(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058869
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
H10H 20/811 20250101AFI20250401BHJP
H10H 20/825 20250101ALN20250401BHJP
【FI】
H01L33/04
H01L33/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087669
(22)【出願日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2023165225
(32)【優先日】2023-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】兼平 真吾
(72)【発明者】
【氏名】川田 至孝
(72)【発明者】
【氏名】安倍 弘喜
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA24
5F241CA05
5F241CA40
5F241CB11
(57)【要約】
【課題】低電流での駆動及び順方向電圧の低減が可能な窒化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】 第1n型半導体層と、第1n型半導体層上に配置され、第1n型半導体層と接する第1p型半導体層と、第1p型半導体層上に配置され、p型不純物を含む第1超格子層と、第1超格子層上に配置された活性層と、活性層上に配置された第2n型半導体層と、第1n型半導体層と電気的に接続された第1電極と、第2n型半導体層と電気的に接続された第2電極と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1n型半導体層と、
前記第1n型半導体層上に配置され、前記第1n型半導体層と接する第1p型半導体層と、
前記第1p型半導体層上に配置され、p型不純物を含む第1超格子層と、
前記第1超格子層上に配置された活性層と、
前記活性層上に配置された第2n型半導体層と、
前記第1n型半導体層と電気的に接続された第1電極と、
前記第2n型半導体層と電気的に接続された第2電極と、
を含む窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1超格子層は、第1層と、前記第1層と格子定数が異なる第2層と、が交互に積層され、
前記第1層は、In及びp型不純物を含む請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記第2層は、In及びp型不純物を含み、
前記第2層のp型不純物濃度は、前記第1層のp型不純物濃度よりも小さく、
前記第2層のIn組成比は、前記第1層のIn組成比よりも小さい、請求項2に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1層のp型不純物濃度は、前記第1p型半導体層のp型不純物濃度よりも小さい請求項3に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1層のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上3×1019cm-3以下である請求項2~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1層の厚さは、前記第2層の厚さより薄い請求項2~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項7】
前記第2n型半導体層上に配置された第2活性層と、
前記第2活性層上に配置された第2p型半導体層と、
前記第2p型半導体層と電気的に接続された第3電極と、をさらに含む請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項8】
前記第2n型半導体層と前記第2活性層との間に配置された第2超格子層をさらに有する請求項7に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項9】
前記第2超格子層は、第3層と、前記第3層と格子定数が異なる第4層と、が交互に積層され、
前記第3層及び前記第4層は、アンドープの層である請求項8に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項10】
前記第2超格子層は、第3層と、前記第3層と格子定数が異なる第4層と、が交互に積層され、
前記第3層は、n型不純物を含む請求項8に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項11】
前記第3層は、Inを含む請求項10に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項12】
前記第4層のn型不純物濃度は、前記第3層のn型不純物濃度よりも小さく、
前記第4層のIn組成比は、前記第3層のIn組成比よりも小さい、請求項11に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項13】
前記第3層の厚さは、前記第4層の厚さより薄い請求項10に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項14】
前記第1n型半導体層は、第3超格子層と、前記第3超格子層上に配置され、前記第1p型半導体層と接する第1接合層とを含み、
前記第1p型半導体層は、前記第1接合層とトンネル接合する第2接合層を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項15】
前記第3超格子層の厚さは、前記第1超格子層の厚さよりも薄い請求項14に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項16】
前記第3超格子層は、n型不純物を含む請求項14に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項17】
前記第2n型半導体層上に配置され、n型不純物を含む第2超格子層と、
前記第2超格子層上に配置された第2活性層と、
前記第2活性層上に配置された第2p型半導体層と、
前記第2p型半導体層と電気的に接続された第3電極と、をさらに含み、
