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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038819
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 11/00 20060101AFI20250312BHJP
   B65H 3/48 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
B65H11/00 A
B65H11/00 C
B65H3/48 320B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145660
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 弘之
【テーマコード(参考)】
3F063
3F343
【Fターム(参考)】
3F063AA01
3F063BA04
3F063BA08
3F063BA09
3F063BA10
3F063BC02
3F063CA02
3F063CA04
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA02
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA01
3F343JD17
3F343JD28
(57)【要約】
【課題】開閉ユニットを開いたときの衝撃の低減と操作性とを両立する。
【解決手段】筐体に対して回動することにより開閉可能に設けられ、閉位置と開位置とに変位可能であり、かつ、開位置においてシートを支持する手差しトレイ10を有する手差し給送部500と、一端部が筐体に揺動可能に支持され、他端部が手差し給送部500に係合される支持アーム11と、手差しトレイ10に支持されたシートをシート搬送部に給送する給送部と、を備える。手差し給送部500は、トレイレールを有し、支持アーム11の他端部は、手差し給送部500の回動に伴ってトレイレールにより案内されて移動する第1移動部材12を有し、手差し給送部500は、手差し給送部500が回動して第1移動部材12がトレイレールに対して移動するときに移動に対する抵抗力を発生して手差し給送部500の開閉速度を減衰するダンパ部40を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送するシート搬送部が収容された筐体と、
前記筐体に対して回動することにより開閉可能に設けられ、閉位置と開位置とに変位可能であり、かつ、前記開位置においてシートを支持する支持部を有する開閉ユニットと、
一端部が前記筐体に揺動可能に支持され、他端部が前記開閉ユニットに係合される揺動部材と、
前記支持部に支持されたシートを前記シート搬送部に給送する給送部と、を備え、
前記開閉ユニットは、案内部を有し、
前記揺動部材の他端部は、前記開閉ユニットの回動に伴って前記案内部により案内されて移動する被案内部を有し、
前記開閉ユニットは、前記開閉ユニットが回動して前記被案内部が前記案内部に対して移動するときに移動に対する抵抗力を発生して前記開閉ユニットの開閉速度を減衰するダンパ部を有する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記揺動部材は、前記開閉ユニットが前記開位置に位置するときに前記案内部との間で前記開閉ユニットの荷重を受ける、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記開閉ユニットは、前記閉位置と前記開位置との間の中間位置に変位可能であり、
前記ダンパ部は、前記開閉ユニットが前記中間位置と前記開位置との間で回動するときに前記抵抗力を発生し、前記閉位置と前記中間位置との間で回動するときに前記抵抗力を発生しない、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記開閉ユニットは、前記開閉ユニットを前記開位置から前記閉位置に変位する方向に付勢する付勢部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記付勢部は、前記開閉ユニットが前記閉位置から前記開位置までの全範囲に位置するときに、前記開閉ユニットを前記開位置から前記閉位置に変位する方向に付勢する、
