(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007554
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ディスク装置
(51)【国際特許分類】
G11B 21/21 20060101AFI20250109BHJP
G11B 33/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G11B21/21 C
G11B33/14 501W
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109034
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸間 俊弥
(57)【要約】
【課題】容易に製造可能なディスク装置を提供する。
【解決手段】一つの実施形態に係るディスク装置は、複数の磁気ディスクと、複数のアームと、サスペンションと、第1のダンパとを備える。前記複数のディスクは、第1の回転軸に沿って並べられる。前記アームは、第2の回転軸に沿って並べられる。前記アームは、第1の側面、スリットが設けられた第2の側面、第1の磁気ディスクに向く第1の面、第2の磁気ディスクに向く第2の面、第1の座面、及び第2の座面、を有する。前記アームに、前記第1の側面及び前記第1の面に開口するとともに前記スリットよりも前記第1の回転軸に近い第1の窪みが設けられる。前記サスペンションは、前記第1の座面又は前記第2の座面に支持されるとともに前記スリットに部分的に収容される。前記第1のダンパは、前記第1の窪みに配置されて、前記アームに取り付けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転軸に沿って並べられ、当該第1の回転軸まわりに回転可能な、複数の磁気ディスクと、
前記第1の回転軸から離間した第2の回転軸に沿って並べられ、当該第2の回転軸まわりに回転することでそれぞれが前記複数の磁気ディスクのうち隣り合う二つの磁気ディスクの間の隙間に進入可能であり、
前記第1の回転軸に向く第1の側面、
前記第1の側面の反対側に位置するとともにスリットが設けられた第2の側面、
前記二つの磁気ディスクのうち一方である第1の磁気ディスクに向く第1の面、
前記二つの磁気ディスクのうち他方である第2の磁気ディスクに向く第2の面、
前記第1の磁気ディスクに向き、前記第1の面よりも前記第1の磁気ディスクから離間し、前記第1の面よりも前記第2の回転軸から離間した、第1の座面、及び
前記第2の磁気ディスクに向き、前記第2の面よりも前記第2の磁気ディスクから離間し、前記第2の面よりも前記第2の回転軸から離間した、第2の座面、
をそれぞれが有し、前記第1の側面及び前記第1の面に開口するとともに前記第1の回転軸と直交する方向において前記スリットよりも前記第1の回転軸に近い第1の窪みがそれぞれに設けられた、複数のアームと、
それぞれが前記第1の座面又は前記第2の座面に支持されるとともに前記スリットに部分的に収容されて、前記複数のアームに取り付けられた、複数のサスペンションと、
それぞれが前記第1の窪みに配置されて、前記複数のアームに取り付けられ、前記複数のアームの振動を減衰させるよう構成された、複数の第1のダンパと、
を具備するディスク装置。
【請求項2】
前記複数のアームのそれぞれに、前記第1の側面及び前記第2の面に開口するとともに前記第1の回転軸と直交する方向において前記スリットよりも前記第1の回転軸に近い第2の窪みが設けられた、
請求項1のディスク装置。
【請求項3】
それぞれが前記第2の窪みに配置されて、前記複数のアームに取り付けられ、前記複数のアームの振動を減衰させるよう構成された、複数の第2のダンパ、
をさらに具備する請求項2のディスク装置。
【請求項4】
前記第2の回転軸に沿う方向において、前記第1の窪みの深さは、前記第2の窪みの深さと異なる、
請求項2のディスク装置。
【請求項5】
前記第2の回転軸に沿う方向において、前記第1の窪みの深さは、前記第2の窪みの深さよりも大きい、
請求項4のディスク装置。
【請求項6】
前記第2の回転軸に沿う方向において、前記第1のダンパの厚さは、前記第1の窪みの深さよりも小さく、且つ前記第2の窪みの深さよりも大きい、
請求項5のディスク装置。
【請求項7】
前記第1の面における前記第1の窪みの縁と前記第2の面における前記第2の窪みの縁とは互いに鏡面対称である、
請求項2のディスク装置。
【請求項8】
前記第2の回転軸に沿う方向において、前記第1のダンパの厚さは、前記第1の窪みの深さよりも小さい、
請求項1のディスク装置。
【請求項9】
前記複数の第1のダンパのそれぞれは、前記複数のアームよりも密度が大きい拘束層と、前記拘束層と前記複数のアームのうち一つとの間に介在する粘弾性体と、を有し、
前記第2の回転軸に沿う方向において、前記第1の窪みの深さは、前記拘束層の厚さの3倍である、
請求項1のディスク装置。
【請求項10】
前記第2の回転軸に沿う方向において、前記第1の窪みの深さは、前記第1の面と前記第1の座面との間の距離よりも大きい、
請求項1のディスク装置。
【請求項11】
前記複数のアームのそれぞれに、前記第1の座面及び前記第2の座面に開口する貫通孔が設けられ、
前記複数のサスペンションは、それぞれが部分的に前記貫通孔に嵌め込まれることで前記複数のアームに取り付けられ、
前記複数の第1のダンパのそれぞれは、前記第2の回転軸に沿う方向に見た投影図において、前記第2の回転軸と前記貫通孔の中心との間で延びる仮想的な直線に対して線対称でない、
請求項1のディスク装置。
【請求項12】
前記第1の窪みは、前記第1の側面から前記第2の側面に向かって先細る、
請求項11のディスク装置。
【請求項13】
前記複数の第1のダンパのそれぞれは、拘束層と、前記拘束層と前記複数のアームのうち一つとの間に介在する粘弾性体と、を有し、
前記拘束層は、第1の部分と、前記第1の部分よりも厚い第2の部分と、を有する、
請求項11のディスク装置。
【請求項14】
前記第1の回転軸と直交する方向において、前記第1の部分は、前記第2の部分よりも前記第1の回転軸に近い、
請求項13のディスク装置。
【請求項15】
第1の回転軸まわりに回転可能な磁気ディスクと、
前記第1の回転軸から離間した第2の回転軸まわりに回転可能であり、前記磁気ディスクに向く取付面と、前記磁気ディスクに向くとともに前記取付面よりも前記第2の回転軸から離間した座面と、を有し、前記座面に開口する貫通孔が設けられた、アームと、
前記座面に支持されるとともに部分的に前記貫通孔に嵌め込まれることで前記アームに取り付けられたサスペンションと、
前記取付面に取り付けられ、前記アームの振動を減衰させるよう構成され、前記第2の回転軸に沿う方向に見た投影図において、前記第2の回転軸と前記貫通孔の中心との間で延びる仮想的な直線に対して線対称でない、ダンパと、
