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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025063083
(43)【公開日】2025-04-15
(54)【発明の名称】耐酸性フィルター材
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20250408BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20250408BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B01D69/12
B01D71/56
B01D69/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024229574
(22)【出願日】2024-12-26
(62)【分割の表示】P 2022579700の分割
【原出願日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】63/043,013
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハムズィク, ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】チョン, クウォシュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイバー, ジャド エー.
(72)【発明者】
【氏名】フィリパンシック, ニコラス ジェイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液体の濾過及び液体中の様々な汚染物質の除去において有用な特定の膜を提供する。
【解決手段】複合多孔質フィルター膜であって、その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材を含み、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体である、複合多孔質フィルター膜とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合多孔質フィルター膜であって、
その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材を含み、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体である、
複合多孔質フィルター膜。
【請求項2】
ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
前記膜が以下の特性:
(i)約20~約100ダイン/cmの表面エネルギー;
(ii)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;
(iii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント;並びに
(iv)約1と約30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
疎水性重合体フィルター膜が、密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、請求項5に記載の膜。
【請求項7】
ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜。
【請求項8】
ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、請求項7又は8に記載の膜。
【請求項10】
前記膜が以下の特性:
14.2psiで測定された、約150~20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;及び
約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント
を有する、請求項7から9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項11】
前記膜が以下の特性:
約1と約100μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約100μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、請求項7から10のいずれか一項に記載の膜。
【請求項12】
ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜であって、膜は、その後、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物でコーティングされる、多孔質フィルター膜。
【請求項13】
ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、請求項12に記載の膜。
【請求項14】
ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、請求項12又は13に記載の膜。
【請求項15】
前記膜が以下の特性:
(i)約30~約100ダイン/cmの表面エネルギー;
(ii)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;
(iii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント;並びに
(iv)約1と30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、請求項12から14のいずれか一項に記載の膜。
【請求項16】
架橋剤が、メチレンビス(アクリルアミド)、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアメタクリレート、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及びエチレングリコールジビニルエーテルから選択される、請求項12から15のいずれか一項に記載の膜。
【請求項17】
単量体が、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド及びアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、請求項12から16のいずれか一項に記載の膜。
【請求項18】
単量体が、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、請求項12から17のいずれか一項に記載の膜。
【請求項19】
単量体が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、7-[4-(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、アクリル酸エチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-アセトキシフェネチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート及びフェニルビニルスルホンから選択される、請求項12から18のいずれか一項に記載の膜。
【請求項20】
第1のコーティングとしてポリアミドコーティングがその上にコーティングされている多孔質疎水性重合体フィルター膜であって、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、前記ポリアミドでコーティングされた膜は、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物である第2のコーティングをその上に有する、多孔質疎水性重合体フィルター膜。
【請求項21】
ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、請求項20に記載の膜。
【請求項22】
ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、請求項20又は21に記載の膜。
【請求項23】
前記膜が以下の特性:
(i)約30~約100ダイン/cmの表面エネルギー;
(ii)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;
(iii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント;並びに
(iv)約1と約30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、請求項20から22のいずれか一項に記載の膜。
【請求項24】
疎水性重合体フィルター膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、請求項20から23のいずれか一項に記載の膜。
【請求項25】
疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、請求項24に記載の膜。
【請求項26】
架橋剤が、メチレンビス(アクリルアミド)、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアメタクリレート、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及びエチレングリコールジビニルエーテルから選択される、請求項20から25のいずれか一項に記載の膜。
【請求項27】
単量体が、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド及びアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、請求項20から26のいずれか一項に記載の膜。
【請求項28】
単量体が、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、請求項20から27のいずれか一項に記載の膜。
【請求項29】
単量体が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、7-[4-(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、アクリル酸エチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-アセトキシフェネチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート及びフェニルビニルスルホンから選択される、請求項20から28のいずれか一項に記載の膜。
【請求項30】
ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜であって、前記膜は、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基又はこれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基、及びペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基でグラフトされている、多孔質フィルター膜。
【請求項31】
その上にコーティングをコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜を備える多孔質複合フィルター膜であって、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、膜は、その後、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基又はこれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基、及びペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基でグラフトされている、多孔質複合フィルター膜。
【請求項32】
ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、請求項30又は31に記載の膜。
【請求項33】
ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、請求項30から32のいずれか一項に記載の膜。
【請求項34】
以下の特性:
a.約30~約100ダイン/cmの表面エネルギー;
b.14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;
c.約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント;並びに
d.約1と約300μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約300μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、請求項30から33のいずれか一項に記載の膜。
【請求項35】
疎水性重合体フィルター材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、請求項31に記載の膜。
【請求項36】
疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、請求項31に記載の膜。
【請求項37】
液体から不純物を除去するための方法であって、液体を請求項1から37のいずれか一項に記載の膜と接触させることを含む、方法。
【請求項38】
請求項1から6のいずれか一項に記載の膜を備えるフィルター。
【請求項39】
請求項7から11のいずれか一項に記載の膜を備えるフィルター。
【請求項40】
請求項12から19のいずれか一項に記載の膜を備えるフィルター。
【請求項41】
請求項20から29のいずれか一項に記載の膜を備えるフィルター。
【請求項42】
請求項30に記載の膜を備えるフィルター。
【請求項43】