前記第3超格子層のn型不純物濃度は、前記第2超格子層のn型不純物濃度より小さい請求項16に記載の窒化物半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体発光素子は、その用途が拡大するにつれて発光効率の向上が求められ、特許文献1に開示された発光素子は低電流で駆動させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、窒化物半導体発光素子は、その用途が拡大するにつれて、さらなる低電流での駆動及び順方向電圧の低減が求められている。
【0005】
そこで、本開示は、低電流での駆動及び順方向電圧の低減が可能な窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本開示に係る窒化物半導体発光素子は、
第1n型半導体層と、
前記第1n型半導体層上に配置され、前記第1n型半導体層と接する第1p型半導体層と、
前記第1p型半導体層上に配置され、p型不純物を含む第1超格子層と、
前記第1超格子層上に配置された活性層と、
前記活性層上に配置された第2n型半導体層と、
前記第1n型半導体層と電気的に接続された第1電極と、
前記第2n型半導体層と電気的に接続された第2電極と、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成された本開示に係る窒化物半導体発光素子によれば、低電流での駆動及び順方向電圧の低減が可能な窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1の窒化物半導体発光素子の断面図である。
【
図2】
図1の第1超格子層40を拡大して示す断面図である。
【
図3】実施形態2の窒化物半導体発光素子の断面図である。
【
図4】実施形態3の窒化物半導体発光素子の断面図である。
【
図5】
図4の第2超格子層90を拡大して示す断面図である。
【
図6】実施形態4-1の窒化物半導体発光素子の断面図である。
【
図7】実施形態4-2の窒化物半導体発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための実施形態や実施例を説明する。なお、以下に説明する窒化物半導体発光素子及び窒化物半導体発光素子の製造方法は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下のものに限定するものではない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態や実施例では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないことがある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0010】
本開示に係る実施形態の窒化物半導体発光素子は、
図1等に示すように、第1n型半導体層20と、第1n型半導体層20上に配置され、第1n型半導体層20と接する第1p型半導体層30と、第1p型半導体層30上に配置され、p型不純物を含む第1超格子層40と、第1超格子層40上に配置された第1活性層50と、第1活性層50上に配置された第2n型半導体層60と、第1n型半導体層20と電気的に接続された第1電極11と、第2n型半導体層60と電気的に接続された第2電極12と、を含む。
以上のように構成された本開示に係る実施形態の窒化物半導体発光素子は、第1p型半導体層30と第1活性層50の間に、p型不純物を含む第1超格子層40を備えていることにより、順方向電圧Vfを低くすることができ、印加電圧に対する発光強度を高くできる。
ここで、本明細書における窒化物半導体とは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)およびインジウム(In)の少なくともいずれか1つと窒素(N)とを含む2元~4元の半導体をいい、In
xAl
yGa
1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)からなる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含み得る。
以下、本開示に係る実施形態の窒化物半導体発光素子について詳細に説明する。
【0011】
[実施形態1]
図1は、実施形態1の窒化物半導体発光素子の断面図である。また、
図2は、
図1の窒化物半導体発光素子における第1超格子層40の断面図である。
図1に示すように、実施形態1の半導体発光素子は、例えば、基板10と、基板10上に配置された第1発光部1を含む。第1発光部1は、それぞれ窒化物半導体により構成される、基板10上に配置された第1n型半導体層20と、第1n型半導体層20上に配置された第1p型半導体層30と、第1p型半導体層30上に配置され、p型不純物を含む第1超格子層40と、第1超格子層40上に配置された第1活性層50と、第1活性層50上に配置された第2n型半導体層60と、を含む。
さらに、実施形態1の窒化物半導体発光素子は、第1n型半導体層20と例えばオーミック接触させることにより、第1n型半導体層20と電気的に接続された第1電極11と、第2n型半導体層60と例えばオーミック接触させることにより、第2n型半導体層60と電気的に接続された第2電極12と、を含む。
以上のように構成された実施形態1の窒化物半導体発光素子において、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30とは接しており、第1電極11から注入された電流は、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30とを介して第1活性層50に注入されて第1発光部1が発光する。すなわち、実施形態1の窒化物半導体発光素子において、第1n型半導体層20に配置された第1電極11は正電極であり、第2電極12は負電極である。
そして、本開示に係る実施形態1の窒化物半導体発光素子は、p型不純物を含む第1p型半導体層30と第1活性層50の間に、p型不純物を含む第1超格子層40を配置することにより、順方向電圧Vfを低くして、印加電圧に対する発光強度を高くしている。
【0012】
すなわち、本開示の実施形態1の窒化物半導体発光素子かかる発明は、第1n型半導体層20に電気的に接続された正電極から注入される電流を、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30とを介して第1活性層50に注入する発光素子において、p型不純物を含んでp型電導性を有する第1p型半導体層30と第1活性層50の間に、p型不純物を含む第1超格子層40を配置することにより、第1活性層50へのホールの供給効率を上昇させることができ、順方向電圧Vfを低くして、印加電圧に対する発光強度を高くできるという本発明者が独自に得た知見に基づきなされたものである。
