(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027222
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】タイヤチェーン及びタイヤチェーン補修方法
(51)【国際特許分類】
B60C 27/06 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
B60C27/06 K
B60C27/06 M
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131839
(22)【出願日】2023-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】301013527
【氏名又は名称】森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135792
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 公孝
(72)【発明者】
【氏名】森 純一
(57)【要約】
【課題】クロスチェーンをサイドチェーンから取り外すことができると共に、大型車両に適した構成にすること。
【解決手段】車両のタイヤTに装着されるタイヤチェーン1であって、タイヤTの側面側に配置されるサイドチェーン10と、タイヤTの周面側に配置されるクロスチェーン11と、クロスチェーン11をサイドチェーン10に対して着脱可能に連結する連結部2と、を備え、連結部2は、クロスチェーン11が通過可能な間隙部20aを有する本体部20と、本体部20に沿って移動して間隙部20aを開閉可能なナット部21と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤの側面側に配置されるサイドチェーンと、
前記タイヤの周面側に配置されるクロスチェーンと、
前記クロスチェーンを前記サイドチェーンに対して着脱可能に連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、
前記クロスチェーンが通過可能な間隙部を有する本体部と、
前記本体部に配置されて前記間隙部を開閉可能なナット部と、を備える
ことを特徴とするタイヤチェーン。
【請求項2】
前記連結部は、一対の前記ナット部と、前記ナット部に螺合可能なボルト部と、を備え、前記ボルト部が前記間隙部に配置された状態で前記一対のナット部を前記ボルト部に螺合することで前記間隙部が閉じるよう構成されている
ことを特徴する請求項1に記載のタイヤチェーン。
【請求項3】
車両のタイヤの側面側に配置されるサイドチェーンと、
前記タイヤの周面側に配置されるクロスチェーンと、
前記クロスチェーンを前記サイドチェーンに対して着脱可能に連結する連結部と、を備えるタイヤチェーンを補修する方法であって、
前記タイヤチェーンが前記タイヤに装着された状態で、前記クロスチェーンを前記サイドチェーンから取り外すステップと、
取り外された前記クロスチェーンを反転するステップと、
反転された前記クロスチェーンを前記サイドチェーンに取り付けるステップと、を含む
ことを特徴とするタイヤチェーン補修方法。
【請求項4】
車両のタイヤの側面側に配置されるサイドチェーンと、
前記タイヤの周面側に配置されるクロスチェーンと、
前記クロスチェーンを前記サイドチェーンに対して着脱可能に連結する連結部と、を備えるタイヤチェーンを補修する方法であって、
前記タイヤチェーンが前記タイヤに装着された状態で、前記クロスチェーンを前記サイドチェーンから取り外すステップと、
取り外された前記クロスチェーンの摩耗部分を肉盛り溶接するステップと、
前記肉盛り溶接された部分が路面側になるように前記クロスチェーンを前記サイドチェーンに取り付けるステップと、を含む
ことを特徴とするタイヤチェーン補修方法。
【請求項5】
前記クロスチェーンの摩耗部分に枠体を配置して、前記枠体の内側で前記肉盛り溶接する
ことを特徴とする請求項4に記載のタイヤチェーン補修方法。
【請求項6】
前記枠体は、前記クロスチェーンから突出するように配置される壁部と、前記クロスチェーンのリング部に沿うように形成された凹部と、を備える
ことを特徴とする請求項5に記載のタイヤチェーン補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に積雪又は凍結したときに、タイヤが滑らないように装着されるタイヤチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
