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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025075517
(43)【公開日】2025-05-15
(54)【発明の名称】滑剤供給装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20250508BHJP
【FI】
G03G21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186741
(22)【出願日】2023-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 邦章
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕行
(72)【発明者】
【氏名】向林 祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
【テーマコード(参考)】
2H134
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134HD01
2H134HD06
2H134HD17
2H134KB13
2H134KF03
2H134KG08
2H134KH15
2H134LA01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、滑剤の消費速度の低下を防止して、好適に滑剤を供給できること。
【解決手段】ブラシを介して像担持体に滑剤を供給する滑剤供給装置は、弾性変形により座屈状態で配置され、前記座屈状態から自然状態へ復元する復元力で前記滑剤を前記ブラシに押圧する弾性部材を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシを介して像担持体に滑剤を供給する滑剤供給装置であって、
弾性変形により座屈状態で配置され、前記座屈状態から自然状態へ復元する復元力で前記滑剤を前記ブラシに押圧する弾性部材を有する、
滑剤供給装置。
【請求項2】
前記弾性部材は引張ばねであり、座屈可能なコイル部を有する、
請求項1記載の滑剤供給装置。
【請求項3】
前記コイル部の両端から夫々伸びる複数のアーム部を有する、
請求項2記載の滑剤供給装置。
【請求項4】
前記滑剤と前記弾性部材の間に配置され、前記滑剤を保持する保持部材を有し、
前記弾性部材は、前記滑剤の減少により復元した際に、前記保持部材が前記ブラシから離間する長さを有する、
請求項1記載の滑剤供給装置。
【請求項5】
前記ブラシを駆動する駆動部と、
前記駆動部のトルクを測定する測定部と、
測定した前記トルクから滑剤残量を検知し、前記トルクが所定の値を超えたときに滑剤残量のニアエンプティ、あるいはエンプティを判定する判定部と、を有する、
請求項1記載の滑剤供給装置。
【請求項6】
前記弾性部材の姿勢を規制する規制部を有する、
請求項1記載の滑剤供給装置。
【請求項7】
前記滑剤の減少に伴い前記弾性部材が座屈した状態から座屈していない元の状態に変移する過程で、前記規制部は、前記弾性部材の座屈方向を一定方向に規制する、
請求項6記載の滑剤供給装置。
【請求項8】
前記弾性部材は前記滑剤の長手方向に沿って座屈する、
請求項1記載の滑剤供給装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記滑剤の長手方向に対して、前記滑剤の両端部で夫々内側に向けて座屈して取り付けられた、
請求項8記載の滑剤供給装置。
【請求項10】
前記弾性部材は、前記コイル部の直径Φ、アーム部の長さLaとしたとき、0.5≦La/Φ≦2.0となる、
ことを特徴とする請求項3記載の滑剤供給装置。
【請求項11】
前記弾性部材において、前記コイル部の直径Φ、アーム部の長さLaとしたとき、1.0≦La/Φ ≦1.5となること、
を特徴とする請求項10記載の滑剤供給装置。
【請求項12】
コイル部の上端面と下端面のなす角度を座屈角度θとしたとき、最も座屈した状態での座屈角度θを130°≦θ≦200°としたこと、
を特徴とする請求項1記載の滑剤供給装置。
【請求項13】
最も座屈した状態での座屈角度θを、150°≦θ≦180°としたことを特徴とする請求項12記載の滑剤供給装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項の滑剤供給装置を備える、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑剤供給装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機など)には、感光ドラムなどの像担持体上に残存したトナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング装置が備えられている。また、像担持体とクリーニングブレードとの摩擦力を低減するため、像担持体上に潤滑剤としての滑剤を供給する滑剤供給装置を備えたものもある。このような滑剤供給装置は、潤滑剤が棒状に形成された滑剤、滑剤を粉状にして像担持体に供給するブラシ、像担持体上に供給された粉状の滑剤を均して固定化する固定化ブレード等を備える(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この装置では、滑剤は、固定化ブレードにより像担持体をクリーニングする際に、そのクリーニング性能を向上させるために、像担持体の表面上に塗布され付着させることにより、像担持体に対するトナーの付着力を低減させる。
【0004】
滑剤(滑剤棒)は、脂肪酸金属塩等の潤滑剤を棒状に成形した固形状ものであり、像担持体である感光体を摺動するブラシ(ブラシローラ)に当接し、ブラシを介して感光体に常に付着するように設けられている。滑材は、押圧部材であるバネでブラシに向けて押圧付勢されている摺動支持部材に搭載され、ブラシが接触しながら回転することにより固形潤滑剤を削り取り、感光体に塗布される。