を具備するディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)のようなディスク装置は、例えば、磁気ディスクと、当該磁気ディスクに情報を読み書きする磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドを支持するサスペンションと、磁気ヘッド及びサスペンションを移動させるキャリッジとを有する。さらに、ディスク装置は、キャリッジのアームの振動を減衰させるダンパを有することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダンパは、例えば、アームの表面に取り付けられる。ダンパと磁気ディスクとの間には隙間が設けられ、例えば振動によりダンパが磁気ディスクに接触してしまうことが抑制される。しかし、ダンパと磁気ディスクとの間に大きい隙間を設けることは、ディスク装置の製造を難しくする場合がある。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、容易に製造可能なディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態に係るディスク装置は、複数の磁気ディスクと、複数のアームと、複数のサスペンションと、複数の第1のダンパとを備える。前記複数のディスクは、第1の回転軸に沿って並べられ、当該第1の回転軸まわりに回転可能である。前記複数のアームは、前記第1の回転軸から離間した第2の回転軸に沿って並べられ、当該第2の回転軸まわりに回転することでそれぞれが前記複数の磁気ディスクのうち隣り合う二つの磁気ディスクの間の隙間に進入可能である。前記複数のアームのそれぞれが、前記第1の回転軸に向く第1の側面、前記第1の側面の反対側に位置するとともにスリットが設けられた第2の側面、前記二つの磁気ディスクのうち一方である第1の磁気ディスクに向く第1の面、前記二つの磁気ディスクのうち他方である第2の磁気ディスクに向く第2の面、前記第1の磁気ディスクに向き、前記第1の面よりも前記第1の磁気ディスクから離間し、前記第1の面よりも前記第2の回転軸から離間した、第1の座面、及び前記第2の磁気ディスクに向き、前記第2の面よりも前記第2の磁気ディスクから離間し、前記第2の面よりも前記第2の回転軸から離間した、第2の座面、を有する。前記複数のアームのそれぞれに、前記第1の側面及び前記第1の面に開口するとともに前記第1の回転軸と直交する方向において前記スリットよりも前記第1の回転軸に近い第1の窪みが設けられる。前記複数のサスペンションは、それぞれが前記第1の座面又は前記第2の座面に支持されるとともに前記スリットに部分的に収容されて、前記複数のアームに取り付けられる。前記複数の第1のダンパは、それぞれが前記第1の窪みに配置されて、前記複数のアームに取り付けられ、前記複数のアームの振動を減衰させるよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るHDDを分解して示す例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態のHGA及びアームを部分的に示す例示的な平面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態のHDDの一部を示す例示的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態のHSAを
図2のF4-F4線に沿って示す例示的な断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態のキャリッジ及びギャングカッターを示す例示的な断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態のキャリッジ及びギャングカッターを示す例示的な平面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るHSAを示す例示的な断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態のキャリッジ及びギャングカッターを示す例示的な断面図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係るHSAの一部を示す例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図6を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0009】
以下の説明において、「抑制する」は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以下の説明において、「制限する」は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)10を分解して示す例示的な斜視図である。HDD10は、ディスク装置の一例であり、電子機器、記憶装置、外部記憶装置、又は磁気ディスク装置とも称され得る。
【0011】
図1に示すように、HDD10は、筐体11と、複数の磁気ディスク12と、スピンドルモータ13と、ヘッドスタックアセンブリ(HSA)14と、ボイスコイルモータ(VCM)15と、ランプロード機構16と、プリント回路板(PCB)17とを有する。磁気ディスク12は、ディスク又はプラッタ(platter)とも称され得る。
【0012】
図1に示すように、本明細書において、便宜上、Z軸及びZ方向が定義される。Z軸は、HDD10の厚さに沿って設けられる。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向とを含む。
【0013】
筐体11は、ベース21と、内カバー22と、外カバー23とを有する。なお、筐体11は、この例に限られない。ベース21、内カバー22、及び外カバー23のそれぞれは、例えばアルミニウム合金のような金属材料によって作られる。なお、ベース21、内カバー22、及び外カバー23の材料が互いに異なっても良い。
【0014】
ベース21は、+Z方向に開放された略直方体の箱状に形成される。ベース21は、複数の磁気ディスク12、スピンドルモータ13、HSA14、VCM15、及びランプロード機構16を収容する。
【0015】
ベース21は、底壁25と側壁26とを有する。底壁25は、Z方向と略直交するように配置された略矩形(四角形)の板状に形成されている。側壁26は、底壁25の縁から略+Z方向に突出し、略矩形の枠状に形成されている。
【0016】
内カバー22は、+Z方向における側壁26の端部に例えばネジにより取り付けられ、ベース21を塞ぐ。外カバー23は、内カバー22を覆い、+Z方向における側壁26の端部に例えば溶接により取り付けられる。
【0017】
