IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製粉株式会社の特許一覧

特開2025-69523トリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025069523
(43)【公開日】2025-05-01
(54)【発明の名称】トリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20250423BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20250423BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20250423BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20250423BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/222
A61P25/20
A23L2/52
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179289
(22)【出願日】2023-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千尋
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD07
4B018MD52
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF02
4B117LC04
4B117LG01
4B117LK06
4B117LP01
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB04
4C206DB57
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA05
(57)【要約】
【課題】トリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物を提供すること。
【解決手段】トリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物である。
また、これを使用した、睡眠の質を改善することを目的とする機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のトリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物を使用した、睡眠の質を改善することを目的とする機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンA2A受容体は全身に分布しているGタンパク質共役型の受容体で脳内の睡眠中枢において睡眠の制御に深く関わっていることが知られている。
このアデノシンA2A受容体を活性化すれば深い睡眠であるノンレム睡眠を誘導し睡眠の質を改善することができる。
例えば、アデノシンA2A受容体アゴニストであるCGS21680は動物への投与によりノンレム睡眠を増加させることが知られている (例えば非特許文献1、2参照)。
アデノシンA2A受容体を活性化させる天然成分としては、これまでに清酒酵母がアデノシンA2A受容体の活性化を介してヒトのノンレム睡眠を増やし睡眠の質を改善することが報告されている(例えば特許文献1、非特許文献3、4参照)。
【0003】
トリアセチルレスベラトロールは、皮膚に塗布した場合に美白作用を有し(例えば特許文献2参照)、経口摂取した場合には強い抗酸化能により放射線からの保護作用があることが知られている(例えば非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-82641号公報
【特許文献2】特表2016-506925号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Satoh S, et al. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 1996 Jun 11;93(12):5980-4. DOI:10.1073/pnas.93.12.5980.
【非特許文献2】Korkutata M, et al. Neuropharmacology. 2019 Jan;144:122-132. DOI:10.1016/ j.neuropharm.2018.10.022.
【非特許文献3】Nakamura Y, et al. Journal of sleep research. 2016 Dec;25(6):746-753. DOI:10.1111/jsr.12434.
【非特許文献4】Monoi N, et al. Journal of sleep research. 2016 Feb;25(1):116-23. DOI:10.1111/jsr.12336.
【非特許文献5】Koide K, et al. ACS Medicinal Chemistry Letters. 2011 Jan 25;2(4):270-274. DOI: 10.1021/ml100159p.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アデノシンA2A受容体を活性化する物質、及び、これを使用した、睡眠の質を改善することを目的とする機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、トリアセチルレスベラトロールがアデノシンA2A受容体を活性化し、これにより睡眠の質を改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、トリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物である。
また、これを使用した、睡眠の質を改善することを目的とする機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物は、動物試験でトリアセチルレスベラトロールを摂取させた場合、特筆すべき有害事象が報告されておらず本発明の使用量では安全であると考えられる。