【0005】
また、押圧部材を用いて滑剤をブラシに押圧する装置として、例えば、特許文献2、3に示す装置が知られている。
【0006】
特許文献2には、押圧部材として、潤滑保持部材とこれに対向するケーシングの内壁との間に配置され、単一ばねの付勢力を受けて支点を中心に回転するアーム部が開示されている。アーム部は、その湾曲形状部分がケーシングの内壁に当接することで、潤滑保持部材を押圧する。なお、アーム部の湾曲形状部分の曲率は、滑剤が初期中間期を経て所定量以上削り取られた後の末期にかけて、滑剤の押圧方向への押圧力が中間期よりも末期に大きくなるように設定されている。また、特許文献3では、滑剤の背面側に、滑剤をブラシローラに押圧する圧縮コイルバネが、長手方向で離間して複数配置した構成が開示されている。この構成では、中央部の押圧力を両端部の押圧力よりも小さくすることで、滑剤の長手方向で圧バランスをとって均一な圧力でブラシローラに当接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-85704号公報
【特許文献2】特開2011-215584号公報
【特許文献3】特開2005-140875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来の潤滑剤供給装置では、ブラシを介して感光体に均一の滑剤が供給されるように、供給過程での滑剤の減少に関係無く、一定圧でブラシを押圧する必要ことが望ましい。従来のようにばねの伸縮による付勢力で滑剤を押圧する構成では、収縮状態で付勢力に差異があるので、滑剤が十分な状態と、枯渇した状態とでは、ブラシへの押圧力に変動が生じるおそれがある。
【0009】
このため、特許文献2では、滑剤が消費されると押圧力が上昇する構成であるものの、アーム部を引く引っ張り量を一定にするためにバネの長さを長くしてばね定数を低くする必要があり、その調整とバネ長のスペースの確保が必要となる。また、特許文献3では、複数のばねのうち、中央部のばねの押圧力を両端部のばねの押圧力よりも小さくして対応する必要がありその調整に手間がかかるという問題がある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、滑剤の消費速度の低下を防止して、好適に滑剤を供給できる滑剤供給装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る滑剤供給装置の一態様は、
ブラシを介して像担持体に滑剤を供給する滑剤供給装置であって、
弾性変形により座屈状態で配置され、前記座屈状態から自然状態へ復元する復元力で前記滑剤を前記ブラシに押圧する弾性部材を有する構成を採る。
【0012】
本発明の画像形成装置の一態様は、
上記構成の滑剤供給装置を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で、滑剤の消費速度の低下を防止して、好適に滑剤を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
図3図3は、図1に示す画像形成装置のドラムクリーニングユニットの要部構成を模式的に示す側面図である。
図4図4は、図3に示すドラムクリーニングユニットの要部構成を示す正面図ある。
図5図5は、図3に示したドラムクリーニングユニットを示す図であって、滑剤の使用初期を示すドラムクリーニングユニットの正面図である。
図6図6は、図3に示したドラムクリーニングユニットにおいて、滑剤の使用末期を示すドラムクリーニングユニットの正面図である。
図7図7は、図6に示すドラムクリーニングユニットの側面図である。
図8図8は、弾性部材におけるばね長と押圧力との関係を示す図である。
図9A図9Aは、図8に示すばね長と押圧力との関係の説明に供する自然状態のばねの断面図である。
図9B図9Bは、図8に示すばね長と押圧力との関係の説明に供する座屈状態のばねの断面図である。
図10図10は、弾性部材としての引っ張りばねにおいて寸法の異なる場合の特性を示す図である。
図11図11は弾性部材におけるばねの長さと座屈角度との関係を示す図である。
図12図12A図12B及び図12Cは、弾性部材としての引っ張りコイルバネの座屈角度を示す図である。
図13図13はばねの実測値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。なお、下記の画像形成装置1の構成や仕様などは、本実施の形態の一例であり、以下の説明に限定されず、同様の他の周知の技術を任意に選択して、適宜に変更可能である。
【0017】
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。即ち、画像形成装置1は、感光体上に形成されたCMYKの各色トナー像を中間転写体に一次転写し、中間転写体上で4色のトナー像を重ね合わせた後、記録媒体である用紙に二次転写することにより、画像を形成する。なお、CMYKは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のことである。
【0018】
また、画像形成装置1には、CMYKの4色に対応する感光体を中間転写体の走行方向に直列配置し、中間転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0019】
画像形成装置1は、図1に示すように、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60などを備える。
【0020】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置12(スキャナー)などを備える。