内カバー22に通気口27が設けられる。さらに、外カバー23に、通気口28が設けられる。ベース21の内部に部品が取り付けられ、ベース21に内カバー22及び外カバー23が取り付けられた後、通気口27,28から筐体11の内部の空気が抜かれる。さらに、筐体11の内部に、空気とは異なる気体が充填される。
【0018】
筐体11の内部に充填される気体は、例えば、空気よりも密度が低い低密度ガスや、反応性の低い不活性ガス等である。例えば、ヘリウムが筐体11の内部に充填される。なお、他の流体が筐体11の内部に充填されても良い。また、筐体11の内部は、真空、真空に近い低圧、又は大気圧よりも低い陰圧に保たれても良い。
【0019】
外カバー23の通気口28は、シール29により塞がれる。シール29は、通気口28を気密に密封し、筐体11の内部に充填された流体が通気口28から筐体11の外部へ漏れることを制限する。
【0020】
複数の磁気ディスク12は、Z方向と略直交するように配置された円盤状に形成される。複数の磁気ディスク12は、磁気ディスク12の中心軸Axdに沿って、隙間を介して並べられる。中心軸Axdは、第1の回転軸の一例である。中心軸Axdは、略Z方向に延びる仮想的な軸である。
【0021】
複数の磁気ディスク12はそれぞれ、例えば、少なくとも一つの記録面12aを有する。複数の記録面12aはそれぞれ、略+Z方向に向く磁気ディスク12の表面、又は略-Z方向に向く磁気ディスク12の表面である。記録面12aは、Z方向と略直交する略平坦な面である。記録面12aに、磁気ディスク12の磁気記録層が設けられる。
【0022】
スピンドルモータ13は、複数の磁気ディスク12を支持するとともに、中心軸Axdまわりに回転させる。中心軸Axdは、スピンドルモータ13の中心軸でもある。複数の磁気ディスク12は、例えば、クランプバネによってスピンドルモータ13のハブに保持される。
【0023】
筐体11に、中心軸Axdと直交する方向に磁気ディスク12から離間した支持軸31が設けられる。支持軸31は、例えば、筐体11の底壁25から略+Z方向に延びている。HSA14は、支持軸31に回転可能に支持される。
【0024】
HSA14は、中心軸Axhまわりに回転することができる。中心軸Axhは、第2の回転軸の一例であり、略Z方向に延びる仮想的な軸である。中心軸Axhは、例えば、HSA14の回転の中心であり、支持軸31の中心軸でもある。このため、中心軸Axhは、磁気ディスク12の中心軸Axdから、当該中心軸Axdと直交する方向に離間している。
【0025】
HSA14は、キャリッジ35と、複数のヘッドジンバルアセンブリ(HGA)36と、フレキシブルプリント回路板(FPC)37とを有する。キャリッジ35は、アクチュエータブロック41と、複数のアーム42と、コイルホルダ43とを有する。
【0026】
アクチュエータブロック41、複数のアーム42、及びコイルホルダ43は、例えばアルミニウムに合金より一体に形成される。なお、アクチュエータブロック41、アーム42、及びコイルホルダ43の材料は、この例に限られない。
【0027】
アクチュエータブロック41は、例えば、中心軸Axhまわりに回転可能に、軸受を介して支持軸31に支持される。これにより、キャリッジ35は、中心軸Axhまわりに回転することができる。
【0028】
複数のアーム42は、アクチュエータブロック41から、中心軸Axhと略直交する方向に突出している。なお、HSA14が分割され、複数のアクチュエータブロック41のそれぞれからアーム42が突出しても良い。
【0029】
図2は、第1の実施形態のHGA36及びアーム42を部分的に示す例示的な平面図である。
図2に示すように、本明細書において、便宜上、X軸及びY軸がさらに定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。Y軸は、アーム42に沿って設けられる。さらに、本明細書において、X方向及びY方向がさらに定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向と、X軸の矢印の反対方向である-X方向とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向とを含む。
【0030】
複数のアーム42は、アクチュエータブロック41から+Y方向に突出している。このため、Y方向は、アーム42の長手方向である。X方向は、アーム42の短手方向である。X方向及びY方向は、キャリッジ35が中心軸Axhまわりに回転することで変化する。磁気ディスク12の中心軸Axdは、アーム42から略-X方向に離間している。
【0031】
アクチュエータブロック41は、複数の側面41a,41b,41cを有する。側面41aは、略+Y方向に向く。側面41bは、おおよそ-X方向に向く。側面41cは、側面41aと側面41bとの間で、X方向及びY方向に対して斜めに延びている。複数のアーム42は、アクチュエータブロック41の側面41a,41cから+Y方向に突出している。
【0032】
側面41cがX方向及びY方向に対して斜めに延びることで、アクチュエータブロック41に切り欠き45が設けられる。切欠き45が設けられることで、アクチュエータブロック41は、中心軸Axhまわりに回転したときに磁気ディスク12に接触してしまうことを抑制できる。
【0033】
複数のアーム42は、中心軸Axhに沿うZ方向に、隙間を介して並べられる。複数のアーム42は、略平行に延びている。アーム42は、Z方向と略直交するように配置された板状に形成される。すなわち、複数の磁気ディスク12と複数のアーム42とは、略平行に配置される。
【0034】
アーム42を含むキャリッジ35が中心軸Axhまわりの一方向に回転することで、複数のアーム42のそれぞれは、複数の磁気ディスク12のうち隣り合う二つの磁気ディスク12の間の隙間に進入することができる。キャリッジ35が中心軸Axhまわりの他方向に回転することで、複数のアーム42のそれぞれは、隣り合う二つの磁気ディスク12の間の隙間から出ることができる。
【0035】
図3は、第1の実施形態のHDD10の一部を示す例示的な断面図である。
図3に示すように、複数のアーム42のそれぞれについて説明される場合、複数の磁気ディスク12のうち隣り合う二つが、磁気ディスク12U,12Lと称される。磁気ディスク12Uは、磁気ディスク及び第1の磁気ディスクの一例である。磁気ディスク12Lは、第2の磁気ディスクの一例である。
【0036】
説明される一つのアーム42は、当該アーム42を含むキャリッジ35が中心軸Axhまわりに回転することで、二つの磁気ディスク12U,12Lの間に進入する。磁気ディスク12Uは、当該アーム42から+Z方向に離間している。磁気ディスク12Lは、当該アーム42から-Z方向に離間している。
【0037】
複数の磁気ディスク12のそれぞれは、いずれか一つのアーム42に対して磁気ディスク12Uとなり、他の一つのアーム42に対して磁気ディスク12Lとなり得る。
図3は、説明のため、複数の磁気ディスク12のうち一つを磁気ディスク12Uとして示し、複数の磁気ディスク12のうち他の一つを磁気ディスク12Lとして示す。