ことを特徴とする請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記ダンパ部は、前記開閉ユニットに対して固定された固定部と、前記固定部に対して移動可能で移動する際に生じる流体の抵抗により前記抵抗力を発生する移動部と、を有し、
前記開閉ユニットは、前記移動部と前記被案内部とを連結して前記抵抗力を伝達するケーブルを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記開閉ユニットは、前記ケーブルを巻き掛けて曲折させる巻掛部を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記ダンパ部は、前記移動部が前記固定部に対して直線的に移動することで伸縮可能であり、前記ダンパ部の伸縮方向がシートの給送方向に直交する幅方向に沿うように配置される、
ことを特徴とする請求項7に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記開閉ユニットは、
前記支持部においてシートの給送方向に直交する幅方向に移動可能に設けられ、かつ、前記支持部に支持されたシートの前記幅方向の位置を規制する規制部と、
前記支持部に支持されたシートの束に前記規制部から前記幅方向に空気を吹き付けてシートを捌くエア捌き部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送部により搬送されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置と、これを利用する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機等の画像形成装置において、装置本体側面にシートを積載する手差しトレイ(開閉ユニット)を設けて、シートを1枚ずつ画像形成部に供給する手差しシート給送装置を備えたものが普及している。この種の手差しシート給送装置では、例えば、手差しトレイが装置本体に対して回動により開閉する構成になっている。そして、手差し給送をしない通常時には手差しトレイを装置本体に収納しておき、手差し給送時には手差しトレイを回動して開くことでシートを積載可能な状態になる。
【0003】
この手差しシート給送装置では、手差しトレイを開いたときの位置は、例えばアーム部材により規制される。アーム部材は、例えば、装置本体に揺動可能に設けられ、反対側のトレイ側端部は手差しトレイに設けられたガイド溝に沿って案内されるようになっている。手差しトレイを開放位置まで開いたときにアーム部材や手差しトレイに大きな衝撃が加わると損傷する虞があるので、手差しトレイを開いたときの衝撃を低減する構成が望まれる。
【0004】
手差しトレイを開いたときの衝撃を低減する構成として、アーム部材のトレイ側端部と手差しトレイとに引っ張りコイルばねを取り付けた手差しシート給送装置が開発されている(特許文献1参照)。この手差しシート給送装置では、手差しトレイが開くときに、アーム部材のトレイ側端部が移動する方向と反対の方向に引っ張りコイルばねが弾性力を与えることで、手差しトレイを開いたときの衝撃を低減するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-24396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、画像形成装置においてシートの種類やサイズの多様化の要望も強く、様々なシートを給送できる手差しシート給送装置が望まれており、手差しトレイが大型化する傾向にある。また、手差しシート給送装置の多機能化による部品増加により、手差しトレイの重量が増加することもある。しかしながら、上述した特許文献1に記載の手差しシート給送装置では、コイルばねの弾性力のみにより衝撃を低減させているので、手差しトレイが重量化した場合には更に強いコイルばねを用いなければならない。ここで、コイルばねによる付勢力は、手差しトレイが開放位置に位置しているときでも手差しトレイに作用しているため、コイルばねの付勢力が大きすぎると、手差しトレイが開放位置で意図せず閉じやすくなるなど、操作性が悪くなる虞がある。
【0007】
