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特開2025-38516MCF接続デバイス及びMCF接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038516
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】MCF接続デバイス及びMCF接続方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/28 20060101AFI20250312BHJP
   H04J 14/00 20060101ALI20250312BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20250312BHJP
   H04B 10/25 20130101ALI20250312BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20250312BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20250312BHJP
   H04B 10/071 20130101ALN20250312BHJP
【FI】
G02B6/28 N
H04J14/00
H04B10/077
H04B10/25
G02B6/32
G02B6/02 461
H04B10/071
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145166
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】勝倉 大輔
【テーマコード(参考)】
2H137
2H250
5K102
【Fターム(参考)】
2H137AA01
2H137AB05
2H137BA18
2H137BB12
2H137BC02
2H137BC17
2H137BC31
2H137BC53
2H137BC55
2H137BC61
2H250AC17
2H250AC37
2H250AC64
2H250AC66
2H250AH35
5K102AD01
5K102LA33
5K102LA42
5K102LA52
5K102PC12
5K102PC13
5K102PH49
5K102RB02
(57)【要約】
【課題】
MCFを伝搬する光信号を、FIFOを使用せずに分岐及び結合する技術を提供する。
【解決手段】
MCF接続デバイスは、それぞれが複数のコアを備えるMCF(multicore fiber)である第1のMCF、第2のMCF及び第3のMCFと、第1のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光である光線群を生成する第1の光コリメータと、光線群の少なくとも一部を、第1の方向及び前記第1の方向とは異なる第2の方向へ所定の分岐比で分岐する第1の光スプリッタと、第1の方向へ出力される光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、第2のMCFの複数のコアと1対1で結合させる第2の光コリメータと、第2の方向へ出力される光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる第3の光コリメータと、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数のコアを備えるMCF(multicore fiber)である第1のMCF、第2のMCF及び第3のMCFと、
前記第1のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光である光線群を生成する第1の光コリメータと、
前記光線群の少なくとも一部を、第1の方向及び前記第1の方向とは異なる第2の方向へ所定の分岐比で分岐する第1の光スプリッタと、
前記第1の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第2のMCFの複数のコアと1対1で結合させる第2の光コリメータと、
前記第2の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる第3の光コリメータと、
を備えるMCF接続デバイス。
【請求項2】
前記光線群に含まれるコリメート光は互いに重ならない、請求項1に記載されたMCF接続デバイス。
【請求項3】
前記第1の光スプリッタは前記光線群に含まれるコリメート光のうち、所定の波長のコリメート光を他の波長とは異なる分岐比で分岐する、請求項1又は2に記載されたMCF接続デバイス。
【請求項4】
前記所定の波長は、監視光を含む波長帯である、請求項3に記載されたMCF接続デバイス。
【請求項5】
前記第1の光スプリッタは、前記光線群に含まれるコリメート光のうち、監視光を含むコリメート光のみを分岐する、請求項1又は2に記載されたMCF接続デバイス。
【請求項6】
前記第1の光スプリッタは、前記監視光を含むコリメート光のみを透過する開口部を備える、請求項5に記載されたMCF接続デバイス。
【請求項7】
第4のMCFと、
前記第4のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光である光線群を生成する第4の光コリメータと、
前記第2の方向へ分岐された光線群と前記第4の光コリメータにおいて生成された光線群とを結合する第2の光スプリッタと、備え、
前記第3の光コリメータは、前記第2の光スプリッタによって結合された複数のコリメート光のそれぞれを、前記第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる、
請求項1又は2に記載されたMCF接続デバイス。
【請求項8】
第3の光スプリッタを備え、
前記第2の光コリメータは、前記第2のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光線群を生成し、
前記第3の光スプリッタは、前記第2の光コリメータにおいて生成された光線群と、前記第4の光コリメータにおいて生成された光線群とを結合する、
請求項7に記載されたMCF接続デバイス。
