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2025-68302非水二次電池電極用バインダー、非水二次電池電極用バインダー組成物、非水二次電池電極および非水二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025068302
(43)【公開日】2025-04-28
(54)【発明の名称】非水二次電池電極用バインダー、非水二次電池電極用バインダー組成物、非水二次電池電極および非水二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20250421BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20250421BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178098
(22)【出願日】2023-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今里 安紀子
(72)【発明者】
【氏名】小池 隆明
(72)【発明者】
【氏名】酒井 禎之
(72)【発明者】
【氏名】張 愛玲
(72)【発明者】
【氏名】藤川 大輔
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA05
5H050AA06
5H050AA07
5H050AA14
5H050AA18
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA22
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA11
5H050EA28
5H050FA04
5H050GA10
5H050GA28
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】
耐電解液性に優れる非水二次電池電極用バインダーを提供すること。
【解決手段】
重合体(A1)を含有する非水二次電池電極用バインダーであり、重合体(A1)は、エチレン性不飽和単量体混合物の重合体であり、前記混合物は、(メタ)アクリルアミドと、25℃におけるオクタノール/水分配係数の対数(Log Kow)が1.0~3.0である非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)とを含み、前記非水二次電池電極用バインダーからなる膜に対して、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの25℃における体積比が2:3からなる混合液を着弾させた際、着弾1秒後における前記混合液0.5μLの接触角が25℃で5°~40°である、非水二次電池電極用バインダー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(A1)を含有する非水二次電池電極用バインダーであり、重合体(A1)は、エチレン性不飽和単量体混合物の重合体であり、前記混合物は、(メタ)アクリルアミドと、25℃におけるオクタノール/水分配係数の対数(Log Kow)が1.0~3.0である非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)とを含み、前記非水二次電池電極用バインダーからなる膜に対して、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの25℃における体積比が2:3からなる混合液を着弾させた際、着弾1秒後における前記混合液0.5μLの接触角が25℃で5°~40°である、非水二次電池電極用バインダー。
【請求項2】
前記混合物は、エチレン性不飽和単量体混合物の全質量を基準として、(メタ)アクリルアミド60~85質量%および25℃におけるオクタノール/水分配係数の対数(Log Kow)が1.0~3.0である非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)15~40質量%を含む、請求項1記載の非水二次電池電極用バインダー。
【請求項3】
前記混合物は、更に、不飽和二重結合を1個以上有する反応性界面活性剤(a-2)を0.05~2質量%含む、請求項2記載の非水二次電池電極用バインダー。
(ただし、前記(a-2)は、前記(a-1)を除く。)
【請求項4】
重合体(A1)は、酸価が100mgKOH/g以下である、請求項1記載の非水二次電池電極用バインダー。
【請求項5】
重合体(A1)は、150℃における貯蔵弾性率が1.0×106Pa以上である、請求項1記載の非水二次電池電極用バインダー。
【請求項6】
請求項1~5いずれかに記載の非水二次電池電極用バインダーと媒体とを含む非水二次電池電極用バインダー組成物であって、非水二次電池電極用バインダー中に含まれる重合体(A1)の濃度が、組成物中で5質量%である際、波長400nmにおける透過率が70%未満である、非水二次電池電極用バインダー組成物。
【請求項7】
請求項1~5いずれかに記載の非水二次電池電極用バインダーを含む膜を有する非水二次電池電極。
【請求項8】
請求項7記載の非水二次電池電極を具備してなる、非水二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の非水二次電池の電極の合材層の形成に使用することができる非水二次電池電極用バインダーに関する。また、本発明は、かかる非水二次電池電極用バインダーを含むバインダー組成物、非水二次電池電極および非水二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水系二次電池は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能であることから、幅広い用途に使用されている。なかでもリチウムイオン二次電池(以下、「LIB」と略記することがある)は、高出力を得ることができるため、ノートパソコン、スマートフォン等のモバイル用途や自動車用途で使用されている。
【0003】
二次電池の電極は、電極活物質(以下、「活物質」と略記することがある)、導電助剤、更にはこれらを集電体に結着するためのバインダーより構成される。二次電池電極用バインダーは、従来、正極、負極共にポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂が多く用いられてきた。しかし、二次電池の充放電時に電極が膨張および収縮(以下、「膨潤収縮」と総称することがある)を繰り返すため、それに伴って活物質や導電助剤の電極からの脱落が生じると電池寿命(充放電サイクル回数)の低下につながる。そのため二次電池電極用バインダーには、電極の膨潤収縮に耐え得るクッション性および集電体への密着性が要求される。しかし、フッ素樹脂では電極の膨潤収縮に追随し得るクッション性、集電体への密着性共に不十分であった。また、フッ素樹脂は、N-メチルピロリドン等の特定の溶剤にしか溶解しないといった使用上の制約があることも問題であった。
【0004】
近年、スチレンブタジエンゴム(以下「SBR」と略記することがある)などの水分散性バインダーを用いることでフッ素樹脂の欠点であったクッション性・密着性が改善されたという報告がされている(特許文献1)。しかし、SBRは耐酸化性に乏しく、一般的に使用される電解液に対する膨潤が大きいため、イオンの透過が妨げられて内部抵抗が大きくなるといった懸念がある。
【0005】
ところで最近、電池の高容量化が求められており、活物質として高いエネルギー密度が期待できるシリコン系活物質の使用が検討されている。シリコン系活物質は、従来の黒鉛系活物質よりも膨潤収縮が大きい。従来の黒鉛系活物質の膨潤収縮には高い柔軟性で追従できていた特許文献1のSBRをバインダーに用いても、シリコン系活物質の膨潤収縮には追従しきれずに活物質同士の導電パスが断絶し、内部抵抗が大きくなり電池性能が低下する恐れがある。
【0006】
そこで最近では、活物質の膨潤収縮に追随し得るポリカルボン酸系やポリアクリルアミド系の水性樹脂の検討が行われてきた(特許文献2~4)。しかし、電極用バインダーに特許文献2~4の水性樹脂を使用した場合、活物質の膨潤収縮抑制の効果は期待できるが、電解液に対する耐性(本明細書では「耐電解液性」という)に乏しく電池に用いた場合の内部抵抗が高くなり電池特性に劣る、また低温から高温まで幅広い温度範囲で電池性能を発現することは難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020/096287号
