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特開2025-26777ソーラーパネル光電変換効率向上方法及び構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026777
(43)【公開日】2025-02-25
(54)【発明の名称】ソーラーパネル光電変換効率向上方法及び構造
(51)【国際特許分類】
   H10F 10/00 20250101AFI20250217BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20250217BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
H01L31/04 622
C09K11/02 Z
C09K11/06
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131715
(22)【出願日】2023-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】523308465
【氏名又は名称】張 繼輝
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】張 繼輝
【テーマコード(参考)】
4H001
5F251
【Fターム(参考)】
4H001CA01
4H001XA08
4H001XA16
4H001XA21
4H001XA39
4H001XA42
4H001XA90
5F251HA13
5F251HA16
5F251HA17
(57)【要約】
【課題】 太陽光の異なる波長を持つ入射光波を吸収することにより、ソーラーパネルの発電効率を増加可能なソーラーパネル光電変換効率向上用方法とその構造を提供する。
【解決手段】 本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上用方法とその構造は、ソーラーパネルに適用可能であり、前記ソーラーパネルの表面に少なくとも一つの光エネルギー利得層が結合されており、前記光エネルギー利得層は、複数の導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される層状の三次元導電性構造であり、前記導電性炭素系材料は二次元構造であり、前記導電性炭素系材料と前記蛍光体材料とは、その平均寸法がミクロン以下であり、前記透明担体は透明な熱可塑性プラスチックから選ばれる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーパネルに適用可能であり、少なくとも一つの表面に太陽光を照射することができ、微細化された複数の二次元導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合したものを透明担体に均一に分布することにより、層状の三次元導電性構造を構成し、異なる波長を持つ太陽光の入射する光波に、前記三次元導電性構造の緊密で異なる間隔にある共振効果を加えることにより、前記ソーラーパネルの広範囲の太陽光の吸収機能を増加することを特徴とするソーラーパネル光電変換効率向上方法。
【請求項2】
ソーラーパネルに適用可能であり、前記ソーラーパネルは、太陽に面する第1の面、太陽の反対側にある第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間にある複数の側面と、を有し、前記ソーラーパネルの第1の面、第2の面、及び側面のうちの一つ又は何れかの二つ以上に、少なくとも一つの光エネルギー利得層が積層されており、
前記光エネルギー利得層は、複数の導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される層状の三次元導電性構造であり、前記導電性炭素系材料は二次元構造であり、前記導電性炭素系材料と前記蛍光体材料とは、その平均寸法がミクロン以下であり、前記透明担体は、透明な熱可塑性プラスチックから選ばれることを特徴とするソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項3】
前記光エネルギー利得層は、印刷、塗布、又は膜状の構造に形成されて粘着する方式で、前記ソーラーパネルに結合されていることを特徴とする、請求項2に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項4】
前記導電性炭素系材料は、グラファイト、グラフェン、グラフィン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ダイヤモンドのうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項2に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項5】
前記蛍光体材料は、酸化蛍光体、硫化物蛍光体、モリブデン酸蛍光体、希土類イオン蛍光体、および有機蛍光体のうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項2に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項6】
