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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027480
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】携帯式おしり洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 7/08 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
A47K7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132204
(22)【出願日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】523310479
【氏名又は名称】永峰 真
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永峰 真
【テーマコード(参考)】
2D134
【Fターム(参考)】
2D134DB01
(57)【要約】
【課題】使用者にストレスを感じさせること無く、使用者の肛門に確実に水或いはお湯Wを噴射して洗浄することが出来、且つ、簡易に持ち運べる携帯式おしり洗浄機の提供。
【解決手段】本発明の携帯式おしり洗浄装置(10)は、水或いはお湯Wを貯蔵可能な容器(1)と、容器の開口部を閉鎖出来る蓋部(2)と、容器内を加圧するポンプ部(3)を有し、ポンプ部に設けられた加圧用ポンプ(4)とポンプ吐出管(4A)と、容器内の水或いはお湯が貯蔵される領域からポンプ部の出口部まで延在する噴射管(5)を有し、噴射管には開閉弁(6)が介装され、弁操作用ボタン(7)が設けられ、ポンプ吐出管と噴射管は蓋部を貫通しており、噴射管の出口部と接続され、可撓性を有し且つ透水性を有さない材料で構成され、便器(20)の横の位置から使用者(U)の股間(UA)を経由して肛門(UB)に至る長さよりも長い寸法のホース(8)を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水或いはお湯を貯蔵可能な容器と、
当該容器の開口部と係合して閉鎖することが出来る蓋部と、
容器内を加圧するポンプ部を有し、
前記ポンプ部に設けられた加圧用ポンプの吐出側に設けられたポンプ吐出管と、容器内の水或いはお湯が貯蔵される領域からポンプ部の出口部まで延在する噴射管を有し、前記噴射管には開閉弁が介装され、当該開閉弁を操作する弁操作用ボタンが設けられており、
前記ポンプ部のポンプ吐出管と噴射管は前記蓋部を貫通しており、当該貫通箇所を水密に構成するためのシール材が配置されており、
前記ポンプ部の出口部において噴射管の出口部と接続されたホースを有し、当該ホースは可撓性を有し且つ透水性を有さない材料で構成され、便器の横の位置から使用者の股間を経由して肛門に至る長さよりも長い寸法であることを特徴とする携帯式おしり洗浄装置。
【請求項2】
前記ホースのポンプ部の噴射管の出口部と接続された側とは反対側のホース先端近傍には曲率半径2~5cmの範囲程度で湾曲した湾曲部が形成されている請求項1の携帯式おしり洗浄装置。
【請求項3】
請求項1、2の何れかの携帯式おしり洗浄装置の使用方法において、
用便後、ホースの湾曲部或いは湾曲部よりも前記ポンプ部側の領域を指でつまんで、使用者の股間を経由してホース先端を使用者の肛門に近づける工程と、
弁操作用ボタンを操作し、開閉弁を開放して容器内の水或いはお湯を容器内の圧力により押し出して、ホース先端から噴射する工程と、
ホース先端から噴射した水或いはお湯の噴流が肛門に衝突する様に、湾曲部或いは湾曲部よりもポンプ側の部分を摘んで噴流の衝突位置を調節する工程と、
