(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059864
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】給液ノズル
(51)【国際特許分類】
B67D 7/44 20100101AFI20250403BHJP
【FI】
B67D7/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170219
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 直人
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA02
3E083AG02
(57)【要約】
【課題】給液ノズルから給液対象に供給される液体の流量に合わせて自動閉弁機構を作動させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る給液ノズル30は、レバー操作に応じて開閉する主弁318と、主弁318より流路312の下流側に設けられ、液圧により開閉する副弁320と、液体燃料の流れにより負圧を発生させる負圧発生部と、吐出パイプ304の先端部の側面に設けられる検知孔304aと、負圧発生部及び検知孔304aと連通する自動閉弁機構324と、を備える。また、副弁320は、副弁360と、副弁360よりも低い圧力で開弁し且つ開弁時の流路断面積が副弁360の開弁時の流路断面積よりも小さい副弁362とを含む。そして、負圧発生部は、副弁360を通過する液体燃料の流れによる負圧発生部370と、副弁362を通過する液体燃料による負圧発生部372とを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出パイプと、
吐出パイプの基端と接続されると共に、給液ホースと接続される本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、前記給液ホースから前記吐出パイプに液体を通流させることが可能な流路と、
前記流路に設けられ、ユーザのレバー操作に応じて開閉する主弁と、
前記流路における前記主弁よりも下流側に設けられ、前記主弁を通じて上流側から供給される液体の圧力により開閉する副弁と、
前記流路の液体の流れにより負圧を発生させる負圧発生部と、
前記吐出パイプの先端部の側面に設けられる孔部と、
前記負圧発生部及び前記孔部と連通し、前記主弁が開弁されている状態で、前記孔部が塞がれると、前記主弁を自動的に閉弁させる自動閉弁機構と、を備え、
前記副弁は、第1の副弁と、前記第1の副弁よりも低い圧力で開弁し且つ開弁時の流路断面積が前記第1の副弁の開弁時の流路断面積よりも小さい第2の副弁とを含み、
前記負圧発生部は、前記第1の副弁を通過する液体に対応する第1の負圧発生部と、前記第2の副弁を通過する液体に対応する第2の負圧発生部とを含む、
給液ノズル。
【請求項2】
前記第1の副弁は、前記流路の断面の外周に設けられる第1の弁座と、前記第1の弁座に対して可動する第1の弁体とを含み、
前記第1の弁体は、前記流路の上流側と下流側とを連通させる第1の貫通孔を有し、
前記第2の副弁は、前記第1の貫通孔の内周に設けられる第2の弁座と、前記第2の弁座に対して可動する第2の弁体とを含む、
請求項1に記載の給液ノズル。
【請求項3】
前記第1の負圧発生部は、前記流路のうち、前記第1の弁体が開弁している状態での前記第1の弁体の外周面よりも外側の流路部分に設けられると共に、前記自動閉弁機構に連通する通路と隣接し、
前記第2の負圧発生部は、前記流路のうち、前記第2の弁体が開弁している状態での前記第1の弁体の内周面よりも内側の流路部分に設けられ、
前記第1の弁体には、前記第1の副弁が開弁していない状態で前記第2の負圧発生部と前記通路との間を連通させるように外周面と内周面との間を貫通する第2の貫通孔が設けられる、
請求項2に記載の給液ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給液ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レバー操作により内部の流路に設けられる主弁が開弁することで吐出パイプから液体を吐出させて給液を開始し、液面が吐出パイプの先端に到達すると、自動的に主弁を閉じて給液を停止させる給液ノズルが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