【0021】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0022】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aに結像させる。これにより、原稿画像走査装置12は、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0023】
操作表示部20は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22(図2を参照)として機能する。表示部21は、制御部70(図2を参照)から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況などの表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキーなどの各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部70に出力する。
【0024】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じた画像処理を行う回路などを備える。画像処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0025】
画像形成部40は、画像処理部30からの画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42などを備える。
【0026】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。そのため、図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号を付し、他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号を省略する。
【0027】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413(像担持体)、帯電装置414、ドラムクリーニングユニット415などを備える。
【0028】
露光装置411は、例えば、半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。レーザー光の照射により感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されると、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。その結果、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0029】
現像装置412は、例えば、現像スリーブ412Aなどを有する二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、現像スリーブ412Aから感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより、静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0030】
感光体ドラム413は、例えば、アルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)等を備える。感光体ドラム413は、導電性円筒体の周面にアンダーコート層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層することで構成された光導電性を有する感光体である。感光体ドラム413は、例えば、負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。感光体ドラム413は、その駆動モーター(図示省略)に供給される駆動電流を制御部70(図2を参照)が制御することにより、一定の周速度(線速度)で回転される。
【0031】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0032】
ドラムクリーニングユニット415は、クリーニング装置100、滑剤供給装置200などを備える(後述の図3及び図4を参照)。ドラムクリーニングユニット415は、感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングしたり、感光体ドラム413上に滑剤を供給したりする。ドラムクリーニングユニット415の構成については、図3を参照して後述する。
【0033】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、駆動ローラー423A、バックアップローラー423Bなどを含む複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、ベルトクリーニング装置426などを備える。
【0034】
中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架され、駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。一次転写ローラー422は、中間転写ベルト421を感光体ドラム413に圧接させている。これにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写する。二次転写ローラー424は、中間転写ベルト421を挟んでバックアップローラー423Bに圧接されている。これにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写する。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。なお、二次転写ローラー424に代えて、複数の支持ローラーに二次転写ベルトがループ状に張架されたベルト式の二次転写ユニットを採用してもよい。