本発明によりノンレム睡眠を増加させ睡眠の質を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトリアセチルレスベラトロールは、化学式1で示され、ブドウの果皮や種子等に含まれるレスベラトロールを、たとえばピリジン存在下で無水酢酸と反応させ、3つのヒドロキシ基をアセチル化することにより、製造することができる。
トリアセチルレスベラトロールは経口摂取された場合、腸管で吸収され一部はレスベラトロールに代謝されるが残りは血液を介して全身を循環する。
【0010】
【化1】
【0011】
<トリアセチルレスベラトロールの入手方法>
トリアセチルレスベラトロールは、前記のとおり、レスベラトロールの3つのヒドロキシ基をアセチル化することで得られる。
レスベラトロールはブドウの果皮や種子等に含まれており、エタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトン等を使用した溶媒抽出等の方法で抽出した後に加水分解し、カラムクロマトグラフィー等で精製して得ることができる。
また、トリアセチルレスベラトロールは市販されており本発明では市販されているトリアセチルレスベラトロールも使用することができる。
【0012】
<トリアセチルレスベラトロールの使用方法>
トリアセチルレスベラトロールは、例えば、機能性表示食品、サプリメント、特定保健用食品に配合することができる。
機能性表示食品や特定保健用食品とする場合の食品の例として、麺類、飯類、パン類、洋菓子類、和菓子類、ガム類、ジュース、酒類等を挙げることができる。
本発明のトリアセチルレスベラトロールをアデノシンA2A受容体活性化作用の有効成分として含有する組成物の経口投与量は1日あたりのヒトのトリアセチルレスベラトロール摂取量として、通常1mg~1000mg/日である。
【実施例0013】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<アデノシンA2A受容体活性評価系の構築>
アデノシンA2A受容体活性評価のため以下のレポーターアッセイを構築した。
アデノシンA2A受容体は活性化すると細胞内Gsタンパク質と相互作用し、アデニル酸シクラーゼを活性化させることでcAMPを産生する。
cAMPシグナルを検出することでアデノシンA2A受容体の活性化を評価することができる。
cAMPシグナルの検出は、以下のとおり ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの発光量を測定して行うことができる。
(1)HEK293細胞中に、CRE(cAMP-response element)の下流にホタルルシフェラーゼをコードするプラスミド(商品名:pGL4.29 プロメガ株式会社製)およびウミシイタケルシフェラーゼ発現ベクター(商品名:pF9A CMV hRluc-neo Flexi(登録商標) Vector プロメガ株式会社製)、Barnaseの配列を除去)を導入した。
遺伝子の導入にはトランスフェクション試薬(商品名:FuGENE(登録商標) HD Transfection Reagent プロメガ株式会社製)を使用した。
(2)96wellplateに前記(1)で得られた細胞をDMEM培地に5×10個/well播種した。
(3)23時間後にDMSOに溶解したZM241385を下記試料1~試料4に示す濃度になるよう添加した。
(4)前記(3)の1時間後、前記(2)の培地を除去し10%FBS含有DMEM培地に交換しDMSOに溶解させたNECAを下記試料1~試料4に示す濃度になるよう添加した。
(5)前記(4)の培地交換から5時間後に培地を除去し、Dual-Glo(登録商標) Luciferase Assay System(プロメガ株式会社)を用いてホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの発光強度を測定した。
(6)ウミシイタケルシフェラーゼの発光強度を基準として、これに対するホタルの発光強度を比較し比率を求めた。
(7)前記(6)で得られた比率を何も添加しない場合(試料1)の比率が1となるように換算し相対発光量を求めた。
【0014】
*NECA(5’-N-Ethylcarboxamidoadenosine )は、アデノシン受容体全般のアゴニストであり、アデノシンA2A受容体に高い親和性を示す。
*ZM241385は、アデノシンA2A受容体の選択的アンタゴニストである。
【0015】
試料1は、NECA及びZM241385をともに添加しなかった。
試料2は、NECAを培地中100nMの濃度になるように添加しZM241385を添加しなかった。
試料3は、NECAを添加せず、ZM241385を培地中10μMの濃度になるように添加した。
試料4は、NECAを培地中100nMの濃度になるように添加しZM241385を培地中10μMの濃度になるように添加した。
【0016】
その結果、試料1の相対発光量は、1.00、試料2の相対発光量は、12.17、試料3の相対発光量は1.03、試料4の相対発光量は、1.14となった。
アデノシンA2A受容体のアゴニストであるNECAはcAMPシグナルを活性化し、またアデノシンA2A受容体に選択的なアンタゴニストZM241385によりcAMPシグナルの活性化が抑制されており本評価系でアデノシンA2A受容体の活性化を評価できることが確認できた。
【0017】
<トリアセチルレスベラトロールのアデノシンA2A受容体活性評価>
前記レポーターアッセイにおいて、NECA培地中濃度100nMをトリアセチルレスベラトロール培地中濃度10μMに変更した以外は、同様にしてレポーターアッセイを行った。
試料5は、トリアセチルレスベラトロール及びZM241385をともに添加しなかった。
試料6は、トリアセチルレスベラトロールを培地中10μMの濃度になるように添加しZM241385を添加しなかった。
試料7は、トリアセチルレスベラトロールを培地中10μMの濃度になるように添加しZM241385を培地中10μMの濃度で添加した。
【0018】
その結果、資料5の相対発光量は、1.00、試料6の相対発光量は、2.42、試料7の相対発光量は1.23となり、トリアセチルレスベラトロールがアデノシンA2A受容体を活性化していることが確認できた。
【0019】
[実施例1 飲料]
果糖ブドウ糖液糖30g、乳化剤0.5g、トリアセチルレスベラトロールを1質量%含む組成物1g、香料適量、精製水60gをミキサーによって常法により混合し、飲料を製造した。