以下、本発明者が得た知見に基づき、第1超格子層40の具体例及びより好ましい形態について説明する。
【0013】
<第1超格子層>
図2は、実施形態1の窒化物半導体発光素子における第1超格子層40を拡大して示す断面図である。
第1超格子層40は、
図2に示すように、第1層41と第2層42とを有する。第1層41と第2層42とは、交互に積層される。第2層42の格子定数は、第1層41の格子定数とは異なる。第1p型半導体層30と第1活性層50の間に、第1超格子層40を配置することで、第1p型半導体層30と第1活性層50の格子定数の差による第1活性層50の結晶の歪みを低減することができる。第1活性層50の結晶の歪みを低減することで、第1活性層50の内部量子効率を高くすることができる。その結果、発光効率を向上できる。
第1層41と第2層42の組成は、例えば、第1活性層50の組成またはバンドギャップ、第1活性層50が量子井戸構造を有する場合には井戸層の組成またはバンドギャップを考慮して設定することが好ましい。例えば、井戸層がInGaN層により構成されている場合は、第1層41及び第2層42を、井戸層よりもInの組成比が小さい層とすることが好ましい。
【0014】
第1層41及び第2層42は、例えば、In組成比が異なることで、第1層41の格子定数と第2層42の格子定数とが異なる。第1層41及び第2層42の少なくとも一方の層は、p型不純物がドープされた層である。第1層41及び第2層42の少なくとも一方の層にp型不純物がドープされていることで、上述したように、順方向電圧Vfを低くすることができる。第1層41及び第2層42の少なくとも一方の層のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上3×1019cm-3以下であることが好ましい。また、第1層41及び第2層42の少なくとも一方にドープされるp型不純物の濃度は、第1p型半導体層30のp型不純物濃度よりも小さいことが好ましい。
【0015】
例えば、第1層41のIn組成比を、第2層42のIn組成比よりも大きくすることができる。この場合、第1層41のp型不純物濃度を、第2層42のp型不純物濃度よりも大きくすることで、順方向電圧Vfを低くしやすい。これは、第1層41の上面近傍にInが分布しやすいことで、第1層41の上面の面粗さが小さくなりやすくなり、第1層41にp型不純物をドープしたとしても、第1超格子層40の結晶性が悪化しにくいためであると考えられる。
また、第1層41のIn組成比を、第2層42のIn組成比よりも大きくし、第1層41のp型不純物濃度を、第2層42のp型不純物濃度よりも大きくする場合、第1層41のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上3×1019cm-3以下であることが好ましい。第1層41のp型不純物濃度をこのような範囲とすることで、第1活性層50へのホールの供給効率を上昇させつつ、第1超格子層40の結晶性の悪化を低減できる。この場合、第2層42は、アンドープ層であることが好ましい。
また、第1層41のIn組成比を、第2層42のIn組成比よりも大きくし、第1層41のp型不純物濃度を、第2層42のp型不純物濃度よりも大きくする場合、第1層41の厚さは、第2層42の厚さより薄いことが好ましい。比較的p型不純物濃度が大きい第1層41の厚さが薄いことで、第1超格子層40の結晶性の悪化を低減できる。
特に、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30とをトンネル接合させる場合には、後述するように、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30の接合部分における不純物濃度が高くなるが、第1超格子層40を配置することにより不純物の第1活性層50への拡散を低減でき、不純物の第1活性層50への拡散による発光効率の低下を効果的に低減できる。
【0016】
以上のように構成された第1超格子層40を備えた実施形態1の窒化物半導体発光素子は、p型不純物を含んでp型電導性を有する第1p型半導体層30と第1活性層50の間に、p型不純物を含む第1超格子層40を配置することにより、順方向電圧Vfを低くして、印加電圧に対する発光強度を高くすることができる。
以下、実施形態1の窒化物半導体発光素子の各構成について詳細に説明する。
【0017】
<基板>
基板10の材料は、例えば、サファイア、Si、SiC、GaNなどである。基板10は、窒化物半導体層を成長させるための成長基板とすることができる。基板10と第1n型半導体層20の間にバッファ層を配置してもよい。基板10は、第1n型半導体層20等の半導体層を成長した後で除去してよい。
【0018】
<第1n型半導体層20>
第1n型半導体層20は、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等のn型不純物を含有する窒化物半導体層により構成することができる。例えば、第1活性層50がInを含む窒化物半導体層により構成されている場合、第1n型半導体層20を構成する窒化物半導体は、例えばn型GaN層であり、In及びAlなどを含んでいてよい。また、例えば、第1活性層50がAlを含む窒化物半導体により構成されている場合、第1n型半導体層20を構成する窒化物半導体は、例えば、n型AlGaN層であり、さらにInを含んでいてよい。
また、第1n型半導体層20は、1以上のn型窒化物半導体層を含んでいてもよく、例えば、n型不純物であるSiが8×1019cm-3以上8×1020cm-3以下の比較的高い濃度でドープされた窒化物半導体層を第1p型半導体層30とトンネル接合する層として含んでいることが好ましい。この第1p型半導体層30とトンネル接合する層は、Siが8×1019cm-3以上8×1020cm-3以下の比較的高い濃度でドープされた、例えば、厚さが1nm以上10nm以下のn型GaNからなる。第1n型半導体層20は、上記トンネル接合する層以外に、n型不純物を含む窒化物半導体層を含むことが好ましく、トンネル接合する層以外のn型不純物を含む窒化物半導体層のn型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下とすることが好ましく、例えば、n型不純物であるSiを、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下で含むn型GaN層により構成することができる。また、第1n型半導体層20は、アンドープの半導体層を一部に含んでいてよい。ここで、アンドープの半導体層とは、n型不純物及びp型不純物を意図的に添加していない層のことをいう。第1n型半導体層20全体の厚さは、例えば、5μm以上15μm以下である。
