(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038474
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/00 20060101AFI20250312BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
B65H5/00 B
G03G21/00 530
G03G21/00 310
G03G21/00 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145108
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】臼井 正武
(72)【発明者】
【氏名】高木 健二
【テーマコード(参考)】
2H134
2H270
3F101
【Fターム(参考)】
2H134GA20
2H134GB05
2H134HA01
2H134HA17
2H134KD02
2H134KD04
2H134KF02
2H134KG10
2H270LC12
2H270SA09
2H270SB13
2H270SB15
2H270SB16
2H270SC15
3F101AB01
3F101AB03
3F101AB07
3F101LA01
3F101LB01
(57)【要約】
【課題】紙粉取りローラに起因する画像不良の発生を低減させること。
【解決手段】紙粉回収ユニット16は、帯電され電荷を保持できる紙粉取りローラ17と、紙粉取りローラ17を帯電するスポンジ53と、紙粉取りローラ17に対向して加圧ニップ部を形成し、記録材Pを搬送する対向ローラ18と、を有し、加圧ニップ部において記録材Pの紙粉Dを紙粉取りローラ17に静電吸着することで回収するプリンタ100であって、画像形成装置プリンタ100の外部から内部へ風を送る送風ファン58を備え、 紙粉取りローラ17は、内部に空洞を有し、送風ファン58は、搬送方向に直交する方向において空洞の一方の端部に配置され、紙粉取りローラ17は、空洞の内部を一方の端部から他方の端部に向かって流れる空気によって冷却される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像形成を行う画像形成部と、
前記記録材の搬送方向において前記画像形成部よりも上流に設けられた紙粉回収部と、
を備え、
前記紙粉回収部は、帯電され電荷を保持できる紙粉取りローラと、前記紙粉取りローラを帯電する帯電部材と、前記紙粉取りローラに対向してニップ部を形成し、記録材を搬送する対向部材と、を有し、前記ニップ部において前記記録材の紙粉を前記紙粉取りローラに静電吸着することで回収する画像形成装置であって、
前記画像形成装置の外部から内部へ空気を送る送風手段を備え、
前記紙粉取りローラは、内部に空洞を有し、
前記送風手段は、前記搬送方向に直交する方向において前記空洞の一方の端部に配置され、
前記紙粉取りローラは、前記空洞の内部を前記一方の端部から他方の端部に向かって流れる空気によって冷却されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記紙粉取りローラは、表層と、前記表層によって被覆され前記空洞を形成する金属ローラと、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記録材に画像形成を行う画像形成部と、
前記記録材の搬送方向において前記画像形成部よりも上流に設けられた紙粉回収部と、
を備え、
前記紙粉回収部は、帯電され電荷を保持できる紙粉取りローラと、前記紙粉取りローラを帯電する帯電部材と、前記紙粉取りローラに対向してニップ部を形成し、記録材を搬送する対向部材と、を有し、前記ニップ部において前記記録材の紙粉を前記紙粉取りローラに静電吸着することで回収する画像形成装置であって、
前記画像形成装置の外部から内部へ空気を送る送風手段と、
前記送風手段により送られた空気を前記紙粉取りローラの表面に導くダクトと、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記紙粉回収部は、前記ダクトを備えることを特徴する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記送風手段は、前記搬送方向に直交する方向において前記ダクトの一方の端部に配置され、
