(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005360
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】近距離無線通信装置の製造方法及び近距離無線通信装置
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20250108BHJP
G06K 19/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G06K19/077 144
G06K19/077 264
G06K19/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183361
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】202310765999.8
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520212624
【氏名又は名称】昆山聯滔電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】Lanto Electronic Limited
【住所又は居所原語表記】No.399,Baisheng Road,Jinxi Town,Kunshan City,Jiangsu Province,215324,China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】張 雲青
(72)【発明者】
【氏名】江 衛
(57)【要約】
【課題】 改善された近距離無線通信装置の製造方法及び近距離無線通信装置を提供する。
【解決手段】 本発明の製造方法は、第1の開口が設けられた第1の載置層を形成することと、第1の載置層のエッジに第1の開口を取り囲んでコイルを埋め込み、第1の開口の中にチップを嵌め込み、そのうち、チップとコイルとが溶接されることと、第2の載置層を第1の載置層の背面に積層して置き、第2の載置層に設けられて第1の開口と鉛直方向において重なり合いが存在する第2の開口の中に、遮蔽層をチップを覆うように貼り付けることと、第1の載置層の正面に第1の被覆層を積層して置き、ラミネート熱成形プロセスを採用して第1の載置層、第2の載置層及び第1の被覆層からなる積層構造を一体構造にプレスすることと、を含む。本発明の実施例の技術態様により作られた近距離無線通信装置は、一体構造であり、層間剥離及び損壊が発生しにくい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口が設けられた第1の載置層を形成することと、
前記第1の載置層のエッジに前記第1の開口を取り囲んでコイルを埋め込み、前記第1の開口の中にチップを嵌め込み、前記チップと前記コイルとが溶接されることと、
第2の載置層を前記第1の載置層の背面に積層して置き、前記第2の載置層に設けられて前記第1の開口と鉛直方向において重なり合いが存在する第2の開口の中に、遮蔽層を前記チップを覆うように貼り付けることと、
前記第1の載置層の正面に第1の被覆層を積層して置き、ラミネート熱成形プロセスを採用して前記第1の載置層、前記第2の載置層及び前記第1の被覆層からなる積層構造を一体構造にプレスすることと、を含む、
ことを特徴とする近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項2】
前記遮蔽層の材料は、ナノ結晶材料である、
ことを特徴とする請求項1に記載の近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の載置層の製造方法は、
1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成することと、
各前記辺枠においてパンチングを行い、アレイに配列された複数の前記第1の開口を形成し、前記第1の載置層を得ることと、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の載置層の製造方法は、
1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成することと、
各前記辺枠においてパンチングを行い、アレイに配列された複数の前記第2の開口を形成し、前記第2の載置層を得ることと、を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の開口のサイズは、前記第2の開口のサイズよりも小さい、