【特許文献2】国際公開第2015/064464号
【特許文献3】国際公開第2021/060737号
【特許文献4】特開2023-049937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、耐電解液性に優れる非水二次電池電極用バインダーを提供することである。また、非水二次電池電極用バインダーを含む溶液安定性と塗工性に優れる非水二次電池電極用バインダー組成物を提供することである。また、密着性、柔軟性に優れた非水二次電池電極を提供することである。さらに、レート特性、サイクル特性に加えて高温および低温特性が良好な非水二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、重合体(A1)を含有する非水二次電池電極用バインダーであり、重合体(A1)は、エチレン性不飽和単量体混合物の重合体であり、上記混合物は、(メタ)アクリルアミドと、25℃におけるオクタノール/水分配係数の対数(Log Kow)が1.0~3.0である非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)とを含み、上記非水二次電池電極用バインダーからなる膜に対して、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの25℃における体積比が2:3からなる混合液を着弾させた際、着弾1秒後における前記混合液0.5μLの接触角が25℃で5°~40°である、非水二次電池電極用バインダーに関する
【0010】
また、本発明は、上記混合物は、エチレン性不飽和単量体混合物の全質量を基準として、(メタ)アクリルアミド60~85質量%および25℃におけるオクタノール/水分配係数の対数(Log Kow)が1.0~3.0である非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)15~40質量%を含む、上記非水二次電池電極用バインダーに関する。
【0011】
また、本発明は、上記混合物は、更に、不飽和二重結合を1個以上有する反応性界面活性剤(a-2)を0.05~2質量%含む、上記非水二次電池電極用バインダーに関する。
(ただし、上記(a-2)は、上記(a-1)を除く。)
【0012】
また、本発明は、重合体(A1)は、酸価が100mgKOH/g以下である、上記非水二次電池電極用バインダー
に関する。
【0013】
また、本発明は、重合体(A1)は、150℃における貯蔵弾性率が1.0×106Pa以上である、上記非水二次電池電極用バインダーに関する。
【0014】
また、本発明は、上記非水二次電池電極用バインダーと媒体とを含む非水二次電池電極用バインダー組成物であって、非水二次電池電極用バインダー中に含まれる重合体(A1)の濃度が、組成物中で5質量%である際、波長400nmにおける透過率が70%未満である、非水二次電池電極用バインダー組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、上記非水二次電池電極用バインダーを含む膜を有する非水二次電池電極に関する。
【0016】
また、本発明は、上記非水二次電池電極を具備してなる、非水二次電池に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、耐電解液性に優れる非水二次電池電極用バインダーを提供することができるようになった。また、非水二次電池電極用バインダーを含む溶液安定性と塗工性に優れる非水二次電池電極用バインダー組成物を提供することができるようになった。また、密着性、柔軟性に優れた非水二次電池電極を提供することができるようになった。さらに、レート特性、サイクル特性に加えて高温および低温特性が良好な非水二次電池を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書で使用する用語や記号について説明する。本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。「(メタ)アクリルアミド」、「(メタ)アクリレート」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリルアミドまたはメタクリルアミド」、「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。エチレン性不飽和単量体とは、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体を意味する。
【0019】
また、本明細書では、25℃におけるオクタノール/水分配係数の対数(Log Kow)が1.0~3.0である非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)、不飽和二重結合を1個以上有する反応性界面活性剤(a-2)、その他エチレン性不飽和単量体(a-3)、非水二次電池電極用バインダー、非水二次電池電極用バインダー組成物、非水二次電池電極、非水二次電池を、それぞれ単量体(a-1)、反応性界面活性剤(a-2)、単量体(a-3)、バインダー、バインダー組成物、電極、電池と略記することがある。なお、本明細書中に記載される各種成分は、特に注釈がない限り、一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0020】
非水二次電池とは、電解液に水を使用しない二次電池であり、例えば、リチウムイオン二次電池(LIB)、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池等が挙げられる。本明細書では、LIBを非水二次電池の例として説明を行うが、LIB以外の非水二次電池に、本発明の非水二次電池電極用バインダー、非水二次電池電極用バインダー組成物、非水二次電池電極を適用できることはいうまでもない。
【0021】
《非水二次電池電極用バインダー》
非水二次電池電極用バインダーは、重合体(A1)を含有し、バインダーからなる膜に対して、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの25℃における体積比が2:3からなる混合液を着弾させた際、着弾1秒後における前記混合液0.5μLの接触角が25℃で5°~40°であるという特徴を有する。重合体(A1)と媒体とを含む非水二次電池バインダー組成物は、更に電極活物質を配合することにより、合材スラリーが得られる。この合材スラリーを集電体に塗布することにより、集電体上に合材層を具備する非水系二次電池電極を製造することができる。尚、本明細書において、合材層とは、合材スラリーを塗布等によって層状にして乾燥させた層のことを意味する。
【0022】
<重合体(A1)>
重合体(A1)は、エチレン性不飽和単量体混合物の重合体であり、前記混合物は、少なくとも、(メタ)アクリルアミドと、単量体(a-1)とを含む。また、前記混合物は、反応性界面活性剤(a-2)を0.05~2.0質量%含むことが好ましく、必要に応じて、単量体(a-3)を含んでもよい。ただし、反応性界面活性剤(a-2)は、単量体(a-1)を除く単量体である。
【0023】
[(メタ)アクリルアミド]
(メタ)アクリルアミドは、エチレン性不飽和単量体混合物の全質量を基準として、60~85質量%含有することが好ましく、65~80質量%含有することがより好ましい。
上記の範囲で含有することにより、バインダーの耐電解液性を大幅に向上することができる。また、合材スラリーとした場合、活物質との親和性が良好で溶液安定性に優れる。さらに、活物質の膨潤、収縮が抑えられ、レート特性、サイクル特性といった電池特性に優れる。
【0024】
[非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)]
単量体(a-1)は、25℃におけるオクタノール/水分配係数の対数(Log Kow)が1.0~3.0であり、好ましくは1.2~2.5である。 Log Kowが1.0以上であることで、重合体(A1)が水性媒体中で分散系となり、合材スラリーとした場合、優れた塗工性が得られる。また電極上に塗布した場合、レート特性、サイクル特性といった電池性能が向上する。さらに、Log Kowが3.0以下であることで、集電体への密着性にも優れる。これは、25℃におけるオクタノール/水分配係数の対数(Log Kow)が1.0~3.0であり、好ましくは1.2~2.5であることにより、重合体(A1)が高分子量化した場合においても高粘度化が抑制され、活物質同士の隙間を埋めることがなく、(メタ)アクリルアミドとの重合性が良好となるためと考えられる。
