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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027838
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】キャビン
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132995
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】523312901
【氏名又は名称】江頭 満正
(71)【出願人】
【識別番号】523313919
【氏名又は名称】株式会社オーダーワンホーム
(74)【代理人】
【識別番号】100134809
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 亮
(72)【発明者】
【氏名】江頭 満正
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AB24
2E139AC19
2E139AC61
(57)【要約】
【課題】津波などの水災害の発生時に人命救出を第1とした安全な空間を確保することが可能なフロート構造を有するキャビンなどを提供する。
【解決手段】キャビン10は、災害発生時に避難困難者の命を当該避難困難者自ら守ることを主目的としたシェルターであって、例えば、津波が襲来した場合に、浮き上がり自由浮遊可能な構造を有する一方で、基本的には日常的に使用可能な増築家屋であり、母屋に対する離れという位置付けの建築物としても機能し、台座100と、本体部200と、フロート部300と、おもり部400と、によって構成される。特に、キャビン10は、中央底部が全体の重心となるように、構成されており、45度の傾き(傾斜)が生じた場合であっても、転覆をしない構造を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害発生時に水面に浮上可能なフロート構造を有するキャビンであって、
台座と、
外殻に防水機能を有し、前記台座に固定されるとともに、フレーム構造及び中空構造によって室内空間が形成された本体部と、
前記台座上であって前記本体部の下部の周囲に形成され、前記災害発生時に所与の気体が注入されることによって膨張するフロート部と、
前記台座中央又は当該台座中央付近に当該台座に取り付けられたおもり部と、
を備え、
前記台座と前記フロート部によって得られる総浮力が、前記本体部及びおもり部を含む当該キャビンの総重量よりも大きいことを特徴とするキャビン。
【請求項2】
請求項1に記載のキャビンにおいて、
本体部がドーム形状である、キャビン。
【請求項3】
請求項1に記載のキャビンであって、
前記外殻の表面がディンプル形状によって形成されている、キャビン。
【請求項4】
請求項1に記載のキャビンであって、
前記台座の底面であって本体部が形成される面と反対の面に前記おもり部を収納する収納部を有し、
前記おもり部が、前記水面に浮上する際に、前記収納部に収納されている状態から下側に向かって突き出る状態に変化させる状態制御機構を備える、キャビン。
【請求項5】
請求項4に記載のキャビンであって、
前記おもり部が、
前記台座に取り付けられた支柱と、
前記台座に取り付けられる第1端部とは異なる第2端部に取り付けられたおもりと、を備える、キャビン。
【請求項6】
請求項1に記載のキャビンであって、
前記フロート部が、膨張する際に用いる気体が供給される気室が細分化された構成を有している、キャビン。
【請求項7】
請求項1に記載のキャビンであって、
前記本体部のフレームの外側の外郭が、防水材によって一体成型されて形成されている、キャビン。
【請求項8】
請求項1に記載のキャビンであって、
前記本体部には、前記室内空間に存在する避難者を外部に救出するためであって、喫水線より高い位置に形成された脱出口が形成されており、
災害発生時において水面に浮遊した場合に、前記脱出口が、室内空間側から開口可能で、かつ、外側から開口不能な形状によって形成されている、キャビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロート構造を有するキャビンなどに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は、世界でも有数の地震国である上、島国であることから、地震に伴って発生する津波による被害も少なくない。
