(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041132
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】給油監視システム
(51)【国際特許分類】
B67D 7/32 20100101AFI20250318BHJP
【FI】
B67D7/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148230
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社国際電気
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】富樫 純一
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 栄三
(72)【発明者】
【氏名】野澤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】門脇 正天
(72)【発明者】
【氏名】王 ホウ
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA02
3E083AB15
3E083AB20
3E083AD01
3E083AE01
(57)【要約】
【課題】自動給油判定モードと手動給油判定モードの切り替えをより的確に実施できるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る給油監視システムは、給油所で検知されたイベントに基づいてAIによりセルフ給油の許可または停止を決定する自動給油判定モードと、AIに代えて給油所の作業員によりセルフ給油の許可または停止を決定する手動給油判定モードとの切り替えを制御する制御装置112を備える。制御装置112は、給油所で検知されたイベントのレベルを判定し、そのレベルが所定レベル以上である場合に、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えるように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油所におけるセルフ給油の監視を行うための給油監視システムにおいて、
前記給油所で検知されたイベントに基づいてAIによりセルフ給油の許可または停止を決定する自動給油判定モードと、前記AIに代えて前記給油所の作業員によりセルフ給油の許可または停止を決定する手動給油判定モードとの切り替えを制御する制御装置を備えており、
前記制御装置は、前記給油所で検知されたイベントのレベルを判定し、そのレベルが所定レベル以上である場合に、前記自動給油判定モードから前記手動給油判定モードへ切り替えることを特徴とする給油監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の給油監視システムにおいて、
前記制御装置は、前記自動給油判定モードから前記手動給油判定モードへ切り替えた後に、所定の復旧条件が満たされたことに応じて、前記手動給油判定モードから前記自動給油判定モードへ切り替えることを特徴とする給油監視システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の給油監視システムにおいて、
前記制御装置は、前記自動給油判定モードから前記手動給油判定モードへ切り替える場合、または、前記手動給油判定モードから前記自動給油判定モードへ切り替える場合に、その旨を前記作業員に通知するための制御を更に行うことを特徴とする給油監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油所におけるセルフ給油の監視を行うための給油監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の給油所では、給油所の建屋内にて作業員(監視員)がセルフ給油を行う利用者(給油者)の行動を目視、あるいは監視モニターで監視し、ハンディ端末などの給油管理装置を操作して計量機に給油許可を出していた。近年、監視カメラの映像をAI(Artificial Intelligence)により画像分析するシステムの開発が進んでおり、セルフ給油の監視にも適用されつつある。
【0003】