ことを特徴とする請求項4に記載の近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の載置層、前記第2の載置層及び前記第1の被覆層からなる積層構造を一体構造にプレスすることの後には、
前記近距離無線通信装置の表面が平坦になるように、完全シート材をそれぞれ前記第1の被覆層の前記第1の載置層から離れた側、及び前記第2の載置層の前記第1の載置層から離れた側に積層して置き、第2の被覆層を形成すること、がさらに含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2の被覆層を形成することの後には、
1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成することと、
各前記辺枠においてスクリーン印刷を行い、前記近距離無線通信装置の外表面としての、前記近距離無線通信装置の標識パターンを有する第3の被覆層を形成することと、
ラミネート熱成形プロセスを採用して、前記第2の被覆層及び前記第3の被覆層が積層して置かれた積層構造を一体構造にプレスすることと、がさらに含まれる、
ことを特徴とする請求項6に記載の近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の載置層、前記第2の載置層、前記第1の被覆層、前記第2の被覆層及び前記第3の被覆層の材料は、いずれもアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体である、
ことを特徴とする請求項7に記載の近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項9】
前記した、前記第2の被覆層及び前記第3の被覆層が積層して置かれた積層構造を一体構造にプレスすることの後には、
前記第2の被覆層の前記第2の載置層から離れた側に、前記近距離無線通信装置を情報の読み書きが必要な機器である目標機器の表面に貼り付けて固定させるための貼付層を貼着して、前記近距離無線通信装置を形成すること、がさらに含まれる、
ことを特徴とする請求項7に記載の近距離無線通信装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の近距離無線通信装置の製造方法により作られた、
ことを特徴とする近距離無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、通信の技術分野に関し、特に近距離無線通信装置の製造方法及び近距離無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信技術(Near Field Communication、NFC)は、電子機器の互いに近接する場合におけるデータ交換を許可する短距離の高周波無線通信技術であり、既にモバイル端末によるモバイル決済、電子チケット、出入り管理、モバイル身分識別及び偽造防止などの場面に広く応用されている。
【0003】
しかし、従来のNFC技術を応用する通信装置には、依然としていくつかの問題が存在する。
図1は、従来技術に係る近距離無線通信装置の断面構造図であり、
図1に示すように、従来の近距離無線通信装置において、コート紙01とアンテナ03との間は、接着剤02を採用して貼り付けられ、且つ離型紙04とアンテナ03との間も、接着剤02を採用して貼り付けられ、チップ05は、接着剤02によりアンテナ03の表面に貼り付けられ、且つ電気的接続が実現され、これにより、1つの全体構造が形成される。そのため、ユーザの使用過程において、不適正な操作又は使用により近距離無線通信装置に層間剥離が出現して、データ交換機能が損壊される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、近距離無線通信装置を、一体構造になって使用過程において層間剥離及び損壊が発生しないようにするための、近距離無線通信装置の製造方法及び近距離無線通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、
第1の開口が設けられた第1の載置層を形成することと、
前記第1の載置層のエッジに前記第1の開口を取り囲んでコイルを埋め込み、前記第1の開口の中にチップを嵌め込み、そのうち、前記チップと前記コイルとが溶接されることと、
第2の載置層を前記第1の載置層の背面に積層して置き、前記第2の載置層に設けられて前記第1の開口と鉛直方向において重なり合いが存在する第2の開口の中に、遮蔽層を前記チップを覆うように貼り付けることと、
