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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003005
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】光スイッチ及び光スイッチの運用方法
(51)【国際特許分類】
   H10F 55/00 20250101AFI20241226BHJP
   H10F 30/00 20250101ALI20241226BHJP
【FI】
H01L31/12 F
H01L31/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103432
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰介
【テーマコード(参考)】
5F149
5F889
【Fターム(参考)】
5F149AA17
5F149AB02
5F149AB07
5F149FA04
5F149FA05
5F149KA20
5F149LA01
5F149LA02
5F149LA03
5F149XB01
5F149XB32
5F889AB20
5F889AC04
5F889AC30
5F889CA21
5F889FA10
(57)【要約】
【課題】光スイッチの閉への切替えを高電圧の印加電圧で実現できると共に、光スイッチから高電圧のスイッチ信号を発生できること。
【解決手段】半導体基板11と、半導体基板に設置された一対の電極12A、12Bと、電極間に電圧を印加するパルス電源13と、トリガー光1を発生するトリガー光源14とを有し、半導体基板は、半絶縁性半導体から構成されると共に、トリガー光を内部に導入させるトリガー光導入面16を備え、電極に対応する内部には、トリガー光の通過によりキャリアが生成されて電気抵抗値が低下するキャリア生成領域17が設けられた光スイッチ10において、電極に印加された印加電圧を測定する電圧測定手段15Mと、電圧測定手段にて測定された印加電圧のピークを検知し、このピークのタイミングでトリガー光源14に、トリガー光1を発生させるためのトリガー信号2を出力する電圧ピーク検知手段15Nと、を更に有するものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、この半導体基板に設置されて対をなす電極と、この電極に接続されて前記電極間に電圧を印加する電源と、トリガー光を発生するトリガー光源と、を有し、
前記半導体基板は、半絶縁性半導体から構成されると共に、一側面に前記トリガー光を内部に導入させるトリガー光導入面を備え、対をなす前記電極に対応する内部には、前記トリガー光の通過によりキャリアが生成されて電気抵抗値が低下するキャリア生成領域が設けられた光スイッチにおいて、
前記電極に印加された印加電圧がピークまたはピーク付近になるタイミングで前記トリガー光源に、前記トリガー光を発生させるためのトリガー信号を出力するトリガー信号出力手段を、更に有して構成されたことを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
前記トリガー信号出力手段は、電源から電極に印加された印加電圧を測定する電圧測定手段と、この電圧測定手段にて測定された前記印加電圧のピークを検知し、このピークのタイミングでトリガー光源にトリガー信号を出力する電圧ピーク検知手段と、を有して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記電源は、正または負のパルス電圧を発生するパルス電源であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項4】
前記パルス電源により発生するパルス電圧の立上り時間が、1ms以下に設定されたことを特徴とする請求項3に記載の光スイッチ。
【請求項5】
前記電源は、正弦波電圧を発生する正弦波電源、または修正正弦波電圧を発生する修正正弦波電源あることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項6】
前記正弦波電源が発生する正弦波電圧、または前記修正正弦波電源が発生する修正正弦波電圧のそれぞれの周波数が、250Hz以上に設定されたことを特徴とする請求項5に記載の光スイッチ。
【請求項7】
前記パルス電源は、パルス電圧を発生していない状態で、前記パルス電圧よりも低い一定のバイアス電圧を出力するよう構成された請求項3に記載の光スイッチ。
【請求項8】
前記正弦波電源は、正もしくは負のバイアス電圧を有する正弦波電源を出力し、また、前記修正正弦波電源は、正もしくは負のバイアス電圧を有する修正正弦波電圧を出力するよう構成されたことを特徴とする請求項5に記載の光スイッチ。
【請求項9】
前記トリガー信号出力手段は、電源から電極に印加された印加電圧を測定する電圧測定手段と、この電圧測定手段にて測定された前記印加電圧のピークを検知し、このピークを検知してから所定の遅延時間を経過したタイミングで、トリガー光源にトリガー信号を出力する電圧ピーク検知手段と、を有して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項10】
前記トリガー信号出力手段は、パルス電源から電極に印加された印加電圧を測定する電圧測定手段と、この電圧測定手段にて測定された前記印加電圧を微分して微分信号を生成する微分回路とを有し、
前記パルス電源は、パルス電圧の印加開始時から所定時間経過後に任意の時間幅のゲート信号を前記微分回路に出力し、