ホース先端からの噴流により肛門が洗浄されたならば、弁操作用ボタンを操作し、開閉弁を閉鎖して、ホース先端からの噴流を終了する工程を有していることを特徴とする使用方法。
【請求項4】
請求項1、2の何れかの携帯式おしり洗浄装置の製造方法において、
ポンプ部の噴射管の出口部において水或いはお湯を拡散しない様に加工する工程と、
ホースとポンプ部の噴射管の出口部を接続する工程と、
ホースにおける湾曲部を形成する工程と、
ホース先端のホース内径を縮小する工程を有することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用便の際に使用者の肛門を水又はお湯で洗浄することが出来るおしり洗浄装置であって、使用者が携帯可能なタイプのおしり洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水洗浄便座を用いれば、例えば、トイレットペーパーで肛門を拭かずに洗浄できるので、痔疾等の肛門に関する疾病を有する患者には大変に役立っている。
しかし、不特定多数の人々が利用する公衆便所では温水洗浄便座を備えていない所が少なからず存在する。また、都市部から離れ、長閑で辺鄙な地域(いわゆる「田舎」)では、温水洗浄便座の普及率は未だに高いとは言えないレベルである。そのため、肛門に疾病を有する患者が公衆便所を利用する場合や、長閑で辺鄙な地域に在住している場合には、自宅以外の場所で用便する場合には温水洗浄便座を利用することが出来ず、トイレットペーパーで肛門を拭かざるを得ない。そのため、肛門に関する疾病の治癒を妨げてしまう事態も存在する。
【0003】
また、温水洗浄便座を設置するためには水道設備や電気設備が必要不可欠であるが、例えば自然状態を維持することが義務付けられている様な景勝地等では、水道設備や電気設備の設置が困難な場合がある。そのため、用便の際に使用者の肛門を水又はお湯で洗浄することが出来るおしり洗浄装置であって、使用者が携帯可能なタイプが求められている。
しかし、使用者にストレスを感じさせること無く、使用者の肛門に確実に水またはお湯を噴射して洗浄することが出来て、且つ、簡易に持ち運べる様な携帯式おしり洗浄機は未だに提案されていない。
【0004】
従来技術としては、例えば、市販の家庭用の霧吹きと同様な構造を持ち、噴射口から拡散せずに液体が噴射する様に構成した携帯式のおしり洗浄機が存在する(特許文献1参照)。
しかし、例えば便器に腰かけて用便する際には、使用者のお尻の下の空間は狭く限定されており、家庭用の霧吹きと同サイズの装置では、その様な狭く限定された空間に配置することは困難である。
同様に、狭い限定された空間で、前記従来技術(特許文献1)に係る霧吹き状の洗浄装置の位置を調整して、当該洗浄装置から噴射される水を使用者の肛門に当てることは非常に困難であり、霧吹きの一部が使用者の臀部と干渉してしまう恐れがある。
さらに、肛門に噴射された水は、糞便が溶解した状態で跳ね返り、使用者のお尻の下の空間に配置された洗浄装置に付着してしまい、不衛生且つ不潔な状態になってしまう可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-18995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、使用者にストレスを感じさせること無く、使用者の肛門に確実に水またはお湯を噴射して洗浄することが出来て、且つ、簡易に持ち運べる様な携帯式おしり洗浄機の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯式おしり洗浄装置(10)は、
内部に水或いはお湯を貯蔵可能な容器(1)と、
当該容器(1)の開口部と係合(螺合)して閉鎖することが出来る蓋部(2)と、
容器(1)内を加圧するポンプ部(3)を有し、
前記ポンプ部(3)に設けられた加圧用ポンプ(4)の吐出側に設けられたポンプ吐出管(4A)と、容器(1)内の水或いはお湯が貯蔵される領域からポンプ部(3)の出口部(3A)まで延在する噴射管(5)を有し、前記噴射管(5)には開閉弁(6)が介装され、当該開閉弁(6)を操作する弁操作用ボタン(7)が設けられており、