前記ダクトは、複数の穴が設けられた領域を有し、
前記風は、前記ダクトの内部を前記一方の端部から他方の端部に向かって流れる途中で複数の前記穴を介して前記紙粉取りローラの表面に当たることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ダクトは、前記搬送方向において前記ニップ部よりも下流、かつ、前記紙粉取りローラの回転方向において前記紙粉取りローラと前記帯電部材とが当接する位置よりも上流に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記領域は、前記搬送方向に直交する幅方向において前記記録材の幅よりも長いことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記紙粉取りローラは、前記搬送方向に直交する幅方向において前記記録材の幅よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記紙粉取りローラは、前記搬送方向に直交する幅方向において前記記録材の幅よりも長いことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記紙粉回収部は、前記記録材の給紙のタイミングを調整するレジストレーション機能を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記紙粉回収部は、前記記録材の給紙のタイミングを調整するレジストレーション機能を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いたレーザービームプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置では、感光ドラムなどの像担持体に適宜の作像プロセスにてトナー像が形成される。このトナー像は、転写手段にて記録材に転写され、定着手段として加熱手段を有した定着器にて記録材上に定着された後に、画像形成物として画像形成装置の装置本体から出力される。このような画像形成装置として、記録材の表面に画像を形成した後に、装置内で記録材を反転させ、記録材の裏面に対しても画像を形成できる両面印刷機構を有しているものが一般的となっている。
【0003】
電子写真方式を用いた画像形成装置用の記録材は、PPC(Plain Paper Copier)用紙が使用されている。PPC用紙は、通常、紙粉と呼ばれる粉が含まれている。良好な画像の形成を確保するため、記録材上の紙粉を捕捉するための紙粉回収ユニットを備える画像形成装置が知られている。例えば、特許文献1では、記録材が感光ドラムに到達するよりも上流側に、紙粉回収ユニットとして、記録材とほぼ同じ幅を有する紙粉取りローラを設ける構成が開示されている。紙粉取りローラをスポンジ等の帯電部材で摺擦して摩擦帯電させることで、記録材の紙粉を静電吸着させる。更には、紙粉取りローラは、記録材の給紙のタイミングを調整するレジストローラの機能を兼ねる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像形成装置は高生産性が求められている。高生産性により高速化が進むと紙粉取りローラを通過する単位時間当たりの通紙枚数が増えることになる。この様な状況において、記録材を両面連続印刷した場合、単位時間当たりに定着器で加熱され暖められた記録材が再び紙粉取りローラを通過する頻度が増える。そのため、記録材からの伝熱量も増加して、紙粉取りローラの昇温が顕著になりやすい。紙粉取りローラが昇温すると、記録材が紙粉取りローラに吸熱されることなく高い温度のまま転写部に突入するおそれがある。この場合、感光ドラムに接触する現像部、及び、それに格納されるトナーが熱的な影響を受けて劣化することがある。その結果、現像不良を引き起こし、画像部の濃度が低下する課題がある。また、高速化時の別の課題として、記録材が紙粉取りローラを通過する頻度が増えることで、記録材に含まれる水分が紙粉取りローラへ多量に付着してしまうことがある。その結果、紙粉取りローラの帯電性能が低下し、紙粉回収性能が低下する課題がある。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、紙粉取りローラに起因する画像不良の発生を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0008】