前記微分回路は、前記ゲート信号の受信中に、前記微分信号が最初に任意の電圧になったタイミングでトリガー光源にトリガー信号を出力するよう構成されたことを特徴とする請求項3に記載の光スイッチ。
【請求項11】
前記トリガー信号出力手段は、正弦波電源からの正弦波電圧の波形信号または修正正弦波電源からの修正正弦波電圧の波形信号を入力し、これらの正弦波電圧または修正正弦波電圧が任意の立上り電圧もしくは立下り電圧になったタイミングで、トリガー光源にトリガー信号を出力するトリガー回路を有して構成されたことを特徴とする請求項5に記載の光スイッチ。
【請求項12】
前記トリガー信号出力手段は、正弦波電源からの正弦波電圧の波形信号または修正正弦波電源からの修正正弦波電圧の波形信号を入力し、これらの正弦波電圧または修正正弦波電圧に所定の時間的遅延を与える遅延回路と、この遅延回路からの遅延後の正弦波電圧または遅延後の修正正弦波電圧を入力し、これらの遅延後の正弦波電圧または遅延後の修正正弦波電圧が任意の立上り電圧もしくは立下り電圧になったタイミングで、トリガー光源にトリガー信号を出力するトリガー回路と、有して構成されたことを特徴とする請求項5に記載の光スイッチ。
【請求項13】
半導体基板と、この半導体基板に設置されて対をなす電極と、この電極に接続されて前記電極間に電圧を印加する電源と、トリガー光を発生するトリガー光源と、を有し、
前記半導体基板は、半絶縁性半導体から構成されると共に、一側面に前記トリガー光を内部に導入させるトリガー光導入面を備え、対をなす前記電極に対応する内部には、前記トリガー光の通過によりキャリアが生成されて電気抵抗値が低下するキャリア生成領域が設けられた光スイッチの運用方法において、
前記電極に印加された印加電圧がピークまたはピーク付近になるタイミングで、トリガー信号出力手段が前記トリガー光源に、前記トリガー光を発生させるためのトリガー信号を出力することを特徴とする光スイッチの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光を用いて回路を開閉する光スイッチ、及び光スイッチの運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号ではなく光によって回路を開閉する光スイッチは、電気制御よりも高速な応答、ノイズ対策、電気的なアイソレーション等、様々な用法に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-209269号公報
【特許文献2】特開2005-191074号公報
【特許文献3】実開昭58-166627号公報
【特許文献4】特開平7-22603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、半絶縁性半導体に、そのバンドギャップ波長よりも短い波長の光を入射すると価電子帯の電子が伝導帯に励起され、キャリアが注入されて電気抵抗値が低下する光伝導効果を使用した光スイッチが開示されている。この光スイッチは、高速なパルスレーザー光等をトリガー光として使用することで、電気信号制御の通常のスイッチング素子よりも高速な閉操作を行うことができ、また、半絶縁性半導体にて構成される基板の耐圧が高いことから高電圧化も可能である。
【0005】
図14は、従来の典型的な光スイッチの構成である。光スイッチ100は1対の電極101が、半導体基板102に設置された構造を有する。半導体基板102は半絶縁性半導体にて構成され、一対の電極101に挟まれた領域には、光により励起されることで半導体基板102の価電子帯の電子が伝導帯に励起されてキャリアが生成され、電気抵抗値が低下するキャリア生成領域103が設けられる。更に、半導体基板102には、トリガー光104がトリガー光導入面105を介して入射する。光スイッチ100は、通常状態では絶縁体であるが、半導体基板102のバンドギャップ波長に対応した波長の光がキャリア生成領域105に吸収されることでキャリアが生成され、電源106からの電流が電極101間に流れるようになる。
【0006】
一方、半導体基板102の半絶縁性半導体は、理想的には絶縁体としてふるまうものの、実際には高電場に起因して電気抵抗値が低下してしまう。このため、光スイッチ100では、光スイッチ100に接続された負荷107との分圧により、電極101に印加される印加電圧も低下し、光スイッチ100の切替時の電圧、及び光スイッチ100で発生されるスイッチ信号の電圧が制限されてしまう。つまり、光伝導を利用し電気信号を制御する光スイッチ100では、電極101への印加電圧が大きくなると、半導体基板102の電気抵抗値が低下し、負荷107との分圧により電極101への印加電圧も低下してしまう課題がある。
【0007】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、光スイッチの閉への切替えを高電圧の印加電圧で実現できると共に、光スイッチから高電圧のスイッチ信号を発生することができる光スイッチ及び光スイッチの運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態における光スイッチは、半導体基板と、この半導体基板に設置されて対をなす電極と、この電極に接続されて前記電極間に電圧を印加する電源と、トリガー光を発生するトリガー光源と、を有し、前記半導体基板は、半絶縁性半導体から構成されると共に、一側面に前記トリガー光を内部に導入させるトリガー光導入面を備え、対をなす前記電極に対応する内部には、前記トリガー光の通過によりキャリアが生成されて電気抵抗値が低下するキャリア生成領域が設けられた光スイッチにおいて、前記電極に印加された印加電圧がピークまたはピーク付近になるタイミングで前