前記ポンプ部(3)のポンプ吐出管(4A)と噴射管(5)は前記蓋部(2)を貫通しており、当該貫通箇所を水密に構成するためのシール材が配置されており、
前記ポンプ部(3)の出口部(3A)において噴射管(5)の出口部(5A)と接続されたホース(8)を有し、当該ホース(8)は可撓性を有し且つ透水性を有さない材料で構成され、便器(20)の横の位置から使用者(U)の股間(UA)を経由して肛門(UB)に至る長さよりも長い寸法であることを特徴としている。
【0008】
本発明の携帯式おしり洗浄装置(10)において、
前記ホース(8)のポンプ部(3)の噴射管(5)の出口部(5A)と接続された側とは反対側のホース先端(8A)近傍には曲率半径2~5cmの範囲程度で湾曲した湾曲部(8B)が形成されているのが好ましい。
その場合、前記湾曲部(8B)が形成された箇所の近傍の前記ホース先端(8A)は、前記ホース(8)の他の領域よりも内径(口径)が小さく設定されているのが好ましい。或いは、前記湾曲部(8B)が形成された箇所の近傍の前記ホース先端(8A)には、噴射ノズルが取り付けられているのが好ましい。
【0009】
上述した携帯式おしり洗浄装置(10:請求項1、2の何れかの携帯式おしり洗浄装置)の使用方法は、
用便後(ステップS2の「YES」)、ホース(8)の湾曲部(8B)或いは湾曲部(8B)よりも前記ポンプ部(3)側の領域を指でつまんで、使用者(U)の股間(UA)を経由してホース先端(8A)を使用者(U)の肛門(UB)に近づける工程(ステップS3)と、
弁操作用ボタン(7)を操作(押圧)し、開閉弁(6)を開放して容器(1)内の水或いはお湯を容器(1)内の圧力により押し出して、ホース先端(8A)から噴射する工程(ステップS4)と、
ホース先端(8A)から噴射した水(お湯)の噴流が肛門(UB)に衝突する様に、湾曲部(8B)或いは湾曲部(8B)よりもポンプ(3)側の部分を摘んで噴流の衝突位置を調節する工程(ステップS5)と、
ホース先端(8A)からの噴流(水或いはお湯)により肛門(UB)が洗浄されたならば(ステップS6が「YES」)、弁操作用ボタン(7)を操作し、開閉弁(6)を閉鎖して、ホース先端(8A)からの噴流を終了する工程(ステップS7)を有していることを特徴としている。
【0010】
上述した携帯式おしり洗浄装置(10:請求項1、2の何れかの携帯式おしり洗浄装置)の製造方法は、
ポンプ部(3)の噴射管(5)の出口部(5A)において水或いはお湯を拡散しない様に加工する工程と、
ホース(8)とポンプ部(3)の噴射管(5)の出口部(5A)を接続する工程と、
ホース(8)における湾曲部(8B)を形成する工程と、
ホース先端(8A)のホース内径を縮小する工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を具備する本発明によれば、ポンプ(3)の加圧、便器(20)の横の位置から使用者(U)の股間(UA)を経由して使用者(U)の肛門(UB)近辺に至る経路にホース(8)を配置(配索)、水或いはお湯の衝突する位置の調整、ポンプ操作用ボタン(7)の押圧という簡単な操作により、温水洗浄便座でなくても、トイレットペーパーを使用することなく、用便の際に使用者(U)の肛門(UB)を清潔に洗浄することが出来る。
本発明によれば、使用者(U)の臀部下方に位置するのは、ホース(8)のみであり、当該ホース(8)を使用者(U)の股間(UA)を経由して臀部下方に位置させれば、臀部下方の狭く且つ限定された空間でも、水やお湯が肛門へ噴射される様に噴射方向を容易に調節することが出来る。
また、ホース(8)の表面積は霧吹き等に比較して遥かに小さいので、水やお湯の噴射方向を調節している際に、使用者(U)の臀部或いは肛門(UB)近傍に干渉したり、肛門に衝突して跳ね返った水或いはお湯がホース(8)に掛かってしまう可能性は小さく、仮に掛かってしまってもホース(8)の洗浄は容易であるため、常に清潔な状態を保つことが出来る。