前記透明担体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂のうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項2に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項7】
ソーラーパネルに適用可能であり、前記ソーラーパネルは、太陽に面する第1の面と、太陽の反対側にある第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間にある複数の側面と、を有し、前記ソーラーパネルは、正面から背面へ、少なくともガラス層と、第1の封止層と、太陽電池層と、第2の封止層とが順番に積み重ねられて構成され、前記ガラス層、前記第1の封止層、前記太陽電池層、及び前記第2の封止層のうちの一つ又は何れかの二つ以上は、前記ソーラーパネルの第1の面、第2の面、及び側面のうちの一つ又は何れかの二つ以上に対応し、少なくとも一つの光エネルギー利得層が結合されており、
前記光エネルギー利得層は、複数の導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される層状の三次元導電性構造であり、前記導電性炭素系材料は二次元構造であり、前記導電性炭素系材料と前記蛍光体材料とは、その平均寸法がミクロン以下であり、前記透明担体は、透明な熱可塑性プラスチックから選ばれることを特徴とするソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項8】
前記光エネルギー利得層は、印刷、塗布、又は膜状の構造に形成されて粘着する方式で、前記ソーラーパネルに結合されていることを特徴とする、請求項7に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項9】
前記導電性炭素系材料は、グラファイト、グラフェン、グラフィン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ダイヤモンドのうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項7に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項10】
前記蛍光体材料は、酸化蛍光体、硫化物蛍光体、モリブデン酸蛍光体、希土類イオン蛍光体、および有機蛍光体のうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項7に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項11】
前記透明担体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂のうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項7に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項12】
ソーラーパネルに適用可能であり、前記ソーラーパネルは、太陽に面する第1の面と、太陽の反対側にある第2の面と、第1の面と第2の面との間にある複数の側面と、を有し、前記ソーラーパネルは、正面から背面へ、少なくとも一つの太陽電池層を含んで構成され、前記太陽電池層は、前記ソーラーパネルの第1の面、第2の面、及び側面のうちの一つ又は何れかの二つ以上に対応し、少なくとも一つの光エネルギー利得層が結合されており、
前記光エネルギー利得層は、複数の導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される層状の三次元導電性構造であり、前記導電性炭素系材料は二次元構造であり、前記導電性炭素系材料と前記蛍光体材料とは、その平均寸法がミクロン以下であり、前記透明担体は、透明な熱可塑性プラスチックから選ばれることを特徴とするソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項13】
前記光エネルギー利得層は、印刷、塗布、又は膜状の構造に形成されて粘着する方式で、前記ソーラーパネルに結合されていることを特徴とする、請求項12に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項14】
前記導電性炭素系材料は、グラファイト、グラフェン、グラフィン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ダイヤモンドのうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項12に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項15】
前記蛍光体材料は、酸化蛍光体、硫化物蛍光体、モリブデン酸蛍光体、希土類イオン蛍光体、および有機蛍光体のうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項12に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項16】
前記透明担体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂のうちの1つまたは組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項12に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項17】