請求項31に記載の膜を備えるフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ある種のポリアミド重合体を含む層でコーティングされた多孔質重合体フィルターを含む複合フィルター材又は膜に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルター製品は、有用な流体の流れから望ましくない物質を除去するために使用される、現代産業のなくてはならないツールである。フィルターを使用して処理される有用な流体には、水、液体工業用溶媒及び加工処理用流体、(例えば、半導体製造において)製造又は加工処理のために使用される工業用気体、並びに医療又は医薬用途を有する液体が含まれる。流体から除去される望ましくない物質には、粒子、微生物及び溶解した化学種などの不純物及び汚染物質が含まれる。フィルター用途の具体例としては、半導体及びマイクロ電子デバイス製造のための液体材料との使用が挙げられる。
【0003】
濾過機能を実行するために、フィルターは、フィルター膜を通過する流体から望ましくない物質を除去する役割を果たすフィルター膜を含む。フィルター膜は、必要に応じて、(例えば、螺旋状に)巻いた、平坦、ひだ付き又は円板形状であり得る平坦なシートの形態であり得る。あるいは、フィルター膜は中空糸の形態であり得る。フィルター膜は、濾過されている流体が濾過入口を通って入り、濾過出口を通過する前にフィルター膜を通過する必要があるように、ハウジング内に含有されるか、又はさもなければ支持され得る。
【0004】
フィルター膜は、フィルターの用途、すなわちフィルターによって行われる濾過の種類に基づいて選択することができる平均細孔サイズを有する多孔質構造から構築することができる。典型的な細孔サイズは、約0.001ミクロン~約10ミクロンなど、ミクロン又はサブミクロンの範囲である。約0.001~約0.05ミクロンの平均細孔サイズを有する膜は、限外フィルター膜として分類されることがある。約0.05と10ミクロンの間の細孔サイズを有する膜は、微細孔膜と呼ばれることもある。
【0005】
ミクロン又はサブミクロン範囲の細孔サイズを有するフィルター膜は、ふるい機構若しくは非ふるい機構のいずれか、又はその両方によって流体の流れから望ましくない物質を除去するのに有効であり得る。ふるい機構は、フィルター膜の表面で粒子を機械的に保持することによって液体の流れから粒子を除去する濾過の様式であり、フィルター膜は粒子の移動に機械的に干渉し、粒子をフィルター内に保持するように作用して、フィルターを通る粒子の流れを機械的に妨げる。典型的には、粒子は、フィルターの細孔よりも大きいものであり得る。「非ふるい」濾過機構は、フィルター膜が、フィルター膜を通る流体の流れの中に含有される懸濁した粒子又は溶解した物質を、専ら機械的ではない方法で保持する濾過の様式であり、例えば、専ら機械的ではない方法としては、粒子状物質又は溶解した不純物をフィルター表面に静電的に付着させ、フィルター表面に保持し、流体の流れから除去する静電的な機構が挙げられ、粒子は溶解していてもよく、又はフィルター材の細孔より小さい粒径を有する固体であってもよい。
【0006】
溶解したアニオン又はカチオンなどのイオン性物質を溶液から除去することは、極めて低い濃度のイオン性汚染物質及び粒子がマイクロプロセッサ及びメモリデバイスの品質及び性能に悪影響を及ぼし得るマイクロエレクトロニクス産業などの多くの産業において重要である。低レベルの金属イオン汚染物質を有するポジ型及びネガ型フォトレジストを作製する能力、又は低い10億分の1若しくは1兆分の1レベルの金属イオン汚染物質を有するウェハ洗浄のためのマラゴニ(Maragoni)乾燥において使用されるイソプロピルアルコールを送達する能力は非常に望ましく、半導体製造における汚染防止の必要性のほんの2つの例である。コロイドの化学的性質及び溶液のpHに応じて正又は負に荷電することがあり得るコロイド粒子も処理液を汚染することがあり得、除去する必要がある。溶解したイオン性物質を引き付けるポリマー材料で作られた微細孔フィルター膜によって、非ふるい濾過機構によって溶解したイオン性材料を除去することができる。このような微細孔膜の例は、超高分子量ポリエチレン(「UPE」)、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロンなどのような化学的に不活性な低表面エネルギーポリマーから作製される。ナイロンを、高い透過性を示すフィルター膜へと形成することができるために、及びナイロンの優れた非ふるい濾過挙動のために、具体的には、ナイロンフィルター膜が半導体加工産業における様々な異なる濾過用途において使用されている。しかしながら、アミド結合の加水分解不安定性のために、多くの市販のナイロンフィルター膜は、膜が強酸に曝露される用途には適さず、同様に、このようなナイロンフィルター膜は、酸性溶液で洗浄することができない。
【発明の概要】
【0007】
マイクロ電子デバイス加工の分野は、マイクロ電子デバイスの性能(例えば、速度及び信頼性)の並行した着実な改善を持続させるために、加工材料及び方法の着実な改善を必要とする。液体材料を濾過するための方法及びシステムを含む製造過程のすべての側面にマイクロ電子デバイス製造を改善する機会が存在する。
【0008】
マイクロ電子デバイス加工においては、処理溶媒、洗浄剤及びその他の加工溶液として、広範囲の異なる種類の液体材料が使用される。大半ではないにしても、これらの材料の多くは、極めて高いレベルの純度で使用される。一例として、マイクロ電子デバイスのフォトリソグラフィー加工において使用される液体材料(例えば、溶媒)は、極めて高い純度のものでなければならない。マイクロ電子デバイス加工において使用される液体の具体例としては、スピンオングラス(SOG)技術、裏面反射防止コーティング(BARC)法、及びフォトリソグラフィーのための処理溶液が挙げられる。これらの液体材料のいくつかは酸性である。マイクロ電子デバイス加工において使用するためにこれらの液体材料を高レベルの純度で提供するために、濾過システムは、液体から様々な汚染物質及び不純物を除去するのに高度に効果的でなければならず、濾過されている液体材料(例えば、酸性材料)の存在下において安定でなければならない(すなわち、汚染物質を分解又は導入しない)。
【0009】
第1の態様において、多孔質複合フィルター膜は、その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材であって、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体である、多孔質疎水性重合体フィルター材を含む。
【0010】
第2の態様において、多孔質重合体膜は、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む。このような膜は、ナイロン6又はナイロン6,6から調製されたポリアミド膜と比較して優れた酸安定性を示すポリアミド又はナイロン膜を提供するために、公知のエアキャスティング技術を使用して調製することができる。一実施形態において、この第2の態様の膜は、ナイロン11及び/又はナイロン12から調製される。
【0011】
第3の態様において、第1のコーティングとしてポリアミドコーティングがその上にコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜であって、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、前記ポリアミドでコーティングされた膜は、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物である第2のコーティングをその上に有する、多孔質疎水性重合体フィルター膜。
【0012】
第4の態様において、多孔質フィルター膜は、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含み、膜は、その後、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つのアクリルアミド単量体のフリーラジカル反応生成物でコーティングされる。
【0013】
第5の態様において、
(a)多孔質フィルター膜はギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含み、前記膜は、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基又はこれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基、及びペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基をグラフトされており;
(b)多孔質複合フィルター膜は、その上にコーティングをコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜を備え、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、膜は、その後、(i)ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基又はこれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基、及び(ii)ペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基をグラフトされる。
【0014】
他の態様において、本開示は、第1~第5の態様のフィルター膜を調製するための方法を提供する。別の態様において、本開示は、液体から不純物を除去するための方法であって、液体を本開示の膜と接触させることを含む、方法を提供する。
【0015】
第2の態様のポリアミド膜、第1の態様、第3の態様、第4の態様及び第5の態様の第2の実施形態(b)において出発物質として使用される下部の多孔質疎水性膜などのフィルター膜はすべて、エアキャスティングなどの公知の方法を使用して下に存在するポリマー組成物から調製することができる。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,891,500号及びその中で引用されている参考文献を参照されたい。あるいは、下部のフィルター膜は、相反転、界面重合、延伸、飛跡エッチング及びエレクトロスピニングなどの公知の方法によって調製することができる。例えば、B.S.Lalia et al.,Desalination 326(2013)77-95及びP.van de Witte,et al.,Journal of Membrane Science 117(1996)1-31を参照されたい。
【0016】
本開示は、添付の図面に関連して様々な例示的な実施形態の以下の説明を考慮してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(概略的であり、必ずしも原寸に比例しない)は、本明細書に記載されるフィルター製品の一例を示す。
図2図2は、ポリアミドでコーティングされた多孔質フィルター膜の簡略図である。以下に述べるように、ポリアミドコーティング及び/又は硬化されたコーティングは、図示されているようにベース膜上に必ずしも連続的なコーティングを形成しない。
図3図3は、ナイロン6、ナイロン11及びナイロン12でコーティングされたUPE膜の安定性の比較である。左側の各バーは初期のデータを表し、右側の各バーは99%ギ酸洗浄後のデータを表す。このデータは、以下に記載されるように、本開示の代表的な膜、特に第2の態様の膜の優れた酸安定性を示す。
図4図4は、20℃でのメタノールと水の混合物の表面張力の図示である。表面張力(20℃でのnM/m)が、水中のメタノール質量(%)に対してプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、様々な変更及び代替形態を受け入れることができるが、それらの詳細は、例として図面に示されており、詳しく記載されるであろう。しかしながら、その意図は本開示の態様を記載された特定の例示的な実施形態に限定することではないことを理解されたい。それとは反対に、その意図は、本開示の精神及び範囲内に入るすべての修正、均等物及び代替物を網羅することである。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかに反対の意味を指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、その内容が明らかに反対の意味を指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0020】
「約」という用語は、一般に、記された値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの事例で、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含み得る。
【0021】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む。)。
【0022】
上記のように、第1の態様において、多孔質複合フィルター膜は、その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター膜であって、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体である、多孔質疎水性重合体フィルター膜を含む。一実施形態において、ギ酸とジクロロメタンのこの混合物は、1:1(体積:体積)混合物である。この態様の一実施形態において、ポリアミドは、一般的な繰り返し単位-[(CHC(O)NH]-を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す。ある実施形態において、ポリアミド重合体は、ナイロン11及びナイロン12又はこれらの混合物から選択される。ある実施形態において、前記膜は、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~200psiのバブルポイントを有し、並びに/又は前記膜は、約1と約30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する。ある実施形態において、膜は、14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間を有する。
【0023】
この第1の態様において、超高分子量ポリエチレン(「UPE」)から構成されるものなどの多孔質疎水性フィルター膜から出発する複合膜は、ギ酸とジクロロメタンの混合物中のポリアミド重合体の溶液で処理される。膜がコーティングされると、膜は、水を含む溶液を含有する容器に移される。次いで、得られた膜は、水性及び低級アルコール(例えば、C~Cアルコール)の洗浄容器を通過させることを含む1つ以上の洗浄工程に供される。乾燥すると、この過程は第1の態様の複合膜を与える。図4に示されるように、本開示の第1の態様の例示的な膜は、ナイロン6を使用して調製された類似の膜と比較した場合、優れた酸安定性を示した。