そして、可撓性を有し且つ透水性を有さない材料でホース(8)を構成するので、便器(20)の横の位置から使用者(U)の股間(UA)を経由して使用者(U)の肛門(UB)近辺に至る湾曲した経路であっても、ホース(8)を容易に配置(配索)することが出来る。
【0012】
ここで、肛門(UB)に水或いはお湯の噴流を衝突させるためには、ホース先端から直上に向かって噴流を噴射する必要がある。しかし発明者の研究では、可撓性のある柔軟なホースを片手の指で摘まんで、ホース先端からの噴流を直上に向けて噴射することは困難である。
これに対してホース先端(8A)近傍に湾曲部(8B)を設ければ、湾曲部(8B)よりも先端側を上方に向かう様に配置することが極めて容易になり、ホース先端(8A)から噴射される水或いはお湯を直上に向かって噴射することが簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の携帯式おしり洗浄装置の説明断面図である。
図2図1で示す携帯式おしり洗浄装置における使用の態様を示す説明図である。
図3図2の使用の態様における携帯式おしり洗浄装置と便座との相対的な位置を示す説明平面図である。
図4】図示の実施形態における使用の手順を示すフローチャートである。
図5】図示の実施形態における製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号10で示す携帯式おしり洗浄装置は、内部に水或いはお湯Wを貯蔵可能な容器1と、容器1の開口部と係合(螺合)して液密に閉鎖することが出来る蓋部2と、容器1内を加圧するポンプ部3と、ホース8を有している。
容器1としては携帯可能なサイズであれば良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート製の容器(いわゆる「PETボトル」)を適用することが出来る。お尻(肛門)洗浄に必要な量の水を貯めるのに必要かつ十分なサイズ、例えば1リットル程度の容量を有する容器であるのが好ましい。そして、加圧の際に変形し難いことから、例えば強炭酸水のPETボトルが好適である。変形し難いPETボトルであれば、その底部は加圧されても膨張せず、容器1をトイレの床に置いても、加圧の際に(変形し難いPETボトルで構成された容器1が)転倒する恐れがない。
また、容器1は、便器20(図2図3参照)の横に載置する際に、横転しない程度の安定性を有しているのが好ましい。
【0015】
図1において、ポンプ部3は加圧用ポンプ4と噴射管5を有している。加圧用ポンプ4は操作ハンドル4Bを往復動することにより作動させる。加圧用ポンプ4の吐出側にはポンプ吐出管4Aが設けられ、ポンプ吐出管4Aは蓋部2を貫通しており、その先端が容器1内に配置されている。
噴射管5は、その一端は容器1内の水或いはお湯Wが貯蔵される領域に配置されており、蓋部2を貫通してポンプ部3の出口部3Aまで延在している。噴射管5における他端側における(ポンプ部3の)出口部3A近傍の領域には、開閉弁6が介装されている。そして、開閉弁6を操作する弁操作用ボタン7が設けられている。
容器1の蓋2にはポンプ吐出管4Aと噴射管5が貫通しており、貫通箇所には図示しないシール材が配置されて気密且つ液密に構成されており、容器1内の水W(或いはお湯)が当該貫通箇所から漏出しない様に構成されていると共に、容器1内の圧力が容器1外に漏れ出さない様に構成されている。
明確には図示されていないが、開閉弁6及び弁操作用ボタン7は、開閉弁6が閉鎖している状態で弁操作用ボタン7を一度押圧すると開閉弁6は開放状態となり、開閉弁6が開放している状態で弁操作用ボタン7を一度押圧すると開閉弁6が閉鎖状態となる様に構成されている。
なお、ポンプ部3については、市販品を改良して使用することが可能である。