記トリガー光源に、前記トリガー光を発生させるためのトリガー信号を出力するトリガー信号出力手段を、更に有して構成されたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の実施形態における光スイッチの運用方法は、半導体基板と、この半導体基板に設置されて対をなす電極と、この電極に接続されて前記電極間に電圧を印加する電源と、トリガー光を発生するトリガー光源と、を有し、前記半導体基板は、半絶縁性半導体から構成されると共に、一側面に前記トリガー光を内部に導入させるトリガー光導入面を備え、対をなす前記電極に対応する内部には、前記トリガー光の通過によりキャリアが生成されて電気抵抗値が低下するキャリア生成領域が設けられた光スイッチの運用方法において、前記電極に印加された印加電圧がピークまたはピーク付近になるタイミングで、トリガー信号出力手段が前記トリガー光源に、前記トリガー光を発生させるためのトリガー信号を出力することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、光スイッチの閉への切替えを高電圧の印加電圧で実現できると共に、光スイッチから高電圧のスイッチ信号を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る光スイッチを示す平面図。
図2図1のII-II線に沿う断面図を含むブロック図。
図3図1及び図2の電極への印加電圧等を示すグラフ。
図4図1及び図2に示す光スイッチにおけるタイミングチャート。
図5】第2実施形態に係る光スイッチを示すブロック図。
図6図5に示す光スイッチにおけるタイミングチャート。
図7】第4実施形態に係る光スイッチにおけるタイミングチャート。
図8】第5実施形態に係る光スイッチを示すブロック図。
図9図8に示す光スイッチにおけるタイミングチャート。
図10】第6実施形態に係る光スイッチを示すブロック図。
図11図10に示す光スイッチにおけるタイミングチャート。
図12】第7実施形態に係る光スイッチを示すブロック図。
図13図12に示す光スイッチにおけるタイミングチャート。
図14】従来の光スイッチを示し、(A)がその平面図、(B)が図14(A)のXIVB-XIVB線に沿う断面図を含むブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1図4
図1は、第1実施形態に係る光スイッチを示す平面図である。また、図2は、図1のII-II線に沿う断面図を含むブロック図である。
【0013】
これらの図1及び図2に示す光スイッチ10は、光(トリガー光1)を用いて回路を開閉させるスイッチであり、半導体基板11と、この半導体基板11の表面、裏面にそれぞれ設置されて対をなす一対または複数対(例えば一対)の電極12A、12Bと、これらの電極12A、12Bに接続されてこれらの電極12A、12B間にパルス電圧を印加電圧として印加させるパルス電源13と、トリガー光1を発生するトリガー光源14と、このトリガー光源14にトリガー光1を発生させるためのトリガー信号2を出力するトリガー信号出力手段15と、を有して構成される。
【0014】
電極12A、12Bは、Au、Ni、Cr、Ti、Mo、W、Al、Ag、Cu、Pd、Pt、またはITO(Indium-Tin Oxide)等の電気的な導体にて構成される。また、電極12A及び12Bは、上記各導体が積層されて構成されてもよい。更に、電極12A、12Bの寸法は、直径がΦ0.5mm~Φ20mm、または一辺が0.5mm~20mmの角型が好ましい。電極12A、12Bの厚さは、10nm~1μmが好ましい。
【0015】
半導体基板11は、Si、GaAs、4H-SiC、6H-SiC、GaNまたはダイヤモンドなどの半絶縁性半導体にて構成される。半導体基板11の寸法は、一辺が1mm~50mm、厚さが0.1mm~10mmが好ましい。この半導体基板11は、トリガー光導入面16及びキャリア生成領域17を有する。なお、キャリア生成領域17は、半導体基板11の表面に露出して形成されてもよい。
【0016】
トリガー光導入面16は、半導体基板11の一側面に形成されて、トリガー光1を半導体基板11の内部に導入させる。また、キャリア生成領域17は、半導体基板11における一対の電極12A、12Bに対応する内部、即ち、半導体基板11の内部において電極12Aと12Bに挟まれた領域に設けられる。このキャリア生成領域17は、トリガー光1の通過により価電子帯の電子が伝導帯に励起されてキャリアが生成され、電気抵抗値が低下する。キャリア生成領域17が半導体基板11の表面に露出して形成されている場合には、トリガー光1はトリガー光導入面16を介さずに、直にキャリア生成領域17に照射されてもよい。
【0017】
光スイッチ10は通常状態では電気的に絶縁状態である。ところが、半導体基板11のバンドギャップ波長に対応した波長のトリガー光1がキャリア生成領域17に吸収されることでキャリアが生成され、光スイッチ10が閉動作して、電極12A、12B間に電流が流れる。
【0018】
パルス電源13は、光スイッチ10の電極12A、12Bに、負荷18を介して接続される。パルス電源13が発生するパルス電圧は、正でも負でもよく、その波形形状はガウシアンライクでも矩形でも自由波形でもよい。また、パルス電圧の立上り時間は例えば1msに設定される。パルス電源13により一対の電極12A、12B間に印加された印加電圧により、光スイッチ10が閉動作された際には半導体基板11を経由して電極12A、12B間に電流が流れる。
【0019】