【0003】
そして、2011年3月には東北地方太平洋沖地震及びこれに伴って発生した津波等(東日本大震災)により甚大な被害がもたらされており、最近では、津波に対する対策が重要視されるようになってきている。
【0004】
また、多くの地域で影響があるとされる南海トラフ大地震は、現時点から30年以内に70%~80%の確率で発生すると言われており、当該南海トラフ大地震における津波を含む減災対策が重要になってきている。
【0005】
このような状況下において、例えば、最近では、地震による津波発生時にフロートの浮上に関する作業を行うことなく、浮力により上方へと浮上させることができるフロート式建築物が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-136939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムなどであっては、建築物を上方に浮上させるだけであり、浮上可能な高さを超えて津波が発生した場合に当該津波を回避することはできない。
【0008】
また、特許文献1に記載のシステムは、建築物の動き回れる範囲が限定的であり、津波や洪水によって生じた瓦礫若しくは土砂、又は、津波後の火事の発生に巻き込まれる可能性もある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、例えば、津波などの水災害の発生時に人命救出を第1とした安全な空間を確保することが可能なフロート構造を有するキャビンなどである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明は、
災害発生時に水面に浮上可能なフロート構造を有するキャビンであって、
台座と、
外殻に防水機能を有し、前記台座に固定されるとともに、フレーム構造及び中空構造によって室内空間が形成された本体部と、
前記台座上であって前記本体部の下部の周囲に形成され、前記災害発生時に所与の気体が注入されることによって膨張するフロート部と、
前記台座中央又は当該台座中央付近に当該台座に取り付けられたおもり部と、
を備え、
前記台座と前記フロート部によって得られる総浮力が、前記本体部及びおもり部を含む当該キャビンの総重量よりも大きい、構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明は、例えば、津波などの水災害が発生した場合に浮力によって水面に浮かび、かつ、台座が地表その他の固定物に固定されていないため水面に浮上してその後自由に浮遊することができる。
【0012】
また、本発明は、台座中央又はその付近におもりを配置することによって低重心にすることができるので、浮遊中の転覆を防止することができるとともに、室内空間への浸水を防止することができる。
【0013】
したがって、本発明は、自宅などに設置すれば、災害が発生しても、室内の避難者を保護することができるとともに、人命救出を第1とした安全な空間を簡易に提供することができる。
【0014】
なお、「災害」には、基本的には、津波又は洪水などの水災害の他に、台風又は土砂災害などの災害が含まれる。
【0015】
また、「台座」とは、建築物的に地表などに載置される際には、いわゆる建築部の「基礎」としての構造部材的な役割を果たすとともに、災害時には浮力を得るための構造体として機能を有する部材を示す。
【0016】
特に、「台座」は、FRP(繊維強化プラスチック)などの浮力を得ることが可能な材質によって形成されていることが好ましいが、浮力を得ることができるのであれば、例えば、発砲スチロール及び木材などの他の材質によって形成されていてもよい。
【0017】
そして、「外殻に防水機能を有し」とは、少なくとも外壁(天井部分の外側も含む。)などの外側の雨水を含めて水と接触する面について防水機能を有していればよく、内壁まで防水機能を有していなくてもよいことを示す。ただし、破損などによって室内空間が浸水することも考慮すれば、壁全体(天井部分及び床部分も含み、内側部分も含む。)が防水機能を有していてもよい。
【0018】
さらに、「フレーム構造」とは、芯材としてフレームが形成されており、当該フレームを中心に壁、天井及び床などを形成する建材が形成されている構造を示す。特に、本体部分の形状は、フレーム構造であれば、特に限定されず、例えば、長方形などの矩形、円柱などの円形由来のる立体、又は、ドーム形状などであればよい。
【0019】