【0016】
ホース8は、一端がポンプ部3の出口部3Aにおける噴射管5の出口部5Aと接続さされており、使用者Uはホース8の他端(先端)を摘まんで使用者Uの肛門UB(図2図3)に近接させて使用する。ホース8については、可撓性を有し且つ透水性を有さない材料製であれば、特に特に材料の限定は無く、例えばシリコン製ホースが適用できる。
ホース8の長さは、洗浄装置10が配置される便器20の横の位置から、使用者Uの股間UAを経由して、使用者Uの肛門UB近辺に至る湾曲した経路の長さ寸法よりも、長い寸法に設定される。ホース8の長さは、使用者Uの身長や腕脚の長さにより異なるが、例えば1m±15cmの範囲内に設定される。
ここで、ホース8の長さが85cm未満であれば、ホース先端8Aが使用者Uの肛門UB近傍領域に到達せず、ホース先端8Aが肛門UBから離隔し過ぎてしまい、ホース先端8Aから噴射された水(湯)を使用者Uの肛UB門に到達させることが難しくなってしまう。一方、ホース8の長さが115cm以上に設定されると、使用者Uの肛門UBの下方の空間で折れ曲がって配置されてしまい、使用者UBの肛門UBに衝突して糞便が溶解した状態で跳ね返った水が付着して不衛生になる恐れがある。
【0017】
図1を参照して、ホース8の先端8Aの近傍の領域、換言すれば、ホース8の噴射管5の出口部5Aと接続された側とは反対側の領域、における構成及び機能について説明する。
ホース8は先端8Aの近傍において、曲率半径2~5cm程度で湾曲した湾曲部8Bが形成されている。係る湾曲部8Bを設けることにより、ホース先端8Aから噴射した水或いはお湯が、ホース8を掴んでいる使用者Uの肛門UBに当たる様に調整し易くなる。
ここで、肛門UBに水或いはお湯の噴流を衝突させるためには、ホース先端8Aから肛門UBに向かって、下側から上側に向かう噴流(直上に向かう噴流)を噴射する必要がある。発明者による研究では、可撓性のあるホースを片手の指で摘まんで、ホース先端からの噴流を直上に向かわせることは、ホース8に可撓性(或いは柔軟性)があるためホースの形状が不安定となり、ホース先端8Aから噴射される噴流の向きを正確に調整することは困難である。しかし、湾曲部8Bを設ければ、当該湾曲部8A或いは湾曲部8B近傍のホース8の部分を摘まむことにより、ホース先端8Aが上方に向かう様に配置することが極めて容易になり、そのため、ホース先端8Aから噴射される水或いはお湯を直上に向かって簡単に噴射することが出来て、ホース先端8Aから噴射される水或いはお湯を肛門UBに衝突させるように調整することが出来る。
図示の実施形態では、図5を参照して後述する様に、湾曲部8Bは、繊維状部材(例えば「タコ糸」)をホースに巻き付け、エポキシ樹脂系接着剤で固化されている。そのため、湾曲部8A或いはその近傍を摘まんでホース先端8Aの向きを容易に調整することが出来て、湾曲部8Bを摘まむことにより、ホース先端8Aから噴射される水(或いはお湯)を肛門UBに当たる様に調整することが容易となる。
【0018】
図1では明示されていないが、湾曲部8Bが形成された箇所の近傍のホース先端8Aは、例えば加熱して引き延ばして、ホース内径を縮径し、以て、そこから噴射する水(或いはお湯)Wの噴流の速度が増加せしめている。
但し、ホース先端8Aにおけるホース内径は縮径せず、ホース先端にノズル(図示せず)を取り付けることも可能である。
【0019】
図1に示す携帯式おしり洗浄装置10では、使用に際しては、携帯式おしり洗浄装置10を配置した便器20の横の位置から使用者Uの股間UAを経由して肛門UBの下方に至る経路にホース8を配索し、湾曲部8Bを摘んで水或いはお湯Wの衝突する位置を調整する(衝突する位置が肛門UBとなる様に調整する)。そして、加圧用ポンプ4のハンドル4Bを操作して(ハンドル4Bを何回か押し込んで往復運動せしめて)容器1内を加圧し、弁操作用ボタン7を操作して開閉弁6を開放すれば、加圧された容器1内の水或いはお湯Wが噴射管5、ホース8を流れ、縮径されたホース先端8Aから噴射される。