【0019】
<第1p型半導体層30>
第1p型半導体層30は、例えば、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)等のp型不純物を含有する窒化物半導体層により構成することができる。例えば、第1活性層50がInを含む窒化物半導体層により構成されている場合、第1p型半導体層30を構成する窒化物半導体は、例えばp型GaN層であり、In及びAlなどを含んでいてよい。また、例えば、第1活性層50がAlを含む窒化物半導体により構成されている場合、第1p型半導体層30を構成する窒化物半導体は、例えば、p型AlGaN層であり、さらにInを含んでいてよい。
また、第1p型半導体層30は、1以上のp型窒化物半導体層を含んでいてもよく、例えば、p型不純物であるMgが8×1019cm-3以上8×1020cm-3以下の比較的高い濃度でドープされた窒化物半導体層を第1n型半導体層20の最上層に含む層とトンネル接合する層として含んでいることが好ましい。この第1p型半導体層におけるトンネル接合する層は、Mgが8×1019cm-3以上8×1020cm-3以下の比較的高い濃度でドープされた、例えば、厚さが1nm以上30nm以下のp型GaNからなる。第1p型半導体層30は、上記トンネル接合する層以外に、p型不純物を含む窒化物半導体層を含むことが好ましく、トンネル接合する層以外のp型不純物を含む窒化物半導体層のp型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下とすることが好ましく、例えば、p型不純物であるMgを、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下で含むp型GaN層により構成することができる。第1p型半導体層30は、アンドープの半導体層を一部に含んでいてよい。第1p型半導体層30全体の厚さは、例えば、0.04μm以上0.2μm以下とすることができる。
【0020】
<第1活性層50>
第1活性層50は、例えば、発光ピーク波長範囲が200nm以上760nm以下の光を発する窒化物半導体層である。第1活性層50は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸構造であってもよいし、1つの井戸層とその両側の障壁層を含む単一量子井戸構造であってもよい。第1活性層50が単一又は多重量子井戸である場合、井戸層は、例えばGaN、InGaNまたはAlGaNであり、障壁層は、例えばAlGaN又はGaNである。
【0021】
<第2n型半導体層60>
第2n型半導体層60は、例えば、シリコン(Si)等のn型不純物を含有する窒化物半導体層を含む。第2n型半導体層60は、1以上のn型窒化物半導体層を含んでいてもよく、アンドープの半導体層を一部に含んでいてもよい。例えば、第1活性層50がInを含む窒化物半導体層により構成されている場合、第2n型半導体層60を構成する窒化物半導体は、例えばn型GaN層であり、In及びAlなどを含んでいてもよい。また、例えば、第1活性層50がAlを含む窒化物半導体により構成されている場合、第2n型半導体層60を構成する窒化物半導体は、例えば、n型AlGaN層であり、さらにInを含んでいてもよい。
第2n型半導体層60の厚さは、例えば、0.1μm以上15μm以下とすることができ、好ましくは、0.1μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上3μm以下、特に好ましくは、0.1μm以上1μm以下とすることができる。第2n型半導体層60の不純物濃度は、n型不純物としてSiを含む場合、例えば、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下とすることができる。
【0022】
<第1及び第2電極>
第1電極11及び第2電極12は、第1n型半導体層20及び第2n型半導体層60、すなわちn型半導体層と電気的に接続される電極であり、例えば、Au、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ti、Al、Cuなどの金属、又はこれらの金属を含む合金により構成することができる。第1電極11及び第2電極12は、単層構造としてもよいし、複数の層が積層された積層構造としてもよい。第1電極11及び第2電極12は、例えば、Ti層、Al-Si-Cu合金層、Ti層、Pt層、Au層、Ti層がこの順に積層された積層構造とすることができる。
【0023】
[実施形態2]
図3は、実施形態2の窒化物半導体発光素子の断面図である。
実施形態2の窒化物半導体発光素子は、
図3に示すように、実施形態1の窒化物半導体発光素子の第1発光部1の上に第2発光部2を備えている。第2発光部2は、第1発光部と共有する第2n型半導体層60と、第2n型半導体層60上に配置された第2活性層70と、第2活性層70上に配置された第2p型半導体層80と、を備える。また、実施形態2の窒化物半導体発光素子は、第2p型半導体層80と電気的に接続された第3電極13を備えている。ここで、第3電極13は、パッド電極13aと第2p型半導体層80に接して配置された電極層13bとを含んでよい。尚、実施形態2の窒化物半導体発光素子において、第2電極12は、例えば、第2活性層70及び第2p型半導体層80を除去して露出させた第2n型半導体層60上に配置される。また、第1電極11は、実施形態1の窒化物半導体発光素子と同様にして、第1n型半導体層20の上に配置される。
【0024】
以上のように構成された実施形態2の窒化物半導体発光素子において、第1電極11は、第1発光部1の正電極として機能する。また、第3電極13は、第2発光部2の正電極として機能する。また、第2電極12は、第1発光部1及び第2発光部2の負電極として機能する。
実施形態2の窒化物半導体発光素子において、第1電極11と第2電極12の間に電圧を印加することにより、第1発光部1を点灯させることができる。また、第3電極13と第2電極12の間に電圧を印加することにより、第2発光部2を点灯させることができる。このように、第1発光部1と第2発光部2とは独立点灯が可能である。
また、第1発光部1と第2発光部2とを同時に点灯させる場合であっても、第1電極11と第2電極12の間に印加する電圧及び第3電極13と第2電極12の間に印加する電圧を調整することにより、第1発光部1と第2発光部2の発光強度を個別に制御することができる。
さらに、実施形態2の窒化物半導体発光素子において、第1発光部1は、実施形態1の窒化物半導体発光素子と同様の構成を有しているので、順方向電圧Vfを低くして、印加電圧に対する発光強度を高くできる。
【0025】