【0035】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレードなどを有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0036】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52及び搬送経路部53などを備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
【0037】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されると共に搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40、定着部60を経て画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0038】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着ベルト61、加熱ローラー62、定着ローラー63、加圧ローラー64などを備える。定着ベルト61は、加熱ローラー62と定着ローラー63とによって張架されている。加圧ローラー64は、定着ベルト61との間で用紙Sを挟持して搬送する定着ニップを形成している。
【0039】
また、画像形成装置1は、図2に示すように、制御部70を備える。
【0040】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72及びRAM(Random Access Memory)73などを備えている。CPU71は、ROM72から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM73に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部82に格納されているLUT(Look Up Table)などの各種データが参照される。記憶部82は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(所謂、フラッシュメモリ)又はハードディスクドライブで構成される。
【0041】
制御部70は、通信部81を介して、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークに接続された外部の装置(例えば、パーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部70は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙に画像を形成する。また、制御部70は、ドラムクリーニングユニット415における後述する滑剤供給装置200におけるブラシ212を駆動する際のトルクを検知して判定するトルク判定部75を有する。トルク判定部75は、CPU71、ROM72及びRAM73等により構成される。通信部81は、例えば、LANカードなどの通信制御カードで構成される。
【0042】
制御部70には、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60が、それぞれ接続されている。また、制御部70には、後述するブラシ駆動部92、トルク測定部94、報知部96も接続されている。これらは、制御部70の指示に基づいて所定の処理を実行する。
【0043】
ここで、ドラムクリーニングユニット415について、図3から図7を参照して説明を行う。
【0044】
図3は、ドラムクリーニングユニット415を示す図であって、滑剤231の使用初期を示す図である。図4は、図3に示すドラムクリーニングユニットの要部構成を示す正面図である。また、図5は、図3に示したドラムクリーニングユニットを示す図であって、滑剤の使用初期を示すドラムクリーニングユニットの正面図である。図6は、図3に示したドラムクリーニングユニットにおいて、滑剤の使用末期を示すドラムクリーニングユニットの正面図であり、図7は、図6に示すドラムクリーニングユニットの側面図である。なお、滑剤231の使用初期とは、滑剤231の交換などにより、滑剤231が未使用又は滑剤231の残量が未使用に近いときのことである。また、滑剤231の使用末期とは、滑剤231の残量が少なく、滑剤231の枯渇が近いときのことである。
【0045】
ドラムクリーニングユニット415は、クリーニング装置100、滑剤供給装置200などを備える。これらは、支持枠体4150(支持部)に取り付けられて収容されている。
【0046】
クリーニング装置100は、クリーニングブレード101、クリーニングブレード101を取り付けて支持する支持板金102などを有する。クリーニングブレード101及び支持板金102の幅は、感光体ドラム413の軸方向(主走査方向)の幅とほぼ同等の幅を有する。クリーニングブレード101は、ウレタンゴムなどの弾性部材を平板状のシートに成形したものである。
【0047】
クリーニングブレード101は、感光体ドラム413の表面413aに摺接されて、一次転写後に感光体ドラム413の表面413aに残存する転写残トナーを除去する。
【0048】
クリーニングブレード101は、その先端(エッジ)を感光体ドラム413の回転方向R1に対向するように当接させるカウンター方式の構成となっている。具体的には、クリーニングブレード101は、感光体ドラム413の回転方向R1に対して、エッジが突っ張る方向となるカウンター方向から所定の当接角及び侵入量で摺接するように配置されている。
【0049】
滑剤供給装置200は、塗布装置210、固定化装置220、滑剤231を有する滑剤押圧機構230などを備えている。滑剤供給装置200は、滑剤押圧機構230により滑剤を塗布装置210に押圧し、押圧された滑剤は、塗布装置210を介して感光体ドラム413に塗布される。
【0050】
ここでは、滑剤塗布方式の一例として、感光体ドラム413の回転方向R1において、クリーニング装置100の下流側に滑剤供給装置200が配置される下流塗布システムを例示する。なお、クリーニング装置100の上流側に滑剤供給装置200が配置される上流塗布システムを備えてもよい。