ここで、本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、セルフ給油の監視に使用される学習モデルを再学習するための学習データを効率的に収集できるようにする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、カメラ映像などをAIにより分析してセルフ給油の許可または停止を決定する自動給油判定モードの運用が検討されている。現状では、AI判定を完全に行えるわけではないため、自動給油判定モードを運用するにあたり、AI判定が困難なイベントや不適切なイベントについてTOR(Take Over Request)の処理を追加する必要がある。ここで、TORとは、AI判定や給油システムでは対応できないイベントが発生した場合に、システムが自動で行っていた処理を作業員による直接の処理に交代することを指す。TORでは通常、自動給油判定モードから、作業員が目視またはカメラ映像によりセルフ給油の許可または停止を決定する手動給油判定モードへと、即座に切り替えることになる。しかしながら、イベントの種類に関わらずに手動給油判定モードに切り替えることは、省力化に繋がらないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、自動給油判定モードと手動給油判定モードの切り替えをより的確に実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る給油監視システムは、以下のような技術的特徴を有する。すなわち、給油所におけるセルフ給油の監視を行うための給油監視システムにおいて、前記給油所で検知されたイベントに基づいてAIによりセルフ給油の許可または停止を決定する自動給油判定モードと、前記AIに代えて前記給油所の作業員によりセルフ給油の許可または停止を決定する手動給油判定モードとの切り替えを制御する制御装置を備えており、前記制御装置は、前記給油所で検知されたイベントのレベルを判定し、そのレベルが所定レベル以上である場合に、前記自動給油判定モードから前記手動給油判定モードへ切り替えることを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明に係る給油監視システムにおいて、前記制御装置は、前記自動給油判定モードから前記手動給油判定モードへ切り替えた後に、所定の復旧条件が満たされたことに応じて、前記手動給油判定モードから前記自動給油判定モードへ切り替えるように構成され得る。
【0009】
また、本発明に係る給油監視システムにおいて、前記制御装置は、前記自動給油判定モードから前記手動給油判定モードへ切り替える場合、または、前記手動給油判定モードから前記自動給油判定モードへ切り替える場合に、その旨を前記作業員に通知するための制御を更に行うように構成され得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動給油判定モードと手動給油判定モードの切り替えをより的確に実施できるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給油監視システムの構成例を示す図である。
【
図2】イベントとTORレベルの関係を例示する図である。
【
図3】TORレベル別のTOR処理を例示する図である。
【
図4】イベント検知時の処理フローを例示する図である。
【
図5】自動給油判定モードから手動給油判定モードへの切替シーケンスを例示する図である。
【
図6】手動給油判定モードから自動給油判定モードへの切替シーケンスを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る給油監視システム100の構成例を示してある。給油監視システム100は、監視装置110と、端末装置120と、給油管理装置130と、計量機135と、監視カメラ140と、センサー150と、外部機器160とを備える。本例の給油監視システム100は、作業員が目視またはカメラ映像によりセルフ給油の許可または停止を決定する手動給油判定モードと、カメラ映像をAIにより分析してセルフ給油の許否または停止を決定する自動給油判定モードとを有している。また、自動給油判定モードを基本とし、状況に応じて手動給油判定モードへ切り替えるものとする。
【0013】
監視カメラ140は、給油所内の任意の位置に設置されており、セルフ給油の様子を撮影し、得られた撮影データ(カメラ映像)を監視装置110に出力する。監視カメラ140は、計量機135に隣接する給油レーン(車両の停車エリア)の車両及び給油者(利用者)を撮影できるように、給油レーン毎に設置される。監視カメラ140は、例えば、計量機135と車両の間の領域を含むエリアを上方から見下ろすような配置及び姿勢で設置される。
【0014】
センサー150は、給油者の行動によって発生する音声、熱、臭い、光、又は油漏洩などを検知し、検知結果を監視装置110に出力する。センサー150としては、計量機135から給油ノズルが外されたことを検出するものも含まれる。センサー150は、計量機135又はその近辺(例えば、給油レーンの周囲など)に設置される。
【0015】