この様な簡単な操作により、温水洗浄便座でなくても、トイレットペーパーを使用することなく、用便の際に使用者Uの肛門UBを水或いはお湯によって清潔に洗浄することが出来る。
また、可撓性を有し且つ透水性を有さない材料製のホース8であれば、便器20の横の位置から使用者Uの股間UAを経由して肛門UB近辺に至る湾曲した経路であっても、容易に配索することが出来る。
ここで、ホース8の表面積は霧吹き等に比較して遥かに小さいので、肛門UBに噴射された水(湯)が使用者Uの臀部或いは肛門UB近傍に衝突すると、跳ね返った水或いはお湯がホース8に掛かってしまう可能性が少なく、仮に(肛門UB近傍に衝突した水或いはお湯が)掛かったとしても、ホース8は容易に洗浄することが出来る。
携帯式おしり洗浄装置10による具体的な洗浄手順は、図4を参照して後述する。
【0020】
図1で示す携帯式おしり洗浄装置10の使用に際しては、図2図3に示す様に、トイレの便器20の側方に携帯式おしり洗浄装置10が載置される。図2図3においては、携帯式おしり洗浄装置10を実線、トイレを破線、使用者Uを一点鎖線で示している。煩雑化の防止のため、図3では、使用者Uは表示しない。
図2において、使用者Uは便座21に座り、ホース8の先端8Aの近傍の湾曲部8Bを(片手で)摘む。ここで、ホース8は、洗浄装置10の容器1とポンプ部3から延在しており、ホース8は使用者Uの股間UA、便座21を経由(通過)して、先端8Aが肛門UBの下方に位置する様に配索されている。
図2で示す状態では、便座21の内側(下方)であって肛門UBの下方の狭く限定されたスペースには、洗浄装置10の本体側から延在するホース8の先端部8A近傍のみが存在する。そして使用者Uは、前記スペースにおいて、ホース先端8Aの位置調整を容易に行うことが出来る。
図3において符号7で示すのは、ホース先端8から水或いはお湯の噴射を開始或いは終了するための弁操作用ボタンである。また、図2図3で符号22は便器20の貯水タンクである。
図2図3では示されていないが、使用者Uが携帯式おしり洗浄装置10を腹の前や膝の上で保持しつつ、使用することも可能である。
【0021】
次に、主として図4を参照して、図示の実施形態に係る携帯式おしり洗浄装置10の使用方法(使用の手順)を説明する。
ここで、図示の実施形態に係る携帯式おしり洗浄装置10は、図1で示す様に組み立てられた状態で携帯されていても良いが、ポンプ部3(加圧用ポンプ4、ポンプ吐出管4A、ポンプ操作用ハンドル4B、噴射管5、開閉弁6、弁操作用ボタン7の総称)に容器1の蓋2及びホース8を取り付けた部分と、容器1とに分解して携帯しても良い。
ポンプ部3に容器1の蓋2及びホース8を取り付けた部分と、容器1とに分解して携帯されている場合には、図4では示されていない作業手順が、ステップS1の前に実行される。すなわち、容器1内に水W(或いはお湯)を充填し、蓋2を容器1に螺合し、ポンプ吐出管4A及び噴射管5を(蓋2を貫通して)容器1内に挿入し、図1で示す状態に組み立てる手順と、加圧用ポンプ4のハンドル4Bを何回か押し込んで、容器1内を加圧する手順である。ただし、容器内を加圧する作業は、用便後、お尻を洗浄する前に行っても良い。
容器1内には、例えば1/2程度の水W(或いはお湯)を充填する。
【0022】
図4において、ステップS1では、用便に際して、図1で示す携帯式おしり洗浄装置10を、図2図3で示す様に便器20の側方に載置する。
用便の後、ステップS2は「用便終了か否か」の判断を行うが、用便が終了しない間は、ステップS2の「NO」のループとなる。
用便が終了したならばステップS2の判断結果は「Yes」であり、ステップS3に進む。ステップS3では、使用者Uはホース8の湾曲部8B或いは湾曲部8Bよりもポンプ部側の領域を指で摘まんで、股間UAを経由(通過)させて、ホース先端8を肛門UBに近づける(ホース8の配索)。そしてステップS4に進む。