前記太陽電池層の両側の面には、光エネルギー利得層および第1の封止層がそれぞれ結合されていることにより、前記ソーラーパネルは、曲げることができる柔軟な構造となることを特徴とする、請求項12に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【請求項18】
前記光エネルギー利得層は、厚さを増加することにより、窓ガラスに取り替わって、カーテン又は窓型のソーラーパネルとすることができることを特徴とする、請求項12に記載のソーラーパネル光電変換効率向上構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関し、特に、ソーラーパネルにより発電した後の利用可能時間を増加することができ、熱エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換することができ、光電変換効率および発電効率を有効に向上することが可能なソーラーパネル光電変換効率向上方法及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー不足や温室効果などの環境問題が深刻化しているため、各国でさまざまな代替エネルギー源の研究開発が盛んに行われており、特にグリーンエネルギー〔Green Energy〕である太陽光発電は各界から最も注目を集めている。なお、ソーラーパネルは、主に、その中の太陽電池〔solar cell〕を利用して、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換し、その半導体素子は、通常p-n接合の形をしており、基本的な構造はダイオードと同じである。太陽電池の発電原理は、光起電力効果〔Photovoltaic Effect〕を利用して、光エネルギーを電気エネルギーに変換することである。しかし、従来の太陽電池の発電効率は良くない。最も広く使用されている単結晶および多結晶シリコン太陽電池モジュールを例とすると、その発電効率は約15%程度である。その主な理由は、太陽光スペクトルのエネルギー分布が三つのブロックに分けられることであり、そのうち、可視光は約47%を占め、紫外光および赤外光は約53%を占め、そして吸収されて変換可能な可視光は太陽光の強さ及び時間に制限されるため、電気エネルギーに変換して利用可能な太陽光は、15%だけであり、残りの85%の太陽光は、そのすべてが無駄になるか、無駄な熱エネルギーとなる。
【0003】
このため、目下のソーラーパネルの太陽電池の発展方向は、全て高い光電変換効率を主な目標とする。例えば、構造設計により目標を達成するもののうち、最適な太陽光の位置を追跡する太陽追尾型と、太陽光の位置を改善する集光型があるが、このようなソーラーパネルは、構造が複雑であり、重くて組み立てが難く、定期に修理することが必要であるため、太陽電池全体のコストは大幅に増加し、全体の体積も増加する。一方、新素材を利用し、又は組み込むことにより目標を達成するもののうち、III-V族マルチインターフェース太陽電池〔III-V Multijunction Solar Cells〕があり、ダイレクトバンドギャップ〔Direct Bandgap〕の特性を有し、高い光吸収率と高い光電変換効率性能を備え、薄膜化することが可能である利点と高温動作の温度安定性などの長所を有する。なお、新素材を導入した、これらの太陽電池は、接続される機器や要素により、プロセスが複雑になって、プロセスの不良率が増加し、作製のコストが増加する。
【0004】
一方、従来の太陽電池は、一般的な電子機器と同じように、高温になると効率が降下し、その使用環境の温度が高くなるほど電力効率が悪化する。マサチューセッツ工科大学の研究によると、その温度が摂氏1度上昇するごとに、太陽電池の平均電力は0.45%減少するため、高温が持続すると、発電が難しくなる。また、それだけではなく、太陽電池の寿命も短くなる。
要するに、従来のソーラーパネルは、外部の構造を変更し、又はその中の太陽電池の材料を変更しても、太陽光を使用可能な電気エネルギーに変換する比率を有効に増加することができず、ソーラーパネルの発電作動時間を有効に延ばすこともできず、そして温度の上昇により、発電電力が減少しやすいという問題があった。
なお、特許文献1には、蛍光体層を設けることにより、発電効率を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-210229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、太陽光の異なる波長を持つ入射光波を吸収することにより、ソーラーパネルの発電効率を増加可能なソーラーパネル光電変換効率向上方法及び構造を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、広範囲の光源エネルギーを、ソーラーパネルが吸収可能な可視光に変換して、エネルギーを放射線の形でソーラーパネルに伝達することにより、ソーラーパネルの発電効率を更に向上するソーラーパネル光電変換効率向上方法及び構造を提供することにある。
【0008】