上記加えて、「本体部の下部の周囲に形成され」には、例えば、周囲全体に形成されていてもよいし、周囲全体ではなく、一定の間隔毎に形成されていてもよいことも含まれる。
【0020】
また、「災害発生時に所与の気体が注入されることによって膨張する」とは、平常時は気体が注入される気室が畳まれた状態であることを示し、「所与の気体」には、液化二酸化炭素(液化炭酸ガス)などが含まれる。
【0021】
また、「フロート部」は、数多くの気室から構成されていることが好ましく、例えば、複数の気室から構成され、気体の注入に関しては、避難者などの操作者の操作に基づいて気体が注入される手動式であってもよいし、水を検知して自動的に気体が注入される自動式であってもよい。
【0022】
(2)また、本発明は、
請求項1に記載のキャビンにおいて、
本体部がドーム形状である、構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明は、高い堅牢性を維持することができるので、土砂災害、台風、台風、雹又は竜巻などによって室内空間が破壊されるような環境下であっても、当該室内空間を維持し、室内の避難者を保護することができる。
【0024】
なお、「ドーム形状」とは、基本的には、屋根あるいはその一部として本体部分を覆う半球形または当該半球型に類似した台座上に凸状の形状を示す。
【0025】
(3)また、本発明は、
前記外殻の表面がディンプル形状によって形成されている、構成を有している。
【0026】
この構成により、本発明は、ディンプル形状によって本体部の表面に吹き付ける風の流れが当該表面から離れなくなり(剥離点の後退)、低圧部の領域が小さくなるため、本体部の表面に吹き付ける風の空気抵抗も減少させて受け流すことができるので、キャビンの転覆耐性を向上させることができる。
【0027】
(4)また、本発明は、
前記台座の底面であって本体部が形成される面と反対の面に前記おもり部を収納する収納部を有し、
前記おもり部が、前記水面に浮上する際に、前記収納部に収納されている状態から下側に向かって突き出る状態に変化させる状態制御機構を備える、構成を有している。
【0028】
この構成により、本発明は、平常時にはおもり部が台座に収納されるのでキャビン自体を地表に設置する際の障害を生じさせることなく、水面を浮遊する際のキャビンの転覆耐性を向上させることができる。
【0029】
(5)また、本発明は、
前記おもり部が、
前記台座に取り付けられた支柱と、
前記台座に取り付けられる第1端部とは異なる第2端部に取り付けられたおもりと、を備える、構成を有している。
【0030】
この構成により、本発明は、キャビンを低重心にすることができるので、キャビンの転覆耐性を向上させることができるとともに、例えば、おもりを、板形状、魚形状又は紡錘形状(魚雷形状)のように一方向に伸びる形状を有していれば、キャビンが浮遊中であっても、波に対しておもりの鉛直方向にキャビンの方向を制御することができるので、浮遊中の安定性を向上させることができる。
【0031】
(6)また、本発明は、
前記フロート部が、膨張する際に用いる気体が供給される気室が細分化された構成を有している、構成を有している。
【0032】
この構成により、本発明は、フロートの一部が損傷して膨張することができない場合であっても、他の気室で浮力を発生せてキャビンの浮遊を維持することができる。
【0033】
(7)また、本発明は、
前記本体部のフレームの外側の外郭が、防水材によって一体成型されて形成されている
、構成を有している。
【0034】
この構成により、本発明は、例えば、FRPなどの本体部の防水性を更に向上させることができる。
【0035】
(8)また、本発明は、
前記本体部には、前記室内空間に存在する避難者を外部に救出するためであって、喫水線より高い位置に形成された脱出口が形成されており、
災害発生時において水面に浮遊した場合に、前記脱出口が、室内空間側から開口可能で、かつ、外側から開口不能な形状によって形成されている、構成を有している。
【0036】
この構成により、本発明は、室内空間が浸水するなど、当該室内空間にそのまま留まることが難しくなった場合であっても、容易に外に脱出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一の実施形態における平常時のキャビンの外観構成図の一例である。
図2】一の実施形態における本実施形態の災害時のキャビンの外観構成図の一例である。
図3】一の実施形態における台座の側面図及び底面図である。
図4】一の実施形態の本体部のアルミフレームのみによって示されるフレーム構造図である。