前記第1の載置層の正面に第1の被覆層を積層して置き、ラミネート熱成形プロセスを採用して前記第1の載置層、前記第2の載置層及び前記第1の被覆層からなる積層構造を一体構造にプレスすることと、を含む近距離無線通信装置の製造方法を提供する。
【0006】
好ましくは、前記遮蔽層の材料は、ナノ結晶材料である。
【0007】
好ましくは、前記第1の載置層の製造方法は、
1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成することと、
各前記辺枠においてパンチングを行い、アレイに配列された複数の前記第1の開口を形成し、前記第1の載置層を得ることと、を含む。
【0008】
好ましくは、前記第2の載置層の製造方法は、
1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成することと、
各前記辺枠においてパンチングを行い、アレイに配列された複数の前記第2の開口を形成し、前記第2の載置層を得ることと、を含む。
【0009】
好ましくは、前記第1の開口のサイズは、前記第2の開口のサイズよりも小さい。
【0010】
好ましくは、前記第1の載置層、前記第2の載置層及び前記第1の被覆層からなる積層構造を一体構造にプレスすることの後には、
前記近距離無線通信装置の表面が平坦になるように、完全シート材をそれぞれ前記第1の被覆層の前記第1の載置層から離れた側、及び前記第2の載置層の前記第1の載置層から離れた側に積層して置き、第2の被覆層を形成することがさらに含まれる。
【0011】
好ましくは、前記第2の被覆層を形成することの後には、
1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成することと、
各前記辺枠においてスクリーン印刷を行い、前記近距離無線通信装置の外表面としての、前記近距離無線通信装置の標識パターンを有する第3の被覆層を形成することと、
ラミネート熱成形プロセスを採用して、前記第2の被覆層及び前記第3の被覆層が積層して置かれた積層構造を一体構造にプレスすることと、がさらに含まれる。
【0012】
好ましくは、前記第1の載置層、前記第2の載置層、前記第1の被覆層、前記第2の被覆層及び前記第3の被覆層の材料は、いずれもアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体である。
【0013】
好ましくは、前記した、前記第2の被覆層及び前記第3の被覆層が積層して置かれた積層構造を一体構造にプレスすることの後には、
前記第2の被覆層の前記第2の載置層から離れた側に、前記近距離無線通信装置を情報の読み書きが必要な機器である目標機器の表面に貼り付けて固定させるための貼付層を貼着して、前記近距離無線通信装置を形成することがさらに含まれる。
【0014】
本発明の他の一側面によれば、第1の側面における任意の実施例に記載の近距離無線通信装置の製造方法により作られた近距離無線通信装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施例の技術態様は、第1の開口を有する第1の載置層のエッジにコイルを埋め込み、第1の開口の中にチップを設け、チップとコイルとを溶接させる。第2の開口を有する第2の載置層を第1の載置層の背面に設け、第2の開口の中に遮蔽層をチップを覆うように貼り付ける。ラミネート熱成形プロセスを採用して積層して設けられた第1の被覆層、第1の載置層及び第2の載置層をプレスすることで、積層構造は、受熱である程度の溶融が発生し、プレスを経て一体構造を形成し、これにより、不適正な操作又は使用による、近距離無線通信装置に層間剥離及び損壊が発生する状況を効果的に防止し、近距離無線通信装置のデータ交換機能を保護することができる。
【0016】
本部分で説明されている内容は、本発明の実施例の核心的又は重要な特徴を特定することを意図するものではなく、本発明の範囲を限定するためのものでもないことを理解すべきである。本発明の他の特徴は、以下の明細書によって理解しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、本発明の実施例における技術態様をより明確に説明するために、実施例の説明で使用する必要がある図面について簡単に紹介し、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を行わない前提で、これらの図面に従って他の図面をさらに取得できることは明らかである。