【0038】
図1のコイルホルダ43は、アクチュエータブロック41から、-Y方向に突出している。コイルホルダ43は、VCM15のボイスコイルを保持する。VCM15は、当該ボイスコイルと、一対のヨークと、当該ヨークに設けられた磁石とを有する。
【0039】
複数のアーム42のそれぞれは、
図2に示される第1の側面42a、第2の側面42b、第1の面42c、及び第1の座面42dと、
図3に示される第2の面42e及び第2の座面42fとを有する。第1の座面42dは、座面の一例である。
【0040】
図2に示される第1の側面42aは、おおよそ-X方向に向く。すなわち、第1の側面42aは、中心軸Axdに向く。なお、キャリッジ35が中心軸Axhまわりに回転することで、第1の側面42aが一時的に中心軸Axdに向かなくなっても良い。
【0041】
第2の側面42bは、第1の側面42aの反対側に位置する。第2の側面42bは、おおよそ+X方向に向く。第1の側面42aと第2の側面42bとは、+Y方向におけるアーム42の端部に向かって互いに近づく。すなわち、第1の側面42aと第2の側面42bとの間において、アーム42は、+Y方向に先細る。
【0042】
第1の側面42aは、アクチュエータブロック41の側面41bと連続する。なお、第1の側面42aは、この例に限られない。アクチュエータブロック41に切り欠き45が設けられるため、第1の側面42aは、第2の側面42bよりも長い。
【0043】
第1の面42c及び第1の座面42dは、略平坦に形成され、略+Z方向に向く。第1の面42c及び第1の座面42dは、磁気ディスク12Uに向く。なお、キャリッジ35が中心軸Axhまわりに回転することで、第1の面42c及び第1の座面42dが一時的に磁気ディスク12Uに向かなくなっても良い。
【0044】
第1の座面42dは、+Y方向におけるアーム42の端部に設けられる。このため、第1の座面42dは、第1の面42cよりも中心軸Axhから離間している。また、第1の座面42dは、第1の面42cよりも磁気ディスク12Uから離間している。
【0045】
図3に示すように、第2の面42eは、第1の面42cの反対側に位置する。第2の座面42fは、第1の座面42dの反対側に位置する。第2の面42e及び第2の座面42fは、略平坦に形成され、略-Z方向に向く。
【0046】
第2の面42e及び第2の座面42fは、磁気ディスク12Lに向く。なお、キャリッジ35が中心軸Axhまわりに回転することで、第2の面42e及び第2の座面42fが一時的に磁気ディスク12Lに向かなくなっても良い。
【0047】
第2の座面42fは、+Y方向におけるアーム42の端部に設けられる。このため、第2の座面42fは、第2の面42eよりも中心軸Axhから離間している。また、第2の座面42fは、第2の面42eよりも磁気ディスク12Lから離間している。
【0048】
複数のアーム42のそれぞれに、
図2に示すスリット51、貫通孔52、及び第1の窪み53と、
図3に示す第2の窪み54とが設けられる。第1の窪み53及び第2の窪み54は、段差又は切欠きとも称され得る。なお、アーム42は、第2の窪み54を省略しても良い。
【0049】
図2に示すように、スリット51は、第2の側面42bに設けられる。スリット51は、第1の面42c及び第2の面42eから離間しており、Y方向における第2の側面42bの両端部の間で略直線状に延びている。
【0050】
貫通孔52は、第1の座面42d及び第2の座面42fに開口するように、アーム42を略+Z方向に貫通している。貫通孔52は、略円形の孔である。なお、貫通孔52の形状は、この例に限られない。貫通孔52は、スリット51よりも中心軸Axhから離間している。
【0051】
第1の窪み53は、第1の面42cに設けられ、第1の側面42aにまで達するよう広がっている。このため、第1の窪み53は、第1の側面42a及び第1の面42cに開口する。第1の窪み53の全体は、中心軸Axdと直交する方向において、スリット51よりも中心軸Axdに近い。また、第1の窪み53は、第1の座面42d及びアクチュエータブロック41から離間している。
【0052】
第2の窪み54は、第2の面42eに設けられ、第1の側面42aにまで達するよう広がっている。このため、第2の窪み54は、第1の側面42a及び第2の面42eに開口する。第2の窪み54の全体は、中心軸Axdと直交する方向において、スリット51よりも中心軸Axdに近い。また、第2の窪み54は、第2の座面42f及びアクチュエータブロック41から離間している。
【0053】
アーム42は、第1の窪み53の底面53aと、第2の窪み54の底面54aとをさらに有する。底面53aは、取付面の一例である。底面53aは、Z方向における第1の窪み53の底に設けられる。このため、第1の座面42dは、底面53aよりも中心軸Axhから離間している。底面54aは、Z方向における第2の窪み54の底に設けられる。このため、第2の座面42fは、底面54aよりも中心軸Axhから離間している。
【0054】
底面53aは、略平坦に形成され、略+Z方向に向く。底面53aは、磁気ディスク12Uに向く。Z方向において、底面53aは、第1の面42cよりも磁気ディスク12Uから離間している。さらに、Z方向において、底面53aは、第1の座面42dよりも磁気ディスク12Uから離間している。このため、中心軸Axhに沿うZ方向において、第1の窪み53の深さは、第1の面42cと第1の座面42dとの間の距離よりも大きい。
【0055】
底面54aは、略平坦に形成され、略-Z方向に向く。底面54aは、磁気ディスク12Lに向く。Z方向において、底面54aは、第2の面42eよりも磁気ディスク12Lから離間している。さらに、Z方向において、底面54aは、第2の座面42fよりも磁気ディスク12Lから離間している。このため、中心軸Axhに沿うZ方向において、第2の窪み54の深さは、第2の面42eと第2の座面42fとの間の距離よりも大きい。
【0056】
第1の面42cにおける第1の窪み53の縁53bと、第2の面42eにおける第2の窪み54の縁54bとは、互いに鏡面対称である。中心軸Axhに沿うZ方向において、第1の窪み53の深さは、第2の窪み54の深さと略等しい。このため、第1の実施形態における第1の窪み53と第2の窪み54とは、互いに鏡面対称である。
【0057】
第1の窪み53及び第2の窪み54のそれぞれは、
図2のように中心軸Axhに沿うZ方向に見た投影図において、中心線Lに対して線対称でない。中心線Lは、中心軸Axhと貫通孔52の中心との間で延びる仮想的な直線である。
【0058】
本実施形態では、第1の窪み53及び第2の窪み54は、第1の側面42aから第2の側面42bに向かって先細る。すなわち、第1の側面42aにおける第1の窪み53の幅は、第1の側面42aから最も離間した第1の窪み53の端部の幅よりも大きい。
【0059】