本発明は、開閉ユニットを開いたときの衝撃の低減と操作性とを両立可能なシート搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、シートを搬送するシート搬送部が収容された筐体と、前記筐体に対して回動することにより開閉可能に設けられ、閉位置と開位置とに変位可能であり、かつ、前記開位置においてシートを支持する支持部を有する開閉ユニットと、一端部が前記筐体に揺動可能に支持され、他端部が前記開閉ユニットに係合される揺動部材と、前記支持部に支持されたシートを前記シート搬送部に給送する給送部と、を備え、前記開閉ユニットは、案内部を有し、前記揺動部材の他端部は、前記開閉ユニットの回動に伴って前記案内部により案内されて移動する被案内部を有し、前記開閉ユニットは、前記開閉ユニットが回動して前記被案内部が前記案内部に対して移動するときに移動に対する抵抗力を発生して前記開閉ユニットの開閉速度を減衰するダンパ部を有することを特徴とするシート搬送装置である。
【0009】
本発明の他の一態様は、上記のシート搬送装置と、前記シート搬送部により搬送されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開閉ユニットを開いたときの衝撃の低減と操作性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る画像形成装置を示す断面図である。
図2】実施の形態に係る手差し給送部が開位置に位置した状態を示す平面図である。
図3】実施の形態に係る手差し給送部が開位置に位置した状態を示す正面図であり、(a)はシートや給送部を含めた図、(b)はシートや給送部を省略した図である。
図4】実施の形態に係る手差し給送部が閉位置に位置した状態を示す正面図である。
図5】実施の形態に係る手差し給送部を示す正面図であり、(a)は中間位置、(b)は開位置に位置した状態である。
図6】実施の形態に係る手差し給送部が閉位置に位置した状態を支持面に直交する方向から視た断面図である。
図7】実施の形態に係る手差し給送部を支持面に直交する方向から視た断面図であり、(a)は中間位置、(b)は開位置に位置した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について図を用いて説明する。まず、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を、図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す断面図である。画像形成装置1は、電子写真プロセスを利用したタンデム方式-中間転写式のレーザビームプリンタである。画像形成装置1は、制御部100に接続された不図示のホスト装置から出力される印刷画像データに対応したフルカラー、または単色の画像を記録媒体であるシートSに形成して出力することができる。
【0013】
制御部100は、画像形成装置1の動作を統括して制御する制御手段であり、ホスト装置や操作部730との情報の授受を行う。また、制御部100は、各種プロセス機器への信号処理、シーケンス制御等を行う。ここで、ホスト装置は、パソコンやイメージスキャナ、ファクシミリなどである。制御部100は、CPUと、RAMと、ROMとを有し、画像形成装置1内の各部を制御する。CPUは、各センサ類から入力される検出信号やROMに格納される情報に基づいて、所望のタイミング、及び必要な制御量で電気部品を動作させるために出力信号を各電気部品に出力する。よって、実際に電気部品の制御を行うのは、CPUとなる。ROM及びRAMは各部の制御に必要な情報データを格納し、CPUはROMに格納される情報データを読み込んだり、RAMに書き込んだりする。
【0014】
画像形成装置1は、装置本体201Aと、シートSに画像を形成する画像形成部201Bとを有している。装置本体201Aの上方には、略水平に設置された画像読取装置202が設けられている。画像読取装置202と装置本体201Aとの間に、シート排出用の排出空間Vが形成されている。尚、本実施形態では、装置本体201A、より具体的には装置本体201Aを構成する不図示のフレームは筐体の一例である。また、本実施形態では、画像形成装置1は、シート搬送装置の一例でもある。即ち、シート搬送装置としての画像形成装置1は、装置本体201Aと、後述する手差し給送部500、支持アーム11、給送部507とを有している(図3(a)参照)。
【0015】
カセット給送部230は、シートSを収納するシート収納手段である給送カセット5からシートSを給送する。カセット給送部230は、ピックアップローラ2と、ピックアップローラ2から送り出されたシートSを分離するためのフィードローラ3とリタードローラ4とからなる分離ローラ対とを有している。
【0016】