トリガー光源14で発生したトリガー光1は、前述の如く、半導体基板11のトリガー光導入面16から入射し、キャリア生成領域17を通過する。このトリガー光1は、パルスレーザー光を含むレーザー光が好ましい。更に、このトリガー光1は、半導体基板11を構成する半絶縁性半導体のバンドギャップ波長の1倍よりも長く且つ2倍以下の波長に設定される。
【0020】
例えば、半導体基板11を構成するSi、GaAs、SiC、GaN、ダイヤモンドのバンドギャップ波長は、それぞれ1117nm、867nm、384nm、364nm、226nmである。従って、トリガー光1としてのレーザー光は、半導体基板11がSiにて構成される場合にはEr:YAGレーザーが好ましく、半導体基板11がGaAsにて構成される場合には、Er:YAGレーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーが好ましく、半導体基板11がSiC、GaNにて構成される場合には、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーのそれぞれの第二高調波が好ましく、半導体基板11がダイヤモンドにて構成される場合にはNd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーのそれぞれの第三高調波等が好ましい。また、トリガー光1はフラッシュランプによる光、それぞれの波長に対応した半導体レーザー、または発光ダイオード等による光であってもよい。
【0021】
更に、トリガー光1は、半導体基板11を構成する半絶縁性半導体のバンドギャップ以下の波長に設定されていてもよい。この場合、トリガー光1としてのレーザー光は、半導体基板11がSiにて構成される場合にはNd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーが好ましく、半導体基板11がGaAsにて構成される場合には、Er:YAGレーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーのそれぞれの第二高調波が好ましく、半導体基板11がSiC、GaNにて構成される場合には、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーのそれぞれの第三高調波が好ましく、半導体基板11がダイヤモンドにて構成される場合にはArFエキシマレーザが好ましい。また、トリガー光1はフラッシュランプによる光、それぞれの波長に対応した半導体レーザー、または発光ダイオード等による光であってもよい。
【0022】
また、トリガー光1は、半導体基板11を構成する半絶縁性半導体のバンドギャップ波長の2倍よりも長く且つ3倍以下の波長に設定されてもよい。例えば、トリガー光1としてのレーザー光は、半導体基板11がSiC、GaNにて構成される場合には、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーが好ましく、半導体基板11がダイヤモンドにて構成される場合には、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーのそれぞれの第二高調波等が好ましい。この場合も、トリガー光1はフラッシュランプによる光、それぞれの波長に対応した半導体レーザー、または発光ダイオード等による光であってもよい。
【0023】
トリガー信号出力手段15は、電極12A、12Bに印加された印加電圧がピークになるタイミングでトリガー光源14に、トリガー光1を発生させるためのトリガー信号2を出力するものであり、電圧測定手段15M及び電圧ピーク検知手段15Nを有して構成される。電圧測定手段15Mは、パルス電源13から電極12A、12Bに印加された印加電圧を測定するものであり、電圧プローブ、高圧プローブ、絶縁プローブ等が好ましい。また、電圧ピーク検知手段15Nは、電圧測定手段15Mに接続され、この電圧測定手段15Mにて測定された印加電圧のピークを検知し、このピークを検知したタイミングでトリガー光源14にトリガー信号2を出力する。この電圧ピーク検知手段15Nは、例えば微分回路等が用いられる。
【0024】
ここで、パルス電源13によるパルス電圧(パルス電源設定電圧)が十分に高く、且つその立上り速度が十分速い(例えば立上り時間が1ms以下)場合に、電極12A、12Bに印加される印加電圧の例を図3に示す。この図3においては、パルス電源13によるパルス電圧は矩形波であるのに対し、実際に電極12A、12Bに印加される印加電圧は、パルス電源13によるパルス電圧と異なり、ピークが生じる。
【0025】
これは、半導体基板11の電気抵抗値低下の応答時間が例えば50μs~1ms程度と遅いことに起因する。このため、パルス電源13から供給されるパルス電圧の立上り時間が、半導体基板11の電気抵抗値低下の応答時間と同程度かより短時間(例えば1ms以下)である場合、電極12A、12Bに電圧印加が開始された直後では、半導体基板11の電気抵抗値の低下が有意にはならず、その短時間の間に、半導体基板11と負荷18の分圧が抑えられて電極12A、12Bへの印加電圧が上昇する。そして、更に時間が経過すると、半導体基板11の電気抵抗値の低下が有意になり、電極12A、12Bに印加された印加電圧にピークが生じ、その後、電極12A、12Bへの印加電圧は一定の電圧値まで低下する。
【0026】
パルス電源13によるパルス電圧の立上り時間が1ms以下と十分に短時間で且つパルス電圧が十分高い場合に、パルス電圧の印加からスイッチ信号3の発生までのタイミングチャートを図4に示す。この場合、前述のとおり、実際に電極12A、12Bに印加される印加電圧は、パルス電源13のパルス電源設定電圧に近い値でピークになった後、半導体基板11の電気抵抗値低下の応答時間(50μs~1ms)をかけて一定値まで低下する。電圧測定手段15Mは、この電極12A、12Bへの印加電圧を測定し、その測定電圧を電圧ピーク検知手段15Nに送信する。電圧ピーク検知手段15Nは、印加電圧がピークになったタイミングでトリガー信号2をトリガー光源14に出力し、このトリガー光源14がトリガー光1を発生する。