ここで、図4には示されていないが、ステップS4よりも前段階で、使用者Uは、加圧用ポンプ4のハンドル4Bを操作して、容器1内を加圧する。
ステップS4では、弁操作用ボタン7を押圧する。開閉弁6が閉鎖している状態で弁操作用ボタン7を押圧すると、開閉弁6が開放されて、容器1内の水或いはお湯Wは、容器1内の圧力により押し出される。そして、ホース8を流れ、ホース先端8Aから(水或いはお湯Wは)噴射する。
ホース先端8Aから水W(お湯)が噴射して肛門UB或いはその周辺部に衝突したならば、ステップS5では、噴流が肛門UBに確実に衝突する様に、使用者Uはホース8の湾曲部8B或いは湾曲部8Bよりもポンプ側の部分の摘み方、噴流の方向、噴射位置(衝突位置)を調節する。そして、ステップS6に進む。
【0023】
図4において、ステップS6では、使用者Uは、用便後に肛門UBが洗浄されたか否かを判断する。肛門UBに所定量の水(お湯)が衝突して肛門UBが十分に洗浄されたと使用者Uが判断するまで、洗浄は継続される(ステップS6がNOのループ)。
ホース先端8Aからの噴流(水或いはお湯)によって「肛門UBが洗浄された」と使用者Uが判断したならば(ステップS6が「YES」)、ステップS7に進む。
ステップS7では、使用者Uは弁操作用ボタン7を押圧し、開閉弁6を閉鎖して、ホース先端8Aからの噴流を遮断(終了)する。
次のステップS8では、トイレットペーパー等を使用して肛門周辺の水分をぬぐい取る。ただし、ステップS8(トイレットペーパー等を使用して肛門周辺の水分をぬぐい取る手順)を省略することが可能である。
ステップS8が終了したならば、使用者Uは携帯式おしり洗浄装置10を持参して、トイレから出る。
図示の実施形態に係る携帯式おしり洗浄装置10を、ポンプ部3に容器1の蓋2及びホース8を取り付けた部分と容器1とに分解して携帯する場合には、ステップS8以降に、蓋2を容器1から螺合解除して、ポンプ部3に容器1の蓋2及びホース8を取り付けた部分と、容器1とに分解して携帯する。
また、図4では示されていないが、ホース8等を洗浄する手順を、ステップS8以降に実行する場合がある。
【0024】
次に、図5を参照して、図示の実施形態に係る携帯式おしり洗浄装置10の製造方法について説明する。
図1図4で説明した携帯式おしり洗浄装置10において、ポンプ部3が、簡易なポンプ(図1の加圧用ポンプ4、ポンプ吐出管4A、ポンプ操作用ハンドル4Bに相当)と、開閉弁6及び弁操作用ボタン7を有する吐出管(噴射管5)を有している場合について、その製造方法を説明する。
係る製造方法では、ポンプ部3として市販品を改造して使用することが可能であり、以下、市販品を改造、使用する場合を想定して説明する。説明に際して、各部位の符号は図1の符号を使用する。
ポンプ部として市販品を改造して使用する場合には、噴射管5の出口部5Aには噴射するべき水或いはお湯を拡散する機構は不要である。逆に、噴射管5の出口部5Aでは、噴射される水(湯)が拡散しない様に構成する必要がある。
また、ポンプ吐出管4Aと噴射管5を容器1の蓋2に貫通させて、ポンプ吐出管4Aを容器1内と連通せしめ、噴射管5に容器1内の水或いはお湯Wを供給させる必要がある。
さらに、噴射管5の出口部5Aにホース8を接続する必要がある。
また、ホース8の先端8A近傍に湾曲部8Bを製作する必要があり、それに加えて、ホース先端8Aのホース内径を縮小しなければならない。
【0025】
図5は図示の携帯式おしり洗浄装置を製造する手順を示しており、個々の部品に必要な上述した加工を行う加工工程(ステップS11)と、組立工程(ステップS12)を有している。
ステップS11では、上述した様に、
(1)噴射管5の出口部5Aにおいて水或いはお湯Wを拡散しない様に加工し(拡散機構を除去)、
(2)ポンプ吐出管4と噴射管5を容器1の蓋2に貫通し、
(3)ホース8と噴射管5の出口部5Aを接続し、