【0018】
【
図1】従来技術に係る近距離無線通信装置の断面構造図である。
【
図2】本発明の実施例に係る近距離無線通信装置の製造方法のフローの模式図である。
【
図3】本発明の実施例に係る近距離無線通信装置の製造方法における各ステップの構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係る他の近距離無線通信装置の製造方法のフローの模式図である。
【
図5】本発明の実施例に係る印刷後のシート材の構造模式図である。
【
図6】本発明の実施例に係るパンチング後のシート材の構造模式図である。
【
図7】本発明の実施例に係る他の近距離無線通信装置の製造方法のフローの模式図である。
【
図8】本発明の実施例に係る近距離無線通信装置の積層構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
当業者に本発明の態様をよりよく理解させるために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案を明確で完全に説明し、説明される実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わない前提で得られる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属すべきである。
【0020】
なお、本発明の明細書及び特許請求の範囲、並びに上記図面における用語「第1」及び「第2」などは、特定の順序又は前後順序を説明することに用いられる必要がなく、類似する対象を区別するためのものである。このように使用されるデータは、適切な場合に置換え可能であり、これにより、ここで説明される本発明の実施例が、ここで図示又は説明されるもの以外の順序で実施できることを理解すべきである。また、用語「含む」及び「有する」並びにこれらの如何なる変形は、排他ではない包含をカバーすることを意図し、例えば、一連のステップ又はユニットの過程、方法、システム、製品又は機器を含み、必ずしも明確に挙げられたそれらのステップ又はユニットに限定されず、明確に挙げられていない又はこれらの過程、方法、製品又は機器にとって固有である他のステップ又はユニットを含んでもよい。
【0021】
本発明の実施例は、近距離無線通信装置の製造方法を提供する。
図2は、本発明の実施例に係る近距離無線通信装置の製造方法のフローの模式図であり、
図3は、本発明の実施例に係る近距離無線通信装置の製造方法における各ステップの構造模式図である。本実施例は、近距離無線通信装置を製造する場合に適用可能であり、該近距離無線通信装置の製造方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0022】
S110において、第1の開口12が設けられた第1の載置層11を形成する。
【0023】
具体的には、第1の開口を利用して他の部品を設けるように、第1の載置層に第1の開口を設ける。例示的に、第1の開口は、第1の載置層におけるエッジ以外の任意の位置に設けられてもよく、ここでは制限しない。例えば、本実施例において、
図3におけるステップS110の対応する構造模式図を参照し、第1の開口は、第1の載置層の中心位置に設けられる。
【0024】
S120において、第1の載置層11のエッジに第1の開口12を取り囲んでコイル13を埋め込み、第1の開口12の中にチップ14を嵌め込み、そのうち、チップ14とコイル13とが溶接される。
【0025】
具体的には、第1の載置層のエッジ位置においてエッジの1周に沿って周回してコイルを設け、且つコイルの第1の開口に近い1周の末端には、接続線が設けられており、該接続線は、第1の開口に向かって延伸し且つ第1の開口を通過する。例示的に、本実施例において、コイルの第1の載置層への埋込みは、超音波ワイヤ埋込の方法を採用し、即ちコイルの表面に包まれた絶縁外皮を溶融することで、第1の載置層の表面のエッジに巻回されたコイルを第1の載置層の表面に固定する。
【0026】
チップを第1の開口の中に置き、第1の開口を通過する接続線と溶接させることで、チップとコイルとが電気的接続を実現して、チップがコイルによりデータを出力し、又は外部データがコイルによりチップに書き込まれることを可能にし、データ交換を実現する。
【0027】
S130において、第2の載置層21を第1の載置層11の背面に積層して置き、第2の載置層21に設けられて第1の開口12と鉛直方向において重なり合いが存在する第2の開口22の中に遮蔽層23をチップ14を覆うように貼り付ける。