本発明の更に別の目的は、光を吸収して加熱された後、放射熱電流を放出して冷却して、ソーラーパネルの発電障害を緩和することができ、吸収された熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができ、廃熱発電の効果を得ることができるソーラーパネル光電変換効率向上方法及び構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上方法によると、ソーラーパネルに適用可能であり、少なくとも一つの表面に太陽光を照射することができ、微細化された複数の二次元導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合したものを透明担体に均一に分布することにより、層状の三次元導電性構造を構成し、異なる波長を持つ太陽光の入射する光波に、三次元導電性構造の緊密で異なる間隔にある共振効果を加えることにより、ソーラーパネルの広範囲の太陽光の吸収機能を増加することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上構造によると、ソーラーパネルに適用可能であり、ソーラーパネルは、太陽に面する第1の面、太陽の反対側にある第2の面と、第1の面と第2の面との間にある複数の側面と、を有し、ソーラーパネルの第1の面、第2の面、及び側面のうちの一つ又は何れかの二つ以上に、少なくとも一つの光エネルギー利得層が積層されており、
光エネルギー利得層は、複数の導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される層状の三次元導電性構造であり、導電性炭素系材料は二次元構造であり、導電性炭素系材料と蛍光体材料とは、その平均寸法がミクロン以下であり、透明担体は、透明な熱可塑性プラスチックから選ばれることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上構造によると、ソーラーパネルに適用可能であり、ソーラーパネルは、太陽に面する第1の面と、太陽の反対側にある第2の面と、第1の面と第2の面との間にある複数の側面と、を有し、ソーラーパネルは、正面から背面へ、少なくともガラス層と、第1の封止層と、太陽電池層と、第2の封止層とが順番に積み重ねられて構成され、ガラス層、第1の封止層、太陽電池層、及び第2の封止層のうちの一つ又は何れかの二つ以上は、ソーラーパネルの第1の面、第2の面、及び側面のうちの一つ又は何れかの二つ以上に対応し、少なくとも一つの光エネルギー利得層が結合されており、
光エネルギー利得層は、複数の導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される層状の三次元導電性構造であり、導電性炭素系材料は二次元構造であり、導電性炭素系材料と蛍光体材料とは、その平均寸法がミクロン以下であり、透明担体は、透明な熱可塑性プラスチックから選ばれることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上構造によると、ソーラーパネルに適用可能であり、ソーラーパネルは、太陽に面する第1の面と、太陽の反対側にある第2の面と、第1の面と第2の面との間にある複数の側面と、を有し、ソーラーパネルは、正面から背面へ、少なくとも一つの太陽電池層を含んで構成され、太陽電池層は、ソーラーパネルの第1の面、第2の面、及び側面のうちの一つ又は何れかの二つ以上に対応し、少なくとも一つの光エネルギー利得層が結合されており、
光エネルギー利得層は、複数の導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される層状の三次元導電性構造であり、導電性炭素系材料は二次元構造であり、導電性炭素系材料と蛍光体材料とは、その平均寸法がミクロン以下であり、透明担体は、透明な熱可塑性プラスチックから選ばれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上用方法とその構造によれば、次のような効果がある。
【0014】
ソーラーパネルに少なくとも一つの光エネルギー利得層を設け、これらの光エネルギー利得層は、複数の導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される三次元導電性構造であり、太陽光における異なる波長を持つ入射光源の不可視光を有効に吸収することができ、吸収された前記広範囲の入射光源を改めて可視光として放射することにより、熱エネルギーを光エネルギーに変換することを実現でき、ソーラーパネルの太陽電池層に進入する光エネルギーの量を増加して電気エネルギーに変換する。また、微かな光で発電するため、ソーラーパネル発電の作動時間を有効に延ばすことができ、熱エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換することができるとともに、廃熱発電の効果を得ることができる。このため、前記ソーラーパネルは、太陽光を吸収して電気エネルギーに変換する効率を大幅に向上することができると共に、前記光エネルギー利得層が高価で特殊な素材を要せず、生産プロセスが簡単であり、生産機器が安く、且つ印刷や塗布や膜状の構造に形成されて粘着する方式などで、前記ソーラーパネルに結合するため、組付け加工が容易であり、コストが低い。これにより、附加價値を大幅に増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る構造の第1の実施例を示す斜視図である。
図2】本発明に係る構造の第1の実施例を示す分解斜視図であって、各層の構造の態様とその相対関係を説明する。