【0025】
なお、非イオン性エチレン性不飽和単量体とは、水性媒体中にあるときに、荷電された官能性を有さないエチレン性不飽和単量体であり、例えば、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基等を有さないエチレン性不飽和単量体である。
【0026】
単量体(a-1)の含有率は、エチレン性不飽和単量体混合物の全質量を基準として、15~40質量%含有することが好ましく、20~35質量%含有することがより好ましい。単量体(a-1)が15質量%以上であることで電極の柔軟性に優れ、電池のサイクル特性や低温特性が良好となる。また、重合体(A1)が高分子量化した場合においても高粘度化が抑制され、合材スラリーとした場合も塗工性に優れる。さらに、単量体(a-1)が40質量%以下であることで、集電体への密着性が良好となり、電池のレート特性、サイクル特性にも優れる。
【0027】
単量体(a-1)の具体例としては、
エチルアクリレート(Log Kow=1.16)、メチルメタクリレート(Log Kow=1.27)、プロピルアクリレート(Log Kow=1.67)、エチルメタクリレート(Log Kow=1.78)、t-ブチルアクリレート(Log Kow=2.06)、イソブチルアクリレート(Log Kow=2.09)、ブチルアクリレート(Log Kow=2.23)、プロピルメタクリレート(Log Kow=2.28)、t-ブチルメタクリレート(Log Kow=2.67)、ブチルメタクリレート(Log Kow=2.84)等の直鎖または分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
ベンジルアクリレート(Log Kow=2.32)、フェノキシエチルアクリレート(Log Kow=2.44)、ベンジルメタクリレート(Log Kow=2.91)等の芳香族系エチレン性不飽和単量体;
シクロヘキシルアクリレート(Log Kow=2.62)等のシクロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
ジシクロペンテニルアクリレート(Log Kow=2.98)等のシクロアルケニル含有エチレン性不飽和単量体;
メトキシエチルメタクリレート等のアルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
エチレングリコールジメタクリレート(Log Kow=1.90)、アリルメタクリレート(Log Kow=2.10)、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(Log Kow=2.98)、ジアリルフタレート(Log Kow=3.00)等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Log Kow=2.42)等のアルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体;
エポキシシクロヘキシルアクリレート(Log Kow=1.78)等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
トリフルオロエチルアクリレート(Log Kow=1.57)、トリフルオロエチルメタクリレート(Log Kow=1.95)等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
等が挙げられる。
【0028】
単量体(a-1)は、架橋性官能基を有さないことが好ましく、すなわち架橋性官能基を有する単量体ではないことが好ましい。 架橋性官能基とは、重合体の側鎖に、架橋構造を与える官能基であって、グリシジル基、アルコキシシリル基、またはエチレン性不飽和基等が挙げられる。架橋性官能基を有する単量体としては、グリシジル基を有する単量体、アルコキシシリル基を有する単量体および二つ以上のエチレン性不飽和結合基を有する単量体等が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリルアミドとの水性媒体中での重合安定性と重合体(A)の分散性が良好である点から、単量体(a-1)としては、直鎖または分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体が好ましく、メチルメタクリレートおよび/またはブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0030】
オクタノール/水分配係数(Log Kow)は、下記の(式1)により表され、ある化合物Xが水相と油相(オクタノール)、どちらに分配されやすいかを表す指標として用いられる。各エチレン性不飽和単量体のLog Kowは、フラスコ振盪法やHPLC法などの実験からも算出できるが、本明細書では、ハンセン溶解度パラメータソフトHSPiP(ver.5.2.05)のYMB法(物性推算機能)により、エチレン性不飽和単量体の構造式をSmiles記法に変換して入力して算出した値とした。
(式1)
Log Kow=Log(オクタノール相における化合物Xの濃度/水相における化合物Xの濃度)
【0031】
[不飽和二重結合を1個以上有する反応性界面活性剤(a-2)]
反応性界面活性剤(a-2)とは、(メタ)アクリルアミドおよび非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)と重合可能な界面活性剤を指す。
反応性界面活性剤(a-2)としては、例えば、
主骨格がスルホコハク酸エステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルフェニルエステル、(メタ)アクリレート硫酸エステル、およびリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;
主骨格がアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルフェニルエステル等のノニオン性界面活性剤;
が挙げられる。
中でも、(メタ)アクリルアミドとの水性媒体中での重合安定性と重合体(A)の分散性が良好である点から、アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0032】
反応性界面活性剤(a-2)の含有率は、エチレン性不飽和単量体混合物の全質量を基準として、0.05~2質量%含有することが好ましく、0.07~1質量%含有することがより好ましい。反応性界面活性剤(a-2)が0.05質量%以上であることで、重合体(A)の分散性が良好であり、合材スラリーとした場合に溶液安定性や塗工性に優れる。さらに、反応性界面活性剤(a-2)が2質量%以下であることで、集電体への密着性が良好でレート特性、サイクル特性に優れる。一態様として、(メタ)アクリルアミド、単量体(a-1)および反応性界面活性剤(a-2)の合計量100質量%中、反応性界面活性剤(a-2)0.05~2質量%含有することが好ましく、0.07~1質量%含有することがより好ましい。
【0033】
[その他エチレン性不飽和単量体(a-3)]
単量体(a-3)とは、(メタ)アクリルアミド、単量体(a-1)および反応性界面活性剤(a-2)以外のエチレン性不飽和単量体であって、(メタ)アクリルアミド、非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)および反応性界面活性剤(a-2)と重合可能なエチレン性不飽和単量体を指す。
【0034】
単量体(a-3)としては、例えば、
メチルアクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量;
フェノキシエチルメタクリレート、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族系エチレン性不飽和単量体;
シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
ジシクロペンテニルメタクリレート等のシクロアルケニル含有エチレン性不飽和単量体;
メトキシエチルアクリレート等のアルコキシ基含有エチレン性不飽和単量;
ジビニルベンゼン、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、等の水酸基含有エチレン性不飽和単量体;
ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