【0051】
塗布装置210は、感光体ドラム413に滑剤231を塗布して供給する機能を有する。塗布装置210は、ブラシローラとも称し、回転軸となるシャフト211と、シャフト211により回転されて、感光体ドラム413の表面413a上に滑剤231を塗布するブラシ212とを有する。
【0052】
ブラシ212は、例えば、ポリエステルなどの繊維が植設された基布を、芯金となるシャフト211に巻き付けたローラー状のブラシである。ブラシ212は、感光体ドラム413の軸方向の幅とほぼ同等の幅を有する。
【0053】
ブラシ212は、滑剤231の表面及び感光体ドラム413の表面413aに接触するように配置されている。ブラシ212は、シャフト211により、例えば、感光体ドラム413の回転方向R1とは反対方向の回転方向R2に回転して、粉状にした滑剤を感光体ドラム413の表面413a上に供給(塗布)する。なお、滑剤231を塗布する滑剤塗布部材として、ここでは、ブラシ212を例示しているが、発泡体からなる滑剤塗布部材を用いてもよい。
【0054】
固定化装置220は、感光体ドラム413に摺接して、塗布装置210により感光体ドラム413上に供給された滑剤を均して、滑剤を固定化する。固定化装置220は、感光体ドラム413の回転方向R1において、塗布装置210の下流側に配置される。
【0055】
固定化装置220は、固定化ブレード221、固定化ブレード221を取り付けて支持する支持板金222などを有する。固定化ブレード221及び支持板金222の幅は、感光体ドラム413の軸方向の幅とほぼ同等の幅を有する。固定化ブレード221の材料としては、クリーニングブレード101と同様に、ウレタンゴムなどの弾性部材を平板状のシートに成形したものを使用する。
【0056】
固定化ブレード221は、その先端(エッジ)を感光体ドラム413の回転方向R1に沿うように当接させるトレイル方式の構成となっている。具体的には、固定化ブレード221は、感光体ドラム413の回転方向R1に対して、エッジが引きずられる方向となるトレイル方向から所定の当接角及び侵入量で摺接するように配置されている。このような構成により、固定化ブレード221は、感光体ドラム413の表面に摺接し、塗布装置210により感光体ドラム413上に供給された滑剤を平滑な状態に均すことができる。
【0057】
滑剤押圧機構230は、弾性部材240の押圧力により、潤滑剤からなる滑剤231を、塗布装置210のブラシ212に押圧してブラシ212に潤滑剤を供給する。滑剤押圧機構230は、滑剤231、座屈により押圧力を発生する弾性部材(付勢部材)240、規制保持部材(規制保持部)232などを有する。
【0058】
滑剤231は、潤滑剤を固形化して棒状に成形したものであり、ブラシ212を介して粉状で感光体ドラム413に供給される。滑剤231の幅は、感光体ドラム413の軸方向において、クリーニングブレード101や固定化ブレード221などの幅よりも狭い。滑剤231は、例えば、鉛筆硬度でF~HB相当の硬度を有している。滑剤231に使用される潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)である。
【0059】
滑剤231は、弾性部材240の変形を規制する規制保持部材232に保持されている。
【0060】
規制保持部材232は、弾性部材240の変形方向を規制するとともに滑剤231をブラシ212に押し付けた状態で保持する。規制保持部材232は、詳細な図示は省略するが、支持枠体4150に、塗布装置210に接離方向(接近方向及び離間方向)に移動可能なレールを設け、そのレールに沿って摺動自在に支持される。
【0061】
規制保持部材232は、具体的には、シャフト211及びブラシ212の延在方向に沿って延在するように形成され、且つ、シャフト211及びブラシ212の延在方向と垂直な方向で離間して配置されている。規制保持部材232は、滑剤231を介して塗布装置210と対向した状態であり、ブラシ212(塗布装置210)を介して感光体ドラム413側に直線的に移動するように構成される。
【0062】
規制保持部材232の両端には、図4及び図5に示すように、弾性部材240が座屈した状態で接続される。規制保持部材232は、弾性部材240を介して支持枠体4150に移動自在に接続されている。
【0063】
規制保持部材232は、滑剤231の裏面が配置される押圧面部2322と、弾性部材240の座屈方向を規制する座屈規制部2324、2325を有する。規制保持部材232は、例えば、板金を加工することで構成される。
【0064】
規制保持部材232は、ブラシ212側の表面を押圧面部2322とし、この押圧面部2322に滑剤231を配置している。規制保持部材232は、押圧面部2322の裏面側に配置された座屈規制部2324、2325を介して、弾性部材240が座屈状態に変形自在となるように配置されている。
【0065】
規制保持部材232は、座屈規制部2324、2325に、シャフト211の延在方向及び、ブラシ212と滑剤231との対向方向の双方の方向に直交する軸部233を有する。軸部233は、規制保持部材232の正面部及び背面部を構成し対向配置された座屈規制部2324、2325間に架設されている。この軸部233には、弾性部材240の一端部244が接続されている。
【0066】
規制保持部材232では、押圧面部2322は、座屈規制部2324、2325とともに、弾性部材240の一端部242側を囲み、弾性部材240の座屈方向を規制する。
【0067】
規制保持部材232は、図3及び図4に示すように、座屈規制部2324、2325により、弾性部材240の座屈を長手方向でのみ行えるように規制している。
【0068】
座屈規制部2324、2325は、弾性変形する弾性部材240の姿勢を規制する。座屈規制部2324、2325は、滑剤321の減少に伴い弾性部材240が座屈した状態から座屈していない状態に変移する過程で、弾性部材240の座屈方向を一定方向に規制する。すなわち、座屈規制部2324、2325は、弾性部材240を滑剤231の長手方向に沿って座屈するように規制しており、この方向と逆方向で元の形状に復元する。