【請求項9】
前記第3の光スプリッタは、
前記第1の光コリメータと前記第2の光コリメータとの間に配置され、前記第2の光コリメータにおいて生成された光線群の方向を変える第4の光スプリッタと、
前記第4の光スプリッタにおいて方向が変えられた前記光線群と前記第4の光コリメータにおいて生成された光線群とを結合する第5の光スプリッタと、
を備える請求項8に記載されたMCF接続デバイス。
【請求項10】
それぞれが複数のコアを備えるMCF(multicore fiber)である第1のMCF、第2のMCF及び第3のMCFとの間を接続するMCF接続方法であって、
前記第1のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光線群を生成し、
前記光線群の少なくとも一部を、第1の方向及び前記第1の方向とは異なる第2の方向へ所定の分岐比で分岐し、
前記第1の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第2のMCFの複数のコアと1対1で結合させ、
前記第2の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる、
MCF接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MCF接続デバイス及びMCF接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコアファイバ(multi core fiber, MCF)を用いた、空間光多重伝送方式の実用化が進められている。MCFは1本の光ファイバに複数のコアを備える。このため、シングルコアファイバ(single core fiber, SCF)に代えてMCFを用いることによって、光伝送システムの伝送容量の拡大が可能となる。
【0003】
MCFを用いた伝送路(MCF伝送路)の中途には、光増幅器などの光デバイスが配置される場合がある。しかし、多くの光デバイスはSCFをインタフェースとしており、MCFと直接接続できる光デバイスはまだ少ない。このため、MCFと光デバイスとを接続するために、FIFO(fan-in/fan-out)が用いられる。FIFOは一端がMCFであり、他端が複数のSCFである光部品である。FIFOは、MCFが備える複数のコアのそれぞれを、SCFをインタフェースとする光部品と接続できる。従って、FIFOを用いることにより、SCFをインタフェースに持つ光デバイスを、MCF伝送路に挿入することができる。
【0004】
本開示に関連して、特許文献1には、励起光源をマルチコアEDFに結合するための波長分割多重カプラを備える光増幅器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/171103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、光伝送システムにおけるループバック回路では、下り光信号を分岐し、分岐された下り光信号を上り光信号の光路と結合させる必要がある。このような分岐及び結合には、SCFをインタフェースとする光カプラが用いられる。そして、上述のように、SCFをインタフェースとする光部品とMCFとの接続には、一般的にはFIFOが用いられる。このため、MCFを伝搬する光をコア毎に分岐及び結合する場合には、FIFOを用いてMCFの各コアをSCFに変換し、SCF毎に光カプラを接続する必要がある。しかしながら、実用化されているFIFOはコア数の増加につれて損失が大きくなるため、コア数の多いMCFが光伝送路として用いられた場合に、FIFOの損失に起因して光信号の損失が増大する恐れがある。
【0007】
本開示は、FIFOを用いることなくMCFを伝搬する光を分岐及び結合するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るMCF接続デバイスは、それぞれが複数のコアを備えるMCF(multicore fiber)である第1のMCF、第2のMCF及び第3のMCFと、
前記第1のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光である光線群を生成する第1の光コリメータと、
前記光線群の少なくとも一部を、第1の方向及び前記第1の方向とは異なる第2の方向へ所定の分岐比で分岐する第1の光スプリッタと、
前記第1の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第2のMCFの複数のコアと1対1で結合させる第2の光コリメータと、
前記第2の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる第3の光コリメータと、
を備える。
【0009】
本開示に係るMCF接続方法は、それぞれが複数のコアを備えるMCF(multicore fiber)である第1のMCF、第2のMCF及び第3のMCFとの間を接続するMCF接続方法であって、
前記第1のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光線群を生成し、
前記光線群の少なくとも一部を、第1の方向及び前記第1の方向とは異なる第2の方向へ所定の分岐比で分岐し、
前記第1の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第2のMCFの複数のコアと1対1で結合させ、
前記第2の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、MCFを伝搬する光を、FIFOを使用せずに分岐及び結合する技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】MCF接続デバイスの構成例を示す図である。
図2】光コリメータの構成例を示す図である。
図3】MCF接続デバイスの構成例を示す図である。
図4】MCF接続デバイスの光路の例を説明する図である。
図5】監視光の光路の例を説明する図である。
図6】光スプリッタの波長特性の例を示す図である。
図7】監視光の光路の例を説明する図である。
図8】戻り光の光路の例を説明する図である。
図9】MCF伝送システムの構成例を示す図である。