第1の窪み53及び第2の窪み54は、部分的にアクチュエータブロック41の切り欠き45に配置される。言い換えると、Y方向において、第1の窪み53及び第2の窪み54の一部は、アクチュエータブロック41の側面41aよりも中心軸Axhに近い。
【0060】
複数のHGA36のそれぞれは、アーム42から略+Y方向に突出するように、第1の座面42d又は第2の座面42fに取り付けられる。これにより、複数のHGA36は、中心軸Axhに沿うZ方向に隙間を介して並べられる。第1の座面42dに取り付けられたHGA36は、第2の座面42fに取り付けられたHGA36に対し、略鏡面対称に形成される。
【0061】
複数のHGA36のそれぞれは、磁気ヘッド61及びサスペンション62を有する。すなわち、HDD10は、複数の磁気ヘッド61及び複数のサスペンション62を有する。磁気ヘッド61は、スライダとも称され得る。
【0062】
磁気ヘッド61は、複数の磁気ディスク12の記録面12aのうち対応する一つに対して、情報の記録及び再生を行う。言い換えると、磁気ヘッド61は、磁気ディスク12に対して情報を読み書きする。
【0063】
サスペンション62は、アーム42に取り付けられ、磁気ヘッド61を保持する。サスペンション62は、ベースプレート65と、ロードビーム66と、フレキシャ(flexure)67とを有する。
【0064】
ベースプレート65及びロードビーム66は、例えば、ステンレス鋼(SUS)により作られる。なお、ベースプレート65及びロードビーム66の材料は、この例に限られない。ベースプレート65及びロードビーム66は、互いに異なる材料で作られても良い。
【0065】
ベースプレート65は、プレート71及びボス72を有する。プレート71は、Z方向と略直交するように配置された略四角形の板状に形成される。プレート71は、第1の座面42d又は第2の座面42fに支持される。
【0066】
ボス72は、プレート71から突出している。ボス72は、略円筒状に形成され、アーム42の貫通孔52に嵌め込まれる。ボス72は、アーム42に加締められる。すなわち、サスペンション62は、部分的に貫通孔52に嵌め込まれることでアーム42に取り付けられる。なお、サスペンション62は、他の方法によりアーム42に取り付けられても良い。
【0067】
ロードビーム66は、ベースプレート65よりも薄い板状に形成される。ロードビーム66は、例えばスポット溶接によりプレート71に固定される。ロードビーム66は、プレート71からおおよそ+Y方向に延びている。
【0068】
フレキシャ67は、細長い帯状に形成された一種のフレキシブルプリント配線板(flexible printed wiring board)である。フレキシャ67は、例えば、ジンバル部75と、サスペンションテール76とを有する。
【0069】
ジンバル部75は、+Y方向におけるフレキシャ67の端部に設けられる。ジンバル部75は、ロードビーム66に弾性的に回転可能に支持されるとともに、磁気ヘッド61が取り付けられる。サスペンションテール76は、ジンバル部75から、アクチュエータブロック41に向かって延びている。なお、ジンバル部75とサスペンションテール76との間に、他の部分が設けられても良い。サスペンションテール76は、スリット51に部分的に収容される。
【0070】
-Y方向におけるサスペンションテール76の端部は、アクチュエータブロック41に取り付けられたFPC37の一方の端部に接続される。言い換えると、サスペンションテール76の一部は、スリット51を通ってジンバル部75とFPC37との間で延びている。FPC37の他方の端部は、例えば、底壁25に設けられたコネクタに接続される。
【0071】
キャリッジ35は、中心軸Axhまわりに回転することで、磁気ヘッド61を対応する磁気ディスク12に対して移動させる。VCM15は、キャリッジ35を中心軸Axhまわりに回転させることで、磁気ヘッド61を磁気ディスク12の記録面12aに沿って所望の位置へ移動させる。
【0072】
VCM15によるHSA14の回転により磁気ヘッド61が磁気ディスク12の外縁に移動すると、
図1のランプロード機構16は、磁気ディスク12から離間した位置に磁気ヘッド61を保持する。
【0073】
図1のPCB17は、例えば、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板であり、多層基板又はビルドアップ基板等である。PCB17は、筐体11の外部に配置され、底壁25に取り付けられる。
【0074】
PCB17には、例えば、FPC37に電気的に接続される中継コネクタ、ホストコンピュータに接続されるインターフェース(I/F)コネクタ、及びHDD10の動作を制御するコントローラのような、種々の電子部品が搭載される。中継コネクタは、底壁25に設けられたコネクタを介して、FPC37に電気的に接続される。
【0075】
PCB17のコントローラは、VCM15を駆動させ、HSA14を中心軸Axhまわりに回転させる。これにより、コントローラは、磁気ヘッド61の位置を制御する。コントローラは、HGA36に設けられた圧電素子により、磁気ヘッド61の位置を調整しても良い。
【0076】
図4は、第1の実施形態のHSA14を
図2のF4-F4線に沿って示す例示的な断面図である。
図4に示すように、HSA14は、複数の第1のダンパ81と複数の第2のダンパ82とをさらに有する。第1のダンパ81は、ダンパの一例である。一つのアーム42に、一つの第1のダンパ81と、一つの第2のダンパ82とが取り付けられる。
【0077】
複数の第1のダンパ81のそれぞれは、拘束層(constrained layer)85と、粘弾性体(viscoelastic material:VEM)86とを有する。なお、第1のダンパ81は、この例に限られない。
【0078】
拘束層85は、Z方向と略直交するように配置された板状に形成される。拘束層85は、例えば、ステンレス鋼で作られる。このため、拘束層85の密度(単位体積当たりの質量)は、アーム42の密度の約3倍である。すなわち、拘束層85は、アーム42よりも密度が大きい。なお、拘束層85の材料は、この例に限られない。
【0079】
粘弾性体86は、拘束層85よりも剛性が低い。粘弾性体86は、拘束層85と第1の窪み53の底面53aとの間に位置し、拘束層85と底面53aとに付着する。すなわち、粘弾性体86は、拘束層85と、アーム42の底面53aとの間に介在する。これにより、第1のダンパ81は、第1の窪み53に配置されて、アーム42の底面53aに取り付けられる。
【0080】
図2に示すように、中心軸Axhに沿うZ方向に見た投影図において、第1のダンパ81の形状は、第1の窪み53の形状と略等しく、第1の窪み53よりも小さい。このため、第1のダンパ81は、中心軸Axhに沿うZ方向に見た投影図において、中心線Lに対して線対称でない。
【0081】
図4に示すように、中心軸Axhに沿うZ方向において、第1のダンパ81の厚さは、第1の窪み53の深さよりも小さい。このため、第1のダンパ81の全体が、第1の窪み53に収容される。なお、第1のダンパ81の一部が第1の窪み53の外部に位置しても良い。