また、手差し給送部500は、シートSを保持する手段である手差しトレイ10からシートSを給送する。手差し給送部500は、開閉ユニットの一例であり、装置本体201Aに対して回動することにより開閉可能に設けられ、閉位置と開位置とに変位可能であり、手差しトレイ10を有している。手差しトレイ10は、支持部の一例であり、手差し給送部500の開位置においてシートを支持する。
【0017】
給送部507は、ピックアップローラ502と、ピックアップローラ502から送り出されたシートSを分離するための分離ローラ対とを有している。分離ローラ対は、フィードローラ503とリタードローラ504とからなる。分離ローラ対により1枚ずつ分離されたシートは、搬送ローラ対506によりレジストローラ対240まで送られる。即ち、給送部507は、手差しトレイ10に支持されたシートを搬送ローラ対506に給送する。尚、本実施形態では、搬送ローラ対506は、シートを搬送するシート搬送部の一例であり、装置本体201Aに収容されている。
【0018】
画像形成部201Bは、カセット給送部230あるいは手差し給送部500により給送されたシートに画像を形成する。即ち、画像形成部201Bは、搬送ローラ対506により搬送されたシートに画像を形成する。画像形成部201Bは、4ドラムフルカラー方式のものであり、レーザスキャナ210と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー画像を形成する4個のプロセスカートリッジ211を有している。ここで、各プロセスカートリッジ211は、感光ドラム212、帯電手段である帯電器213、現像手段である現像器214を備えている。また、画像形成部201Bは、プロセスカートリッジ211の上方に配された二次転写部218と、定着部201Eを備えている。トナーカートリッジ215は、現像器214にトナーを供給する。
【0019】
二次転写部218は、駆動ローラ216a及びテンションローラ216bに巻き掛けられた転写ベルト216を備えている。転写ベルト216の内側には、感光ドラム212に対向した位置で転写ベルト216に当接する一次転写ローラ219が設けられている。ここで、転写ベルト216は、不図示の駆動部により駆動される駆動ローラ216aにより矢印方向に回転する。二次転写部218の駆動ローラ216aと対向する位置には、転写ベルト216上に形成されたカラー画像をシートSに転写する二次転写ローラ217が設けられている。
【0020】
二次転写ローラ217の上方に定着部201Eが配置され、この定着部201Eの上方には第1排出ローラ対225a、第2排出ローラ対225b、両面反転部201Fが配置されている。両面反転部201Fは、正逆転可能な反転ローラ対222及び一面に画像が形成されたシートSを再び画像形成部201Bに搬送する再搬送通路Rが設けられている。画像形成装置1の上部には、ユーザからの操作を受け付ける操作部730が設けられている。操作部730としては、表示機能と入力機能を兼ね備えたタッチパネル方式を採用している。
【0021】
次に、画像形成装置1の画像形成動作について説明する。まず、画像形成装置1が印刷する原稿の画像データを受け取ると、その画像情報は画像処理された後、電気信号に変換されて画像形成部201Bのレーザスキャナ210に伝送される。画像形成部201Bでは、レーザにより、帯電器213によって表面が所定の極性・電位に一様に帯電されている感光ドラム212の表面が順次露光される。これにより、各プロセスカートリッジ211の感光ドラム上に、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの静電潜像が順次形成される。
【0022】
この後、この静電潜像を各色トナーにより現像して可視化すると共に、一次転写ローラ219に印加した一次転写バイアスにより、各感光ドラム上の各色トナー像を転写ベルト216に順次重ね合わせて転写する。これにより、転写ベルト216上にトナー画像が形成される。
【0023】
また、このトナー画像形成動作に並行して、シートSは、カセット給送部230または手差し給送部500によって1枚ずつレジストローラ対240に搬送され、レジストローラ対240により斜行が補正される。斜行が補正された後、シートSは、レジストローラ対240により二次転写部218まで搬送され、二次転写部218において、二次転写ローラ217に印加した二次転写バイアスにより、トナー像がシートS上に一括して転写される。
【0024】