【0069】
規制保持部材232の両端部に配置されているので、弾性部材240の夫々は、滑剤231が初期状態である場合、互いに対向する方向(規制保持部材232の中心に向かって凸状となるように座屈して湾曲した状態で配置される。
【0070】
弾性部材240は、座屈状態から変形する際に付勢力を発生し、規制保持部材232を介して滑剤231をブラシ212に押圧する。
【0071】
弾性部材240は、規制保持部材232の両端部と支持枠体4150との間に介設されている。
【0072】
弾性部材240では、一端部242が規制保持部材232の接続部である軸部233に接続され、他端部244が支持枠体4150に設けられた接続部である軸部234に接続されている。
【0073】
弾性部材240は、所定の長さを有し、弾性変形により座屈した状態(座屈状態とも称する)で配置され、座屈状態から元の状態である自然状態へ復元する。弾性部材240は、その復元力で滑剤231をブラシ212に押圧する。弾性部材240は、座屈状態(例えば、主に最大角度で座屈した状態をいう)から復元する弾性変形自在な部材である。弾性部材240は、座屈変形した状態から自然状態に戻る際に発生する復元力を付勢力として滑剤231に付与する。滑剤231に付与された付勢力は、滑剤231がブラシ212を押圧する押圧力となる。
【0074】
弾性部材240は、座屈変形した状態から自然状態(例えば直線状の状態)に復元する際に復元力を発生する機能を有する構成であれば、樹脂等の材料等で形成されてもよい。弾性部材240は例えば、一定の長さを有し座屈変形可能な可撓性を有するFRP製の板材で形成されてもよく、板ばねで形成されてもよい。また、弾性部材240は、例えば、弾性変形自在な一定の長さを有する柱状の部材であり、例えば、コイルばねなどのバネで形成したり、エラストマー等の所定長を有する柱状に形成してもよい。いずれの材料で形成される場合でも、弾性部材240は、座屈状態から復元するよう弾性変形可能であり、座屈状態で配置され、復元力で滑剤231をブラシ212に押圧する。
【0075】
弾性部材240は、上記機能を有するばねであれば、圧縮コイルばね、引っ張りばね等のどのバネを用いてもよいが、引っ張りばね240であることが好ましい。弾性部材240が引っ張りばねであれば、押圧する距離に対応して、引っ張りばねの長さを設定しやすい。
【0076】
引っ張りばねである弾性部材240は、一端部242で軸部233に回動自在に接続さされ、他端部で軸部234に回動自在に接続されている。
【0077】
これにより、弾性部材240は、規制保持部材232と支持枠体4150との間で座屈変形可能であり、ブラシ212に対して接近方向または離間方向に伸縮自在に取りつけられた状態となっている。
【0078】
弾性部材240は、図3図5に示すように、滑剤231が初期状態であるときは、屈曲した状態である。この状態で発生する付勢力により弾性部材240は、規制保持部材232を介して初期状態から枯渇状態になるまでの滑剤231を押圧する。
【0079】
弾性部材240は、滑剤231が消費され、枯渇状態になると、図6及び図7に示すように、座屈状態が解放されて、弾性部材240は、伸びきった状態になる。
【0080】
弾性部材240は、座屈状態が解放される際には、座屈規制部2324、2325により座屈方向が規制される。すなわち、滑剤231の減少により規制保持部材232がブラシ212側、つまり押圧方向に移動する。これに伴い、弾性部材240の座屈状態は解放され、この弾性部材240の阿久津方向が、座屈規制部2324、2325により規制される。
【0081】
弾性部材240は、座屈規制部2324、2325により、滑剤231の長手方向に対して内側に向けて座屈して、つまり内側に凸状になるように湾曲して取り付けられている。弾性部材240は、規制保持部材232の長手方向の中央部側から規制保持部材232に均等に付勢力が掛かるようになる。
【0082】
また、規制保持部材232をブラシ212に対して全面的に押圧する方向に移動させて、滑剤231の表面を、ブラシ212との対向方向の面と面直方向で真っ直ぐな面で減らすことができる。
これにより滑剤231は、ブラシ212との接触面で全面的に均一圧力をかけつつ接触面を摺動できる。
【0083】
このように、弾性部材240が、座屈状態から通常状態に復元する際の付勢力を押圧力として出力する構成では、弾性部材240の座屈状態が解放されて、伸び切った座屈角度0°の状態のときが弾性部材240の押圧後の状態となる。この状態の弾性部材240の長さをL1とし、座屈状態の両端部の間の長さL2とすると、L1-L2の長さであるL3が弾性部材240の伸びる長さL3となる。この長さL3の滑剤231の長さとして、L1状態でブラシ212と規制保持部材232とが接触しない位置で夫々配置し、弾性部材240を座屈させた状態で長さL3の滑剤231をセットできる。これにより、滑剤231が枯渇状態になる場合でも、ブラシ212に規制保持部材232が接触することがない装置を実現出来る。すなわち、弾性部材240により押圧する長さを規定し、ブラシ212に接触しない滑剤231にすることができる。
【0084】
<弾性部材240>
図8は、弾性部材におけるばね長と押圧力との関係を示す図であり、グラフG1は、座屈を用いて付勢力を発生させた本実施の形態の弾性部材の押圧力を示し、グラフG2は、同じばね長で同様の付勢力を有する圧縮コイルばねの押圧力を示す。
【0085】
弾性部材240としての引っ張りコイルばねは、図8のグラフG1に示すように、座屈させて用いることにより座屈状態から徐々に自然状態に戻るまで、長期に亘り安定した付勢力を発生することが分かった。
【0086】
このバネ荷重とばね長さの関係は、図9A図9Bで規定したバネのモデルを用いて算出した。図9A図9Bは夫々、図8に示すばね長と押圧力との関係の説明に供する直接状態のばね、座屈状態のばねの断面図である。