【0024】
ある実施形態において、表面エネルギーは、30ダイン/cm超、約30~約100ダイン/cm、又は約30~約85ダイン/cm又は約30~約65ダイン/cmである。
【0025】
上記のように、第2の態様において、本開示は、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜を提供する。一実施形態において、ギ酸とジクロロメタンのこの混合物は、1:1(体積:体積)混合物である。このような膜は、このようなポリアミドをギ酸とジクロロメタンの混合物に溶解してポリアミド溶液を形成し、次いでこれを公知のエアキャスティング技術に供して、ナイロン6又はナイロン6,6を含む類似のナイロン膜よりも大幅に改善された酸安定性を有する新規ポリアミド膜を提供することによって調製することができる。一実施形態において、この態様のポリアミドは、一般的な繰り返し単位-[(CHC(O)NH]-を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す。ある実施形態において、ポリアミド重合体は、ナイロン11及びナイロン12又はこれらの混合物から選択される。ある実施形態において、前記膜は、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント、並びに/又は前記膜は、約1と約100μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約100μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する。ある実施形態において、膜は、14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間を有する。
【0026】
ある実施形態において、表面エネルギーは、30ダイン/cm超、約30~約100ダイン/cm、又は約30~約85ダイン/cm又は約30~約65ダイン/cmである。
【0027】
上記のように、第3の態様において、多孔質複合フィルター膜は、ポリアミドコーティングがその上にコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜を備え、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、膜は、その後、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物でコーティングされる。本開示のこの態様の一実施形態において、ポリアミドは、繰り返し単位-[(CHC(O)NH]-を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す。ある実施形態において、ポリアミド重合体は、ナイロン11及びナイロン12又はこれらの混合物から選択される。この態様において、架橋剤及び単量体は(以下で十分に論述されるように)、ポリアミドでコーティングされた疎水性膜の表面上にグラフトされず、むしろ前記膜の表面又はその付近で重合され、その上に追加の部分コーティングを形成する。ある実施形態において、前記膜は、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有し、並びに/又は前記膜は、約1と約30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する。ある実施形態において、膜は、14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間を有する。
【0028】
本開示のこの第3の態様において、超高分子量ポリエチレンから構成されるものなどの多孔質疎水性フィルター膜から出発する複合膜は、例えば、(体積で)50/50の割合のギ酸とジクロロメタンの混合物中のこのようなポリアミド重合体の溶液で処理される。膜がコーティングされると、膜は、以下で「単量体溶液」と呼ばれる、(i)少なくとも1つの架橋剤、(ii)少なくとも1つの単量体、及び(iii)少なくとも1つの光開始剤を含む水溶液を含有する混合容器に移される。次いで、このようにコーティングされた膜は、(i)少なくとも1つの架橋剤及び(ii)少なくとも1つの荷電したアクリルアミド単量体と、ポリアミドコーティングの表面又はその付近においてフリーラジカル重合を開始するためにUV光に供され得る。次いで、得られた膜は、水性及び低級アルコール(例えば、C~Cアルカノール)の洗浄容器を通過させることを含む1つ以上の洗浄工程に供される。乾燥すると、この過程は本開示のこの第3の態様の複合膜を与える。
【0029】
ある実施形態において、表面エネルギーは、30ダイン/cm超、約30~約100ダイン/cm、又は約30~約85ダイン/cm又は約30~約65ダイン/cmである。
【0030】
本開示のこの第3の態様では、上記の架橋剤は、任意にアミド官能性を有する、非荷電二官能性(すなわち、2つの炭素-炭素二重結合を有する)ビニル、アクリル又はメタクリル単量体種である。このような架橋剤の非限定的な例には、メチレンビス(アクリルアミド)、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアメタクリレート、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン98%及びエチレングリコールジビニルエーテルが含まれる。
【0031】
本明細書で言及される単量体は、荷電した又は非荷電のビニル、アクリル又はメタクリルの単量体種である。
【0032】
本開示の実施形態において使用することができる正の電荷を有する単量体の非限定的な例としては、個別での又は以下の2つ以上の組み合わせでの、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド及びビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドを挙げることができるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、正の電荷を有する単量体は、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)を含む。上に列挙された正電荷を有するいくつかの単量体は、第4級アンモニウム基を含み、天然に荷電しているのに対して、第1級、第2級及び第3級アミンを含むなどの他の正電荷を有する単量体は、酸での処理によって電荷を生成するように調整されることを理解されたい。天然に又は処理によって正に荷電することができる単量体は、多孔質膜上にコーティングを形成するために、重合させ、架橋剤で架橋させることができる。
【0033】
使用することができる負電荷を有する単量体の例としては、個別での又は以下の2つ以上の組み合わせでの、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸を挙げることができるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、負電荷を有する単量体は、スルホン酸部分を含む。上に列挙された負電荷を有するいくつかの単量体は、強酸基を含み、天然に荷電しているのに対して、弱酸を含む他の負電荷を有する単量体は、塩基での処理によって電荷を生成するように調整されることを理解されたい。天然に又は処理によって負に荷電する単量体は、有機溶媒中で負に荷電する多孔質膜上にコーティングを形成するために、重合させ、架橋剤で架橋させることができる。
【0034】
使用することができる中性の単量体の例としては、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、7-[4-(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、アクリル酸エチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-アセトキシフェネチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート及びフェニルビニルスルホンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0035】
光開始剤は、一実施形態において、I型光開始剤として認識されるものから選択される。理論に拘束されることを望むものではないが、I型光開始剤は、照射されると単分子結合開裂を受けてフリーラジカルを生じる。適切な開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムなどの様々な過硫酸塩、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Irgacure2959の商標で販売されている(2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン)、並びに過酸化ベンゾイルが挙げられる。
【0036】
単量体溶液中の光開始剤の量は、架橋剤と単量体の間での所望のフリーラジカル反応に影響を及ぼすのに十分に高い任意の量(すなわち、濃度)であり得る。単量体溶液中の光開始剤の有用な量の例は、最大1重量パーセント、例えば0.1若しくは0.5から4.5重量パーセント、又は1若しくは2から3若しくは4重量パーセントの範囲であり得る。
【0037】
単量体溶液に対して使用される溶媒の種類は、単量体溶液が有用な量の単量体を溶解し、親水性ポリマーの表面に送達することを可能にするのに有効な任意のものであり得る。単量体溶液のための好ましい溶媒は、水又は有機溶媒を添加した水である。溶媒は、有機溶媒、水、又はその両方を含むことができる。有機溶媒の例としては、アルコール、特に低級アルコール(例えば、C~Cアルコール)が挙げられ、イソプロパノール、メタノール及びヘキシレングリコールが有用な例である。特定の過程、単量体溶液及び単量体に対して使用される特定の溶媒は、単量体溶液中の単量体の種類及び量、親水性ポリマーの種類並びにその他の要因などの要因に基づくことができる。水及び有機溶媒の両方を含有する溶媒において、有機溶媒は、任意の量で、例えば、90、75、50、40、30、20又は10%重量未満の量で含まれ得る。一例として、有用な溶媒組成物は、水中に1~10重量%のヘキシレングリコールを含有し得る。一実施形態において、水は脱イオン水である。
【0038】
単量体溶液中の単量体の量は、ある実施形態において、溶液の重量に基づいて約0.5~5重量%である。単量体溶液中の架橋剤の量は、ある実施形態において、単量体溶液の総重量に基づいて、約0.25~3.0重量%である。ある実施形態において、利用される単量体及び架橋剤の相対量は、(ポリアミドでコーティングされた疎水性膜への)そのような最終的な架橋された又はフリーラジカル重合されたコーティングの相対的被覆率とともに、全体的な、すなわち得られる膜が約30~85ダイン/cmの表面エネルギーを有するような量である。
【0039】
単量体溶液が、ポリアミドでコーティングされた下部の多孔質疎水性膜上に効果的に接触又はコーティングされた後、得られた膜は、典型的にはスペクトルの紫外線部分内の電磁放射線に曝露されるか、又は光開始剤に架橋剤及び単量体のフリーラジカル重合を開始させるのに有効な別のエネルギー源に曝露される。
【0040】
上記のように、第4の態様において、本開示は、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜であって、膜が、その後、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物でコーティングされている、多孔質フィルター膜を提供する。このような膜は、第1の態様の膜を出発物質として使用し、次いで、第3の態様で上述したアクリルコーティング工程を実施して調製することができる。
【0041】
ある実施形態において、表面エネルギーは、約30ダイン/cm超、約30~約100ダイン/cm、又は約30~約85ダイン/cm又は約30~約65ダイン/cmである。
【0042】
ある実施形態において、前記膜は、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有し、並びに/又は前記膜は、約1と約30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する。ある実施形態において、膜は、14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間を有する。
【0043】
上記のように、第5の態様において、本開示は、あるペンダントイオン性部分を有する多孔質膜を提供する。特に、この態様において、本開示は、2つの実施形態:
a.ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜であって、前記膜は、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基又はこれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基、及びペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基をグラフトされている、多孔質フィルター膜;
b.その上にコーティングをコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜を備える多孔質複合フィルター膜であって、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、膜は、その後、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基又はこれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基、及びペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基をグラフトされる、多孔質複合フィルター膜
を提供する。
【0044】
本開示のこの第5の態様の一実施形態において、ポリアミドは、一般的な繰り返し単位-[(CHC(O)NH]-を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す。ある実施形態において、ポリアミド重合体は、ナイロン11及びナイロン12又はこれらの混合物から選択される。
【0045】