次に、トナー像が転写されたシートSは、定着部201Eに搬送され、加圧ローラ220aと加熱ローラ220bにより形成されたローラニップ部において、熱及び圧力を受けて各色のトナーが溶融混色し、シートSにカラーの画像として定着される。画像が定着されたシートSは、定着部201Eの下流に設けられた第1排出ローラ対225a又は第2排出ローラ対225bによって排出空間Vに排出され、排出空間Vの底面に突出された排出トレイ223に積載される。なお、シートSの両面に画像を形成する際は、画像が定着された後、シートSは反転ローラ対222により再搬送通路Rに搬送され、再度、画像形成部201Bに搬送される。
【0025】
[手差し給送部]
次に、手差し給送部500について、図2を用いて説明する。図2に示すように、手差し給送部500は、手差しトレイ10と、ピックアップローラ502と、一対の第1サイド規制部70及び第2サイド規制部80とを有している。手差しトレイ10は、装置本体201Aの側面に回動により開閉可能に設けられ、装置本体201Aの側面に収納された状態から、手差しトレイ10を開くことでシートを積載可能な状態になる。以下では、手差しトレイ10が開状態にある場合について説明する。
【0026】
ピックアップローラ502は、手差しトレイ10に載置されたシートSを給送する。一対の第1サイド規制部70及び第2サイド規制部80は、手差しトレイ10に載置されたシートSの給送方向FDに交差する幅方向WにおいてシートSの両側に配置され、シートSの幅方向Wの位置を規制する。また、第1サイド規制部70は、規制部の一例であり、手差しトレイ10において幅方向Wに移動可能に設けられ、手差しトレイ10に支持されたシートSの幅方向Wの位置を規制する。第2サイド規制部80は、第1サイド規制部70に連動して幅方向Wに移動可能に設けられ、手差しトレイ10に載置されたシートSの幅方向Wにおける他方の端部に当接する。尚、本実施形態では、幅方向WはシートSの給送方向FDに直交する方向としている。
【0027】
第1サイド規制部70は、ラック71を有している。同様に、第2サイド規制部80は、ラック81を有している。各ラック71,81はピニオンギア90に噛合して連動するようになっている。これにより、第1サイド規制部70及び第2サイド規制部80は、少なくとも一方が幅方向Wに移動可能であり、本実施形態では第1サイド規制部70及び第2サイド規制部80はいずれもシートSの幅方向Wに同期して移動可能となっている。尚、第1サイド規制部70及び第2サイド規制部80の一方が、移動できないように固定されていてもよい。また、第1サイド規制部70のみが移動可能に設けられ、第2サイド規制部80が設けられていないようにしてもよい。
【0028】
第1サイド規制部70には、ファンモータ72と吹付ノズル73とを有する第1エア捌き部74が設けられている。ファンモータ72の駆動により、吹付ノズル73からエアf1が吹き出し、手差しトレイ10に載置したシート束の側面に吹き付けるようになっている。ファンモータ72からのエアf1を捌きエアとしてシートSの側端部に向かって吹き付けることで、シート束の上方のシートSが浮上し、シート間の密着力が低減される。即ち、第1エア捌き部74は、エア捌き部の一例であり、手差しトレイ10に支持されたシートSの束に第1サイド規制部70から幅方向Wに空気を吹き付けてシートSを捌く。
【0029】
同様に、第2サイド規制部80には、ファンモータ82と吹付ノズル83とを有する第2エア捌き部84が設けられている。ファンモータ82の駆動により、吹付ノズル83からエアf2が吹き出し、手差しトレイ10に載置したシート束の第1サイド規制部70とは反対側の側面に吹き付けるようになっている。ファンモータ82からのエアf2を捌きエアとしてシートSの側端部に向かって吹き付けることで、反対側から吹き付けられるエアf1と相まって、シート束の上方のシートSが効果的に浮上し、シート間の密着力が低減される。
【0030】
ユーザにより手差し給送部500が選択され、画像形成を開始する操作が実行されると、手差し給送部500からシート給送が開始される。手差しトレイ10に載置されたシートSが例えばコート紙である場合、ファンモータ72,82が稼働する。これにより、吹付ノズル73,83からシート束の幅方向Wの端部にエアf1,f2が吹き付けられる。
【0031】