図3】本発明に係る構造の第1の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図4】本発明に係る構造の第2の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図5】本発明に係る構造の第3の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図6】本発明に係る構造の第4の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図7】本発明に係る構造の第5の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図8】本発明に係る構造の第6の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図9】本発明に係る構造の第7の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図10】本発明に係る構造の第8の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図11】本発明に係る構造の第9の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図12】本発明に係る構造の第10の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図13】本発明に係る構造の第11の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
図14】本発明に係る構造の第12の実施例を示す側面断面図であって、各層の構造の相対関係を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上用方法とその構造は、特定の実施の形態により、本発明の技術の内容を説明するため、この技術に精通した人が、この明細書に記載されている内容から本発明の利点と効果を容易に理解できるはずである。しかし、本発明は、もちろん、その他の実施の形態も存在する。このため、本発明の特定の実施の形態および添付の図におけるその構成要素において、前後、左および右、上および下、上部および下部、および水平および垂直に対するすべての言及は、説明の便宜のためのみであり、意図されたものではない。これは本発明の範囲を限定するものであり、その構成要素を任意の位置または空間的方向に限定することを意図したものではない。図面および明細書で指定される寸法は、本発明の特許出願の範囲から逸脱することなく、本発明の特定の実施の形態の設計および要件に従って変更することができる。
【0018】
本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上方法は、ソーラーパネルに適用可能であり、複数の微細化された二次元導電性炭素系材料と蛍光体材料を混合して、透明担体に均一に分布して構成される層状の三次元導電性構造により、前記三次元導電性構造の緊密で異なる間隔の共振効果を利用して、異なる波長を持つ太陽光の入射する光波に対して、広範囲の太陽光を吸収する機能を大幅に増加し、且つ前記三次元導電性構造は、吸収スペクトルが入射角の変化に影響を受けず、たとえ入射角が大きく変化しても、良好な広域光吸収性能を維持することができるため、ソーラーパネルの発電効率を大幅に向上することができる。
【0019】
本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上用構造は、図1から図3に示すように、ソーラーパネル100に少なくとも一つの光エネルギー利得層200が設けられている。ソーラーパネル100は、太陽光に面する第1の面101と、太陽光の反対側にある第2の面102と、第1の面101と第2の面102との間にある複数の側面103と、を有する。ソーラーパネル100は、太陽光に面する正面から、太陽光の反対側にある背面へ、ガラス層10と、第1の封止層20と、太陽電池層30と、第2の封止層40と、バックプレーン層50とが順番に積み重ねられて構成される。
【0020】
また、本発明の実施の形態に係る構成では、図1から図3に示すように、光エネルギー利得層200が、印刷や塗布や膜状の構造に形成されて粘着する方式などで、ガラス層10に結合されており、ソーラーパネル100の第1の面101の一側面に対応する。光エネルギー利得層200は、複数の導電性炭素系材料201と蛍光体材料202を混合して、透明担体205に均一に分布して構成される三次元導電性構造である。導電性炭素系材料201は、グラファイト、グラフェン、グラフィン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ダイヤモンドのうちの1つまたは組み合わせから選択される。導電性炭素系材料201は二次元構造である。蛍光体材料202は、酸化蛍光体、硫化物蛍光体、モリブデン酸蛍光体、希土類イオン蛍光体、および有機蛍光体のうちの1つまたは組み合わせから選択される。導電性炭素系材料201と蛍光体材料202との平均寸法は、ミクロンからナノであること(すなわち、図3の挿入図において、寸法aの平均値及び寸法bの平均値のいずれも、1μm~1nmの範囲であること)が好ましい。なお、透明担体205は、透明な熱可塑性プラスチックから選ばれ、すなわち、ポリエチレン〔PE〕、ポリプロピレン〔PP〕、ポリスチレン〔PS〕、ポリメタクリル酸メチル〔PMMA〕、ポリ塩化ビニル〔PVC〕、ナイロン〔Nylon〕、ポリカーボネート〔PC〕、エチレン酢酸ビニル共重合体〔EVA〕、アクリル樹脂のうちの1つまたは組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【0021】
