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特開2025-30268バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030268
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20250228BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 31/4425 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q11/00
A61K8/24
A61K8/60
A61K8/34
A61P1/02
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K31/4425
A61K33/42
A61K31/7004
A61K31/047
A61K47/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135417
(22)【出願日】2023-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川本 智也
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB22
4C076CC09
4C076CC31
4C076DD60
4C076DD60N
4C076FF34
4C083AB011
4C083AB012
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB242
4C083AB281
4C083AB282
4C083AB472
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC662
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC782
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC862
4C083AD092
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD532
4C083AD662
4C083CC41
4C083EE36
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086EA01
4C086HA19
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA57
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZA67
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA05
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA77
4C206NA05
4C206ZA67
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】バイオフィルムを好適に分散させることのできるバイオフィルム分散剤を提供する。
【解決手段】バイオフィルム分散剤は、(A)セチルピリジニウム塩化物水和物と、(B)ニコチンアミド、ピロリン酸、ピロリン酸塩、キシロース、エリスリトールからなる群より選択される少なくとも一種と、を含有している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セチルピリジニウム塩化物水和物と、
(B)ニコチンアミド、ピロリン酸、ピロリン酸塩、キシロース、エリスリトールからなる群より選択される少なくとも一種と、を含有する
バイオフィルム分散剤。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオフィルム分散剤を含有する
口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯周疾患、歯肉炎、う蝕、口臭等の口腔内疾患は、口腔内細菌によって引き起こされている。口腔内の多くの細菌が、バイオフィルムと呼ばれる細菌の集合体として存在している。バイオフィルムは、細菌又はその死骸、細菌から分泌される多糖、タンパク質等の高分子物質等で構成されており、フィルム状の構造を有している。そのため、一般的な口腔用組成物に用いられる殺菌剤では、バイオフィルム内へ浸透させることが困難であった。
【0003】
このようなバイオフィルムに対して、例えば、特許文献1には、バイオフィルムを分散させて除去するバイオフィルム分散溶液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-204262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
形成されたバイオフィルムを除去するために、形成されたバイオフィルムを好適に分散させることができるバイオフィルム分散剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のバイオフィルム分散剤は、(A)セチルピリジニウム塩化物水和物と、(B)ニコチンアミド、ピロリン酸、ピロリン酸塩、キシロース、エリスリトールからなる群より選択される少なくとも一種と、を含有する。
【0007】
態様2の口腔用組成物は、態様1に記載のバイオフィルム分散剤を含有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバイオフィルム分散剤及び口腔用組成物によれば、口腔内で形成されたバイオフィルムを好適に分散させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物を具体化した実施形態について説明する。
以下では、主にバイオフィルム分散剤について説明する。口腔用組成物は、以下で説明するバイオフィルム分散剤を含有している。なお、本明細書において、口腔用組成物とは、主として口腔内で使用することを目的とするものを意味するものとする。使用後は口腔内から排出される口腔用製剤だけでなく、摂取可能な飲食品も含むものとする。本実施形態のバイオフィルム分散剤は、口腔内で使用することを目的とするものに限定されない。
【0010】
バイオフィルム分散剤は、(A)成分と(B)成分とを含有している。(A)成分は、セチルピリジニウム塩化物水和物(以下、CPCということもある。)である。(B)成分は、ニコチンアミド、ピロリン酸、ピロリン酸塩、キシロース、エリスリトールからなる群より選択される少なくとも一種である。
【0011】
<(A)CPC>
CPCは、一般にカチオン性殺菌剤として用いられる。CPCは、塩化セチルピリジニウムとよばれることもある。CPCとしては、特に制限されず、公知のCPCを用いることができる。
【0012】
バイオフィルム分散剤におけるCPCの含有量は、特に制限されないが、例えば、0.005質量%以上0.3質量%以下である。以下では、バイオフィルム分散剤における各成分の含有量について「質量%」を「%」に省略して表記することもある。CPCの含有量の下限値は、0.01%であることが好ましく、より好ましくは0.05%である。CPCの含有量の上限値は、0.2%であることが好ましく、より好ましくは0.1%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2又は0.25%であってもよい。
【0013】
<(B)成分>
ニコチンアミドは、水溶性ビタミンB群の一種である。ニコチンアミドは、ニコチン酸のアミドである。
【0014】
ピロリン酸は、ポリリン酸の一種である。バイオフィルム分散剤は、(B)成分としてピロリン酸の塩を含有していてもよい。ピロリン酸塩としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等が挙げられる。
【0015】
キシロースは、単糖の一種である。
エリスリトールは、糖アルコールの一種である。