自動閉弁機構は、給液ノズルの内部の流路の液体の流れにより負圧が発生する負圧発生部と連通、及び吐出パイプの先端に設けられる検知孔と連通している。そのため、検知孔が給液対象の液面上昇により閉じられると、負圧発生部から自動閉弁機構に作用する負圧が大きく上昇することで、自動閉弁機構が作動し主弁を自動的に閉じ、給液ノズルは給液を停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、負圧発生部に生じる負圧の大きさは、流路を通過する流速によって変化する。そのため、例えば、比較的大きい流量の状態を前提として負圧発生部を設定すると、比較的小さい流量では生じる負圧が低下することから、自動閉弁機構が作動できない可能性がある。一方で、比較的小さい流量の状態でも自動閉弁機構が作動するように負圧発生部を設定すると、比較的大きい流量の状態で生じる比較的大きな負圧によって、検知孔が液面等により塞がれていないにも関わらず自動閉弁機構が作動し、所望の給液量まで給液するのに時間を要してしまう可能性がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、給液ノズルから給液対象に供給される液体の流量に合わせて自動閉弁機構を作動させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
液体を吐出する吐出パイプと、
吐出パイプの基端と接続されると共に、給液ホースと接続される本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、前記給液ホースから前記吐出パイプに液体を通流させることが可能な流路と、
前記流路に設けられ、ユーザのレバー操作に応じて開閉する主弁と、
前記流路における前記主弁よりも下流側に設けられ、前記主弁を通じて上流側から供給される液体の圧力により開閉する副弁と、
前記流路の液体の流れにより負圧を発生させる負圧発生部と、
前記吐出パイプの先端部の側面に設けられる孔部と、
前記負圧発生部及び前記孔部と連通し、前記主弁が開弁されている状態で、前記孔部が塞がれると、前記主弁を自動的に閉弁させる自動閉弁機構と、を備え、
前記副弁は、第1の副弁と、前記第1の副弁よりも低い圧力で開弁し且つ開弁時の流路断面積が前記第1の副弁の開弁時の流路断面積よりも小さい第2の副弁とを含み、
前記負圧発生部は、前記第1の副弁を通過する液体に対応する第1の負圧発生部と、前記第2の副弁を通過する液体に対応する第2の負圧発生部とを含む、
給液ノズルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、給液ノズルから給液対象に供給される液体の流量に合わせて自動閉弁機構を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
[給液装置の構成]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る給液装置1の構成について説明する。
【0012】
【0013】
給液装置1は、ユーザの操作に応じて、所定の液体を所定の対象に供給する。例えば、所定の液体は、相対的にオクタン価の低いレギュラーガソリンや相対的にオクタン価の高いハイオクガソリンや軽油等の液体燃料であり、所定の対象は、自動車等の車両の燃料タンクである。給液装置1は、例えば、ガソリンスタンド等の給液施設に設置される。以下、給液装置1から車両の燃料タンクに液体燃料が供給される場合を中心に説明を行う。
【0014】
図1に示すように、給液装置1は、筐体10と、供給経路20と、給液ホース22と、給液ノズル30と、ノズル掛け32と、ノズルスイッチ34と、ポンプ40と、流量計50と、電磁弁60と、制御部70と、表示部80とを含む。
【0015】
筐体10は、給液装置1の各種構成要素を内部に収容したり、外部で保持したりする。
【0016】
供給経路20は、筐体10の内部に収容され、給液施設の貯留部(例えば、地下タンク)から液体燃料を車両の燃料タンクに向けて供給する経路である。
【0017】
給液ホース22は、供給経路20の先端に取り付けられる。給液ホース22は、可撓性を有し、筐体10から外部に延び出すように設けられる。
【0018】
給液ノズル30は、筐体10の外部における給液ホース22の先端に設けられる。
【0019】
ノズル掛け32は、筐体10の外面に設けられ、給液ノズル30が所定の姿勢状態で掛けられることにより、非使用状態の給液ノズル30を保持する。
【0020】