光エネルギー利得層200は、これらの導電性炭素系材料201により、広範囲の光線を吸収する量を増加し、熱エネルギーに変換し、例えば、グラフェンは単層の炭素原子から構成される二次元材料であり、導電性炭素系材料201のグラフェンは、熱伝導機能が極めて良く、熱エネルギーを有効に伝導して電気エネルギーに変換することができる。光エネルギー利得層200は、これらの蛍光体材料202により、光線の吸収および発光が可能である。これらの蛍光体材料202は、更に、太陽光における異なる波長を持つ入射光源の不可視光(例えば赤外光や紫外光)を吸収して、蛍光体材料202により、吸収された広範囲の前記入射光源を改めて、可視光として放射することができ、ひいては熱エネルギーを光エネルギーに変換することを実現できる。透明担体205により、これらの広範囲の波長の光エネルギーを、輻射によってソーラーパネル100の太陽電池層30に導くことにより、ソーラーパネル100は、太陽光を吸収して電気エネルギーに変換する効率を大幅に向上することができる。
【0022】
これにより、太陽光の異なる波長を持つ入射光波を吸収することができ、広範囲の前記光源エネルギーを、ソーラーパネルが吸収可能な可視光に変換して、ソーラーパネルの発電効率を向上することができる。
【0023】
なお、本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上構造を使用するならば、図1から図3に示すように、ソーラーパネル100は、光エネルギー利得層200の導電性炭素系材料201により、光線を吸収する範囲を広げ、熱エネルギーに変換することができ、これにより、熱エネルギーを有効に伝導して電気エネルギーに変換することができると共に、光エネルギー利得層200は、これらの蛍光体材料202により、太陽光における異なる波長を持つ入射光源の不可視光(例えば赤外光や紫外光)を吸収して、蛍光体材料202により、吸収された広範囲の前記入射光源を改めて、可視光として放射し、ひいては熱エネルギーを光エネルギーに変換することを実現でき、透明担体205は、輻射によって、これらの広範囲の波長を持つ光エネルギーをソーラーパネル100の太陽電池層30に導入して、太陽電池層30の光起電力効果〔Photovoltaic Effect〕を利用して、光エネルギーを電気エネルギーに変換させるので、ソーラーパネル100は、太陽光を吸収して電気エネルギーに変換する効率を大幅に向上することができる。
【0024】
これにより、本発明によれば、光エネルギー利得層200における、導電性炭素系材料201、蛍光体材料202及び透明担体205で構成される三次元導電性構造を利用して、ソーラーパネル100の太陽電池層30が吸収できなかった紫外光および赤外光を十分に吸収して、太陽電池層30が吸収可能な可視光に変換して、超低インピーダンスを持つ光エネルギー利得層200の三次元導電性構造が広範囲の光源エネルギーを吸収可能な特性により、太陽電池層30は、吸収できなかった広範囲の光源エネルギーを吸収可能にすることにより、弱い太陽光でも有効に利用することができ、ソーラーパネル100の作動可能範圍および時間を延ばすことができ、ひいてはソーラーパネル100の発電効率を向上することができる。ある実施例では、光エネルギー利得層200は、更に、ゲルマニウム化合物粉末およびチタン化合物粉末のいずれか、またはそれらの組み合わせを混合することができる。これにより、ソーラーパネル100の発電効率を向上することができる。
【0025】
光エネルギー利得層200における、導電性炭素系材料201及び蛍光体材料202を、透明担体205の膜状の構造に均一に分布するように充填する。導電性炭素系材料201の含有量は、光エネルギー利得層200の総重量の1.5%~3.5%であり、なお、蛍光体材料202の含有量は、光エネルギー利得層200の総重量の0.005%~0.025%であるため、光透過性に優れているだけでなく、太陽光の透過を妨げず、発生した可視光エネルギーも太陽電池層30に直接に入射して発電する。これにより、その安定性および耐久性を大幅に向上することができ、寿命を有効に延ばすこともできる。
【0026】
一方、光エネルギー利得層200を有するソーラーパネル100は、光線を吸収すると温度が上昇し、光エネルギー利得層200の導電性炭素系材料201が、輻射熱電流を放出した後、温度が降下する特性を有することを利用することにより、太陽光がソーラーパネル100に直接に照射すると、表面の温度が摂氏10~15度程度に下降するため、ソーラーパネル100の高温による発電障害を緩和することができる。これにより、ソーラーパネル100の寿命を延ばすことができると共に、熱エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換する機能を有するため、廃熱発電の効果を得ることができる。
【0027】
表1は、従来のソーラーパネルと本発明に係る光エネルギー利得層200を有するソーラーパネル100とについて比較実験を行った結果を示す。双方のパネルは、同じ寸法〔105x54cm〕で、同日、同一日照時間などの条件で〔使用するCIGSソーラーパネル仕様:発電パワーが120Wであり、一定抵抗(20W、100Ω)に接続し〕テストを行って、両方の電圧、電流、及びパワーをそれぞれ測定した。その結果、本発明に係るソーラーパネル100の効率向上の比率によれば、本発明に係る光エネルギー利得層200を有するソーラーパネル100は、従来のソーラーパネルに比べて、同じ日照時間の下で電力供給効率が向上するだけでなく、暗い場所でもより良い電力供給が得られるため、使用時間を延長できることが証明される。