図10】MCF伝送システムの構成例を示す図である。
図11】MCF伝送システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態について図面を参照して以下に説明する。図中に示された矢印の方向は信号等の向きの例示であり、矢印の長さ及び太さは信号等の強度を意味しない。また、実施形態及び図面では既出の要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本開示に係るMCF接続デバイス100の構成例を示す図である。MCF接続デバイス100は、MCF101-103、光コリメータ111-113、光スプリッタ121を備える。MCF101-103は、いずれも、複数のコアを備えるマルチコアファイバである。本開示ではMCF101-103のコア数は同一である場合について説明する。
【0014】
ここで、光スプリッタ121は、第1の光スプリッタと呼ぶことができる。MCF101、MCF102及びMCF103は、それぞれ、第1のMCF、第2のMCF及び第3のMCFと呼ぶことができる。また、光コリメータ111、光コリメータ112及び光コリメータ113は、それぞれ、第1の光コリメータ、第2の光コリメータ及び第3の光コリメータと呼ぶことができる。
【0015】
光コリメータ111は、MCF101が備える複数のコアのそれぞれの断面から放射された光を、それぞれ1個のコリメート光に変換する。すなわち、光コリメータ111は、MCF101のそれぞれのコアを伝搬する光を、1対1でコリメート光に変換する。従って、光コリメータ111は、MCF101のn本のコアから出力される光を、n本のコリメート光に変換する。光コリメータ112及び113も光コリメータ111と同様の機能を備える。光コリメータ111-113の間を伝搬する複数のコリメート光を、以下では光線群と呼ぶことがある。また、光線群に含まれるコリメート光は互いに重ならない。また、図1には個々のコリメート光は図示されておらず、図1の光コリメータ111-113の間の破線は光線群が存在しうる領域を示す。なお、本開示において、光コリメータから出力され、あるいは光コリメータに入力される「コリメート光」は、空間を伝搬する光のビーム径が伝搬距離により変化しない場合のほか、光コリメータ間の光学的な結合が可能である程度のビーム径の変化がある光を含む。
【0016】
光スプリッタ121は、光コリメータ111から出力された光線群を、第1の方向及び第2の方向へ所定の分岐比で分岐する。第2の方向へ分岐されなかったコリメート光は、第1の方向へ伝搬する。第1の方向は例えば光コリメータ111の光線群と同一の方向であり、第2の方向はこれと直角な方向である。すなわち、図1においては、第1の方向は光コリメータ111から光コリメータ112への方向であり、第2の方向は光コリメータ111から光コリメータ113への方向である。しかし、第2の方向は第1の方向と異なっていればよい。光スプリッタ121は、光線群に含まれるコリメート光のうち一部のコリメート光のみを所定の分岐比で分岐してもよい。
【0017】
光スプリッタ121としては、空間光学系で用いられる一般的な仕様のものが使用できる。例えば、図1に模式的に示すように、光スプリッタ121は2個のプリズムからなり、これらの張り合わせ面に、所定の特性によって光を分岐する薄膜が形成されていてもよい。図1は、2個のプリズムがそれぞれ直角二等辺三角形を底面とする三角柱であり、斜辺を含む側面に薄膜が形成された例を示す。なお、本開示における「光スプリッタ」は、一般的な光スプリッタと同様に、光を分岐する機能のみならず、光を結合する機能をも有する。光スプリッタが光を分岐あるいは結合する特性には、例えば、反射率、透過率、結合率、波長特性がある。光スプリッタは、これら所定の特性となるように製造される。
【0018】
光コリメータ112は、光スプリッタ121を透過した光線群に含まれる複数のコリメート光を、MCF102のコアと1対1で結合させる。すなわち、光コリメータ112は、光スプリッタ121から第1の方向へ出力される光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、MCF102の複数のコアと1対1で結合させる。
【0019】
また、光コリメータ113は、光コリメータ111から出力され、光スプリッタ121において反射された光線群に含まれるコリメート光を、MCF103のコアと1対1で結合させる。すなわち、光コリメータ113は、光スプリッタ121から第2の方向へ出力される光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、MCF103の複数のコアと1対1で結合させる。
【0020】
なお、MCF接続デバイス100における光の伝搬方向は、上記の説明に限定されない。例えば、光コリメータ112は、MCF102から入力された光を光線群に変換して、光スプリッタ121へ出力してもよい。この場合、光スプリッタは、当該光線群の一部または全部を光コリメータ111の方向へ透過させる。光スプリッタ121を透過したコリメート光のそれぞれは、光コリメータ111を介して、MCF101のコアと1対1で結合できる。同様に、光コリメータ113から出力され、光スプリッタ121において反射されたコリメート光のそれぞれは、光コリメータ111を介して、MCF101のコアに1対1で結合される。
【0021】
このような構成を備えるMCF接続デバイス100は、FIFOを用いることなくMCF間を伝搬する光を分岐及び結合できる。その理由は、MCF接続デバイス100は、MCF101-103の間を、光コリメータ111-113を用いた光学系を介してコア毎に結合するとともに、光コリメータ111―113の間に光スプリッタ121を備えているからである。
【0022】
(光コリメータの構成例)
図2は、光コリメータ111の構成例を示す図である。光コリメータ112及び113も、光コリメータ111と同様の構成を備える。光コリメータ111はレンズ115を備え、レンズ115の一方の側はMCF101の各コアから放射される光と光学的に結合する。レンズ115は、MCF101から出力される光を、それぞれ、コア毎にコリメート光に変換し、レンズ115の他方の側から光線群として出力する。それぞれのコリメート光の伝搬方向は互いに平行である。すなわち、MCF101がn本のコアを備える場合には、レンズ115は、n本のコアから放射される光をn本のコリメート光に変換する。nは自然数である。図2は、MCF101のコアが4本(n=4)の場合の例を示す。ただし、本開示において、それぞれのMCFのコアの数は4本に限定されない。