が挙げられる。
【0035】
中でも、(メタ)アクリルアミドと単量体(a-1)との水性媒体中での重合安定性と、活物質と配合した合材スラリーの溶液安定性が良好な点から、単量体(a-3)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリル酸が好ましい。単量体(a-3)を併用する場合、単量体(a-3)の含有率は、エチレン性不飽和単量体全質量(100質量%)を基準として、10質量%以下であることが好ましい。
【0036】
重合体(A1)を含む非水二次電池電極用バインダーからなる膜に対して、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの25℃における体積比が2:3からなる混合液を着弾させた際、着弾1秒後における前記混合液0.5μLの接触角は、25℃で5°~40°であり、好ましくは5°~30°である。接触角が上記数値範囲内であることで、非水二次電池電極用バインダーの耐電解液性が向上し、電極への電解液の浸み込みが良好で、電池に使用した際の内部抵抗が抑えられ、レート特性、サイクル特性が良好となる。
【0037】
重合体(A1)の酸価は、100mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以下であることがより好ましい。上記の範囲であることにより、合材スラリーとした場合の溶液安定性がより良好となる。
【0038】
重合体(A1)の150℃における貯蔵弾性率は、1.0×106Pa以上であることが好ましく、1.0×107Pa以上であることがより好ましい。また、1.0×1010Pa未満であることが好ましい。貯蔵弾性率が上記の範囲であることにより、電極に使用した際の耐熱性に優れ、電池に使用した際のサイクル特性、高温特性が良好となる。
【0039】
重合体(A1)は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの25℃における体積比が2:3である混合液に60℃72時間浸漬した際の膨潤度が2倍未満であることが好ましく、より好ましくは1.5倍未満である。膨潤度が2倍未満であることにより、バインダーの膨潤によりリチウムイオンの導電性が妨げられることがなく、電池のレート特性、サイクル特性に優れる。
【0040】
[重合体(A1)の製造方法]
重合体(A1)を製造するためのエチレン性不飽和単量体の重合の方法は、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などのいずれの方法を用いてもよい。
反応性界面活性剤(a-2)は、重合体(A1)を重合する際にエチレン性不飽和単量体混合物とともに用いることが好ましい。重合時に用いることにより、水性媒体中での(メタ)アクリルアミドと単量体(a-1)との重合安定性に優れる。
バインダー組成物中の重合体(A1)の固形分濃度は特に制限されないが、7質量%~50質量%であることが好ましい。
【0041】
重合反応に用いられるラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性重合開始剤や水性重合開始剤を使用することができる。
ラジカル重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体の混合物100質量部に対して、0.1~1.0質量部を用いることが好ましく、0.1~0.4質量部であることが更に好ましい。上記の範囲であることにより、バインダー組成物の粘度を適切な範囲内に調整でき、耐熱性、密着性と塗工性に優れる。
【0042】
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-シクロヘキサン-1-カルボニトリル等のアゾビス化合物;等を挙げることができる。
【0043】
重合においては水性重合開始剤を使用することが好ましく、水性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドのような従来既知のものを好適に使用することができる。
【0044】
重合に際して、重合開始剤と共に還元剤を併用してもよい。還元剤を併用することにより、乳化重合速度の促進や、低温での重合が容易になる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート等の金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素が挙げられる。
これら還元剤は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対し、0.05~4質量部を用いることが好ましい。
【0045】
エチレン性不飽和単量体を重合する際、必要に応じて、緩衝剤、連鎖移動剤、塩基性化合物等を使用することができる。
緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等
が挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ノニルメルカプタン、t-ノニルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、t-デシルメルカプタン、n-ウンデシルメルカプタン、t-ウンデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-トリデシルメルカプタン、t-トリデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、n-へプタデシルメルカプタン、t-ヘプタデシルメルカプタン、t-ヘキサデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン等が挙げられる。
塩基性化合物は中和に使用される化合物である。この塩基性化合物としては、例えば、
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミンなどのアルキルアミン、2 - ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルコールアミン、モルホリン、アンモニア等が挙げられる。
【0046】
また、合材スラリーや電極の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、不飽和二重結合を有さない非反応性界面活性剤を使用することができる。非反応性界面活性剤のイオン種としては、アニオン、カチオン、ノニオンが挙げられるが、アニオンおよびノニオンが好ましい。
【0047】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0048】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等が挙げられる。
【0049】
《非水二次電池電極用バインダー組成物》
非水二次電池バインダー組成物は、重合体(A1)と媒体とを含む。本発明の非水二次電池電極用バインダー組成物は、重合体(A1)の濃度5質量%での波長400nmにおける透過率が70%未満であり、好ましくは60%未満である。上記の範囲であることにより、バインダーの媒体中への分散性が充分確保され、合材スラリーとした場合に活物質間の隙間を埋めることがなく、電極のイオン透過性が良好となる。これにより内部抵抗が抑えられ、レート特性やサイクル特性といった電池性能が向上する。また、バインダーを高分子量化した場合においても高粘度化が抑制され、合材スラリーとした場合の塗工性がより良好となる。
【0050】
なお、透過率は、光源を回折格子により測定波長に分光し、試料に入射した光(l0)のうち試料を透過した光(l)の割合により求めることができ、以下の(式2)により表される。
(式2)
透過率(%)=(l/l0)×100
【0051】
非水二次電池電極用バインダー組成物は、固形分濃度15質量%の条件における粘度が1,500mPa・s以上20,000mPa・s未満であることが好ましく、2,500mPa・s以上10,000mPa・s未満であるであることがより好ましい。上記の数値範囲内であることにより、集電体への密着性を発現するのに充分な分子量を有しており、活物質と配合した場合の溶液安定性と塗工性にも優れる。すなわち、本発明のバインダー組成物は、分散状態であることにより、重合体(A1)同士の相互作用を抑えられ、高分子量でありながら、塗工性等のハンドリングに優れたものとすることができる。粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数20rpm、回転時間60秒で測定して求めることができる。