エアf1,f2の吹き付けが開始された所定時間後に、シート同士の吸着力が低減された状態の最上位置のシートSを、回転するピックアップローラ502が給送してフィードローラ503とリタードローラ504からなる分離ローラ対に送られる。分離ローラ対において1枚に分離されたシートSは、搬送ローラ対506によりレジストローラ対240まで搬送される。尚、図3(a)以降では第1サイド規制部70、第2サイド規制部80、第1エア捌き部74、第2エア捌き部84の図示は省略している。また、本実施形態では、手差し給送部500は第1エア捌き部74及び第2エア捌き部84を有する場合について説明しているが、これには限られず、有していなくてもよい。
【0032】
[手差しトレイの支持構成]
次に、本実施形態の手差しトレイ10を支持する構成について、図3(a)~図7(b)を用いて詳細に説明する。図3(a)は、本実施形態の手差しトレイ10を最も開いて開位置に位置させた状態の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のうちシートSと給送部507を省略した構成を示す正面図である。
【0033】
手差しトレイ10を開いたときの位置は、支持アーム11により規制される。支持アーム11の一端部は装置本体201Aに回動可能に支持され、他端部は手差しトレイ10の側面で第1移動部材12に回動可能に連結されている。第1移動部材12は、手差しトレイ10の内部に設けられたトレイレール13の中を給送方向FDの上流側・下流側の両方向に移動可能である。トレイレール13は、案内部の一例であり、手差しトレイ10のフレームに形成された開口部からなり、給送方向FDを長手方向に形成されている。本実施形態では、支持アーム11やトレイレール13などは、幅方向Wの両端部に設けられている。但し、両端部に設けることには限られず、片方の端部のみに設けるようにしてもよい。
【0034】
支持アーム11は揺動部材の一例であり、一端部が装置本体201Aに揺動可能に支持され、他端部が手差し給送部500に係合されている。また、第1移動部材12は、被案内部の一例であり、手差し給送部500の回動に伴ってトレイレール13により案内されて移動する。支持アーム11は、他端部において第1移動部材12を有している。支持アーム11は、手差し給送部500が開位置に位置するときに、トレイレール13との間で手差し給送部500の荷重を受ける。尚、本実施形態では、支持アーム11の一端部が装置本体201Aに揺動可能に設けられているが、端部であることには限られず、端部以外の位置で揺動可能に支持されていてもよい。同様に、支持アーム11の他端部が第1移動部材12に連結されているが、端部であることには限られず、端部以外の位置に連結されていてもよい。また、本実施形態では、被案内部である第1移動部材12が支持アーム11とは別部材である場合について説明しているが、これには限られず、被案内部が支持アーム11と同一部材により形成されるようにしてもよい。
【0035】
次に、手差しトレイ10が開閉したときに支持アーム11と第1移動部材12とが連動する動作について、図4図6(b)を用いて説明する。図4は、手差しトレイ10が閉じて閉位置に位置する状態の正面図である。手差しトレイ10は、図4に示す閉位置と図5(b)に示す開位置との間の中間位置に変位可能であり、その状態を図5(a)に示す。
【0036】
手差しトレイ10を図5(a)に示す中間位置まで開くと、支持アーム11が回動し、第1移動部材12がトレイレール13の中を移動する。手差しトレイ10を更に開くと、図5(b)に示すように、第1移動部材12と接続する支持アーム11の端部がトレイレール13の規制部13aに接触し、シートSが積載可能な状態で保持される。ここでの規制部13aは、トレイレール13の給送方向FDの下流側の端部である。
【0037】
[ダンパ部]
本実施形態では、手差し給送部500は、ダンパ部40を有している。即ち、ダンパ部40は手差し給送部500に配置されている。以下、ダンパ部40について、図6図7(b)を用いて詳細に説明する。図6は、手差しトレイ10の内部に設けられたダンパ部40の構成を説明する図である。手差しトレイ10には、幅方向Wに沿った溝部10aが形成されている。支持アーム11と回動可能に接続された第1移動部材12は、ケーブル15によって第2移動部材16と接続されている。第2移動部材16は、溝部10aの内部において幅方向Wに移動可能に設けられている。
【0038】
ケーブル15は、途中でプーリ19により向きを90°変えており、第2移動部材16は第1移動部材12と連動して移動可能である。即ち、ケーブル15は、プーリ19よりも第1移動部材12側の部位は、開位置において給送方向FDに沿った方向に延びて配置され、プーリ19よりも第2移動部材16側の部位は、幅方向Wに沿った方向に延びて配置されている。プーリ19は、巻掛部の一例であり、手差し給送部500に設けられ、ケーブル15を巻き掛けて曲折させる。