(4)ホース先端8の近傍に湾曲部8Bを加工し、
(5)ホース先端8Aの内径を縮小する。
【0026】
ステップS11を構成する各加工工程のそれぞれを説明する。
ステップS11において、(1)の「噴射管5の出口部5Aの拡散機構を除去」するためには、例えば噴射管5の出口部5Aのネジ等の部材(拡散機構)を除去し、先端の尖った工具(例えばキリ)により噴射管5の出口部(5A)を貫通させればよい。噴射管5の出口部(5A)に拡散機構が設けられていない場合には、この加工は不要である。
ステップS11の(2)の「ポンプ吐出管4Aと噴射管5を容器1の蓋2に貫通」させるには、例えば、容器1の蓋2に、ポンプ吐出管4Aの外径と同一の貫通口と噴射管5の外径と同一の貫通口を穿孔し、当該2つの貫通口の各々を気密及び液密にするためのシール材を配置して、ポンプ吐出管4Aと噴射管5の各々を対応する貫通口に挿通する。そして、ポンプ吐出管4Aと噴射管5を容器1の蓋2に対して固定する。
ここで、市販品のポンプを使用した場合に、ポンプ吐出管4Aと噴射管5は容器2と一体に加工されていることがあり、その様な場合には、ポンプ吐出管4Aと噴射管5を容器2の蓋に貫通させる工程は不要である。
【0027】
図5において、ステップS11の(3)の「ホース8と噴射管5の出口部5Aを接続」するに際して、ホース8の内径と噴射管5の出口部5Aの外径が一致しない場合が多い。その様な場合、(噴射管5の出口部5Aと接続するべき)ホース8の端部を工具(例えばラジオペンチ)により拡径し、拡径したホース8の端部を噴射管5の出口部に被せて接続すれば良い。
ステップS11の(4)の「ホース先端8の近傍に湾曲部8Bを加工」するには、例えば、先ず湾曲部8Bを形成するべきホース8の領域に繊維(例えば「タコ糸」)を多数回巻き回して、タコ糸を巻き回した領域を所定の曲率半径に湾曲させた上、その状態で固定する。固定するに際しては、前記湾曲させた領域に接着剤(例えばエポキシ接着剤)塗布して固化させれば、所定の湾曲部8Bをホース8の所望の位置に形成することが出来る。
そして、ステップS11の(5)において「ホース先端8Aのホース内径を縮小」するには、例えばホース8がシリコン系材料や樹脂系材料の様な熱変形する材料で構成されている場合には、ホース8を加熱して引き延ばすことにより、ホース内径を縮小させることが出来る。或いは、ホース先端の内径を縮小することに代えて、所定の噴射口径のノズルを取り付けても良い。
【0028】
ステップS12では、容器1の蓋2を容器1に螺合することにより、容器1以外の箇所(ポンプ部3とホース8)を容器に組み付けることが出来る。
実施形態に係る携帯式おしり洗浄装置10の製造方法では、構成部品のそれぞれを自作して、図1に示す洗浄装置10を製造することが出来るが、ポンプ部3として、例えば家庭用霧吹き等 、市販品を改造して製造することも可能である。その様な改造して製造する場合には、図5のステップS11、ステップS12に示す様な簡便な方法で、洗浄装置10を製造することが出来る。
【0029】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば本発明は、健常者の用便後の肛門洗浄のみならず、病人や高齢者等の介護に適用することが可能である。ベッドの上でおむつを換える場合等において、おむつや吸水シート等に付着した便や汚物を、本発明を用いて所謂「ピンポイント」で清掃することが出来る。もちろん、要介護者の用便後の肛門洗浄にも用いることが出来る。
【符号の説明】
【0030】
1・・・容器
2・・・蓋部
3・・・ポンプ部
3A・・・ポンプ部の出口部
4・・・加圧用ポンプ
4A・・・ポンプ吐出管
5・・・噴射管
5A・・・噴射管の出口部
6・・・開閉弁
7・・・弁操作用ボタン
8・・・ホース
8A・・・ホース先端
8B・・・湾曲部
10・・・携帯式おしり洗浄装置
20・・・便器
U・・・使用者
UA・・・股間
UB・・・肛門
図1
図2
図3
図4
図5