図5】一の実施形態の外殻の一部の断面を示す断面図である。
図6】一の実施形態のおもり部の正面図及び側面図であって、おもり部が台座の底面内に格納されている場合の一例を示す図である。
図7】一の実施形態のおもり部の正面図及び側面図であって、おもり部が底面から突き出た場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0039】
なお、以下に説明する実施の形態は、いわゆる「離れ」と言われる住居と接続する小屋的な建築物に対して本願のキャビンを適用した場合の実施形態である。
【0040】
また、本実施形態の災害には、基本的には、津波又は洪水などの水災害が含まれるが、これらの他に、台風又は土砂災害などの災害が含まれてもよい。ただし、本実施形態のキャビンが災害時に有用なものであれば、これらの災害に限定されない。
【0041】
[1]キャビンの概要及び概要構成
まず、図1及び図2を用いて本実施形態のキャビン10の概要及びその概要構成について説明する。
【0042】
なお、図1は、本実施形態における平常時のキャビン10の外観構成図であり、図2は、本実施形態の災害時のキャビン10の外観構成図である。
【0043】
本実施形態のキャビン10は、災害発生時に避難困難者の命を当該避難困難者自ら守ることを主目的としたシェルターであって、例えば、津波が襲来した場合に、浮き上がり自由浮遊可能な構造を有している。
【0044】
また、本実施形態のキャビン10は、津波避難艇や、津波シェルターと異なり、平常時快適に生活出来る住空間を提供し、かつ、普及可能なコストによって提供可能な構成を有
している。
【0045】
一方、本実施形態のキャビン10は、基本的には日常的に使用可能な増築家屋であり、母屋に対する離れという位置付けの建築物としても機能する。
【0046】
このため、本実施形態のキャビン10は、地震や火災、水害などで母屋での生活が困難になった場合であっても、また、津波などによって長期的な浸水被害の最中に、滞在可能(避難可能)な機能を有している。
【0047】
具体的には、キャビン10は、図1及び図2に示すように、出入り口としての玄関(出入口用開閉部材)30及び喚起用若しくは日光を取り入れるための窓部40を備えるとともに、台座100と、本体部200と、フロート部300と、おもり部400と、によって構成される。
【0048】
特に、キャビン10は、中央底部が全体の重心となるように、構成されており、45度の傾き(傾斜)が生じた場合であっても、転覆をしない構造を有している。
【0049】
[2]台座
次に、上記の図1及び図2とともに、図3を用いて本実施形態の台座100について説明する。なお、図3は、本実施形態の台座100の側面図及び底面図である。
【0050】
台座100は、建築物的に地表などに載置される際には、いわゆる建築物の「基礎」としての構造部材的な役割を果たすとともに、災害時には浮力を得るための構造体として機能を有する部材によって形成されている。
【0051】
具体的には、台座100は、厚さ10mmのFRP(繊維強化プラスチック)によって一体的に形成されており、例えば、直径7mで高さ0.5mの円柱形状によって構成されている。
【0052】
また、図1図3に示すように、台座100の上面側に、当該台座100の上面の中心を基準に、本体部200が形成されている。
【0053】
そして、図1図3に示すように、台座100の上面側であって、本体部200が形成されていない周囲の部分120に、フロート部300を格納する格納部130が形成されている。
【0054】
例えば、格納部130は、台座100の上面から底面側に向かって当該台座の100の内部に形成されたボックスによって構成されていてもよいし、台座100の上面に収納ボックスとして形成されていてもよい。
【0055】
そして、格納部130は、蓋部を有していることが好ましく、台座100の内部に形成されたボックスによって形成されている場合は、台座100の上面が蓋部として機能させてもよい。
【0056】
特に、格納部130は、フロート部300がガス注入によって膨張を操作者の指示に基づいて実行する手動方式の場合には、その蓋が避難者の操作に基づいて開き、操作者の指示に代えて例えば台座100上で一定量の水を検出した場合には、その蓋が自動的に開く構成を有している。
【0057】
そして、格納部130は、フロート部300が自動方式の場合には、当該フロート部3
00への気体の注入と連動してその蓋が開く構成を有している。
【0058】