【0039】
溝部10aの内部には、手差しトレイ10に固定された固定板10bが設けられている。第2移動部材16と固定板10bとの間には、ダンパ部40が設けられている。ダンパ部40は、例えば、流体の抵抗により抵抗力を発生する装置であり、本実施形態では、自動復帰機能を有するエアダンパからなる。ダンパ部40は、移動部の一例であるシリンダ部41と、固定部の一例であるロッド部42とを有している。ロッド部42は、固定板10bに固定されており、手差し給送部500に対して固定されている。シリンダ部41とロッド部42とは相対的に軸方向に移動可能であり、ここではシリンダ部41がロッド部42に対して移動可能で、移動する際に生じる流体の抵抗により抵抗力を発生するようになっている。本実施形態では、ダンパ部40は、シリンダ部41がロッド部42に対して直線的に移動することで伸縮可能であり、ダンパ部40の伸縮方向が幅方向Wに沿うように配置されている。
【0040】
第2移動部材16とシリンダ部41とは、当接及び離間可能に設けられている。第2移動部材16がケーブル15により引っ張られて移動してシリンダ部41に当接することにより、ダンパ部40は減衰力を発生する。即ち、ケーブル15は、第2移動部材16を介して、シリンダ部41と第1移動部材12とを連結して、抵抗力を伝達する。ダンパ部40は、手差し給送部500が回動して第1移動部材12がトレイレール13に対して移動するときに移動に対する抵抗力を発生して手差し給送部500の開閉速度を減衰する。また、ダンパ部40は、手差し給送部500の回動が停止して第1移動部材12がトレイレール13に対して停止しているときに、抵抗力を発生しない。
【0041】
本実施形態では、ダンパ部40が作用するように構成されているのは一方の支持アーム11のみとしており、他方の支持アーム111にはダンパ部は設けられていない。但し、これには限られず、他方の支持アーム111にも他のダンパ部を設けるようにしてもよい。第2移動部材16には、第2移動部材16を幅方向Wにおいてダンパ部40とは反対側に付勢する引っ張りコイルばね17が連結されている。他方の支持アーム111に連結されて給送方向FDに移動可能な第3移動部材18には、第3移動部材18を給送方向FDの上流側に付勢する引っ張りコイルばね171が接続されている。
【0042】
これら引っ張りコイルばね17,171は、いずれも付勢部の一例であり、手差し給送部500を開位置から閉位置に変位する方向に付勢する。本実施形態では、引っ張りコイルばね17,171は、手差し給送部500が閉位置から開位置までの全範囲のいずれの位置に位置するときであっても、手差し給送部500を開位置から閉位置に変位する方向に付勢する。
【0043】
次に、手差しトレイ10を開閉する際の動作について説明する。図6は手差し給送部500が閉位置に位置する状態、図7(a)は中間位置に位置する状態、図7(b)は開位置に位置する状態である。図6に示す閉位置に位置するときは、第1移動部材12は、トレイレール13の給送方向FDの上流側に位置しており、第2移動部材16はダンパ部40とは離れた位置にいる。
【0044】
手差しトレイ10が開き、第1移動部材12が図7(a)の位置まで移動すると、第2移動部材16が連動して移動し、ダンパ部40に当接する。そこから更に手差しトレイ10が開いて、第2移動部材16がダンパ部40を押し縮めることで、減衰力が発生し、手差しトレイ10の開き速度は減速する。本実施形態では、ダンパ部40は、手差し給送部500が中間位置と開位置との間で回動するときに抵抗力を発生し、閉位置と中間位置との間で回動するときに抵抗力を発生しないように設定している。尚、ダンパ部40と第2移動部材16とが当接する位置は設計によって任意に決めることができ、ダンパ部40が効き始めるタイミングを調整することができる。
【0045】
手差しトレイ10が最大角度の開位置まで開くと、第1移動部材12及び第2移動部材16は図7(b)に示す位置まで移動する。このとき、ダンパ部40は最も押し縮められた状態まで動作し、それによって発生した減衰力で手差しトレイ10の開き速度が減速したことで、トレイレール13の規制部131にかかる衝撃力を低減している。
【0046】
手差しトレイ10を開位置から閉位置に向けて回動したときには、第2移動部材16が引っ張りバネ17により引っ張られることで、ケーブル15が弛むことはない。また、ダンパ部40は自動復元機能を備えているため、第2移動部材16による押圧から解放されると、図6に示す状態に復帰することができる。