【0028】
具体的には、第1の載置層の背面に設けられた第2の開口を有する第2の載置層は、そのサイズが第1の載置層のサイズと同じであり、且つ各第2の開口が各第1の開口に一対一に対応し、鉛直方向において重なり合い領域が存在する。第2の開口の中に遮蔽層を、第2の開口と第1の開口との重なり合い領域でチップを覆うように貼り付けることで、外部磁場によるチップのデータ交換への影響を小さくする。例示的に、
図3を参照し、本実施例において、第2の開口は、第2の載置層の中心位置に設けられ、且つ第1の開口のサイズは、第2の開口のサイズよりも小さく、これにより、第2の開口は完全に第1の開口を取り囲んで、遮蔽層は完全にチップを覆う。そのうち、遮蔽層の材料は、ナノ結晶材料である。
【0029】
S140において、第1の載置層11の正面に第1の被覆層30を積層して置き、ラミネート熱成形プロセスを採用して第1の載置層11、第2の載置層21及び第1の被覆層30からなる積層構造を一体構造にプレスする。
【0030】
そのうち、第1の被覆層は、開口が設けられていない完全な膜層であり、第1の被覆層を第1の載置層の正面に設けることにより、コイル及びチップが設けられた第1の載置層の表面を平坦にさせ、コイル及びチップによる近距離無線通信装置の外観への影響を小さくすることができる。例示的に、第1の載置層、第2の載置層及び第1の被覆層の材料はいずれも、ABS樹脂とも呼ばれるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(Acrylonitrile Butadiene Styrene、ABS)である。ABS樹脂は強度が高く、靭性が良好で且つ加工成形しやすい熱可塑性高分子構造材料であるため、第1の載置層、第2の載置層及び第1の被覆層からなる積層構造をラミネート熱成形プロセスを採用してプレスすることで、積層構造は、受熱である程度の溶融が発生し、その後、プレスを経て一体構造を形成することができる。このように形成された一体構造は、不適正な操作又は使用による、近距離無線通信装置に使用過程において層間剥離が出現する状況が効果的に回避されて、近距離無線通信装置が損壊されにくくなる。
【0031】
また、ラミネート熱成形プロセスにおいて積層構造が受熱して溶融するため、第1の載置層の表面に固定されたコイルに対応する位置のABS樹脂材料も溶融し、これにより、コイルが第1の載置層の表面に嵌め込まれて、第1の載置層がより平坦になる。
【0032】
本実施例の技術態様は、第1の開口を有する第1の載置層のエッジにコイルを埋め込み、第1の開口の中にチップを設け、チップとコイルとを溶接させる。第2の開口を有する第2の載置層を第1の載置層の背面に設け、第2の開口の中に遮蔽層をチップを覆うように貼り付ける。ラミネート熱成形プロセスを採用して積層して設けられた第1の被覆層、第1の載置層及び第2の載置層をプレスすることで、積層構造は、受熱である程度の溶融が発生し、プレスを経て一体構造を形成し、これにより、不適正な操作又は使用による、近距離無線通信装置に層間剥離及び損壊が発生する状況を効果的に防止し、近距離無線通信装置のデータ交換機能を保護することができる。
【0033】
好ましくは、
図4は、本発明の実施例に係る他の近距離無線通信装置の製造方法のフローの模式図である。上記実施例を踏まえ、
図4に示すように、該近距離無線通信装置の製造方法は、以下を含む。
【0034】
S211において、1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成する。
【0035】
そのうち、スクリーン印刷は、スクリーン孔版及び印刷インクを利用して、印刷インクの擦り付けを経て図形を得る方法である。完全シート材は、即ち完全的な、開口が設けられていない膜層である。例示的に、本実施例で採用されるシート材は、いずれもABS樹脂である。
図5は、本発明の実施例に係る印刷後のシート材の構造模式図であり、
図5を参照し、シート材にアレイに配列されたサイズが同じである複数の辺枠を印刷し、各辺枠に囲まれた領域は、即ち1つの近距離無線通信装置が形成された領域である。そのため、1つの完全シート材に同時に複数の近距離無線通信装置を製造して得ることができる。そのうち、辺枠は実際のニーズに応じて任意の形状に設定されてもよく、ここでは限定しない。例示的に、本実施例において、スクリーン印刷により形成された辺枠は矩形である。
【0036】
S212において、各辺枠においてパンチングを行い、アレイに配列された複数の第1の開口を形成し、第1の載置層を得る。
【0037】