ノズルスイッチ34は、ノズル掛け32に設けられ、ノズル掛け32に給液ノズル30が掛けられているか否かを表す信号を出力する。例えば、ノズルスイッチ34は、ノズル掛け32に給液ノズル30が掛けられていない状態でオフ状態にあり、ノズル掛け32に給液ノズル30が掛けられることにより給液ノズル30の所定の箇所と接触しオン状態に切り換わる。ノズルスイッチ34の出力は、1対1の通信線等の所定の通信回線を通じて制御部70に取り込まれる。これにより、制御部70は、ノズルスイッチ34の出力がオン状態を表す信号(ノズルON信号)であるか、オフ状態を表す信号(ノズルOFF信号)であるかによって、ノズル掛け32に給液ノズル30が掛けられた状態であるか否かを判定することができる。
【0021】
ポンプ40は、供給経路20に設けられ、制御部70の制御下で、液体燃料を給液ノズル30側に向けて圧送する。
【0022】
流量計50は、供給経路20を通過する液体燃料の流量を計測する。流量計50は、供給経路を通過する液体燃料の流速或いは瞬時流量に比例した計測信号(流量パルス)をパルス発信器52により制御部70に送信する。
【0023】
電磁弁60は、供給経路20に設けられ、制御部70の制御下で、供給経路20の開閉状態を切り換える。
【0024】
制御部70は、給液装置1の稼働に関する制御を行う。
【0025】
制御部70の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。例えば、制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェースを含むコンピュータを中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAM(State Random Access Memory)である。補助記憶装置は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリである。インタフェースは、制御部70の外部との間のやり取りを行う。この場合、制御部70は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。
【0026】
例えば、制御部70は、ノズルスイッチ34がノズルOFF信号を出力する状態からノズルON信号を出力する状態に移行すると、ポンプ40を起動させると共に、電磁弁60を閉状態から開状態に移行させる。これにより、ユーザは、ノズル掛け32から給液ノズル30を取り外し、給液ノズル30の先端、具体的には、後述の吐出パイプ304を車両の給液口に挿入し、後述のレバー部310を操作することにより、車両の燃料タンクへの給液を開始することができる。また、例えば、制御部70は、パルス発信器52から流量パルスが入力されない状態が一定時間継続すると、電磁弁60を開状態から閉状態に移行させると共に、ポンプ40を停止させる。これにより、給液装置1は、ユーザが給液ノズル30のレバー部310の操作終了に合わせて、電磁弁60を閉弁し、ポンプ40を停止させることができる。
【0027】
表示部80は、制御部70の制御下で、給液装置1の稼働に関する情報を表示する。他例えば、表示部80は、制御部70の制御下で、車両の燃料タンクへの液体燃料の供給開始から燃料供給量を表示する。
【0028】
[給液ノズルの構成]
次に、
図2、
図3を参照して、給液ノズル30の構成について説明する。
【0029】
図2、
図3は、給液ノズル30の一例の構成を示す断面図である。具体的には、
図2は、給液ノズル30の一例の構成を示す側面断面図であり、
図3は、給液ノズル30の一例の構成を示す上面断面図である。
【0030】
図2、
図3に示すように、給液ノズル30は、本体部302と、吐出パイプ304と、ホース継手部306と、グリップ部308と、レバー部310とを含む。
【0031】
本体部302は、その内部に液体燃料の流路312を含む。
【0032】
流路312は、ホース継手部306を通じて給液ホース22から流入する液体燃料を吐出パイプ304に送ることが可能なように本体部302の内部に形成される。
【0033】
吐出パイプ304は、本体部302から延び出すように設けられる。吐出パイプ304の内部の液体燃料の流路314の基端は、流路312と連通し、先端は、開放される。これにより、吐出パイプ304は、流路312を通じて供給される液体燃料を先端から吐出することができる。吐出パイプ304の先端部の側面には、後述の自動閉弁機構324を作動させるための検知孔304a(孔部の一例)が設けられる。
【0034】
ホース継手部306は、本体部302の側面に取り付けられる。ホース継手部306の内部の液体燃料の流路316の基端は、流路312と連通し、先端は、給液ホース22の先端と連結される。これにより、ホース継手部306は、給液ホース22を通じて供給される液体を本体部302の流路312に送り込むことができる。ホース継手部306は、基端部と本体部302との間が回転可能に支持されている。これにより、ユーザは、給液ノズル30のうちの本体部302及び吐出パイプ304に相当する部分の給液ホース22に対する姿勢状態を自在に変化させることができる。