(1)記録材に画像形成を行う画像形成部と、前記記録材の搬送方向において前記画像形成部よりも上流に設けられた紙粉回収部と、を備え、前記紙粉回収部は、帯電され電荷を保持できる紙粉取りローラと、前記紙粉取りローラを帯電する帯電部材と、前記紙粉取りローラに対向してニップ部を形成し、記録材を搬送する対向部材と、を有し、前記ニップ部において前記記録材の紙粉を前記紙粉取りローラに静電吸着することで回収する画像形成装置であって、前記画像形成装置の外部から内部へ空気を送る送風手段を備え、前記紙粉取りローラは、内部に空洞を有し、前記送風手段は、前記搬送方向に直交する方向において前記空洞の一方の端部に配置され、前記紙粉取りローラは、前記空洞の内部を前記一方の端部から他方の端部に向かって流れる空気によって冷却されることを特徴とする画像形成装置。
【0009】
(2)記録材に画像形成を行う画像形成部と、前記記録材の搬送方向において前記画像形成部よりも上流に設けられた紙粉回収部と、を備え、前記紙粉回収部は、帯電され電荷を保持できる紙粉取りローラと、前記紙粉取りローラを帯電する帯電部材と、前記紙粉取りローラに対向してニップ部を形成し、記録材を搬送する対向部材と、を有し、前記ニップ部において前記記録材の紙粉を前記紙粉取りローラに静電吸着することで回収する画像形成装置であって、前記画像形成装置の外部から内部へ空気を送る送風手段と、前記送風手段により送られた空気を前記紙粉取りローラの表面に導くダクトと、を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紙粉取りローラに起因する画像不良の発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】実施例1、2の紙粉回収ユニットの搬送方向長手概略図
【
図5】実施例1の送風ファンの位置とエアフローを示した図
【
図8】実施例2の送風ファンのエアフローを示した図
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせ全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0013】
<画像形成装置>
実施例1の画像形成装置の全体構成の概略について説明する。
図1に、本発明に係る画像形成装置の一例を示す。
図1に示す画像形成装置は、電子写真方式の4色フルカラーのレーザプリンタであり、同図はその概略構成を示す横断面模式図である。なお、本発明に係る画像形成装置としては、電子写真方式のレーザプリンタのほか、電子写真方式の複写機、ファクシミリであってもよく、さらには静電記録方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ等であってもよい。
【0014】
図1に示す画像形成装置としてのレーザプリンタ100(以下、プリンタ100という。)は、記録材Pの搬送方向Rに沿って右側から順に、4個のプロセスカートリッジ5Y、5M、5C、5Kを備えている。画像形成部としての4個のプロセスカートリッジ5Y、5M、5C、5Kは同一構造であるが、異なる色、即ち、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー(現像剤)による画像を形成する点で相違する。なお、特定のカートリッジの説明を行う場合を除き、以下、YMCKの符号を省略する。各プロセスカートリッジ5は、それぞれ、感光体である感光ドラム1、帯電ローラ2、現像ローラ3、トナー容器4を有する。プロセスカートリッジ5の上方に配置された露光装置6は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像データに応じた画像信号に基づき感光ドラム1を露光する。
【0015】