【0023】
上述のように、レンズ115は、それぞれのコアから出力された光を、コリメート光に変換する。レンズ115の構成は限定されない。例えば、レンズ115は、MCF101の断面を光学的に拡大するレンズである。あるいは、レンズ115として、アレイレンズが用いられてもよい。アレイレンズは複数の微小レンズが平面上に配列された構成を備える。微小レンズは、それぞれがMCF101のコアと1対1に対応し、1個の微小レンズがMCF101の1個のコアから出力される光をコリメート光に変換できるように配列される。MCF101-103の複数のコアのそれぞれの間は、このような構成を備える光コリメータ111-113を介して、1対1で光学的に接続される。
【0024】
(第2の実施形態)
図3は、本開示に係るMCF接続デバイス200の構成例を示す図である。MCF接続デバイス200は、MCF101-104、光コリメータ111-114、光スプリッタ121-124を備える。MCF101-104は、いずれも、複数のコアを備えるマルチコアファイバである。MCF101及び103はMCFケーブル105に含まれており、MCF102及び104はMCFケーブル106に含まれている。また、本開示では、MCF101-104のコア数nは同一であるとして説明する。MCF101-104は、それぞれ、第1-第4のMCFと呼ぶことができる。また、光コリメータ111-114は、それぞれ、第1-第4の光コリメータと呼ぶことができる。
【0025】
光コリメータ111-114は、それぞれ、MCF101-104の断面から放射された光を、コア毎にコリメート光に変換する。すなわち、光コリメータ111-113は、MCF接続デバイス100と同様に、それぞれ、MCF101-103が備える複数のコアから出力された光をコリメート光に変換する。光コリメータ114は、MCF104が備える複数のコアから出力された光を1対1でコリメート光に変換する。
【0026】
MCF接続デバイス200は、MCF接続デバイス100と比較して、光スプリッタ123及び124、並びに光コリメータ114及びMCF104をさらに備える。光コリメータ111と光コリメータ112との間には、光スプリッタ121及び122が配置される。光コリメータ113と光コリメータ114との間には、光スプリッタ123及び124が配置される。光スプリッタ121-124は独立した光部品でもよく、これらのうち複数の光スプリッタが一体化された構造を備えていてもよい。
【0027】
ここで、光スプリッタ122は、第2の光スプリッタと呼ぶことができる。また、光スプリッタ123及び124を併せて、第3の光スプリッタと呼ぶことができ、光スプリッタ123及び124は、それぞれ、第4の光スプリッタ及び第5の光スプリッタと呼ぶことができる。すなわち、第3の光スプリッタは、第4及び第5の光スプリッタを含む。
【0028】
MCF接続デバイス200において、MCF101の各コアとMCF102の各コアとは、1対1で光学的に結合される。MCF101の各コアとMCF103の各コアとは、1対1で光学的に結合される。また、MCF103の各コアとMCF104の各コアとは、1対1で光学的に結合される。さらに、MCF102の各コアとMCF103の各コアとは、1対1で光学的に結合される。これらの接続において光の伝搬方向は限定されない。
【0029】
光コリメータ111及び112は、MCF101とMCF102とが、光スプリッタ121及び122を透過する光路によって、コア毎に接続されるように配置される。光コリメータ113及び114は、MCF103とMCF104とが、光スプリッタ123及び124を透過する光路によって、コア毎に接続されるように配置される。さらに、光コリメータ111及び113は、MCF101とMCF103とが、光スプリッタ121及び123において反射する光路によって、コア毎に接続されるように配置される。加えて、光コリメータ112及び114は、MCF102とMCF103とが、光スプリッタ122及び124において反射し、光スプリッタ123を透過する光路によって、コア毎に接続されるように配置される。
【0030】
図4は、MCF接続デバイス200の内部を伝搬する光線群の光路を説明する図である。図4の矢印は光線群の光路を端的に示すものであり、特定のコリメート光の位置を示すものではない。図4において、光コリメータ111から出力された光線群は光スプリッタ121及び122を所定の透過率で透過して光コリメータ112と結合する(光路1)。一方、光コリメータ111から出力され、光スプリッタ121及び123において所定の反射率で反射された光線群は、光コリメータ113と結合する(光路2)。
【0031】
さらに、光コリメータ114から出力された光線群は光スプリッタ124及び123を所定の透過率で透過して光コリメータ113と結合する(光路3)。そして、光コリメータ112から出力された光線群は、光スプリッタ122及び124において所定の反射率で反射され、さらに光スプリッタ123を所定の透過率で透過して光コリメータ113と結合する(光路4)。
【0032】
このような構成を備えるMCF接続デバイス200は、FIFOを用いることなくMCF101-104を伝搬する光信号を分岐及び結合できる。その理由は、MCF接続デバイス200は、MCF101-104の間を、光コリメータ111-114を用いた光学系を介してコア毎に結合するとともに、光コリメータ111―114の間に光スプリッタ121-124を備えているからである。
【0033】
図5図7を参照して、MCF接続デバイス200を用いたループバック回路について説明する。図5は、MCF接続デバイス200から光スプリッタ121及び123を抜粋した構成の例を示す図である。以下に説明するように、光スプリッタ121及び122を用いて、監視光を含む波長帯の光をMCF101からMCF103へループバックさせることができる。
【0034】