そのうち、パンチングは、打抜き型を利用して閉曲線に沿って打抜きを行い、打ち抜かれた部分はスクラップであり、これにより、アレイに配列された第1の開口を有する第1の載置層が形成される。例示的に、
図3におけるステップS110の対応する構造図を参照し、本実施例において、第1の開口の形状は、チップにマッチングする矩形である。
【0038】
S220において、第1の載置層のエッジに第1の開口を取り囲んでコイルを埋め込み、第1の開口の中にチップを嵌め込み、そのうち、チップとコイルとが溶接される。
【0039】
S230において、第1の開口と鉛直方向において重なり合いが存在する第2の開口が設けられた第2の載置層を第1の載置層の背面に積層して置き、第2の開口の中に遮蔽層をチップを覆うように貼り付ける。
【0040】
S240において、第1の載置層の正面に第1の被覆層を積層して置き、ラミネート熱成形プロセスを採用して第1の載置層、第2の載置層及び第1の被覆層からなる積層構造を一体構造にプレスする。
【0041】
好ましくは、上記各実施例を踏まえ、ステップS130における第2の載置層の製造方法は、以下を含む。
【0042】
S131において、1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成する。
【0043】
具体的には、引き続き
図5を参照し、スクリーン印刷の方法を採用して1つの完全シート材に複数の辺枠を印刷形成し、且つ該ステップで採用された完全シート材及び第1の載置層の製造時に採用された完全シート材のサイズは同じで、形成された辺枠及び第1の載置層の製造時に印刷形成された辺枠の組版及びサイズはいずれも同じである。
【0044】
S132において、各辺枠においてパンチングを行い、アレイに配列された複数の第2の開口を形成し、第2の載置層を得る。
【0045】
そのうち、第1の載置層の製造と同じ、パンチングにより各辺枠において第2の開口を形成して、第2の載置層を得る。例示的に、
図6は、本発明の実施例に係るパンチング後のシート材の構造模式図であり、
図6を参照し、本実施例において、第2の開口22の形状は、遮蔽層にマッチングする矩形である。
【0046】
好ましくは、
図7は、本発明の実施例に係る他の近距離無線通信装置の製造方法のフローの模式図である。上記各実施例を踏まえ、
図7に示すように、該近距離無線通信装置の製造方法は、以下を含む。
【0047】
S310において、第1の開口が設けられた第1の載置層を形成する。
【0048】
S320において、第1の載置層のエッジに第1の開口を取り囲んでコイルを埋め込み、第1の開口の中にチップを嵌め込み、そのうち、チップとコイルとが溶接される。
【0049】
S330において、第1の開口と鉛直方向において重なり合いが存在する第2の開口が設けられた第2の載置層を第1の載置層の背面に積層して置き、第2の開口の中に遮蔽層をチップを覆うように貼り付ける。
【0050】
S340において、第1の載置層の正面に第1の被覆層を積層して置き、ラミネート熱成形プロセスを採用して第1の載置層、第2の載置層及び第1の被覆層からなる積層構造を一体構造にプレスする。
【0051】
S350において、近距離無線通信装置の表面が平坦になるように、完全シート材をそれぞれ第1の被覆層の第1の載置層から離れた側、及び第2の載置層の第1の載置層から離れた側に積層して置き、第2の被覆層を形成する。
【0052】
具体的には、第1の被覆層、第1の載置層及び第2の載置層をプレスして形成された一体構造の正面及び背面にそれぞれ完全シート材を設け、第2の被覆層を形成することで、既に形成された一体構造をさらに包み、表面をより平坦にさせる。且つ、多層構造に対してラミネート熱成形プロセスを採用してプレスして形成された一体構造は、近距離無線通信装置の使用過程における信頼性をさらに高め、層間剥離が発生しにくい。
【0053】
S360において、1つの完全シート材に対してスクリーン印刷を行い、サイズが同じで且つアレイに配列された複数の辺枠を形成する。
【0054】
具体的には、完全シート材をもう1つ取り、その表面にスクリーン印刷により上記任意の実施例に記載のものと同じ辺枠を形成する。
【0055】
S370において、各辺枠においてスクリーン印刷を行い、近距離無線通信装置の外表面としての、近距離無線通信装置の標識パターンを有する第3の被覆層を形成する。
【0056】
具体的には、スクリーン印刷プロセスを採用して各辺枠において標識パターンを印刷形成して、第3の被覆層を近距離無線通信装置の外表面として形成する。例示的に、近距離無線通信装置の完成品の外観を美しくするために、第3の被覆層で採用されたシート材は、近距離無線通信装置の電子機器に貼り付けられる突兀感を小さくするために、対応する電子機器の外観に近い色であってもよい。
