(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027209
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】エンジン稼働制御システム
(51)【国際特許分類】
F02N 11/08 20060101AFI20250219BHJP
F02N 15/00 20060101ALI20250219BHJP
F02B 67/00 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
F02N11/08 T
F02N15/00 D
F02B67/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131813
(22)【出願日】2023-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】521028095
【氏名又は名称】インデックスエンジニアリング有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096002
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100091650
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 規之
(72)【発明者】
【氏名】三上 直孝
(72)【発明者】
【氏名】三上 雅史
(57)【要約】
【課題】エンジン駆動式の発電機を、遠隔操作によって始動/停止させる。
【解決手段】キー回転装置14と、コントローラ12と、リモコン装置28を備えたエンジン稼働制御システム10。キー回転装置14は、発電機26の鍵穴38に挿入されたキー30を支持するキー支持歯車32と、回転モータ36と、エンコーダ34を備え、コントローラ12は、エンジン始動時にエンコーダ34から入力されたキー支持歯車32の回転パターンを始動時のキー操作情報としてメモリに登録し、エンジン停止時にエンコーダ34から入力されたキー支持歯車32の回転パターンを停止時のキー操作情報としてメモリに登録し、リモコン装置28からエンジン始動の指令が入力された際に、始動時のキー操作情報を参照し、キー支持歯車を対応の回転パターンで回転させてエンジンを始動させ、エンジン停止の指令が入力された際に、停止時のキー操作情報を参照し、キー支持歯車32を対応の回転パターンで回転させてエンジンを停止させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した機械に装着されるキー回転装置と、
このキー回転装置と接続されたコントローラと、
このコントローラと接続される指示装置とを備え、
上記キー回転装置は、上記エンジンの鍵穴に挿入されたキーを回転自在に支持するキー支持部材と、
このキー支持部材を回転させる回転機構と、
上記キー支持部材の回転を検知する回転センサを備え、
上記コントローラは、エンジン始動時に上記回転センサから入力されたキー支持部材の回転パターンを、エンジン始動時のキー操作情報として記憶装置に登録する手段と、
エンジン停止時に上記回転センサから入力されたキー支持部材の回転パターンを、エンジン停止時のキー操作情報として記憶装置に登録する手段と、
上記指示装置からエンジン始動の指令が入力された際に、上記エンジン始動時のキー操作情報を参照し、上記回転機構を介して上記キー支持部材を対応の回転パターンで回転させることにより、上記エンジンを始動させる手段と、
上記指示装置からエンジン停止の指令が入力された際に、上記エンジン停止時のキー操作情報を参照し、上記回転機構を介して上記キー支持部材を対応の回転パターンで回転させることにより、上記エンジンを停止させる手段と、
を備えたことを特徴とするエンジン稼働制御システム。
【請求項2】
エンジンの稼働を検知する状態センサを備え、
上記コントーラは、上記状態センサからの入力によってエンジンが始動したか否かを判定し、
エンジンが始動していない場合には、上記回転機構を介して上記キー支持部材を所定の回転パターンで回転させてエンジンを始動させる処理を設定回数繰り返し、
設定回数内にエンジンが始動しない場合、上記指示装置にエラーを通知することを特徴とする請求項1に記載のエンジン稼働制御システム。
【請求項3】
警報装置を備え、
上記コントーラは、上記指示装置からエンジン始動の指令が入力された際に、上記警報装置を介して周囲にエンジン始動の警報を発する処理を実行することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン稼働制御システム。
【請求項4】
上記指示装置が、上記コントローラと有線または無線で接続されるリモコン装置であることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン稼働制御システム。