【0035】
グリップ部308は、本体部302に設けられる。グリップ部308は、ユーザが給液ノズル30を操作する際に手で握る部分である。
【0036】
レバー部310は、ユーザが給液ノズル30を用いて車両の燃料タンクに液体燃料を供給する際に操作する部分である。本例では、レバー部310は、グリップ部308を握りながら指の先端部で手前側(図中の右側)に引くように操作される。レバー部310は、本体部302に設けられる回転軸310aを基準として、一定の角度範囲で回転可能に支持される。
【0037】
また、給液ノズル30は、主弁318と、副弁320と、弁軸部322と、自動閉弁機構324とを含む。
【0038】
主弁318は、本体部302の内部の流路312に設けられる。主弁318は、レバー部310の操作に応じて開閉する。主弁318は、流路312の断面の外周、即ち、本体部302の内面に形成される弁座318Aと、弁座318Aに対して可動する弁体318Bとを含む
【0039】
副弁320は、主弁318と同様、本体部302の内部の流路312に設けられる。副弁320は、流路312において、主弁318よりも下流側に配置され、主弁318が開弁されている状態で上流側から供給される液体燃料の圧力に応じて開閉する。具体的には、副弁320は、レバー部310の操作に応じて主弁318が開弁され、主弁318を通じて供給される液体燃料の圧力が一定基準に対して相対的に大きくなると開弁する。一方、レバー部310の操作解除に応じて主弁が閉弁され、主弁318を通じて供給される液体燃料の圧力が一定基準に対して相対的に小さくなると閉弁する。副弁320の詳細は後述する。
【0040】
弁軸部322は、主弁318を開閉させるための機構部である。弁軸部322は、シャフト326と、シャフト328と、スリーブ330とを含む。
【0041】
シャフト326は、筒状に形成され、一端部(図中の左端部)が弁体318Bに連結されると共に、付勢バネ332により主弁318の閉弁方向(図中の左方向)に付勢されている。
【0042】
シャフト328は、棒状に形成され、その一端部を含む一部がシャフト326の中空部に摺動可能に挿入され、他端部がシャフト326の他端から突出するように設けられる。シャフト328には、貫通孔328aが設けられる。
【0043】
レバー部310は、貫通孔328aを通じて、シャフト328を貫通し、且つ、貫通孔328aの内周面と当接するように配置される。これにより、シャフト328は、レバー部310の操作状態に合わせて、弁体318Bの開弁方向(図中の右方向)に移動することができる。
【0044】
また、シャフト328は、付勢バネ334により主弁318の閉弁方向(図中の左方向)に付勢されている。これにより、ユーザがレバー部310を手前側(図中の右側)に引き込む力を解除すると、付勢バネ334の付勢力により、シャフト328は、主弁318の閉弁方向に移動し、その移動に併せて、レバー部310を非操作の状態に自動的に戻すことができる。
【0045】
スリーブ330は、筒状に形成され、シャフト326の外周に摺動可能に嵌合される。スリーブ330は、付勢バネ336により弁体318Bの閉弁方向(図中の左方向)付勢されている。これにより、スリーブ330は、付勢バネ336の付勢力によって、シャフト326の大径部326aに押し付けられる。その結果、付勢バネ336は、スリーブ330を介して、シャフト326を主弁318の閉弁方向に付勢することができる。
【0046】
シャフト326、シャフト328、及びスリーブ330のそれぞれには、係合部材338,340が係合する切り欠き部326b、凹部328b、及び切り欠き部330bが設けられる。外周側から切り欠き部330b、切り欠き部326b、及び凹部328bに係合部材338,340が係合することにより、シャフト326、シャフト328、及びスリーブ330は、主弁318の開弁方向及び閉弁方向に一体として移動することができる。そのため、弁軸部322は、レバー部310が操作されることにより、シャフト326、シャフト328、及びスリーブ330が一体的に開弁方向に移動し、主弁318を開弁させることができる。また、弁軸部322は、レバー部310の操作が解除されることにより、付勢バネ332,334,336の付勢力により、シャフト326、シャフト328、及びスリーブ330が一体的に閉弁方向に移動し、主弁318を閉弁させることができる。
【0047】