【0028】
表1から分かるように、太陽光エネルギーの有効発電期間〔朝9:00~午後17:00〕の間に、17回測定した後、従来のソーラーパネルの発電量は34.061Wであり、一方、本発明に係るソーラーパネル100の発電量は43.192Wであるため、本発明に係るソーラーパネルの発電量の向上率は26.8%である。太陽光エネルギー発電の微光期間〔午後17:00~朝9:00〕の間に、19回測定した後、従来のソーラーパネルの発電量は5.12Wであり、一方、本発明に係るソーラーパネル100の発電量は9.157Wであるため、本発明に係るソーラーパネルの発電量の向上率は78.88%である。また、一日中の本発明に係るソーラーパネル100の発電量の総向上率は33.61%である。本発明に係る光エネルギー利得層200を有するソーラーパネル100は、同日の太陽光エネルギーの有効発電時間により、発電効率が向上するだけでなく、微光の場所でもより良い発電量を得ることができるため、使用時間を大幅に延長できることが証明される。
【0029】
【表1】
【0030】
前記実施例や図面は、本発明に係る電気エネルギー変換率向上ソーラーパネル100の実施の態様を限定するためのものではなく、光エネルギー利得層200は、印刷や塗布や膜状の構造に形成されて粘着する方式などで、図4に示す第1の封止層20、図5に示す太陽電池層30及び/又は図6に示すバックプレーン層50における、ソーラーパネル100の第1の面101に対応する一側面に結合されている。別の実施例では、光エネルギー利得層200は、図7に示すガラス層10と、図8に示す太陽電池層30における、ソーラーパネル100の第2の面102に対応する一側面とに、それぞれ又は同時に設けられていてもよい。ある実施例では、光エネルギー利得層200は、更に、ソーラーパネル100の周りの側面103〔図示せず〕に、それぞれ又は同時に設けられていてもよい。また、ある実施例では、光エネルギー利得層200は、図9に示すガラス層10、図10に示す第1の封止層20、図11に示す第2の封止層40及び/又は図12に示すバックプレーン層50に取り替わることが可能であり、そして、図13に示すように、ソーラーパネル100の太陽電池層30は、透明ガラス上に形成されており、ソーラーパネル100の第1の面101と第2の面102とに、それぞれ少なくとも一つの光エネルギー利得層200を結合してもよく、これにより、太陽電池の発電効率を向上することができる。また、図14に示すように、太陽電池層30は、光エネルギー利得層200の表面に直接に形成してもよく、なお、太陽電池層30の他側の面は、別の光エネルギー利得層200又は第1の封止層20であるため、ソーラーパネル100は、更に、曲げることができる柔軟な構造となる。なお、光エネルギー利得層200は、窓ガラスに取り替わって、カーテンや窓型のソーラーパネル100として使用することが可能である。また、光エネルギー利得層200は、多層積層構成なため、ソーラーパネル100の発電効率を更に向上することができる。このように、技術分野の常識を有する者が行う適切な変更または修正は、本発明の特許の範囲を逸脱しないものとみなされるべきである。
【0031】
上記の説明から分かるように、本発明に係るソーラーパネル光電変換効率向上方法及び構造は、ソーラーパネル100上に少なくとも一つの光エネルギー利得層200を設け、これらの光エネルギー利得層200は、複数の導電性炭素系材料201と蛍光体材料202を混合して、透明担体205に均一に分布して構成される三次元導電性構造であることにより、太陽光における異なる波長を持つ入射光源の不可視光を有効に吸収することができ、且つ吸収された広範囲の前記入射光源を改めて、可視光として射出するため、熱エネルギーを光エネルギーに変換することを実現でき、ソーラーパネル100の太陽電池層30に進入する光エネルギーの量を増加して、電気エネルギーに変換することができ、微光発電なため、ソーラーパネル100の発電作動時間を有効に延びることができ、熱エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換することもでき、廃熱発電の効果を得ることができるため、ソーラーパネル100の太陽光を吸収して電気エネルギーに変換する効率を大幅に向上することができると共に、光エネルギー利得層200は、高価で特殊な材料を要せず、且つ生産プロセスが簡単で、生産機器が安く、印刷や塗布や膜状の構造に形成されて粘着する方式などで、ソーラーパネル100に結合するため、組付け加工は容易でローコストである。なお、前記膜状の構造の粘着は、例えば非導電性コロイドを使用して接着する。
【符号の説明】
【0032】
100 ソーラーパネル
101 第1の面
102 第2の面
103 側面
10 ガラス層
20 第1の封止層
30 太陽電池層
40 第2の封止層
50 バックプレーン層
200 光エネルギー利得層
201 導電性炭素系材料
202 蛍光体材料
205 透明担体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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