感光ドラム1は、回転過程で、帯電ローラ2により所定の極性及び所定の電位に一様に帯電処理される。その後、感光ドラム1は、露光装置6により露光されて各々目的のカラー画像の第1~第4の色成分像(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分像)に対応した静電潜像が形成される。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転に伴って従動して回転する。現像部では、感光ドラム1上に形成された静電潜像は、第1~第4のカートリッジY、M、C、Kの現像ローラ3を介してトナー容器4内のトナーを付着させて、トナー像として現像する。各現像部のトナーは、負帯電の非磁性一成分トナーであり、静電潜像の現像は、非磁性一成分接触現像方式によって行われる。現像ローラ3には不図示の電源により電圧が印加され、これにより現像を行う。
【0016】
転写装置7は、感光ドラム1に対向して接するように循環移動(回転)する搬送ベルト8を有している。実施例1では、搬送ベルト8は、ポリイミドによって形成されている。搬送ベルト8は、2本のローラ9、10に掛け渡されていている。搬送ベルト8は、外周面に記録材Pを乗せた状態で回転する。
【0017】
搬送ベルト8の内側には、感光ドラム1のそれぞれに対応する位置に4個の転写ローラ11が配設されている。これら転写ローラ11は、搬送ベルト8の裏面側に当接されており、感光ドラム1との間に搬送ベルト8を挟持するようになっている。これにより、感光ドラム1と、搬送ベルト8との間に、転写部(転写ニップ部)が形成される。実施例1では、転写電圧印加電源(不図示)によって転写ローラ11に正極性の転写電圧が印加され、これにより感光ドラム1上の負極性の各色トナー像が転写部において記録材P上に順次に転写されるようになっている。
【0018】
プリンタ100の下部には、給搬送装置12が配設されている。給搬送装置12は、記録材Pを収納する給紙カセット13内から記録材Pを給紙する給紙ローラ14と、給紙された記録材Pを搬送する搬送ローラ対15とを有する。搬送ローラ対15の搬送方向下流側には、紙粉回収部としての紙粉回収ユニット16が配置されている。紙粉回収ユニット16は、記録材Pの搬送方向Rにおいてプロセスカートリッジ5よりも上流に設けられている。
【0019】
紙粉回収ユニット16内には、紙粉取りローラ17、対向ローラ18が設けられている。紙粉取りローラ17は、記録材Pの搬送機能も有し、記録材Pの給紙のタイミングを調整するレジストローラの機能(レジストレーション機能)も兼ね備えている。対向ローラ18は、紙粉取りローラ17に対向して加圧ニップ部(ニップ部)を形成する対向部材として機能している。紙粉取りローラ17は、記録材Pの紙粉を除去する紙粉回収ユニット16の一部でもある。紙粉取りローラ17は、帯電され電荷を保持できるローラである。紙粉回収ユニット16は、紙粉取りローラ17を帯電する帯電部材としてのスポンジ53も有している(帯電部材)。紙粉回収ユニット16は、加圧ニップ部において記録材Pの紙粉を紙粉取りローラ17に静電吸着することで回収する。紙粉回収ユニット16の詳細については、後で詳しく説明する。
【0020】
画像形成時、給紙カセット13内の記録材Pは1枚ずつ分離給送され、その先端部を紙粉取りローラ17と対向ローラ18との対に突き当てることで一旦停止されて、ループを形成する。その後、記録材Pは、搬送ベルト8の回転と、感光ドラム1上の画像書出し位置の同期をとって、レジストローラの機能を兼ね備えた紙粉取りローラ17と対向ローラ18との対によって搬送ベルト8へと供給されていく。
【0021】
搬送ベルト8に供給された記録材Pは、プロセスカートリッジ5Y、5M、5C、5Kを通過するときに各色トナー像が転写される。搬送方向最下流にあるプロセスカートリッジ5Kを通過した記録材Pは、搬送ベルト8から分離される。搬送ベルト8最下流側には、定着器19が配設されている。
【0022】
定着器19は、記録材Pに転写された複数色のトナー像を定着させるものであり、回転する定着ローラ(加熱ローラ)20と、これに圧接されて記録材Pに熱及び圧力を与える加圧ローラ21とを有している。すなわち、感光ドラム1上の各色のトナー像が順次に重なるようにして転写された記録材Pは、定着器19を通過する際に定着ローラ20、加圧ローラ21によって挟持搬送されながら、加熱、加圧されて表面に複数色のトナー像が定着される。