【請求項5】
上記指示装置が、上記コントローラと接続された外部端末であり、
上記コントローラは、この外部端末に対しエンジンの始動/停止状態を通知する手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン稼働制御システム。
【請求項6】
上記機械が発電機であり、
上記コントローラは、上記エンジンが始動を開始してから所定時間が経過した後に、上記発電機と電気機器の間に介装された電源供給スイッチを閉じて電源供給を開始させることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン稼働制御システム。
【請求項7】
上記キーは上記キー回転装置に対して着脱自在に装着されており、エンジン非稼働時には取り外して他の場所に保管でき、エンジンの稼働時には容易に再装着できることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン稼働制御システム。
【請求項8】
上記コントローラは、上記状態センサからの入力に基づいてエンジンの異常振動の有無を検知する手段と、
異常振動を検知した際に、上記指示装置に通知する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のエンジン稼働制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエンジン稼働制御システムに係り、特に、イグニッションキーの回転によって始動/停止が実現されるエンジンを、遠隔的に操作可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セルモータを備えたエンジン駆動式の発電機を稼働させるためには、キーを発電機の鍵穴に差し込み、「START」の方向に回してセルモータを起動する必要がある。また、発電機を停止する際には、「ON」の位置にあるキーを「OFF」の方向に戻さなければならない。
つまり、少なくとも発電機の始動時及び停止時には、人間が発電機の近くに赴き、その手でキーの回転操作を行うことが求められる。
【非特許文献1】発電機/取扱説明書 GR-5000/リョービ インターネットURL:https://www.kyocera-industrialtools.co.jp/products/files/doc/33d9762dd3c59c919a4f9b5a3d14f8e7.pdf 検索日:2023年8月13日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなエンジン駆動式の発電機を、遠隔操作によって始動/停止させることができれば便利な場面も多く存在する。
例えば、建設途中の建物の階上において作業をする際には、発電機を稼働させてエレベータに電源を供給する必要があるが、作業員の搬送が終わった後は燃料節約のために発電機は一旦停止される。そして、階上での作業が修了した時点で再度発電機を稼働させてエレベータに電源を供給し、作業員を階下に搬送することが行われている。このために、現状では階下に発電機操作のための人員を配置することで対応するか、それができない場合には発電機を稼働させたままにしている。これに対し、発電機の始動/停止を階上から遠隔操作できるようになれば、余計な人員の手配や燃料の浪費を回避できる。
【0004】
この発明は、このような現状に鑑みて案出されたものであり、発電機に限らずエンジン駆動式の各種機器を、遠隔操作によって始動/停止させることを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載のエンジン稼働制御システムは、エンジンを搭載した機械に装着されるキー回転装置と、このキー回転装置と接続されたコントローラと、このコントローラと接続される指示装置とを備え、上記キー回転装置は、上記エンジンの鍵穴に挿入されたキーを回転自在に支持するキー支持部材と、このキー支持部材を回転させる回転機構と、上記キー支持部材の回転を検知する回転センサまたはキーの回転角度を検出するセンサを備え、上記コントローラは、エンジン始動時に上記回転センサから入力されたキー支持部材の回転パターンを、エンジン始動時のキー操作情報として記憶装置に登録する手段と、エンジン停止時に上記回転センサから入力されたキー支持部材の回転パターンを、エンジン停止時のキー操作情報として記憶装置に登録する手段と、上記指示装置からエンジン始動の指令が入力された際に、上記エンジン始動時のキー操作情報を参照し、上記回転機構を介して上記キー支持部材を対応の回転パターンで回転させることにより、上記エンジンを始動させる手段と、上記指示装置からエンジン停止の指令が入力された際に、上記エンジン停止時のキー操作情報を参照し、上記回転機構を介して上記キー支持部材を対応の回転パターンで回転させることにより、上記エンジンを停止させる手段を