図6は、光スプリッタ121の波長特性の例を示す。光スプリッタ121の波長帯W1(第1の波長帯)の透過率は100%であり、波長帯W2(第2の波長帯)の透過率は90%である。波長帯W1の範囲はλ1以上λ2未満であり、波長帯W2の範囲はλ2以上λ3未満である。なお、本開示において、透過率が100%であることは、光スプリッタ121における透過損失が無視できる程度に小さいことを示す。光スプリッタ123は透過率が90%(すなわち、反射率が10%)のハーフミラーである。なお、本開示において「ハーフミラー」という名称は透過率が50%以外の場合にも用いられる。
【0035】
MCF101を伝搬する光には、信号光と監視光とが含まれる場合がある。信号光はユーザデータを含む光信号であり、MCF101の他端に接続されたn台の光送信器から、n本のコアのそれぞれに送信される。nはMCF101-104のそれぞれのコア数である。信号光は、MCF101のn本のコアを用いて独立に伝送される。波長帯W1は、信号光の伝送に用いられる。波長帯W2は、信号光又は監視光の伝送に用いられる。波長帯W1と波長帯W2とは重複しない。図6の波長特性は、光スプリッタ121が、所定の波長のコリメート光を他の波長とは異なる分岐比で分岐することを示す。この所定の波長は、監視光を含む波長帯である。
【0036】
信号光は複数のキャリアが波長多重されたWDM(wavelength division multiplexing)信号である。監視光は光伝送路の監視のために用いられる光信号であり、ユーザデータを含まない。監視光は、MCF接続デバイス200によってMCF101からMCF103へループバックされる。監視光は、波長がλ21である1個のキャリアのみによって伝送される。波長帯W1及びW2への信号光及び監視光の割り当ては、コア毎に異なる。なお、一般に、MCF伝送路の監視はMCF毎に行われる。このため、MCF101が備える複数のコアのうち、1本のコアのみが監視光の伝送に使用される。すなわち、MCF101-104においては、1本のコアのみに監視光の波長帯が割り当てられる。波長帯W2が監視光の伝送に用いられるコアでは、波長帯W2は信号光の伝送に用いられない。波長帯W2が監視光の伝送に用いられないコアでは、波長帯W2は信号光の伝送に用いられてもよい。
【0037】
図5において、MCF101を伝搬した光信号は、光コリメータ111において光線群に変換される。監視光は、MCF101の1本のコアによって伝送される。すなわち、監視光は、光線群の中の1個のコリメート光に含まれる。図5では例として3本のコリメート光が記載されており、3本のうち中央の1個のコリメート光のみに監視光が含まれる。監視光が含まれるコリメート光では、信号光は波長帯W1のみを用いて伝送される。他の2本のコリメート光では、信号光は波長帯W1及びW2を用いて伝送される。光スプリッタ121は、監視光が含まれる波長帯である波長帯W2の光を10%の反射率で反射し、光スプリッタ123の方向へ出力する。光スプリッタ121は、監視光が含まれない波長帯である波長帯W1の光を100%の透過率で透過し、光スプリッタ122の方向へ出力する。光スプリッタ123は、光スプリッタ121において反射された波長帯W2の光を、10%の反射率で反射して光コリメータ113へ出力する。この際、光スプリッタ123は、MCF104からMCF103へ伝搬する光線群と、光スプリッタ121において反射された光線群とを結合し、結合された光線群を光コリメータ113へ出力する。
【0038】
このような構成を備えるMCF接続デバイス200は、MCF104とMCF102とをコア毎に接続するとともに、MCF101を伝搬した監視光を、MCF103へループバックさせることができる。ここで、光スプリッタ121及び光スプリッタ123の監視光に対する反射率はいずれも10%(損失10dB)であるので、ループバックされる監視光の損失は合計で約20dBとなる。これは、一般的なループバック回路における監視光の損失と同等である。このため、MCF103の他端に一般的な光受信器を接続することで、当該光受信器によって監視光を検出できる。なお、MCF102を伝搬する光のうち、光スプリッタ123において監視光と結合されるコリメート光として伝送される光に関しては、あらかじめ波長帯W2を使用しないように設定されているものとする。
【0039】
図5の構成においては、光コリメータ111から出力されたコリメート光のいずれかに波長帯W2の信号光が含まれる場合も、その波長帯W2の信号光は光スプリッタ121において10%の反射率で反射される。そして、光スプリッタ121において反射された光は、光スプリッタ123においてMCF104を伝搬したコリメート光と結合される。ここで、光スプリッタ121において反射された光とMCF104からMCF103へ伝搬するコリメート光の信号光とがともに波長帯W2を使用しており、かつ、これらがMCF103の同一のコアに向かう場合もありうる。このような場合には、当該コアに向かうコリメート光において、信号光の混信が生じる恐れがある。
【0040】
このような混信の発生を回避するためには、監視光が含まれるコリメート光のみを光スプリッタ121から光スプリッタ123へ伝搬させることが好ましい。例えば、MCF接続デバイス200は、ループバックさせる監視光が含まれるコリメート光(以下、監視コリメート光という。)のみが光スプリッタ121から光スプリッタ123へ伝送される構成を備えてもよい。このような構成により、MCF101を伝搬した、波長帯W2の信号光が、光スプリッタ123においてMCF104を伝搬した波長帯W2の光と結合することを防ぐことができる。なお、上述のように、光スプリッタ123において監視光と結合される、MCF104から入力された光に関しては、あらかじめ信号光が波長帯W2を使用しないように設定されている。
【0041】