【0023】
記録材Pへの画像形成が片面のみと指定された場合、定着器19を通過しトナー像が定着された記録材Pは、搬送ローラ対22を通って、排出反転ローラ対23に搬送され排出トレー24上に画像形成面を下にして排出積載される。また、記録材Pの裏面にも画像を形成する両面印刷と指定された場合、排出反転ローラ対23を用いて記録材Pの搬送方向を前後反転させ、両面搬送経路25に導く。記録材Pは両面搬送ローラ対26、27、28を用いて再び搬送ローラ対15へ搬送される。搬送ローラ対15以降は、記録材Pの表面に画像形成を行うときと同一の処理が実行され、記録材Pは定着器19を通過後、プリンタ100の機外へ排出される。
【0024】
<紙粉回収ユニットの説明>
紙粉回収ユニット16の構成について説明する。
図2は、紙粉回収ユニット16の断面図である。実施例1では、紙粉取りローラ17は、内部に空洞Spを有している。以下、詳細に説明する。
【0025】
紙粉取りローラ17は、表層52、表層52の内側に配置され空洞Spを形成する金属ローラ51、を有している。金属ローラ51は、三ツ矢管形状をしており、金属ローラ51の回転軸方向における端部の管口から空洞Spの内部に後述する送風ファン58(
図5参照)により風を送り込むことが可能である。表層52は帯電されやすいフッ素樹脂からなるチューブであり、金属ローラ51を被覆している。
【0026】
紙粉取りローラ17は矢印Aの向きに、対向ローラ18は矢印Bの向きに回転することで、対向面が同一方向に回転し、記録材Pを搬送する。帯電部材であるスポンジ53は、紙粉取りローラ17の表層52を帯電させやすいウレタンフォームの樹脂を用いている。スポンジ53は紙粉取りローラ17に当接され、紙粉取りローラ17が回転することで紙粉取りローラ17が摩擦帯電される。紙粉取りローラ17と対向ローラ18との間に記録材Pを挟持して搬送する際に、記録材Pに付着している紙粉Dは、摩擦帯電された紙粉取りローラ17に静電吸着され付着する。
【0027】
支持部材54はスポンジ53を支持し、バネ55によって紙粉取りローラ17に向けて付勢されており、スポンジ53は、紙粉取りローラ17の表層52に圧接されてその表面に付着した紙粉Dを掻き取る。掻き取られた紙粉Dはカバー56内のスクリュー57周囲の空間に貯まる。
【0028】
図3にスクリュー57の模式図を示す。スクリュー57は細長い円柱状の軸57aに螺旋状のリブ57bが形成されている。リブ57bは、スクリュー57の長手方向における中心部を基準として螺旋の向きが逆となるように形成されている。スクリュー57が回転することでスポンジ53によって掻き取られた紙粉Dは、記録材Pの幅方向における両端に向けて搬送される。なお、スクリュー57は
図2に示す矢印C方向に回転する。ここで、幅方向とは、記録材Pの搬送方向Rに直交する方向である。スクリュー57の両端に搬送された紙粉Dは、スクリュー57の両端に配置された紙粉回収ボックス(不図示)に回収される。カバー56は、紙粉取りローラ17とスクリュー57とを覆うことで、紙粉Dを飛散させない役割を果たす。
【0029】
図4に紙粉回収ユニット16の長手方向(上述した幅方向)における模式図を示す。紙粉取りローラ17の幅Lrは、記録材Pの全面から紙粉Dを取り除くことを可能にするために、記録材Pの幅Lpよりも広くなっている(Lr>Lp)。スポンジ53は、紙粉取りローラ17の全域を摩擦帯電するために、紙粉取りローラ17の幅方向全体にわたって設けられている。スクリュー57の幅Lsは、紙粉取りローラ17の幅Lrよりも記録材Pの幅方向に長く形成されている(Ls>Lp)。スクリュー57の両端には、上述したように、スクリュー57によって幅方向の両端に搬送された紙粉Dが紙粉回収ボックス(不図示)に貯めこまれる。
【0030】
<送風ファンの風路>
実施例1の特徴である紙粉取りローラ17の冷却について説明する。
図5(a)は、プリンタ100の側面図である。送風ファン58は、回転させることで風を発生させ、紙粉取りローラ17を冷却するための送風手段であり、プリンタ100の外部から内部へ風を供給する。送風ファン58は、プリンタ100本体の側面に配置されている。
【0031】