監視装置110は、計量機135から離間した場所(例えば、給油所の建屋内)に設置される。監視装置110は、画像分析装置111と、制御装置112と、無線装置113と、学習モデル記憶部114とを有する。学習モデル記憶部114は、カメラ映像のAI分析のために予め用意された学習モデルを記憶する。画像分析装置111は、学習モデル記憶部114内の学習モデルに基づくAI給油判定処理を実行する。すなわち、画像分析装置111は、カメラ映像をAIにより分析して、カメラ映像内の車両に対する給油を許可できる状態か否かを判定する処理を行う。AI給油判定処理には、センサー150による検知結果も考慮される。無線装置113は、端末装置120との間で無線通信を行う。制御装置112は、監視カメラ140、センサー150、給油管理装置130、外部機器160、画像分析装置111、及び無線装置113の間に介在し、これら装置/機器の動作を統括的に制御する。監視装置110は、例えば、プロセッサやメモリなどのハードウェア資源を備えたコンピュータであり、本発明に係る各機能を実現するためのプログラムをプロセッサが実行するように構成される。
【0016】
AI給油判定処理では、監視カメラ140により撮影されたカメラ映像やセンサー150による検知結果などに基づいて、複数の確認事項について問題がないかが確認される。例えば、車両の給油口に計量機135の給油ノズルが適切に挿入(全挿入)されていること、タバコ等の熱源が存在しないこと、携行缶が存在しないこと、複数人で給油しようとしていないこと等が確認される。そして、これら確認事項の全て問題がないことをカメラ映像などにより確認できた場合に、給油を許可できる状態(すなわち、給油許可可能状態)であると判定され、そうでない場合に、給油を許可できない状態(すなわち、給油許可禁止状態)であると判定される。
【0017】
自動給油判定モードの場合には、AI給油判定処理の結果が最終的な給油の許可または停止の決定として扱われ、給油管理装置130に伝達される。すなわち、監視装置110は、AI給油判定処理の結果を示す制御信号(例えば、給油許可信号や給油停止信号)を給油管理装置130に対して送信する。制御信号には、その対象となる給油レーンを識別する情報(例えば、レーン番号)も付随される。ここで、給油の停止とは、給油を許可した後の給油中に給油を停止(中断)させることだけでなく、給油を許可せずに禁止することも含まれる。また、AI給油判定処理の結果を作業員が確認できるように、端末装置120にも送信して表示させてもよい。
【0018】
一方、手動給油判定モードの場合には、AI給油判定処理の結果は、給油所の作業員が給油の許可または停止を判断する際の参考(補助的な情報)として、端末装置120に表示される。作業員は、AI給油判定処理の結果を参考にしつつ、目視またはカメラ映像により給油の許可または停止を決定し、端末装置120を操作する。これにより、作業員による最終的な決定を示す制御信号(例えば、給油許可信号や給油停止信号)が給油管理装置130に対して送信される。
【0019】
端末装置120は、給油所の作業員に使用される装置である。端末装置120は、制御部121と、通信部122と、表示部123と、操作部124とを有する。制御部121は、端末装置120が有する各部の動作を統括的に制御する。通信部122は、監視装置110との間で無線通信を行う。表示部123は、監視装置110によるAI給油判定処理の結果を含む各種の情報を表示する。操作部124は、セルフ給油の許可や停止等を含む各種の操作を受け付ける。表示部123及び操作部124は、タッチパネルとして一体的に構成されてもよい。端末装置120は、例えば、プロセッサやメモリなどのハードウェア資源を備えたコンピュータであり、本発明に係る各機能を実現するためのプログラムをプロセッサが実行するように構成される。
【0020】
端末装置120は、監視装置110からAI給油判定処理の結果を受信して表示する。端末装置120には、AI給油判定処理の結果と共にカメラ映像も表示される。作業員は、手動給油判定モードの場合に、端末装置120に表示された情報を参考にして給油を許可するか禁止(不許可)するかを検討し、給油を許可してもよいと判断した場合に、それに応じた操作を端末装置120に対して行う。また、作業員は、給油を許可した後の給油中に、給油を停止(中断)させるべきと判断した場合には、それに応じた操作を端末装置120に対して行う。
【0021】
端末装置120は、上記のような操作を受け付けると、その旨を示す制御信号(例えば、給油許可信号や給油停止信号)を給油管理装置130に対して送信する。制御信号には、その対象となる給油レーンを識別する情報(例えば、レーン番号)も付随される。端末装置120の操作に応じた制御信号は、監視装置110を介して給油管理装置130に送信されてもよく、監視装置110を介さずに給油管理装置130に直接送信されてもよい。ここでは、端末装置120として、作業員が持ち運び可能なタブレット等の携帯型端末(つまり、ハンディ端末)を用いる場合を例にして説明するが、所定の位置に設置(固定)された据置型端末であってもよい。