【0082】
例えば、Z方向において、第1の窪み53の深さは、拘束層85の厚さの3倍である。さらに、粘弾性体86の厚さは、拘束層85の厚さに略等しい。なお、拘束層85及び粘弾性体86の厚さは、この例に限られない。
【0083】
第2のダンパ82は、第1のダンパ81に対して略鏡面対称に設けられる。例えば、複数の第2のダンパ82のそれぞれは、拘束層87と、粘弾性体88とを有する。拘束層87は、Z方向と略直交するように配置された板状に形成される。拘束層87は、例えば、ステンレス鋼で作られる。なお、拘束層87の材料は、この例に限られない。
【0084】
粘弾性体88は、拘束層87よりも剛性が低い。粘弾性体88は、拘束層87と第2の窪み54の底面54aとの間に位置し、拘束層87と底面54aとに付着する。すなわち、粘弾性体88は、拘束層87と、アーム42の底面54aとの間に介在する。これにより、第2のダンパ82は、第2の窪み54に配置されて、アーム42の底面54aに取り付けられる。
【0085】
中心軸Axhに沿うZ方向に見た投影図において、第2のダンパ82の形状は、第2の窪み54の形状と略等しく、第2の窪み54よりも小さい。このため、第2のダンパ82は、中心軸Axhに沿うZ方向に見た投影図において、中心線Lに対して線対称でない。
【0086】
中心軸Axhに沿うZ方向において、第2のダンパ82の厚さは、第2の窪み54の深さよりも小さい。このため、第2のダンパ82の全体が、第2の窪み54に収容される。なお、第2のダンパ82の一部が第2の窪み54の外部に位置しても良い。
【0087】
例えば、Z方向において、第2の窪み54の深さは、拘束層87の厚さの3倍である。さらに、粘弾性体88の厚さは、拘束層87の厚さに略等しい。なお、拘束層87及び粘弾性体88の厚さは、この例に限られない。
【0088】
例えば、拘束層85,87及び粘弾性体86,88のそれぞれの厚さは、約50μmである。第1の窪み53及び第2の窪み54の深さは、約150μmである。第1の面42cと第2の面42eとの間におけるアーム42の厚さは、0.8mmである。第1の座面42dと第2の座面42fとの間におけるアーム42の厚さは、約0.6mmである。底面53aと底面54aとの間におけるアーム42の厚さは、約0.5mmである。なお、以上の寸法は、この例に限られない。
【0089】
アーム42が振動すると、アーム42の振動が第1のダンパ81及び第2のダンパ82に伝わる。これにより、拘束層85,87がアーム42に対して振動する。粘弾性体86,88は、拘束層85,87とアーム42との間で変形し、振動のエネルギーを熱に変換する。これにより、第1のダンパ81及び第2のダンパ82は、アーム42の振動を減衰させる。
【0090】
第1のダンパ81及び第2のダンパ82によりアーム42の振動が減衰するため、HDD10は、記録密度が高くとも、磁気ヘッド61を精度良く位置決めすることができる。すなわち、HDD10は、記録密度を向上させることができる。
【0091】
第1のダンパ81が第1の窪み53に配置され、第2のダンパ82が第2の窪み54に配置される。これにより、第1のダンパ81及び第2のダンパ82がアーム42取り付けられた部分において、アーム42、第1のダンパ81、及び第2のダンパ82の厚さの合計が小さくなり、第1のダンパ81と磁気ディスク12Uとの間の距離が十分に設けられる。また、第2のダンパ82と磁気ディスク12Lとの間の距離が十分に設けられる。
【0092】
以下、
図5及び
図6を参考に、HDD10の製造方法の一部である第1の窪み53及び第2の窪み54の形成方法について例示する。なお、第1の窪み53及び第2の窪み54の形成方法は以下の方法に限らず、他の方法が用いられても良い。
【0093】
図5は、第1の実施形態のキャリッジ35及びギャングカッター(gang cutter)100を示す例示的な断面図である。
図6は、第1の実施形態のキャリッジ35及びギャングカッター100を示す例示的な平面図である。
【0094】
図5及び
図6に示すように、例えば、ギャングカッター100がアーム42に第1の窪み53及び第2の窪み54を形成する。ギャングカッター100は、複数の刃101を有する。刃101は、略円盤状に形成される。
【0095】
図5に示すように、複数の刃101は、刃101の中心軸Axgに沿って、隙間を介して並べられる。複数の刃101は、中心軸Axgまわりに一体的に回転する。本実施形態において、中心軸Axgは、略Z方向に延びている。
【0096】
刃101の厚さは、複数のアーム42のうち隣り合う二つの間の距離よりも大きい。本実施形態において、Z方向における刃101の中心は、隣り合う二つのアーム42の間の中央に配置される。
【0097】
刃101は、隣り合う二つのアーム42に同時に接触することができる。このため、中心軸Axgまわりに回転する刃101は、当該二つのアーム42を同時に切削する。Z方向において、第1の窪み53の深さと、第2の窪み54の深さと、隣り合う二つのアーム42との間の距離と、の合計は、刃101の厚さに略等しい。
【0098】
図6の矢印は、ギャングカッター100がアーム42を切削するときの、アーム42に対する中心軸Axgの移動経路の一例を示す。
図6に示すように、刃101は、第1の側面42aからアーム42を削ることで、二つのアーム42のうち一方に第1の窪み53を形成し、二つのアーム42のうち他方に第2の窪み54を形成する。刃101が円盤状であるため、第1の窪み53及び第2の窪み54は、第1の側面42aから第2の側面42bに向かって先細る。
【0099】
X方向における第1の側面42aとスリット51との間の距離は、刃101の半径よりも小さい。このため、刃101は、第1の側面42aからスリット51の近傍まで広がる第1の窪み53及び第2の窪み54を形成することができる。なお、第1の側面42aとスリット51との間の距離は、刃101の半径よりも大きくても良い。
【0100】
例えば、一つの刃101は、一つのアーム42に第1の窪み53を形成するとき、当該一つのアーム42を略-Z方向に押す。言い換えると、一つの刃101から一つのアーム42へ、当該一つのアーム42を曲げるような力が作用する。しかし、他の一つの刃101が、当該一つのアーム42に第2の窪み54を形成することで、当該一つのアーム42を略+Z方向に押す。すなわち、二つの刃101は、一つのアーム42を両側から支持することで、当該一つのアーム42が弾性的に曲がることを制限する。
【0101】
アーム42の第1の座面42d及び第2の座面42fは、第1の窪み53及び第2の窪み54と同じく、ギャングカッター100により形成されることができる。例えば、ギャングカッター100は、刃101とは厚さが異なる他の刃によりアーム42を削り、第1の座面42d及び第2の座面42fを形成することができる。
【0102】