【0057】
S380において、ラミネート熱成形プロセスを採用して、第2の被覆層及び第3の被覆層が積層して置かれた積層構造を一体構造にプレスする。
【0058】
例示的に、第2の被覆層及び第3の被覆層の材料は、いずれもアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体である。そのため、第1の被覆層、第1の載置層及び第2の載置層からなる一体構造に第2の被覆層及び第3の被覆層を設けた後に、もう一回ラミネート熱成形プロセスを採用して、積層構造を一体構造にプレスすることで、近距離無線通信装置の完成品に使用過程において層間剥離、損壊が出現する状況が効果的に回避され、且つ形成された一体構造のエッジに異色が出現せず、外観がより美しくなる。
【0059】
S390において、第2の被覆層の第2の載置層から離れた側に、近距離無線通信装置を情報の読み書きが必要な機器である目標機器の表面に貼り付けて固定させるための貼付層を貼着して、近距離無線通信装置を形成する。
【0060】
例示的に、設けられた貼付層は、両面テープであってもよく、1つの面が第2の被覆層の第2の載置層から離れた側の表面に貼り付けられ、もう1つの面が使用時に目標機器の表面に貼り付けられ、これにより、近距離無線通信装置を目標機器の表面に固定させて、情報の読み書き及びデータ交換を実現する。
【0061】
上記各実施例において、近距離無線通信装置は、それぞれ第1の被覆層、第1の載置層、第2の載置層、第2の被覆層及び第3の被覆層を備える。そのうち、第1の被覆層、第1の載置層及び第2の載置層は、近距離無線通信装置の中間材であり、第2の被覆層及び第3の被覆層は、近距離無線通信装置の表面材に属する。近距離無線通信装置を合成した中間材及び表面材は、いずれもアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体を原料として採用しているが、各プロセスのパラメータには一定の差異が存在する。例示的に、表面材の合成時、熱機関が10~11MPaの圧力で35minプレスし、冷凍機が13MPaの圧力で15minプレスし、且つプレス過程において温度を120~140℃に保持する必要があり、好ましくは、プレス過程において、温度が130℃に保持され、一方、中間材の合成時、熱機関が8~10MPaの圧力で35minプレスし、冷凍機が13MPaの圧力で15minプレスし、且つプレス過程において温度を140~150℃に保持する必要があり、好ましくは、プレス時の温度が148℃に保持される。
【0062】
1つの実現可能な実施例において、選出された完全シート材は、いずれも黒色のABS膜層であり、サイズが292×475×0.15mmである。スクリーン印刷が行われた後、サイズが35×45mmでシート材において6×12のレイアウトで組版される複数の辺枠を形成する。第1の載置層の形成時、スクリーン印刷後のシート材に対してパンチングを行い、各辺枠においてサイズが5×8mmである第1の開口を形成する。第1の載置層の各辺枠のエッジに超音波ワイヤ埋込の方式によりコイルを埋め込み、コイルのサイズが21×21mmであり、第1の開口の中にチップを溶接させ、チップのサイズが5×8mmである。第2の載置層の形成時、スクリーン印刷後のシート材に対してパンチングを行い、各辺枠においてサイズが(23.5±0.05)×(23.5±0.05)mmである第2の開口を形成する。第2の載置層に設けられた第2の開口の中にナノ結晶遮蔽材料を貼り付け、そのうち、ナノ結晶遮蔽材料のサイズは23.5×23.5mmである。サイズが292×475×0.15mmである完全シート材を第1の被覆層とし、第1の載置層の正面に設け、第1の被覆層、第1の載置層及び第2の載置層をラミネート熱成形プロセスを採用してプレスし、一体構造を形成する。該一体構造の上層及び下層にそれぞれ完全シート材を第2の被覆層として設けて、合成後の構造の厚さを0.82mmにする。辺枠が印刷された完全シート材において、各辺枠の中心位置においてスクリーン印刷の方法を採用して近距離無線通信装置の標識パターンを第3の被覆層として形成し、そのうち、標識パターンの位置ずれ量は±0.3mmである。第2の被覆層及び第3の被覆層が増設された後の積層構造をもう一回ラミネート熱成形プロセスを採用してプレスし、一体構造を形成する。一体構造の背面に両面テープを貼付層として設け、近距離無線通信装置の完成品を形成し、そのうち、完成品のサイズは、ユーザの実際のニーズに応じて自ら設定可能であり、ここでは如何なる制限もしない。例示的に、完成品のサイズは28×28mmであってもよい。