図7は、図5に示した光スプリッタ121に関する部分を変形した例である。本変形例においては、光スプリッタ121と光スプリッタ123との間に、遮蔽部141が設けられている。遮蔽部141はアパーチャ(開口部)を備える。アパーチャは、監視コリメート光のみを光スプリッタ121から光スプリッタ123へ伝搬させ、他の光を阻止する。遮蔽部141は、例えば、光スプリッタ121と光スプリッタ123との間に配置された、監視コリメート光が入射する位置にのみ小孔を持つ不透明な板である。すなわち、遮蔽部141は、光スプリッタ121において反射された光線群のうち、監視コリメート光のみを出力する。あるいは、遮蔽部141は、光スプリッタ121又は123と一体化されたプリズムの端面に形成された薄膜でもよい。当該薄膜は、監視コリメート光が伝搬する位置のみ監視光の波長λ21に対して透明であり、他の部分は波長帯W1及びW2に対して不透明である。このような構成により、光スプリッタ121は、監視光を含むコリメート光のみを光スプリッタ123へ出力できるため、光スプリッタ123において波長帯W2の信号光同士が結合されることを防ぐことができる。従って、図7の構成は、MCF103において、監視光のループバックに用いられるコア以外のコアにMCF101からの信号光がループバックされることに起因する混信を防ぐことができる。
【0042】
なお、光スプリッタ121と光スプリッタ123との間は、監視コリメート光を伝搬させることが可能な光導波路によって接続されてもよい。これにより、光スプリッタ121と光スプリッタ122との間に存在する迷光による監視光への影響を抑制できる。
【0043】
図8は、MCF接続デバイス200から光スプリッタ122、123及び124を抜粋した構成の例を示す図である。図8では、光スプリッタ122、123及び124を介した、光コリメータ112と光コリメータ113との間の光路(図4の光路4)について説明する。なお、簡単のため、図8ではMCF101から入力される試験光及びそれに対応して生成される戻り光のみが図示される。
【0044】
図8において、光スプリッタ122は図6に示す波長特性を持つ光フィルタであり、光スプリッタ123及び124は透過率が90%のハーフミラーである。すなわち、光スプリッタ122の波長帯W1の透過率は100%であり、波長帯W2の透過率は約90%である。以下で説明するように、光スプリッタ122は、信号光と逆方向にMCF102を伝搬する光(戻り光)を、MCF102からMCF103へ導くために用いられる。
【0045】
光ファイバ伝送路において、伝搬する光と逆向きの戻り光が伝搬する場合がある。戻り光は、光ファイバ内で発生する非線形現象に起因して発生する。光ファイバ伝送路に試験光(光パルス)を送信し、発生した戻り光を解析することで、光ファイバ伝送路の状態を監視する技術が知られている。このような監視のためには、MCF101に接続されたOTDR(optical time domain reflectometer)の光送信器から試験光を入力し、MCF102に接続された光受信器を用いて戻り光を解析できることが好ましい。MCF101及び102は同じMCFケーブル105に格納されているため、OTDRの光送受信部を同一の局舎に設置できる。
【0046】
図8の構成では、試験光と逆方向にMCF102を伝搬する戻り光は、光コリメータ113を介してMCF103に導かれる。そして、MCF103の他端に接続されたOTDRの光受信器において戻り光が検出される。検出された戻り光を解析することで、MCF102及びその先の光ファイバ伝送路の状態に関する情報が得られる。
【0047】
一般的に、非線形現象に起因して生じる戻り光の波長λ22は、試験光の波長とは異なる。また、図8において、試験光の波長は、試験光及び戻り光の波長がいずれも波長帯W2内となるように設定される。戻り光の波長λ22が波長帯W2内となるのであれば、試験光の波長は監視光と同じλ21であってもよい。
【0048】
また、試験光は、MCF101が備える複数のコアのうち、OTDRにおいて選択された1本のコアに入力される。戻り光の観測を行う際には、試験光及び戻り光が伝搬するコアを用いた信号光の伝送は停止されてもよい。MCF102を伝搬する戻り光は、光コリメータ112においてコア毎にコリメート光に変換される。光スプリッタ122は、戻り光が含まれる波長帯である波長帯W2の光を反射し、光スプリッタ124の方向へ出力する。光スプリッタ124は、MCF104からMCF103へ伝搬する光信号と、光スプリッタ122において反射された戻り光を、コリメート光ごとに結合し、結合されたコリメート光を光スプリッタ123へ出力する。また、戻り光を観測するコアは、試験光を伝送するコアと同一のコアであり、MCF102の複数のコアのうち1本であるとする。
【0049】
図8に示す光スプリッタ123は、光スプリッタ124から入力される戻り光と、光スプリッタ121において反射された試験光とを、コリメート光ごとに結合し、結合されたコリメート光を光コリメータ113へ出力する。光コリメータ111-114は、MCF101-104の各コアの結合によって上記の作用が得られるように、光学的に接続される。
【0050】
MCF接続デバイス200は、図3の構成を備えることにより、MCF101-104のコア間を1対1で接続できる。そして、MCF接続デバイス200は、MCF102を伝搬した戻り光を、MCF103に導くことができる。MCF103の他端にOTDRの光受信器を接続することで、光受信器は戻り光を受信し、MCF102の状態を監視できる。
【0051】
(第3の実施形態)
MCF接続デバイス200を用いたMCF伝送システムについて説明する。図9は、本開示に係るMCF伝送システム1の構成例を示す図である。MCF伝送システム1は、MCF伝送路11-14、MCF接続デバイス200、光中継器30、光トランシーバ21及び22を備える。MCF伝送路11-14は、それぞれ、MCF101-104を介してMCF接続デバイス200と接続される。本図において、MCF伝送路11-14及びMCF接続デバイス200は、7コアのMCFを備える。また、MCF101-104はMCF伝送路11-14とMCF接続デバイス200とを接続するインタフェースとして記載されている。MCF伝送路11-14とMCF101-104とは、それぞれ、融着又は光コネクタによって接続されていてもよい。
【0052】
光トランシーバ21は、7台の光送信器Tx1-Tx7、7台の光受信器Rx1-Rx7、及びFIFO211、212を備える。光トランシーバ21が備える7台の光送信器はFIFO211を用いてMCF伝送路11の異なるコアと接続される。光トランシーバ21が備える7台の光受信器は、FIFO212を用いてMCF伝送路13の異なるコアと接続される。光トランシーバ22の光送信器及び光受信器も、同様に、FIFO221及び222を用いて、MCF伝送路12及びMCF伝送路14と接続される。
【0053】