本開示のこの第5の態様、実施形態a.において、このような膜を調製するための方法は、
a.光開始剤をポリアミド重合体の表面に配置するために、上記第2の態様の膜を、溶媒及び光開始剤を含む光開始剤溶液と接触させることと;
b.表面に光開始剤を配置するために表面を光開始剤溶液と接触させた後に、表面を、荷電した単量体を含む単量体溶液と接触させることであって、荷電した単量体は、イオン性基を含む、接触させることと;
c.イオン性基をポリアミド重合体にグラフトさせるために、表面を電磁放射線に曝露することと
を含む。
【0046】
この実施形態a.では、したがって、膜は、ギ酸とジクロロメタンの混合物(例えば、1:1、体積:体積混合物)中に可溶性のポリアミドであり、ある実施形態においては、ナイロン11及びナイロン12から選択され、上記の第3の態様に記載される架橋剤とアクリルアミド単量体のフリーラジカル反応生成物でコーティングされている。
【0047】
ある実施形態において、前記膜は、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有し、並びに/又は前記膜は、約1と約300μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約300μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する。ある実施形態において、膜は、14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間を有する。
【0048】
第5の態様、実施形態b.において、このような膜を調製するための方法であって、
a.光開始剤をポリアミド重合体の表面に配置するために、上記第1の態様の膜を、溶媒及び光開始剤を含む光開始剤溶液と接触させることと;
b.表面に光開始剤を配置するために表面を光開始剤溶液と接触させた後に、表面を、荷電した単量体を含む単量体溶液と接触させることであって、荷電した単量体は、イオン性基を含む、接触させることと;
c.イオン性基をポリアミド重合体にグラフトさせるために、表面を電磁放射線に曝露することと
を含む。
【0049】
この実施形態b.では、したがって、膜は、(例えば、(体積で)50/50の割合での)ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性のポリアミドでコーティングされた多孔質親水性ポリマー膜、例えば超高分子量ポリエチレンであり、このポリアミドは、ある実施形態においては、ナイロン11及びナイロン12から選択され、その後、ある種のペンダントイオン性基をグラフトされる。
【0050】
ある実施形態において、前記膜は、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有し、並びに/又は前記膜は、約1と約300μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約300μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する。ある実施形態において、膜は、14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間を有する。
【0051】
この第5の態様に関して、出願人は、光開始剤の使用を含むある種の化学的グラフト化技術によって、荷電した(「イオン性」)化学基を親水性ポリマーに化学的に付着させることは、ある種の特定の技術的課題を伴うことを決定した。これらの技術の多くは、ポリマー表面を、荷電した反応性化合物(例えば、「荷電した単量体」)及び光開始剤を含有する溶液と接触させ、次いで、ポリマー及び溶液を電磁放射線に曝露することを含む。荷電した単量体は、反応性部分(例えば、不飽和部分)と、ポリマーに化学的に結合される荷電した化学基とを含む。荷電した単量体、ポリマー及び光開始剤を含有する溶液が放射線に曝露されると、光開始剤は不飽和部分と親水性ポリマーの間での化学反応を開始する。この反応により、不飽和部分はポリマーに化学的に結合する、すなわちポリマーに「グラフト」される。
【0052】
この第5の態様において、イオン性基は任意の基であり得る。ペンダントイオン性基は、ペンダント親水性基とは異なる。親水性ポリマーがフィルター膜中に含まれる特定の実施形態では、イオン性基は、フィルター膜の濾過性能、特にフィルター膜の非ふるい濾過性能を改善するのに有効であり得る。記載される親水性ポリマー上、特にフィルター膜中に含まれる親水性ポリマー上に含まれ得るイオン性基の例としては、カチオン性窒素含有イオン性基、アニオン性硫黄含有イオン性基及びアニオン性リン含有イオン性基が挙げられ、これらの化学的対応物(例えば、塩又は酸)を含む。ある特定の例として、ペンダントイオン性基は、カチオン性窒素含有環状芳香族基、カチオン性イミダゾール若しくはカチオン性アミン、又はアニオン性ホスホン酸基若しくはアニオン性スルホン酸基であり得る。
【0053】
荷電した単量体を親水性ポリマー上に付着させるためにこれらの技術が使用される場合、ある特定の技術的課題が存在する。典型的な光開始剤(例えば、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体)は疎水性であり、親水性ポリマーの親水性表面に本質的に引き付けられない。その結果生じる課題は、有効量の疎水性光開始剤を親水性ポリマーの表面に配置することである。
【0054】
荷電した単量体を親水性ポリマー又は親水性ポリマーから作製された物品(多孔質フィルター膜を含むがこれに限定されない)に化学的に結合させる、すなわちグラフトさせることができる技術が本明細書に開示されている。本技術は、一般に、親水性ポリマーの表面に光開始剤を配置することと;次いで、荷電した単量体を表面に配置することと;次いで、親水性ポリマーの表面に存在する光開始剤及び荷電した単量体を放射線に曝露することとを含む。放射線は、光開始剤に不飽和部分と親水性ポリマーの間での反応を開始させ、それによって不飽和部分がポリマーに化学的に結合され、すなわち「グラフト」され、その結果得られる親水性ポリマーは、共有化学結合を介して親水性ポリマーに化学的に結合した荷電した(イオン性)化学基を含む。
【0055】
この方法のより具体的な例は、親水性ポリマーを含むように作られている多孔質フィルター膜(例えば、親水性多孔質フィルター膜)上にイオン性基をグラフトすることを含む。この方法は、ある実施形態においては膜の内部細孔表面を含むフィルター膜の親水性ポリマー表面に、荷電した単量体の荷電した化学基を化学的に結合させることを含む。この方法は、内部細孔表面を含む親水性ポリマーの表面に光開始剤を配置するために、フィルター膜を、溶媒及び光開始剤を含有する光開始剤溶液と接触させることと;例えば、(水での)すすぎ工程、乾燥(溶媒エバポレーション)工程、又はすすぎ工程と乾燥工程の両方によって、表面から過剰量の光開始剤溶液を任意に除去することと;表面を光開始剤溶液と接触させた後、及び表面から過剰な光開始剤溶液を任意に除去した後、荷電した単量体を表面に配置することと;荷電した単量体を親水性ポリマーと反応させ、共有化学結合を介して親水性ポリマーに化学的に結合させる、すなわち親水性ポリマーにグラフトさせるために、(光開始剤及び荷電した単量体を有する)表面を電磁放射線に曝露することとを含むことができる。
【0056】
ある種の以前のグラフト化方法と比較して、本明細書は、荷電した(イオン性)化学基を親水性であるポリマーに化学的に付着させるために、疎水性光開始剤を使用することを含む。本明細書で使用される場合、親水性ポリマーを記述するための「親水性」という用語は、ポリマー骨格に結合した十分な量の親水性ペンダント官能基、例えばヒドロキシル(-OH)基、カルボキシル基(-COOH)、アミノ基、(-NH)、又はポリマー骨格に結合した類似の官能基の存在により、水分子を引き付けるポリマーを指す。いくつかの実施形態において、懸垂した親水性基は、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。親水性ポリマーが多孔質フィルター膜へ形成されると、これらの親水性基は、多孔質フィルター膜上に水を吸収することを助ける。
【0057】
この第5の態様について記載される方法によれば、光開始剤は、親水性ポリマーの表面に、例えば、親水性ポリマーを含有する、多孔質フィルター膜又はその他の物品の表面に配置される。光開始剤を表面に配置するためにその後親水性ポリマーに適用される光開始剤溶液を形成するために、好ましい技術によって、光開始剤を溶媒に溶解させることができる。光開始剤は、光開始剤溶液を形成するために、水、有機溶媒、又は有機溶媒と水との組み合わせであり得る液体溶媒に溶解され得る。次いで、噴霧、浸漬、浸すこと、吸着などの任意の有用な方法で、光開始剤溶液をポリマーと接触させる。
【0058】
光開始剤溶液の溶媒は、光開始剤を溶解し、光開始剤を親水性ポリマーの表面に、例えば親水性多孔質重合体膜の表面に送達するのに有効な任意の溶媒であり得る。親水性であるポリマー及び疎水性である光開始剤の場合、溶媒は、親水性ポリマーで作られたフィルター膜の内部細孔との接触を含む、望ましくは大量の疎水性光開始剤を親水性ポリマーの表面と首尾よく接触させるために、これらの2つの成分のそれぞれと適合性でなければならない。これを達成するために、記載されるような例示的な光開始剤溶液の溶媒は、有用な量の光開始剤を溶解することがなお可能でありながら、少なくともいくらかの量の水を含有し得る。光開始剤溶媒の一部として水を含むことは、溶媒をより極性にするのに有効であり得、これにより、溶媒から親水性ポリマー上への疎水性光開始剤の送達(例えば、その沈殿)をより効率的にすることができる。さらに、ナイロンなどの親水性ポリマーをより濃縮された、例えば純粋な有機溶媒に曝露することは、取り扱い中に重合体膜の変形を引き起こす傾向があり得るので、水は、工程中の膜のウェブ搬送を改善し得る。
【0059】
「溶媒」という用語は、有用な量の溶解した光開始剤を含有するのに有効であり、液体が溶解した光開始剤を親水性ポリマー又は親水性ポリマーを含むように作製された物品、例えば、内部細孔表面を含む重合体フィルター膜の表面に運ぶことを可能にする任意の液体を指す。溶媒は、有機溶媒、水、又はその両方を含むことができる。有機溶媒の例としては、アルコール、特に低級アルコール(C~Cアルコール)が挙げられ、イソプロパノール及びメタノールが有用な例である。
【0060】
光開始剤溶液のための例示的な溶媒は、有機溶媒と水の混合物、例えば水と低級(C~C)アルコールの混合物、例えばメタノールと水の混合物又はイソプロパノールと水の混合物を含み、これらからなり、又はこれらから本質的になる。イソプロパノール又はメタノールなどの低級アルコールの水との組み合わせは、疎水性開始剤、例えばベンゾフェノン(又はその誘導体)を溶解するのに特に効果的であり得るが、親水性ポリマーで作られた多孔質フィルター膜の表面(内部細孔表面を含む)などの親水性ポリマーの表面を湿潤させるのになお非常に効果的である。疎水性光開始剤(例えば、ベンゾフェノン又はその誘導体)を溶解し、親水性基材を湿潤させるためのこれらの溶媒混合物の有効性は、溶媒混合物を使用して、多孔質親水性フィルター膜の内部細孔表面を含む親水性ポリマーの表面上に有用な量の疎水性光開始剤を効果的に送達することを可能にし得る。溶媒中の有機溶媒(例えば、メタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、又はこれらの混合物)及び水の相対量は、任意の有効量であり得、例えば、水:有機溶媒の比(重量:重量)は、10:90~90:10、20:80~80:20、例えば、30:70~70:30、又は40:60~60:40の範囲であり得る。
【0061】
この第5の態様において、光開始剤は、放射線(例えば、紫外線)に効果的に応答して、本明細書に記載の荷電した単量体の反応性基と親水性ポリマーとの間での反応を開始する任意の光開始剤であり得る。例としては、「II型」光開始剤として化学分野で公知の光開始剤が挙げられる。II型光開始剤の公知の有用な例としては、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体が挙げられる。
【0062】
光開始剤溶液中の光開始剤の量は、光開始剤溶液が所望の、有用な又は最大の量の光開始剤を親水性ポリマー表面に送達することを可能にするのに十分に高い任意の量(濃度)であり得る。量及びその適用の方法は、望ましくは多量の荷電した単量体をポリマー表面と反応させるのに有効である光開始剤の量をポリマー表面に配置するのに十分であるべきである。光開始剤溶液中の光開始剤の有用な量の例は、最大5重量パーセント、例えば0.1若しくは0.5から4.5重量パーセント、又は1若しくは2から3若しくは4重量パーセントの範囲であり得る。
【0063】
光開始剤溶液は、任意の有用な技術によって、例えば、光開始剤溶液を親水性ポリマー上に噴霧することによって、親水性ポリマーを光開始剤溶液中に浸漬する又は浸すことなどによって、親水性ポリマーの表面に適用することができる。望ましくは、例えば多孔質フィルター膜のすべての内部表面を含む、親水性ポリマーを含む物品の表面全体を光開始剤溶液と接触させ、光開始剤溶液によって湿潤させることができる。必要であれば、適用工程は、例えば多孔質フィルター材のすべての表面を湿潤させるために多孔質フィルター材を延ばす又は押し潰すことによる、親水性ポリマー又は親水性ポリマーを含む物品の操作を含み得る。いくつかの実施形態において、光開始剤溶液は、0.1~2重量パーセントのベンゾフェノン又はベンゾフェノン誘導体、水、並びにイソプロパノール及びメタノールのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、光開始剤溶液は、100重量部の総イソプロパノール及び水を基準として、20~80重量部のイソプロパノール及び80~20重量部パーセントのイソプロパノールを含む。
【0064】
その後、所望であれば、親水性ポリマー表面の表面上に存在する光開始剤溶液の一部が除去され得るが、表面上に所望の量の光開始剤溶液を依然として効果的に残す。光開始剤溶液は、必要とされる量を超えて存在し得るが、過剰な量は、機械的除去の任意の1つ以上の技術によって除去され得る。多孔質フィルター膜の場合、過剰な光開始剤溶液を除去するための技術の例には、フィルター膜を絞らずに乾かす、ローラーなどの機械的な力若しくは圧力を使用して押し潰し、絞り、折り畳み若しくは延ばすこと、スプレー若しくは水浴で(例えば、脱イオン水で)すすぐこと、又は空気流若しくは熱の1つ以上の使用によって、例えばファン若しくは「エアナイフ」乾燥機、熱若しくはこれらの組み合わせの使用によって、親水性ポリマー表面上に存在する光開始剤溶液から溶媒をエバポレートさせることが含まれる。