なお、この場合には、格納部130は、フロート部300の膨張する際に、当該膨張する力を用いてその蓋が開く構造を有していてもよいし、避難者のフロート部300に対する指示を受けたとき、又は、自動的に水を検知したときに、機械的に蓋が開く機構を有していてもよい。
【0059】
一方、図1図3に示すように、台座100の下面側(すなわち、平常時に地表に接する面であって、災害時に水と接する面)に、おもり部400を平常時に収納するおもり収納部140を有している。
【0060】
すなわち、キャビン10は、本実施形態の台座100の底面であって本体部200が形成される面と反対の面におもり部400を収納するおもり収納部140を有している。
【0061】
特に、おもり収納部140は、おもり部400を当該おもり部400の自重と載置された地表からの反発力によって上下可動可能に収納し、災害時(具体的には、水面に浮上した際)に、収納されているおもり部400が自重により下面側に突出させるための構成を有している。
【0062】
例えば、おもり収納部140は、底面側に開口した開口部141と、当該開口部141に下面が形成されている面方向にかつ開口部141を塞ぐ方向に延びて所定長の長さを有する突起部142と、から構成されている。
【0063】
また、おもり収納部140は、円形形状であってもよいし、矩形形状であってもよく、おもり部400が収納可能であって、災害時(具体て敵には、水面に浮上した際)に、収納されているおもり部400が自重により下面側に突出した場合であっても、おもり部400が当該おもり収納部140に留まる形状を有していればよい。
【0064】
なお、本実施形態の台座100は、FRPによって形成されていることが好ましいが、発砲スチロール又は木材などの浮力を得ることが可能な材質であって、建築物の基礎として用いることが可能な材質によって形成されていればよい。
【0065】
[3]本体部
次に、図4及び図5を用いて本実施形態の本体部200について説明する。
【0066】
なお、図4は、本実施形態の本体部200のアルミフレーム220のみによって示されるフレーム構造図であり、図5は、本実施形態の外殻210の一部の断面を示す断面図である。
【0067】
[3.1]概要
本体部200は、外殻に防水機能を有し、台座100にボルトなどによって固定されるとともに、フレーム構造及び中空構造によって室内空間を形成するための構成を有している。
【0068】
そして、本体部200は、台座100の上面側に、当該台座100の上面の円の中心を基準に、直径5mで高さ3mのドーム形状によって立体的に形成されている。
【0069】
すなわち、本体部200は、屋根あるいはその一部として本体部分を覆う半球形または当該半球型に類似した、台座100上に凸状の形状を有している。
【0070】
また、本体部200は、例えば、19m2(およそ10畳)の床面積を有し、通常の住居と同様の内装を施した家屋として形成され、かつ、外光の取入れ及び換気を行うための窓部40、エアコンなどの冷暖房設備、LED照明などの電気設備、及び、出入口となる玄関30も有している。
【0071】
[3.2]構造
本体部200は、防振、防火、防水及び耐荷重性能を維持するためアルミによるフレーム構造によって外殻210を構成して中空構造を形成する。
【0072】
特に、本体部200の外殻210は、図4に示すように、フレーム(すなわち、アルミフレーム)220の周囲に硬質な発泡型の断熱材を有している。
【0073】
すなわち、本体部200のアルミフレーム220の外側の外殻210が、防水材によって一体成型されて形成されている。
【0074】
そして、外殻210は、図5に示すように、当該アルミフレーム220を中心としてその外側に形成される外壁230と、その内側に形成される内壁240と、によって形成され、居室スペースのための空間を確保する構成を有している。
【0075】
アルミフレーム220は、本体部200がドーム形状となるように縦横に所定の間隔(例えば、縦方向に18cm間隔、横方向に90cm間隔)によって配置されている。
【0076】
すなわち、アルミフレーム220は、フレーム構造の芯材として形成されており、当該アルミフレーム220を中心に、外壁が形成されているとともに、内壁(天井及び床を含む。)を形成する建材が取り付けられている。
【0077】
外壁230は、例えば、樹脂によって水漏れのない一体成型されて形成されており、ドーム形状の天井部分を含み、外側の雨水を含めて水と接触する面について防水機能を有している。
【0078】
また、外壁230の外側表面には、図5に示すように、ディンプル加工が施されており、ディンプル形状の複数の凹部231が形成されている。
