(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042868
(43)【公開日】2025-03-28
(54)【発明の名称】アピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20250321BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20250321BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250321BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20250321BHJP
A61K 36/28 20060101ALN20250321BHJP
A61K 36/61 20060101ALN20250321BHJP
A61K 36/53 20060101ALN20250321BHJP
A61K 36/23 20060101ALN20250321BHJP
【FI】
A23L33/10
A61P25/20
A61P43/00 111
A61K31/352
A61K36/28
A61K36/61
A61K36/53
A61K36/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150047
(22)【出願日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千尋
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB08
4B018MD08
4B018MD28
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF10
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA05
4C088AB26
4C088AB38
4C088AB40
4C088AB57
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4C088AC04
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4C088AC06
4C088AC11
4C088BA08
4C088BA10
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA05
4C088ZC01
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】アピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物を提供すること。
【解決手段】アピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物である。
また、これを使用した、睡眠の質を改善することを目的とする機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のアピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物を使用した、睡眠の質を改善することを目的とする機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンA2A受容体は全身に分布しているGタンパク質共役型の受容体で脳内の睡眠中枢において睡眠の制御に深く関わっていることが知られている。
このアデノシンA2A受容体を活性化すれば深い睡眠であるノンレム睡眠を誘導し睡眠の質を改善することができる。
例えば、アデノシンA2A受容体アゴニストであるCGS21680は動物への投与によりノンレム睡眠を増加させることが知られている (例えば非特許文献1、2参照)。
アデノシンA2A受容体を活性化させる天然成分としては、これまでに清酒酵母がアデノシンA2A受容体の活性化を介してヒトのノンレム睡眠を増やし睡眠の質を改善することが報告されている(例えば特許文献1、非特許文献3、4参照)。
【0003】
アピゲニンは、ミクログリア活性化抑制作用を持つことが知られている(例えば特許文献2参照)。また、ギャバA受容体のベンゾジアゼピン結合部位を介した鎮静作用やセロトニンやドーパミン、α―アドレナリン作動性の伝達を介した抗鬱作用が知られている(例えば非特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-82641号公報
【特許文献2】特表2020-183346号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Satoh S, et al. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 1996 Jun 11;93(12):5980-4. DOI:10.1073/pnas.93.12.5980.
【非特許文献2】Korkutata M, et al. Neuropharmacology. 2019 Jan;144:122-132. DOI:10.1016/ j.neuropharm.2018.10.022.
【非特許文献3】Nakamura Y, et al. Journal of sleep research. 2016 Dec;25(6):746-753. DOI:10.1111/jsr.12434.
【非特許文献4】Monoi N, et al. Journal of sleep research. 2016 Feb;25(1):116-23. DOI:10.1111/jsr.12336.
【非特許文献5】Viola H, et al. Planta Medica. 1995 Jun;61(3):213-6. DOI: 10.1055/s-2006-958058.
【非特許文献6】Al-Yamani MJ,et al. Saudi Journal of Biological Science. 2022 Jan;29(1):11-17. DOI: 10.1016/j.sjbs.2021.11.008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アデノシンA2A受容体を活性化する物質、及び、これを使用した、睡眠の質を改善することを目的とする機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アピゲニンがアデノシンA2A受容体を活性化し、これにより睡眠の質を改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、アピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物である。