【0052】
<媒体>
媒体としては、水性の分散媒または水性の溶媒が挙げられる。媒体としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、水性の溶剤を使用することもできる。水性の溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロゾルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられる。
【0053】
<任意成分>
本発明のバインダー組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で他の任意の成分として、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、架橋剤、分散剤、結着剤等、各種添加剤等を含んでもよい。
【0054】
本発明の非水二次電池電極用バインダー組成物は、非水二次電池の負極、及び正極に使用することができる。その他、エネルギーデバイス、すなわち、キャパシタ、太陽電池等にも使用することができる。
【0055】
《非水二次電池電極》
本発明の非水二次電池電極は、電池用バインダー組成物に電極活物質を配合した合材スラリーを集電体に塗布して乾燥することにより製造することができる。本発明の非水二次電池電極は、本発明の非水二次電池電極用バインダーを含む膜を有する。上記膜中の電極活物質100質量部に対してバインダーを、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部含む。
【0056】
<電極活物質>
正極活物質は、特に限定されないが、例えば、LIBの場合にはリチウムイオンを可逆的にドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物および金属硫化物等の金属化合物であることが好ましい。例えば、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiXMn24またはLiXMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiXNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LiXCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiXNi1-yCoy2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiXMnyCo1-y2)、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物( 例えばLiXNiyCozMn1-y-z2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLiXMn2-yNiy4)等のリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物粉末(例えばLiXFePO4、LiXFe1-yMnyPO4、LiXCoPO4など)、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、バナジウム酸化物(例えばV25、V613)、酸化チタン等の遷移金属酸化物粉末、硫酸鉄(Fe2(SO43)、TiS2、およびFeS等の遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。ただし、x、y、zは、数であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<y+z<1である。これら正極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0057】
負極活物質は、特に限定されないが、例えば、LIBの場合にはリチウムイオンを可逆的にドーピングまたはインターカレーション可能な、金属Liおよびその合金、スズ合金、シリコン合金負極、LiTiO、LiFe、LiFe、LiWO等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、樹脂焼成炭素材料を用いることができる。ただし、xは数であり、0<x<1である。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0058】
合材スラリーは、電極活物質と併用して導電助剤を含むことが好ましい。導電助剤としては、例えば、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどを挙げることができる。カーボンとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン類を挙げることができる。導電助剤の使用量は、電極活物質100質量部に対して0.03~10質量部が好ましい。
【0059】
<集電体>
電極の形成に用いられる集電体の材質および形状は特に限定されず、適宜選択することができる。集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の導電性金属または合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平面状の箔が用いられるが、表面を粗面化した集電体、穴あき箔状の集電体、メッシュ状の集電体も使用できる。集電体の厚みは、0.5~30μm程度が好ましい。
【0060】
非水系二次電池電極を形成するには、合材スラリーを集電体に塗布、加熱し、乾燥する。合材スラリーの塗布方法としては、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法など任意のコーターヘッドを用いることができ、乾燥機としては、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できる。
【0061】
《非水二次電池》
本発明の非水二次電池は、本発明の非水二次電池電極を具備する。非水二次電池に用いられる電解質としては、イオンが移動可能な従来公知の様々なものを使用することができる。例えば、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、又はLiBPh(ただし、Phはフェニル基である)等のリチウム塩を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。電解質は非水系の溶媒に溶解して、電解液として使用することが好ましい。
【0062】
非水系の溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びγ-オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいが、2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
また、電解質をポリマーマトリクスに保持されたゲルとした高分子電解質として使用することも好ましい。ポリマーマトリクスとしては、例えば、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリル樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0064】
非水電解質二次電池は、セパレータを具備することが好ましい。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施した不織布が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0065】
本実施形態の非水二次電池の構造は、特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを備え、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【0066】
上記の部材を使用した非水二次電池は、安全性、電池特性に優れている。本発明の非水二次電池は、産業用、車載用、モバイル用に使用することができる。
【実施例0067】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表し、表中の数値は、固形分質量であり、空欄は使用していないことを表す。