【0027】
次に、上述のように構成された光スイッチ10の動作を、図2及び図4を用いて説明する。
通常状態では、光スイッチ10は開状態である。パルス電源13により一対の電極12A、12B間にパルス電圧が印加されると、この印加電圧が電圧測定手段15Mにより測定されて電圧ピーク検知手段15Nに送信される。電圧ピーク検知手段15Nは、電圧測定手段15Mにて測定された印加電圧のピークを検知し、このピークのタイミングでトリガー光源14にトリガー信号2を出力する。これにより、トリガー光源14からトリガー光1が発生して半導体基板11へ照射される。
【0028】
このトリガー光1は、半導体基板11のトリガー光導入面16を経由して半導体基板11のキャリア生成領域17で吸収され、このキャリア生成領域17にキャリアが生成される。これにより、キャリア生成領域17の電気抵抗値が低下して、光スイッチ10が閉動作する。即ち、光スイッチ10は、電極12A、12Bへの印加電圧がピークの値で閉動作し、そのピーク電圧をスイッチ信号3として負荷18に出力する。
【0029】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)電圧測定手段15Mにより電極12A、12Bに印加された印加電圧が測定され、電圧ピーク検知手段15Nが、この測定された印加電圧がピークになるタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力する。これにより、トリガー光源14から半導体基板11にトリガー光1が導入され、半導体基板11のキャリア生成領域17の電気抵抗値が低下して、光スイッチ10が閉に切り替わり、光スイッチ10がスイッチ信号3を発生する。この結果、光スイッチ10の閉への切替を印加電圧のピークの高電圧で実現できると共に、光スイッチ10から高電圧のスイッチ信号3を発生することができる。
【0030】
[B]第2実施形態(図5図6
図5は、第2実施形態に係る光スイッチを示すブロック図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0031】
本第2実施形態の光スイッチ20が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態のパルス電源13に代えて、正弦波電圧(図6の正弦波電源設定電圧)を発生する正弦波電源21が設置された点である。この正弦波電源21は、純粋な正弦波電圧を発生させる電源であるが、例えば階段形状の修正正弦波電圧を発生させる修正正弦波電源であってもよい。
【0032】
正弦波電源21により、正弦波電圧が電極12A、12Bに印加される。ここで、第1実施形態と同様に、半導体基板11の電気抵抗値は正弦波電圧に応じて低下し、負荷18との分圧で、電極12A、12Bに印加される印加電圧も低下する。一方、正弦波電圧の出力周波数が十分に高い場合、半導体基板11の電気抵抗値の低下が有意になる前に印加電圧が電極12A、12Bに印加されるため、電極12A、12Bへの印加電圧は、第1実施形態と同様に、図6に示すように、正弦波電源21のピークとは異なる位置にピークが生じることになる。この際、正弦波電圧の周波数は、その立上り時間が半導体基板11の電気抵抗値低下の応答時間(50μs~1ms)と同等かより短時間である必要があり、例えば250Hz以上である。
【0033】
第1実施形態と同様に、電圧測定手段15Mは、電極12A、12Bに印加された印加電圧を測定し、その測定電圧を電圧ピーク検知手段15Nへ送信する。電圧ピーク検知手段15Nは、図6に示すように、印加電圧がピークとなったタイミングでトリガー信号2をトリガー光源14に出力し、トリガー信号2を受信したトリガー光源14がトリガー光1を発生させる。トリガー光1は、半導体基板11のトリガー光導入面16を経由してキャリア生成領域17で吸収され、このキャリア生成領域17にキャリアが生成される。これにより、キャリア生成領域17の電気抵抗値が低下して、光スイッチ20が閉動作する。
【0034】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても、電極12A、12Bに印加された印加電圧がピークになるタイミングで光スイッチ20が閉動作されるので、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏する。
【0035】
[C]第3実施形態(図2図3図5
この第3実施形態において第1及ぶ図2実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を用いることにより説明を簡略化し、または省略する。
【0036】
本第3実施形態の光スイッチ30(図2)が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態のパルス電源13に代えて、パルス電源31が設置された点である。このパルス電源31は、パルス電圧を発生していない状態で、パルス電圧と同一の極性で且つパルス電圧よりも低い0Vでない一定電圧のバイアス電圧(図3)を常に出力する。
【0037】
また、本第3実施形態の光スイッチ30は、第2実施形態の正弦波電源21(図5)に代えて、正もしくは負のバイアス電圧を有する正弦波電圧を出力する正弦波電源32が設置されてもよい。なお、この正弦波電源32は、正もしくは負のバイアス電圧を有する修正正弦波電圧を出力する修正正弦波電源であってもよい。但し、本第3実施形態の以下の説明では、パルス電源31(図2)について説明する。