【0065】
過剰な光開始剤溶液を除去する1つの任意選択の工程により、その表面に接触する光開始剤溶液を含む親水性ポリマー、例えば多孔質親水性フィルター膜は、水、例えば脱イオン水を使用してすすがれ得る。すすぎ工程は、任意の有用な技術によって、例えば、すすぎ(例えば、脱イオン)水を親水性ポリマー上に噴霧することによって、親水性ポリマー水(例えば、脱イオン水)を浸漬する又は浸すことなどによって実施され得、それによって過剰な光開始剤溶液(その有機溶媒を含む)の少なくとも一部が親水性ポリマー表面から除去される。すすぎ工程は、有用な量の光開始剤が親水性ポリマーの表面に残存することを可能にすべきであり、好ましくは、光開始剤溶液からの低下した量の溶媒が表面上に残存する。
【0066】
すすぎ工程又は機械的乾燥工程又はその両方の後に任意で実施され得る、親水性単量体の表面から光開始剤溶液の一部を除去する異なる任意選択の工程においては、その表面に接触する光開始剤溶液を有する親水性ポリマー(例えば、多孔質親水性フィルター膜)は、エバポレーションによって溶媒を乾燥させることによって光開始剤溶液の溶媒を除去し、親水性ポリマー表面に濃縮された量の光開始剤を残すために処理することができる。親水性ポリマーの表面で光開始剤溶液の溶媒をエバポレートさせるためのこの種の乾燥工程は、光開始剤溶液に熱を加えることによって、空気若しくは別の気体状流体の流れを光開始剤溶液に通すことによって、又は光開始剤溶液の溶媒の所望の一部をエバポレートさせるのに有効な時間、周囲条件、例えば室温の空気中に放置することによって溶媒を光開始剤溶液からエバポレートさせることによって行うことができる。望ましくは、溶媒のかなりの部分、例えば少なくとも40、50、70又は90重量%の溶媒をエバポレートさせ、光開始剤溶液から除去することができる。その結果、濃縮された量の光開始剤が、親水性ポリマーの表面上に、好ましくは、例えば多孔質濾過膜の内部細孔を含む表面全体にわたってかなり均一な分布で残存する。
【0067】
任意で、所望であれば、乾燥工程の後、脱イオン水を親水性ポリマーに噴霧することによって、親水性ポリマーを脱イオン水に浸すことによって、又は親水性ポリマーの表面から光開始剤を除去することなく光開始剤を再び湿潤させるのに効果的である任意の他の技術などによって、その表面に存在する光開始剤を有する親水性ポリマーは再び水、例えば、脱イオン水で濡らされ得る。
【0068】
この第5の態様に記載される方法によれば、光開始剤を親水性ポリマーの表面に配置した後(任意選択の乾燥又は湿潤工程を伴う)の次の工程は、荷電した単量体を光開始剤と組み合わせて表面に配置することであり得る。荷電した単量体は、任意の有用な技術によって、その上に光開始剤が予め配置された表面に配置することができ、有用な例としては、溶媒中に溶解された荷電した単量体を含有する単量体溶液と表面を接触させることが挙げられる。これらの技術の具体例としては、噴霧、浸すこと、浸漬、吸着などが挙げられる。荷電した単量体が光開始剤とともに表面にうまく配置された後、しばしば化学的「グラフト化」と呼ばれる過程である、荷電した単量体を親水性ポリマーに(共有化学結合を介して)化学的に結合させる化学反応を開始させるために、(光開始剤及び荷電した単量体を有する)表面は、放射線に曝露される。
【0069】
この第5の態様では、荷電した単量体は、不飽和部分(例えば、ビニル、アクリレート、メタクリレートなど)などの反応性部分と、アニオン性又はカチオン性であり得るイオン性部分とを含む反応性化合物であり得る。
【0070】
適切なカチオン性の荷電した単量体の例としては、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミン(例えば、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アミン)、及び四級アンモニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、グアニジニウム、スルホニウム又はピリジニウム官能基を有するビニル型が挙げられる。適切なアクリレート単量体の例としては、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート及び[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。適切なメタクリレート単量体の例には、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液及び[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドが含まれる。適切なアクリルアミド単量体の例としては、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。適切なメタクリルアミド単量体の例としては、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド及びN-(3-アミノプロピル)-メタクリルアミドヒドロクロリドが挙げられる。他の適切な単量体としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド及びビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0071】
適切なアニオン性単量体としては、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸又はリン酸官能基を有するビニル型が挙げられる。適切なアクリレート単量体の例としては、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸及び2-(トリフルオロメチル)アクリル酸が挙げられる。適切なメタクリレート単量体の例としては、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート及び3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩が挙げられる。適切なアクリルアミド単量体の例は、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸である。適切なメタクリルアミド単量体の例は、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸である。他の適切な単量体としては、ビニルスルホン酸(又はビニルスルホン酸ナトリウム塩)及びビニルホスホン酸(及びその塩)が挙げられる。
【0072】
他の適切な単量体は、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド(HMAD)、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)及び(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド(VBTAC)である。
【0073】
この第5の態様において単量体溶液に対して使用される溶媒の種類は、単量体溶液が有用な量の荷電した単量体を溶解し、親水性ポリマーの表面に送達することを可能にするのに有効な任意のものであり得る。単量体溶液のための好ましい溶媒は、水又は有機溶媒を添加した水である。溶媒は、有機溶媒、水、又はその両方を含むことができる。有機溶媒の例としては、アルコール、特に低級アルコール(C~Cアルコール)が挙げられ、イソプロパノール、メタノール及びヘキシレングリコールが有用な例である。特定の過程、単量体溶液及び荷電した単量体に対して使用される特定の溶媒は、単量体溶液中の荷電した単量体の種類及び量、親水性ポリマーの種類並びにその他の要因などの要因に基づくことができる。水及び有機溶媒の両方を含有する溶媒において、有機溶媒は、任意の量で、例えば、90、75、50、40、30、20又は10%重量未満の量で含まれ得る。一例として、有用な溶媒組成物は、水中に1~10重量%のヘキシレングリコールを含有し得る。
【0074】
単量体溶液中の荷電した単量体の量は、単量体溶液が所望の、有用な又は最大の量の荷電した単量体を親水性ポリマー表面に送達することを可能にするのに十分に高い任意の量(濃度)であり得る。単量体溶液の量、単量体溶液中の荷電した単量体の濃度、及び単量体溶液を親水性ポリマーに適用するために使用される方法は、望ましくは多量の荷電した単量体を親水性ポリマー表面と反応させるのに有効である量の荷電した単量体をポリマー表面に配置するのに十分であるべきである。単量体溶液中の単量体の有用な量の例は、最大5又は10重量パーセント、例えば0.5から5重量パーセント、又は1若しくは2から3若しくは4重量パーセントの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、荷電した単量体は、ビニルイミダゾール、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アクリル酸、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドを含む。いくつかの実施形態において、単量体溶液は、単量体溶液の総重量を基準として、90~99.5重量%の脱イオン水中に溶解された0.5~10重量%の荷電した単量体を含む。
【0075】
単量体溶液が、(その上に予め配置された光開始剤を含む)親水性ポリマーの表面に効果的に送達された後、(その表面に光開始剤及び荷電した単量体を有する)親水性ポリマーは、典型的にはスペクトルの紫外線部分内の電磁放射線に曝露されるか、又は荷電した単量体の反応性部分が親水性ポリマーと反応し、親水性ポリマーに化学的に(共有結合的に)結合する化学反応を光開始剤に開始させるのに有効である別のエネルギー源に曝露される。
【0076】
親水性単量体又は親水性単量体を含有するフィルター材に化学的に結合した反応性単量体の量に関して記述される、親水性ポリマーに結合させることができるイオン性基の量は、任意の有用な量、例えば、イオン基が結合している親水性フィルター膜の非ふるい濾過機能を増大させるのに有効な量であり得る。好ましくは、ペンダントイオン性基の存在及び量は、流れ特性などのフィルター膜の他の特性に実質的な又は許容できないレベルの有害な影響をもたらさない。
【0077】
例えば、光開始剤を伴うグラフト化技術の使用によってイオン性基が化学的に結合した親水性ポリマー、これらのポリマーを含む物品又は組成物、例えば、ポリマーで作られたフィルター膜は、極めて少量であるが分析的に検出可能な(残留する)量の光開始剤を(好ましくはないが)含み得る。
【0078】
上記のように、本開示は、様々な流体から不純物を除去するための濾過材として有用な複合膜を提供する。過程の性質のために、本開示の様々な態様において、疎水性フィルター材又は膜に適用されたポリアミドコーティングは、疎水性濾過材又は膜を完全には覆わず又は封入せず、むしろ下部の膜上に半連続的又は部分的なコーティングを形成する。同様に、フリーラジカル重合がポリアミドでコーティングされた膜又はナイロン膜の存在下で行われる本開示の第3及び第4の態様では、得られた硬化又は架橋されたポリマーコーティングは、下部の膜の表面を完全には覆わず又は封入せず、同じく、ナイロン膜又はポリアミドでコーティングされた多孔質疎水性膜構造上に半連続的又は部分的なコーティングを形成する。
【0079】
ある実施形態において、下部の疎水性多孔質ポリマーフィルター材料は、ポリマー材料、異なるポリマー材料の混合物、又はポリマー材料及び非ポリマー材料から形成される。フィルターを形成するポリマー材料は、所望の程度の完全性を有するフィルター構造を提供するために、一緒に架橋させることができる。
【0080】
本開示の下部多孔質フィルター膜を形成するために使用することができるポリマー材料は、疎水性ポリマーである。いくつかの実施形態において、フィルター膜は、ポリオレフィン又はハロゲン化ポリマーを含む。例示的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン(PB)、ポリイソブチレン(PIB)、並びにエチレン、プロピレン及びブチレンのうちの2つ以上の共重合体が挙げられる。さらなる特定の実施形態では、フィルター材料は、超高分子量ポリエチレン(UPE)を含む。UPE膜などのUPEフィルター材料は、典型的には、約1×10ダルトン(Da)を超える、例えば約1×10~9×10Da、又は1.5×10~9×10Daの範囲の分子量(粘度平均分子量)を有する樹脂から形成される。ポリエチレンなどのポリオレフィン重合体間の架橋は、熱又は架橋化学物質、例えば過酸化物(例えば、ジクミルペルオキシド又はジ-tert-ブチルペルオキシド)、シラン(例えば、トリメトキシビニルシラン)又はアゾエステル化合物(例えば、2,2’-アゾ-ビス(2-アセトキシ-プロパン)の使用によって促進することができる。例示的なハロゲン化ポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンポリマー(FEP)、ポリヘキサフルオロプロピレン及びポリビニリデンフルオリド(PVDF)が含まれる。
【0081】
他の実施形態において、フィルター材料としては、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホンポリアミド、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート又はこれらの組み合わせから選択されるポリマーが挙げられる。
【0082】
別の実施形態では、下部疎水性多孔質フィルター膜は、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド、ポリアリールスルホンなどから調製されたものなどの市販の疎水性膜から選択することができる。
【0083】
典型的には、下部多孔質フィルター膜は非対称である。非対称膜の一例では、膜の一方の面及び領域の細孔サイズは、反対側の面及び領域の細孔サイズよりも大きい。別の例では、膜の反対側の面(及び領域)の細孔サイズがより大きいのに対して、膜の中央領域がいずれかの面よりも小さい細孔サイズを有する非対称構造(例えば、砂時計形状)が存在し得る。他のバージョンでは、微細孔膜は、その厚さにわたって本質的に対称的な孔構造(膜の厚さにわたって実質的に同じ細孔サイズ)を有することができる。
【0084】
上記で言及される一般に「ナイロン」としても知られているポリアミド重合体は、典型的には、ポリマー骨格中に繰り返しアミド基を有する共重合体及び三元重合体を含むと理解される。一般に、ナイロン及びポリアミド樹脂には、ジアミンとジカルボン酸との共重合体が含まれる。
【0085】