バイオフィルム分散剤は、(B)成分として上記成分のうちいずれか一種のみを含有していてもよいし、二種以上を適宜組み合わせて含有していてもよい。
【0016】
バイオフィルム分散剤における(B)成分の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.05%以上9%以下である。(B)成分の含有量の下限値は、0.1%であることが好ましく、より好ましくは0.5%である。(B)成分の含有量の上限値は、6%であることが好ましく、より好ましくは3%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8又は8.5%であってもよい。
【0017】
バイオフィルム分散剤における(A)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比((B)/(A))は、特に制限されない。例えば、上記質量比は、0.1以上500以下であり、好ましくは0.5以上100以下であり、より好ましくは1以上50以下であり、さらに好ましくは1以上10以下である。
【0018】
<その他成分>
バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば界面活性剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤、粘結剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、キレート剤、薬効成分、基剤、研磨剤、安定化剤等が挙げられる。その他成分は、バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物は、上記のその他成分のそれぞれについて、一種のみを単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
【0019】
界面活性剤としては、たとえば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;グリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0020】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0021】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。
【0022】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。
【0023】
香味剤の具体例としては、例えばメントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、アニス油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0024】
甘味剤の具体例としては、例えばサッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等が挙げられる。
【0025】
湿潤剤の具体例としては、例えばソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
粘結剤の具体例としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等のセルロース誘導体、キサンタンガム等の微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、グアーガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム等の天然高分子又は天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子、増粘性シリカ、ビーガム等の無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン性粘結剤等が挙げられる。
【0027】
防腐剤の具体例としては、例えばメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0028】
着色剤の具体例としては、例えば青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられる。
pH調整剤の具体例としては、例えばクエン酸、リン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
キレート剤の具体例としては、例えばエデト酸、エデト酸ナトリウム塩、エデト酸カリウム塩、フィチン酸等が挙げられる。
薬効成分の具体例としては、例えば酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、又はニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、又はリン酸アスコルビルマグネシウム等のビタミンC類、ピリドキシン塩酸塩等のビタミンB6類、グリチルリチン酸塩とその誘導体、グリチルレチン酸、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の非イオン性殺菌剤、ココイルサルコシンナトリウム、ソルビン酸等のアニオン系殺菌剤、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、ヒノキチオール、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等が挙げられる。
【0030】
基剤の具体例としては、例えばアルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等が挙げられる。
【0031】
アルコール類の具体例としては、例えばエチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
研磨剤の具体例としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0032】
安定化剤の具体例としては、例えばチオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
<適用形態、用途、及び剤形>
バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物の用途としては、口腔内に形成されるバイオフィルムの分散用に用いることができる。例えば、歯の表面に形成されるバイオフィルム分散用に用いることができる。具体的な用途として、例えば咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、舌ケア剤、口中清涼剤、洗口剤、含漱剤、歯磨剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病治療剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が挙げられる。歯磨剤としては、例えば練歯磨剤、粉歯磨剤、液体歯磨剤、潤性歯磨剤等が挙げられる。バイオフィルム分散剤の用途としては、口腔内に限らずバイオフィルムの分散用に用いることができる。
【0033】
バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物は、例えば水、アルコール等の溶媒を含有する。バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物の剤形は、特に限定されず、例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、液剤、懸濁剤、ガム剤、タブレット、ドロップ等の形態(剤形)等に適用することができる。
【0034】
<作用及び効果>
バイオフィルムが形成されると、殺菌剤等が浸透しにくくなる。このため、個々の細菌に対して効果を発揮する殺菌剤等であっても、バイオフィルムを除去することが難しくなる。この点、(A)成分と(B)成分とを含有している本実施形態のバイオフィルム分散剤によれば、既に形成されているバイオフィルムを分散させることができる。