【0068】
<非水二次電池電極用バインダー分散液の製造>
[実施例X-1]
アクリルアミド70部、メタクリルアミド2部、メチルメタクリレート14部、ブチルアクリレート7部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5部、2-エチルヘキシルアクリレート2部、20%アデカリアソープSR-10水溶液1.0部(固形分として0.2部)、水90部を混合して混合液を得た。攪拌機、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水450部、上記混合液30部を仕込んだ。次いで、反応容器の内温を80℃に昇温して窒素置換を充分行った後、開始剤として10%過硫酸アンモニウム水溶液1.8部(固形分として0.18部)を添加して反応を開始した。内温を80℃に保ちながら、残りの混合液を60分間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間80℃で反応させて、固形分測定にて転化率が98%を超えたことを確認後、30℃になるまで冷却した。水を添加して固形分が15%になるように調製して、重合体(A1-1)を含む非水二次電池電極用バインダー分散液を得た。なお、固形分は、150℃20分間の焼き付け残分により求めた。
【0069】
[実施例X-2~X-20、比較例X-1~X-4]
表1に示す配合組成、および配合量(質量部)とした以外は、実施例X-1と同様の方法により、重合体(A1-2~24)を含む非水二次電池電極用バインダー分散液を得た。なお、実施例X-2、4、5、17、18および比較例X-1、4については、反応完了後、25%アンモニア水を重合体のカルボキシ基に対して等モルになるように添加して中和した。得られた非水二次電池電極用バインダーの物性値と評価結果を、下記の方法で求めた。結果を表1に示す。
【0070】
<酸価>
バインダーの酸価は、乾燥させたバインダー1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。JIS K2501に規定されている方法に従い、自動滴定装置(HIRANUMA社製「COM-A19」)を用いて水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて電位差滴定を行い算出した。
【0071】
<接触角>
ガラス基材上にバインダー分散液を乾燥質量換算で50g/m2になるようにアプリケータで塗布し、40℃24時間の条件で乾燥させ、バインダーからなる塗膜を作製した。上記塗膜の塗工面に対し、自動接触角測定装置(協和界面社製DM-501)を用いて25℃でエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの25℃における体積比が2:3からなる混合液を着弾させ、着弾1秒後における接触角を測定した。
A:接触角が5°~30°。
B:接触角30°より大きく40°以下。
C:接触角が5°未満または40°を超える。
【0072】
<透過率>
得られたバインダー分散液を、水で固形分濃度5%になるように調製し、光路長1cm石英セルに入れ、分光光度計(日本分光社製「V-770」)を用いて、波長400nmにおける透過率を測定した。比較対象は水とした。
A:透過率が60%未満。
B:透過率が60%以上70%未満。
C:透過率が70%以上。
【0073】
<貯蔵弾性率>
得られたバインダー分散液を40℃72時間乾燥し、厚さ約0.5mmのフィルムを作製した。得られたフィルムを幅5mm×長さ20mmの短冊状に切り出して試料とし、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-200」)を用いて、150℃における貯蔵弾性率を測定した。測定条件は以下のとおりである。
測定モード:引張
周波数:10Hz
歪:0.01%
昇温条件:10℃/分
A:貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上。
B:貯蔵弾性率が1.0×106以上1.0×107Pa未満。
C:貯蔵弾性率が1.0×106Pa未満。
【0074】
<粘度>
得られた固形分濃度15%のバインダー分散液を、B型粘度計(東機産業製「TVB-10」)にて粘度を測定した(温度:25℃、スピンドル回転時間:60秒間、スピンドル回転数:20rpm)。
A:粘度が2,000以上、7,000mPa・s未満。
B :粘度が1,000以上、2,000mPa・s未満。
B’:粘度が7,000以上、15,000mPa・s未満。
C :粘度が1,000mPa・s未満
C’:粘度が15,000mPa・s以上。
【0075】
《バインダー分散液の評価》
<耐電解液性>
耐電解液性は、重合体の電解液への溶解・膨潤のしやすさであり、下記方法で求められる膨潤度により評価した。膨潤度が小さいほど、耐電解液性が良好であるといえる。
得られたバインダー分散液を40℃72時間乾燥し、厚さ約1mmのフィルムを作製した。続いて、このフィルムを縦10mm×横10mmの大きさに切り出して試料とし、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを25℃における体積比2:3の割合で混合した混合溶媒に60℃72時間浸漬した。浸漬前後での膜の膨潤度を下記の通り算出した。
膨潤度(倍):=(浸漬後の試料の質量)/(浸漬前の試料の質量)
A:膨潤度が1.5倍未満。
B:膨潤度が1.5倍以上、2倍未満。
C:膨潤度が2倍以上。
【0076】
なお、表中の略語は以下の通りである。また、エチレン性不飽和単量体のLog Kowの値は、ハンセン溶解度パラメータソフトHSPiP(ver.5.2.05)のYMB法(物性推算機能)により、エチレン性不飽和単量体の構造式をSmiles記法に変換して入力して算出した。
<非イオン性エチレン性不飽和単量体(a-1)>
EA:エチルアクリレート(Log Kow 1.16)
MMA:メチルメタクリレート(Log Kow 1.27)
EMA:エチルメタクリレート(Log Kow 1.78)
BA:ブチルアクリレート(Log Kow 2.23)
BzMA:ベンジルメタクリレート(Log Kow 2.91)
<反応性界面活性剤(a-2)>
SR-10:アデカリアソープSR-10(ADEKA社製アニオン性界面活性剤)
PD-104:ラテムルPD-104(花王社製アニオン性界面活性剤)
KH-10:アクアロンKH-10(第一工業製薬社製アニオン性界面活性剤)
<単量体(a-3)>
AA:アクリル酸
2HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
St:スチレン
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
<非反応性界面活性剤>
2FG:エマール2FG(花王社製)
【0077】
【表1】
【0078】
【表1】
【0079】
<負極用合材スラリー(1)の作製>
[実施例y-1]
容量150cm3のプラスチック容器中で、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)HS-100、デンカ製)0.5部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製カルボキシメチルセルロース#1190、不揮発分100%、以下「CMC」と略記する)1部、水98.4部を混合した後、自転・公転ミキサー(シンキー社製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。その後、負極活物質として人造黒鉛(日本黒鉛工業社製CGB-20、不揮発分100%、以下「人造黒鉛A」と略記する)97部を添加し、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。その後、バインダーとして実施例X-1で得られた重合体(A1-1)を含む非水二次電池電極用バインダー分散液10部を加えて、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、非水二次電池負極用合材スラリーを得た。
【0080】
[実施例y-2~20、比較例y-1~4]
表2に示す配合組成に変更した以外は、実施例y-1と同様の方法により、非水二次電池負極用合材スラリーを得た。
【0081】
<負極用合材スラリー(2)の作製>
[実施例y-21]