【0038】
上述のように、パルス電源31は常に、正又は負のバイアス電圧を出力している。このバイアス電圧は、光スイッチ30の電極12A、12Bに実際に印加される印加電圧よりも低く、トリガー光1が照射されていない状態で生じる半導体基板11の電気抵抗値の低下が有意に発生しない電圧、例えば電極12A、12B間の平均電場が5MV/m以下になる印加電圧である。
【0039】
通常状態では、光スイッチ30が開状態であり、また、電極12A、12Bに印加された印加電圧がバイアス電圧であるため、半導体基板11の電気抵抗値は十分高く、半導体基板11と負荷18との分圧による電極12A、12Bへの印加電圧の低下は有意には発生しない。
【0040】
パルス電源31がパルス電圧を出力したとき、このパルス電圧は、予め出力していたバイアス電圧と同一極性で、且つ半導体基板11の電気抵抗値低下の応答時間と同等かより短時間(例えば1ms以下)の立上り時間である。従って、このパルス電圧によって、電極12A、12Bに印加される印加電圧は、半導体基板11に電気抵抗値低下を引き起こす電圧よりも大きくなるが、最初は、電気抵抗値低下の応答時間よりも印加電圧の立上り時間が短時間であるため、半導体基板11に電気抵抗値の低下は有意に生じない。徐々に時間が経過すると、半導体基板11に電気抵抗値低下の影響が有意に生じ、電極12A、12Bに印加された印加電圧にピークが生じて、最終的には特定の一定電圧値まで低下する。
【0041】
本第3実施形態においても、電圧測定手段15Mは電極12A、12Bへの印加電圧を測定し、この測定電圧を電圧ピーク検知手段15Nへ送信する。電圧ピーク検知手段15Nは、印加電圧がピークになったタイミングで、トリガー信号2をトリガー光源14に出力し、このトリガー光源14がトリガー光1を発生する。トリガー光1は、半導体基板11のトリガー光導入面16を経由して半導体基板11のキャリア生成領域17で吸収され、このキャリア生成領域17にキャリアが生成される。これにより、キャリア生成領域17の電気抵抗値が低下して、光スイッチ30が閉動作する。
【0042】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(2)を奏する。
(2)パルス電源31は、パルス電圧を発生していない状態では、パルス電圧と同一極性で且つパルス電圧よりも低いバイアス電圧を常に出力していることから、パルス電圧の発生時に、そのパルス電圧の立上り動作を迅速に実施することができる。
【0043】
[D]第4実施形態(図2図7
図7は、第4実施形態に係る光スイッチにおけるタイミングチャートである。この第4実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0044】
本第4実施形態の光スイッチ40(図2)が第1実施形態と異なる点は、電圧ピーク検知手段41を有す点である。この電圧ピーク検知手段41は、電圧測定手段15Mにて測定された電極12A、12Bへの印加電圧のピークを検知し、このピーク付近のタイミング(つまり、図7に示すように、上記ピークを検知してから所定の遅延時間を経過したタイミング)で、トリガー光源14にトリガー信号2を出力する。ここで、上述の電圧測定手段15M及び電圧ピーク検知手段41がトリガー信号出力手段42を構成する。
【0045】
上述のように電圧ピーク検知手段41が、電極12A、12Bへの印加電圧のピークを検知してから所定の遅延時間を経過したタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力し、トリガー光源14が光スイッチ40の半導体基板11にトリガー光1を照射し、光スイッチ40が閉動作してスイッチ信号3を発生する。このため、光スイッチ40の閉への切替動作を、印加電圧のピークに対し所定時間遅延させたタイミングに調整することが可能になる。
【0046】
以上のように構成されたことから、本第4実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)の効果と同様な効果を奏するほかに、次の効果(3)を奏する。
【0047】
(3)電圧ピーク検知手段41は、電極12A、12Bへの印加電圧のピークを検知してから所定の遅延時間を経過したタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力するよう構成されている。このため、光スイッチ40を閉に切り替える際の電圧(電極12A、12Bへの印加電圧)の値を所望の電圧値に調整できると共に、光スイッチ40の閉動作時に出力されるスイッチ信号3を所望の電圧値に調整することができる。
【0048】
なお、電源は、パルス電源13の場合を述べたが、第2実施形態の正弦波電源21(修正正弦波電源を含む)であってもよく、更に、バイアス電圧を発生する第3実施形態のパルス電源31もしくは正弦波電源32(修正正弦波電源を含む)であってもよい。
【0049】
[E]第5実施形態(図8図9
図8は、第5実施形態に係る光スイッチを示すブロック図である。この第5実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0050】
本第5実施形態の光スイッチ50が第1実施形態と異なる点は、微分回路51を有す点である。この微分回路51は、パルス電源13から電極12A、12Bに印加された印加電圧が電圧測定手段15Mにて測定された後に、この測定された印加電圧を微分して微分信号を生成する。ここで、上述の電圧測定手段15M及び微分回路51がトリガー信号出力手段52を構成する。