本開示の実施において有用なポリアミドは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性である。このような混合物の一実施形態においては、ギ酸の量は約25体積%~約75体積%で変化し、ジクロロメタンの量は約75~約25体積%で変化する。一実施形態において、混合物は、約50体積%のギ酸及び約50体積%のジクロロメタンを含む。一実施形態において、本開示において有用なポリアミドは、一般式-[(CHC(O)NH]-を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド構造中の繰り返し単位の数を表す。この実施形態内には、ナイロン11(CAS番号9012-03-07)として知られる樹脂がある。ナイロン11は、Rilsan(登録商標)Polyamide 11の商標でArkemaから市販されている。ナイロン11は、11-アミノウンデカン酸の重合によって製造することができる。また、この実施形態内には、xが上記式において11であるナイロン12として知られている市販のポリアミドがある。ナイロン12は、それぞれが12個の炭素原子を有するω-アミノラウリン酸又はラウロラクタム単量体から作製することができる(CAS番号24937-16-4)。
【0086】
本開示のある実施形態において、ポリアミドは、一般にナイロン11及びナイロン12と呼ばれるものである。このようなナイロンポリマーは、分子量、密度、弾性率及び融点に関して変化する様々な等級で入手可能である。すべてのこのようなポリアミドは、上記のギ酸/ジクロロメタン混合物中に可溶性であるが、一般に水溶液中に不溶型であると考えられる。このようなポリアミドは、ギ酸/ジクロロメタン混合物中の希薄溶液として利用される。一実施形態において、ポリアミドは、ギ酸とジクロロメタンとの50/50(体積%)混合物中で約1~4重量%の濃度で利用される。
【0087】
本開示の方法及び物品の様々な例において、本開示の膜は、多孔質フィルター膜に含まれ得る。本明細書で使用される場合、「多孔質フィルター膜」は、膜の一方の表面から膜の反対側の表面まで伸びる多孔質(例えば、微細孔質)の相互接続通路を含有する多孔質固体である。通路は、一般に、濾過されている液体が通らなければならない曲がりくねったトンネル又は経路を提供する。この液体中に含有される、細孔よりも大きい任意の粒子は、これらの粒子を含有する流体が微多孔膜を通過するにつれて、微細孔膜への進入が阻止されるか、又は微細孔膜の細孔内に捕捉される(すなわち、ふるい型濾過機構によって除去される)。細孔よりも小さい粒子も、細孔構造上に捕捉又は吸収され、例えば、非ふるい濾過機構によって除去され得る。液体及び場合によっては低下した量の粒子又は溶解した材料が微細孔膜を通過する。
【0088】
様々な態様について本明細書に記載される例示的な多孔質重合体フィルター膜は、細孔サイズ、バブルポイント及び多孔度を含む物理的特徴によって特徴付けることができる。
【0089】
多孔質重合体フィルター膜は、例えば、本明細書に記載されるように、微細孔フィルター膜又は限外フィルター膜と考えられることもあるサイズ(平均細孔サイズ)の細孔を含む、フィルター膜がフィルター膜として機能するのに有効であることを可能にする任意の細孔サイズを有し得る。有用な又は好ましい多孔質膜の例は、約0.001ミクロン~約1又は2ミクロン、例えば0.01~0.8ミクロンの範囲の平均細孔サイズを有することができ、細孔サイズは、除去されるべき不純物の粒子サイズ又は種類、圧力及び圧力降下の要件、並びにフィルターによって処理されている液体の粘度要件を含む1つ以上の要因に基づいて選択される。限外フィルター膜は、0.001ミクロン~約0.05ミクロンの範囲の平均細孔サイズを有することができる。細孔サイズは、多孔質材料の平均細孔サイズとして報告されることが多く、これは、水銀多孔度測定(MP)、走査電子顕微鏡法(SEM)、液体置換(LLDP)又は原子間力顕微鏡法(AFM)などの公知の技術によって測定することができる。
【0090】
バブルポイントも、多孔質膜の公知の特徴である。バブルポイント試験法により、既知の表面張力を有する液体中に多孔質重合体フィルター膜の試料を浸漬し、既知の表面張力を有する液体で湿潤させ、試料の1つの側にガス圧がかけられる。ガス圧を徐々に増加させる。気体が試料を通って流れる最小の圧力は、バブルポイントと呼ばれる。多孔質材料のバブルポイントを決定するために、多孔質材料の試料を、摂氏20~25度(例えば、摂氏22度)の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200(3Mから入手可能)中に浸漬し、エトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200で湿潤させる。圧縮空気を使用することによって試料の一方の側に気体の圧力を加え、気体の圧力を徐々に増加させる。気体が試料を通って流れる最小の圧力は、バブルポイントと呼ばれる。上述の手順を用いて測定される、本明細書に従って有用な又は好ましい多孔質重合体フィルター膜の有用なバブルポイントの例は、約20~約200psiの範囲であり得る。記載されている多孔質ポリマーフィルター層は、多孔質ポリマーフィルター層が本明細書に記載されるように効果的であることを可能にする任意の多孔度を有し得る。例示的な多孔質ポリマーフィルター層は、比較的高い多孔度、例えば少なくとも60、70又は80%の多孔度を有することができる。本明細書で使用される場合、及び多孔質体の技術分野では、多孔質体の「多孔度」(空隙率と呼ばれることもある)は、多孔質体の総体積のパーセントとしての多孔質体内の空隙(すなわち、「空の」)空間の尺度であり、多孔質体の総体積に対する多孔質体の空隙の体積の割合として計算される。0%の多孔度を有する多孔質体は完全に固体である。
【0091】
記載されている多孔質重合体フィルター膜は、任意の有用な厚さ、例えば5から100ミクロン、例えば10又は20から50又は80ミクロンの範囲の厚さを有するシート又は中空糸の形態であり得る。
【0092】
本明細書のフィルター膜は、入力として高純度液体材料を必要とする任意の種類の工業又は生命科学過程において有用であり得る。このような過程の非限定的な例は、マイクロ電子デバイス又は半導体デバイスを作製する過程を含み、その具体例は、半導体フォトリソグラフィーのために使用される液体処理材料(例えば、溶媒又は溶媒含有液体)を濾過する方法である。マイクロ電子デバイス又は半導体デバイスを作製するために使用される処理液又は溶媒中に存在する汚染物質の例には、液体中に溶解した金属イオン、液体中に懸濁した固体粒子状物質、及び液体中に存在するゲル化又は凝固した材料(例えば、フォトリソグラフィー中に生成される)が含まれ得る。
【0093】
フィルター膜は、ふるい機構又は非ふるい機構のいずれかによって、好ましくは組み合わされた非ふるい機構及びふるい機構の両方によって、コーティングされたフィルター膜を通って流される液体から溶解又は懸濁した汚染物質又は不純物を除去するのに有用であり得る。本開示の第2、第3及び第4の態様の場合には、下部の多孔質疎水性フィルター膜自体(本開示の複合フィルター膜への変換前)は、効果的なふるい及び非ふるい濾過特性、並びに所望の流れ特性を示し得る。本開示の複合フィルター膜は、出発物質として利用される下部の疎水性重合体膜と比較して、同等のふるい濾過特性、有用な又は同等の(過度に減少しない)流動特性、及び改善された(例えば、実質的に改善された)非ふるい濾過特性を示すことができる。
【0094】
記載されているフィルター膜の特定の例は、例えば、半導体フォトリソグラフィーの方法において使用される液体溶媒又は他の処理液を濾過するために、半導体又はマイクロ電子製造用途において使用される又は有用である液体化学物質を精製するために使用することができる。記載されているフィルター膜を使用して濾過することができる溶媒のいくつかの特定の非限定的な例としては、n-ブチルアセテート(nBA)、イソプロピルアルコール(IPA)、2-エトキシエチルアセテート(2EEA)、キシレン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソアミル、ウンデカン、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)及びPGMEA(7:3)の混合溶液が挙げられる。記載される例示的なフィルター膜は、水、アミン又はその両方を含有する溶媒、例えば、NHOH、水酸化テトラメチルアンモニア(TMAH)などの塩基及び水性塩基並びに任意に水を含有し得る同等の溶液から金属を除去するのに有効であり得る。いくつかの実施形態において、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)又はNHOHから選択される溶媒を含む液体は、本明細書に記載される膜を有するフィルターを通され、溶媒から金属を除去する。いくつかの実施形態において、溶媒を含有する液体から金属を除去するために、溶媒を含有する液体を膜に通すことは、溶媒を含有する液体中の金属の濃度が低下されることをもたらす。
【0095】
本開示のフィルター膜はまた、フィルター膜の色素結合能力に関して特徴付けることができる。具体的には、荷電した色素を濾過膜の表面に結合させることができる。濾過膜に結合させることができる色素の量は、色素の吸収周波数における膜の測定された吸収読み取り値の差に基づいて、分光法によって定量的に測定することができる。色素結合能力は、負に荷電した色素の使用によって、及び正に荷電した色素の使用によっても評価することができる。
【0096】
さらに、記載されるようなフィルター膜は、フィルター膜を通る液体の流れの流量又は流束によって特徴付けることができる。流量は、フィルター膜がフィルター膜を通る流体の流れを濾過するのに効率的かつ効果的であることを可能にするのに十分に高くなければならない。流量、又は別の考え方をすれば、フィルター膜を通る液体の流れに対する抵抗は、流量又はフロー時間に関して測定することができる。本明細書に記載されるフィルター膜は、好ましくは比較的高いバブルポイントと組み合わせて、比較的低いフロー時間及び優れた濾過性能(例えば、粒子保持率、色素結合能力、又はその両方によって測定される場合)を有することができる。有用な又は好ましいイソプロパノールフロー時間の例は、約20,000秒/500mL未満、例えば約4,000又は2,000秒/500mL未満であり得る。
【0097】
本明細書で報告される膜イソプロパノール(IPA)フロー時間は、500mlのイソプロピルアルコール(IPA)流体が14.2psi及び摂氏21度の温度で13.8cmの有効表面積を有する膜を通過するのに要する時間を測定することによって決定される。
【0098】
ある実施形態において、本明細書に記載される複合膜は、ポリアミドコーティング及び共に反応される架橋剤/単量体コーティングを含有しない同じフィルター膜のフロー時間と概ね等しいか又はそれより長くすることができる。換言すれば、下部の多孔質疎水性フィルター膜から複合膜を作製することは、フィルター膜の流動特性に対して実質的な悪影響を及ぼさず、さらに、フィルター膜の濾過機能、特に、細孔サイズに応じて、例えば、色素結合能力、粒子保持率又はその両方によって測定される、膜の非ふるい濾過機能をなお改善し得る。
【0099】
膜の水フロー時間は、膜を47mmの円板に切断し、水で濡らした後、一定量の水を保持するためのリザーバに取り付けられたフィルターホルダに円板を配置することによって決定することができる。リザーバは圧力調整器に接続されている。14.2psi(ポンド/平方インチ)の差圧下で、膜を通して水を流す。平衡に達した後、500mlの水が膜を通って流れた時間を記録する。
【0100】
ある実施形態において、本開示の複合膜は、ポリアミドコーティング(第2の態様)及び共に反応される架橋剤/荷電したアクリルアミド単量体コーティング(第3の態様)を含有しない同じフィルター膜、又は第4の態様、実施形態IIの複合膜のフロー時間に概ね等しく、及び著しく大きくないようにすることができる。換言すれば、下部の多孔質疎水性フィルター膜から複合膜を作製することは、フィルター膜の流動特性に対して実質的な悪影響を及ぼさず、さらに、フィルター膜の濾過機能、特に、例えば、色素結合能力、粒子保持率又はその両方によって測定される、膜の非ふるい濾過機能をなお改善し得る。あるフィルター膜によれば、本明細書のフィルター膜の測定されたフロー時間は、下部の疎水性多孔質フィルター膜のフロー時間と30%又は20%以下、例えば10%、5、又は3%以下異なる(例えば、上回る)ことができる。
【0101】
記載されているフィルター膜は、濾過システムにおいて使用される多層フィルターアセンブリ又はフィルターカートリッジなどのより大きなフィルター構造内に包含されることができる。フィルター膜が液体化学物質からある量の不純物又は汚染物質を除去するように、フィルター膜を液体化学物質の流路に曝露させて液体化学物質の流れの少なくとも一部がフィルター膜を通過するようにさせるために、濾過システムは、例えば多層フィルターアセンブリの一部として又はフィルターカートリッジの一部として、フィルター膜をフィルターハウジング内に配置する。多層フィルターアセンブリ又はフィルターカートリッジの構造は、フィルター入口から複合膜(フィルター層を含む)を通って及びフィルター出口を通って流体を流れさせ、それによってフィルターを通過するときに複合フィルター膜を通過させるためにフィルターアセンブリ又はフィルターカートリッジ内に複合フィルター膜を支持する様々な追加の材料及び構造の1つ又は複数を含み得る。フィルターアセンブリ又はフィルターカートリッジによって支持されたフィルター膜は、任意の有用な形状、例えば、特に、ひだ付き円筒、円筒状パッド、1つ又は複数のひだなし(平坦な)円筒状シート、ひだ付きシートとすることができる。
【0102】
ひだ付き円筒の形態のフィルター膜を含むフィルター構造の一例は、以下の構成部分:コーティングされたひだ付き円筒状フィルター膜の内側開口部において、コーティングされたひだ付き円筒状フィルター膜を支持する剛性又は半剛性コア;フィルター膜の外側において、コーティングされたひだ付き円筒状フィルター膜の外側を支持又は取り囲む剛性又は半剛性ケージ;コーティングされたひだ付き円筒状フィルター膜の2つの対向する端部のそれぞれに位置する任意選択のエンドピース又は「パック」;入口及び出口を含むフィルターハウジングを含むように作製することができ、これらのいずれもがフィルター構造中に含まれ得るが、必要とされない場合があり得る。フィルターハウジングは、任意の有用な所望されるサイズ、形状及び材料のものであり得、好ましくは適切なポリマー材料から作製することができる。
【0103】