光トランシーバ21の光送信器Tx1-Tx7(第1の光送信器)が送信した信号光は、それぞれ、光トランシーバ22の光受信器Rx1-Rx7(第2の光受信器)において受信される。また、光トランシーバ22の光送信器Tx1-Tx7(第2の光送信器)が送信した信号光は、それぞれ、光トランシーバ21の光受信器Rx1-Rx7(第1の光受信器)において受信される。
【0054】
光トランシーバ21は、MCF伝送路11の7本のコアへ下り信号光を送信する。下り信号光はMCF伝送路11からMCF伝送路12へ伝送され、光トランシーバ22において受信される。光トランシーバ22は、MCF伝送路14の7本のコアへ上り信号光を送信する。上り信号光はMCF伝送路14からMCF伝送路13へ伝送され、光トランシーバ21において受信される。光中継器30は、MCFを増幅媒体としたMCF光増幅器を2台備え、一方は下り方向の光を増幅し、他方は上り方向の光を増幅する。MCF光増幅器は、MCF伝送路11、MCF伝送路13及びMCF接続デバイス200と、FIFOを介さずに直接接続される。MCF接続デバイス200は、第2の実施形態において説明した構成を備える。
【0055】
例えば、図9において、光トランシーバ21のTx1が送信した下り信号光は、光中継器30で増幅された後、MCF接続デバイス200を図4の光路1により通過し、MCF伝送路12を伝搬して、光トランシーバ22のRx1において受信される。光トランシーバ22のTx1が送信した上り信号光は、MCF接続デバイス200を図4の光路3により通過し、光中継器30及びMCF伝送路13を伝搬して、光トランシーバ21のRx1において受信される。
【0056】
一方、光トランシーバ21のTx1が下り監視光を送信する場合、下り監視光の一部は、光中継器30で増幅された後、図4の光路2により、MCF伝送路13へループバックされる。あるいは、光トランシーバ21において、Tx1が接続されていたコアにOTDRを接続して試験光を出力した場合には、MCF伝送路12を伝搬する下り方向の試験光に起因して発生した戻り光は、図4の光路4により、MCF伝送路12からMCF伝送路13へ伝搬する。MCF伝送路13を伝搬した戻り光は、光トランシーバ21において、Rx1に接続されたコアから受信される。
【0057】
このように、光トランシーバ21には、上り信号光に加えて、ループバックされた監視光及びMCF伝送路12において発生した戻り光が、MCF伝送路13から入力される。このような構成により、光トランシーバ21では、上り信号光に加えて、下り監視光又はMCF伝送路12からの戻り光を受信できる。
【0058】
MCF伝送システム1において、ループバック回路にFIFOが用いられる場合には、FIFOの損失を補償するために光中継器30の出力を増大させる必要があり、これは光中継器30の消費電力を増大させる。このような観点から、監視光や戻り光を光受信器へ導く光回路には、光回路の挿入損失を低減するためにFIFOを用いない構成とすることが好ましい。
【0059】
MCF伝送システム1では、監視光や戻り光を光受信器で受信可能とするための光回路として、MCF接続デバイス200が用いられる。MCF接続デバイス200はFIFOを用いることなく、MCF伝送路11-14の各コアを伝搬する光を分岐して、他のMCFのコアと結合させることができる。従って、MCF伝送システム1は、MCF接続デバイス200を用いることによって、監視光や戻り光を、FIFOを用いることなく信号光と結合させることを可能とする。
【0060】
(第4の実施形態)
図10は、本開示に係るMCF伝送システム2の構成例を示す図である。MCF伝送システム2は、図9に示したMCF伝送システム1に、MCF接続デバイス201を追加したものである。MCF接続デバイス201は、光トランシーバ21に関するMCF接続デバイス200の機能を、光トランシーバ22に対して提供する。すなわち、MCF接続デバイス201は、光トランシーバ22が送信した監視光のループバック回路を構成するとともに、MCF伝送路13を光トランシーバ22の方向へ伝搬する戻り光を、MCF伝送路12を介して光トランシーバ22へ導く。MCF伝送システム2におけるMCF接続デバイス201の構成はMCF接続デバイス200と同様である。そして、図10におけるMCF接続デバイス201の配置は、図9におけるMCF接続デバイス200を、逆方向の光に適用させるものである。このため、詳細な説明は省略する。
【0061】
この構成により、MCF伝送路12に接続された光トランシーバ22では、下り信号光に加えて、MCF伝送路14からループバックされた監視光、及び、上り信号光と逆方向にMCF伝送路13を伝搬する戻り光を受信できる。このような構成により、MCF伝送システム2は、下り方向及び上り方向の両方の監視光及び戻り光を監視できる。
【0062】
(第5の実施形態)
図11は、本開示に係るMCF伝送システム3の構成例を示す図である。MCF伝送システム3は、光トランシーバ21と光トランシーバ22との間に、従属接続された光中継器31-33が配置されている。光中継器31-33は、いずれもMCF光増幅器34を2台ずつ備える。2台のMCF光増幅器34の一方は下り方向の光を増幅し、他方は上り方向の光を増幅する。光中継器31-33は、MCF光増幅器34の前後に、MCF伝送システム2で説明したMCF接続デバイス200及び201を備える。このような構成により、MCF伝送システム3は、光中継器31-33のそれぞれの前後の区間を伝搬する監視光及び戻り光を、光トランシーバ21又は22へ伝送できる。これにより、MCF伝送システム3は、光中継器31-33のそれぞれの前後の区間におけるMCF伝送路を監視できる。
【0063】
なお、本開示の実施形態は以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
【0064】
(付記1)
それぞれが複数のコアを備えるMCF(multicore fiber)である第1のMCF、第2のMCF及び第3のMCFと、
前記第1のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光である光線群を生成する第1の光コリメータと、
前記光線群の少なくとも一部を、第1の方向及び前記第1の方向とは異なる第2の方向へ所定の分岐比で分岐する第1の光スプリッタと、