以上のように構成された実施形態2の窒化物半導体発光素子において、第1発光部1と第2発光部2は、同一の発光ピーク波長を有していてもよく、異なる発光ピーク波長を有していてもよい。換言すると、第1活性層50の発光ピーク波長と第2活性層70の発光ピーク波長とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。実施形態2の窒化物半導体発光素子において、第2活性層70は、第1活性層50の上方に位置する。従って、第1活性層50の発光ピーク波長と第2活性層70の発光ピーク波長が異なる場合において、混色性を高くすることができる。なお、第1活性層50の組成が、第2活性層70の組成と異なることで、第1活性層50の発光ピーク波長が第2活性層70の発光ピーク波長と異なる。例えば、第1活性層50のIn組成比が、第2活性層70のIn組成比と異なることで第1活性層50の発光ピーク波長が第2活性層70の発光ピーク波長と異なる。
例えば、窒化物半導体発光素子において、発光効率は、発光ピーク波長によって異なる。実施形態2の窒化物半導体発光素子においては、上述したように、第1発光部1と第2発光部2とを同時に点灯させる場合であっても、第1電極11と第2電極12の間に印加する電圧及び第3電極13と第2電極12の間に印加する電圧を調整することにより、第1発光部1と第2発光部2の発光強度を個別に制御することができる。従って、実施形態2の窒化物半導体発光素子においては、第1活性層50の発光ピーク波長と第2活性層70の発光ピーク波長が異なる場合であっても、第1電極11と第2電極12の間に印加する電圧及び第3電極13と第2電極12の間に印加する電圧を調整することにより、任意の発光色が得やすい発光素子とすることができる。
【0026】
以下、実施形態2の窒化物半導体発光素子の各構成について詳細に説明する。なお、実施形態1と共通する構成については説明を省略する。
【0027】
<第2活性層70>
第2活性層70は、例えば、発光ピーク波長範囲が200nm以上760nm以下の光を発する窒化物半導体層である。第2活性層70は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸構造であってもよいし、1つの井戸層とその両側の障壁層を含む単一量子井戸構造であってもよい。第2活性層70が単一又は多重量子井戸である場合、井戸層は、例えばGaN、InGaNまたはAlGaNであり、障壁層は、例えばAlGaN又はGaNである。
【0028】
<第2p型半導体層80>
第2p型半導体層80は、例えば、Mg、Zn等のp型不純物を含有する窒化物半導体層により構成することができる。例えば、第2活性層70がInを含む窒化物半導体層により構成されている場合、第2p型半導体層80を構成する窒化物半導体は、例えばp型GaN層であり、In及びAlなどを含んでいてよい。また、例えば、第2活性層70がAlを含む窒化物半導体により構成されている場合、第2p型半導体層80を構成する窒化物半導体は、例えば、p型AlGaN層であり、さらにInを含んでいてよい。
また、第2p型半導体層80は、1以上のp型窒化物半導体層を含んでいてもよい。第2p型半導体層80は、アンドープの半導体層を一部に含んでいてよい。第2p型半導体層80全体の厚さは、例えば、0.04μm以上0.2μm以下とすることができる。
【0029】
<第3電極13>
第3電極13は、例えば、パッド電極13aと第2p型半導体層80に接して配置された電極層13bとを含む。電極層13bは、例えば、ITO、ZnO、IZO、In2O3などの透光性を有する金属酸化物や、銀などの光反射性を有する部材を用いることができる。電極層13bとして、透光性を有する部材を用いることで、第2p型半導体層80側から光を出射させることができる。また、パッド電極13aは、例えば、Au、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ti、Al、Cuなどの金属、又はこれらの金属を含む合金により構成することができる。
【0030】
[実施形態3]
図4は、実施形態3の窒化物半導体発光素子の断面図である。
実施形態3の窒化物半導体発光素子は、
図4に示すように、実施形態2の窒化物半導体発光素子において、第2n型半導体層60と第2活性層70の間に、第2超格子層90を備えている以外は、実施形態2の窒化物半導体発光素子と同様に構成される。
すなわち、実施形態3の窒化物半導体発光素子は、第2発光部2が第2超格子層90を備えている。
図5は、
図4の第2超格子層90を拡大して示す断面図である。
以下、第2超格子層90について詳細に説明する。
【0031】
<第2超格子層90>
本実施形態において、第2超格子層90は、第3層91と、第3層91と格子定数が異なる第4層92とを有する。第2超格子層90は、第3層91と、第4層92とが交互に積層された層である。第3層91と、第4層92は、例えば、In組成比が異なる。第2n型半導体層60と第2活性層70の間に第2超格子層90を配置することで、第2n型半導体層60の格子定数と第2活性層70の格子定数の差による第2活性層70の結晶の歪みを低減することができる。第2活性層70の結晶の歪みを低減することで、内部量子効率を高くすることができ、発光効率を向上できる。さらに、以下に説明するように、第3層91と第4層92の不純物濃度、組成、厚さ等を適宜選択することにより種々の効果を得ることができる。
【0032】
(実施形態3-1)
実施形態3-1においては、第3層91及び第4層92を共にアンドープの層とする。一般に、窒化物半導体は、成長基板上に組成の異なる層の積層が増えるほど、上層側において、結晶性が悪化しやすい。従って、第1発光部1の上に積層される、第2超格子層90においては、第3層91及び第4層92を共にアンドープの層とすることで、第2超格子層90の結晶性の悪化を低減できる。
【0033】
(実施形態3-2)
実施形態3-2においては、第3層91及び第4層92の少なくとも一方の層を、n型不純物を含む層とする。例えば、n型不純物としては、Siが挙げられる。第3層91及び第4層92の少なくとも一方のn型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下とすることが好ましい。このようにするとことで、第2活性層70への電子供給効率を向上させることができ、発光効率を向上させることができる。
【0034】
また、実施形態3-2においては、第3層91をn型不純物を含む層とし、さらに第3層91を、例えば、InGaN層等のInを含む層とすることが好ましい。このようにすることにより、n型不純物による第2活性層70への電子供給効率を向上させつつ、n型不純物による第2超格子層90の結晶性の悪化を低減することができる。n型不純物による第2超格子層90の結晶性の悪化を低減できる理由については、第3層91の上面近傍にInが分布しやすいことで、第3層91の上面の面粗さが小さくなりやすく、その結果、第3層91にn型不純物をドープとしても、第2超格子層90の結晶性が悪化しにくいためであると考えられる。