【0087】
図9Aの弾性部材の一例である引っ張りばねに示すように、ばねのコイル部241の長さをL、コイル部241の直径をφ、コイル部241の両端からコイル軸方向に突出するアーム部の長さをLとする。図9Bのばねは、アーム部の一端部が固定されて座屈したばねを示し、このばねにおいて、コイル部241の座屈状態の凸側の外径の座屈方向に延びた長さをL、コイル部241の座屈状態の中心軸の長さをLとする。さらに、コイル部241における凹側の外周部分の座屈方向の長さをLとし、コイル部241の座屈角度θの中心からコイル部241の中心までの長さをRとする。加えて、コイル部241の中心からコイル部241における凹側の外周部分のコイル線の中心までの長さ(コイル部241の凹側の端部の曲率半径)をr、アーム部の端部の曲率半径をr、座屈状態のアーム部間の長さをX、バネ荷重をFとする。
【0088】
これらを用いて下記式(1)から(8)を順に算出し、下記式(8)により算出した付勢力Fを用いて、図8のグラフG1に示す、ばねが座屈状態から自然状態に変化するまでの付勢力(ばね荷重)を算出した。
【数1】
【0089】
上記式を満たして算出されたばねにおいて、フラットな付勢力Fとなる部分を仕様とする範囲(仕様範囲)となるように引っ張りばねを配置する。
【0090】
図10は、弾性部材としての引っ張りばねにおいて寸法の異なる場合の特性を示す図である。図10では、グラフG3はL/Φ=0.5、グラフG4はL/Φ=1.0、グラフG5はL/Φ=1.5、グラフG6はL/Φ=2.0として上記式(8)を満たす座屈状態弾性部材の夫々の特性を示す。この図のばねの特性で示すように、L/Φ<0.5の場合は、組立性が困難であり、L/Φ<1.0は、仕様となるフラット領域が小さくなり、滑剤のサイズが限定されて、大きな滑剤が使用できない。また、L/Φ>1.5の場合は、座屈変形末期状態(自然状態に戻る直前の状態)の立ち上がりが緩やかになり、滑剤残量検知の精度が低下する。また、L/Φ>2.0cは耐久末期の押圧力が極端に大きくなる。
【0091】
これらを踏まえて、弾性部材240が、上記モデルと同様の構成の引っ張りコイルばねの場合、コイル部241の直径Φ、アーム部の長さLとしたとき、0.5≦L/Φ≦2.0を満たすことが好ましい。さらに、弾性部材240は、1.0≦L/Φ≦1.5を満たして構成されることが好ましい。
【0092】
図11は、弾性部材におけるばね長と座屈角度との関係を示す図である。図12A図12B及び図12Cは、図11に対応する弾性部材としての引っ張りコイルバネの変形を示す図である。図12A図12Cでは、各座屈角度を有する状態の引っ張りばね240における有効ばね長をa~cで示し、座屈状態において必要なばね長dで示す。有効ばね長a(図5、6で示す長さL1に対応)は、滑剤231の長さに対応する長さである。また、有効ばね長b、cは、湾曲した状態の長さであり、本実施の形態では、座屈角度180°を座屈状態の角度と称し、有効ばね長c(図5の長さL2に対応)に対応する。
【0093】
図12Aの弾性部材240は、座屈角度θ=0°の状態、図12Bの弾性部材240は、座屈角度θ=90°の状態、図12Cは座屈角度θ=180°の状態を示す。これら図12A図12Cに示す弾性部材240は、初期状態である自然状態である直線状の状態から座屈状態に変位する形状でもある。
【0094】
図11に示すように、引っ張りばねを座屈角度0°(図12A参照)から座屈させていくと、有効バネ長が一時的に膨らみ、短くなっていく。このため引っ張りばねが十分な使用長を確保するためには、座屈角度θを130°以上にし、更に好ましくは、座屈角度θを150°以上にすることが好ましい。但し、座屈角度θを大きくして、有効ばね長cよりも必要ばね長dを長くすると、不必要な空間が必要となる。よって、座屈角度θは、は200°以下、さらに好ましくは、180°(図12C参照)以下にすることが望ましい。すなわち、弾性部材240は、座屈可能な部位(例えば、コイル部241)の上端面と下端面のなす角度を座屈角度θとしたとき、最も座屈した状態での座屈角度θを130°≦θ≦200°とすることが好ましい。さらに好ましくは、弾性部材240の座屈角度θを、150°≦θ≦180°とすることである。
【0095】
このように、滑剤供給装置に用いられる座屈した弾性部材240の特性は、例えば、図13のばねの実測値の一例に示すように、ばねが座屈状態から復元する間に、ほぼ一定間に、フラットな領域(略一定のバネ荷重を付与する領域)がある。この領域で復元力を発揮するように弾性部材240は、座屈状態で所定の位置(滑剤231がブラシ212を介して感光体ドラム413に塗布していない初期状態の位置)に設けられる。
【0096】
このように座屈した状態で配設される弾性部材240の押圧力(付勢力)により、滑剤押圧機構230は、滑剤231をブラシ212に押圧している。このため、図5図7に示すように、滑剤231の供給に伴って、その残量が減少しても、弾性部材240が押圧力により規制保持部材232を押圧して、ブラシ212に対して均一に接触するように変位させる。これにより、滑剤231とブラシ212との接触状態を維持することができる。また、滑剤押圧機構230においては、滑剤231及び規制保持部材232を交換可能な構成にしてもよい。
【0097】
ところで、感光体ドラム413に供給される滑剤231は消耗品である。そのため、滑剤231が枯渇すると、例えば、感光体ドラム413とクリーニングブレード101との間の摩擦力の増加し、それに起因して、クリーニング装置100に不具合が生じる場合がある。具体的には、感光体ドラム413において、残留トナーのクリーニング不良が発生したり、感光体ドラム413にトナーフィルミングが発生したりする。その結果、ドラムクリーニングユニット415を継続して使用することができなくなる。
【0098】
そのため、滑剤が枯渇する前に滑剤を交換できるよう、滑剤の使用量(残量)を正確に把握する必要がある。よって、滑剤231の使用末期での滑剤231の残量に関する情報(例えば、残量、使用量など)を正確に取得することが好ましい。