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載のエンジン稼働制御システムは、さらにエンジンの稼働を検知する状態センサを備え、上記コントーラが、上記状態センサからの入力によってエンジンが始動したか否かを判定し、エンジンが始動していない場合には、上記回転機構を介して上記キー支持部材を所定の回転パターンで回転させてエンジンを始動させる処理を設定回数繰り返し、設定回数内にエンジンが始動しない場合、上記指示装置にエラーを通知することを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載のエンジン稼働制御システムは、さらに警報装置を備え、上記コントーラが、上記指示装置からエンジン始動の指令が入力された際に、上記警報装置を介して周囲にエンジン始動の警報を発する処理を実行することを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載のエンジン稼働制御システムは、上記指示装置が上記コントローラと有線または無線で接続されるリモコン装置であることを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載のエンジン稼働制御システムは、上記指示装置が上記コントローラとインターネットやローカルネットワーク、または1対1の個別通信を介して接続された外部端末であり、上記コントローラはこの外部端末に対しエンジンの始動/停止状態を通知する手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項6に記載のエンジン稼働制御システムは、上記機械が発電機であり、上記コントローラが、上記エンジンが始動を開始してから所定時間が経過した後に、上記発電機と電気機器の間に介装された電源供給スイッチを閉じて電源供給を開始させることを特徴としている。
【0011】
請求項7に記載のエンジン稼働制御システムは、上記キーが上記キー回転装置に対して着脱自在に装着されており、エンジン非稼働時には取り外して他の場所に保管でき、エンジンの稼働時には容易に再装着できることを特徴としている。
【0012】
請求項8に記載のエンジン稼働制御システムは、上記コントローラが上記状態センサからの入力に基づいてエンジンの異常振動の有無を検知する手段と、異常振動を検知した際に、上記指示装置に通知する手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るエンジン稼働制御システムによれば、リモコン装置等からの指令に基づき、キーの回転操作によるエンジンの始動/停止を遠隔的に制御することが可能となる。
しかも、この発明に係るエンジン稼働制御システムの場合、事前の学習工程においてエンジンの始動/停止に係るキーの回転パターンを事前にメモリ等の記憶装置に保存しておき、本番時においてこれを再現する仕組みを備えているため、既存の様々なエンジン駆動式機械に適用できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】エンジン稼働制御システムの教示モード時の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】キー回転装置の内部構造を示す概念図である。
【
図5】エンジン稼働制御システムの教示モード時の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】エンジン稼働制御システムの本番モード時の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】エンジン稼働制御システムの本番モードにおけるエンジン始動に係る処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】エンジン稼働制御システムの本番モードにおけるエンジン停止に係る処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】キー回転装置の内部構造を示す概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。ただし、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
図1に示すように、エンジン稼働制御システム10は、コントローラ12と、キー回転装置14を有しており、コントローラ12は、制御部16と、警報装置18と、状態センサ20と、外部連携部22を備えている。
【0016】
キー回転装置14は、制御対象であるエンジン駆動式発電機26の筐体に、マグネット等を介して固着されている。
コントローラ12は、キー回転装置14の近傍に配置され、ケーブルを介して相互に接続されている。
なお、コントローラ12とキー回転装置14を、同一筐体内に収納して一体化することもできる。
あるいは、警報装置18及び状態センサ20をキー回転装置14内に収納させてもよい。