【0047】
上述したように、本実施形態の手差し給送部500によれば、ダンパ部40を有しているので、手差しトレイ10を開位置に回動させるときの衝撃の発生を低減することができる。即ち、手差しトレイ10の開閉に連動してトレイ内を移動する第1移動部材12及び第2移動部材16とダンパ部40とを設けることで、手差しトレイ10を開くときの速度を減速して、手差しトレイ10が保持される位置での衝撃を低減することができる。特に、本実施形態では、手差し給送部500には第1エア捌き部74や第2エア捌き部84の各ファンモータ72,82などが設けられ、手差し給送部500が重量化している。このため、ダンパ部40が無ければ開位置に達するときに大きな衝撃が発生しやすいが、ダンパ部40により衝撃を低減することができる。しかも、付勢ばねだけではなくダンパ部40を有しているので、手差しトレイ10が開位置に位置するときに手差しトレイ10を閉位置に向けて付勢する力を小さくすることができ、操作性を向上することができる。これにより、衝撃の低減と操作性の向上を両立することができる。
【0048】
また、本実施形態の手差し給送部500によれば、ダンパ部40は、手差し給送部500が中間位置と開位置との間で回動するときに抵抗力を発生し、閉位置と中間位置との間で回動するときに抵抗力を発生しないように設定している。これにより、閉位置から開き始めた最初の方では抵抗力を受けずに手差しトレイ10を回動させることができるので、衝撃発生には遠い位置で必要以上に抵抗が大きくなって操作性を低下することを回避できる。
【0049】
また、本実施形態の手差し給送部500によれば、ダンパ部40と引っ張りコイルばね17,171とを併用しているので、手差しトレイ10を開位置から閉じるときに手差しトレイ10を持ち上げるアシスト力を得ることができる。しかも、引っ張りコイルばね17,171は手差しトレイ10の可動範囲の全域において作用するので、閉位置から開位置に回動する際にも急な回動を回避することができる。
【0050】
また、本実施形態の手差し給送部500によれば、ケーブル15とプーリ19とを利用して第1移動部材12の移動方向とダンパ部40の伸縮方向とを直交させている。ここで、ケーブル15やプーリ19を用いない場合は、ダンパ部40の伸縮方向が給送方向FDに沿った方向になり、ダンパ部40が第1エア捌き部74や第2エア捌き部84に干渉しないように設置するために手差し給送部500が大型化する虞がある。これに対し、本実施形態では、ダンパ部40を第1エア捌き部74や第2エア捌き部84を避けて幅方向Wに沿わせて配置できるので、手差し給送部500の大型化を抑制することができる。
【0051】
尚、上述した実施形態では、被案内部と案内部とで手差し給送部500の荷重を受ける場合について説明したが、これには限られない。即ち、被案内部と案内部以外の構成で手差し給送部500の荷重を受けるようにして、被案内部と案内部とはダンパ部40を連結するために設けるようにしてもよい。
【0052】
尚、上述した実施形態では、シート搬送装置が画像形成装置1である場合について説明しているが、これには限られない。例えば、画像形成部201Bを有さずにシートを搬送するシート供給装置などに適用してもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、ダンパ部40として、押し縮められることで動作する直動ダンパを使用しているが、これに限定するものでなく、引き方向に動作する引っ張り式のダンパや、ロータリダンパを用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…画像形成装置(シート搬送装置)、10…手差しトレイ(支持部)、11…支持アーム(揺動部材)、12…第1移動部材(被案内部)、13…トレイレール(案内部)、15…ケーブル、17…引っ張りコイルばね(付勢部)、19…プーリ(巻掛部)、40…ダンパ部、41…シリンダ部(移動部)、42…ロッド部(固定部)、70…第1サイド規制部(規制部)、74…第1エア捌き部(エア捌き部)、171…引っ張りコイルばね(付勢部)、201A…装置本体(筐体)、201B…画像形成部、500…手差し給送部(開閉ユニット)、506…搬送ローラ対(シート搬送部)、507…給送部、FD…給送方向、S…シート、W…幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7