【0035】
また、実施形態3-2においては、第3層91をn型不純物を含み、かつ、Inを含む層とし、第4層92を第3層91よりもn型不純物濃度が小さく、かつ、第3層91よりもIn組成比が小さい層とすることがより好ましい。このようにすることで、第2超格子層90のn型不純物濃度が高くなり、第2超格子層90の結晶性が悪化しにくくできる。なお、この場合、第4層92は、Inを含まない層であってよい。また、第4層92は、アンドープの層であってよい。
【0036】
さらに、実施形態3-2において、第3層91をn型不純物を含み、かつ、Inを含む層とし、第4層92を第3層91よりもn型不純物濃度が小さく、かつ、第3層91よりもIn組成比が小さい層とする場合、第3層91の厚さは、第4層92の厚さより薄いことが好ましい。第4層92よりもn型不純物濃度が高い第3層91の厚さを薄くすることにより、第2超格子層90の結晶性の悪化を低減することができる。
【0037】
[実施形態4]
図6及び
図7は、実施形態4の窒化物半導体発光素子の断面図である。
ここで、
図6は、実施形態4-1の窒化物半導体発光素子の断面図であり、
図7は、実施形態4-2の窒化物半導体発光素子の断面図である。
図6及び
図7に示すように、実施形態4-1の窒化物半導体発光素子及び実施形態4-2の窒化物半導体発光素子において、第1n型半導体層20及び第1p型半導体層30は同様に構成されている。
具体的には、実施形態4-1の窒化物半導体発光素子及び実施形態4-2の窒化物半導体発光素子において、
(a)第1n型半導体層20は、第3超格子層22と、第3超格子層22上に配置され、第1p型半導体層30と接する第1接合層21とを含み、
(b)第1p型半導体層30は、第1接合層21とトンネル接合する第2接合層31を含む。
そして、実施形態4-1の窒化物半導体発光素子は、
図6に示すように、第1n型半導体層20及び第1p型半導体層30以外は実施形態2の窒化物半導体発光素子と同様に構成されている。また、実施形態4-2の窒化物半導体発光素子は、
図7に示すように、第1n型半導体層20及び第1p型半導体層30以外は実施形態3の窒化物半導体発光素子と同様に構成されている。
以下、実施形態4の窒化物半導体発光素子について詳細に説明する。
以下の説明において、実施形態4-1の窒化物半導体発光素子及び実施形態4-2の窒化物半導体発光素子の共通の構成について包括的に説明する場合は、単に実施形態4の窒化物半導体発光素子と記載する。
【0038】
実施形態1等で上述したように、第1n型半導体層20は第1p型半導体層30とトンネル接合する層を含み、第1p型半導体層30は第1n型半導体層20とトンネル接合する層とを含み、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30とはトンネル接合していることが好ましい。ここで、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30とをトンネル接合させた場合に、順方向電圧Vfを悪化させることなく、低くすることが好ましい。そこで、実施形態4の窒化物半導体発光素子は、第1n型半導体層20及び第1p型半導体層30がそれぞれトンネル接合する層を含み、さらに、第1n型半導体層20において第2p型半導体層とトンネル接合する層の基板10側に超格子層を配置している。
すなわち、
図6及び
図7を参照して上述したように、実施形態4の窒化物半導体発光素子は、(a)第1n型半導体層20が、第3超格子層22と、第3超格子層22上に配置され、第1p型半導体層30と接する第1接合層21とを含み、(b)第1p型半導体層30が、第1接合層21とトンネル接合する第2接合層31を含んでいる。
【0039】
具体的には、
図6及び
図7に示すように、実施形態4の窒化物半導体発光素子において、第1n型半導体層20は、基板10側から順に、n型コンタクト層23と、第3超格子層22と、第1接合層21と、を含む。ここで、第1接合層21は、第1n型半導体層20において第1p型半導体層30側の最上層に位置する。また、実施形態4の窒化物半導体発光素子において、第1p型半導体層30は、基板10側から順に、第2接合層31と、第3p型半導体層32と、を含む。ここで、第2接合層31は、第1p型半導体層30において、第1n型半導体層20側に位置し、第1接合層21とトンネル接合する層である。
【0040】
以上のように構成された実施形態4の窒化物半導体発光素子は、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30とをトンネル接合させ、さらに第1n型半導体層20が第3超格子層22を含んでいる。これにより、トンネル接合をさせる層で生成したキャリアを効果的に発光に寄与させて、順方向電圧Vfを低くすることができる。
具体的には以下のような理由で順方向電圧Vfを低くすることができると考えられる。
通常、トンネル接合させる層である第1接合層21と第2接合層31は、後述するように他の層に比較して不純物濃度は高く設定される。
したがって、他の層よりも高い不純物濃度である第1接合層21と第2接合層31を用いることで、他の層に比較して多くのキャリアが生成されて順方向電圧Vfを低くすることができる。
しかしながら、他の層よりも高い不純物濃度である第1接合層21と第2接合層31を用いることでより多く生成したキャリアを効果的に発光に寄与させることができずむしろ順方向電圧Vfが高くなることもある。
本発明者らは、多く生成したキャリアを効果的に発光に寄与させることができていない理由は第1接合層21及び第2接合層31に存在する欠陥にあるのではないかと推測した。
具体的には、第1接合層21及び第2接合層31に存在する欠陥により生成されたキャリアがトラップされるためキャリアを効果的に発光に寄与させることができていないと考えた。
そこで、第1接合層21及び第2接合層31に生じる欠陥を減らすために第1n型半導体層20に第3超格子層22を配置したところ順方向電圧Vfを低くすることができ、実施形態4の窒化物半導体発光素子に係る発明をなすに至った。
以下、実施形態4の窒化物半導体発光素子における、第1n型半導体層20と第1p型半導体層30の構成についてより詳細に説明する。
【0041】
<第1n型半導体層20>
実施形態4の窒化物半導体発光素子において、上述したように、第1n型半導体層20は、基板10側から順に、n型コンタクト層23と、第3超格子層22と、第1接合層21と、を含む。