【0017】
発電機26は、信号ケーブルを介して制御部16と接続されており、発電機26の燃料の残量や、発電量等のデータが制御部16に入力される。
また発電機26は、電源ケーブルを介して電気機器42と接続されており、電気機器42との間には電磁開閉器24が介装されている。
この電磁開閉器24は、信号ケーブルを介して制御部16と接続されており、制御部16からの制御信号に従って開閉される(詳細は後述)。この電磁開閉器24は、発電機62に内蔵されている場合もある。
【0018】
制御部16は、CPUやメモリ、I/O回路等を備えており、メモリに格納された制御プログラムに従ってCPUが必要な処理を実行することにより、後述の各種処理が実行される。
オペレータαは、リモコン装置28を介して、無線で制御部16との間で各種情報のやり取りを行う。
【0019】
図2に示すように、キー回転装置14はケース14aを備えており、その上面14bには回転板14cが装着されている。
また、回転板14cの中央に形成された鍵穴14dには、発電機26のキー30が挿通されている。
【0020】
図3は、キー回転装置14の内部構造を模式的に表現したものであり、ケース14a内において回転可能に配置されたキー支持歯車32と、回転センサとしてのエンコーダ34と、回転機構としての回転モータ36が示されている。
エンコーダ34の入力軸に接続された検出用歯車34aと、回転モータ36の出力軸に接続された駆動用歯車36aは、それぞれキー支持歯車32と噛み合わされている。
【0021】
キー支持歯車32の中心部分には上記のキー30が挿通されており、その先端は発電機26の鍵穴38に挿入されている。
図4(a)~(d)は、鍵穴38のポジションを例示するものであり、鍵穴38の回転によって(a)「LOCK(停止)」、(b)「PREHEAT(予熱)」、(c)「START(始動)」、(d)「ON(稼働)」の各ポジションに移行する様子が示されている。
発電機26のエンジンがディーゼルエンジンの場合、(b)のPREHEATポジションを所定時間保持することによってグロープラグを予熱する工程が設けられるが、ガソリンエンジンの場合には同ポジションは不要となる。また、ディーゼルエンジンであっても、「PREHEAT」のポジションを鍵穴38に設ける代わりに、トグルスイッチとして独立させている場合もある。
【0022】
エンコーダ34は、キー支持歯車32の回転方向、回転量(回転角度)等のデータを制御部16に出力する機能を備えている。
回転モータ36は、制御部16からの指令に基づき、キー支持歯車32及びキー30を所定の回転パターンで回転させる機能を果たす。
【0023】
警報装置18は、例えばスピーカ及び警告灯の少なくとも一方よりなり、制御部16からの指令に基づき、音声や発光によってエンジンの始動/停止を周囲に告知する機能を果たす。
【0024】
状態センサ20は、例えば振動センサ及び音響センサの少なくとも一方よりなり、エンジンの稼働状態(停止/稼働/故障等)を振動量や音響として検知し、制御部16に出力する機能を果たす。
【0025】
外部連携部22は、CPUやメモリ、各種I/O回路、Wi-FiやLTE等の無線通信モジュールを備えており、メモリに格納された制御プログラムに従ってCPUが必要な処理を実行することにより、発電機26の稼働状態や燃料の残量、稼働による音響、振動量等の各種情報をインターネット経由で外部端末に通知する機能や、外部端末からの指令に従い発電機26の稼働を制御する機能を担う(詳細は後述)。
また、外部連携部22にはGPSアンテナ40が接続されており、装置の位置情報を外部に通知することもできる。
外部連携部22をコントローラ12の筐体内に収納する代わりに、別個の筐体として独立させ、有線または無線で相互に接続するように構成してもよい。
【0026】
発電機26に搭載されたエンジンの種類により、また季節によってもエンジンの始動/停止のためのキー操作(キーの回転方向/回転量/回転速度/保持時間等の回転パターン)が異なるため、エンジン稼働制御システム10の利用を開始するに際し、制御部16にエンジン始動/停止のキー操作を教え込む必要がある。
以下、
図5のフローチャートに従い、この制御部16にエンジンの始動/停止の操作パターンを教示する際の処理手順を説明する。
【0027】
まず、オペレータαはリモコン装置28のボタンを操作し、「エンジン始動時の学習」を指示する。
この入力を受け付けた制御部16は(S10)、エンコーダ34及び状態センサ20からの入力待機状態に移行する(S12)。
【0028】
つぎにオペレータαは、キー30を手で回して発電機26のエンジンを実際に始動させる。
具体的には、「LOCK」の位置(
図4(a))から「PREHEAT」の位置(
図4(b))までキー30を反時計回りに約90度回し、その状態を所定時間保持してディーゼルエンジンのグロープラグを予熱する。
つぎに、キー30を「START」の位置(