以下の詳細な説明は、異なる図面中の同様の要素に同じ番号が付された図面を参照しながら読まれるべきである。詳細な説明及び図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、例示的な実施形態を示しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。図示された例示的な実施形態は、例示としてのみ意図されている。反対のことが明確に述べられていない限り、任意の例示的な実施形態の選択された特徴は、追加の実施形態に組み込まれ得る。
【0104】
一例として、図1は、他の任意選択の構成要素とともにひだ付き円筒状構成要素10及びエンドピース22から生成されるフィルター構成要素30を示す。円筒状構成要素10は、本明細書に記載されているように、フィルター膜12を含み、ひだが付いている。エンドピース22は、円筒状フィルター構成要素10の一端に取り付けられる(例えば、「詰められる」)。エンドピース22は、好ましくは溶融加工可能なポリマー材料で作ることができる。ひだ付き円筒状構成要素10の内側開口部24にはコア(図示せず)を配置することができ、ひだ付き円筒状構成要素10の外側周囲にはケージ(図示せず)を配置することができる。ひだ付き円筒状構成要素30の第2の端部に、第2のエンドピース(図示せず)を取り付ける(「詰める」)ことができる。次いで、2つの対向する詰め込まれた端部及び任意選択のコア及びケージを有する得られたひだ付き円筒状構成要素30は、入口と出口を含み、入口に入る流体の全量が出口においてフィルターから出る前に必ず濾過膜12を通過しなければならないように構成されたフィルターハウジング内に配置することができる。
【実施例0105】
多孔度測定バブルポイント
多孔度測定バブルポイント試験法は、空気を押して膜の湿潤した細孔に通すために必要とされる圧力を測定する。バブルポイント試験は、膜の細孔サイズを決定するための周知の方法である。多孔質材料のバブルポイントを決定するために、多孔質材料の試料を、摂氏20~25度(例えば、摂氏22度)の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200(3Mから入手可能)中に浸漬し、エトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200で湿潤させる。圧縮空気を使用することによって試料の一方の側に気体の圧力を加え、気体の圧力を徐々に増加させる。気体が試料を通って流れる最小の圧力は、バブルポイントと呼ばれる。
【0106】
本明細書で使用される場合、表面の「表面エネルギー」(表面自由エネルギー)は、接触の2秒以内に表面を湿潤させる最高の表面張力の液体の表面張力に等しいと考えられ(実施例6、表面エネルギー測定を参照されたい。)(「湿潤液体表面張力」試験又は「標準液体」試験とも呼ばれる。)、一般に、表面の相対的な疎水性/親水性に対応する。ある実施形態において、膜は、実施例6に記載されるように、2秒以内に表面を湿潤させる最高の表面張力の液体の表面張力として測定される、約30ダイン/センチメートルを超える表面エネルギーを有する。
【0107】
実施例1:ギ酸とジクロロメタンの混合物中の3%ナイロン11の調製。
以下の方法を用いて、3重量%のナイロン11を含有する混合物を調製した。まず、500mLの≧96%のギ酸を500mLのジクロロメタンにゆっくり添加することによって、1:1の体積比の≧96%のギ酸(Sigma-Aldrich)とジクロロメタン(Sigma-Aldrich)を調製し、溶液を室温で撹拌した。次に、30グラムのナイロン11(Sigma-Aldrich)を970グラムの、ギ酸とジクロロメタンの1:1の体積比の混合物に添加した。得られた混合物を16時間穏やかに撹拌し、ギ酸とジクロロメタンの1:1混合物中の3重量%のナイロン11の均一な溶液を得た。
【0108】
実施例2:ナイロン11でコーティングされたAsymmetric 3nm UPE Membraneの調製
実施例1と同様に、ギ酸とジクロロメタンの1:1混合物中のナイロン11の3重量%溶液を調製した。Asymmetric 3nm UPE Membrane(Entegris)のシートをポリエチレンのシート上に置き、3重量%のナイロン11の過剰溶液を膜上に滴下し、直ちにポリエチレンのシートで覆った。テーブル上に平らに置かれたポリエチレンサンドイッチの上にゴムローラーをしっかりと転がすことによって膜から過剰な溶液を除去した。膜がわずかに透明に変化したことが観察され、膜がコーティング溶液で湿潤され、コーティング溶液を吸収したことを示した。ポリエチレンサンドイッチから膜シートを取り出し、枠内に制約し、室温で乾燥させた。ナイロン11でのコーティング前に、Asymmetric 3nm UPE Membraneは厚さ95umであり、4080秒/500mLのIPAフロー時間、92psiのエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200平均バブルポイント、30ダイン/cmの表面エネルギー及び0.0μg/cmのポンソーS色素結合能力を有していた。ナイロン11でのコーティング後に得られた膜は厚さ95umであり、5730秒/500mLのIPAフロー時間、100psiのHFE平均バブルポイント、48ダイン/cmの表面エネルギー、9.1μg/cmのポンソーS色素結合能力を有していた。フロー時間、バブルポイント、表面エネルギー及びポンソーS色素結合能力の増加は、膜がナイロン11でコーティングされていることを示す。
【0109】
実施例3:ナイロン12でコーティングされたAsymmetric 3nm UPE Membraneの調製
実施例1と同様に、ギ酸とジクロロメタンの1:1混合物中のナイロン12の3重量%溶液を調製した。Asymmetric 3nm UPE Membrane(Entegris)のシートをポリエチレンのシート上に置き、3重量%のナイロン12の過剰溶液を膜上に滴下し、直ちにポリエチレンのシートで覆った。テーブル上に平らに置かれたポリエチレンサンドイッチの上にゴムローラーをしっかりと転がすことによって膜から過剰な溶液を除去した。膜がわずかに透明に変化したことが観察され、膜がコーティング溶液で湿潤され、コーティング溶液を吸収したことを示した。ポリエチレンサンドイッチから膜シートを取り出し、枠内に制約し、室温で乾燥させた。ナイロン12でのコーティング前に、Asymmetric 3nm UPE Membraneは厚さ95umであり、4080秒/500mLのIPAフロー時間、92psiのエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200平均バブルポイント、30ダイン/cmの表面エネルギー及び0.0μg/cmのポンソーS色素結合能力を有していた。ナイロン12でのコーティング後に得られた膜は厚さ95umであり、4330秒/500mLのIPAフロー時間、98psiのエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200平均バブルポイント、45ダイン/cmの表面エネルギー、4.9μg/cmのポンソーS色素結合能力を有していた。フロー時間、バブルポイント、表面エネルギー及びポンソーS色素結合能力の増加は、膜がナイロン12でコーティングされていることを示す。
【0110】
実施例4:ナイロン6でコーティングされたUPEと比較したナイロン12でコーティングされたUPEに対するコーティングの安定性
実施例2と同様にして、ナイロン12でコーティングされた3nmのUPE膜を調製した。ナイロンがナイロン6(Sigma-Aldrich)であり、溶媒が≧96%のギ酸のみからなることを除いて、実施例2と同様にナイロン6でコーティングされた3nmのUPE膜を調製した。コーティングの酸安定性を評価するために、得られた膜を24時間回転させることによって、得られた膜を≧96%のギ酸に曝露した(where exposed)。96%以上のギ酸に24時間曝露した後、安定したpHが得られるまで、処理された膜を脱イオン水で洗い流した。フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によってコーティングの安定性を評価し、初期の及びギ酸曝露された後のナイロン/UPEピーク比を比較した。ナイロン6でコーティングされたUPE Membraneは、FTIR分析によって判定したところ、そのナイロンコーティングの90.2%を失ったのに対して、ナイロン12でコーティングされたUPE膜は、そのナイロン12コーティングの0.0%を失った。このデータは、ナイロン12でコーティングされたUPE Membraneが、ナイロン6でコーティングされたUPE Membraneと比較して、酸曝露に対する改善された安定性を示すことを示唆している。
【0111】
実施例5:ギ酸及びジクロロメタン溶媒系からのナイロン11膜の調製
実施例1と同様に、ギ酸とジクロロメタンの1:1混合物中のナイロン11の6重量%溶液を調製した。400umの厚さに設定したフィルムアプリケータを使用して、溶液をガラスプレート上に流し拡げた。流し拡げたナイロン11/ギ酸/ジクロロメタンフィルムを室温でエバポレートさせた。これにより、ガラスプレートから容易に分離されるナイロン11膜の白いシートが得られた。得られたナイロン11膜は、17.2psiのIPA平均バブルポイント及び550秒/500mLのIPAフロー時間を有すると決定された。
【0112】
実施例6-表面エネルギー測定
液体の表面張力が膜の表面自由エネルギーより小さい場合、液体は多孔質重合体膜を湿潤させる。本開示において、多孔質膜は、膜が一連の不活性な(標準の)液体内の最も高い表面張力の液体と接触して配置されたときに、液体によって濡れ、膜は外圧の付加なしに2秒以内に液体を自発的に毛管作用によって吸い上げる。
【0113】
代表的な例では、一連の不活性な(標準の)液体は、メタノールと水を異なる質量比で混合することによって調製した。得られた液体の表面張力を図4に示す(Lange’s Handbook of Chemistry 11 edition中に公表されている表面張力データを使用してプロットした)。
【0114】
本開示の態様
第1の態様において、本開示は、複合多孔質フィルター膜であって、
その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材を含み、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体である、
複合多孔質フィルター膜を提供する。
【0115】
第2の態様において、本開示は、ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、第1の態様の膜を提供する。
【0116】
第3の態様において、本開示は、ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、第1又は第2の態様の膜を提供する。
【0117】
第4の態様において、本開示は、前記膜が以下の特性:
(i)約20~約100ダイン/cmの表面エネルギー;
(ii)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;
(iii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント;並びに
(iv)約1と約30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、最初の3つの態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0118】
第5の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、最初の4つの態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0119】
第6の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、最初の5つの態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0120】
第7の態様において、本開示は、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜を提供する。
【0121】
第8の態様において、本開示は、ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、第7の態様の膜を提供する。
【0122】
第9の態様において、本開示は、ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、第7から第8の態様のいずれかの膜を提供する。
【0123】
第10の態様において、本開示は、前記膜が以下の特性:
14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間及び
約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント
を有する、最初のから第9の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0124】
第11の態様において、本開示は、前記膜が以下の特性:
約1と約100μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約100μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、第7から第10の態様のいずれかの膜を提供する。
【0125】
第12の態様において、本開示は、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜であって、膜が、その後、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物でコーティングされている、多孔質フィルター膜を提供する。
【0126】
第13の態様において、本開示は、ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、第12の態様の膜を提供する。
【0127】
第14の態様において、本開示は、ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、第12又は第13の態様の膜を提供する。
【0128】
第15の態様において、本開示は、前記膜が以下の特性:
(i)約30~約100ダイン/cmの表面エネルギー;
(ii)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;
(iii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント;並びに