【0042】
(n型コンタクト層23)
n型コンタクト層23は、第1電極11が形成される層であり、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等のn型不純物を含有する窒化物半導体層により構成することができる。例えば、第1活性層50がInを含む窒化物半導体層により構成されている場合、n型コンタクト層23を構成する窒化物半導体は、例えばn型GaN層であり、In及びAlなどを含んでいてよい。また、例えば、第1活性層50がAlを含む窒化物半導体により構成されている場合、n型コンタクト層23を構成する窒化物半導体は、例えば、n型AlGaN層であり、さらにInを含んでいてよい。
n型コンタクト層23のn型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下とすることが好ましく、例えば、n型不純物であるSiを、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下で含むn型GaN層により構成することができる。
【0043】
(第3超格子層22)
第3超格子層22は、トンネル接合される第1接合層21及び第2接合層31における欠陥を低減するための層であり、n型コンタクト層23と第1接合層21の間に配置される。
第3超格子層22は、第5層と第6層とを有する。第5層と第6層とは、交互に積層され、第5層の格子定数と第6層の格子定数とは異なる。n型コンタクト層23と第1接合層21の間に、第3超格子層22を配置することで、n型コンタクト層23上に第1接合層21を接触させて配置した場合に比較して、第1接合層21における格子欠陥を低減することができる。第5層及び第6層の組成は、例えば、n型コンタクト層23、第1接合層21、及び第2接合層31の組成またはバンドギャップを考慮して設定することができる。例えば、n型コンタクト層23、第1接合層21及び第2接合層31がGaN層により構成されている場合は、第5層をGaN層により構成し、第6層をInGaN層により構成することができる。また、n型コンタクト層23、第1接合層21及び第2接合層31がGaN層により構成されている場合、第5層及び第6層をいずれもInGaN層により構成して、第5層と第6層のIn組成比を異なるようにしてもよい。
【0044】
第3超格子層22はn型不純物を含んでいてもよく、第3超格子層22がn型不純物を含むことにより、n型コンタクト層23から第1接合層21への電子の供給を効率的にできる。第3超格子層22がn型不純物を含む場合、第5層及び第6層のいずれか一方または両方の層がn型不純物を含んでいてもよい。第3超格子層22がn型不純物を含む場合、第3超格子層22のn型不純物濃度は、1×1019cm-3以下であることが好ましい。例えば、実施形態4-2の窒化物半導体素子では、第3超格子層22のn型不純物濃度は、第2超格子層のn型不純物濃度より低くすることが好ましい。ここで、第3超格子層22のn型不純物濃度とは、第3超格子層22全体のn型不純物濃度の平均値をいう。
【0045】
第3超格子層22の厚さは、第1接合層21及び第2接合層31に対して所望の欠陥低減効果が得られる限り薄くすることが好ましく、例えば、第3超格子層22の厚さを第1超格子層40の厚さよりも薄くすることが好ましい。第3超格子層22の厚さを薄くすることにより、トンネル接合を介する第1p型半導体層30へのキャリア注入を低下させることなく良好にできる。
すなわち、第3超格子層22を配置した場合、超格子層を起点としてVピットが形成される恐れがあり、Vピットが形成された場合でも第3超格子層22を薄くすることによりVピットが形成されることによる第1p型半導体層30へのキャリア注入の低下を抑制することができる。
具体的には、第3超格子層22を厚く配置し、第3超格子層22を起点としてVピットが形成された場合、第3超格子層22に形成されたVピットによる影響は大きくなり、トンネル接合界面の平坦性が低下し、トンネル効果を効率よく得ることが難しい。すなわち、トンネル効果を効率よく得るためにはトンネル接合界面には一定以上の平坦性が必要であり、トンネル接合界面にその一定以上の平坦性がなくなるとトンネル効果が低下する。したがって、トンネル効果を効率よく得るためには、第3超格子層22を起点としてVピットが形成された場合であっても、トンネル接合界面に一定以上の平坦性を確保できるようVピットによる影響を抑える必要があり、そのためには第3超格子層22の厚さを薄くすることが好ましい。
【0046】
上述のように、例えば、第3超格子層22の厚さは、第1超格子層40の厚さよりも薄くすることが好ましい。第3超格子層22の厚さは、例えば、第5層の厚さと第6層の厚さをそれぞれ調整すること、及び、第5層と第6層を含むペアの数を調整することにより変更することができる。
例えば、第1超格子層40が、第1層41と第2層42を含むペアをnペア含み、第3超格子層22が、第5層と第6層を含むペアをmペア含む場合の例を挙げる。ここで、n及びmは、1以上の整数である。例えば、第1超格子層40の第1層41の厚さと第3超格子層22の第5層の厚さは、1nm以上3nm以下とすることできる。第1超格子層40の第2層42の厚さと第3超格子層22の第6層の厚さは、0.5nm以上1.5nm以下とすることできる。例えば、第1超格子層40におけるペア数nを16以上60以下とし、第3超格子層22におけるペア数mを3以上15以下とすることができる。上述の厚さの範囲及びペア数の範囲で、第1超格子層40及び第3超格子層22の厚さをそれぞれ調整し、第3超格子層22の厚さを第1超格子層40の厚さよりも薄くすることができる。
例えば、第1層41と第5層を同じ厚さとし、第2層42と第6層を同じ厚さとし、第3超格子層22のペア数mを、第1超格子層40のペア数nよりも小さくする。これにより、第3超格子層22の厚さを第1超格子層40の厚さよりも薄くすることができる。
また、第1超格子層40の第1層41と第3超格子層22の第5層をGaN層とし、第1超格子層40の第2層42と第3超格子層22の第6層をInGaN層とした場合、例えば、GaN層からなる第1層41と第5層の厚さを、第2層42と第6層の厚さより厚くする。
【0047】
(第1接合層21)
第1接合層21は、例えば、n型不純物が8×1019cm-3以上8×1020cm-3以下の比較的高い濃度でドープされた窒化物半導体層であり、第2接合層31とトンネル接合する層である。第1接合層21のn型不純物濃度は、n型コンタクト層23のn型不純物濃度よりも高い。
第1接合層21の厚さは、例えば、1nm以上10nm以下である。第1接合層21はInを含んでいてもよい。第1接合層21がInを含んでいることで、第1接合層21のバンドギャップを小さくでき、トンネル効果を得やすくできる。