【0051】
更に、パルス電源13は、図9に示すように、パルス電圧の印加開示から所定時間経過後に、任意の時間幅のゲート信号5を微分回路51に出力する。そして、微分回路51は、ゲート信号5の受信中に、微分信号が最初にトリガー閾値と交差する任意の電圧(微分信号の立上り電圧もしくは立下り電圧、例えば立下り電圧)になったタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力する。ここで、パルス電源13がゲート信号5を出力する際の上記所定時間とゲート信号5の時間幅は、最大でも半導体基板11における電気抵抗値低下の応答時間である1ms程度でよく、0ms~1msの範囲で調整可能である。
【0052】
本第5実施形態の光スイッチ50では、第1実施形態と同様に、パルス電源13が電極12A、12Bに電圧を印加する。更に、パルス電源13は、パルス電圧の印加開始から任意の時間経過後に任意の時間幅のゲート信号5を微分回路51に出力する。
【0053】
微分回路51は、電圧測定手段15Mからの印加電圧を微分し、その微分信号が、トリガー閾値と交差する任意の立上り電圧または立下り電圧(例えば立下り電圧)になった際に、トリガー光源14にトリガー信号2を出力する。トリガー光源14からトリガー光1が半導体基板11に照射されることで、光スイッチ50が閉動作してスイッチ信号3が発生する。
【0054】
上述のように、微分回路51によるトリガー信号2の出力は、ゲート信号5で制限されている。ゲート信号5の開始が、パルス電圧の印加開始からの所定の経過時間後に設定されていることから、パルス電圧の開始0秒やパルス電圧の印加終了時にトリガー信号2は出力されない。光スイッチ50の電極12A、12Bへの印加電圧がピークになる位置では微分信号が立ち下がって0Vにあり、微分回路51は、トリガー信号2の出力のための設定電圧を、+側にずらせば印加電圧のピーク手前で、―側にずらせば印加電圧のピーク後に、それぞれトリガー信号2を出力させることが可能になる。
【0055】
以上のように構成されたことから、本第5実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
【0056】
(4)微分回路51が電圧測定手段15Mにて測定された印加電圧を微分して微分信号を生成し、パルス電源13がパルス電圧の印加開始から所定時間経過後に任意の時間幅のゲート信号5を微分回路51に出力し、この微分回路51が、ゲート信号5の受信中に、微分信号が最初にトリガー閾値と交差する任意の電圧なったタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力するよう構成されている。このため、電極12A、12Bへの印加電圧がピークになる時間に対し、その前後の任意のタイミングで光スイッチ50を閉に切り替え、光スイッチ50からスイッチ信号3を発生させることができる。この結果、光スイッチ50を閉に切り替える際の電圧(電極12A、12Bへの印加電圧)の値を所望の電圧値に調整できると共に、光スイッチ50の閉動作時に出力されるスイッチ信号3を所望の電圧値に調整することができる。
【0057】
なお、電源がパルス電源13の場合を述べたが、バイアス電圧を発生する第3実施形態のパルス電源31(図2)であってもよい。
【0058】
[F]第6実施形態(図10図11
図10は、第6実施形態に係る光スイッチを示すブロック図である。この第6実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0059】
本第6実施形態の光スイッチ60が第2実施形態と異なる点は、電圧測定手段15Mを省略し、電圧ピーク検知手段15Nに代えてトリガー回路61を設けた点である。このトリガー回路61は、正弦波電源21からの正弦波電圧(正弦波電源設定電圧)の波形信号6または修正正弦波電源からの修正正弦波電圧の波形信号を入力し、これらの正弦波電圧または修正正弦波電圧が任意の立上り電圧もしくは立下り電圧なったタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力する。ここで、上述のトリガー回路61がトリガー信号出力手段62を構成する。
【0060】
以下、正弦波電源21が純粋な正弦波電圧を発生する場合について説明する。正弦波電源21から正弦波電圧が電極12A、12Bに印加される。第2実施形態と同様に、半導体基板11の電気抵抗値は正弦波の印加電圧に応じて低下し、負荷18との分圧により、電極12A、12Bへの印加電圧も低下する。一方、正弦波電圧の出力周波数が十分に高い場合、半導体基板11の電気抵抗値の低下が有意になる前に電圧が印加されるため、印加電圧は、第2実施形態と同様に、図11に示すように、正弦波電圧のピークとは異なる位置にピークが生じることになる。この際、正弦波電圧の周波数は、その立上り時間が半導体基板11の電気抵抗値低下の応答時間(50μs~1ms)と同等かより短時間である必要があり、例えば250Hz以下である。
【0061】
正弦波電源21からの正弦波電圧には周期性があるため、電極12A、12Bへの印加電圧にも周期性があり、その印加電圧の周期は正弦波電圧と同一である。そこで、トリガー回路61は、正弦波電圧がトリガー閾値と交差する任意の立上り電圧または立下り電圧(例えば立上り電圧)を指定し、電極12A、12Bへの印加電圧が任意の波高(例えばピーク)になるタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力する。
【0062】