Z方向において、第1の座面42dと第2の座面42fとの間におけるアーム42の厚さは、貫通孔52に嵌め込まれる二つのボス72の厚さの合計よりも大きく設定される。このため、二つのボス72が互いに干渉することが抑制される。しかし、第1の座面42dと第2の座面42fとの間におけるアーム42の厚さは、設計上の制約を受ける。
【0103】
一方で、第1の窪み53の底面53aと第2の窪み54の底面54aとの間におけるアーム42の厚さは、貫通孔52における二つのボス72の干渉には影響しにくい。このため、第1の窪み53及び第2の窪み54の深さは、第1の座面42dと第2の座面42fとの間におけるアーム42の厚さよりも、設計上の制約が小さい。従って、第1の窪み53及び第2の窪み54の深さは、第1のダンパ81及び第2のダンパ82が磁気ディスク12U,12Lに接触することを抑制できるような深さに設定されることができる。
【0104】
以上説明された第1の実施形態に係るHDD10において、アーム42は、第1の側面42aと、第2の側面42bと、第1の面42cと、第1の座面42dと、第2の面42eと、第2の座面42fとを有する。第1の側面42aは、磁気ディスク12の中心軸Axdに向く。第2の側面42bは、第1の側面42aの反対側に位置するとともにスリット51が設けられる。第1の面42c及び第1の座面42dは、磁気ディスク12Uに向く。第2の面42e及び第2の座面42fは、磁気ディスク12Lに向く。第1の座面42dは、第1の面42cよりも磁気ディスク12Uから離間し、第1の面42cよりもアーム42の中心軸Axhから離間している。第2の座面42fは、第2の面42eよりも磁気ディスク12Lから離間し、第2の面42eよりも中心軸Axhから離間している。アーム42に、第1の窪み53が設けられる。第1の窪み53は、第1の側面42a及び第1の面42cに開口するとともに中心軸Axdと直交する方向においてスリット51よりも中心軸Axdに近い。サスペンション62は、第1の座面42d又は第2の座面42fに支持されるとともに、スリット51に部分的に収容される。第1のダンパ81は、第1の窪み53に配置されてアーム42に取り付けられる。
【0105】
第1のダンパ81は、第1の窪み53に配置されることで、第1の面42cに配置される場合に比べ、磁気ディスク12Uから離間する。このため、第1のダンパ81は、アーム42の振動を減衰しつつ、磁気ディスク12Uに接触してしまうことを抑制できる。また、アーム42に設けられる第1の窪み53は、第1の座面42d及びスリット51が設けられる部分を避けるとともに、第1の側面42aにまで達するよう広がっている。これにより、第1の窪み53を設けることは、サスペンション62が支持される第1の座面42d及びサスペンション62の一部が収容されるスリット51の設計及び製造に影響してしまうことを抑制できる。すなわち、第1の窪み53は、第1の座面42d及びスリット51へのサスペンション62の装着を妨げてしまうことを抑制できる。また、第1の窪み53は、例えば、ギャングカッター100が第1の側面42aからアーム42を削ることにより、容易に形成され得る。以上より、本実施形態のHDD10は、サスペンション62に搭載される磁気ヘッド61の位置決め精度を向上することで記録密度を向上でき、且つ容易に製造可能となる。
【0106】
アーム42に、第2の窪み54が設けられる。第2の窪み54は、第1の側面42a及び第2の面42eに開口するとともに、中心軸Axdと直交する方向においてスリット51よりも中心軸Axdに近い。例えば、ギャングカッター100の複数の刃101が第1の側面42aからアーム42を削ることで、複数のアーム42のそれぞれに第1の窪み53及び第2の窪み54が形成される。この場合、ギャングカッター100の隣り合う二つの刃101は、一つのアーム42に第1の窪み53及び第2の窪み54を同時に形成することで、当該一つのアーム42を両側から支持し、当該一つのアーム42が曲がることを制限できる。従って、本実施形態のHDD10は、第1の窪み53及び第2の窪み54を容易に形成することができる。
【0107】
第2のダンパ82は、第2の窪み54に配置されて、アーム42に取り付けられ、アーム42の振動を減衰させる。これにより、本実施形態のHDD10は、第1のダンパ81及び第2のダンパ82によりアーム42の振動を減衰することで、サスペンション62に搭載される磁気ヘッド61の位置決め精度をより向上することができる。
【0108】
第1の面42cにおける第1の窪み53の縁53bと第2の面42eにおける第2の窪み54の縁54bとは、互いに鏡面対称である。これにより、例えば、略同一形状の複数の刃101が第1の面42cからアーム42を削ることで、複数のアーム42のそれぞれに第1の窪み53及び第2の窪み54が形成され得る。従って、本実施形態のHDD10は、第1の窪み53及び第2の窪み54を容易に形成することができる。
【0109】
中心軸Axhに沿うZ方向において、第1のダンパ81の厚さは、第1の窪み53の深さよりも小さい。これにより、第1のダンパ81は、磁気ディスク12Uに接触してしまうことを抑制できる。
【0110】
第1のダンパ81は、アーム42よりも密度が大きい拘束層85と、当該拘束層85とアーム42との間に介在する粘弾性体86とを有する。中心軸Axhに沿うZ方向において、第1の窪み53の深さは、拘束層85の厚さの3倍である。例えば、拘束層85がステンレス鋼で作られ、アーム42がアルミニウム合金により作られた場合、拘束層85の密度はアーム42の密度の約3倍となる。これにより、本実施形態のHDD10は、アーム42に第1の窪み53が設けられるとともに当該第1の窪み53に第1のダンパ81が配置されることによる、アーム42の質量の変化を軽減できる。
【0111】
中心軸Axhに沿うZ方向において、第1の窪み53の深さは、第1の面42cと第1の座面42dとの間の距離よりも大きい。このため、アーム42は、第1の窪み53の深さにかかわらず、第1の座面42dと第2の座面42fとの間において所望の厚さを保つことができる。従って、第1の窪み53を設けることは、サスペンション62が支持される第1の座面42dの設計及び製造に影響してしまうことを抑制できる。すなわち、第1の窪み53は、第1の座面42dへのサスペンション62の装着を妨げてしまうことを抑制できる。
【0112】
アーム42に、第1の座面42d及び第2の座面42fに開口する貫通孔52が設けられる。サスペンション62は、部分的に貫通孔52に嵌め込まれることでアーム42に取り付けられる。第1のダンパ81は、中心軸Axhに沿うZ方向に見た投影図において、中心軸Axhと貫通孔52の中心との間で延びる中心線Lに対して線対称でない。これにより、第1の窪み53は、例えば、ギャングカッター100が第1の側面42aからアーム42を削ることにより、容易に形成され得る。また、第1のダンパ81は、線対称である形状に制約されない。このため、第1のダンパ81は、例えば設計上又は製造上の他の制約又は要求に応じた形状を有することができる。従って、本実施形態のHDD10は、容易に製造可能となる。