【0022】
給油管理装置130は、セルフサービスコントローラ(SSC)とも称され、例えば、計量機135から離間した場所(例えば、給油所の建屋内)に設置される。給油管理装置130は、監視装置110または端末装置120からの制御信号に基づいて、計量機135の動作を制御する。例えば、給油管理装置130は、給油許可信号を受信した場合に、給油許可信号に対応する計量機135内部のポンプを駆動させ、これにより計量機135は給油を行える状態となる。また、例えば、給油管理装置130は、給油停止信号を受信した場合に、給油停止信号に対応する計量機135内部のポンプを停止させ、これにより計量機135は給油を行えない状態となる。
【0023】
外部機器160は、監視装置110からの制御信号に従って、現在のモード(自動給油判定モードまたは手動給油判定モード)の通知や、モード切り替えの通知などを行うための装置である。外部機器160としては、一例として、計量機135の上部などに設置された信号灯が挙げられる。外部機器160として信号灯を用いる場合、点灯種別により各給油レーンの動作モードや状態を表現してもよい。例えば、緑点灯は自動給油判定モードでの給油待機状態、緑点滅は自動給油判定モードでの給油中状態、黄点滅は手動給油判定モードでの給油中状態、赤点滅はアラーム発報中だが給油中状態、紫点滅はアラーム発報かつ給油停止状態を表すようにしてもよい。
【0024】
なお、給油監視システム100は、端末装置120の表示部123に表示された情報の全て又は一部の情報を表示するモニター(図示しない)を、端末装置120以外の場所に備えてもよい。
【0025】
本例の給油監視システム100の主たる特徴は、自動給油判定モードと手動給油判定モードの切り替えを自動的に行う仕組みを備えていることである。以下、その仕組みについて具体的に説明する。
【0026】
本例の給油監視システム100では、監視装置110内の制御装置112が、給油所で検知されたイベント(事象)のレベルを判定し、そのレベルが所定レベル以上である場合に、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替わるように制御する。また、制御装置112は、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えた後に、所定の復旧条件が満たされたことに応じて、手動給油判定モードから前記自動給油判定モードへ切り替えるように制御する。制御装置112は更に、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替える場合、または、手動給油判定モードから自動給油判定モードへ切り替える場合に、その旨を作業員に通知するための制御も行う。
【0027】
制御装置112は、上記の制御を行うために、給油所で検知され得る複数のイベントを分類した複数のTORレベルと、そのTORレベルに該当するイベントの検知時に実行すべきTOR処理とを予め対応付けた処理制御データを有している。本例では、給油所で検知され得る複数のイベントを、重要度や緊急度や危険度などの高い順に、「異常」、「警告」、「注意」、「情報」の4段階のレベルに分類している。「異常」とは、火災発生等の給油停止を求められるレベルを指す。「警告」とは、携行缶給油等の注意喚起を求められるレベルを指す。「注意」とは、雨天や降雪等のAI判定の精度への影響が考えられるレベルを指す。「情報」とは、給油開始等の単なる情報等のレベルを指す。
【0028】
図2には、イベントとTORレベルの関係を例示してある。
図2の例では、「ノズル外れ」イベントを「異常」レベルに分類し、「ノズル非検知」イベントを「警告」レベルに分類し、「静電気除去シート非接触」イベントを「注意」レベルに分類し、「車両進入」イベントを「情報」レベルに分類することが設定されている。
なお、各イベントが分類されるTORレベルは、運用に応じて適宜選択される。例えば、「ノズル外れ」イベントを「警告」レベルに分類したり、「ノズル非検知」イベントを「異常」レベルに分類してもよい。また、イベントやTORレベルを追加・削除・変更してもよい。例えば、「バイク検知」イベントや「タイムアウト」イベントを追加したり、「注意」レベルを削除してもよい。
【0029】
図3には、各TORレベルに該当するイベントの検知時に実行すべきTOR処理を例示してある。