自動閉弁機構324は、車両の燃料タンクへの給液時に、燃料タンクの液面の上昇に応じて、主弁318を自動的に閉弁させるための機構である。自動閉弁機構324は、ダイヤフラム室342と、ダイヤフラム344と、付勢バネ346とを含む。
【0048】
ダイヤフラム室342は、本体部302の内部に設けられる空間である。ダイヤフラム室342は、本体部302の内部に設けられる通路348、及び吐出パイプ304の内部に設けられる吸引管350を通じて検知孔304aに連通している。また、ダイヤフラム室342は、通路348から分岐する、本体部302の内部の通路352を通じて、流路312の液体燃料の流れにより負圧が発生する負圧発生部(後述の負圧発生部370,372)に連通している。
【0049】
ダイヤフラム344は、ダイヤフラム室342に設けられる。ダイヤフラム344には、係合部材338,340が取り付けられる。
【0050】
付勢バネ346は、ダイヤフラム室342に設けられ、ダイヤフラム344を弁軸部322側、即ち、シャフト326、シャフト328、及びスリーブ330が存在する側に付勢する。これにより、付勢バネ346は、ダイヤフラム344に取り付けられる係合部材338,340が切り欠き部330b、切り欠き部326b、及び凹部328bに係合する状態を維持するように機能することができる。
【0051】
給液ノズル30による給液時において、吐出パイプ304の検知孔304aが燃料タンクの液面や液面に発生した泡等により閉塞されていない場合、ダイヤフラム室342には、通路348及び吸引管350を通じて検知孔304aの外の空気が供給される。そのため、ダイヤフラム室342の圧力は、大気圧に相当する比較的高い状態に維持される。
【0052】
一方、給液ノズル30による給液時において、吐出パイプ304の検知孔304aが燃料タンクの液面や液面に発生した泡等により閉塞されると、ダイヤフラム室342には、通路348及び吸引管350を通じて検知孔304aの外の空気が供給されなくなる。そのため、ダイヤフラム室342の空気は、通路348,352を通じて負圧発生部に吸引され、ダイヤフラム室342の圧力の低下によって、ダイヤフラム344が付勢バネ346に抗して、弁軸部322から離れる方向に移動する。その結果、係合部材338,340が切り欠き部330b、切り欠き部326b、及び凹部328bに係合する状態が解除される。よって、付勢バネ332,336の付勢力によって、シャフト326及びスリーブ330がシャフト328とは独立して主弁318の閉弁方向に移動し、自動閉弁機構324は、主弁318を自動的に閉弁させることができる。
【0053】
[副弁の構成]
次に、
図4~
図8を参照して、副弁320の構成について説明する。
【0054】
図4~
図6は、副弁320の構成の一例を示す断面図である。具体的には、
図4は、副弁320が閉弁されている状態を表し、
図5は、副弁320に含まれる副弁360,362の双方が開弁されている状態を表し、
図6は、副弁320に含まれる副弁360,362のうちの副弁362のみが開弁されている状態を表す。
図7は、弁体360Bの一例を示す斜視図である。具体的には、
図7は、弁体360Bの一例を流路312の下流側からみたときの斜視図を表す。
図8は、支持部材364の一例を示す斜視図である。具体的には、
図8は、支持部材364の一例を流路312の上流側から見た
図8Aと、下流側から見た
図8Bとを含む。
【0055】
尚、
図5、
図6の破線の矢印は、液体燃料の流れを表している。
【0056】
図4~
図6に示すように、副弁320は、副弁360と、副弁362と、支持部材を含む。
【0057】
副弁360(第1の副弁の一例)は、流路312の外周、換言すれば、本体部302の内面に設けられる弁座360A(第1の弁座の一例)と、弁座360Aに対して可動する弁体360Bとを含む。
【0058】
弁体360B(第1の弁体の一例)は、下底面部分が開放された中空の円錐台形状を有する。弁体360Bは、円錐台形状の上底面部分が上流側に面するように配置される。弁体360Bは、付勢バネ366によって閉弁方向に付勢されている。
図7に示すように、弁体360Bには、円錐台形状の上底面の中心部分に貫通孔360Baが設けられる。貫通孔360Ba(第1の貫通孔の一例)は、弁体360Bの上流側と下流側との間を連通させることができる。
【0059】
副弁362(第2の副弁の一例)は、貫通孔360Baの内周面に設けられる弁座362A(第2の弁座の一例)と、弁座362Aに対して可動する弁体362Bとを含む。
【0060】
弁体362B(第2の弁体の一例)は、円錐台形状と、円錐台形状の下底面部分から延長される円筒形状とを組み合わせた形状を有する。弁体362Bは、円錐台形状の上底面部分が上流側に面するように配置される。弁体362Bは、付勢バネ368によって閉弁方向に付勢されている。