前記第1の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第2のMCFの複数のコアと1対1で結合させる第2の光コリメータと、
前記第2の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる第3の光コリメータと、
を備えるMCF接続デバイス。
【0065】
(付記2)
前記光線群に含まれるコリメート光は互いに重ならない、付記1に記載されたMCF接続デバイス。
【0066】
(付記3)
前記第1の光スプリッタは前記光線群に含まれるコリメート光のうち、所定の波長のコリメート光を他の波長とは異なる分岐比で分岐する、付記1又は2に記載されたMCF接続デバイス。
【0067】
(付記4)
前記所定の波長は、監視光を含む波長帯である、付記3に記載されたMCF接続デバイス。
【0068】
(付記5)
前記第1の光スプリッタは、前記光線群に含まれるコリメート光のうち、監視光を含むコリメート光のみを分岐する、付記1又は2に記載されたMCF接続デバイス。
【0069】
(付記6)
前記第1の光スプリッタは、前記監視光を含むコリメート光のみを透過する開口部を備える、付記5に記載されたMCF接続デバイス。
【0070】
(付記7)
第4のMCFと、
前記第4のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光である光線群を生成する第4の光コリメータと、
前記第2の方向へ分岐された光線群と前記第4の光コリメータにおいて生成された光線群とを結合する第2の光スプリッタと、備え、
前記第3の光コリメータは、前記第2の光スプリッタによって結合された複数のコリメート光のそれぞれを、前記第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる、
付記1乃至5のいずれか1項に記載されたMCF接続デバイス。
【0071】
(付記8)
第3の光スプリッタを備え、
前記第2の光コリメータは、前記第2のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光線群を生成し、
前記第3の光スプリッタは、前記第2の光コリメータにおいて生成された光線群と、前記第4の光コリメータにおいて生成された光線群とを結合する、
付記7に記載されたMCF接続デバイス。
【0072】
(付記9)
前記第3の光スプリッタは、
前記第1の光コリメータと前記第2の光コリメータとの間に配置され、前記第2の光コリメータにおいて生成された光線群の方向を変える第4の光スプリッタと、
前記第4の光スプリッタにおいて方向が変えられた前記光線群と前記第4の光コリメータにおいて生成された光線群とを結合する第5の光スプリッタと、
を備える付記8に記載されたMCF接続デバイス。
【0073】
(付記10)
前記第1のMCFに信号光を送信する光送信器と、
前記第3のMCFから信号光を受信する光受信器と、
付記1乃至8のいずれか1項に記載されたMCF接続デバイスと、を備えるMCF伝送システム。
【0074】
(付記11)
前記第1のMCFに信号光を送信する第1の光送信器と、
前記第3のMCFから信号光を受信する第1の光受信器と、
前記第4のMCFに信号光を送信する第2の光送信器と、
前記第2のMCFから信号光を受信する第2の光受信器と、
付記1乃至8のいずれか1項に記載されたMCF接続デバイスと、を備えるMCF伝送システム。
【0075】
(付記12)
それぞれが複数のコアを備えるMCF(multicore fiber)である第1のMCF、第2のMCF及び第3のMCFとの間を接続するMCF接続方法であって、
前記第1のMCFが備える複数のコアから出力された光のそれぞれを1対1でコリメート光に変換した光線群を生成し、
前記光線群の少なくとも一部を、第1の方向及び前記第1の方向とは異なる第2の方向へ所定の分岐比で分岐し、
前記第1の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第2のMCFの複数のコアと1対1で結合させ、
前記第2の方向へ出力される前記光線群に含まれる複数のコリメート光のそれぞれを、前記第3のMCFの複数のコアと1対1で結合させる、
MCF接続方法。
【0076】
(付記13)
前記光線群に含まれるコリメート光を互いに重ならないように配置する、付記12に記載されたMCF接続方法。
【0077】
(付記14)
前記光線群に含まれるコリメート光のうち、所定の波長のコリメート光を他の波長とは異なる分岐比で分岐する、付記12又は13に記載されたMCF接続方法。
【0078】
(付記15)
前記所定の波長は、監視光を含む波長帯である、付記14に記載されたMCF接続方法。
【0079】
(付記16)
前記光線群に含まれるコリメート光のうち、監視光を含むコリメート光のみを分岐する、付記14又は15に記載されたMCF接続方法。
【0080】
(付記17)
開口部によって前記監視光を含むコリメート光のみを透過させる、付記16に記載されたMCF接続方法。
【0081】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、本開示は、光海底ケーブルシステムのみならず陸上の光伝送システムに適用できる。また、各実施形態におけるMCF接続デバイスの説明は、当該MCF接続デバイスを含むMCF伝送システムの構成、及び、MCF接続方法をも開示する。
【0082】
また、それぞれの実施形態に記載された構成は、必ずしも互いに排他的なものではない。本開示の作用及び効果は、上述の実施形態の全部又は一部を組み合わせた構成によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1-3 MCF伝送システム
11-14 MCF伝送路
21、22 光トランシーバ
211、212、221、222 FIFO
30-33 光中継器
34 MCF光増幅器
100、200、201 MCF接続デバイス
101-104 MCF
105、106 MCFケーブル
111-114 光コリメータ
115 レンズ
121-124 光スプリッタ
141 遮蔽部
Rx1-Rx7 光受信器
Tx1-Tx7 光送信器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11