【0079】
すなわち、凹部231は、ディンプル形状によって本体部の表面に吹き付ける風の流れが当該表面から離れなくなり(剥離点の後退)、かつ、低圧部の領域が小さくなるため、本体部200の表面に吹き付ける風の空気抵抗も減少させて受け流すので、キャビン10の転覆耐性を向上させることができる。
【0080】
具体的には、各凹部231は、上記のように、空気抵抗を軽減するために設けられており、直径L(例えば、50mm~200mm程度)に対して10%の長さを有する最深部を有している。
【0081】
また、各凹部231は、図5に示すように、隣接する他の凹部231の中心点距離が直径に対して150%の長さを有している。
【0082】
そして、各凹部231の中心は、図5に示すように、隣接する第1の凹部231Aの中心と、隣接する第1の凹部213Aとは異なる第2の凹部213Bの中心とによって形成される間の角度が60度の位置となるように配置されている。
【0083】
なお、図5には、基準となる凹部213に対して、凹部213Aを基準に6つの凹部2
13B、213C、213D、213E、213F及び213Gが配置されている例を示す。
【0084】
内壁240は、室内側に所定の厚さ(例えば、9.5mm)の石膏ボード及びその表面に貼り付けられた難燃性の壁紙、又は、床材によって形成されている。
【0085】
なお、内壁240は、上述のように防水機能を有していないが、破損などによって浸水することも考慮すれば、壁全体(天井部分及び床部分も含み、内側部分も含む。)として、防水機能を有していてもよい。
【0086】
また、本体部200は、フレーム構造のドーム形状によって形成されているが、例えば、長方形などの矩形、又は、円柱などの円形由来のる立体構造によって形成されていてもよい。
【0087】
[3.3]脱出口
本体部200は、喫水線より上方となる位置に緊急の脱出口250が形成されていてもよい。
【0088】
すなわち、本体部200には、室内空間に存在する避難者を外部に救出するためであって、喫水線より高い位置に形成された脱出口250が形成されており、災害発生時において水面に浮遊した場合に、脱出口250が、室内空間側から開口可能で、かつ、外側から開口不能な形状によって形成されている。
【0089】
脱出口は、図1に示すように、アルミフレーム220が形成されていない領域であって、ディンプル加工の凹部213が形成されていない部分を境界として形成される。
【0090】
例えば、脱出口250は、室内側の開口が小さく、室外側の開口が大きい形状(例えば直径1m以上の円形状)であって、室内側から室外側に向かって力を加えた場合にのみ開口となる形状を有している。
【0091】
また、脱出口250は、外殻210の内側の領域が外側の領域より狭い領域となっており、内側から破壊しやすく、かつ、外側から破壊しにくい形状を有している。
【0092】
具体的には、脱出口250は、平常時には壁として機能するとともに、災害時であっても外側から力を加えても破壊されない一方、災害時において脱出しなければならない状況の場合には、内側から破壊しやすい構造を有している。
【0093】
すなわち、脱出口250は、切り目が予め形成されているなど、本体部200の所定の位置に形成された円形状又は矩形状に開口部であって、室内側から外側に向かって力を加えた場合に外れる構造を有し、かつ、外側から室内側に向かって力を加えた場合に室内空間の気密性が高まる構造を有している。
【0094】
なお、本実施形態の場合には、例えば、20kg程度の力を加えると脱出口とされる部分の外殻が破壊されて脱出が可能になっている。
【0095】
[3.4]出入口用開閉部材及び窓部材他
(出入口用開閉部材)
出入口用開閉部材(玄関)30は、図1及び図2に示すように、一般建材の玄関用扉であって、アルミフレーム220によって内開きに固定されている。
【0096】
また、出入口用開閉部材30の外壁面側には、水の侵入を防ぐために所定の高さを有する止水板242が形成されている。特に、止水板31は、想定される喫水線(以下、「想定喫水線」ともいう。)以上の高さを有することが好ましい。
【0097】
なお、想定喫水線とは、予め算出された総浮力と、キャビン10全体の総重量(最大最滞在人数に基づく最大重量を含む)と、に基づいて算出されたものである。
(窓部)
窓部40は、想定喫水線より上部に、アルミフレーム220によって固定されているとともに、一般建材によって形成されている。また、窓部40には、破損又は水の侵入を防ぐために雨戸(図示せず)が設けられている。