【0061】
副弁360は、開弁時において、比較的大きな流路断面積を有するように構成される。一方、副弁362は、開弁時において、液体燃料が弁体360Bの貫通孔360Baを通過するため、比較的小さい流路断面積を有するように構成される。
【0062】
支持部材364は、弁体360B,362Bが流路312の上流側の液体燃料の圧力によって開閉可能なように支持する。
図8に示すように、支持部材364は、支持部364Aと、支持部364Bとを含む。
【0063】
支持部364Aは、弁体360Bを流路312の下流側から支持する。具体的には、支持部364Aは、下底部分が開放された中空の円錐台形状を有し、その外周面が弁体360Bの内周面と当接する形で弁体360Bを支持する。また、支持部364Aの上底部分の表面と、弁体360Bの上底部分の裏面との間には所定の隙間GPが設けられる。また、支持部364Aの上底部分には、貫通孔364aが設けられる。貫通孔364aは、弁体360Bの貫通孔360Baと連通している。
【0064】
支持部364Bは、弁体362Bを流路312の下流側から支持する。具体的には、支持部364Bは、支持部364Aの上底部分の裏面から延びる円筒形状を有し、先端部が閉塞される。また、支持部364Aの上底部分の貫通孔364aは、支持部364Bの円筒形状の中空部に連通している。支持部364Bには、弁体362Bが内面に摺動可能なようにして収容される。これにより、弁体362Bは、支持部364Bの内面に案内される形で上流側及び下流側に移動することができる。支持部364Bの中空部の底面には、付勢バネ368が固定され、弁体362Bは、付勢バネ368によって、貫通孔364a及び貫通孔360Baの方向に付勢される。これにより、弁体362Bは、付勢バネ368の付勢力によって、弁体360Bの貫通孔360Baの内周面に設けられる弁座362Aに着座することができる。
【0065】
図8に示すように、支持部364Bの周方向の一部に切り欠き部364bが設けられ、中空部と外部との間が連通している。そのため、弁体362Bが開弁位置にある場合、貫通孔360Ba及び貫通孔364aを通じて上流側から支持部364Bの中空部に流入した液体燃料は、切り欠き部364bを通じて、流路312の下流側に向けて流出することができる。
【0066】
支持部材364は、本体部302の所定の箇所に固定される付勢バネ366によって、弁座360Aが設けられる流路312の上流側に付勢されている。これにより、弁体360Bは、付勢バネ366の付勢力によって、弁座360Aに着座することができる。
【0067】
付勢バネ366,368の付勢力(弾性力)に関する特性は、副弁362が開弁するための液体燃料の圧力が、副弁360が開弁するための液体燃料の圧力よりも小さくなるように設定される。これにより、例えば、自動閉弁機構324が作動した後に、ユーザが液体燃料の注ぎ足しのために、レバー部310をハーフストロークで操作したときに、副弁360,362のうち副弁362のみを開弁させることができる。
【0068】
例えば、主弁318が閉弁されている場合、
図4に示すように、副弁320の上流側に液体燃料が供給されないため、副弁360,362は、付勢バネ366,368の付勢力によって、閉弁状態に維持されている。
【0069】
給液ノズル30を用いた車両の燃料タンクへの給液の開始時に、
図4の状態からレバー部310が比較的大きな操作量(例えば、フルストローク)で操作されると、主弁318が開弁され全開状態となる。そのため、副弁320の上流側に比較的大きな圧力が作用し、
図5に示すように、弁体360B,362Bのそれぞれが付勢バネ366,368の付勢力に抗して、開弁方向に移動し、副弁360,362の双方が開弁する。
【0070】
副弁360,362の開弁時において、弁体360Bの外周面と本体部302の内面との間の流路には、通路352が連通している。通路352は、弁体360Bの外周面を全周囲むように円環状に設けられる。通路352に隣接する流路部分(
図5の負圧発生部370)には、副弁360を通過する液体燃料の流れによる負圧を発生させることができる。そのため、副弁360,362が開弁時に、検知孔304aが車両の燃料タンクの液面や液面に発生した泡等により閉塞されると、ダイヤフラム室342への外気の供給が停止すると共に、ダイヤフラム室342の空気が負圧発生部370(第1の負圧発生部の一例)に吸引される。その結果、ダイヤフラム344が弁軸部322から離れる方向に移動することにより、自動閉弁機構324が作動し、主弁318が自動的に閉弁される。そして、副弁320の上流側に液体燃料が供給されなくなるため、付勢バネ366,368の付勢力によって、弁体360B,362Bが閉弁方向に移動し、副弁360,362も閉弁する。