(iv)約1と30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、第12から第14の態様の膜を提供する。
【0129】
第16の態様において、本開示は、架橋剤が、メチレンビス(アクリルアミド)、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアメタクリレート、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及びエチレングリコールジビニルエーテルから選択される、第12から第15の態様のいずれかの膜を提供する。
【0130】
第17の態様において、本開示は、単量体が、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド及びアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、第12から第15の態様のいずれかの膜を提供する。
【0131】
第18の態様において、本開示は、単量体が、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、第12から第15の態様のいずれかの膜を提供する。
【0132】
第19の態様において、本開示は、単量体が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、7-[4-(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、アクリル酸エチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-アセトキシフェネチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート及びフェニルビニルスルホンから選択される、第12から第15の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0133】
第20の態様において、本開示は、第1のコーティングとしてポリアミドコーティングがその上にコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜であって、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、前記ポリアミドでコーティングされた膜は、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物である第2のコーティングをその上に有する、多孔質疎水性重合体フィルター膜を提供する。
【0134】
第21の態様において、本開示は、ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、第20の態様の膜を提供する。
【0135】
第22の態様において、本開示は、ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、第20の態様の膜を提供する。
【0136】
第23の態様において、本開示は、前記膜が以下の特性:
(i)約30~約100ダイン/cmの表面エネルギー;
(ii)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;
(iii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント;並びに
(iv)約1と約30μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、第20又は第21の態様の膜を提供する。
【0137】
第24の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、第20、第21、第22又は第23の態様の膜を提供する。
【0138】
第25の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、第20~第24の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0139】
第26の態様において、本開示は、架橋剤が、メチレンビス(アクリルアミド)、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアメタクリレート、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及びエチレングリコールジビニルエーテルから選択される、第20~第25の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0140】
第27の態様において、本開示は、単量体が、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド及びアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、第20~第26の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0141】
第28の態様において、本開示は、単量体が、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、第20から第26の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0142】
第29の態様において、本開示は、単量体が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、7-[4-(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、アクリル酸エチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-アセトキシフェネチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート及びフェニルビニルスルホンから選択される、第20から第26の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0143】
第30の態様において、本開示は、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体を含む多孔質フィルター膜であって、前記膜は、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基又はこれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基、及びペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基をグラフトされている、多孔質フィルター膜を提供する。
【0144】
第31の態様において、本開示は、その上にコーティングをコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜を備える多孔質複合フィルター膜であって、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、膜は、その後、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基又はこれらの組み合わせから選択されるペンダント親水性基、及びペンダント親水性基とは異なるペンダントイオン性基をグラフトされる、多孔質複合フィルター膜を提供する。
【0145】
第32の態様において、本開示は、ポリアミド重合体が、式-[(CHC(O)NH]-の繰り返し単位構造を有し、式中、xは約8~12の整数であり、nはポリアミド重合体中の繰り返し単位の数を表す、第30又は第31の態様の膜を提供する。
【0146】
第33の態様において、本開示は、ポリアミド重合体がナイロン11及びナイロン12から選択される、第30又は第31の態様の膜を提供する。
【0147】
第34の態様において、本開示は、以下の特性:
a.約30~約100ダイン/cmの表面エネルギー;
b.14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;
c.約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイント;並びに
d.約1と約300μg/cmの間のポンソーS色素結合能及び約1と約300μg/cmの間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)
を有する、第30又は第31の態様の膜を提供する。
【0148】
第35の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、第31の態様の膜を提供する。
【0149】
第36の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、第31の態様の膜を提供する。
【0150】
第37の態様において、本開示は、第1~第6の態様のいずれか1つの複合多孔質フィルター膜を調製するための方法であって、
a.ポリアミド溶液を形成するために、ポリアミド重合体をギ酸とジクロロメタンの混合物中に溶解させることと、
b.ポリアミドでコーティングされた膜を提供するために、多孔質疎水性重合体フィルター材を前記ポリアミド溶液と接触させることと、
c.前記ポリアミドでコーティングされた膜を、水を含む水溶液中に浸漬することと、
d.C~Cアルコール及び水で、前記ポリアミドでコーティングされた膜をすすぐことと、
e.前記ポリアミドでコーティングされた膜を乾燥させることと
を含む、方法を提供する。
【0151】
第38の態様において、本開示は、ポリアミドがナイロン11及びナイロン12から選択される、第37の態様の方法を提供する。
【0152】
第39の態様において、本開示は、第12~第21の態様のいずれか1つの複合多孔質フィルター膜を調製するための方法であって、
i.ポリアミド溶液を形成するために、親水性ポリアミド重合体をギ酸とジクロロメタンの混合物中に溶解させることと、
ii.ポリアミドでコーティングされた膜を提供するために、多孔質疎水性重合体フィルター材を前記ポリアミド溶液と接触させることと、
iii.水、少なくとも1つの架橋剤、少なくとも1つの単量体及び少なくとも1つの光開始剤を含む水性浴溶液中に前記ポリアミドでコーティングされた膜を浸漬することと、
iv.得られた膜を前記浴から取り出し、紫外線照射を当てることと、その後、
v.C~Cアルコール及び水で、前記ポリアミドでコーティングされた膜をすすぐことと、
vi.前記複合多孔質フィルター膜を乾燥させることと、
を含む、方法を提供する。
【0153】
第40の態様において、本開示は、ポリアミドがナイロン11及びナイロン12から選択される、第39の態様の方法を提供する。
【0154】
第41の態様において、本開示は、第31の態様の複合膜を調製するための方法であって、
光開始剤をポリアミド重合体の表面に配置するために、第1の態様の膜を、溶媒及び光開始剤を含む光開始剤溶液と接触させることと;
表面に光開始剤を配置するために表面を光開始剤溶液と接触させた後に、表面を、荷電した単量体を含む単量体溶液と接触させることであって、荷電した単量体は、イオン性基を含む、接触させることと;
イオン性基をポリアミド重合体にグラフトさせるために、表面を電磁放射線に曝露することと
を含む、方法を提供する。
【0155】
第42の態様において、本開示は、第30の態様の複合多孔質フィルター膜を調製するための方法であって、
光開始剤をポリアミド重合体の表面に配置するために、第7の態様の膜を、溶媒及び光開始剤を含む光開始剤溶液と接触させることと;
表面に光開始剤を配置するために表面を光開始剤溶液と接触させた後に、表面を、荷電した単量体を含む単量体溶液と接触させることであって、荷電した単量体は、イオン性基を含む、接触させることと;
イオン性基をポリアミド重合体にグラフトさせるために、表面を電磁放射線に曝露することと
を含む、方法を提供する。
【0156】
第43の態様において、本開示は、第12の態様の膜を調製するための方法であって、
i.水、少なくとも1つの架橋剤、少なくとも1つの単量体、及び少なくとも1つの光開始剤を含む水性浴溶液中に第7の態様の膜を浸漬することと、
ii.得られた膜を前記浴から取り出し、紫外線照射を当てることと、その後、
iii.C~Cアルコール及び水で前記膜をすすぎ、前記膜を乾燥させることと
を含む、方法を提供する。
【0157】
第44の態様において、本開示は、液体から不純物を除去するための方法であって、液体を第1~第36の態様のいずれか1つの膜と接触させることを含む、方法を提供する。
【0158】
第45の態様において、本開示は、第1~第6の態様のいずれか1つの膜を備えるフィルターを提供する。
【0159】
第46の態様において、本開示は、第7~第11の態様のいずれか1つの膜を備えるフィルターを提供する。
【0160】
第47の態様において、本開示は、第12~第21の態様のいずれか1つの膜を備えるフィルターを提供する。
【0161】
第48の態様において、本開示は、第22~第29の態様のいずれか1つの膜を備えるフィルターを提供する。
【0162】
第49の態様において、本開示は、第30の態様の膜を備えるフィルターを提供する。
【0163】
第50の態様において、本開示は、第31の態様の膜を備えるフィルターを提供する。
【0164】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲の範囲内でさらに他の実施形態が作製及び使用され得ることを容易に理解するであろう。本文書によってカバーされる本開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲を超えることなく、細部に変更を加え得る。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現されている言語で定義される。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2025-01-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合多孔質フィルター膜であって、
その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材を含み、前記コーティングは、ギ酸とジクロロメタンの混合物中に可溶性であるポリアミド重合体である、
複合多孔質フィルター膜。
【外国語明細書】