【0035】
本実施形態のバイオフィルム分散剤は、バイオフィルムを分散させることができる。これによって、口腔内等に形成されているバイオフィルムを除去することができる。バイオフィルム分散剤を含有している口腔用組成物についても、同様の作用及び効果を奏する。
【実施例0036】
バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、バイオフィルム分散剤及び口腔用組成物は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
【0037】
<サンプル溶液の調製>
比較例1~5のサンプル溶液を調製した。各サンプル溶液が含有する成分は、表1に示すとおりである。比較例1~4のサンプル溶液において、各成分の含有量はそれぞれ0.5%である。比較例5のサンプル溶液において、CPCの含有量は0.05%である。
【0038】
【表1】
実施例1~4のサンプル溶液を調製した。各サンプル溶液が含有する成分は、表2に示すとおりである。実施例1~4のサンプル溶液において、(A)成分の含有量は0.05%である。実施例1~4のサンプル溶液において、(B)成分の含有量は0.5%である。
【0039】
【表2】
<評価試験>
〔バイオフィルムの形成〕
被験者1名から唾液5mLを採取した。唾液5mLにPBS5mLを混合することで2倍希釈の有菌唾液を調製した。24ウェルプレートを用いて、有菌唾液500μLをウェルに分注した。各ウェルにハイドロキシアパタイトディスク(HAディスク)を配置することで、HAディスクを有菌唾液に浸漬した。室温で1時間静置することで、ペリクルが表面に形成されたHAディスクを得た。
【0040】
2%スクロース添加McBain培地(Mouta, L. F. G. L., et al. “Cymbopogon citratus essential oil increases the effect of digluconate chlorhexidine on microcosm biofilms.” Pathogens 11.10 (2022): 1067.)1mLを別のウェルに分注した。ペリクルが形成されたHAディスクを、2%スクロース添加McBain培地を分注したウェルに移動させた。37℃の嫌気条件下で24時間培養することで、HAディスクの表面にバイオフィルムを形成させた。
【0041】
〔サンプル溶液による処理〕
各実施例及び比較例のサンプル溶液500μLをそれぞれ個別のウェルに分注した。各ウェルにバイオフィルム形成後のHAディスクを浸漬し、プレートミキサーを用いて500rpmで5分間振とうさせた。その後、HAディスクを取り出して蒸留水1mLで洗浄した。洗浄後のHAディスクを、処理後のHAディスクとする。また、ネガティブコントロール(以下、NCともいう。)として、サンプル溶液に替えて水500μLを用いて、上記処理と同様の処理を行った。
【0042】
〔染色〕
0.1質量%CV(Crystal Violet)溶液500μLを24ウェルプレートに分注した。処理後のHAディスクをCV溶液に浸漬させ、室温で20分静置した。その後、HAディスクを取り出して、蒸留水1mLでHAディスクを洗浄した。洗浄後のHAディスクを室温で30分~1時間風乾することで染色したHAディスクを得た。
【0043】
〔色素抽出〕
染色したHAディスクを33%酢酸溶液500μLに浸漬した。室温で30分静置することで、色素が抽出された抽出液を得た。
【0044】
〔吸光度測定〕
色素抽出によって得られた抽出液を96ウェルプレートに100μL移した。Cytation5を用いて550nmで吸光度測定を行った。N=2として測定し、平均値と標準偏差(SD)を算出した。また、各実施例及び比較例の平均値について、コントロールの平均値を100%とした相対値を対NCとして算出した。各値を表1及び表2に示す。
【0045】
〔評価〕
染色処理では、HAディスクの表面に形成されているバイオフィルムが染色される。吸光度測定では、染色されたHAディスクから色素を抽出した抽出液の吸光度を測定している。このため、吸光度測定の結果から算出した平均値及び対NCの値が大きいほど、HAディスクの表面に形成されていたバイオフィルムの残存量が多いことを意味する。すなわち、平均値及び対NCの値が小さいほど、HAディスクからバイオフィルムが除去されていることを意味する。言い換えれば、平均値及び対NCの値が小さいほど、バイオフィルムを分散させる効果が高いことを意味する。
【0046】
比較例1の結果からは、バイオフィルムの分散効果を確認できなかった。これに対して、比較例1及び実施例1の結果から、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて使用する実施例1では、バイオフィルムを分散させる高い効果を得られることがわかる。さらに、比較例5及び実施例1の結果から、(A)成分を単独で使用する比較例5に比して、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて使用する実施例1の方が、バイオフィルムを分散させる効果がより高いことがわかる。すなわち、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによる相乗効果を確認できる。
【0047】
比較例2及び実施例2の結果から、(B)成分を単独で使用する比較例2に比して、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて使用する実施例2の方が、バイオフィルムを分散させる効果がより高いことがわかる。さらに、比較例5及び実施例2の結果から、(A)成分を単独で使用する比較例5に比して、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて使用する実施例2の方が、バイオフィルムを分散させる効果がより高いことがわかる。すなわち、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによる相乗効果を確認できる。
【0048】
同様に、比較例3及び実施例3の結果、及び比較例4及び実施例4の結果からも、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて使用する各実施例の方が、バイオフィルムを分散させる効果がより高いことがわかる。さらに、比較例5及び実施例3の結果、及び比較例5及び実施例4の結果からも、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて使用する各実施例の方が、バイオフィルムを分散させる効果がより高いことがわかる。すなわち、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによる相乗効果を確認できる。
【0049】
また、(A)成分の含有量を0.3%に変更した以外は実施例1~4と同様にして上記評価試験と同様の試験を行った場合でも、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによる相乗効果によって好適なバイオフィルム分散効果が得られることを確認した。
【0050】
また、(A)成分の含有量を0.1%に変更した以外は実施例1~4と同様にして上記評価試験と同様の試験を行った場合でも、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによる相乗効果によって好適なバイオフィルム分散効果が得られることを確認した。
【0051】
以上のことから、バイオフィルムを好適に分散させる効果は、(A)塩化セチルピリジニウムと、(B)ニコチンアミド、ピロリン酸、ピロリン酸塩、キシロース、エリスリトールからなる群より選択される少なくとも一種と、を含有することによって発揮されることを確認した。
【0052】
<処方例>
以下に処方例を示す。以下の表に記載される各成分の数値は含有量(質量%)を意味する。
【0053】
表3は、練歯磨剤として用いた処方例1~12を示す。表4は、液剤として用いた処方例13~24を示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】