容量150cm3のプラスチック容器中で、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)HS-100、デンカ製)0.5部、増粘剤としてCMC1部、水98.4部を混合した後、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。その後、負極活物質として人造黒鉛A87部およびシリコン系活物質(大阪チタニウムテクノロジー社製SILICON MONOOXIDE SiO 1.3C 5μm、不揮発分100%、以下「シリコンA」と略記する)10部を添加し、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。その後、バインダーとして実施例X-1で得られた重合体(A1-1)を含む非水二次電池電極用バインダー分散液10部を加えて、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、非水二次電池負極用合材スラリーを得た。
【0082】
[実施例y-22~44、比較例y-5~8]
表2に示す配合組成に変更した以外は、実施例y-21と同様の方法により、非水二次電池負極用合材スラリーを得た。
【0083】
<負極の作製>
[実施例Y-1]
実施例y-1で得られた負極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、厚さ20μmの銅箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間乾燥し、合材層を形成した。その後、合材層をロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、負極を得た。なお、合材層の単位当たりの目付量は10mg/cm2であり、圧延処理後の合材層の密度は1.6g/cm3であった。
【0084】
[実施例Y-2~44、比較例Y-1~8]
表2に示す負極用合材スラリーに変更した以外は、実施例Y-1と同様の方法により、非水二次電池負極を得た。
【0085】
《合材スラリーの評価》
<溶液安定性>
合材スラリーを50℃で保管し、凝集、沈殿または分離の有無を目視で観察した。
[評価基準]
◎:保管開始から2週間以上、凝集、沈殿および分離のいずれも観察されなかった。極めて良好。
○:保管開始から1週間以上2週間未満の間に、凝集、沈殿または分離のいずれかが観察された。良好。
△:保管開始から4日間以上1週間未満の間に、凝集、沈殿または分離のいずれかが観察された。使用可。
×:保管開始から3日間以内に、凝集、沈殿または分離のいずれかが観察された。使用不可。
【0086】
<塗工性>
スラリー合材を銅箔上に塗工する際の塗工性を目視で観察した。
[評価基準]
◎:塗膜の膜厚が均等であり、はじきもない。極めて良好。
○:塗工した面積の5%未満にむらやはじきが認められる。良好。
△:塗工した面積の5%以上、10%未満にむらやはじきがある。使用可。
×:塗工した面積の10%以上にむらやはじきがある。使用不可。
【0087】
《負極の評価》
<密着性>
密着性は、得られた負極を用いて180度剥離試験法により評価した。負極の塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本切り出した。卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ製)をステンレス板上に貼り付け、作製した負極の合材層側を両面テープのもう一方の面に密着させ試験用試料とした。次いで、試験用試料を長方形の短辺が上下にくるように垂直に固定し、一定速度(50mm/分)で銅箔の末端を下方から上方に引っ張りながら剥離し、このときの応力の平均値を剥離強度とした。
判定基準
◎:0.5N/cm以上。極めて良好。
○:0.3N/cm以上0.5N/cm未満。良好。
△:0.1N/cm以上0.3N/cm未満。使用可。
×:0.1N/cm未満。使用不可。
【0088】
<柔軟性>
次の方法により負極の柔軟性を評価した。得られた負極を幅10mm×縦50mmの大きさに切断し、試料とした。該試料を集電体側と接するように直径1.0mmの金属棒に巻きつけた。そして、その状態で合材層の表面状態を目視で観察し、下記の評価基準に従って柔軟性を評価した。
◎:合材層の表面に変化が観察されなかった。極めて良好。
○:合材層の表面の一部に変化が観察された。良好。
△:合材層の表面の一部分にひび割れが観察された。使用可。
×:合材層の表面の全体にひび割れが観察された。使用不可。
【0089】
<正極用合材スラリーの作製>
[実施例y-45]
容量150cm3のプラスチック容器中で、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)HS-100、デンカ製)0.5部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製カルボキシメチルセルロース#1190、不揮発分100%、以下「CMC」と略記する)1部、水32.5部を混合した後、自転・公転ミキサー(シンキー社製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。その後、正極活物質としてBASF社製リン酸鉄リチウム HED(商標)LFP-400、不揮発分100%、以下「LFP」と略記する)97部を添加し、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。その後、バインダーとして実施例X-1で得られた重合体(A1-1)を含む非水二次電池電極用バインダー分散液10部を加えて、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、非水二次電池正極用合材スラリーを得た。
【0090】
[実施例y-46、47、比較例y-9~11]
表2に示す材料および配合量に変更した以外は、実施例y-45と同様の方法により、非水二次電池正極用合材スラリーを得た。
【0091】
<正極の作製>
[実施例Y-45]
実施例y-45で得られた正極用合材スラリーを、アプリケーターを用いて、厚さ20μmのアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間乾燥し、合材層を形成した。その後、合材層をロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、正極を得た。なお、合材層の単位当たりの目付量が20mg/cm2であり、圧延処理後の合材層の密度は2.1g/cm3であった。
【0092】
[実施例Y-46、47、比較例Y-9~11]
表2に示す正極用合材スラリーに変更した以外は、実施例Y-41と同様の方法により、非水二次電池正極を得た。
【0093】
《正極の評価》
<密着性>
負極における密着性と同様にして密着性の評価を行った。ただし、判定基準は、負極の場合と異なり、下記基準に従った。
判定基準
◎:1N/cm以上。極めて良好。
○:0.5N/cm以上1N/cm未満。良好。
△:0.3N/cm以上0.5N/cm未満。使用可。
×:0.3N/cm未満。使用不可。
【0094】
<柔軟性>
負極における柔軟性と同様にして柔軟性の評価を行った。
【0095】
【表2】
【0096】
【表2】
【0097】
【表2】
【0098】
(標準負極の作製)
容量150cm3のプラスチック容器中で、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)HS-100、デンカ製)0.5部、CMC1部と、水98.4部とを混合した後、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。さらに負極活物質として人造黒鉛A87部およびシリコンA10部添加し、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。続いてバインダーとしてSBR(JSR社製TRD2001)を3.1部加えて、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、標準負極用合材組成物を得た。
【0099】
得られた標準負極用合材組成物を、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にアプリケーターを用いて塗工した後、電気オーブン中で80℃±5℃で25分間乾燥して電極の単位面積当たりの目付量が10mg/cm2となるように調整した。さらにロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が1.6g/cm3である標準負極を作製した。