【0098】
[4]フロート部
次に、上記の図2を用いて、本実施形態のフロート部300について説明する。
【0099】
フロート部300は、図2に示されるように、台座100上であって本体部200の下部の周囲に形成され、災害発生時に所与の気体(例えば、液化二酸化炭素(液化炭酸ガス))が注入されることによって膨張する構成を有している。
【0100】
特に、フロート部300は、浮力を得るだけでなく、障害物および漂流物への耐性を高めるための緩衝材として用いられる。
【0101】
例えば、フロート部300は、外側には防弾チョッキなどに使用される強度の高いナイロンを使用し、本体部200フロート部分の破砕を防ぐための縫製に基づいて生成され、直径90cm程度の円柱形状によって構成されている。
【0102】
具体的には、フロート部300は、一部が破砕しても全体への影響を限定的にするため、複数の気室310から構成されており、各気室310は、他の気室310から独立して形成されている。
【0103】
すなわち、フロート部300は、膨張する際に用いる気体が供給される気室が細分化された構成を有している。
【0104】
また、フロート部300は、図2に示すように、平常時には気体が注入される気室が畳まれた状態になっており、その状態で台座100の上面に格納されている。
【0105】
そして、各気室には、室内に存在する避難者などの操作者の操作に基づいて所与の気体が注入されてもよいし(すなわち、手動式)、水を検知して自動的に気体が注入されてもよい(すなわち、自動式)。
【0106】
なお、気体は、ボンベなどのタンク(図示せず)によって台座100又は本体部200のいずれかに格納されており、タンクと各気室は、チューブ(図示しない)などによって接続されている。
【0107】
また、手動式によって各気室に気体を注入する場合には、本体部200内に設置されたスイッチ(図示せず)によって実行される。
【0108】
さらに、本実施形態では、フロート部300は、複数の気室によって本体部200の下部の周囲全体に形成されているが、周囲全体ではなく、一定の間隔毎に形成されていてもよい。
【0109】
[5]おもり部
次に、図6及び図7を用いて、本実施形態のおもり部400について説明する。
【0110】
なお、図6及び図7は、本実施形態のおもり部400の正面図及び側面図であって、おもり部400が台座100の底面内に格納されている場合の一例を示す図、又は、おもり部400が底面から突き出た場合の一例を示す図である。
【0111】
おもり部400は、全体の重心をより低くして転覆耐性を向上させるため、台座100の中央又は当該台座100の中央付近に当該台座100に取り付けられている。
【0112】
特に、おもり部400は、台座100の底面の中央に設けられたコの字型のボックスのおもり収納部140に平常時には収容され、災害時(特に水面に浮上した際)に台座100の底面から突き出る構成を有している。
【0113】
すなわち、おもり部400は、水面に浮上する際に、おもり収納部140に収納されている状態から下側に向かって突き出る状態に変化させる状態制御機構を備えている。
【0114】
具体的には、おもり部400は、図6及び図7に示すように、おもり収納部140の開口の大きさよりも大きいサイズを有するベース410と、当該ベース410を土台として接合されている複数の支柱420と、各支柱420においてベース410が接合された端部(以下、「第1端部」という。)とは異なる端部(以下、「第2端部」という。)にそれぞれ接合されたおもり430と、を有している。
【0115】
すなわち、おもり部400は、台座100に取り付けられた支柱420と、当該台座100に取り付けられる第1端部とは異なる第2端部に取り付けられたおもり430と、備えている。
【0116】
したがって、本実施形態では、キャビン10を低重心にし、キャビン10の転覆耐性を向上させつつ、キャビンが浮遊中であっても、波に対しておもりの鉛直方向にキャビンの方向を制御すること、及び、その結果、浮遊中の安定性を向上させることができるようになっている。
【0117】
ベース410の材質、大きさ、及び、厚さなどは、複数の支柱420を接合し、かつ、おもり収納部140の開口の大きさよりも大きいサイズであれば、限定されない。
【0118】
各支柱420は、等間隔で配置され、おもり収納部140の上下方向(おもり部400が可動する方向)であって台座100の上面とは垂直となる垂直方向の長さよりも短い長さを有し、先端である第2端部にそれぞれおもり420が接合されている。
【0119】