また、第1接合層21は、2以上の層を含んでいてもよく、例えば、GaN層とInGaN層を含んでいてもよい。例えば、n型コンタクト層23側に配置され、厚さが1nm以上10nm以下のGaN層と、例えば、厚さが0.5nm以上5nm以下のInGaN層を含んでいてもよい。InGaN層のIn組成比は、例えば、1%以上6%以下である。
【0048】
<第1p型半導体層30>
実施形態4の窒化物半導体発光素子において、第1p型半導体層30は、基板10側から順に、第2接合層31と、第3p型半導体層32と、を含む。
【0049】
(第2接合層31)
第2接合層31は、例えば、p型不純物が8×1019cm-3以上8×1020cm-3以下の比較的高い濃度でドープされた窒化物半導体層であり、第1接合層21とトンネル接合する層である。第2接合層31のp型不純物濃度は、後述の第3p型半導体層32のp型不純物濃度よりも高い。
第2接合層31の厚さは、例えば、1nm以上30nm以下である。また、第2接合層31は、それぞれ第3p型半導体層32より高い濃度でp型不純物を含む2以上の層を含んでいてもよい。第2接合層31は、例えば、Mgが8×1019cm-3以上8×1020cm-3の濃度でドープされた、厚さが1nm以上10nm以下のp型GaN層と、該p型GaN層より低い濃度(ただし、8×1019cm-3以上3×1020cm-3の濃度範囲内)でMgがドープされた、厚さが10nm以上20nm以下のp型GaN層を含んでいてもよい。
【0050】
(第3p型半導体層32)
第3p型半導体層32は、第2接合層31上に配置される、p型不純物を含む窒化物半導体層である。第3p型半導体層32のp型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下とすることが好ましく、例えば、p型不純物であるMgを、1×1018cm-3以上1×1019cm-3以下で含むp型GaN層により構成することができる。
【0051】
本開示の実施形態に係る窒化物半導体発光素子は、例えば、以下の態様を含む。
[項1]
第1n型半導体層と、
前記第1n型半導体層上に配置され、前記第1n型半導体層と接する第1p型半導体層と、
前記第1p型半導体層上に配置され、p型不純物を含む第1超格子層と、
前記第1超格子層上に配置された活性層と、
前記活性層上に配置された第2n型半導体層と、
前記第1n型半導体層と電気的に接続された第1電極と、
前記第2n型半導体層と電気的に接続された第2電極と、
を含む窒化物半導体発光素子。
[項2]
前記第1超格子層は、第1層と、前記第1層と格子定数が異なる第2層と、が交互に積層され、
前記第1層は、In及びp型不純物を含む項1に記載の窒化物半導体発光素子。
[項3]
前記第2層は、In及びp型不純物を含み、
前記第2層のp型不純物濃度は、前記第1層のp型不純物濃度よりも小さく、
前記第2層のIn組成比は、前記第1層のIn組成比よりも小さい、項2に記載の窒化物半導体発光素子。
[項4]
前記第1層のp型不純物濃度は、前記第1p型半導体層のp型不純物濃度よりも小さい項3に記載の窒化物半導体発光素子。
[項5]
前記第1層のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上3×1019cm-3以下である項2~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
[項6]
前記第1層の厚さは、前記第2層の厚さより薄い項2~5のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
[項7]
前記第2n型半導体層上に配置された第2活性層と、
前記第2活性層上に配置された第2p型半導体層と、
前記第2p型半導体層と電気的に接続された第3電極と、をさらに含む項1~6のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
[項8]
前記第2n型半導体層と前記第2活性層との間に配置された第2超格子層をさらに有する項7に記載の窒化物半導体発光素子。
[項9]
前記第2超格子層は、第3層と、前記第3層と格子定数が異なる第4層と、が交互に積層され、
前記第3層及び前記第4層は、アンドープの層である項8に記載の窒化物半導体発光素子。
[項10]
前記第2超格子層は、第3層と、前記第3層と格子定数が異なる第4層と、が交互に積層され、
前記第3層は、n型不純物を含む項8又は9に記載の窒化物半導体発光素子。
[項11]
前記第3層は、Inを含む項8~10のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
[項12]
前記第4層のn型不純物濃度は、前記第3層のn型不純物濃度よりも小さく、
前記第4層のIn組成比は、前記第3層のIn組成比よりも小さい、項11に記載の窒化物半導体発光素子。
[項13]
前記第3層の厚さは、前記第4層の厚さより薄い項9~12のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
[項14]
前記第1n型半導体層は、第3超格子層と、前記第3超格子層上に配置され、前記第1p型半導体層と接する第1接合層とを含み、
前記第1p型半導体層は、前記第1接合層とトンネル接合する第2接合層を含む、項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
[項15]
前記第3超格子層の厚さは、前記第1超格子層の厚さよりも薄い項14に記載の窒化物半導体発光素子。
[項16]
前記第3超格子層は、n型不純物を含む項14又は15に記載の窒化物半導体発光素子。
[項17]
前記第2n型半導体層上に配置され、n型不純物を含む第2超格子層と、
前記第2超格子層上に配置された第2活性層と、
前記第2活性層上に配置された第2p型半導体層と、
前記第2p型半導体層と電気的に接続された第3電極と、をさらに含み、
前記第3超格子層のn型不純物濃度は、前記第2超格子層のn型不純物濃度より小さい項14~16のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【符号の説明】
【0052】
1 第1発光部
2 第2発光部
10 基板
11 第1電極
12 第2電極
13 第3電極
13a パッド電極
13b 電極層
20 第1n型半導体層
21 第1接合層
22 第3超格子層
23 n型コンタクト層
30 第1p型半導体層
31 第2接合層
32 第3p型半導体層
40 第1超格子層
50 第1活性層
60 第2n型半導体層
70 第2活性層
80 第2p型半導体層
90 第2超格子層