【0113】
第1の窪み53は、第1の側面42aから第2の側面42bに向かって先細る。これにより、第1の窪み53は、例えば、ギャングカッター100の円盤状の刃101が第1の側面42aからアーム42を削ることにより、容易に形成され得る。
【0114】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図7及び
図8を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0115】
図7は、第2の実施形態に係るHSA14を示す例示的な断面図である。
図7に示すように、第2の実施形態のHSA14は、第2のダンパ82を省略する。なお、第2の実施形態のHSA14が、第2のダンパ82を有しても良い。
【0116】
第2の実施形態のアーム42には、第1の窪み53及び第2の窪み54の代わりに、第1の窪み201及び第2の窪み202が設けられる。第1の窪み201及び第2の窪み202は、以下に説明される点を除き、第1の窪み53及び第2の窪み54と実質的に等しい。
【0117】
中心軸Axhに沿うZ方向において、第1の窪み201の深さは、第2の窪み202の深さよりも大きい。すなわち、中心軸Axhに沿うZ方向において、第1の窪み201の深さは、第2の窪み202の深さと異なる。
【0118】
中心軸Axhに沿うZ方向において、第1のダンパ81の厚さは、第1の窪み201の深さよりも小さい。一方、Z方向において、第1のダンパ81の厚さは、第2の窪み202の深さよりも大きい。
【0119】
図8は、第2の実施形態のキャリッジ35及びギャングカッター100を示す例示的な断面図である。
図8に示すように、第2の実施形態において、Z方向における刃101の中心は、隣り合う二つのアーム42の間の中央と異なる位置に配置される。これにより、隣り合う二つの刃101は、複数のアーム42のそれぞれに深い第1の窪み201と浅い第2の窪み202とを同時に形成することができる。
【0120】
第2の窪み202は浅いが、刃101は、アーム42に接触して第2の窪み202を形成する。このため、第1の実施形態と同じく、二つの刃101は、一つのアーム42を両側から支持することで、当該一つのアーム42が弾性的に曲がることを制限する。
【0121】
以上説明された第2の実施形態のHDD10において、中心軸Axhに沿うZ方向において、第1の窪み201の深さは、第2の窪み202の深さと異なる。これにより、本実施形態のHDD10は、第1のダンパ81と磁気ディスク12Uとの間の距離を容易に調整することができる。
【0122】
中心軸Axhに沿うZ方向において、第1の窪み201の深さは、第2の窪み202の深さよりも大きい。これにより、本実施形態のHDD10は、第1のダンパ81を磁気ディスク12Uから離間させることができ、第1のダンパ81が磁気ディスク12Uに接触してしまうことを抑制できる。
【0123】
中心軸Axhに沿うZ方向において、第1のダンパ81の厚さは、第1の窪み201の深さよりも小さく、且つ第2の窪み202の深さよりも大きい。これにより、第1のダンパ81は、磁気ディスク12Uに接触してしまうことを抑制できる。さらに、第1のダンパ81が配置される第1の窪み201が深くされる一方、ダンパが配置されない第2の窪み202が浅くされる。これにより、本実施形態のHDD10は、第1の窪み201及び第2の窪み202によりアーム42が過剰に薄くなってしまうことを抑制できる。
【0124】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について、
図9を参照して説明する。
図9は、第3の実施形態に係るHSA14の一部を示す例示的な断面図である。
図9に示すように、第3の実施形態の第1のダンパ81は、拘束層85の代わりに、拘束層301を有する。拘束層301は、以下に説明される点を除き、拘束層85に実質的に等しい。第3の実施形態の拘束層301は、第1の実施形態及び第2の実施形態のいずれの拘束層85を代替しても良い。
【0125】
拘束層301は、第1の部分305と、第1の部分305よりも厚い第2の部分306とを有する。中心軸Axdと直交する方向において、第1の部分305は、第2の部分306よりも中心軸Axdに近い。
【0126】
例えば、第1の部分305は、拘束層301のうち、中心線Lよりも中心軸Axdに近い部分である。第2の部分306は、拘束層301のうち、中心線Lよりも中心軸Axdから離間した部分である。なお、第1の部分305及び第2の部分306は、この例に限られない。
【0127】
拘束層301は、第1の窪み53と同じく、第1の側面42aから第2の側面42bに向かって先細っている。このため、中心軸Axhに沿うZ方向に見た投影図において、第1の部分305の面積は、第2の部分306の面積よりも大きくなる。一方で、第2の部分306が第1の部分305よりも厚いため、第1の部分305の重さと第2の部分306の重さとは近くなる。
【0128】
第1の部分305と第2の部分306とは、一体に形成される。しかし、第1の部分305と第2の部分306とは、互いに独立していても良い。また、第1の部分305の材料と第2の部分306の材料とが異なっても良い。
【0129】
以上説明された第3の実施形態のHDD10において、第1のダンパ81は、拘束層301と、当該拘束層301とアーム42との間に介在する粘弾性体86と、を有する。拘束層301は、第1の部分305と、第1の部分305よりも厚い第2の部分306と、を有する。これにより、本実施形態のHDD10は、非対称な形状の第1のダンパ81における重量のバランスを調整できる。
【0130】
中心軸Axdと直交する方向において、第1の部分305は、第2の部分306よりも中心軸Axdに近い。例えば、ギャングカッター100の円盤状の刃101が第1の窪み53を形成する場合、第1の窪み53は、第1の側面42aから第2の側面42bに向かって先細る。すなわち、中心軸Axhに沿うZ方向に見た投影図において、第2の部分306は、第1の部分305よりも小さくなりやすい。しかし、第2の部分306が第1の部分305よりも厚いため、本実施形態のHDD10は、第1のダンパ81における重量のバランスを調整できる。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0132】
10…ハードディスクドライブ(HDD)、12,12U,12L…磁気ディスク、42…アーム、42a…第1の側面、42b…第2の側面、42c…第1の面、42d…第1の座面、42e…第2の面、42f…第2の座面、51…スリット、52…貫通孔、53,201…第1の窪み、53a…底面、53b…縁、54,202…第2の窪み、54b…縁、62…サスペンション、81…第1のダンパ、82…第2のダンパ、85,87,301…拘束層、86,88…粘弾性体、305…第1の部分、306…第2の部分、Axd,Axh…中心軸、L…中心線。