図4(c))まで時計回りに約270度回してセルモータを始動させ、所定時間その状態を保持する。
そして、エンジンが掛かった時点でオペレータαが手を離すと、キー30は自然に「ON」の位置(
図4(d))まで戻される。
【0029】
この間、エンコーダ34からキー支持歯車32の回転方向や回転量(回転角度)等を示すデータが入力され、これに基づいて制御部16は、キー支持歯車32の回転方向、回転量、時間のカウントによって算出した回転速度、回転が停止してからの保持時間を、キー支持歯車32の回転パターンとしてメモリに格納する(S14)。
ここでオペレータαがリモコン装置28のボタンを操作し、「エンジン始動完了」を入力すると、これを受けた制御部16は(S16)、上記回転パターンをエンジン始動時のキー操作情報としてメモリに保存する(S18)。
また制御部16は、この時点で状態センサ20から入力された音響及び振動量を、エンジン始動時の確認情報としてメモリに保存する(S20)。
【0030】
つぎにオペレータαは、リモコン装置28のボタンを操作し、「エンジン停止時の学習」を指示する。
この入力を受け付けた制御部16は(S22)、エンコーダ34からの入力待機状態に移行する(S24)。
【0031】
つぎにオペレータαは、キー30を「ON」の位置から「LOCK」の位置まで回し、エンジンを停止させる。
この間、エンコーダ34からキー支持歯車32の回転方向や回転量(回転角度)等を示すデータが入力され、制御部16はキー支持歯車32の回転方向、回転量、回転速度、保持時間を、キー支持歯車32の回転パターンとしてメモリに格納する(S26)。
ここでオペレータαがリモコン装置28のボタンを操作し、「エンジン停止完了」を入力すると、これを受けた制御部16は(S28)、上記回転パターンをエンジン停止時のキー操作情報としてメモリに保存する(S30)。
【0032】
以上のようにして発電機26に関するエンジンの始動/停止のための操作パターンを制御部16に学習させた後、エンジン稼働制御の本番モードに移行する。
図6は、エンジン稼働制御システム10の本番モードにおける機能構成を示すものであり、外部連携部22がインターネット50を介して管理サーバ52に接続されると共に、オペレータβのタブレット端末54及びオペレータγのPC端末56がインターネット50を介して管理サーバ52と接続されている。
タブレット端末54やPC端末56には、専用のアプリケーションプログラムやWebブラウザプログラムが搭載されている。
【0033】
また、外部連携部22は、GPSアンテナ40を介してGPS衛星58からのGPS信号を受信し、発電機26の現在位置を算出する。
この本番モードにおいて、リモコン装置28を手にしたオペレータαは必ずしもキー回転装置14の近傍に待機している必要はなく、リモコン装置28の電波が到達可能な範囲内に居ればよい。
【0034】
以下、
図7のフローチャートに従い、このシステム10の本番モードにおけるエンジン始動時の処理手順を説明する。
まず、オペレータαがリモコン装置28の「エンジン始動」ボタンを押すと、この指令を受信した制御部16は(S40)、メモリからエンジン始動時のキー操作情報及び確認情報を読み込むと共に(S42)、警報装置18を介してエンジン始動の警報を発令する(S44)。この警報は、例えば「エンジンが始動します。ご注意ください。」等のアナウンスや、警告灯の点滅等により実現される。
【0035】
つぎに制御部16は、キー回転装置14の回転モータ36に駆動信号を出力し、キー支持歯車32及びキー30を所定の速度で反時計回りに約90度回して「LOCK」から「PREHEAT」のキーポジションに移行させ、その状態を所定時間保持してディーゼルエンジンのグロープラグを予熱する(S46)。
つぎに制御部16は、キー支持歯車32及びキー30を所定の速度で時計回りに約270度回して「START」のキーポジションに移行させ、発電機26のセルモータを稼働させる(S48)。
このセルモータの稼働状態は、所定時間保持される(S50)。
【0036】
そして、状態センサ20からの入力(音響及び振動量)によって制御部16が「エンジン始動完了」と判定すると(S52/Y)、キー支持歯車32及びキー30を所定の速度で反時計回りに約90度回転させ、「ON」のポジションに戻してセルモータを停止する(S55)。
【0037】
つぎに制御部16は、リモコン装置28に「エンジン稼働中」の信号を送信し(S56)、リモコン装置28のディスプレイにエンジン稼働中の状態を表示させる。
同時に、外部連携部22及び管理サーバ52を介して、タブレット端末54やPC端末56に「エンジン稼働中」のメッセージを送信する(S58)。
この結果、専用のアプリケーションプログラムやWebアプリケーションを介して、タブレット端末54やPC端末56のディスプレイにエンジン稼働中の状態が表示される。
【0038】
管理サーバ52からAPI経由でSNSサーバにメッセージを送信することにより、各オペレータの端末にセットアップされたLINE(登録商標)等のSNSアプリ上でエンジンの稼働状態を表示させることもできる。