除雪車等の大型車両の場合、車両本体と共に、タイヤも非常に大型であるため、タイヤが滑らないように装着されるタイヤチェーンも大型の金属製で構成されるので、重量が非常に重くなっている。タイヤチェーンは、タイヤの側面側に配置されるサイドチェーンと、タイヤの周面側に配置されるクロスチェーンとで構成されており、クロスチェーンが路面に接地するようになっている。
【0003】
大型車両の場合、車両本体及びタイヤの重量が非常に重いため、路面と接地するクロスチェーンが摩耗しやすくなっている。その結果、クロスチェーンが摩耗して破断しないように、タイヤチェーンを交換する必要があるが、タイヤチェーンの重量が非常に重いため、交換作業は非常に危険であり、かつ、時間がかかるという問題があった。
【0004】
また、タイヤチェーンの全体を交換することなく、タイヤチェーンをタイヤに装着した状態で、クロスチェーンだけを取り外して交換することができるタイヤチェーンがある(特許文献1及び2参照)。このタイヤチェーンは、クロスチェーンを着脱可能にするための連結部が、大型車両に適したように構成されておらず、その結果、大型車両に使用すると破損するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2-76505号公報
【特許文献2】特開平10-138721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、クロスチェーンをサイドチェーンから取り外すことができると共に、大型車両に適したタイヤチェーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るタイヤチェーンは、
車両のタイヤの側面側に配置されるサイドチェーンと、
タイヤの周面側に配置されるクロスチェーンと、
クロスチェーンをサイドチェーンに対して着脱可能に連結する連結部と、を備え、
連結部は、
クロスチェーンが通過可能な間隙部を有する本体部と、
本体部に配置されて間隙部を開閉可能なナット部と、を備える。
【0008】
本発明に係るタイヤチェーンは、連結部がナット部を介して本体部の間隙部を開閉するように構成されているので、非常に強固な構成を実現することでき、その結果、大型車両で使用されても破損しないようになっている。
【0009】
好ましくは、連結部は、一対のナット部と、ナット部に螺合可能なボルト部と、を備え、ボルト部が間隙部に配置された状態で一対のナット部をボルト部に螺合することで間隙部が閉じるよう構成されている。
【0010】
これによって、連結部の本体部をカッタ等で間隙部を形成して、ナット部とボルト部を別に製造して準備すればよいので、連結部の本体部に対してネジ加工等を施す必要がなく、製造の労力及びコストが少なく簡単に製造することができる。
【0011】
また、本発明に係るタイヤチェーン補修方法は、
車両のタイヤの側面側に配置されるサイドチェーンと、
タイヤの周面側に配置されるクロスチェーンと、
クロスチェーンをサイドチェーンに対して着脱可能に連結する連結部と、を備えるタイヤチェーンを補修する方法であって、
タイヤチェーンがタイヤに装着された状態で、クロスチェーンをサイドチェーンから取り外すステップと、
取り外されたクロスチェーンを反転するステップと、
反転されたクロスチェーンをサイドチェーンに取り付けるステップと、を含む。
【0012】
タイヤチェーンを長時間使用していると、クロスチェーンの路面に接地する部分が摩耗して滑りやすくなるが、本発明に係るタイヤチェーン補修方法では、連結部を介してクロスチェーンを簡単に取り外して反転して、摩耗していない部分を路面側に配置することができるようになっている。
【0013】
また、本発明に係るタイヤチェーン補修方法は、
車両のタイヤの側面側に配置されるサイドチェーンと、
タイヤの周面側に配置されるクロスチェーンと、
クロスチェーンをサイドチェーンに対して着脱可能に連結する連結部と、を備えるタイヤチェーンを補修する方法であって、
タイヤチェーンがタイヤに装着された状態で、クロスチェーンをサイドチェーンから取り外すステップと、
取り外されたクロスチェーンの摩耗部分を肉盛り溶接するステップと、
肉盛り溶接された部分が路面側になるようにクロスチェーンをサイドチェーンに取り付けるステップと、を含む。
【0014】
タイヤチェーンを長時間使用していると、クロスチェーンの路面に接地する部分が摩耗して滑りやすくなるが、本発明に係るタイヤチェーン補修方法では、連結部を介してクロスチェーンを簡単に取り外して摩耗部分を肉盛り溶接することができ、肉盛り溶接された部分が路面側になるようにすることで、肉盛り溶接部分をスパイクとして機能させて、滑り難いようにするようにすることができる。
【0015】
好ましくは、クロスチェーンの摩耗部分に枠体を配置して、枠体の内側で肉盛り溶接する。
【0016】