【0100】
(標準正極の作製)
容量150cm3のプラスチック容器中で、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)HS-100、デンカ製)0.5部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製カルボキシメチルセルロース#1190、不揮発分100%、以下「CMC」と略記する)1部、水32.5部を混合した後、自転・公転ミキサー(シンキー社製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。その後、正極活物質としてBASF社製リン酸鉄リチウム HED(商標)LFP-400、不揮発分100%、以下「LFP」と略記する)97部を添加し、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。その後、バインダーとしてPTFE(ダイキン社製ポリテトラフルオロエチレン ポリフロン PTFE D-210C、不揮発分60質量%、以下「PTFE」と略記する)2.5部を加えて、上記ミキサーを用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、非水二次電池正極用合材スラリーを得た。
【0101】
得られた標準正極用合材スラリーを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にアプリケーターを用いて塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間乾燥して電極の単位面積当たりの目付量が20mg/cm2となるように調整した。さらにロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が2.1g/cm3である標準正極を作製した。
【0102】
(二次電池の作製)
[実施例Z-1]
表3に記載した負極および正極を使用して、各々50mm×45mm、45mm×40mに打ち抜き、その間に挿入されるセパレータ(多孔質ポリプロプレンフィルム(セルガード社製 #2400))をアルミ製ラミネート袋に挿入し、電気オーブン中、70℃で1時間乾燥した。その後、アルゴンガスで満たされたグローブボックス内で、電解液を2mL注入した後、アルミ製ラミネートを封口してラミネート型非水二次電池を作製した。尚、電解液としては、エチレンカーボネート48部、ジエチルカーボネート52部およびビニレンカーボネート1部からなる混合液を溶媒とするLiPF6の1M溶液を用いた。
【0103】
[実施例Z-2~47、比較例Z-1~11]
表3に示す構成に変更した以外は、実施例Z-1と同様の方法により、非水二次電池を得た。
【0104】
《電池の評価》
(レート特性)
得られた二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電電流10mA(0.2C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流1mA(0.02C))を行った後、放電電流10mA(0.2C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。この操作を3回繰り返した後、充電電流10mA(0.2C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電( カットオフ電流(1mA(0.02C))を行い、放電電流0.2Cおよび3Cで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、それぞれ放電容量を求めた。レート特性は0.2C放電容量と3C放電容量の比、以下の式1に基づいて求めた。
(式1) レート特性=3C放電容量/3回目の0.2C放電容量×100(%)

判定基準
◎:レート特性が80%以上。極めて良好。
○:レート特性が70%以上80%未満。良好。
△:レート特性が60%以上70%未満。使用可。
×:レート特性が60%未満。使用不可。
【0105】
(サイクル特性)
得られた二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電電流25mA(0.5C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流2.5mA(0.05C))を行った後、放電電流25mA(0.5C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。この操作を200回繰り返した。サイクル特性は25℃における3回目の0.5C放電容量と200回目の0.5C放電容量の比、以下の式2に基づいて求めた。
(式2) サイクル特性=3回目の0.5C放電容量/200回目の0.5C放電容量×100(%)

判定基準
◎:サイクル特性が85%以上である。極めて良好。
○:サイクル特性が80%以上、85%未満である。良好。
△:サイクル特性が75%以上、80%未満である。使用可。
×:サイクル特性が75%未満である。使用不可。
【0106】
(高温特性)
得られた二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電電流25mA(0.5C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流2.5mA(0.05C))を行った後、放電電流25mA(0.5C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。この操作を10回繰り返した後、充電電流25mA(0.5C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流2.5mA(0.05C))を行った。その後、電池を70℃の恒温室内に72時間静置した後、25℃の恒温室内に1時間静置し、放電電流100mA(2.0C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。高温特性は25℃における10回目の0.5C放電容量と、11回目の2.0C放電容量の比(以下の式3)に基づいて求めた。
(式3) 高温特性=2.0C放電容量/10回目の0.5C放電容量×100(%)

高温特性は、下記の四段階で評価した。
◎:高温特性が60%以上。極めて良好。
○:高温特性が55%以上60%未満。良好。
△:高温特性が50%以上55%未満。使用可。
×:高温特性が50%未満。使用不可。
【0107】
(低温特性)
得られた二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工製、SM-8)を用いて充放電測定を行った。充電電流25mA(0.5C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流2.5mA(0.05C))を行った後、放電電流25mA(0.5C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。この操作を10回繰り返した後、充電電流25mA(0.5C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流2.5mA(0.05C))を行った。その後、電池を-10℃の恒温室内に1時間静置し、放電電流100mA(2.0C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。低温特性は25℃における10回目の0.5C放電容量と、11回目の2.0C放電容量の比、以下の式4に基づいて求めた。
(式4) 低温特性=2.0C放電容量/10回目の0.5C放電容量×100(%)

低温特性は、下記の四段階で評価した。
◎:低温特性が70%以上。極めて良好。
○:低温特性が65%以上70%未満。良好。
△:低温特性が60%以上65%未満。使用可。
×:低温特性が60%未満。使用不可。
【0108】
表に示すように、本発明の非水二次電池電極用バインダーを用いた非水二次電池電極用バインダー樹脂組成物は、溶液安定性と塗工性に優れ、更にその樹脂組成物から形成される合材層を備えた電極は、柔軟性、密着性に非常に優れており、このような非水二次電池電極を備えることで、レート特性、サイクル特性、高温特性、低温特性が良好な非水二次電池が得られることが確認できた。
【0109】
【表3】
【0110】
【表3】
【0111】
【表3】