図5(b)は、送風ファン58のエアフローを示す模式図である。送風ファン58及びダクト59は、搬送方向Rに直交する方向において空洞Spの一方の端部17aに配置されている。ダクト59は、送風ファン58により送られた風を空洞Spに導いている。これにより、送風ファン58からの風は、空洞Spの内部を一方の端部17aから他方の端部17bに向かって流れる。ダクト59は、送風ファン58により送られた風を紙粉取りローラ17へ導いている。より詳細には、ダクト59は、送風ファン58で発生させた風を集めて紙粉取りローラ17の空洞Sp内へと導くために配置されている。
図5(b)中に示す矢印は、送風ファン58で発生した風の流れ(エアフロー)を示している。なお、Mは風の速度を測定する位置(以下、風速測定位置Mという。)であり、後述する。
【0032】
紙粉取りローラ17の空洞Sp内へと導かれた風は、熱伝導性の高い金属ローラ51に直接吹きあたるため、紙粉取りローラ17を効率よく空冷することが可能となる。冷却された紙粉取りローラ17は、紙粉取りローラ17を通過する記録材Pから熱を奪うことができるため、その直後に記録材Pと接触する感光ドラム1やその周辺の現像部の温度上昇を抑制できる。また、現像部に格納されるトナーの劣化を抑制できる。
【0033】
<検証検討の説明>
実施例1の検証結果について説明する。紙粉取りローラ17の昇温に起因する不具合現象の発生有無を送風ファン58の有無で比較した。なお、温度23℃、湿度60%の環境下で検証を行った。表1に、記録材P(XEROX社製Vitality 75g/m2レターサイズ紙を使用)を用い、連続両面印刷で1000枚の搬送(通紙)を行ったときの紙粉取りローラ17の表層52、及び、現像ローラ3の表面の温度と画像濃度の検証結果を示す。紙粉取りローラ17の表層52の温度、及び、現像ローラ3の表面の温度は、熱電対で測定した。画像濃度は、ベタ黒画像を出力し、分光濃度計X-RITE504(X-RITE社製)で測定した。
【0034】
【表1】
比較例として、送風ファン58を回転させず、両面連続印刷を行った。1枚目の両面印刷時には、実施例1も比較例も紙粉取りローラ17の表層52の温度も現像ローラ3の表面の温度も23℃であった。また、1枚目の両面印刷時には、画像濃度は1.4であった。
【0035】
これに対し、両面連続印刷の時間、言い換えれば枚数が増えるに従い、定着器19で加熱定着された記録材Pが紙粉取りローラ17を通過する際に、記録材Pの熱が紙粉取りローラ17に伝わり紙粉取りローラ17の温度が上昇していった。また、現像ローラ3の表面温度も上昇していった。
【0036】
比較例では、1000枚の両面印刷を行ったときの紙粉取りローラ17の温度は45℃であった。また、記録材Pが冷却されない状態で感光ドラム1を通過するので、感光ドラム1の温度も上昇し、更には、感光ドラム1の温度が現像ローラ3にも伝わることで現像ローラ3の温度も45℃となった。現像ローラ3の温度が上昇するとトナー容器4内のトナーが熱的な影響を受けて劣化し画像部における濃度低下の不具合が発生した。1枚目の画像濃度が1.4であったのに対し、1000枚目の両面印刷時の画像濃度は1.1に低下した。
【0037】
一方、実施例1では、送風ファン58を回転させて、紙粉取りローラ17を冷却しながら両面連続印刷を行った。1000枚の両面印刷を行ったときの紙粉取りローラ17の温度は32℃であった。紙粉取りローラ17の温度上昇を抑制できたので、紙粉取りローラ17を通過する際に記録材Pを冷却することができ、1000枚の両面印刷を行ったときの現像ローラ3の温度は35℃であった。その結果、トナーが熱的な影響を受けることがなく、1000枚目の両面印刷時の画像濃度も1.4で、濃度低下の不具合は発生しなかった。
【0038】
なお、実施例1における送風ファン58を回転させたときの風速は0.1m/sであった。この風速は、
図5(b)に示す風速測定位置Mに風速計を配置することで、ダクト59と紙粉取りローラ17との間の空間で、紙粉取りローラ17の空洞Sp内へ導かれる風を測定した。風速計は、多点式アネモマスターPRO MODEL1590(日本カノマックス社製)を使用した。
【0039】