枠体の内側で肉盛り溶接することで、作業者が熟練者でなくても、溶接金属がクロスチェーンから垂れ落ちることなく、確実に摩耗部分に肉盛り溶接することができる。
【0017】
好ましくは、枠体は、クロスチェーンから突出するように配置される壁部と、クロスチェーンのリング部に沿うように形成された凹部と、を備えている。
【0018】
枠体の凹部をクロスチェーンのリング部に沿うように配置することで、摩耗部分からずれることなく枠体を配置して、確実に摩耗部分に金属を溶接することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るタイヤチェーン及びタイヤチェーン補修方法によれば、クロスチェーンをサイドチェーンから取り外すことができると共に、大型車両に適した構成であるので破損するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】タイヤに装着されたタイヤチェーンを示す側面図。
【
図4】第2実施形態の連結部を説明するための側面図。
【
図5】
図5(A)は、摩耗したクロスチェーンを示す斜視図、
図5(B)は、クロスチェーンに配置された枠体を示す斜視図、
図5(C)は、クロスチェーンに配置された枠体を示す平面図。
【
図6】タイヤチェーン補修方法の第1実施形態を説明するためのフローチャート図。
【
図7】タイヤチェーン補修方法の第2実施形態を説明するためのフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明に係るタイヤチェーン及びタイヤチェーン補修方法の一実施形態を説明する。
【0022】
<タイヤチェーンの構成>
タイヤチェーンの構成について説明する。
図1に示す通り、タイヤチェーン1は、車両のタイヤTに装着されるように構成されている。路面に積雪又は凍結したとき、車両の走行中にタイヤTが滑らないように、タイヤチェーン1がタイヤTに装着される。本実施形態では、タイヤチェーン1は、大型車両のタイヤTに適するように金属製で構成されている。
【0023】
タイヤチェーン1は、タイヤTの側面側に配置されるサイドチェーン10と、タイヤTの周面側に配置されるクロスチェーン11とを備えている。サイドチェーン10及びクロスチェーン11は、複数の金属製のリング部100,110が連結されて構成されている。
【0024】
また、タイヤチェーン1は、タイヤTの側面側に配置されるリング状のスプリングバンド12を備えており、スプリングバンド12は、複数のフック13を介して、サイドチェーン10に連結されている。
【0025】
タイヤチェーン1は、スプリングバンド12の弾性力によってサイドチェーン10がタイヤTの側面の中心に引き寄せられて、クロスチェーン11がタイヤTの周面に確実に当接するようになっている。
【0026】
図2に示す通り、タイヤチェーン1は、2本のサイドチェーン10を備えており、各サイドチェーン10が、タイヤTの両側面に配置される。そして、複数のクロスチェーン11が、平行な2本のサイドチェーン10の間に配置及び連結されている。そして、サイドチェーン10の端部に接続具14が取り付けられており、接続具14でサイドチェーン10の両端部を接続することで、
図1に示す通り、リング状のサイドチェーン10をタイヤTの側面側に配置することができる。
【0027】
図1及び
図2に示す通り、タイヤチェーン1は、クロスチェーン11をサイドチェーン10に対して着脱可能に連結するための連結部2を備えている。連結部2は、各クロスチェーン11の両端部をサイドチェーン10に連結するようになっている。
【0028】
<連結部の第1実施形態>
連結部2の第1実施形態について説明する。
図3に示す通り、連結部2は、サイドチェーン10及びクロスチェーン11の各リング部100,110と同様に、金属製の本体部20を備えている。そして、本体部20は、クロスチェーン11のリング部110が通過可能な間隙部20aを有している。そのため、本体部20は、間隙部20aによって非連続な形状で構成されている。
【0029】
また、連結部2は、本体部20に嵌め込まれた金属製のナット部21を備えている。ナット部21は、本体部20に沿って移動可能に構成されている。ナット部21は、内側にネジ部210を有しており、また、本体部20は、間隙部20aに隣接する端部にネジ部200を有している。
【0030】
それによって、ナット部21を間隙部20aに配置及び回転して、各ネジ部200,210を締めることで、間隙部20aを閉じることができるようになっている。また、間隙部20aに配置されたナット部21を回転して、各ネジ部200,210を緩めることで、間隙部20aを開くことができるようになっている。間隙部20aを開いて、クロスチェーン11のリング部110を間隙部20aから通過可能とすることで、クロスチェーン11を連結部2から取り外すことができるようになっている。