【0099】
そこで、本実施の形態では、滑剤供給装置200は、ブラシ212を駆動するトルクを測定し、測定したトルクから滑剤の残量を検知し、枯渇状態であるか否かを判定する。
【0100】
ブラシ駆動部92は、モーター等により構成され、塗布装置210のシャフト211に接続されている。ブラシ駆動部92は、制御部70からの駆動信号に基づいて、シャフト211を回転駆動することでブラシ212を回転する。このときブラシ212は、230により滑剤231が押圧された状態で回転するので、ブラシ駆動部92は、ブラシ212を介して滑剤231の負荷が加わった状態で回転する。
【0101】
トルク測定部94は、ブラシ駆動部92がシャフト211を回転駆動する際のトルクを測定し、制御部70のトルク判定部75に出力する。トルク測定部94は、シャフト211を駆動するモーターとシャフト211或いはブラシ212との間に設けられてもよい。
【0102】
トルク測定部94が測定するトルクは、滑剤231が押圧された状態でブラシ212を回転させる際のトルクである。このトルクは、滑剤231の消耗により変化する。
【0103】
トルク判定部75は、入力されたブラシ212を駆動するトルクの情報からブラシ212を駆動するトルクに対応する滑剤231の残量を検知する。
【0104】
トルク判定部75は、測定したトルクが予め設定された所定の値を超えたときに滑剤残量のニアエンプティ、あるいはエンプティを判断する。トルク判定部75は、画像形成部40のドラムクリーニングユニット415が有してもよいが、例えば、制御部70が有するものとする。
【0105】
トルク判定部75は、例えば、測定したトルクと、RAM73に予め格納されたトルクと滑剤残量との関係を示すテーブルの値を比較して、測定したトルクに対応する滑剤の残量を検知する。
【0106】
また、トルク判定部75は、検知した滑剤残量が所定の値を超えていれば、ほぼ残量無しであると判定する。トルク判定部75が、残量無しであると判定した場合、例えば、発音部、発光部等の報知部96を介してユーザーに報知できる。また、所定の値を超えた滑剤の枯渇状態を示す値を設定しておけば、トルク判定部75が、その値に対応するトルクを検知した場合、画像形成部40の駆動を停止できる。
【0107】
例えば、滑剤231が枯渇状態になるとき、弾性部材240は伸び切った自然状態に戻ろうとするとき、ばね荷重が急変するので、ブラシ212を駆動するトルクに掛かる荷重も急変する。このような急な変化について、トルク判定部75は容易に検知でき、その変化に基づいて所定の値を設置できる。
【0108】
<本実施の形態の作用・効果>
以上のように、本実施の形態の場合、滑剤231をブラシ212に押圧する座屈変形可能な弾性部材を、座屈状態で使用することにより、滑剤231の消費に対しての押圧力変動を小さくし、滑剤231の消費速度の低下を防止できる。
【0109】
さらに、また、滑剤231が枯渇した状態でも、板金等で構成される規制保持部材(規制保持部)232がブラシ212に当接することがない。これにより規制保持部材(規制保持部)232が、ブラシ212に当接してブラシ212の駆動に負荷をかけることがない。また、ブラシ212に対して、規制保持部材232の当接による負荷とともに、両面テープ等の接続材料等が付着して、ブラシ212の駆動に負荷をかけることがない。よって、ブラシ212がトルクアップすることなく、このトルクアップによるエラーを防止することができる。
【0110】
さらに、滑剤231が枯渇状態に近づくと押圧力が上昇に転じるので、その急な変化が現れることになり、ブラシトルクによる滑剤エンプティを確実に判断できる。
【0111】
このように、本実施の形態によれば、滑剤231の消費速度の低下を防止して、枯渇状態であっても不具合が発生することなく、好適に滑剤231を供給することができる。
【0112】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る滑剤供給装置は、滑剤の消費速度の低下を防止して、枯渇状態であっても不具合が発生することなく、好適に滑剤を供給できる効果を有し、画像形成装置に用いるものとして有用である。
【符号の説明】
【0114】
1 画像形成装置
10 画像読取部
11 自動原稿給紙装置
12 原稿画像走査装置
12a CCDセンサー
20 操作表示部
21 表示部
22 操作部
30 画像処理部
40 画像形成部
41、41C、41K、41M、41Y 画像形成ユニット
42 中間転写ユニット
50 用紙搬送部
51 給紙部
51a、51b、51c 給紙トレイユニット
52 排紙部
52a 排紙ローラー
53 搬送経路部
53a レジストローラー対
60 定着部
61 定着ベルト
62 加熱ローラー
63 定着ローラー
64 加圧ローラー
70 制御部
75 トルク判定部
81 通信部
82 記憶部
92 ブラシ駆動部
94 トルク測定部
96 報知部
100 クリーニング装置
101 クリーニングブレード
102 支持板金
180 座屈角度
200 滑剤供給装置
204 弾性部材
210 塗布装置
211 シャフト
212 ブラシ
220 固定化装置
221 固定化ブレード
222 支持板金
230 滑剤押圧機構
231 滑剤
232 規制保持部材(規制保持部)
233、234 軸部
240 弾性部材(付勢部材)
242 一端部
244 他端部
321 滑剤
411 露光装置
412 現像装置
412A 現像スリーブ
413 感光体ドラム
413a 表面
414 帯電装置
415 ドラムクリーニングユニット
421 中間転写ベルト
422 一次転写ローラー
423 支持ローラー
423A 駆動ローラー
423B バックアップローラー
424 二次転写ローラー
426 ベルトクリーニング装置
2322 押圧面部
2324、2325 座屈規制部
4150 支持枠体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13