また、各支柱420は、棒形状で伸縮自在の形状であってもよし、折り畳み可能な形状であってもよい。
【0120】
特に、各支柱420は、災害時に台座100の底面から突き出た場合であっても、伸縮可能な構造を有しており、おもり430に地面(海底)又は障害物に衝突した場合であっても、ダメージを受けにくい構造を有している。ただし、各支柱420は、災害時に台座100の底面から突き出た場合には、突き出た部分が再度収納されないようなロック機構を有していてもよい。
【0121】
各おもり430は、キャビン10の回転耐性を向上させるため、板形状、魚形状又は紡
錘形状(魚雷形状)のように一方向に伸びる形状を有しており、キャビン10が浮遊中であっても、波や水の流れが発生する方向に対して鉛直方向にキャビンの方向を制御するための形状を有している。
【0122】
なお、図6及び図7には、紡錘型の3つのおもり430が、支柱420の先端に取り付けられており、並行に、かつ、等間隔で配置されている例が示されている。
【0123】
また、本実施形態のおもり430は、それぞれ200kgの重さを有し、全体で600kgの重さを有している。
【0124】
[6]係留他
【0125】
(係留ロープ及び係留リング)
キャビン10は、係留設備を有し、災害時であっても、状況に応じて自由浮遊を封じる構成を有していてもよい。
【0126】
具体的には、キャビン10は、係留設備としては、地表又は他の建築物(図示しない)などに一端が固定された係留ロープと、当該係留ロープの他端が結びつけられた係留リングと、を有している。
【0127】
係留リングは、台座100のいずれかの場所に固定設置されており、避難者の指示又は操作によって、例えば、ワイヤなどによってピンなどを抜くことによって係留リングそのものを外させ、係留ロープと繋がれた部分が解消される構成を有している。
【0128】
(収納部)
キャビン10の床下には、所定のスペースが形成されていてもよい。例えば、当該スペースには、災害時に用いられる非常用バッテリ(例えば、3日間程持つ容量)の他に、食料及び衣料品などの数日間の避難生活を送る上で必要なものが収納される。
【0129】
(放射性物質遮断構造)
本体部200の外殻の内側には、鉛板などの鉄板が組み込まれていてもよい。特に、アルミフレーム220の室内側に放射性物質を遮断するために、鉛板があることが好ましい。
【0130】
[7]総重量と浮力
次に、本実施形態のキャビン10における総重量及び浮力との関係について説明する。
【0131】
本実施形態のキャビン10は、台座100とフロート部300によって得られる総浮力が、本体部200及びおもり部400を含む当該キャビン10の総重量よりも大きい、構成を有している。
【0132】
具体的には、本実施形態のキャビン10は、全体で700kg(おもり部400で600kgの重さを含む。)の重さを有している。
【0133】
その一方、上述のように、台座100を厚さ10mmのFRPの中空構造とした場合であって、台座100の外形7m、本体部200の外形が5m、台座100の高さを0.5mとすると、中空浮力が12,560kgである。
【0134】
また、フロート部300の中空部分浮力が5,722kgで、フロート部300の破損がなければ、キャビン10全体での浮力は約18、000kgとなる。
【0135】
したがって、総浮力の方が十分大きくなるので、キャビン10は、災害時においては水面に浮上可能となっている。
【0136】
[8]その他
本発明は、上記実施形態で説明したものに限らず、種々の変形実施が可能である。例えば、明細書又は図面中の記載において広義や同義な用語として引用された用語は、明細書又は図面中の他の記載においても広義や同義な用語に置き換えることができる。
【0137】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0138】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0139】
30 :出入口用開閉部材
31 :止水板
40 :窓部
100 :台座
120 :部分
130 :格納部
140 :収納部
141 :開口部
142 :突起部
200 :本体部
210 :外殻
213 :凹部
220 :アルミフレーム
230 :外壁
240 :内壁
242 :止水板
250 :脱出口
300 :フロート部
310 :気室
400 :部
410 :ベース
420 :支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7