【0063】
近距離無線通信装置の完成品を製造して得た後、ユーザの要求に従って近距離無線通信装置にデータを焼き付け、その後、品質管理、包装、入荷品質管理、アンテナ無線周波数検出、説明書の置入れ及びパッケージング、シーリングの工程を行う。
【0064】
本発明の実施例に係る近距離無線通信装置の製造方法により製造された近距離無線通信装置は、ナノ結晶遮蔽材料を遮蔽層として採用し、近距離無線通信装置の金属環境におけるデータ読み書き距離及び周波数を効果的に改善することができる。以下の実施例は、本発明の実施例に係る近距離無線通信装置のデータ読み書き距離及び周波数を他の場合のデータ読み書き距離及び周波数と比較して分析する。
【0065】
本発明の実施例に係る近距離無線通信装置については、その標準周波数は、13.56MHzに設定され、近距離無線通信装置が非金属環境にある場合、即ち外部磁場が存在しない場合、近距離無線通信装置の周波数は13.21MHzであり、データ読み書き距離は27mmに達することができ、近距離無線通信装置が金属環境にある場合、即ち外部磁場が存在する場合、近距離無線通信装置の周波数は13.92MHzであり、データ読み書き距離は20mmである。これから分かるように、ナノ結晶遮蔽材料を増加することにより、外部磁場が存在する場合でも、データ読み書き距離が依然として20mmに達し、且つ周波数が大きく変化せず、ユーザの要求を満たすことができる。
【0066】
従来の近距離無線通信装置については、近距離無線通信装置が非金属環境にある場合、近距離無線通信装置の周波数は12.25MHzであり、データ読み書き距離は28mmに達することができ、近距離無線通信装置が金属環境にある場合、近距離無線通信装置の周波数は14.35MHzであり、データ読み書き距離は17mmである。これから分かるように、従来技術における近距離無線通信装置は、外部磁場の影響で、周波数が大きく変動し、且つデータ読み書き距離が明らかに小さくなる。
【0067】
本発明の実施例で採用されたナノ結晶遮蔽材料をフェライト材料に置き換えると、以下のテスト結果を得ることができる。
【0068】
【0069】
そのうち、カードリーダは型番がACR122U型のものを選択して使用する。これから分かるように、フェライト材料を遮蔽材料として採用する場合、近距離無線通信装置の周波数が大きく変動及び変化し、且つ金属なし及び金属ありのそれぞれの場合では、データ読み書き距離の差異が大きく、フェライト材料による外部磁場の遮蔽効果が悪いことを示している。
【0070】
フェライト材料を遮蔽層として採用した近距離無線通信装置については、金属環境にあるか否か及び外部磁場の強弱が、いずれも近距離無線通信装置の周波数及びデータ読み書き距離に一定の影響を与え、以下はテスト結果である。
【0071】
【0072】
そのうち、環境1#は、金属環境にない場合であり、環境2#は、近距離無線通信装置に金属部品が存在するものであり、即ち環境2#の場合、外部磁場が弱く、環境3#は、近距離無線通信装置が金属とカードリーダとの間に介在するものであり、即ち環境3#の場合、外部磁場が強い。
【0073】
これから分かるように、フェライト材料を遮蔽層として採用した近距離無線通信装置は、強磁場での周波数が非常に大きく変動し、且つデータ読み書き距離が大幅に小さくなる。そのため、フェライト材料による外部磁場の干渉の遮蔽効果が悪い。
【0074】
本発明の実施例は、近距離無線通信装置をさらに提供する。
図8は、本発明の実施例に係る近距離無線通信装置の積層構造模式図である。該近距離無線通信装置001は、上記任意の実施例に係る近距離無線通信装置の製造方法により作られ、ラミネート熱成形プロセスによりプレスして形成された一体構造を有し、使用過程において層間剥離、損壊が発生しにくい。且つナノ結晶遮蔽材料を遮蔽層として採用するのは、近距離無線通信装置が安定した周波数及び大きなデータ読み書き距離を保持するように、近距離無線通信装置が金属環境にある場合に外部磁場によるデータ交換への干渉を効果的に弱めることができる。
【0075】
上記の具体的な実施形態は、本発明の保護範囲を限定するものではない。当業者であれば、設計要求や他の要素に基づいて様々な修正、組み合わせ、サブ組み合わせ及び置換が可能であることを理解すべきである。任意の、本発明の精神及び原則内で行われる修正、均等な置換及び改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。