【0071】
例えば、検知孔304aが燃料タンクの液面に発生した泡により閉塞された場合、泡は時間の経過で収まっていくため、注ぎ足しの追加給液が可能な場合がある。ユーザが注ぎ足しの追加給液を行うために、レバー部310が比較的小さい操作量で操作されると、主弁318が開弁され半開状態となる。そのため、副弁320の上流側に比較的小さい圧力が作用し、
図6に示すように、弁体360B,362Bのうちの弁体362Bのみが付勢バネ368の付勢力に抗して開弁方向に移動し、副弁360,362のうちの副弁362のみが開弁する。
【0072】
尚、付勢バネ366,368の付勢力は、副弁360,362の受圧面積(接液面積)の違いにより設定される。具体的には、副弁362は、副弁360に比べ受圧面積(接液面積)が小さいため、副弁362を閉弁させるための付勢バネ368の付勢力は、副弁360を閉弁させるための付勢バネ366の付勢力よりも小さく設定される。
【0073】
副弁362のみの開弁時において、弁体360Bと支持部364Aの上底部分との間の隙間GPに隣接する流路部分(
図6の負圧発生部372)には、副弁362を通過する液体燃料の流れによる負圧を発生することができる。副弁362のみの開弁時の流量は比較的小さいものの、上述の如く、副弁362のみの開弁時の流路断面積が比較的小さく構成されることで、副弁362を通過する液体燃料の流速を比較的高く設定することができる。その結果、負圧発生部372(第2の負圧発生部の一例)には、自動閉弁機構324を作動させるために十分な負圧を発生させることができる。
【0074】
図6、
図7に示すように、弁体360Bには、その内周面と外周面との間を貫通する貫通孔360Bbが設けられる。
図4~
図6に示すように、貫通孔360Bb(第2の貫通孔の一例)は、弁体360Bの内周面に設けられる溝部360Bcを通じて隙間GPに連通している。また、
図6に示すように、弁体360Bが弁座360Aに着座している状態において、貫通孔360Bbは、通路352に連通している。これにより、負圧発生部372は、隙間GP,溝部360Bc、貫通孔360Bbを通じて通路352に連通する。そのため、副弁360,362のうちの副弁362のみの開弁時に、検知孔304aが車両の燃料タンクの液面や液面に発生した泡等により閉塞されると、ダイヤフラム室342への外気の供給が停止すると共に、ダイヤフラム室342の空気が負圧発生部372に吸引される。その結果、ダイヤフラム344が弁軸部322から離れる方向に移動することにより、自動閉弁機構324が作動し、主弁318が自動的に閉弁される。そして、副弁320の上流側に液体燃料が供給されなくなるため、付勢バネ368の付勢力によって、弁体362Bが閉弁方向に移動し、副弁362も閉弁する。
【0075】
尚、貫通孔360Bbが設けられる周方向の位置は任意であってよく、弁体360Bが中心軸周りで回転しても問題は生じない。上述の如く、通路352が全周に亘って円環状に設けられるからである。
【0076】
このように、本例では、副弁320は、比較的大きい液圧で開弁し且つ流路断面積が相対的に副弁360と、比較的小さい液圧で開弁し且つ流路断面積が比較的小さい副弁362を含む。そして、副弁360を通過する液体燃料の流れによる負圧発生部370と、副弁362を通過する液体燃料の流れによる負圧発生部372とが設定される。これにより、主弁318を大流量の液体燃料が通過する場合には、副弁360を通過する流れによる負圧発生部370の負圧を利用し、主弁318を小流量の液体燃料が通過する場合には、副弁360を通過する流れによる負圧発生部372の負圧を利用できる。そのため、主弁318を通過する液体燃料の流量に応じて、適切な負圧を発生させ、自動閉弁機構324をより適切に作動させることができる。
【0077】
[作用]
次に、本実施形態に係る給液ノズルの作用について説明する。
【0078】
例えば、比較的大きい流量の状態を前提として負圧発生部を設定すると、比較的小さい流量では生じる負圧が低下することから、自動閉弁機構が作動できない可能性がある。一方で、比較的小さい流量の状態でも自動閉弁機構が作動するように負圧発生部を設定すると、比較的大きい流量の状態で生じる比較的大きな負圧によって、検知孔が液面等により塞がれていないにも関わらず自動閉弁機構が作動し、所望の給液量まで給液するのに時間を要してしまう可能性がある。
【0079】