【0031】
<連結部の第2実施形態>
連結部2の第2実施形態について説明する。
図4に示す通り、連結部2の本体部20は、第1実施形態と同様、間隙部20aを有している。そして、連結部2は、本体部20に嵌め込まれた一対の金属製のナット部22を備えており、一対のナット部22は、間隙部20aの両側に配置されるように、本体部20に嵌め込まれる。ナット部22は、内側にネジ部22aが設けられている。
【0032】
また、連結部2は、金属製のボルト部23を有している。ボルト部23は、外側にネジ部23aが設けられており、ナット部22のネジ部22aに螺合されるよう構成されている。そして、ボルト部23の長さは、間隙部20aに配置されるよう間隙部20aよりも短くなっており、さらに、間隙部20aに配置されたボルト部23に一対のナット部22が螺合されると、ナット部22が、連結部2の本体部20とボルト部23で間隙部20aに保持されて間隙部20aを閉じるよう構成されている。
【0033】
<タイヤチェーン補修方法の第1実施形態>
タイヤチェーン補修方法の第1実施形態について説明する。
図6に示す通り、タイヤチェーン1を長時間使用していると、クロスチェーン11の路面に接地する部分が摩耗して滑りやすくなる。そのため、タイヤチェーン1がタイヤTに装着された状態で、連結部2の間隙部20aを開けて、摩耗したクロスチェーン11を連結部2から取り外す(ステップS10)。そして、取り外されたクロスチェーン11を反転する(ステップS11)。そして、反転されたクロスチェーン11を連結部2の本体部20の内側に配置して、間隙部20aを閉じる(ステップS12)。
【0034】
これによって、非常に重量の大きいタイヤチェーン1の全体をタイヤTから取り外して反転することなく、連結部2を介してクロスチェーン11を簡単に取り外して反転することができ、摩耗していない部分を路面側に配置することができるようになっている。
【0035】
<タイヤチェーン補修方法の第2実施形態>
タイヤチェーン補修方法の第2実施形態について説明する。
図7に示す通り、タイヤチェーン1がタイヤTに装着された状態で、連結部2の間隙部20aを開けて、摩耗したクロスチェーン11を連結部2から取り外す(ステップS20)。その後、取り外されたクロスチェーン11の摩耗部分11aを肉盛り溶接する(ステップS21)。その後、肉盛り溶接された部分が路面側になるようにクロスチェーン11を連結部2に配置して、間隙部20aを閉じる(ステップS22)。
【0036】
これによって、非常に重量の大きいタイヤチェーン1の全体をタイヤTから取り外して反転することなく、連結部20を介してクロスチェーン11を簡単に取り外して摩耗部分11aを肉盛り溶接することができ、肉盛り溶接された部分が路面側に向くように配置することで、肉盛り溶接された部分をスパイクとして機能させて、滑り難いようにするようにすることができる。
【0037】
図5に示す通り、クロスチェーン11を肉盛り溶接するときに、クロスチェーン11の摩耗部分11aに金属製の枠体3を配置して、枠体3の内側3aで肉盛り溶接することができる(ステップS21’)。肉盛り溶接において、溶接材料であるロッドの先端を枠体3の内側に配置することで、溶接金属が枠体3の内側3aに形成されて垂れ落ちることがなく、確実に摩耗部分11aを肉盛り溶接することができる。
【0038】
図5(B)に示す通り、枠体3は、クロスチェーン11から上方に突出するように配置される壁部30と、クロスチェーン11の周面に沿うよう壁部30に形成された一対の凹部31,31と、を備えている。各凹部31,31は、枠体3の内側に対して互いに対向しており、それぞれ31,31をクロスチェーン11のリング部110に嵌め込むことで、枠体3を摩耗部分11aからずれることなく、確実に摩耗部分11aに肉盛り溶接することができるようになっている。
【0039】
また、
図5(C)に示す通り、枠体3の幅Wは、クロスチェーン11のリング部110の直径φに略同一であることが望ましく、それによって、枠体3の内側3aに肉盛り溶接するとき、溶接金属が枠体3の内側3aに形成されて垂れ落ちることがなく、確実に摩耗部分11aを肉盛り溶接することができる。また、枠体3の長さLは、摩耗部分11aより大きいことが望ましく、摩耗部分11aの全範囲を肉盛り溶接することができる。なお、摩耗部分11aの大きさは様々なので、長さLが異なる複数の枠体3を準備することが望ましい。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0041】
T タイヤ
1 タイヤチェーン
10 サイドチェーン
11 クロスチェーン
100,110 リング部
2 連結部
20a 間隙部
20 本体部
21 ナット部
11a 摩耗部分
3 枠体
30 壁部
31 凹部