも、一本の歯に対して前方ブラシ群120aおよび後方ブラシ群120bの刷掃面の両方が接することがない程度の寸法であってもよく、前方ブラシ群120aと後方ブラシ群120bとがなす所定間隔は、近接していてもよい。
【0146】
以上の構成を備えた本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシ105は、ブラシ部120が、前方ブラシ群120aおよび後方ブラシ群120bの組み合わせにより構成され、前方ブラシ群120aが、前方毛束群121aおよび前方毛束群122a、並びに前方毛束群121aおよび前方毛束群123aの組み合わせを含むように構成され、後方ブラシ群120bが、後方毛束群121bおよび後方毛束群122b、並びに後方毛束群121bおよび後方毛束群123bの組み合わせを含むように構成され、各々の組み合わせが、後述する作業部および安定部の組み合わせに対応することを特徴とする。
【0147】
以下、
図21を併せて参照して、本発明の第1の実施の形態に係る歯ブラシ105の好適な使用例に基づき、歯ブラシ105の作用効果を説明する。
【0148】
図22(A)において、左下顎の歯列200の舌側を刷掃する場合の状態を模式的に示す。
図22(A)は、は本発明の第5の実施の形態に係る歯ブラシ105を左下顎の歯列の舌側面に当てた状態を咬合面から観た図である。歯ブラシ105は、口腔内にてブラシ部120の左側ブラシ部123の前方毛束群123aおよび後方毛束群123bにより形成される刷掃面が、歯210、歯220、歯230、歯240、歯250および歯260を含む歯列200の舌側(裏側)に相対する姿勢となるように用いる。ただし、この例では、歯ブラシ105は使用者の右手に把持されて用いられるものとし、ブラシ部120の刷掃面は歯列200の舌側(裏側)に相対させるものである。
【0149】
図22(A)および(B)に示すように、まず、右側ブラシ部122を歯210および歯220の咬合面203に接触させ、中央ブラシ部121を歯210および歯220の咬合面203と舌面204との境界の稜線部205に接触させて位置決めした状態を保ちつつ、左側ブラシ部123を歯210および歯220の舌面204にあてがい、把柄部を前後方向に操作することにより歯210および歯220の舌面204の表面を刷掃する。このとき、把柄部を歯250および歯260の先端に当接させながら前後方向に運動させることにより歯ブラシ105のピッチングを防ぎ、安定した刷掃が得られる。
【0150】
このように、第5の実施の形態に係る歯ブラシ105においては、歯列の舌側(裏側)に対する刷掃に際して、ブラシ部120の左側ブラシ部123が歯210および歯220の舌面204の刷掃を行う作業部として働き、ブラシ部120の中央ブラシ部121および右側ブラシ部122が安定部として働く。
【0151】
このように、第5の実施の形態に係る歯ブラシ105は、ブラシ部120による歯の舌側(裏側)に対する刷掃に際して、左側ブラシ部123が歯列中の歯に対する刷掃を行う作業部として働き、ブラシ部120の中央ブラシ部121および右側ブラシ部122が、使用者の操作に応じて歯の作業部を適正な姿勢、目標位置に誘導し、安定した状態で刷掃し易くする安定部として働くことが可能な構成を有する。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上のような本発明は、歯または歯列および歯肉への悪影響を与えることなく適切な刷掃を行うことが可能になるという効果を奏し、歯ブラシへの適用において有用である。
【符号の説明】
【0153】
100、100A~100D、101、101A~101D、102、103、104、105 歯ブラシ
110、150 頭部
110fr、150fr 前面
111 中央部
111a 中央埋設面
112 右側部
112a 右側埋設面
113 左側部
113a 左側埋設面
120、125、151 ブラシ部
120a 前方ブラシ群
120b 後方ブラシ群
121 中央ブラシ部
121a、122a、123a、151a、152a、153a 前方毛束群
121b、122b、123b、151b、152b、153b 後方毛束群
122、152 右側ブラシ部
123、153 左側ブラシ部
124 152b3、152b4、153b3、153b4 毛束群
130 頸部
131、161 先端
132 後端
133、150b 右側面
134、150c 左側面
141、142 ストッパ
141a 前方ストッパ
141b 後方ストッパ
150a 埋設面
152a1、152a2、152b1、152b2、153a1、153a2、153b1、153b2 毛束
160 把柄部
200 歯列
201、221 頬側
202 舌側
203 咬合面
204 舌面
205 稜線部
210、220、230、240、250、260 歯
2101、2201、2301、2401、2501、2601 上顎歯
2102、2202、2302、2402、2502、2602 下顎歯
220X 最大豊隆部
221A、310 表面
221B 最大豊隆部から先端側
300 歯茎
301a、301b 歯ブラシの反復運動の動かす方向と大きさ
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】