これに対して、本実施形態では、給液ノズルは、吐出パイプと、本体部と、流路と、主弁と、副弁と、負圧発生部と、孔部と、自動閉弁機構と、を備える。給液ノズルは、例えば、上述の給液ノズル30である。吐出パイプは、例えば、上述の吐出パイプ304である。本体部は、例えば、本体部302である。流路は、例えば、上述の流路312である。主弁は、例えば、上述の主弁318である。副弁は、例えば、上述の副弁320である。孔部は、例えば、上述の検知孔304aである。自動閉弁機構は、例えば、上述の自動閉弁機構324である。具体的には、吐出パイプは、液体を吐出する。液体は、例えば、上述の液体燃料である。本体部は、吐出パイプの基端と接続されると共に、給液ホースと接続される。給液ホースは、給液ホース22である。流路は、本体部の内部に設けられ、給液ホースから吐出パイプに液体を通流させることが可能である。主弁は、上記の流路に設けられ、ユーザのレバー操作に応じて開閉する。副弁は、上記の流路における主弁よりも下流側に設けられ、主弁を通じて上流側から供給される液体の圧力により開閉する。負圧発生部は、上記の流路の液体の流れにより負圧を発生させる。孔部は、吐出パイプの先端部の側面に設けられる。自動閉弁機構は、負圧発生部及び孔部と連通し、主弁が開弁されている状態で、孔部が塞がれると、主弁を自動的に閉弁させる。また、副弁は、第1の副弁と、第1の副弁よりも低い圧力で開弁し且つ開弁時の流路断面積が第1の副弁の開弁時の流路断面積よりも小さい第2の副弁とを含む。第1の副弁は、副弁360である。第2の副弁は、副弁362である。そして、負圧発生部は、第1の副弁を通過する液体に対応する第1の負圧発生部と、第2の副弁を通過する液体に対応する第2の負圧発生部とを含む。第1の負圧発生部は、例えば、上述の負圧発生部370である。第2の負圧発生部は、例えば、上述の負圧発生部372である。
【0080】
これにより、給液ノズルは、主弁を大流量の液体が通過する場合には、第1の副弁を通過する流れによる第1の負圧発生部の負圧を利用し、主弁を小流量の液体燃料が通過する場合には、第2の副弁を通過する流れによる第2の負圧発生部の負圧を利用できる。そのため、給液ノズルは、主弁を通過する液体の流量に応じて、適切な負圧を発生させ、自動閉弁機構をより適切に作動させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、第1の副弁は、上記の流路の断面の外周に設けられる第1の弁座と、第1の弁座に対して可動する第1の弁体とを含んでもよい。第1の弁座は、例えば、上述の弁座360Aである。第1の弁体は、例えば、上述の弁体360Bである。また、第1の弁体は、流路の上流側と下流側とを連通させる第1の貫通孔を有してもよい。第1の貫通孔は、例えば、上述の貫通孔360Baである。そして、第2の副弁は、第1の貫通孔の内周に設けられる第2の弁座と、第2の弁座に対して可動する第2の弁体とを含んでもよい。第2の弁座は、例えば、上述の弁座362Aである。第2の弁体は、例えば、上述の弁体362Bである。
【0082】
これにより、第2の副弁の開弁時の流路断面積を第1の副弁の開弁時の流路断面積よりも大きくすることができる。
【0083】
また、本実施形態では、第1の負圧発生部は、上記の流路のうち、第1の弁体が開弁している状態での第1の弁体の外周面よりも外側の流路部分に設けられると共に、自動閉弁機構に連通する通路と隣接していてもよい。通路は、例えば、上述の通路352である。また、第2の負圧発生部は、上記の流路のうち、第2の弁体が開弁している状態での第1の弁体の内周面よりも内側の流路部分に設けられてもよい。そして、第1の弁体には、第1の副弁が開弁していない状態で第2の負圧発生部と通路との間を連通させるように外周面と内周面との間を貫通する第2の貫通孔が設けられる。第2の貫通孔は、例えば、上述の貫通孔360Bbである。
【0084】
これにより、第1の弁体の内周側に位置する第2の負圧発生部と自動閉弁機構とを第2の貫通孔を通じて連通させることができる。
【0085】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 給液装置
22 給液ホース
30 給液ノズル
302 本体部
304 吐出パイプ
304a 検知孔(孔部)
310 レバー部
312,314 流路
318 主弁
318A 弁座
318B 弁体
320 副弁
324 自動閉弁機構
342 ダイヤフラム室
344 ダイヤフラム
346 付勢バネ
348 通路
350 吸引管
352 通路
360 副弁(第1の副弁)
360A 弁座(第1の弁座)
360B 弁体(第1の弁体)
360Ba 貫通孔(第1の貫通孔)
360Bb 貫通孔(第2の貫通孔)
362 副弁(第2の副弁)
362A 弁座(第2の弁座)
362B 弁体(第2の弁体)
370 負圧発生部(第1の負圧発生部)
372 負圧発生部(第2の負圧発生部)