図3の例では、「異常」レベルのイベントが検知された場合には、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えると共に、給油管理装置130(SSC)に対して給油停止を指示し、端末装置120に対してイベントの内容の通知・警告音・バイブレーションを指示し、外部機器160(信号灯)に対して光点滅(赤)を指示することが設定されている。「警告」レベルのイベントが検知された場合には、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えると共に、端末装置120に対してイベントの内容の通知・バイブレーションを指示し、外部機器160(信号灯)に対して光点滅(黄)を指示することが設定されている。「注意」レベルのイベントが検知された場合には、端末装置120に対してイベントの内容の通知を指示することが設定されている。「情報」レベルのイベントが検知された場合には、端末装置120に対するイベントの内容の通知などの指示は特に行わないことが設定されている。
【0030】
また、図示を省略するが、給油監視システム100には、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えての動作中に、手動給油判定モードから自動給油判定モードへ切り替える復旧条件も予め設定されている。例えば、「異常」レベルのイベントの検知により手動給油判定モードに切り替わった状態の場合には、手動で復旧操作が行われた後に自動給油判定モードへ切り替えることが設定される。また、「警告」レベルのイベントの検知により手動給油判定モードに切り替わった状態の場合には、手動での給油判定が完了した後に自動給油判定モードへ切り替えることが設定される。
【0031】
図2や
図3などを参照して説明した上記の設定に関するデータは、監視装置110が有するメモリ等の記憶装置(不図示)に記憶されている。また、監視装置110が上記の設定に関するデータを記憶しておくのに代えて、監視装置110によるアクセス可能な外部の記憶装置に記憶しておいてもよい。また、上記の設定に関するデータは、端末装置120により給油所の作業員が変更できるようにしてもよいし、他の装置やネットワークを通じて本システムの管理者が変更できるようにしてもよい。
【0032】
図2や
図3は、説明の簡略化のために簡易的に示したものに過ぎず、これらの内容に限定されないことは言うまでもない。例えば、
図3の設定例では、「異常」または「警告」レベルのイベントが検知された場合に、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えることが設定されているが、ODD(Operational Design Domain)のチェックがNGの場合にも、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えるようにしてもよい。ODDのチェックがNGの場合としては、例えば、ノズルが検知されない場合、油種が軽油の場合、車種がバイクの場合などが挙げられる。ODDのチェックがNGであったことにより手動給油判定モードへ切り替えた場合には、ODDのチェックがOKとなったことを条件に、自動給油判定モードへ切り替えるようにしてもよい。この場合、頻繁にモード切り替えが発生する可能性があるため、その防止のために、短時間に所定回数(例えば、10秒以内に3回)のモード切り替えが発生した場合には、その後の一定時間(例えば、60秒)は自動給油判定モードに固定するようにしてもよい。
【0033】
次に、本例の給油監視システム100における処理の流れについて、
図4~
図6を参照して説明する。
図4には、イベント検知時の処理フローを例示してある。監視装置110内の制御装置112は、監視カメラ140により撮影されたカメラ映像やセンサー150による検知結果などに基づいて、給油所で発生したイベントを特定し(ステップS101)、そのイベントのレベルを判定する(ステップS102)。
【0034】
ステップS102において、「異常」レベルのイベントであると判定された場合、制御装置112は、
図3に例示したような設定に基づいて、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えると共に(ステップS111)、給油管理装置130(SSC)に対して給油の停止を指示する(ステップS112)。また、制御装置112は、モード切り替えの発生や給油の停止を示す情報を表示するように端末装置120に指示する(ステップS113)。このとき、制御装置112は、端末装置120に対するイベント通知・警告音・バイブレーションの指示や、外部機器160に対する光点滅(赤)の指示も行う。なお、「異常」レベルのイベントは、全ての給油レーンに対して発生する場合もあれば、特定の給油レーンに対してのみ発生する場合もある。そこで、制御装置112は、対象の給油レーンを識別する情報(例えば、レーン番号)も併せて端末装置120に送信する。このような指示を受信した端末装置120や外部機器160は、上記の指示に対応する動作を自動的に実行する。これにより、作業員は、「異常」レベルのイベントが発生して手動給油判定モードに切り替わったことを、速やかに把握することが可能となる。