【0039】
制御部16は、エンジン始動後、所定の時間が経過した時点で電磁開閉器24に制御信号を出力し、スイッチを閉じて電気機器42への電源供給を開始させる。
エンジン始動時に出力負荷が接続されていると、セルモータへの負荷が増大するため、このような時間差が設けられている。
万一、過電流等で発電機26内の保護回路が機能した場合、制御部16から制御信号が電磁開閉器24に出力され、上記スイッチが開放される。
【0040】
なお、状態センサ20からの入力(音響及び振動量)によって「エンジン始動」と判定できない場合(S52/N)、制御部16は所定の間隔をおいて回転モータ36に駆動信号を出力し、S46~S50の処理を所定の設定回数繰り返すことにより(S53/N)、エンジンの始動を試みる。
そして、設定回数繰り返しても「エンジン始動」と判定できない場合には(S53/Y)、リモコン装置28のディスプレイにエラー表示がなされると共に、タブレット端末54やPC端末56にエラーメッセージが通知された後(S54)、エンジンの始動処理が停止される。
【0041】
制御部16は、エンジン始動後も状態センサ20からの入力を常時監視しており、異常振動等によりエンジンの故障や不具合を検知した場合には、対応のエラーメッセージが外部連携部22及び管理サーバ52を介してタブレット端末54やPC端末56に送信される。
同時に、リモコン装置28にも同様のメッセージが制御部16から送信され、ディスプレイに表示される。
【0042】
つぎに、
図8のフローチャートに従い、このシステム10の本番モードにおけるエンジン停止時の処理手順を説明する。
エンジン始動後、所定の時間が経過して発電の必要がなくなった時点で、オペレータαはリモコン装置28の「エンジン停止」ボタンを押す。
この指令を受信した制御部16は(S60)、メモリから「エンジン停止時のキー操作情報」を読み込むと共に(S62)、警報装置18を介してエンジン停止の警報を発令する(S64)。
【0043】
つぎに制御部16は、キー回転装置14の回転モータ36に駆動信号を出力し、キー支持歯車32及びキー30を所定の速度で反時計回りに約90度回転させることにより、「ON」から「LOCK」のキーポジションに移行させ、エンジンを停止する(S66)。
【0044】
つぎに制御部16は、リモコン装置28に「エンジン停止中」の信号を送信し(S68)、そのディスプレイにエンジンの停止状態を表示させる。
同時に、制御部16は外部連携部22及び管理サーバ52を介して、タブレット端末54やPC端末56に「エンジン停止中」のメッセージを送信する(S70)。
この結果、タブレット端末54やPC端末56のディスプレイにエンジンの停止状態が表示される。
【0045】
上記においては、リモコン装置28によってエンジンの始動/停止を制御する例を示したが、管理サーバ52及び外部連携部22経由で届いたタブレット端末54及びPC端末56からの指令に基づき、発電機26のエンジンを制御することもできる。
【0046】
上記においては回転センサとしてエンコーダ34を例示したが、他のセンサをキー支持歯車32に装着することで、キー30の回転状態を検知することもできる。
例えば
図9に示すように、キー支持歯車32の表面に回転センサとしての重力センサ(加速度センサ、角度センサ、ジャイロセンサ)60を装着することが該当する。この場合、重力センサ60から制御部16に対し、キー支持歯車32の回転方向や回転角度等を示すデータが出力される。
【0047】
制御部16は、外部連携部22を介して発電機26の現在位置や燃料の残量、発電量、稼働積算時間等のデータを外部のタブレット端末54やPC端末56に送信することもできる。
【0048】
上記においては発電機26のエンジン制御について説明したが、コンプレッサやウォータージェット、溶接機等、他のエンジン駆動式機械の制御にこの発明を適用することも当然に可能である。
【0049】
上記の電磁開閉器24の代わりに、アクチュエータの駆動により開閉されるブレーカを電源供給スイッチとして用いることもできる。
【0050】
キー30は、キー回転装置14に対して着脱自在に装着されているため、夜間や休日等の非稼働時にはキー30を取り外し、管理者が管理することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 エンジン稼働制御システム
12 コントローラ
14 キー回転装置
16 制御部
18 警報装置
20 状態センサ
22 外部連携部
24 電磁開閉器
26 発電機
28 リモコン装置
30 キー
32 キー支持歯車
34 エンコーダ
36 回転モータ
38 鍵穴
40 GPSアンテナ
42 電気機器
50 インターネット
52 管理サーバ
54 タブレット端末
56 PC端末
58 GPS衛星
60 重力センサ
α オペレータ
β オペレータ
γ オペレータ