以上のように構成されたことから、本第6実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0063】
(5)トリガー回路61は、正弦波電源21からの正弦波電圧の波形信号6を入力し、この正弦波電圧が任意の立上り電圧もしくは立下り電圧になったタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力するよう構成されている。従って、電極12A、12Bへの印加電圧がピークになる時刻に対し、その前後の任意のタイミングで光スイッチ60を閉に切り替え、この光スイッチ60からスイッチ信号3を発生させることができる。この結果、光スイッチ60を閉に切り替える際の電圧(電極12A、12Bへの印加電圧)の値を所望の電圧値に調整できると共に、光スイッチ60の閉動作時に出力されるスイッチ信号3を所望の電圧値に調整することができる。
【0064】
なお、電源は、正弦波電源21の場合を述べたが、バイアス電圧を有する正弦波電圧もしくは修正正弦波電圧を出力する第3実施形態の正弦波電源32(図5)であってもよい。
【0065】
[G]第7実施形態(図12図13
図12は、第7実施形態に係る光スイッチを示すブロック図である。この第7実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0066】
本第7実施形態の光スイッチ70が第2実施形態と異なる点は、電圧測定手段15Mを省略し、電圧ピーク検知手段15Nに代えて、遅延回路71及びトリガー回路72を設けた点である。遅延回路71は、正弦波電源21からの正弦波電圧の波形信号6または修正正弦波電源からの修正正弦波電圧の波形信号を入力し、これらの正弦波電圧または修正正弦波電圧に所定の時間的遅延を与える。また、トリガー回路72は、遅延回路71からの遅延後の正弦波電圧または遅延後の修正正弦波電圧が任意の立上り電圧もしくは立下り電圧なったタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力する。ここで、上述の遅延回路71及びトリガー回路72がトリガー信号出力手段73を構成する。
【0067】
以下、正弦波電源21が純粋な正弦波電圧を発生する場合について説明する。正弦波電源21から正弦波電圧が電極12A、12Bに印加される。第2実施形態と同様に、半導体基板11の電気抵抗値は正弦波の印加電圧に応じて低下し、負荷18との分圧により、電極12A、12Bへの印加電圧も低下する。一方、正弦波電圧の出力周波数が十分に高い場合、半導体基板11の電気抵抗値の低下が有意になる前に電圧が印加されるため、印加電圧は、第2実施形態と同様に、図13に示すように、正弦波電圧のピークとは異なる位置にピークが生じることになる。
【0068】
正弦波電源21からの正弦波電圧には周期性があるため、電極12A、12Bへの印加電圧にも周期性があり、その印加電圧の周期は正弦波電圧と同一である。そこで、遅延回路71が任意の遅延時間を設定し、トリガー回路72は、この遅延後の正弦波電圧がトリガー閾値と交差する任意の立上り電圧または立下り電圧(例えば立上り電圧)を指定し、電極12A、12Bへの印加電圧が任意の波高(例えばピーク)になるタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力する。
【0069】
以上のように構成されたことから、本第7実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(6)を奏する。
【0070】
(6)遅延回路71は、正弦波電源21からの正弦波電圧の波形信号6を入力して、この正弦波電圧に所定の時間的遅延を与え、トリガー回路72は、この遅延後の正弦波電圧が任意の立上り電圧もしくは立下り電圧なったタイミングで、トリガー光源14にトリガー信号2を出力するよう構成されている。従って、電極12A、12Bへの印加電圧がピークになる時刻に対し、その前後の任意のタイミングで光スイッチ70を閉に切り替え、この光スイッチ70からスイッチ信号3を発生させることができる。この結果、光スイッチ70を閉に切り替える際の電圧(電極12A、12Bへの印加電圧)の値を所望の電圧値に調整できると共に、光スイッチ70の閉動作時に出力されるスイッチ信号3を所望の電圧値に調整することができる。
【0071】
なお、電源は、正弦波電源21の場合を述べたが、バイアス電圧を有する正弦波電圧もしくは修正正弦波電圧を出力する第3実施形態の正弦波電源32(図5)であってもよい。また、電源は、一定周期でパルス電圧を印可するパルス電源13でもよく、バイアス電圧を発生し、一定周期でパルス電圧を印可する第3実施形態のパルス電源31(図2)であってもよい。
【0072】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1…トリガー光、2…トリガー信号、3…スイッチ信号、5…ゲート信号、6…波形信号、10…光スイッチ、11…半導体基板、12A、12B…電極、13…パルス電源、14…トリガー光源、15…トリガー信号出力手段、15M…電圧測定手段、15N…電圧ピーク検知手段、16…トリガー光導入面、17…キャリア生成領域、20…光スイッチ、21…正弦波電源、30…光スイッチ、31…パルス電源、32…正弦波電源、40…光スイッチ、41…電圧ピーク検知手段、42…トリガー信号出力手段、50…光スイッチ、51…微分回路、52…トリガー信号出力手段、60…光スイッチ、61…トリガー回路、62…トリガー信号出力手段、70…光スイッチ、71…遅延回路、72…トリガー回路、73…トリガー信号出力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14