以上、説明したように、実施例1によれば、紙粉取りローラ17の昇温を防ぐことが可能になる画像形成装置を提供することができる。なお、実施例1は、搬送ベルト8を用いて記録材Pを搬送しながらトナー像を記録材Pに転写する搬送ベルト方式のカラー画像形成装置を用いて説明したが、この構成に限定されない。例えば、中間転写ベルトにトナー像を転写した後に、中間転写ベルトから記録材Pにトナーを一括転写する中間転写方式のカラー画像形成装置でもよい。更には、搬送ベルト8を有さないモノクロの画像形成装置においても適用できる。
【0040】
以上、実施例1によれば、紙粉取りローラに起因する画像不良の発生を低減させることができる。
送風ファン58は、回転させることで風を発生させ、紙粉取りローラ17の表層52に付着した水分を除去するための送風手段である。送風ファン58は、実施例1と同様にプリンタ100本体側面に配置されている。なお、Nは風の速度を測定する位置(以下、風速測定位置Nという。)であり、後述する。
入口ダクト73は、送風ファン58により送られた風を紙粉取りローラ17へ導いている。より詳細には、入口ダクト73は、送風ファン58で発生させた風を紙粉取りローラ17の表層52まで導くために配置されている。図中に示す矢印は、送風ファン58で発生した風が入口ダクト73によってローラダクト71に導かれ、ローラダクト71の複数の穴Hから風が噴き出すことで紙粉取りローラ17の表層52の面に当たることを示したエアフローである。
紙粉取りローラ17の表層52に風を当てることで、紙粉取りローラ17の表層52に付着した水分を除去することが可能となる。したがって、高湿環境下で吸湿した記録材Pが紙粉取りローラ17を通過し、紙粉取りローラ17の表層52に水分が付着した場合においても、送風ファン58よる送風で水分を効率よく除去できる。その結果、帯電部材であるスポンジ53の帯電性能の低下を防ぎ、安定した紙粉回収性能を発揮することが可能になる。
紙粉取りローラ17の帯電性能を比較するため、紙粉取りローラ17の表面電位を測定した。表面電位の測定は、高速表面電位計モデル370(TREK社製)で行った。表面電位は、絶対値が大きい程、紙粉Dを静電吸着しやすいので紙粉回収性能がよい。表2に連続片面印刷で1000枚の通紙を行ったときの紙粉取りローラ17の表面電位と不具合である帯電不良の検証結果を示す。
比較例として、送風ファン58を回転させず、片面連続印刷を行った。紙粉取りローラ17の表面電位は、1枚目が-3000Vであったのに対し、1000枚目は-1500Vであり、絶対値が低下した。記録材Pが紙粉取りローラ17を通過する際、記録材P中に含まれる水分の紙粉取りローラ17への付着量が増加し、紙粉取りローラ17の帯電性能が低下し、紙粉回収性能が低下した。紙粉取りローラ17で回収できない紙粉量が増加するため、感光ドラム1への紙粉転移量が増加し、その紙粉が帯電ローラ2に付着することによる帯電不良に伴う画像不良が発生した(「発生あり」)。
一方、実施例2では、送風ファン58を回転させて、紙粉取りローラ17の表層52に風を当てながら片面連続印刷を行った。放置紙の水分が紙粉取りローラ17に付着しても、紙粉取りローラ17の表層52に風を当てることで水分を除去することができたので、紙粉取りローラ17の帯電性能の低下が抑制できた。1000枚の片面印刷を行ったときの紙粉取りローラ17の表面電位は、-2500Vであり、紙粉取りローラ17の帯電性能の低下を抑制できた。紙粉Dが帯電ローラ2に付着することによる帯電不良の不具合も発生しなかった(「発生なし」)。
以上、説明したように、実施例2によれば、紙粉取りローラ17に風を当て、紙粉取りローラ17の表層52に付着した水分の付着量を低減し、安定した紙粉回収性能を発揮する画像形成装置を提供することができる。なお、実施例2は、送風ファン58で発生した風が入口ダクト73によってローラダクト71に導かれ、ローラダクト71の複数の穴Hから風が噴き出すことで紙粉取りローラ17の表層52の面に当たる構成とした。しかし、送風手段は、送風ファン58に限定されるものではない。また、ローラダクト71、ローラダクト71の穴H、入口ダクト73の構成に限定されるものではなく、紙粉取りローラ17の表層52に付着した水分の付着量を低減できればよい。さらに、送風ファン58の風を紙粉取りローラ17内部に送りつつ、ローラダクト71にも送るように構成してもよい。