また、これを使用した、睡眠の質を改善することを目的とする機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物は、アピゲニンを本発明品における摂取量とする場合、有害事象の報告はなく安全であると考えられる。
本発明によりノンレム睡眠を増加させ睡眠の質を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアピゲニンは、化学式1で示され、カモミールやグァバの他、タイム、オレガノ、ペパーミント等のシソ科、セロリ、パセリ、アシタバ、クミン等のセリ科植物に含まれる。アピゲニンには鎮静作用や、抗不安作用、抗鬱作用などが知られている。
経口摂取されたアピゲニンは体内に吸収され血中に移行し、全身を循環する。
【0010】
【0011】
<アピゲニンの入手方法>
アピゲニンは、前記のとおり、カモミールやグァバ、タイム、セロリ等の植物の葉部、茎部、根部、花部、種子や果実等に含まれており、エタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトン等を使用した溶媒抽出等の方法で抽出した後に加水分解し、カラムクロマトグラフィー等で精製して得ることができる。
また、アピゲニンは市販されており本発明では市販されているアピゲニンも使用することができる。
【0012】
<アピゲニンの使用方法>
アピゲニンの使用方法は、従来のアピゲニンと同様であり特に限定はない。
例えば、機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品に配合することができる。
機能性表示食品や特定保健用食品とする場合の食品の例として、麺類、飯類、パン類、洋菓子類、和菓子類、ガム類、ジュース、酒類等を挙げることができる。
本発明のアピゲニンをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物の経口投与量は1日あたりのヒトのアピゲニン摂取量として、通常1mg~5000mg/日であり、好ましくは1mg~500mg/日であり、更に好ましくは10mg~100mgである。
【実施例0013】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<アデノシンA2A受容体活性評価系の構築>
アデノシンA2A受容体活性評価のため以下のレポーターアッセイを構築した。
アデノシンA2A受容体は活性化すると細胞内Gsタンパク質と相互作用し、アデニル酸シクラーゼを活性化させることでcAMPを産生する。
cAMPシグナルを検出することでアデノシンA2A受容体の活性化を評価することができる。
cAMPシグナルの検出は、以下のとおり ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの発光量を測定して行うことができる。
(1)HEK293細胞中に、CRE(cAMP-response element)の下流にホタルルシフェラーゼをコードするプラスミド(商品名:pGL4.29 プロメガ株式会社製)およびウミシイタケルシフェラーゼ発現ベクター(商品名:pF9A CMV hRluc-neo Flexi(登録商標) Vector プロメガ株式会社製)、Barnaseの配列を除去)を導入した。
遺伝子の導入にはトランスフェクション試薬(商品名:FuGENE(登録商標) HD Transfection Reagent プロメガ株式会社製)を使用した。
(2)96wellplateに前記(1)で得られた細胞をDMEM培地に5×104個/well播種した。
(3)23時間後にDMSOに溶解したZM241385を下記試料1~試料4に示す濃度になるよう添加した。
(4)前記(3)の1時間後、前記(2)の培地を除去し10%FBS含有DMEM培地に交換しDMSOに溶解させたNECAを下記試料1~試料4に示す濃度になるよう添加した。
(5)前記(4)の培地交換から5時間後に培地を除去し、Dual-Glo(登録商標) Luciferase Assay System(プロメガ株式会社)を用いてホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの発光強度を測定した。
(6)ウミシイタケルシフェラーゼの発光強度を基準として、これに対するホタルの発光強度を比較し比率を求めた。
(7)前記(6)で得られた比率を何も添加しない場合(試料1)の比率が1となるように換算し相対発光量を求めた。
【0014】
*NECA(5’-N-Ethylcarboxamidoadenosine )は、アデノシン受容体全般のアゴニストであり、アデノシンA2A受容体に高い親和性を示す。
*ZM241385は、アデノシンA2A受容体の選択的アンタゴニストである。
【0015】
試料1は、NECA及びZM241385をともに添加しなかった。
試料2は、NECAを培地中100nMの濃度になるように添加しZM241385を添加しなかった。
試料3は、NECAを添加せず、ZM241385を培地中10μMの濃度になるように添加した。
試料4は、NECAを培地中100nMの濃度になるように添加しZM241385を培地中10μMの濃度になるように添加した。
【0016】
その結果、試料1の相対発光量は、1.00、試料2の相対発光量は、12.17、試料3の相対発光量は1.03、試料4の相対発光量は、1.14となった。
アデノシンA2A受容体のアゴニストであるNECAはcAMPシグナルを活性化し、またアデノシンA2A受容体に選択的なアンタゴニストZM241385によりcAMPシグナルの活性化が抑制されており本評価系でアデノシンA2A受容体の活性化を評価できることが確認できた。
【0017】
<アピゲニンのアデノシンA2A受容体活性評価>
前記レポーターアッセイにおいて、NECA培地中濃度100nMをアピゲニン培地中濃度10μMに変更した以外は、同様にしてレポーターアッセイを行った。
試料5は、アピゲニン及びZM241385をともに添加しなかった。
試料6は、アピゲニンを培地中10μMの濃度になるように添加しZM241385を添加しなかった。
試料7は、アピゲニンを培地中10μMの濃度になるように添加しZM241385を培地中10μMの濃度で添加した。
【0018】
その結果、資料5の相対発光量は、1.00、試料6の相対発光量は、2.00、試料7の相対発光量は1.08となり、アピゲニンがアデノシンA2A受容体を活性化していることが確認できた。
【0019】
[実施例1 飲料]
果糖ブドウ糖液糖30g、乳化剤0.5g、アピゲニンを1質量%含むカモミール由来の抽出物1g、香料適量、精製水60gをミキサーによって常法により混合し、飲料を製造した。