【0035】
その後、「異常」レベルのイベントが解消し、作業員が端末装置120に対して給油停止の解除操作を行うと、その情報が監視装置110内の制御装置112へ送信される。これに伴い、制御装置112は、給油管理装置130(SSC)に対して給油の停止の解除を指示する(ステップS114)。その後、制御装置112は、所定の復旧条件が満たされたか否かの判定を行う(ステップS115)。「異常」レベルのイベントの検知により手動給油判定モードに切り替わった本ケースでは、制御装置112は、手動の復旧操作をもって復旧条件が満たされたと判定し、手動給油判定モードから自動給油判定モードへ切り替える(ステップS116)。また、制御装置112は、モード切り替えの発生を示す情報を表示するように端末装置120に指示する(ステップS117)。このような指示を受信した端末装置120は、上記の指示に対応する動作を自動的に実行する。これにより、作業員は、「異常」レベルのイベントが解消して自動給油判定モードに復旧したことを、速やかに把握することが可能となる。
【0036】
ステップS102において、「警告」レベルのイベントであると判定された場合、制御装置112は、
図3に例示したような設定に基づいて、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替える(ステップS121)。また、制御装置112は、モード切り替えの発生を示す情報を表示するように端末装置120に指示する(ステップS122)。このとき、制御装置112は、端末装置120に対するイベント通知・バイブレーションの指示や、外部機器160に対する光点滅(黄)の指示も行う。また、制御装置112は、制御装置112は、対象の給油レーンを識別する情報(例えば、レーン番号)も併せて端末装置120に送信する。このような指示を受信した端末装置120や外部機器160は、上記の指示に対応する動作を自動的に実行する。これにより、作業員は、「警告」レベルのイベントが発生して手動給油判定モードに切り替わったことを、速やかに把握することが可能となる。
【0037】
その後、制御装置112は、所定の復旧条件が満たされたか否かの判定を行う(ステップS123)。「警告」レベルのイベントの検知により手動給油判定モードに切り替わった本ケースでは、制御装置112は、手動の給油判定(許可または停止)の完了をもって復旧条件が満たされたと判定し、手動給油判定モードから自動給油判定モードへ切り替える(ステップS124)。また、制御装置112は、モード切り替えの発生を示す情報を表示するように端末装置120に指示する(ステップS125)。このような指示を受信した端末装置120は、上記の指示に対応する動作を自動的に実行する。これにより、作業員は、「警告」レベルのイベントが解消して自動給油判定モードに復旧したことを、速やかに把握することが可能となる。
【0038】
ステップS102において、「注意」レベルのイベントであると判定された場合、制御装置112は、端末装置120に対して、イベント内容の通知を指示する(ステップS131)。また、制御装置112は、対象の給油レーンを識別する情報(例えば、レーン番号)も併せて端末装置120に送信する。このような指示を受信した端末装置120は、上記の指示に対応する動作を自動的に実行する。これにより、作業員は、「注意」レベルのイベントが発生したことを、速やかに把握することが可能となる。
【0039】
ステップS102において、「情報」レベルのイベントであると判定された場合、制御装置112は、端末装置120に対して、イベント内容の情報を送信するが、イベント内容の通知は指示しない(ステップS131)。また、制御装置112は、対象の給油レーンを識別する情報(例えば、レーン番号)も併せて端末装置120に送信する。端末装置120は、受信したイベント内容の情報をメモリに記憶しておき、操作者の要求によりメモリからイベント内容の情報を読み出して表示する。これにより、作業員は、「情報」レベルのイベントが発生したことを、必要に応じて把握することが可能となる。
【0040】
図5には、自動給油判定モードから手動給油判定モードへの切替シーケンスを例示してある。制御装置112は、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えると(ステップS201)、端末装置120や給油管理装置130に対して、モード切り替えの発生を示す情報や、イベント通知・バイブレーション・アイコン表示を指示する情報などを含む制御信号を送信する。また、制御装置112は、外部機器160に対しても、光点滅の開始を指示する情報などを含む制御信号を送信する。
【0041】
端末装置120は、制御装置112から受信した制御信号に基づいて、手動給油判定モード用の画面に切り替えると共に(ステップS202)、イベント通知・バイブレーション・アイコン表示などの通知処理を行う(ステップS203)。端末装置120は、例えば、レーン番号毎に自動給油判定モードまたは手動給油判定モードのどちらで動作しているかを示すモード表示を行うと共に、手動給油判定モードのレーン番号に対しては、給油の許可または停止する指示を受け付ける操作ボタンなども表示する。モード表示は、各モードを表すアイコンによる表示、各モードを表す文字による表示、各モードを表す色による表示など、種々の態様により実現することが可能である。また、これらの表示を、端末装置120とは別のデバイス(例えば、スマートウォッチ、ワイヤレスホンなど)により行うようにしてもよい。
【0042】
また、給油管理装置130や外部機器160も、制御装置112から受信した制御信号に基づく動作を行う。すなわち、給油管理装置130は、制御装置112から受信した制御信号に基づいて、レーン番号に対応する外設機による画面表示などの通知処理を行う(ステップS204)。例えば、利用者(給油者)がガソリンを注文する際に、手動給油判定モードで動作中である旨を表示する。また、外部機器160(例えば、計量機135の上部などに設置された信号灯)は、制御装置112から受信した制御信号に基づいて、光点滅を開始する(ステップS205)。これにより、給油所の作業員だけでなく利用者も状況を把握できるようになる。
【0043】
図6には、手動給油判定モードから自動給油判定モードへの切替シーケンスを例示してある。以下では、自動給油判定モードへの復旧条件が給油終了の場合を例にして説明する。給油管理装置130は、手動給油判定モードが適用された給油レーンで給油が終了したことを検出すると、給油終了信号を監視装置110内の制御装置112へ送信する。給油終了信号には、対象の給油レーンを識別する情報(例えば、レーン番号)も付随される。
【0044】
制御装置112は、給油管理装置130から給油終了信号を受信すると、自動給油判定モードへの復旧条件を満たしたと判断し、手動給油判定モードから自動給油判定モードへ切り替える(ステップS301)。その後、制御装置112は、端末装置120や給油管理装置130に対して、モード切り替えの発生を示す情報や、イベント通知・バイブレーション・アイコン表示の停止を指示する情報などを含む制御信号を送信する。また、制御装置112は、外部機器160に対しても、光点滅の停止を指示する情報などを含む制御信号を送信する。
【0045】
端末装置120は、制御装置112から受信した制御信号に基づいて、自動給油判定モード用の画面に切り替えると共に(ステップS302)、イベント通知・バイブレーション・アイコン表示などの通知処理を停止する(ステップS303)。また、給油管理装置130は、制御装置112から受信した制御信号に基づいて、レーン番号に対応する外設機による画面表示などの通知処理を停止する(ステップS304)。同様に、外部機器160(例えば、計量機135の上部などに設置された信号灯)は、制御装置112から受信した制御信号に基づいて、光点滅を停止する(ステップS305)。
【0046】
以上のように、本例の給油監視システムは、給油所で検知されたイベントに基づいてAIによりセルフ給油の許可または停止を決定する自動給油判定モードと、AIに代えて給油所の作業員によりセルフ給油の許可または停止を決定する手動給油判定モードとの切り替えを制御する制御装置112を備えている。そして、制御装置112は、給油所で検知されたイベントのレベルを判定し、そのレベルが所定レベル以上である場合に、自動給油判定モードから手動給油判定モードへ切り替えるように制御する。
【0047】
つまり、給油所で検知され得る複数のイベントを重要度や緊急度や危険度などによりレベル分けし、所定レベル以上のイベントが検知された場合に、自動給油判定モードから手動給油判定モードへと自動的に切り替える。このため、本例の給油監視システムによれば、自動給油判定モードと手動給油判定モードの切り替えをより的確に実施することが可能である。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0049】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、給油所におけるセルフ給油の監視を行うための給油監視システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
100:給油監視システム、 110:監視装置、 111:画像分析装置、 112:制御装置、 113:無線装置、 114:学習モデル記憶部、 120:端末装置、 121:制御部、 122:通信部、 123:表示部、 124:操作部、 130:給油管理装置、 135:計量機、 140:監視カメラ、 150:センサー、 160:外部機器